説の検証確認日 2026.09.29

お酒は膵臓がんの原因になる? 飲む量との関係、お酒以外の原因、最新の治療を国のデータと論文で確かめる

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膵臓がんで亡くなる人は、2024年に41,235人でした。がんで亡くなる人の原因では、肺がん・大腸がんに次ぐ3番目です(国立がん研究センター がん統計)。

膵臓がんは見つかりにくく、治りにくいがんです。2018年に診断された人の5年相対生存率は13.2%で、がん全体(64.8%)を大きく下回ります。

「お酒を飲む人は膵臓がんになりやすい」とよく言われます。膵臓は、飲みすぎで膵炎(すいえん)を起こす臓器でもあります。

この記事では、

  • お酒と膵臓がんの関係は、国や国際機関の評価ではどうなっているか
  • 飲む量(純アルコールのグラム数)と、リスクの関係
  • お酒以外に、膵臓がんの原因として分かっているもの
  • 膵臓がんは増えているのか
  • 早く見つける取り組みと、2026年時点の新しい治療

を、国の統計と論文で確かめます。

結論

  • お酒と膵臓がんの関係は、「確実」とまでは言えない段階です。国際的な評価(WCRF)は「限定的・示唆的」で、それも1日に純アルコール約45g(約3杯)を超える大量の飲酒に限った判断です。国立がん研究センターの日本人向けの評価は「データ不十分」です
  • 世界30の追跡研究(約249万人)をまとめた2025年の研究では、飲む量が多いほど少しずつリスクが上がり、1日60g以上の人は、ほとんど飲まない人の1.32倍でした。とくに女性で1日15g以上、男性で30g以上でリスクの上昇がはっきりしていました。一方、アジアの研究だけで見ると関係は見られませんでした
  • 大量の飲酒は慢性膵炎の原因になり、慢性膵炎は膵臓がんのリスクを上げます。お酒の影響は、この「膵炎を通じた道」とも重なっています
  • お酒より関係がはっきりしているのは、喫煙(国立がん研究センターの評価で「確実」)と糖尿病(「ほぼ確実」)です。ほかに、肥満、膵臓がんの家族歴や遺伝子の変化(BRCA など)、慢性膵炎、膵のう胞(IPMN など)がリスクとして知られています
  • 膵臓がんで亡くなる人は1996年の16,613人から2024年の41,235人に増えました。肺がんと違い、同じ年齢どうしで比べた死亡率も上がり続けており、とくに女性で1996年から35%上がりました。一方、大人1人あたりのお酒の消費量は1992年度をピークに約26%減っていて、お酒だけでは増え方を説明できません
  • 治療は、この数年で変わりつつあります。日本の試験で、手術の前に抗がん剤を使うと生存期間が延びることが示されました(中央値26.6か月→37.0か月)。2026年8月には、飲み薬のRAS阻害薬「ダラクソンラシブ」が、治療歴のある転移した膵臓がんで生存期間を約2倍にした試験をもとに、米国で承認されました(日本では未承認)

膵臓がんで亡くなる人の推移

膵臓がんの死亡数と年齢調整死亡率の推移(1958〜2024年)膵臓がんで亡くなった人は1958年の1,620人から2024年の41,235人に増えた。年齢調整死亡率は男性が1996年の12.4から2024年の13.9、女性が7.2から9.7に上がり、下がっていない。膵臓がんで亡くなった人の数(全国、人)01万2万3万4万5万1958年 1,620人1959年 1,775人1960年 1,975人1961年 2,079人1962年 2,330人1963年 2,434人1964年 2,786人1965年 3,066人1966年 3,255人1967年 3,585人1968年 3,800人1969年 4,083人1970年 4,399人1971年 4,540人1972年 4,930人1973年 5,088人1974年 5,402人1975年 5,635人1976年 5,929人1977年 6,345人1978年 6,807人1979年 7,210人1980年 7,835人1981年 8,252人1982年 8,776人1983年 9,261人1984年 9,485人1985年 10,421人1986年 11,166人1987年 12,025人1988年 12,555人1989年 12,988人1990年 13,318人1991年 13,605人1992年 14,147人1993年 14,713人1994年 14,990人1995年 16,019人1996年 16,613人1997年 17,006人1998年 17,643人1999年 18,654人2000年 19,094人2001年 19,397人2002年 20,137人2003年 21,148人2004年 22,260人2005年 22,927人2006年 23,366人2007年 24,634人2008年 25,976人2009年 26,791人2010年 28,017人2011年 28,829人2012年 29,916人2013年 30,673人2014年 31,717人2015年 31,868人2016年 33,485人2017年 34,229人2018年 35,390人2019年 36,356人2020年 37,677人2021年 38,579人2022年 39,468人2023年 40,175人2024年 41,235人1958年 1,620人1996年 16,613人2024年 41,235人点線=1996年1960198020002020膵臓がんの年齢調整死亡率(10万人あたり)04812161958年 男性3.41959年 男性3.51960年 男性4.11961年 男性4.21962年 男性4.51963年 男性4.61964年 男性5.31965年 男性5.61966年 男性5.71967年 男性6.41968年 男性6.81969年 男性7.11970年 男性7.41971年 男性7.61972年 男性8.01973年 男性8.01974年 男性8.31975年 男性8.01976年 男性8.61977年 男性8.91978年 男性9.21979年 男性9.51980年 男性10.01981年 男性10.31982年 男性10.71983年 男性10.71984年 男性10.81985年 男性11.61986年 男性11.81987年 男性12.51988年 男性12.21989年 男性12.41990年 男性12.11991年 男性12.21992年 男性12.11993年 男性12.31994年 男性12.11995年 男性12.71996年 男性12.41997年 男性12.31998年 男性12.51999年 男性12.72000年 男性12.42001年 男性12.22002年 男性12.12003年 男性12.32004年 男性12.62005年 男性12.62006年 男性12.52007年 男性12.62008年 男性12.92009年 男性12.92010年 男性13.02011年 男性13.02012年 男性13.32013年 男性13.32014年 男性13.32015年 男性12.82016年 男性13.32017年 男性13.22018年 男性13.42019年 男性13.32020年 男性13.62021年 男性13.82022年 男性13.82023年 男性13.72024年 男性13.9男性 1996年 12.413.91958年 女性2.31959年 女性2.51960年 女性2.51961年 女性2.61962年 女性2.91963年 女性3.11964年 女性3.31965年 女性3.61966年 女性3.81967年 女性3.91968年 女性3.91969年 女性4.31970年 女性4.51971年 女性4.41972年 女性4.71973年 女性4.71974年 女性4.81975年 女性5.11976年 女性5.01977年 女性5.11978年 女性5.41979年 女性5.51980年 女性5.81981年 女性5.91982年 女性6.11983年 女性6.31984年 女性6.21985年 女性6.51986年 女性6.81987年 女性6.91988年 女性7.21989年 女性7.11990年 女性7.11991年 女性6.91992年 女性7.01993年 女性7.01994年 女性6.91995年 女性7.01996年 女性7.21997年 女性7.11998年 女性7.01999年 女性7.32000年 女性7.22001年 女性7.22002年 女性7.22003年 女性7.42004年 女性7.52005年 女性7.52006年 女性7.42007年 女性7.62008年 女性7.92009年 女性8.02010年 女性8.22011年 女性8.42012年 女性8.42013年 女性8.42014年 女性8.52015年 女性8.42016年 女性8.62017年 女性8.72018年 女性8.92019年 女性9.12020年 女性9.22021年 女性9.32022年 女性9.42023年 女性9.52024年 女性9.7女性 1996年 7.29.71960198020002020
国立がん研究センター がん統計(人口動態統計による全国がん死亡データ)から作成。年齢調整死亡率は昭和60年モデル人口を使用。点線は1996年。
年 死亡数 年齢調整死亡率(男性) 年齢調整死亡率(女性)
1958 1,620人 3.4 2.3
1975 5,635人 8.0 5.1
1985 10,421人 11.6 6.5
1996 16,613人 12.4 7.2
2005 22,927人 12.6 7.5
2015 31,868人 12.8 8.4
2024 41,235人 13.9 9.7

(年齢調整死亡率は人口10万あたり)

  • 膵臓がんで亡くなる人の66%は75歳以上(2024年)で、人数が増えた大きな理由は高齢化です
  • ただし、年齢の違いを取り除いた年齢調整死亡率も上がっています。1996年から2024年までに、男性は12%、女性は35%上がりました。同じ期間に、肺がんの年齢調整死亡率は27%下がっています(タバコと肺がんの記事)
  • 新たに膵臓がんと診断される人も、全国がん登録で2016年の40,617人から2023年の47,540人に増え、年齢調整罹患率も14.1から15.1に上がりました
年齢別の死亡率(10万人あたり) 1996年 2024年 変化
男性 50〜54歳 12.7 9.4 −26%
男性 70〜74歳 70.9 85.6 +21%
男性 80〜84歳 128.5 156.8 +22%
女性 50〜54歳 5.6 6.6 +17%
女性 70〜74歳 40.0 59.7 +49%
女性 80〜84歳 84.7 118.9 +40%

(国立がん研究センター がん統計から計算)

お酒の消費量は減っている

国税庁「酒のしおり」によると、大人1人あたりのお酒の消費量は1992年度の101.8リットルがピークで、2022年度は75.4リットルまで減りました。男性の喫煙率も大きく下がっています。

それでも膵臓がんの死亡率は上がり続けているので、「お酒の飲みすぎで膵臓がんが増えた」という説明は、国の数字とは合いません。何が増加の主な原因なのかは、今のところはっきり分かっていません。高齢化のほか、下で見るような糖尿病・肥満などの要因や、画像検査で見つかりやすくなったことなど、いくつもの要因が重なっていると考えられます。

お酒と膵臓がん:国や国際機関の評価

評価する機関 判定
国立がん研究センター(日本人を対象にした研究の評価、2026年5月版) 飲酒と膵臓がん:データ不十分(大腸・肝臓・食道がんは「確実」)
WCRF / AICR(世界がん研究基金) 限定的・示唆的(リスクを上げる可能性)。1日約45g(約3杯)を超える飲酒についての判断で、それより少ない量は「結論を出せない」
IARC(国際がん研究機関) お酒そのものは「ヒトに発がん性がある(グループ1)」。ただし膵臓がんとの関係の証拠は「少なく、一貫していない」とされてきた
厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年) 病気ごとに「リスクが上がる飲酒量」をまとめた表に、膵臓がんは載っていない

お酒は、口・のど・食道・肝臓・大腸・乳房のがんでは「確実」な原因とされています。膵臓がんについては、まだそこまでの結論は出ていません。お酒の種類やほかのがんとの関係は、お酒の種類とがんの記事にまとめています。

飲む量とリスク:研究で分かっていること

世界の研究のまとめ

研究 対象 分かったこと
Naudin 2025(30の追跡研究を統合) 約249万人、膵臓がん10,067人 ほとんど飲まない人(1日0.1〜5g)と比べて、1日30〜60gで1.12倍、60g以上で1.32倍。1日10g増えるごとに3%上がる。たばこを吸わない人でも同じ傾向。アジアの研究では関係なし
Genkinger 2009(14の追跡研究を統合) 膵臓がん2,187人 1日30g以上で、飲まない人の1.22倍
Tramacere 2010(32の研究のまとめ) ― 1日3杯未満は0.92倍(上がらない)。3杯以上で1.22倍
Lucenteforte 2012(10の症例対照研究を統合) 膵臓がん5,585人 1日4杯以下では関係なし。9杯以上で1.6倍
Wang 2016(19の追跡研究のまとめ) 約421万人 少量〜中くらいの飲酒では関係なし。多量の飲酒で1.15倍

どの研究でも、少ない量ではリスクはほとんど変わらず、多く飲む人で1.1〜1.3倍ほど高くなるという結果です。「飲む量が多いほどリスクが上がるか」という問いには、大量に飲む範囲では「はい」、少量〜中くらいの範囲では「はっきりしない」が答えになります。

日本人の研究

研究 対象 分かったこと
JACC 研究(Lin 2002) 全国45地域の約11万人 飲酒と膵臓がんの死亡に関係なし
JPHC 研究(Okita 2022) 約9万6千人、膵臓がん598人 調査開始時の飲酒量では、男女とも関係なし。顔が赤くなる体質かどうかで分けても関係なし。ただし、5年後も飲み方が変わらなかった男性に限ると、飲む人(週1〜299g)は飲まない人の1.73倍
高山スタディ(Nakamura 2011) 岐阜県高山市の住民 約3万人 飲酒と膵臓がんの死亡に関係なし(喫煙は女性で関係あり)

日本人を対象にした研究では、はっきりした関係は出ていません。国立がん研究センターが「データ不十分」としているのは、このためです。世界の研究のまとめ(Naudin 2025)でも、アジアでは関係が見られませんでした。著者は、アジアの研究では多く飲む人が少なかったことを挙げています。

お酒の種類による違い

  • ビールと蒸留酒(ウイスキー・焼酎など)では、飲む量が多いほどリスクが少し上がり、ワインでは関係が見られませんでした(Naudin 2025)
  • 別の研究のまとめでも、蒸留酒を多く飲む人で1.43倍でした(Wang 2016)

ただし、「ワインなら安全」という意味ではありません。お酒の種類によって、一緒に食べるものや飲む量、たばこを吸うかどうかも違うため、種類だけの影響を取り出すのは難しいと考えられています。

純アルコール量の目安

国の飲酒ガイドラインでは、お酒の量を純アルコールのグラム数で考えることを勧めています。

純アルコール量(g)= お酒の量(ml)× アルコール度数(%)÷ 100 × 0.8

お酒 量 純アルコール
ビール(5%) 中びん1本・ロング缶1本(500ml) 20g
日本酒(15%) 1合(180ml) 約22g
ワイン(12%) グラス1杯(120ml) 約12g
焼酎(25%) 100ml 20g
缶チューハイ(7%) 350ml 約20g
ウイスキー(43%) ダブル1杯(60ml) 約21g
  • 研究で膵臓がんのリスク上昇がはっきりしていたのは、女性で1日15g以上、男性で30g以上(Naudin 2025)
  • WCRF の判断の目安は1日約45g(ビールのロング缶2本強、日本酒2合強)を超える飲酒
  • 国は、1日の純アルコールが男性40g以上、女性20g以上を「生活習慣病のリスクを高める量」としています。膵臓がんに限らず、この量を超えないことが一つの目安です

お酒が膵臓に悪いといわれる理由

  • 慢性膵炎:大量の飲酒は慢性膵炎の主な原因です。膵炎と診断されて2年以上たってから膵臓がんになった人を調べると、膵炎の経験がある人は2.71倍でした(Duell 2012、10の症例対照研究を統合)
  • アセトアルデヒド:お酒が体の中で分解されてできる物質で、発がん性があります
  • たばことの重なり:お酒をよく飲む人は、たばこも吸うことが多く、両方で影響が重なると考えられています

膵炎があると膵臓がんがなりやすいのは確かですが、膵炎全体のうち膵臓がんにつながる割合は大きくありません。上の研究では、膵炎を防げたとしても減らせる膵臓がんは約1.3%と見積もられています。

顔が赤くなる人は?

日本人には、お酒を飲むと顔が赤くなる、アセトアルデヒドを分解しにくい体質の人が多くいます。この体質は食道がんのリスクと強く関係していますが、日本の JPHC 研究では、顔が赤くなるかどうかで分けても、飲酒と膵臓がんの関係は見られませんでした(Okita 2022)。

お酒以外の原因

膵臓がんの原因として、研究で分かっているものを並べます。倍率は、その要因のない人と比べた、膵臓がんのなりやすさ(または亡くなりやすさ)です。

要因 国などの評価 研究で分かっていること
喫煙 国立がん研究センター:確実 今吸っている人は吸わない人の1.8倍、1日の本数が少なくても上がる(78の研究のまとめ、Lugo 2018)。日本の10の追跡研究では、男性1.59倍、女性1.81倍。男性はやめて5年たつと吸わない人と同じくらいに下がった(Koyanagi 2019)
受動喫煙 国立がん研究センター:データ不十分 14の研究のまとめで1.20倍。毎日・日常的にさらされる場合に上がる(Wang 2024)
糖尿病 国立がん研究センター:ほぼ確実 35の追跡研究のまとめで1.94倍。糖尿病と診断されて1年以内がもっとも高い(Ben 2011)。空腹時血糖が高い人ほど膵臓がんで亡くなりやすい(日本の研究、Nagai 2017)
肥満 WCRF:体脂肪は確実。国立がん研究センター:男性で可能性あり 日本の9つの追跡研究で、BMI 30以上の男性は1.71倍(Koyanagi 2018)。女性ははっきりしない
家族歴 ― 親・きょうだい・子に膵臓がんの人が1人いると約4.6倍、3人以上で約32倍(Poh 2026 の総説)
遺伝子の変化 ― BRCA1・BRCA2 などの遺伝子の変化を持つ人はリスクが高い。膵臓がんの人の約1〜2割は、遺伝的な要因が関係すると見積もられている(Limijadi 2024)
慢性膵炎 ― 約2.7倍(上の Duell 2012)
急性膵炎 ― 急性膵炎のあと2年以内は、膵臓がんが見つかることが多い(膵臓がんが膵炎を起こしていた例を含む)。5年以上たっても1.71倍(61の研究のまとめ、Lee 2026)
膵のう胞・IPMN ― 膵臓の中の袋状の病変。IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の一部はがんに進むため、定期的な検査で経過を見る
身長が高い WCRF:おそらく確実 ―
赤肉・加工肉 WCRF:限定的・示唆的。国立がん研究センター:データ不十分 加工肉が1日50g増えるごとに1.19倍(Larsson 2012)。赤肉は男性でのみ関係(同)。まとめ方によって結果が分かれる
  • 倍率で比べると、多量の飲酒(1.1〜1.3倍)より、喫煙(約1.8倍)・糖尿病(約1.9倍)・家族歴(約4.6倍)のほうが大きいことが分かります
  • 糖尿病は「原因」であると同時に、膵臓がんの最初のサインのこともあります。がん情報サービスでも、糖尿病が急に出てきたり、急に悪くなったりしたことが膵臓がんが見つかるきっかけになる、と説明されています

早く見つけるために

膵臓がんは、見つかったときの広がり方で生存率が大きく変わります。

診断時の広がり(2018年診断) 5年相対生存率
膵臓にとどまっている(限局) 42.4%
周りのリンパ節などに広がっている(領域) 15.9%
離れた臓器に転移している(遠隔) 2.2%

(国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓」、全国がん登録)

  • 膵臓がんは多くの人がかかるがんではないため、症状のない人全員に検診をする方法は、国内外とも勧められていません(Poh 2026 の総説)。国の「がん検診」にも膵臓がんは入っていません
  • 2025年の日本膵臓学会の診療ガイドラインでは、膵臓がんになりやすい遺伝子の変化を持つ人や、家族性膵がんの家系の人に、膵臓がんを考えた精密検査と経過観察を「提案する」が新しく加わりました(推奨の強さは「弱い」)。症状がない人の検査は保険がきかず、MRI(MRCP)と超音波内視鏡を年2回受けると、自己負担は年間約5万円になると紹介されています
  • 広島県尾道市では2007年から、かかりつけ医が糖尿病・家族歴・膵のう胞などのある人を専門病院の精密検査(超音波内視鏡など)に回す「尾道方式」を行い、早い段階の膵臓がんが多く見つかるようになりました。担当医は、5年生存率が約20%になったと報告しています。ガイドライン2025年版でも、こうした地域の取り組みについて「予後の改善を期待できる可能性がある」としつつ、効果の検証が必要としています

気になる症状(おなかや背中の痛み、体重減少、黄疸)がある人、糖尿病が急に出た・急に悪化した人、家族に膵臓がんの人がいる人は、かかりつけ医に相談してください。

膵臓がんの新しい治療(2026年9月時点)

治療 内容と、分かっていること 日本での状況
手術の前後の抗がん剤 切除できる膵臓がんで、手術の前にゲムシタビン+S-1を2コース使うと、すぐ手術する場合より生存期間の中央値が26.6か月→37.0か月(Prep-02/JSAP05、日本の364人の試験、Unno 2026)。手術後のS-1は、ゲムシタビンより5年生存率が24.4%→44.1%(JASPAC 01、Uesaka 2016) 標準治療(手術の前後の補助療法+切除)
NALIRIFOX 療法(リポソーム化イリノテカン+オキサリプラチン+5-FU+レボホリナート) 遠隔転移のある膵臓がんの最初の治療で、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルより生存期間の中央値が9.2か月→11.1か月(NAPOLI 3、770人、Wainberg 2023) ガイドライン2025年版に新しく記載。1次治療への適応追加は2025年12月に申請
RAS阻害薬 ダラクソンラシブ(飲み薬) 膵臓がんの9割以上にある RAS 遺伝子の変化をねらう薬。治療歴のある転移した膵臓がん500人で、生存期間の中央値が抗がん剤の6.7か月→13.2か月(RASolute 302、O’Reilly 2026)。副作用で多いのは発疹・下痢など 米国で2026年8月26日に承認。日本では未承認
オラパリブ(PARP阻害薬) BRCA遺伝子に変化がある人で、抗がん剤のあとの維持療法。生存期間の中央値は差がなかったが、3年後の生存は33.9%と17.8%(POLO、Kindler 2022) 2020年12月に承認
重粒子線・陽子線 がんに集中して強い放射線を当てる 手術できない局所進行の膵臓がんで、2022年4月から保険適用。切除できる膵臓がんでは、重粒子線だけの治療は手術+抗がん剤より生存期間が短かった(1施設の比較、Yamamoto 2023)
mRNA がんワクチン(autogene cevumeran) 手術で取ったがんの遺伝子を調べ、一人ひとりに合わせて作るワクチン。第1相試験(16人)で、ワクチンに反応した8人は、反応しなかった8人より再発が遅かった(Rojas 2023、Sethna 2025) 研究段階(海外で第2相試験 IMCODE003 が進行中)
  • ガイドライン2025年版では、2次治療の「5-FU+ロイコボリン+リポソーム化イリノテカン」が「推奨する」に上がりました
  • ダラクソンラシブの試験は米国の製薬会社の資金で行われたものです。新しい薬は、使える条件(がんの種類・治療歴・遺伝子の変化)が決まっています。治療の選び方は、担当医と相談してください

膵臓のためにできること

行動 理由
たばこをやめる 国立がん研究センターの評価で「確実」。日本の研究で、男性はやめて5年で吸わない人と同じくらいに下がった
大量に飲まない 研究でリスクが上がっていたのは、女性で1日15g以上、男性で30g以上。国の目安(男性40g、女性20g)を超えない
体重を保つ 体脂肪は WCRF で「確実」な原因
糖尿病の管理と、急な変化に気をつける 糖尿病は「ほぼ確実」。急に出た・悪化した糖尿病は、膵臓がんのサインのこともある
家族歴を知っておく 家族に膵臓がんの人が多い場合は、医師に相談する

国の飲酒ガイドラインは、お酒の量を減らす工夫として、飲む量を先に決める、飲む前や飲みながら食事をとる、合間に水を飲む、アルコールの入っていない飲みものを選ぶ、1週間のうちに飲まない日をつくる、などを挙げています。

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ご注意 ノンアルコールビールは、膵臓がんを防ぐ飲みものではありません。お酒を飲む量を減らすための置きかえとして紹介しています。慢性膵炎・糖尿病などで治療中の人は、飲みものについても担当医の指示に従ってください。お酒をやめたいのにやめられない場合は、医療機関や保健所、精神保健福祉センターに相談できます。

まとめ

  • お酒と膵臓がんの関係は「大量に飲む人で少し高くなる(1.1〜1.3倍)」というのが研究の結論です。少量〜中くらいでは、はっきりした関係はありません。日本人の研究では、まだ「データ不十分」です
  • 飲む量の目安は、研究でリスク上昇がはっきりしていた女性1日15g・男性30g、国の「生活習慣病のリスクを高める量」の男性40g・女性20g
  • 膵臓がんの原因として関係がより強いのは、喫煙・糖尿病・肥満・家族歴・遺伝子の変化です。お酒は、慢性膵炎を通じてもリスクに関わります
  • 膵臓がんの年齢調整死亡率は、お酒の消費量やたばこが減った今も上がり続けています。お酒だけでは説明できず、原因ははっきりしていません
  • 治療は、手術前後の抗がん剤、新しい組み合わせの抗がん剤、RAS 阻害薬、重粒子線、mRNA ワクチンなどで変わりつつあります。日本で使えるかどうかは治療ごとに違います

参考にした資料

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この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.09.29)。