タバコを吸う人は減ったのに、肺がんが増えているのはなぜ? 喫煙と肺がんの種類、肺のためにできることを国のデータと論文で確かめる
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日本の男性の喫煙率は、1966年の83.7%から2018年には27.8%まで下がりました(JT「全国たばこ喫煙者率調査」)。2024年の国の調査では、20歳以上で習慣的にたばこを吸う人は14.8%(男性24.5%、女性6.5%)です(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。
それなのに、肺がんで亡くなる人は増え続け、2022年には76,663人と過去最多になりました。いまも年間7万5千人を超え、がんで亡くなる人の原因でいちばん多いのが肺がんです(国立がん研究センター がん統計)。
「タバコをやめる人が増えたのに肺がんが増えているなら、タバコは関係ないのでは?」という声もあります。
この記事では、
- 喫煙者が減っているのに、肺がんが増えて見えるのはなぜか
- 肺がんの種類(腺がん・扁平上皮がん・小細胞がんなど)ごとに、喫煙との関係はどう違うのか
- タバコを吸わない人の肺がんの原因として、何が分かっているか
- 肺のためによいとされる行動・食べもの・習慣は、どこまで確かなのか
を、国の統計と論文で確かめます。
結論
- 肺がんで亡くなる「人数」は増えましたが、同じ年齢どうしで比べた「死亡率」は1996年をピークに下がっています。年齢調整死亡率は1996年から2024年までに、男性で33%、女性で21%下がりました
- 人数が増えた最大の理由は高齢化です。肺がんで亡くなる人のうち75歳以上が占める割合は、1975年の23%から2024年の70%になりました。2024年の人口に1996年の年齢別の死亡率を当てはめると、死亡数は約9万2千人になるはずでしたが、実際は約7万6千人でした
- 喫煙と肺がんのあいだには20年以上の時間差があります。たばこを多く吸っていた世代がいま高齢になり、肺がんの年齢になっています。50〜60歳代の男性の肺がん死亡率は、1996年から2024年までにおよそ4〜6割下がりました
- 肺がんは種類によって喫煙との関係の強さが違います。扁平上皮がん・小細胞がんは喫煙との関係がとくに強く、日本人の研究では、たばこを吸う男性の扁平上皮がんのリスクは吸わない人の約12倍です。腺がんは吸わない人にも多く、喫煙によるリスクの上がり方は約2倍と小さめです
- 喫煙者の減少とともに扁平上皮がん・小細胞がんは減り、いま最も多いのは腺がんです。とくに早い段階で見つかる腺がんが増えていて、検査で見つけやすくなったことも関係していると考えられています
- タバコを吸わない人の肺がんには、受動喫煙(国立がん研究センターの評価は「確実」)、職場のアスベスト(「ほぼ確実」)、大気汚染(PM2.5)、ラドン、調理の煙などが関係しています
- 肺のためにできることで、根拠がはっきりしているのは禁煙(何歳からでも)と、受動喫煙を避けることです。果物・野菜や運動は「リスクが低い可能性がある」段階で、β-カロテンのサプリメントは喫煙者の肺がんを増やすことが分かっています
- 加熱式たばこは、紙巻たばこより少ない有害物質が多い一方、多い物質もあり、肺がんとの関係は「判定できない」というのが、2026年5月の厚生労働省の研究班の整理です
喫煙率と肺がんの推移
| 年 | 男性の喫煙率 | 肺がんの死亡数 | 年齢調整死亡率(男性) | 年齢調整死亡率(女性) |
|---|---|---|---|---|
| 1966 | 83.7% | 8,365人 | 19.1 | 6.8 |
| 1975 | 76.2% | 14,759人 | 28.1 | 8.3 |
| 1985 | 64.6% | 28,590人 | 41.5 | 11.3 |
| 1996 | 57.5% | 48,041人 | 48.1 | 12.6 |
| 2005 | 45.8% | 62,063人 | 44.6 | 11.7 |
| 2015 | 31.0% | 74,382人 | 39.2 | 11.1 |
| 2022 | ― | 76,663人 | 33.9 | 10.3 |
| 2024 | 24.5%(国の調査) | 75,569人 | 32.1 | 10.0 |
(年齢調整死亡率は人口10万あたり。2024年の喫煙率は厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」の値で、JT の調査とは調べ方が違います)
グラフの上2つだけを見ると「喫煙率は下がったのに、肺がんは増えた」ように見えます。いちばん下の年齢調整死亡率を見ると、話が変わります。
分析:喫煙者が減っているのに、肺がんが増えて見える理由
① 高齢化:人数は増えても、同じ年齢で比べると減っている
がんは年をとるほどなりやすい病気です。高齢の人が増えれば、ひとりひとりのなりやすさが同じでも、がんの人数は増えます。
そこで、年齢構成の違いを取り除いて比べるのが年齢調整死亡率です。肺がんの年齢調整死亡率(男女計)は、1996年の27.4をピークに下がり、2024年は19.9になりました(27%低い)。
| 1975年 | 1996年 | 2024年 | |
|---|---|---|---|
| 肺がんの死亡数 | 14,759人 | 48,041人 | 75,569人 |
| そのうち75歳以上の割合 | 23% | 43% | 70% |
| 年齢調整死亡率(男女計) | 16.9 | 27.4 | 19.9 |
もし、2024年の人口に1996年の年齢別の死亡率をそのまま当てはめると、肺がんの死亡数は約9万2千人になる計算です。実際の2024年の死亡数は約7万6千人でした。つまり、年齢ごとに見た肺がんのなりやすさ(亡くなりやすさ)は下がっていて、人数が増えたのは、高齢の人が大きく増えたためです。
② 時間差:喫煙の影響は20年以上たってから出る
たばこを吸いはじめてから肺がんになるまでには長い時間がかかります。英国や米国のように喫煙率がピークを過ぎた国では、男性の肺がんの率は喫煙率と同じ形で動き、20〜25年遅れて下がりはじめたとされています(Shong 2025 の総説)。日本の研究でも、喫煙を始めてから肺がんで亡くなるまでの「長い時間差」が指摘されています(Funatogawa 2013)。
年齢別に見ると、この時間差がよく分かります。
| 男性の肺がん死亡率(10万人あたり) | 1975年 | 1996年 | 2015年 | 2024年 | 1996年からの変化 |
|---|---|---|---|---|---|
| 50〜54歳 | 20.8 | 29.2 | 20.0 | 12.3 | −58% |
| 60〜64歳 | 79.7 | 98.9 | 88.2 | 56.0 | −43% |
| 70〜74歳 | 210.5 | 319.8 | 252.1 | 226.7 | −29% |
| 80〜84歳 | 191.7 | 580.0 | 503.4 | 440.0 | −24% |
| 85歳以上 | 127.4 | 603.5 | 723.9 | 565.5 | −6% |
(国立がん研究センター がん統計から計算)
- 50〜60歳代では、1996年から大きく下がりました。たばこを吸う人が減った世代です
- 85歳以上では2015年まで上がり続け、その後ようやく下がりはじめました。喫煙率が80%前後だった時代に大人だった世代が、この年齢に入ってきたためと考えられます
- 大阪府のがん登録の研究でも、肺がんの罹患率は生まれた年代ごとに見ると「喫煙率とほぼ並行している」と報告されています(Toyoda 2008)
「いま喫煙者が減っていても、肺がんがすぐに減らない」のは、たばこの害が出るまでに時間がかかるためです。いまの肺がんの多くは、数十年前の喫煙を反映しています。
③ 見つかる肺がんがふえた:とくに早い段階の腺がん
亡くなる人だけでなく、新たに肺がんと診断される人の数も見てみます。
| 1975年 | 1996年 | 2015年 | 2023年 | |
|---|---|---|---|---|
| 新たに肺がんと診断された人 | 17,672人 | 59,741人 | ― | 123,989人 |
| 年齢調整罹患率(男性) | 33.2 | 58.5 | 61.9 | 56.9 |
| 年齢調整罹患率(女性) | 10.2 | 16.9 | 25.3 | 25.3 |
(人口10万あたり。2015年までは全国推計値、2016年からは全国がん登録の値で、集め方が違います。2016〜2023年の罹患数は年12万〜12万6千人でほぼ横ばい)
- 女性の年齢調整罹患率は1975年から2015年までに約2.5倍になりましたが、年齢調整死亡率は8.3から11.1(約1.3倍)にとどまっています
- 日本の3つのがん登録をまとめた研究(Nguyen 2022、1993〜2015年)では、がんが肺の中にとどまっている早い段階の腺がんが、男性で年4.5%、女性で年5.7%のペースで増えていました。著者は、検査(診断の方法)が進歩して見つけやすくなったことが関係している可能性を挙げています
- 台湾では、たばこを吸う女性が5%未満なのに、低線量CT検査が広まると、早い段階の肺がんが6倍以上に増えました。一方、進んだ段階の肺がんは減らず、死亡率も変わらなかったため、増えた分のほとんどは「過剰診断」(命にかかわらないがんを見つけていること)と分析されています(Gao 2022)
新たに見つかる肺がんが増えたことには、病気そのものの増加だけでなく、見つけ方の変化も含まれています。
④ 喫煙と関係の薄い肺がん:タバコを吸わない人の肺がん
肺がんは「喫煙者の病気」と思われがちですが、吸わない人もかかります。
- 日本の3つの大規模な追跡研究をまとめた JACC 研究では、肺がんで亡くなった人のうち喫煙が原因と考えられる割合は、男性で67%、女性で15%でした(Wakai 2005)
- 手術を受けた日本の非小細胞肺がんの患者876人を調べた研究では、435人(約半数)がたばこを吸ったことのない人でした(Kawaguchi 2016)
喫煙者が減れば、肺がんのうち「吸わない人の肺がん」が占める割合は大きくなります。吸わない人の肺がんの原因は、次の章で見ます。
分析のまとめ
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| 肺がんは増えている? | 人数は増えたが、同じ年齢で比べた死亡率は1996年から下がっている |
| なぜ人数が増えた? | 高齢化。肺がんで亡くなる人の7割が75歳以上 |
| なぜ喫煙率ほど早く減らない? | 喫煙の影響は20年以上遅れて出る。たばこを多く吸った世代がいま高齢 |
| 新たに診断される人が多いのは? | 高齢化に加えて、CT などで早い段階の腺がんが見つかるようになった |
| タバコは関係ない? | 関係ある。男性の肺がん死亡の約3分の2は喫煙による。年齢別の死亡率は喫煙率の低下に遅れて下がっている |
肺がんの種類と、喫煙との関係
肺がんは、顕微鏡で見たがん細胞の形(組織型)で分けられます。国立がん研究センターによると、腺がんは女性や吸わない人にも多く、扁平上皮がんと小細胞がんは喫煙との関連が強いとされています。
| 種類 | 特徴 | 喫煙との関係 |
|---|---|---|
| 腺がん | いま最も多い。肺の奥(末梢)にできやすい。女性や吸わない人にも多い | ある(喫煙でリスクは上がる)が、ほかの種類より弱い |
| 扁平上皮がん | 太い気管支(肺の入口近く)にできやすい | とても強い |
| 小細胞がん | 増えるのが速く、転移しやすい | とても強い |
| 大細胞がん | 数は少ない | ある |
喫煙でリスクが何倍になるか
| 研究 | 対象 | 扁平上皮がん | 小細胞がん | 腺がん |
|---|---|---|---|---|
| Wakai ら(2006年) | 日本人の研究22件のまとめ。たばこを吸う人と吸わない人の比較 | 男性 11.7倍、女性 11.3倍 | ― | 男性 2.3倍、女性 1.4倍 |
| Pesch ら(2012年) | ヨーロッパ・カナダの症例対照研究のまとめ(患者13,169人)。1日30本を超えて吸う男性 | 約104倍 | 約111倍 | 約22倍 |
(Pesch らの数字はオッズ比。日本人は欧米人より、喫煙による肺がんのリスクの上がり方が小さいことが知られています)
- 日本人の研究をまとめると、たばこを吸う人の肺がん全体のリスクは、吸わない人の男性で約4.4倍、女性で約2.8倍です(Wakai 2006)
- Pesch らの研究では、禁煙すると早くからリスクが下がりはじめましたが、35年たっても吸わない人と同じにはならなかったと報告されています
喫煙者が減って、種類の割合が変わった
- 大阪府のがん登録では、1990年代から扁平上皮がんと小細胞がんの罹患率は下がり、腺がんは上がり続けていました(Toyoda 2008)
- 日本の3つのがん登録(1993〜2015年)では、腺がんは男性の肺がんの35%、女性の58%を占め、どちらでもいちばん多い種類でした。男性では扁平上皮がん・小細胞がんが減っていました(Nguyen 2022)
- 国の肺がん検診のガイドライン(2025年度版)も、喀痰(たん)の検査で見つけていた肺の入口近くの扁平上皮がんが、喫煙率の低下で減っていることを理由に、たんの検査を勧めない判断をしています
「フィルターつきの軽いたばこ」と腺がん
たばこを吸う人の中でも、腺がんの割合が増えてきました。米国公衆衛生総監の報告書(2014年)は、フィルターの小さな穴(通気孔)でタールの測定値を下げたたばこが、喫煙者の腺がんの増加を招いたと結論しています(Song 2017 による紹介)。
- 「軽い」たばこだと思って、深く、たくさん吸い込むようになる
- 煙が肺の奥まで届き、腺がんができやすい場所に当たる
と考えられています。「軽いたばこなら安全」ではありません。
タバコを吸わない人の肺がん:何が関係しているか
| 要因 | 分かっていること | 評価 |
|---|---|---|
| 受動喫煙 | 日本人の研究のまとめで、家庭で受動喫煙がある人は肺がんが1.28倍(Hori 2016)。夫がたばこを吸う女性は、腺がんが2.03倍(JPHC 研究、Kurahashi 2008) | 国立がん研究センター:確実 |
| 職場のアスベスト | 建材・造船などで吸い込んだ石綿 | 国立がん研究センター:ほぼ確実 |
| 大気汚染(PM2.5) | PM2.5 が 10μg/m³ 高いごとに肺がんが16%多い(追跡研究15件、Ciabattini 2021) | 研究多数。東アジアの研究で関係が強め |
| ラドン | 土や岩から出る放射性の気体。吸わない人の肺がんで、100Bq/m³ ごとに15%多い(Cheng 2021) | 世界では吸わない人の肺がんの主な原因とされる |
| 調理の煙 | 調理の油煙を浴びる女性で約2倍、換気の悪い台所で1.2倍(観察研究23件のまとめ、Jia 2018) | 観察研究が中心 |
| 家族歴・体質 | 東アジアの吸わない女性の腺がんには、EGFR 遺伝子の変異が多い(Mitsudomi 2014) | 変異そのものは喫煙と関係なく起きるとされる |
| 肺結核 | 過去の結核 | 国立がん研究センター:可能性あり |
- 健康な人の肺の組織にも、EGFR 遺伝子の変異をもつ細胞がある程度あり(調べた組織の18%)、PM2.5 がその細胞に働いてがんを促す、という仕組みが報告されています(Hill 2023、Nature)
- 日本の非喫煙女性の研究では、閉経の時期などホルモンに関わる要因と腺がんとの関係も報告されています(Wilunda 2021)
加熱式たばこはどうか
2024年の国の調査では、たばこを吸う人の4割以上(男性41.4%、女性44.2%)が加熱式たばこを使っています。
厚生労働省の研究班は、2010〜2025年の論文を整理し、2026年5月に「加熱式たばこに関するこれまでの知見の整理」として公表しました。
| 項目 | 研究班の整理 |
|---|---|
| 主流煙の成分 | 一酸化炭素・多環芳香族炭化水素など燃焼でできる物質は、おおむね紙巻たばこより少ない。一方、発がん物質のたばこ特異的ニトロソアミン(TSNAs)やアクリルアミドなど、製品によっては紙巻たばこより多い物質もある |
| 発がん物質のリスク評価 | NNK・ベンゾ(a)ピレンなどは「がんの過剰発生率が高い」判定。NNK とベンゾ(a)ピレンは肺がんとの関連があり、リスクが強く懸念される |
| 使う人の病気との関係 | 循環器の病気・ニコチン依存は「関連が強い」。発がん(肺がんを含む)・COPD は「判定できない」(発がんそのものを直接調べた研究がない) |
| 受動喫煙 | 空気中の有害物質は増える。発がん性は「判定できない」 |
「判定できない」は「安全」という意味ではありません。加熱式たばこが広まってからまだ年月が短く、肺がんのように何十年もかかる病気との関係は、調べられるだけの時間がたっていません。
なお、研究班はたばこ会社が行った研究・資金を出した研究を判定の対象から外しています。
肺のためにできること:根拠の強さ別
「肺にいい」と言われる行動・食べもの・習慣を、国と国際機関の評価の強さで並べました。
根拠がはっきりしているもの
| 行動 | 分かっていること |
|---|---|
| 禁煙(何歳からでも) | 日本の男性の研究で、60歳代でやめても、70歳代での肺がん死亡率は吸い続けた人の0.60倍(Wakai 2007)。やめてからの年数が長いほどリスクは下がる。アジアの16の追跡研究では、やめて15〜19年後もまだ吸わない人の約2倍で(Yang 2022)、早くやめるほどよい |
| 受動喫煙を避ける | 国立がん研究センターの評価で「確実」にリスクを上げる。家の中・車の中で吸わない・吸わせない |
| 職場の粉じん・アスベスト対策 | 国立がん研究センターの評価で「ほぼ確実」。解体・改修工事などでは防じんマスクなど職場の決まりを守る |
| 肺がん検診 | 40〜79歳は年1回の胸部X線検査。50〜74歳で喫煙指数(1日の本数×年数)が600以上の人(やめて15年以内の人を含む)は、年1回の低線量CTが勧められる(国立がん研究センター ガイドライン2025年度版)。吸わない人・軽い喫煙者の CT は、国の検診としては勧められていない(過剰診断などの不利益が大きい可能性) |
肺の働き(肺機能)も同じで、たばこをやめた人は、吸い続けている人より肺機能の低下が小さく、低下の上乗せ分は吸い続けている人の約2割でした(米国の6つの追跡研究、Oelsner 2020)。一方で、やめた後も数十年にわたって、まったく吸わない人よりは低下がやや速いことも分かっています。
可能性があるもの(研究が限られる)
| 食べもの・習慣 | 評価 |
|---|---|
| 果物 | 国立がん研究センター:可能性あり(リスクを下げる)。WCRF:たばこを吸う人・やめた人で「リスクを下げる可能性(限定的)」 |
| 野菜 | 国立がん研究センター:データ不十分。WCRF:たばこを吸う人・やめた人で「リスクを下げる可能性(限定的)」 |
| カロテノイドを含む食べもの(緑黄色野菜など) | WCRF:リスクを下げる可能性(限定的) |
| ビタミンCを含む食べもの | WCRF:たばこを吸う人で、リスクを下げる可能性(限定的) |
| 大豆などイソフラボンを含む食べもの | WCRF:吸わない人で、リスクを下げる可能性(限定的)。国立がん研究センター:データ不十分 |
| 運動 | WCRF:リスクを下げる可能性(限定的)。国立がん研究センター:データ不十分 |
- 果物・野菜:追跡研究のまとめでは、1日100g ふえるごとに肺がんが果物で8%、野菜で6%少なく、1日400g くらいを超えると、それ以上は差がなかったと報告されています(Vieira 2016、WCRF のための解析)。ただし、関係ははっきりしているのは主にたばこを吸う人・やめた人で、著者も「喫煙の影響を取り除ききれていない可能性がある」「肺がんを防ぐいちばんの方法はたばこをなくすこと」としています
- 運動:余暇の運動が多い人は肺がんが24%少ないという結果ですが、吸わない人では差がありませんでした(Brenner 2016)
- 食事全体:野菜・果物・魚が多い食事で肺がんが少なく、精製穀物・赤肉・加工肉が多い「欧米型」の食事で32%多い、というまとめがあります(Zhao 2023)
これらは「どんな食事の人に肺がんが少なかったか」を調べた観察研究です。「〇〇を食べれば肺がんを防げる」とまでは言えません。
避けたいもの
| 食べもの・習慣 | 評価 |
|---|---|
| β-カロテンのサプリメント(高用量) | WCRF:たばこを吸う人・やめた人で、肺がんのリスクを上げる(確実) |
| 飲料水のヒ素 | WCRF:肺がんのリスクを上げる(確実)。日本の水道水は水質基準で管理されている |
| 赤肉・加工肉・お酒 | WCRF:リスクを上げる可能性(限定的)。国立がん研究センター:データ不十分 |
β-カロテンは、野菜や果物から食べる分には問題になっていません。問題になったのはサプリメントで大量にとった場合です。
- フィンランドの喫煙男性29,133人の試験(ATBC):β-カロテン1日20mg のサプリで、肺がんが18%多くなりました
- 米国の喫煙者・アスベスト作業者18,314人の試験(CARET):β-カロテン30mg+ビタミンA で、肺がんが28%多く、予定より早く試験が中止されました
- ランダム化試験をまとめた研究でも、β-カロテンのサプリで肺がんが19%多く、著者は「がん予防のためにβ-カロテンのサプリはすすめられない」としています(Zhang 2023)
「肺にいい成分」をサプリで足すより、たばこをやめることのほうが、はるかに大きな違いになります。
たばこをやめたい人へ
やめ方と、研究で分かっていること
| 方法 | 分かっていること |
|---|---|
| 禁煙外来(医療機関) | 条件を満たせば健康保険で治療を受けられる(ニコチン依存のテストが5点以上、35歳以上は1日の本数×年数が200以上、すぐに禁煙したい、文書で同意)。飲み薬(バレニクリン)とニコチンパッチなどを使う。バレニクリンは、何も使わない場合より禁煙できる人が多い(オッズ比2.33、コクランの解析 Lindson 2023) |
| ニコチンパッチ・ニコチンガム(薬局・通販) | ニコチンを少しずつ補って、禁煙中のイライラなどをやわらげる薬。何も使わない場合より禁煙できる人が約1.5倍(試験133件、6万4千人のまとめ、Hartmann-Boyce 2018) |
| 禁煙本・講習 | アレン・カー式の1日講習は、英国の標準的な禁煙支援(カウンセリング+薬)と同じくらいの禁煙率(26週で19.4%と14.8%、はっきりした差なし、Frings 2020)。ただし本を読むだけの効果を調べた研究は少ない(Possenti 2023) |
- ニコチンパッチ・ガムは医薬品です。妊娠中・授乳中の人、重い心臓病、急性期の脳卒中、うつ病と診断されたことがある人などは使えません。持病のある人や薬を飲んでいる人は、医師・薬剤師に相談してください
- ニコチンパッチ(第1類医薬品)は、ネットで買うときも薬剤師の確認があります
- たばこを吸う人が禁煙中に加熱式たばこに切りかえることは、上の「禁煙」には当たりません
禁煙補助薬と本(楽天市場)
| ニコチンパッチ | ニコチンガム | 本 | |
|---|---|---|---|
| 名前 | ニコチネル パッチ20(14枚) | ニコレット(96個) | 禁煙セラピー(アレン・カー) |
| 区分 | 第1類医薬品 | 指定第2類医薬品 | 書籍 |
| 使い方(添付文書) | 1日1回1枚を起床時から就寝時まで貼る。最初の6週間はパッチ20、次の2週間はパッチ10。連続8週間まで | 吸いたくなったとき1個を30〜60分かけてかむ。1日24個まで。使用期間は3か月をめど | 読む |
| 価格(税込) | 3,361円(送料別) | 5,820円 | 1,500円 |
| お店 | サンドラッグ | 楽天24 ヘルスケア館 | 楽天ブックス |
| 購入 | 楽天市場で見る(サンドラッグ) PR | 楽天市場で見る(楽天24) PR | 楽天市場で見る(楽天ブックス) PR |
(2026年9月29日に楽天市場の販売ページで確認。価格・送料は変わることがあります。医薬品は使用上の注意をよく読み、用法・用量を守ってください)
ご注意 ニコチンパッチ・ガムの効能・効果は「禁煙時のイライラ・集中困難・落ち着かないなどの症状の緩和」です。肺がんを防ぐ薬ではありません。禁煙がうまくいかないときは、禁煙外来で相談できます。
果物・野菜をふだんの食事に
果物は、国立がん研究センターの評価で肺がんのリスクを「下げる可能性あり」とされる、数少ない食べものです。研究では1日400g くらいまでで差が出ていました(Vieira 2016)。国の「健康日本21」の目標は、野菜が1日350g、果物が1日200g です。
毎日の買い物で野菜・果物をそろえるのが難しい人には、食材宅配のおためしセットで量と中身を確かめる方法もあります。各社の基準や料金の違いは食材宅配の比較記事にまとめています。
ご注意 食材宅配で肺がんを防げるわけではありません。果物・野菜の研究は観察研究で、とくにたばこを吸う人・やめた人で関係が見られたものです。たばこを吸う人にとっていちばん大きいのは、禁煙です。
まとめ
- 肺がんで亡くなる人数は高齢化で増えましたが、同じ年齢で比べた死亡率は1996年から下がっています
- 喫煙の影響は20年以上遅れて出ます。たばこを多く吸った世代がいま高齢になり、肺がんの年齢を迎えています
- 肺がんのうち、扁平上皮がん・小細胞がんは喫煙との関係がとても強く、喫煙者の減少とともに減っています。いちばん多い腺がんは、吸わない人にも多く、受動喫煙・大気汚染・ラドン・体質なども関係します。検査で早い段階の腺がんが見つかるようになったことも、新たに診断される人が多い理由のひとつです
- 加熱式たばこと肺がんの関係は、まだ「判定できない」段階です
- 肺のためにできることで確かなのは、禁煙(何歳からでも)と受動喫煙を避けること。果物・野菜・運動は「可能性あり」の段階で、β-カロテンのサプリは喫煙者では逆効果です
- 喫煙指数600以上の50〜74歳(やめて15年以内を含む)は、年1回の低線量CT検診が勧められています
参考にした資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」集計表(全国がん死亡 1958〜2024年、全国がん罹患 1975〜2015年、全国がん登録 2016〜2023年)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 基礎知識」https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html
- 国立がん研究センター がん対策研究所「がんのリスク・予防要因 評価一覧」ver.20260526 https://epi.ncc.go.jp/can_prev/outcome/index.html
- 国立がん研究センター「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2025年度版 https://canscreen.ncc.go.jp/guideline/lung_guideline2025.pdf
- 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
- 厚生労働省 第5回受動喫煙対策専門委員会 資料3「加熱式たばこに関するこれまでの知見の整理」(2026年5月21日)https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001702543.pdf
- JT「全国たばこ喫煙者率調査」(1965〜2018年。健康ネットの転載表 https://www.health-net.or.jp/tobacco/statistics/jt.html )
- World Cancer Research Fund / AICR「Diet, nutrition, physical activity and lung cancer」(CUP、2017年、2018年改訂)https://www.wcrf.org/wp-content/uploads/2024/10/lung-cancer-report.pdf
- Wakai K ら(2006)Jpn J Clin Oncol. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16735374/
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