食品の重金属データベース海藻確認日 2026.10.03
ひじきのヒ素
乾燥ひじきは、海藻の中でとくに無機ヒ素(体への影響がより問題にされる形のヒ素)が多い食品です。農水省の調査(2006〜08年度、299点)で、乾燥の無機ヒ素は平均67 mg/kgでした。水戻しやゆでこぼしで大きく減るという農水省の試験があり、英国・カナダ・香港・豪NZは「避ける」、日本は「バランスよく、減らして食べる」と助言が分かれています。
日本の公的調査などで測った値
| 金属 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 | 検体数 | 調査 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヒ素 | 無機ヒ素・乾燥 | 67(中央値68) | 4.5〜130 | 299点 | 農水省 2006〜08年度 |
| ヒ素 | 総ヒ素・乾燥 | 93(中央値92) | 28〜160 | 299点 | 農水省 2006〜08年度 |
| ヒ素 | 無機ヒ素・水戻し後(農水省の表の品目名は「水戻し物」) | 3.6(中央値3.2) | <0.5〜17 | 71点 | 農水省 2006〜08年度 |
| ヒ素 | 総ヒ素・水戻し後(農水省の表の品目名は「水戻し物」) | 6.0(中央値5.5) | 2.1〜20 | 71点 | 農水省 2006〜08年度 |
単位は mg/kg(=ppm)。乾燥は乾燥重量、水戻し後のひじき(農水省の表では「水戻し物」)は戻した後の重さあたりの値です。調べた品目・点数が違うので、乾燥から水戻し品への換算には使えません(食品安全委員会も「試料の状態の違いで結果が大きく異なる」と書いています)。
食べる量の目安(国の注意事項)
- 厚労省(2004年7月):極端に多く食べるのではなく、バランスのよい食生活を心がければ、健康上のリスクが高まることはない(英国の勧告を受けた Q&A。計算の根拠にした耐容量は、のちに撤回されています)
- 食品安全委員会(2013年12月):食品を通じたヒ素の摂取の現状に問題があるとは考えていない。特定の食品に偏らず、バランスのよい食生活を
- 農水省:ひじきをより安全に食べるため、水戻し・ゆでこぼしを勧める。戻し水は調理に使わない
基準値(日本・国際・EU)
| 定めた機関 | 基準値 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本(食品衛生法) | 基準なし | 食品衛生法にひじき・米の無機ヒ素の基準値は見当たりません(法令の条文まで確認したわけではありません)。農水省は減らす調理法を公表しています |
| Codex(国際基準) | ひじきの基準なし | 厚労省の Q&A(2004年)が「ひじきの国際基準は無い」としています |
| EU(規則 2023/915) | ひじき固有の基準は確認できず | 海藻の項目は確認していません(未確認) |
| 豪NZ(FSANZ) | 海藻の無機ヒ素 最大 1 mg/kg(1991年から) | 2004年に「避ける」と助言。輸入検査で28検体中6検体が不合格(22〜92 mg/kg) |
| 香港(食物環境衛生署) | ヒ素(As2O3として)1.4 ppm | 2004年11月の監視で法定基準の超過を確認。「ひじきを食べない、食材に選ばない」と助言 |
知っておきたいこと
- 乾燥と水戻し後で濃度が大きく違います。乾燥は無機ヒ素が平均67 mg/kg、水戻し後のひじき(農水省の表では「水戻し物」)は平均3.6 mg/kg(71点)です。表示や献立の量が「乾燥の重さ」か「戻した後の重さ」かで、数字の読み方が変わります。
- ひじきは総ヒ素のうち無機ヒ素が約7割(67÷93)と大きい海藻です。昆布・わかめ・のりは、乾燥の無機ヒ素が調べた各100点すべて定量限界(0.5 mg/kg)未満でした。海藻なら何でも同じ、ではありません。
- 各国の助言は割れています。英国 FSA(2004年に勧告、2010年に再確認)・カナダ CFIA(2001年)・香港(2004年)・豪NZ(2004年)は「避ける」、日本の厚労省・農水省・食品安全委員会は「バランスよく食べれば問題ない。減らす調理を」です。各国当局が理由を比べて説明している文書は見つかりませんでした。
- 厚労省 Q&A(2004年)の「毎日4.7 g(週33 g)以上食べ続けない限り超えない」という計算は、国際機関(JECFA)が2010年に撤回した耐容量(15 μg/kg体重/週)に基づくものです。Q&A が更新されたかは確認できていないため、今の評価として読まないほうがよい数字です。
- 「これ以下なら安全」という耐容量を出している機関は、今はありません。JECFA は2025年の再評価で虚血性心疾患を根拠に 0.3 μg/kg体重/日を、EFSA は2024年に皮膚がんを根拠に 0.06 μg/kg体重/日を参照点にしました。日本の食品安全委員会は2013年に耐容摂取量を設定せず、「通常の食生活で健康影響を示すデータはなく、現状に問題があるとは考えていない」としています。基準の選び方で見え方が変わります。
- 食べる頻度で摂取量は大きく変わります。確率論的な推計(Oguri ら、2014年)では米とひじきから摂る可給態(体内に取り込まれうる)無機ヒ素の推計で、中央値19 μg/日・95パーセンタイル59 μg/日、中央値では米とひじきの寄与が同程度、高摂取になるほどひじきの寄与が大きくなりました。14世帯の調理済みひじき(湿重量)の分析(Nakamura ら、2008年)では無機ヒ素は 0.4〜2.8 mg/kg、平均摂取は6.5 g/日(月に2〜3回食べる世帯が多い)でした。
- 鉄釜かステンレス釜かで無機ヒ素の減り方が違うか、公的なデータは見つかりませんでした。もずく・あらめなど、ひじきと同じホンダワラ科などの海藻についても、日本の公的な調査値は見つかりませんでした(FSANZ は「ホンダワラ科の他の種に、ひじきを上回る無機ヒ素のものがある」と書いていますが、原典は未確認です)。
家庭で減らす方法(試験で示されたこと)
- 水戻し:乾燥ひじき20 gを常温の水600 ccに30分つけ、戻し水を捨てて流水で20秒洗う。無機ヒ素は約5割減(所要約30分)
- ゆで戻し:乾燥ひじき20 gを水600 ccから強火にかけ、沸騰後は弱火で5分、湯を捨てて水洗い。約8割減(所要約20分)
- ゆでこぼし:30分水戻し→戻し水を捨てる→新しい湯600 ccで沸騰後5分→湯を捨てて水洗い。約9割減(所要約40分)
- 鉄・カルシウム・食物繊維は、どの方法でも7割以上残りました(農水省の2014年度の試験。検体数や平均値の表は公表資料になく、減少率は「程度」の表記です)
- 戻し水は調理に使わない(農水省の推奨)。水戻しでの総ヒ素の溶出は平均58%(20〜90%、市販150点、水40倍量・20℃・30分)でした
関連する解説
金属ごとのページ
出典
- 農水省「食品に含まれるヒ素の実態調査」(2025年12月更新)
- 農水省「ヒジキの無機ヒ素を減らす調理法」調査結果(2014年度)
- 厚生労働省「ひじき中のヒ素について」Q&A(2004年7月30日)
- 食品安全委員会「食品健康影響評価 ヒ素」(2013年12月)
- EFSA CONTAM「食品中の無機ヒ素」科学的意見(2024年)
- FSANZ「Hijiki seaweed and inorganic arsenic」
- Nakamura Y ほか. J Agric Food Chem 2008(調理済みひじきの無機ヒ素)(PMID 18324769)
- Oguri T ほか. 日本衛生学雑誌 2014(無機ヒ素摂取量の確率論的推計)(PMID 25253519)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。