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食品の重金属データベース解説確認日 2026.10.03

重金属の基準は日本と海外でなぜ違う? 日本・Codex・EUの基準と耐容量の一覧

日本にある基準、Codex(国際食品規格)とEUの基準、耐容摂取量の物差しを、一つの表に並べます。「基準なし」は、調べた範囲で見つかっていないという意味です。

結論

日本の食品の重金属の基準は、米(カドミウム0.4 mg/kg)、清涼飲料水、魚介類の水銀の暫定的規制値など、限られています。米の無機ヒ素、鉛の食品別の基準は、調べた範囲で見つかりませんでした。

Codex は食品ごとに最大基準値を置き、EU(規則2023/915)はさらに細かく、カドミウムだけで21区分に上限があります。スパイスの鉛は、EU が基準を置いており、Codex も2024年から乾燥スパイスの鉛の最大基準値を順次採択しています(日本には基準がありません)。

耐容摂取量も機関で違います。水銀は3.4・2.0・1.6・1.3、カドミウムは7・約5.8・2.5と、同じ摂取量が、物差しによって29%にも81%にも見えます。基準は「安全か危険か」の線ではなく、根拠と目的を確かめて読む必要があります。

日本にある基準

対象基準備考
米(玄米・精米)のカドミウム0.4 mg/kg 以下食品衛生法。2011年2月末施行。それ以前は玄米1.0 ppm 未満(1970年)
魚介類の水銀総水銀0.4・メチル水銀0.3 ppm暫定的規制値(1973年の通知)。マグロ類・河川産・深海性魚介類等は適用しない
清涼飲料水(ミネラルウォーター類を除く)ヒ素・鉛は検出されてはならない(金属製容器包装入りはスズ150.0 ppm 以下)食品、添加物等の規格基準
ミネラルウォーター類カドミウム0.003・鉛0.05・ヒ素0.05 mg/L 以下厚労省『清涼飲料水の成分規格』。水道水質基準のカドミウムも0.003 mg/L(農水省のリスクプロファイル)
水道水鉛0.01・ヒ素0.01・カドミウム0.003・水銀0.0005 mg/L水質基準(平成15年厚労省令第101号)
陶磁器の溶出規格容量1.1L未満で鉛2 μg/mL・カドミウム0.5(4%酢酸、24時間)2008年7月31日の告示416号で強化。2009年8月1日以降の製造・輸入品に適用
米・ひじき・魚介類の無機ヒ素、食品別の鉛基準なし食品安全委員会の評価書の表と農水省の資料を読んだ範囲

日本・Codex・EUを並べる(mg/kg)

「なし」は、調べた範囲で見つかっていないという意味です。Codex は農水省のページの抜粋、EU は規則2023/915の初版(その後改正あり)で確認しました。

食品金属日本CodexEU
精米カドミウム0.40.40.15
精米無機ヒ素なし0.20.15
玄米無機ヒ素なし0.350.25
米菓無機ヒ素なし—0.30
乳幼児用の米無機ヒ素なし—0.10
魚介類水銀総水銀0.4・メチル水銀0.3(暫定。マグロ類等は適用外)メチル水銀0.5(高次捕食魚1)0.50(マグロ・サメ・メカジキなど1.0、イカ・サバ・サケなど0.30)
魚(筋肉)鉛なし0.30.30
魚(筋肉)カドミウムなし—0.050(サバ・マグロ類0.10、メカジキ・イワシ0.25)
二枚貝カドミウムなし2(カキ・ホタテを除く)1.0
葉菜類鉛なし0.3(ホウレンソウを除く)0.30
ほうれんそうカドミウムなし0.2(葉菜類)0.20
小麦カドミウムなし0.20.10(穀類一般)
ココア粉末カドミウムなし2.00.60(消費者向け)
チョコ(カカオ固形分50%以上)カドミウムなし0.8(50〜70%)・0.9(70%以上)0.80
乳児用調製乳鉛なし0.010.020(粉末)/0.010(液状)
乾燥スパイス(樹皮)鉛なし2024年から順次採択(数値は載せていません)2.0(根・根茎1.50)
果実ジュース鉛検出されてはならない(清涼飲料水)0.030.030
水道水・ミネラルウォーター鉛水道水0.01/ミネラルウォーター類0.05 mg/L0.01 mg/L(ナチュラルミネラルウォーター)—

日本が基準を置かない理由と、EU が増やしてきた理由

  • カドミウム:米以外に基準を置かない理由として、消費者庁は、米以外は摂取量が少なく、基準を作っても低減の効果が小さいこと、生産段階の対策と実態調査で対応する方針であることをあげています。
  • 水銀:マグロ類・河川産の魚介類・深海性魚介類等を暫定的規制値の対象から外した理由を書いた一次資料は、見つかっていません。代わりに、妊婦向けの目安量が個別に付いています。
  • EUは、上限を設ける食品を段階的に増やしてきました(カドミウムでは2014年と2021年)。子ども向けのチョコや乳児用食品を守る考え方が背景にあります。
  • 鉛:日本は食品衛生法で一般食品の鉛の基準値を置いていません(食品安全委員会 Q&A)。耐容量が設定できない物質であることも関係します。

耐容摂取量の物差し

金属機関(年)値
メチル水銀厚生省(1973年)/JECFA(2003年)/食品安全委員会(2005年)/EFSA(2012年)3.4/1.6/2.0/1.3 μg/kg/週
カドミウム食品安全委員会(2008年)/JECFA(2010年)/EFSA(2009年)7 μg/kg/週/25 μg/kg/月(週約5.8)/2.5 μg/kg/週
無機ヒ素JECFA(1988年→2010年撤回→2025年)/EFSA(2024年)/食品安全委員会(2013年)PTWI 15 μg/kg/週(撤回)→POD 0.3 μg/kg/日(2025年)/参照点0.06 μg/kg/日/設定せず
鉛JECFA(2010年)/EFSA(2010年)/食品安全委員会(2021年)PTWI 25 μg/kg/週を撤回/参照点0.50 μg/kg/日(発達神経毒性)/設定できず
  • 耐容量が設定できない物質があります。無機ヒ素と鉛では、閾値(これ以下なら影響がない量)が見いだせないとして、JECFA は旧い耐容量を撤回しました。代わりに EFSA は、影響が出始める量(参照点)と実際の摂取量の余裕(MOE)で評価します。
  • 水銀の最大と最小は約2.6〜2.9倍です。カドミウムは、根拠が違います(日本の疫学で直接決めた値と、尿中濃度から理論モデルで逆算した値)。

同じ摂取量が、物差しで何%にも見える

金属・年摂取量物差しごとの割合(ウラヨミの計算)
水銀(2024年)総水銀5.04 μg/日(全量メチル水銀・体重50kgと仮定)厚生省3.4に対して21%/JECFA 1.6に対して44%/食品安全委員会2.0に対して35%/EFSA 1.3に対して54%
カドミウム(2022年)2.03 μg/kg/週(体重55.1kg)食品安全委員会7に対して29%/JECFA(約5.8)に対して35%/EFSA 2.5に対して81%
無機ヒ素18.3 μg/日(2014〜17年度の平均)を体重60kgで割った0.305 μg/kg/日撤回された PTWI(約2.1)の約15%/JECFA 2010 の BMDL0.5(3.0)の約10分の1/JECFA 2025 の POD(0.3)とほぼ同じ/EFSA 2024 の参照点(0.06)の約5倍

厚労省も、近い摂取量を2003年には「暫定耐容量(3.4)の35%」、2010年には「妊婦の耐容量(2.0)の57%」と書きました。物差しが変わったためです。

日米で違う線引き:同じ魚、違う助言

メカジキの総水銀は、日本1.003(n=51)・米国0.995(n=636)で、ほぼ同じです。助言は、日本が週80gまで、米国(FDA/EPA 2021年)が「避ける」です。キハダは、日本が制限なし、米国が週1回です。日本は16種に量の目安を付け、米国は魚を3つに分類します。違いを説明した資料は、両国のものとも見つかっていません。詳しくは妊娠中の魚はどれだけ?にあります。

基準の読み方

  • 日本に基準がないものは、「基準を超えた」とは言えません。海外の物差しに当てるときは、「他国の基準に当てると」と書きます。
  • 基準値は、長期の平均摂取を想定した値です。米のカドミウムの0.4は、数十年の長期摂取を想定した値で、短期間基準を超えるものを食べても、長期の平均が高くならなければ問題にならない、というのが FAO/WHO の専門家会合の見解です(消費者庁)。ただし、基準を超えたものは流通させません。
  • 「日本の基準は世界一ゆるい」とは言えません。米のカドミウムは Codex(0.4)と同じで、EU は0.15です。日本が基準を持たない食品が多いのは事実なので、表で並べて読むのがよいでしょう。
  • 日本の調査(農水省の乳幼児用食品など)の中には、規格基準への適否を判断するものではなく、分析法も法定法と異なるものがあります。基準と並べて比べないようにします。

出典

最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。

重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。

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