食品の重金属データベース
食品に含まれる水銀・ヒ素・カドミウム・鉛が、どの食品にどれだけあり、国や国際機関がどう評価しているかを、公的機関・法令・論文の数字だけで並べたデータベースです。食品ごとの濃度、日本・Codex・EU の基準、耐容摂取量、日本人の摂取量の50年を載せています。「危険」「安全」とは断定せず、数字と、その限界を並べます。

いまわかっていること
- 日本人の食事からの摂取量は、1977年からの調査で下がっています。鉛は約96%減(約100→約4 μg/人/日)、カドミウムは半分以下、総水銀は約3分の1(15.0→5.04 μg/人/日)です。総ヒ素は2007年以降増え、無機ヒ素はほぼ一定です(日本人の重金属摂取の50年)。
- 金属ごとに、主な入り口が違います。水銀は魚介類(摂取の90.0%)、無機ヒ素は米(約7割)とひじき、カドミウムは米(約3割)と魚介類の内臓です。鉛は食品のほとんどが定量下限未満で、水道・器・缶・スパイスなど食べ物以外の入り口があります。
- 2024年の摂取量を耐容量と並べると、比が1を超えるのは無機ヒ素だけ(1.28〜1.80)です。ただし日本の食品安全委員会は、無機ヒ素と鉛の耐容量を設定しておらず、物差しの選び方で結論が変わります。
数字を読むときに
- 形態と状態を確かめてください。総ヒ素と無機ヒ素、総水銀とメチル水銀、乾燥ひじきと水戻し後では、数字が桁で違います。濃度は mg/kg(=ppm)の湿重量にそろえ、そうでないものは注記しています。
- 基準値は、安全と危険の線ではありません。日本に基準がない食品は「基準を超えた」とは言えず、耐容量も機関ごとに根拠が違います(水銀は週3.4〜1.3 μg/kg)。同じ摂取量が、物差しによって29%にも81%にも見えます(日本と海外の基準の違い)。
- 調査年と検体数に限りがあります。魚介類の水銀は平成20年度までの集計、魚介類のカドミウムは平成9〜14年度の調査で、検体が数件の食品は平均が不安定です。日本の公的データが見つからなかった食品は、数字を載せず、見つからなかったと書いています。

よくある疑問の解説
公的機関の資料と論文からわかることだけを整理
金属ごと
形のちがい、体への影響、耐容摂取量、日本人の摂取量、歴史
食品ごとの値
名前を押すと、測った値・基準値・家庭で減らす方法のページへ
魚11品
マグロ・カジキ・キンメダイなど、食物連鎖の上のほうにいる大きな魚ほどメチル水銀が多い
- クロマグロ(本マグロ)・ミナミマグロ水銀は魚の中で高めの群。妊婦向けの目安は、クロマグロが週1回まで、ミナミマグロが週2回まで
- メバチ国の目安は週1回まで(クロマグロと同じ)。メチル水銀の平均は 0.539 ppm(国内の集計)
- キハダ・ビンナガ・メジマグロ国の注意事項で「通常の摂食で差し支えない」とされるマグロ。ただし調査によって数字に幅がある
- ツナ缶水銀は平均 0.110 ppm と低め。国の注意事項でも通常の摂食で差し支えないとされる。ただし原料の魚種別の調査は見つからない
- カツオ水銀は低め。国の目安量の表になく、ライトのツナ缶の原料にもなる。ヒ素の公的な調査値は見つからなかった
- メカジキ・マカジキ国の目安は、メカジキが週1回まで、マカジキが週2回まで。メカジキの水銀は平均 1.003 ppm
- キンメダイ国の目安は週1回まで。深海魚で、暫定的規制値の適用除外。メチル水銀の平均は 0.535 ppm
- クジラ・イルカ一部のハクジラ類は水銀が桁違いに多い。バンドウイルカは2か月に1回まで。ヒゲクジラ類は低い
- サケ水銀は低い。国の目安量の表になく、米国の助言でも週2〜3回食べたい魚
- サバ水銀は低め。ヒ素は総量は多いが、ほとんどは魚に多い有機ヒ素。国の目安量の表になし
- イワシ・アジ・サンマ水銀は低い。ヒ素は総量が多いが無機ヒ素はわずか。イワシはジメチルアルシン酸の割合が高めだった
貝・イカ・カニ3品
身(筋肉)は低く、内臓(ホタテのうろ・イカの肝・カニみそ)にカドミウムが集まる
海藻4品
ひじきは無機ヒ素が多い。昆布・わかめ・のりのヒ素は大半が有機ヒ素
米・穀物・豆4品
日本人の無機ヒ素とカドミウムの最大の入り口は米
野菜・いも・茶3品
大半は定量下限に近い低い値。皮や茶葉など部位で違う
乳幼児の食品2品
ベビーフードと粉ミルク。体重あたりの摂取量が大人より多くなりやすい
そのほか5品
チョコレート・スパイス・缶詰・水道水・肉
- チョコレート・ココアカドミウムは平均0.20 mg/kg(最大2.3)。同じカカオ分でも製品で桁が違う
- ターメリック・シナモンなどのスパイス日本の公的な調査値・基準は見当たらない。EU には種類別の上限があり、Codex も順次採択している
- 果実の缶詰果実缶詰の鉛は2013年平均0.06→2016年0.02 mg/kgに低下。スズの摂取の98%は缶詰果実とたけのこ
- 水道水・ミネラルウォーター水道の基準は鉛・ヒ素とも0.01 mg/L。鉛製給水管は全国に192万件残る(令和5年度)
- 肉(牛・豚・鶏)筋肉のカドミウムは最大0.03〜0.07 mg/kg で低い。レバー・腎臓の日本の公的データは見つからない
主な食品×金属の基準値(日本・Codex・EU)
mg/kg。「なし」は、調べた範囲で見つかっていないという意味です。Codex は農水省のページの抜粋、EU は規則2023/915の初版(その後改正あり)で確認しました。解説は日本と海外の基準の違い。
| 食品 | 金属 | 日本 | Codex | EU(規則2023/915) |
|---|---|---|---|---|
| 精米 | カドミウム | 0.4(玄米・精米) | 0.4 | 0.15 |
| 精米 | 無機ヒ素 | なし | 0.2 | 0.15(パーボイル米を除く) |
| 玄米 | 無機ヒ素 | なし | 0.35 | 0.25(パーボイル米も) |
| 米菓 | 無機ヒ素 | なし | — | 0.30 |
| 乳幼児用の米 | 無機ヒ素 | なし | — | 0.10 |
| 魚介類 | 水銀 | 総水銀0.4・メチル水銀0.3(暫定的規制値。マグロ類・河川産・深海性魚介類等は適用しない) | メチル水銀0.5(高次捕食魚は1) | 0.50(マグロ・サメ・メカジキなど1.0、イカ・サバ・サケなど0.30) |
| 魚(筋肉) | 鉛 | なし | 0.3 | 0.30 |
| 魚(筋肉) | カドミウム | なし | — | 0.050(サバ・マグロ類0.10、メカジキ・イワシ0.25) |
| 葉菜類 | 鉛 | なし | 0.3(ホウレンソウを除く) | 0.30 |
| ほうれんそう | カドミウム | なし | 0.2(葉菜類) | 0.20 |
| 小麦 | カドミウム | なし | 0.2 | 0.10(穀類一般) |
| ココア粉末 | カドミウム | なし | 2.0 | 0.60(消費者向け) |
| チョコ(カカオ固形分50%以上) | カドミウム | なし | 0.8(50〜70%)・0.9(70%以上) | 0.80 |
| 乳児用調製乳 | 鉛 | なし | 0.01 | 0.020(粉末)/0.010(液状) |
| 乾燥スパイス(樹皮) | 鉛 | なし | 2024年から順次採択(数値は CXS 193 で確認中) | 2.0(根・根茎1.50) |
| 果実ジュース | 鉛 | 検出されてはならない(清涼飲料水) | 0.03 | 0.030 |
| 水道水 | 鉛 | 0.01 mg/L(水道法の水質基準) | — | — |
| ミネラルウォーター類 | 鉛 | 0.05 mg/L(食品衛生法) | 0.01 mg/L(ナチュラルミネラルウォーター) | — |
水銀の Codex は、1991年のガイドライン(メチル水銀0.5、高次捕食魚1)です。Codex は2022年に捕食魚6種の最大基準値(マグロ1.2など)も採択していますが、原文を確認できていません。スパイスの鉛は、日本には基準がなく、EU が置いています。Codex は2024年から乾燥スパイスの鉛の基準を順次採択しています(樹皮・料理用ハーブは2025年の部会で承認、総会での最終採択は今後)。
2024年の4金属の摂取量と、耐容量との比
日本人の平均的な食事からの推定摂取量(トータルダイエットスタディ、体重55kg)を、機関ごとの耐容量と並べた表です。比は摂取量÷耐容量で、1を超えるとその物差しの耐容量を上回ります。解説は日本人の重金属摂取の50年。
| 金属 | 推定摂取量 | 比べた物差し | 比・余裕 |
|---|---|---|---|
| 無機ヒ素 | 0.39 μg/kg/日(21.2 μg/人/日) | 米国 EPA の RfD 0.3 μg/kg/日、EFSA 2005 の暫定 TWI 1.5 μg/kg/週、JECFA の BMDL0.5 3.0 μg/kg/日 | 比 1.28〜1.80(EPA・EFSA 2005 の物差し)。JECFA の BMDL0.5 に対する余裕(MOE)は7.8。日本の食品安全委員会は耐容量を設定していない |
| カドミウム | 0.24 μg/kg/日(13.4 μg/人/日) | 食品安全委員会の TWI 7、EFSA の TWI 2.5、JECFA の PTMI 25 μg/kg/月 | 比 0.24〜0.68 |
| メチル水銀 | 0.067 μg/kg/日(魚介・肉卵・米の群のみ。総水銀は5.04 μg/人/日) | 食品安全委員会の TWI 2.0、JECFA の1.6、EFSA の1.3 μg/kg/週 | 比 0.24〜0.36 |
| 鉛 | 0.072 μg/kg/日(3.96 μg/人/日。1〜6歳は0.182 μg/kg/日) | 耐容量なし。EFSA 2010 の BMDL01 0.50(発達神経毒性)・1.50(血圧)、BMDL10 0.63(腎) | 参照点との余裕(MOE)は、全年齢の平均で約7〜21倍、1〜6歳で約2.7〜8倍(ウラヨミの計算。0.50 は子どもの発達神経毒性、1.50・0.63 は大人の血圧・腎の参照点) |
出典は厚労科研 令和6年度報告書の Table 9(鉛の余裕は、同じ表の摂取量と EFSA 2010 の参照点からウラヨミが割り算した値)。物差しの選び方で比が変わります。無機ヒ素の耐容量を設定していない日本の食品安全委員会は、通常の食生活で健康影響を示すデータはなく現状に問題があるとは考えていない、としています。
主な出典
- 厚労科研 トータルダイエットスタディ 令和6年度(国立医薬品食品衛生研究所)
- 厚労省『妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項』
- 農水省『食品に含まれるヒ素の実態調査』(2025年12月19日更新)
- 農水省 令和4〜6年産米のカドミウム・ヒ素の実態調査(2025年12月19日)
- 食品安全委員会『鉛』の評価書に関する情報(2021年6月29日)
- 農水省 国際機関や諸外国が設定する鉛の基準値(Codex の表)
- EU 規則 2023/915(食品中の汚染物質の最大値)
- EFSA CONTAM Panel. EFSA J 2024;22(1):e8488(無機ヒ素)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。