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食品の重金属データベース確認日 2026.10.03

食品の鉛

日本人の食事からの鉛の摂取量は、1978年の約100から2024年の約4 μg/人/日まで、約96%減りました。日本の食品には鉛の食品別の基準値がなく、調べられた食品のほとんどで鉛は定量下限未満です。JECFA は2010年に耐容量を撤回し、日本の食品安全委員会も2021年に「有害な影響を及ぼさない血中鉛濃度を導けない」として耐容量を設定していません。食品安全委員会は、バランスのよい食生活に加えて、器・室内のほこり・水道の鉛管の確認にも目を向けるよう助言しています。

形のちがい

  • 食品の評価では、形の区別はせず総鉛で測ります。単位は mg/kg(=ppm)です。
  • 入り口は食べ物だけではありません:食品安全委員会の助言は、バランスのよい食生活のほか、器、室内塵(ほこり)、水道の鉛管をあげています。ここでは、食べ物のデータに、水道・器・缶・スパイスの話を足して載せています。
  • 吸収される割合は、経口で成人10〜15%、小児約40%です。鉛の半減期は、血液・軟組織で約40日、骨で約20年です。胎盤を通り、母乳中の濃度は母親の血中の10〜30%です(食品安全委員会 Q&A)。
  • スズ(缶詰のめっき)も、このデータベースでは鉛のページの中で触れます。日本人の摂取は2024年に339 μg/日で、JECFA の耐容量の約0.3%、98%が果実類(缶詰)とたけのこなどでした。

鉛の値が載っている食品

食品形態・状態平均範囲・最大
果実の缶詰総鉛・果実缶詰0.06(中央値0.03)最大0.19
ほうれんそう総鉛0.02最大0.11
果実の缶詰総鉛・果実缶詰0.02(中央値0.01)最大0.06
ツナ缶総鉛・魚の缶詰(固形物。ツナ缶に限らない)0.01(中央値0.01)最大0.05
ほうれんそう総鉛0.01最大0.07
果実の缶詰総鉛・魚缶詰(固形物)0.01(中央値0.01)最大0.05
白米総鉛・米及び米加工品(調理済みの食事の試料から推定)0.001(推定平均 1.0 ng/g)—
水道水・ミネラルウォーター総鉛・飲料水群(トータルダイエット試料。ベイズ推定の事後平均 0.315 ng/g)0.0003—
玄米総鉛・玄米0.00〜0.02最大0.04
小麦総鉛・玄麦(収穫後の麦粒)0.00〜0.02最大0.05
小麦総鉛・小麦粉0.00〜0.01最大0.01
大豆総鉛・大豆0.00〜0.02最大0.06
ほうれんそう総鉛0.01〜0.06最大0.34
さといも・じゃがいも総鉛・さといも(皮つき)0.01〜0.02最大0.09
さといも・じゃがいも総鉛・さといも(皮つき)0.01〜0.02最大0.36
さといも・じゃがいも総鉛・さといも(皮なし)0.00〜0.01全点が定量限界(0.01)未満
さといも・じゃがいも総鉛・ばれいしょ0.00〜0.04最大0.04
緑茶総鉛・茶葉(乾燥)算出せず(半数以上が定量限界未満。中央値は<0.10)<0.10〜2.4
ベビーフード総鉛・ドライタイプ(乾麺・シリアル・粉末スープ・ふりかけ・フリーズドライなど)0.005〜0.010最大0.054
ベビーフード総鉛・ウェットタイプ(レトルト・瓶詰・弁当・冷凍食品など)0.000〜0.006最大0.009
ベビーフード総鉛・乳幼児用菓子類0.005〜0.008最大0.044
粉ミルク総鉛・調製乳(粉末状・粉末あたり)0.003〜0.007最大0.015
粉ミルク総鉛・調製乳(粉末状・調乳後の推定値、mg/L)0.0004〜0.0010—
粉ミルク総鉛・調製乳(液状)0〜0.003全点が定量限界未満
果実の缶詰総鉛・トマト缶詰0.00〜0.02最大0.02
果実の缶詰総鉛・スイートコーン缶詰0.00〜0.02最大0.02
果実の缶詰総鉛・ゆであずき缶詰0.00〜0.02全点が定量限界未満
果実の缶詰総鉛・魚缶詰(液汁)0.00〜0.01全点が定量限界未満

平均値の大きい順。形態(総量か無機か・乾燥か水戻し後か)がちがう値は並べて比べられないので、各食品のページで確かめてください。

日本人の鉛の摂取量の推移(1978〜2024年) 国立医薬品食品衛生研究所ほかのトータルダイエットスタディ(令和6年度報告)の図4から読み取った概算値。 1978: 100.13, 1982: 48.16, 1986: 45.03, 1990: 40.99, 1994: 36.96, 1998: 27.33, 2002: 21.06, 2006: 21.28, 2010: 14.56, 2014: 7.84, 2018: 10.08, 2022: 4.26 鉛 0 30 60 90 120 1980 1990 2000 2010 2020 2024: 4.03 1978: 100 μg/人/日
日本人の鉛の摂取量の推移(μg/人/日、トータルダイエットスタディ)。報告書の図から読み取った概算で、不検出を0として計算した値です

体への影響

  • 心配されている影響は、小児の神経の発達、成人の腎機能と血圧です。食品安全委員会は、日本人の血中鉛の平均は1 μg/dL 程度かそれ以下で、疫学が影響を示唆する1〜2 μg/dL(小児の神経行動学的発達・成人の腎機能)に近いとしています。ただし「個人レベルで影響が出るという意味ではない」「鉛の影響と断定するのも難しい」と書き、普段の生活で心配しすぎる必要はないとしています。
  • 日本人の血中鉛:エコチル調査(妊婦)の中央値は0.61 μg/dL で、米国の妊婦の研究(平均0.62)と同程度です。成人(妊婦)の血中鉛は、過去25年で5分の1〜10分の1に下がったと報告されています。
  • 子どものIQ:国際プール解析(7つのコホート、1,333人、Lanphear 2005)では、血中鉛が2.4から10 μg/dL に上がると、IQ が3.9点下がりました。最大血中鉛が7.5 μg/dL 未満の子でも低下がみられた観察研究です(2019年に訂正が付いています)。
  • 日本の子ども:東北の出生コホート(286人、12歳、Tatsuta 2020)では、男の子だけ血中鉛とIQが負の関連(女の子は関連なし)でした。小規模な観察研究で、「日本でも子どものIQが下がる」とまでは言えません。

耐容摂取量(一生とり続けても健康に影響が出ないとされる量)

機関値補足
JECFA(2010年、第73回)耐容量なし(PTWI 25 μg/kg/週を撤回)PTWI は1986年に算出。小児のIQ 3点以上の低下、成人の収縮期血圧約3 mmHg の上昇に相当しうるとして撤回。閾値が見いだせず新しい値は設定できない。農水省と複数の要約で確認(原典は未取得)
EFSA(2010年)BMDL01 0.50 μg/kg/日(発達神経毒性)/1.50(収縮期血圧)/BMDL10 0.63(慢性腎臓病)PTWI 25は不適切で、閾値の証拠はないと判断。血中鉛12 μg/L が0.50 μg/kg/日に相当
食品安全委員会(2021年6月29日)耐容摂取量は設定できず有害影響を及ぼさない血中鉛濃度を導けないため。2008年に「自ら評価」として着手
参考:水道水(水質基準)0.01 mg/L飲み水の基準で、食事の耐容量ではありません。2003年に改正(改正前の値は未確認)

日本人がとっている量

  • 2024年は3.96 μg/人/日(定量下限の半分で計算。不検出を0とした値は3.26)で、体重55kgで0.072 μg/kg/日です。1〜6歳の幼児は0.182 μg/kg/日(確率論的な推定の95パーセンタイル0.346)でした。
  • 寄与は特定の食品群に偏りません:嗜好飲料が22.5%、その他の野菜・海草が18.2%などです。魚介類は11%、米・米加工品は9%でした(ウラヨミの計算)。
  • 参照点との余裕:報告書は、EFSA の参照点に対する MOE(余裕の倍数)を2.8〜20.8と示しています。ウラヨミで計算し直すと、BMDL01(0.50)を1〜6歳の摂取量(0.182)で割って約2.7です。0.50は子どもの発達神経毒性、1.50・0.63は大人の血圧・腎の参照点で、母集団が違うため、すべてを同じ人に当てはめた比較は目安です。EFSA は「MOE が1でもほとんどリスクはない」と評価しているとも、報告書は書いています。
  • 年次推移:1977〜78年の約100から2024年の約4まで(約96%減)。1977〜82年の急減は1975年の有鉛ガソリンの禁止、1996年以降の緩やかな減少は焼却施設の排ガス除去装置の改善による、と報告書は説明しています。2020年から2021年に11.9から4.9へ急に下がった理由は、報告書に書かれていません。
  • 欧州との比較は、単純にはできません:EFSA(2010年)の欧州の成人(平均的な消費者)は0.36〜1.24 μg/kg/日、小児(平均)は0.80〜3.10です。ただし手法(トータルダイエットスタディか、濃度×摂取量か)・不検出の扱い・年が違うので、「日本は欧州の何分の1」とは言えません。
  • FSC の8.88 μg/日(2019年)は、食品安全委員会の資料(FAQ)で、飲料水と器具・容器包装からのばく露を含む値と説明されています。食品だけの値(トータルダイエットスタディの3.96)とは対象が違う可能性があり、直接の比較はできません。ただし、同じトータルダイエット系列では、2019年の8.88から2024年の3.96へ、約半分以下に下がっています。

歴史

  • 1975年:レギュラーガソリンが無鉛化(ハイオクは1987年)。現行の規格:ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水の規格は「ヒ素・鉛を検出するものであってはならない」(カドミウムは2014年に削除)。
  • 1996年〜:焼却施設の排ガス除去装置の改善が進みました。
  • 2003年:水道の水質基準の鉛が0.01 mg/L に(平成15年厚労省令第101号。改正前の値は未確認)。
  • 2008年7月31日:器具・容器包装の鉛・カドミウムの溶出規格を強化(厚労省告示416号、2009年8月1日以降の製造・輸入品に適用)。
  • 2010年:JECFA が PTWI を撤回、EFSA が意見書を公表。
  • 2013〜2016年:果実缶詰の鉛が、2013年の平均0.06・最大0.19 mg/kg から、2016年の平均0.02・最大0.06に低下(缶用めっき鋼材の不純物の鉛を、製鋼側が自主的に減らした)。
  • 2021年6月29日:食品安全委員会が鉛の評価結果を公表。
  • 水道の鉛製給水管:全国の残存は509万件(平成17年度)→303万件(平成26年度)→192万件(令和5年度)。平成26年度以降は減り方が鈍っています(国土交通省)。
  • 2025年1月6日:米国 FDA が、乳幼児向け加工食品の鉛のアクションレベルを最終化しました。

知っておきたいこと

  • 日本には、鉛の食品別の基準値がありません。あるのは、清涼飲料水(ミネラルウォーター類を除く。ヒ素・鉛は検出されないこと。金属製容器包装入りはスズ150.0 ppm 以下)、ミネラルウォーター類(鉛0.05 mg/L 以下)、水道水(0.01 mg/L)、器具・容器包装の溶出規格(陶磁器は容量1.1L未満で鉛2 μg/mL・カドミウム0.5)です。Codex と EU は食品ごとに最大基準値があります。スパイスは、EU に基準があり(樹皮2.0、根・根茎1.50 mg/kg)、Codex は2024年から乾燥スパイスの鉛の最大基準値を順次採択しています(数値はここでは載せていません)。
  • 鉛は、摂取量ではなく血中濃度で評価されました。食品安全委員会は、食事の摂取量に換算できないため耐容量を設定せず、血中鉛1〜2 μg/dL を目安にしています。
  • スパイスの鉛:バングラデシュのターメリックは、主要9産地のうち7産地で、黄色い顔料のクロム酸鉛が混ぜられた証拠があり、最大1,152 μg/g(ダッカ・ムンシゴンジ県。主要9産地では最大690)でした(Forsyth 2019)。啓発と取り締まりで、市場の鉛検出が47%(2019年)から0%(2021年)になった報告もあります。米国では2023〜24年に、シナモン入りりんごピューレで566例の血中鉛の上昇(3.5 μg/dL 以上)がありました。日本のスパイスの公的な調査・基準は見つかりませんでした。
  • 輸入食器:令和7年度の器具・容器包装の規格違反58件のうち、ウズベキスタン産の陶器の鉛が36件でした(厚労省。表の列が崩れ、ほかの内訳は確実でありません)。食品安全委員会は、食器用でない装飾用の陶磁器を食器に使わないよう助言しています。
  • 乳幼児用食品(農水省 2023年度、180点)は、鉛が151点で定量下限未満でした。ただし農水省は、この調査が食品衛生法の規格基準への適否を判断するものではなく、分析法も法定法と異なると書いています。米国 FDA のアクションレベル(10〜20 ppb)と直接比べて「超える・満たす」とは言えません。
  • 日本の鉛・スズの公的調査で見つからなかったもの:チョコレート・ココアの鉛、健康食品・アーユルヴェーダ製品の鉛、缶詰食品(飲料以外)のスズの基準の有無。

関連する解説

出典

最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。

重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。

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