食品の重金属データベース乳幼児の食品確認日 2026.10.03
粉ミルク(乳児用調製粉乳)の鉛・ヒ素
農水省の調査(2023年度)で、粉末状の乳児用調製乳20点の鉛は最大0.015 mg/kg(粉末あたり)、水で溶かした後の推定は0.0004〜0.0010 mg/L でした。液状の調製乳10点は、鉛・カドミウムとも全点が定量限界未満です。日本で重金属の規制が始まったきっかけは、1955年の森永ヒ素ミルク事件です。
日本の公的調査などで測った値
| 金属 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 | 検体数 | 調査 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉛 | 総鉛・調製乳(粉末状・粉末あたり) | 0.003〜0.007 | 最大0.015 | 20点(14点が定量限界未満) | 農水省 2023年度 |
| 鉛 | 総鉛・調製乳(粉末状・調乳後の推定値、mg/L) | 0.0004〜0.0010 | — | 20点 | 農水省 2023年度 |
| 鉛 | 総鉛・調製乳(液状) | 0〜0.003 | 全点が定量限界未満 | 10点 | 農水省 2023年度 |
| ヒ素 | 無機ヒ素・調製乳(粉末状・粉末あたり) | 0.007〜0.013 | 最大0.047 | 20点(13点が定量限界未満) | 農水省 2023年度 |
| ヒ素 | 無機ヒ素・調製乳(粉末状・調乳後の推定値、mg/L) | 0.0010〜0.0017 | — | 20点 | 農水省 2023年度 |
| ヒ素 | 無機ヒ素・調製乳(液状) | 0.002〜0.004 | 最大0.004 | 10点(6点が定量限界未満) | 農水省 2023年度 |
| ヒ素 | 総ヒ素・調製乳(粉末状・粉末あたり) | 0.014〜0.018(中央値0.011) | 最大0.069 | 20点(8点が定量限界未満) | 農水省 2023年度 |
| カドミウム | 総カドミウム・調製乳(粉末状・粉末あたり) | 0.004〜0.008 | 最大0.013 | 20点(13点が定量限界未満) | 農水省 2023年度 |
単位は mg/kg(=ppm)。「調乳後の推定値」は、粉末の濃度を各製品に書かれた希釈倍率で割った値(mg/L)です。平均は「定量限界未満を0とした値〜定量限界とした値」の範囲です。この調査は食品衛生法の規格基準への適否を判断するものではなく、分析法も法定法と異なります。
基準値(日本・国際・EU)
| 定めた機関 | 基準値 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本(食品衛生法) | 調製乳の鉛・ヒ素の基準:本調査で確認できず | 乳等省令の個別の規定までは確認していません(未確認)。農水省の調査結果は規格の適否の判断には使えません |
| Codex(国際基準) | 鉛 乳児用調製乳 0.01 | — |
| EU(規則 2023/915) | 鉛 0.020(粉末)/0.010(液状)、無機ヒ素 0.020(粉末)/0.010(液体)、カドミウム 0.010(粉末)〜0.020(大豆) | 日本の調査値とは、分析法・調査の目的が違うため直接比べられません |
| 米国(FDA) | 鉛のアクションレベルの対象外 | 2025年1月のガイダンスは、調製乳・飲料・ジュースを含みません |
知っておきたいこと
- 粉末状の調製乳は、鉛が20点中14点で定量限界(0.006)未満、最大0.015 mg/kg でした。調乳後の推定は平均で0.0004〜0.0010 mg/L です。同じ調査の無機ヒ素は、粉末で最大0.047、調乳後の推定は平均で0.0010〜0.0017 mg/L でした。
- 液状の調製乳は、鉛とカドミウムが10点すべて定量限界未満、無機ヒ素は最大0.004 mg/kg でした。
- 森永ヒ素ミルク事件(1955年):徳島工場の粉ミルクに加えた第二リン酸ソーダに、無機ヒ素が約10%混入していました。乳児約1万2千人が中毒になり、133人が亡くなったと食品安全委員会は書いています(「とされている」という書き方)。
- 事件の数字は資料で違います。死者は130・131・133人、被害者は12,000〜12,159人と資料により異なり、原典(当時の厚生省の発表)は確認できていません。追跡調査も別の解析(5,064人は Tanaka & Oshima 2007、6,104人は食品安全委員会の資料)があり、数字を混ぜないようにする必要があります。
- この事件を契機に、1959年12月28日に食品添加物等の規格基準(厚生省告示370号)が定められ、日本のヒ素の規制が始まりました。
- 調乳に使う水の鉛・ヒ素は、水道水の水質基準(どちらも0.01 mg/L以下)の対象です。水道水・ミネラルウォーターの項も参照してください。
関連する解説
金属ごとのページ
出典
- 農水省「令和5年度 乳幼児用食品中の鉛等の含有実態調査の結果」(2024年12月公表)
- 食品安全委員会「食品健康影響評価 ヒ素」(2013年12月。森永ヒ素ミルク事件の記述)
- Tanaka & Oshima. 2007(森永ヒ素ミルク事件の追跡調査)(PMID 17533959)
- EU 規則 2023/915(食品中の汚染物質の最大基準値)
- 米国FDA「乳幼児向け加工食品の鉛のアクションレベル(最終ガイダンス)」(2025年1月)
- 農水省「国際機関や諸外国が設定する鉛の基準値」
- 水質基準に関する省令(e-Gov 法令検索)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。