食品の重金属データベースそのほか確認日 2026.10.03
果実の缶詰の鉛
農水省の調査で、果実缶詰の鉛は2013年の平均0.06・最大0.19 mg/kg から、2016年は平均0.02・最大0.06 mg/kg に有意に下がりました。原因は缶用のスズめっき鋼材に不純物として含まれる鉛とみられ、製鋼側の自主的な低減が効いたとされています。スズは日本人の摂取量の98%が果実類(缶詰)と野菜類(たけのこなど)から入ります。
日本の公的調査などで測った値
| 金属 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 | 検体数 | 調査 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉛 | 総鉛・果実缶詰 | 0.02(中央値0.01) | 最大0.06 | 120点(31点が定量限界未満) | 農水省 2016年度 |
| 鉛 | 総鉛・果実缶詰 | 0.06(中央値0.03) | 最大0.19 | 103点(14点が定量限界未満) | 農水省 2013年度 |
| 鉛 | 総鉛・トマト缶詰 | 0.00〜0.02 | 最大0.02 | 33点(32点が定量限界未満) | 農水省 2011年度 |
| 鉛 | 総鉛・スイートコーン缶詰 | 0.00〜0.02 | 最大0.02 | 39点(37点が定量限界未満) | 農水省 2011年度 |
| 鉛 | 総鉛・ゆであずき缶詰 | 0.00〜0.02 | 全点が定量限界未満 | 39点 | 農水省 2011年度 |
| 鉛 | 総鉛・魚缶詰(固形物) | 0.01(中央値0.01) | 最大0.05 | 40点(15点が定量限界未満) | 農水省 2020年度 |
| 鉛 | 総鉛・魚缶詰(液汁) | 0.00〜0.01 | 全点が定量限界未満 | 38点 | 農水省 2020年度 |
単位は mg/kg(=ppm)。「0.00〜0.02」のような範囲は、定量限界未満の試料を0とした平均〜定量限界の値とした平均です。スズは測定値の表に入れず、「知っておきたいこと」に書いています。
基準値(日本・国際・EU)
| 定めた機関 | 基準値 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本(食品衛生法) | 缶詰食品の鉛の基準:確認できず/ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水は鉛を検出してはならず、金属製容器包装入りのものはスズが150.0 ppm以下 | 缶詰食品(飲料以外)のスズの基準の有無は未確認。器具・容器包装は金属製原材料の鉛の含有量が引き下げられました(2008年告示:メッキ用スズ 5%→0.1%、ハンダ 20%→0.2%)。缶詰用の缶は日本で既に鉛ハンダを使っていないと厚労省の通知は書いています |
| Codex(国際基準) | 鉛 果実缶詰 0.1・野菜缶詰 0.1・トマト缶 0.05/スズ:Codex の基準は確認できていません | Blunden & Wallace 2003 に、缶詰食品のスズの「典型的な推奨最大値」として250の記述がありますが、Codex の原文は確認できていません |
| EU(規則 2023/915) | 鉛 缶詰専用の基準なし(果実 0.10)/スズ 缶詰食品(飲料を除く)200・缶入り飲料 100・缶入り乳児用調製乳等 50 mg/kg | — |
知っておきたいこと
- 2013年から2016年で、果実缶詰の鉛は平均0.06→0.02、最大0.19→0.06 mg/kg に下がりました(統計的に有意)。2013年の調査には Codex の基準0.1を超える試料がありましたが、2016年は最大0.06でした。保管中に鉛が増える傾向もありませんでした。
- 原因は、缶を作るスズめっき鋼材に不純物として含まれる鉛の溶出と推定され、鋼材メーカーが自主的に鉛を減らしました。公的な調査で「業界の対策が効いた」ことが確かめられた例です。
- スズの日本人の摂取量は339 μg/日(2024年)で、JECFA の耐容量(14 mg/kg体重/週)の約0.3%です。その98%は果実類(缶詰)199 μg/日とその他の野菜・海草類(たけのこなど)133 μg/日でした。地域差が大きく、缶詰やたけのこの利用で変わります。
- 開缶後の保存について、業界団体(日本缶詰びん詰レトルト食品協会)は、内面を塗装していないブリキ缶(果実など)は、開けて缶のまま置くと空気に触れてスズが溶けやすくなるので、ガラス・陶器・プラスチックの容器に移して冷蔵するよう案内しています。同団体は「溶け出る微量のスズは体に蓄積せず排泄され、食品衛生上安全」と説明しています(業界団体の説明です。公的機関の評価とは分けて読んでください)。
- 急性の影響について、スズ200 ppm 以下でも一部の人に胃腸症状の報告があるが証拠は限られ、臨床試験で胃腸症状が出たのは700 ppm 以上とする総説があります(Blunden & Wallace、2003年。著者がスズ業界団体に所属しており、利益相反の可能性があります)。
- トマト・スイートコーン・ゆであずきの缶詰(2011年度)は、ほとんどが定量限界未満で最大0.02でした。魚缶詰の固形物は40点中15点が定量限界未満で最大0.05、液汁は全点が定量限界未満でした(2020年度)。
関連する解説
金属ごとのページ
出典
- 農水省「加工食品に含まれる鉛の実態調査(果実缶詰・梅加工品・乳幼児用など)」
- 厚労科研 トータルダイエット 令和6年度 分担研究報告書(スズの摂取量)
- 厚労省「食品、添加物等の規格基準の一部改正(器具・容器包装の鉛・カドミウム溶出)」(告示416号、2008年)
- 農水省「国際機関や諸外国が設定する鉛の基準値」
- EU 規則 2023/915(食品中の汚染物質の最大基準値)
- Blunden S, Wallace T. Food Chem Toxicol 2003(食品中のスズの総説)(PMID 14563390)
- 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 Q&A(開缶後の保存・スズ。業界団体の説明)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。