食品の重金属データベース確認日 2026.10.03
食品のカドミウム
カドミウムは、米・小麦・大豆などの農産物から入り、日本人の摂取の約3割(2022年は34.1%)が米です。魚介類は筋肉では低く、スルメイカの肝臓やホタテのウロ(中腸腺)など内臓に桁違いに多く含まれます。日本人の摂取量は1970年代後半の約46 μg/日から、2020年代に13〜16 μg/日まで下がりました。日本の法的な基準があるのは米(玄米・精米0.4 mg/kg)と清涼飲料水・ミネラルウォーターだけです。
形のちがい
- 食品の評価では、水銀・ヒ素のような形の区別はせず、総カドミウムで測ります。
- 体に入ると、なかなか出ていきません。腎臓での半減期は12〜23年(推定)、JECFA は約15年としています。そのため JECFA は耐容量を週ではなく月で表しています。
- 吸収される割合は小さい:ヒトの体内の残存率は2〜8%です(食品安全委員会)。鉄が不足しているときは吸収が増える、という報告があります。
- 食べ物の濃度は、部位で桁が違います。このデータベースでは、筋肉(可食部)と内臓を分けて載せています。単位は mg/kg(=ppm)です。
カドミウムの値が載っている食品
| 食品 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 |
|---|---|---|---|
| イカ・イカの塩辛 | スルメイカ・肝臓 | 33.90 | 6.60〜96.00 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | ホタテ・うろ(中腸腺) | 33(中央値31) | 7.3〜68 |
| イカ・イカの塩辛 | スルメイカ・内臓 | 15(中央値14) | 1.7〜48 |
| カニ・カニみそ | ベニズワイガニ・内臓 | 11.74 | 2.30〜23.0 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | ホタテ・うろ | 5.80 | 1.30〜16.00 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | サザエ・内臓 | 4.65 | 1.20〜9.50 |
| イカ・イカの塩辛 | イカ塩辛(黒づくり) | 3.26 | 1.40〜6.5 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | アワビ・内臓 | 3.11 | 2.20〜5.60 |
| イカ・イカの塩辛 | イカ塩辛 | 2.63 | 0.09〜9.9 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | ホタテ・生殖腺 | 2.2(中央値2.1) | 0.59〜6.0 |
| カニ・カニみそ | ケガニ・みそ | 1.99 | 0.79〜3.50 |
| カニ・カニみそ | ガザミ(ワタリガニ)・みそ | 0.69 | 0.09〜1.90 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | ホタテ・貝柱 | 0.45(中央値0.32) | <0.03〜1.6 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | マガキ・可食部 | 0.43(中央値0.29) | 0.15〜1.3 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・ココア粉末 | 0.32(中央値0.16) | 0.015〜1.8 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・チョコレート(カカオ固形分 70〜80%未満) | 0.32(中央値0.19) | 最大2.3 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | マガキ・可食部 | 0.30 | 0.10〜0.68 |
| イカ・イカの塩辛 | スルメイカ・可食部(内臓を除く) | 0.29 | 0.03〜1.30 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・チョコレート(カカオ固形分 80%以上) | 0.28(中央値0.25) | 最大0.71 |
| イカ・イカの塩辛 | スルメイカ・筋肉 | 0.25(中央値0.22) | 0.03〜1.0 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・ダークチョコレート | 0.25(中央値0.15) | 0.025〜2.3 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・チョコレート全体(ミルク・ダーク・ホワイト) | 0.20(中央値0.12) | 0.00021〜2.3 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・チョコレート(カカオ固形分 50〜70%未満) | 0.17(中央値0.12) | 最大0.74 |
| カニ・カニみそ | ベニズワイガニ・筋肉 | 0.16 | 0.04〜0.48 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | ホタテ・可食部 | 0.12 | 0.01〜0.51 |
| 大豆 | 総カドミウム・乾燥大豆(国産) | 0.11(中央値0.10) | 最大0.87 |
| カニ・カニみそ | ケガニ・筋肉 | 0.08 | 0.02〜0.17 |
| カニ・カニみそ | ガザミ(ワタリガニ)・筋肉 | 0.07 | <0.01〜0.29 |
| 玄米 | 総カドミウム・玄米 | 0.06(中央値0.04) | 最大1.2 |
| ほうれんそう | 総カドミウム・可食部(収穫後) | 0.06(中央値0.05) | 最大0.59 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | サザエ・筋肉 | 0.05 | <0.01〜0.10 |
| 玄米 | 総カドミウム・玄米 | 0.05 | 最大0.40 |
| 小麦 | 総カドミウム・小麦粒(国産) | 0.05(中央値0.03) | 最大0.50 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・ミルクチョコレート | 0.043(中央値0.023) | 0.012〜0.31 |
| ホタテ・カキ・アワビ・サザエ | アワビ・筋肉 | 0.04 | 0.02〜0.07 |
| 玄米 | 総カドミウム・玄米 | 0.04(中央値0.03) | 最大0.24 |
| さといも・じゃがいも | 総カドミウム・さといも(可食部) | 0.04(中央値0.03) | 最大0.42 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・チョコレート(表示のカカオ固形分 50%未満) | 0.040(中央値0.023) | 最大0.18 |
| 白米 | 総カドミウム・精米 | 0.03(中央値0.03) | 最大0.23 |
| さといも・じゃがいも | 総カドミウム・ばれいしょ(じゃがいも) | 0.02(中央値0.02) | 最大0.08 |
| チョコレート・ココア | 総カドミウム・ホワイトチョコレート | 0.00059(中央値0.00028) | 最大0.0016(全点が定量下限未満) |
| イカ・イカの塩辛 | コウイカ・可食部(内臓を除く) | <0.01 | 最大0.01 |
| 緑茶 | 総カドミウム・茶葉(乾燥) | 算出せず(119点が定量限界未満) | <0.01〜0.11 |
| ベビーフード | 総カドミウム・ドライタイプ | 0.051〜0.052(中央値0.031) | 最大0.40 |
| ベビーフード | 総カドミウム・ウェットタイプ | 0.003〜0.008 | 最大0.048 |
| ベビーフード | 総カドミウム・乳幼児用菓子類 | 0.029〜0.031(中央値0.018) | 最大0.11 |
| 粉ミルク | 総カドミウム・調製乳(粉末状・粉末あたり) | 0.004〜0.008 | 最大0.013 |
| 肉 | 総カドミウム・牛肉(筋肉) | 平均の公表なし | <0.01〜0.05 |
| 肉 | 総カドミウム・豚肉(筋肉) | 平均の公表なし | <0.01〜0.07 |
| 肉 | 総カドミウム・鶏肉(筋肉) | 平均の公表なし | <0.01〜0.03 |
| 肉 | 総カドミウム・馬肉(筋肉) | 平均の公表なし | <0.01〜0.03 |
平均値の大きい順。形態(総量か無機か・乾燥か水戻し後か)がちがう値は並べて比べられないので、各食品のページで確かめてください。
体への影響
- 長期の摂取で、腎臓の近位尿細管の再吸収の機能が下がります。目印は、尿中のβ2-ミクログロブリンの増加です(食品安全委員会は1,000 μg/g クレアチニンをカットオフに使用)。
- 骨への影響:腎臓の障害を介して、重い場合は骨軟化症になります。一方、低い濃度でも腎臓を介さずに骨粗しょう症・骨折が増える可能性が、海外で指摘されています(フランス ANSES 2017年は、スウェーデンの尿中0.5 μg/g クレアチニン以上で骨折が増えた研究に着目)。食品安全委員会は、日本のデータが無いので、骨を評価の指標にしていません。
- IARC(2012年)はカドミウムと化合物をグループ1(肺がん)にしました。食品由来の低い量については、リスクが増える証拠は不十分、と食品安全委員会は書いています。
- 喫煙:消費者庁は、たばこ1本に1〜2 μgが含まれ、その約10%が肺に入り、約50%が吸収されるとして、1日20本で約1〜2 μg/日を吸収すると試算しています。千葉県(汚染のない地域)の50歳以上の男性の血中濃度は、非喫煙者で1.5、喫煙者で2.2 ng/g でした。
- 食事以外の経路は小さい:環境庁(2000年)の推計では、食事が99.9%でした(大気0.05%・飲料水0.03%・土壌0.005%)。
- 公的な見解:食品安全委員会は、一般的な日本人の食品からのカドミウムの摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低い、としています。基準を超えた米を短期間食べても、悪影響の可能性は低いとされます(長期の平均が基準です)。
耐容摂取量(一生とり続けても健康に影響が出ないとされる量)
| 機関 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 食品安全委員会(2008年。第3版2024年2月も維持) | TWI 7 μg/kg体重/週 | 日本の2つの疫学調査(石川県の梯川流域など)から。理論モデルは信頼性が低いとして使わず、不確実係数もなし |
| JECFA(2010年、第73回) | PTMI 25 μg/kg体重/月(週に直すと約5.8) | 旧 PTWI 7 を取り下げ。35の疫学研究のメタ解析。尿中カドミウム5.24 μg/g クレアチニン以下で、β2-ミクログロブリンの排泄増なし。報告書の公表は2011年 |
| EFSA(2009年) | TWI 2.5 μg/kg体重/週 | 同じメタ解析で、50歳までに95%の人の尿中濃度を1.0 μg/g クレアチニン以下に保つ摂取量(0.36 μg/kg/日) |
| 米国 EPA(1989年) | RfD 1 μg/kg体重/日(食物) | 食品安全委員会の第3版案が引用 |
| 米国 ATSDR(2012年) | MRL 0.1 μg/kg体重/日 | 同上 |
日本人がとっている量
- 摂取量の推移(トータルダイエットスタディ):1970年代後半の約46から、2005年22.3、2016年18.1、2020年17.7、2023年度15.9 μg/人/日へ。10年ごとの平均は、31.3(1981〜90年)→28.1→23.1→19.3(2011〜20年)です。
- 2022年は2.03 μg/kg体重/週(約16 μg/日)で、食品安全委員会の7の約30%です。2024年は13.4 μg/人/日(体重あたり0.24 μg/kg/日)でした。
- 同じ2022年の値を、3つの物差しに当てると、食品安全委員会の7の29%、JECFA(週換算約5.8)の35%、EFSA の2.5の81%です(ウラヨミの計算、体重55.1kg)。どれが正しいかではなく、根拠(日本の疫学か、尿中濃度からの理論モデルか)が違います。
- 寄与の大きい食品:2022年は、米及びその加工品が34.1%、その他の野菜・海藻が20.5%でした。2024年は米が34.2%です。農水省の推計(2016年)では、農産物からの摂取の約46%が米、17%が小麦、11%が大豆でした。測り方(農産物のみ・全食品、年)が違うため、「米は約3〜5割」と幅で読みます。
- 高い人の分布:農水省の確率論的な推計(2016年)では、全食品からの摂取量は平均2.4、95パーセンタイル4.7 μg/kg/週で、TWI 7 の35%・67%です。推計方法が違う調査(国立環境研究所の平均3.44・95パーセンタイル7.18 など)とは並べられません。
- 米の寄与が減りました:1981〜90年の米は14.6 μg/日(総計の約47%)、2011〜20年は7.1(約37%)です。総計の減少12.0 μg/日のうち、7.5(62%)が米の減少でした(ウラヨミの計算)。
歴史
- 1955年10月:富山県神通川流域の「奇病」が、臨床外科医学会で原因不明として報告されました(イタイイタイ病)。
- 1968年5月:厚生省が見解を発表。カドミウムの慢性中毒で、まず腎臓の障害、次いで骨軟化症が起き、誘因に妊娠・授乳・内分泌の変調・老化・カルシウムなどの不足がある。原因は三井金属神岡鉱業所の排水以外に見当たらない、というものです。
- 1970年:玄米1.0 ppm 未満の基準を設定(精白米は0.9)。0.4以上1.0未満の米は、国が買い上げて食用にしませんでした。1971年には、農用地土壌汚染防止法の指定要件が「米1 mg/kg以上」と定められ、2010年6月に「0.4 mg/kg 超」へ改正されました。
- 認定:イタイイタイ病の認定は1974年10月が最後で、被認定者は1977年3月末で57人です(環境白書)。
- 2008年7月:食品安全委員会が TWI 7 を設定。2010年4月に厚労省が玄米・精米0.4 ppm 以下に改正し、2011年2月末に施行しました。
- 2010年:JECFA が旧 PTWI を取り下げ、PTMI 25 を設定。2012年:IARC がグループ1。
- 2015年:農研機構が、低吸収品種「コシヒカリ環1号」を品種登録しました(重イオンビームで得た変異。玄米のカドミウムは極めて低濃度)。
- 2024年6月:農水省が、カドミウムとヒ素の両方を減らす指針を策定しました。
知っておきたいこと
- 日本の法的な基準は、米(玄米・精米0.4 mg/kg)とミネラルウォーター類(0.003 mg/L)だけです。米以外は、摂取量が少なく、基準を作っても低減の効果が小さいとして、基準を作らず、生産段階の対策と実態調査で対応する、と消費者庁は説明しています。米の基準は Codex(0.4)と同じで、EU は0.15です。
- 米は、精米・洗米・炊飯でほとんど減りません。玄米を100とした精米の濃度は平均95%(令和4〜6年産)で、減るのは2〜5%です。米ぬかのほうが玄米より高いと農水省はまとめています。
- 魚介の内臓を食べない・量を控えることが、濃度の面ではいちばん効きますが、公的機関は「食べるな」とは言っておらず、消費者庁は同じ食品を毎日たくさん食べ続ける偏りに注意、バランスのよい食生活を、としています。
- 調理(ゆでこぼしなど)でカドミウムが減る割合の公的なデータは見つかりませんでした。日本の海藻・ひじき・レバー・腎臓・ひまわりの種の公的な濃度データも見つかっていません。
- 令和4〜6年産と平成21〜22年産の米は、定量下限が違います(0.01と0.04)。「平均0.05→0.04」は検出力の違う調査どうしの比較で、傾向は分布(0.1以下の割合91.0%→96.0%)で見ます。
- 「カドミウム米を食べるとイタイイタイ病になる」とは言えません。消費者庁は、高濃度の長期摂取に加え、妊娠・授乳・老化・栄養不足などの誘因があって起きた、低濃度の摂取で発症することは考えられない、としています。一方で、低濃度でも長期に腎機能・骨へ影響するかの議論は続いています。両方を書きます。
関連する解説
出典
- 農水省 令和4〜6年産米のカドミウム・ヒ素の実態調査(2025年12月19日)
- 農水省 国内農産物中のカドミウム濃度の実態(平成21〜26年度)
- 農水省 カドミウムの基準値(国内)
- 消費者庁『食品中のカドミウムに関するQ&A』
- 食品安全委員会 カドミウムの評価(概要版)
- JECFA データベース(カドミウム)
- 環境省『環境白書 昭和52年版』イタイイタイ病
- EFSA『EFSA sets lower tolerable intake level for cadmium in food』
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。