玄米・白米のヒ素とカドミウム、毎日食べて大丈夫? 国産米の実測と減らし方
農水省が測った国産米のヒ素とカドミウム、玄米と白米の差、洗米・炊き方で減る割合、日本と海外の基準の違いを、公的資料と研究の数字で整理します。
結論
国産米(令和4〜6年産、899点)の無機ヒ素は、玄米が平均0.13・中央値0.12・最大0.37 mg/kg、精米が平均0.09・最大0.23でした。カドミウムは、玄米が平均0.04・最大0.24、精米が平均0.03・最大0.23で、基準の0.4を超えた試料はありませんでした。
ヒ素とカドミウムで、玄米と白米の差は違います。無機ヒ素は、精米で玄米の約6〜7割になります(ぬか層に多いため)。カドミウムは、精米で2〜5%しか減りません。洗米は白米の無機ヒ素を約2割減らしますが、玄米はほとんど減らず、カドミウムは洗米・炊飯でほとんど変わりません。
日本の食品衛生法の基準はカドミウムだけ(玄米・精米0.4 mg/kg)で、米の無機ヒ素の基準は見当たりません。Codex は精米0.2・玄米0.35、EU は精米0.15・玄米0.25です。農水省は、バランスのよい食生活なら、玄米やぬか漬けを食べても健康上の問題はないとしています。
国産米の実測:年を追って下がっている
農水省の全国調査です。玄米の無機ヒ素の平均は、2012年産の0.21から、2022〜24年産の0.12〜0.13まで下がりました。0.2を超える玄米の割合は、前回(平成29〜令和元年産)の19.7%から、今回(令和4〜6年産)の7.4%になりました。農水省は、低減対策が有効に機能していると考えられる、としています。
| 年産 | 玄米の無機ヒ素 平均(最大) | 精米の無機ヒ素 平均(最大) | 点数(各) |
|---|---|---|---|
| 2003〜05 | 0.15(0.37) | — | 600 |
| 2012 | 0.21(0.59) | 0.12(0.26) | 600 |
| 2017 | 0.15(0.38) | 0.092(0.26) | 500 |
| 2018 | 0.15(0.37) | 0.098(0.25) | 500 |
| 2019 | 0.17(0.60) | — | 500 |
| 2022 | 0.13(0.37) | 0.09(0.23) | 300 |
| 2023 | 0.12(0.35) | 0.09(0.20) | 300 |
| 2024 | 0.13(0.34) | 0.09(0.21) | 299 |
カドミウムの国産米は、次のとおりです。平成9〜10年産の調査(37,250点)では、平均0.06・最大1.2で、基準の0.4を超えたのは96点(0.3%)でした。
| 調査 | 点数 | カドミウム 平均 mg/kg | 最大 | 0.4超 |
|---|---|---|---|---|
| 平成9〜10年産・玄米 | 37,250 | 0.06 | 1.2 | 96点(0.3%) |
| 平成21〜22年産・玄米 | 2,000 | 0.05 | 0.40 | 0 |
| 令和4〜6年産・玄米 | 899 | 0.04 | 0.24 | 0 |
| 令和4〜6年産・精米 | 899 | 0.03 | 0.23 | 0 |
- 令和4〜6年産と平成21〜22年産は、定量下限が違います(0.01と0.04)。「平均0.05→0.04」は検出力の違う調査どうしの比較で、傾向は分布(0.1以下の割合が91.0%→96.0%)で見ます。
- 水田土壌などの調査(2013〜16年、全国3,007点)では、玄米の無機ヒ素は平均0.15・最大0.64でした。出穂後の日平均気温が1℃高いと、玄米の無機ヒ素が約9.9%高い、という解析結果があります。
玄米と白米:ヒ素は白米で下がり、カドミウムはほとんど変わらない
- 無機ヒ素:ぬか層(玄米の外側の約9%)に偏っています。精米は玄米の約6〜7割です。精米/玄米の比は、2017〜18年産(1,000点)で平均63%(最小38・最大86)、2022〜24年産(893点)で中央値75%・平均73%と、調査で数字が違います。理由は農水省の資料に説明がありません。
- 精米の程度:農水省の試験(10点)では、精米歩合91%で51%減(範囲38〜61%)、89%で53%減、80%で60%減でした。五分づき(精米歩合95%)は、通常の精米の約半分の減少(12〜25%減)です。
- カドミウム:玄米を100としたときの精米は、平均95%(令和4〜6年産・755点)、2001年の試験では平均96.8%です。精米で減るのは2〜5%で、農水省は洗米・炊飯でもほぼ変化しないとまとめています。米ぬかのほうが玄米より高くなります。
- 栄養:農水省は、玄米は白米よりビタミンB1・E、鉄分、食物繊維が豊富で、バランスのよい食生活なら、玄米やぬか漬けを食べても健康上の問題はないとしています。
- 米ぬかの無機ヒ素は約1 mg/kg で、通常の穀粒の10〜20倍という分析があります(Sun 2008)。日本の米ぬか・ぬか漬けの公的な調査は見つかっていません。
基準は国で違う
| 食品・物質 | 日本 | Codex | EU(規則2023/915) |
|---|---|---|---|
| 精米・無機ヒ素 | 基準なし | 0.2(2014年採択) | 0.15(パーボイル米を除く) |
| 玄米・無機ヒ素 | 基準なし | 0.35(2016年採択) | 0.25(パーボイル米も) |
| 米菓・無機ヒ素 | 基準なし | — | 0.30 |
| 玄米・精米・カドミウム | 0.4(玄米・精米。2011年2月末施行) | 0.4(精米) | 0.15 |
- 日本のカドミウム基準は、2010年4月の改正で、玄米1.0 ppm 未満から、玄米・精米0.4 ppm 以下になりました。
- 日本には米の無機ヒ素の基準がないので、「基準を超えた」とは言えません。他国の物差しに当てると、国産精米の平均0.09は EU の精米の基準0.15の6割、最大0.23は超えます。玄米の最大0.37は、Codex の玄米の基準0.35をわずかに上回ります。0.35を超えた試料の点数は公表されていません(0.3超〜0.4以下は5点、0.6%)。
- EU の玄米の基準0.25を超える割合は、0.2超〜0.3以下の区分(6.8%)の中にあり、正確な割合は公表されていません。カドミウムも、EU の0.15で切った割合は公表されていません(0.1超〜0.2以下の区分が3.9%)。
洗う・炊く:減る方法と、減らない方法
| 研究・資料 | 方法 | 無機ヒ素の変化 |
|---|---|---|
| 農水省の手引き | 白米を3回洗米(イオン交換水) | 約20%減(玄米はほとんど減らない) |
| 同上 | 無洗米加工(ぬか式) | 約10%減 |
| Naito 2015(農研機構ほか。国産の白米3点+玄米) | 3回洗米/少水量炊飯(水:米 1.4〜2.0:1、水がなくなるまで) | 洗米で71〜83%に(17〜29%減)。少水量炊飯では除去されず |
| Raab 2009(英国) | 水:米 2.5:1/6:1 | 2.5:1は除去なし。6:1で45%減(総ヒ素35%減) |
| Carey 2015(英国) | 水:米 12:1、コーヒーパーコレーター | 12:1で57±5%、パーコレーター49±7% |
| Menon 2021(英国) | パーボイル後に水を吸わせる方法 | 玄米54%・白米73%減 |
| Menon 2024(英国) | ヒ素を含む水(10・50 μg/L)で炊く | 米のヒ素が増える |
- 日本の通常の炊き方(炊飯器で水を残さず炊く)では、ヒ素は減りません。減るのは「多めの湯で炊いて湯を捨てる」方式で、水溶性のミネラル・ビタミンなどの栄養も一緒に逃げます(Menon 2021は、玄米のほうが栄養素の損失が小さいと報告)。
- 日本の水(ヒ素の少ない水)の条件で検証した研究や、日本の食べ方としてのこの方法の位置づけは、見つかりませんでした。
- カドミウムは、洗米・炊飯でほとんど変わりません(農水省リスクプロファイルが引用した研究)。
水田での減らし方:ヒ素とカドミウムのトレードオフ
- 水の管理で、ヒ素とカドミウムが逆に動きます。出穂期前後に水を張ると、土が還元状態になってカドミウムが吸われにくくなりますが、ヒ素は上がります。出穂後に水を落とすとヒ素は減りますが、カドミウムは増えます。農水省は2024年6月に、両方を減らす指針を策定しました。
- 低吸収品種:「コシヒカリ環1号」(農研機構、2015年品種登録)は、マンガン輸送体 OsNramp5 の機能を失い、マンガンもカドミウムも吸いにくく、玄米のカドミウムは極めて低濃度です。農研機構は、水を落としてもカドミウムが極めて低いままヒ素も下げられる、としています。
- 客土:汚染田に汚れていない土を入れる対策で、農用地土壌汚染防止法の対策地域は、2013年度末に6,428 haが指定され、6,103 haで対策事業などが完了しました。
食事全体の中での位置づけ
- 無機ヒ素:日本人の摂取の約7割が米です(2014〜17年度の平均で66.7%)。総ヒ素では、米は6.1%で、魚介が59.0%を占めます。2024年の無機ヒ素のハザード比は1.28〜1.80(報告書が選んだ物差し)で、4つの金属のうち1を超えるのは無機ヒ素だけでした。日本の食品安全委員会は耐容量を設定していません。
- カドミウム:2022年は、米及びその加工品が34.1%でした。2022年の摂取量2.03 μg/kg/週は、食品安全委員会の7の29%、JECFA(週換算約5.8)の35%、EFSA の2.5の81%です(ウラヨミの計算)。
- 日本の研究:JPHC コホートでは、食事のヒ素とがん全体は関連しませんでした(男性で肺がんと関連する傾向があり、現在喫煙中の男性で強まりました。喫煙の影響が混ざるため、この結果だけでヒ素が原因とは言えません)。
- 「玄米は危険」とも「ヒ素は問題ない」とも言い切れません。農水省・食品安全委員会は、特定の食品に偏らないことを助言し、EFSA 2024 や JECFA 2025 は、平均的な摂取でも懸念の可能性があるとしています。数字を並べて、判断は読み手に委ねます。
出典
- 農水省 令和4〜6年産米のカドミウム・ヒ素の実態調査(2025年12月19日)
- 農水省『食品に含まれるヒ素の実態調査』
- 農水省『コメ中のヒ素の低減のための手引き』(2022年2月改訂)
- 農水省『ヒ素に関する Q&A』
- 農水省 国内農産物中のカドミウム濃度の実態
- 農水省 カドミウムの基準値(国内・国際)
- 農研機構『コメのヒ素・カドミウム低減』
- EU 規則 2023/915
- Naito S ほか. Food Chem 2015(日本の米の精米・洗米・炊飯)(PMID 25172713)
- Raab A ほか. J Environ Monit 2009(PMID 19137137)
- Carey M ほか. PLoS One 2015(PMID 26200355)
- Menon M ほか. Sci Total Environ 2021(PMID 33153748)
- Menon M ほか. Sci Total Environ 2024(PMID 38176556)
- Sawada N ほか. Cancer Causes Control 2013(JPHC)(PMID 23666560)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。