食品の重金属データベース解説確認日 2026.10.03
家庭の調理で重金属は減らせる? ひじき・米・内臓・水道・缶詰で示された数字
減少率が試験で示されているのはひじきと米です。示されていないもの・減らないものも含めて、公的資料と研究の数字だけを並べます。
結論
減少率が試験で示されているのは、ひじきの無機ヒ素(水戻し約5割・ゆで戻し約8割・ゆでこぼし約9割)と、米の無機ヒ素(白米の洗米で約2割、多めの湯で炊いて捨てると45〜57%)です。鉄・カルシウム・食物繊維は、ひじきの調理後も7割以上残りました。
減らないもの、データがないものもあります。日本の通常の炊き方ではヒ素は減らず、カドミウムは精米・洗米・炊飯でほとんど変わりません。魚の水銀、野菜のカドミウムを調理で減らす割合の公的なデータは、見つかりませんでした。
食品によっては、食べる部位が効きます。魚介類のカドミウムは内臓に筋肉の数十〜100倍あり、さといも(鉛)は皮をむくと全て定量下限未満でした。
ひじき:水戻し・ゆで戻し・ゆでこぼし
農水省の試験(2014年度、乾燥ひじき20g・水600cc)の結果です。減少率は「約○割」という書き方です。
| 調理 | 無機ヒ素の減少 | 所要 |
|---|---|---|
| 水戻し(30分、戻し水を捨てて流水で洗う) | 約5割 | 約30分 |
| ゆで戻し(水から入れて沸騰後5分) | 約8割 | 約20分 |
| ゆでこぼし(水戻し後、新しい湯で5分) | 約9割 | 約40分 |
鉄・食物繊維・カルシウムは、どの調理でも7割以上残りました。戻し水は調理に使わないよう、農水省は勧めています。詳しくはひじきは食べないほうがいい?を見てください。
米:精米・洗米・炊き方
| 処理 | 無機ヒ素の変化 | 出典 |
|---|---|---|
| 精米(玄米→精米歩合91%) | 51%減(38〜61%)。89%で53%減、80%で60%減 | 農水省の手引き(10点) |
| 五分づき(精米歩合95%) | 12〜25%減 | Naito 2015 |
| 白米の洗米(3回) | 約20%減(玄米はほとんど減らない) | 農水省の手引き |
| 無洗米加工(ぬか式) | 約10%減 | 農水省の手引き |
| 日本の通常の炊飯(水:米 1.4〜2.0:1、水を残さず) | 減らない | Naito 2015 |
| 水:米 6:1で炊いて湯を捨てる | 45%減 | Raab 2009 |
| 水:米 12:1で炊いて湯を捨てる | 57±5%減 | Carey 2015 |
| パーボイルして水を吸わせる | 玄米54%・白米73%減 | Menon 2021 |
多めの湯で炊いて捨てる方式は、水溶性のミネラル・ビタミンなどの栄養も一緒に逃げます。日本の水(ヒ素の少ない水)の条件での検証は見つかっていません。ヒ素を含む水(10・50 μg/L)で炊くと、米のヒ素が増えた報告もあります(Menon 2024)。
カドミウム:米はほとんど減らず、内臓には桁違いに多い
- 米:精米で2〜5%減るだけで、洗米・炊飯ではほぼ変化しません。玄米を100とした精米は、平均95%(令和4〜6年産)、96.8%(2001年の試験)です。
- 大豆の加工:大豆のカドミウムの61〜66%が豆腐に、残りがおからなどに移ります。味噌には80%程度(43〜83%)、醤油には40〜50%(43〜60%)が移ります。
- ゆでこぼしなどの調理でカドミウムが減る割合の公的なデータは、見つかりませんでした。
魚介類は、筋肉に比べて内臓に桁違いに多くなります(農水省、平成9〜14年度)。
| 食品 | 筋肉・可食部の平均 | 内臓の平均(最大) | 倍率 |
|---|---|---|---|
| スルメイカ | 0.29 | 33.90(96.00)肝臓 | 約117倍 |
| ホタテ | 0.12(貝柱) | 5.80(16.0)ウロ(中腸腺) | 約48倍 |
| サザエ | 0.05 | 4.65(9.5)内臓 | 約93倍 |
| アワビ | 0.04 | 3.11(5.6)内臓 | 約78倍 |
| ベニズワイガニ | 0.16 | 11.74(23.0)内臓 | 約73倍 |
| ケガニ | 0.08 | 1.99(3.50)みそ | 約25倍 |
| イカの塩辛 | — | 2.63(9.9) | — |
- 計算例(体重55.1kg、吸収率は考えない、ウラヨミの計算):食品安全委員会のTWI 7は週386 μgです。スルメイカの肝臓11gで386 μg、イカの塩辛20g(平均2.63)で52.6 μg(TWIの14%)、最大9.9のものなら198 μg(51%、EFSAの2.5なら144%)になります。
- TWIは長期の平均の目安で、1回の食事でこの割合を超えても直ちに問題とはならない、と消費者庁は説明しています。公的機関は内臓を「食べるな」とは言っておらず、同じ食品を毎日たくさん食べ続ける偏りに注意、バランスのよい食生活を、としています。
水銀:部位の差はなく、調理で減らす試験も見つかっていない
- 魚の部位による水銀の含有量の差はない、と食品安全委員会の資料(文献調査)は整理しています。
- 調理で魚の水銀が減る割合の公的な試験は、調べた範囲で見つかりませんでした。
- 国が示しているのは魚の種類と量です(妊婦向けの目安量。妊娠中の魚はどれだけ?)。体の中の水銀は、約2か月で半分に減ります(厚労省)。
鉛:皮をむく・茶・水道・缶詰・器
- さといも:皮つきの最大は0.09〜0.36 mg/kg でしたが、皮をむいたものは全て定量下限未満でした(農水省)。
- 緑茶:茶葉の鉛は、120点中77点が定量下限未満で、最大2.4は番茶1点でした。茶葉10gに90℃の湯450mLを60秒で、浸出液に出る鉛は約8.8%です。農水省は、茶は鉛の主要な摂取源ではないと結論しています。
- 水道水:食品安全委員会は、鉛製給水管を取り替えるまでの間、朝一番の水や長期不在後の水は飲用以外に使う(目安10〜15L)よう助言しています。
- 缶詰:内面を塗装していないブリキ缶は、開けて缶のまま置くとスズが溶けやすくなるので、ガラス・陶器・プラスチックの容器に移して冷蔵する、と業界団体は案内しています(業界団体の説明として扱います。スズの摂取は耐容量の約0.3%)。
- 器:食品安全委員会は、食器用でない装飾用の陶磁器を、食器に使わないよう助言しています。
減らす代わりに失うもの
- ひじき:鉄・食物繊維・カルシウムは7割以上残りますが、戻し水を捨てるため、水に溶け出すものは失われます。
- 米:多めの湯で炊いて捨てる方式では、水溶性のミネラル・ビタミンも減ります。玄米は白米より、ビタミンB1・E、鉄分、食物繊維が豊富です(農水省)。
- 精米を進めるほどヒ素は減りますが、玄米に多い栄養も減ります。
- どの方法も、「これをすれば安全」という線を示したものではありません。減少率は、示された条件での値です。
出典
- 農水省 ひじき中のヒ素(家庭調理の試験)
- 農水省『コメ中のヒ素の低減のための手引き』
- 農水省 農産物に含まれる鉛の実態調査
- 農水省 令和元年度 緑茶中の鉛及びアルミニウム等の含有実態調査
- 農水省 国内農畜水産物のカドミウム濃度(魚介類)
- 農水省 カドミウムの加工による変化
- 消費者庁『食品中のカドミウムに関するQ&A』
- 食品安全委員会『鉛』の評価書に関する Q&A
- 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 Q&A(開缶後の保存)
- Naito S ほか. Food Chem 2015(PMID 25172713)
- Carey M ほか. PLoS One 2015(PMID 26200355)
- Menon M ほか. Sci Total Environ 2021(PMID 33153748)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。