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食品の重金属データベース解説確認日 2026.10.03

妊娠中の魚はどれだけ食べていい? マグロ・ツナ缶・キンメダイの目安と水銀の数字

厚労省の「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」の16種の目安量と、その計算のしかた、マグロとツナ缶の分け方、魚を食べる利点との比較を、公的資料の数字で整理します。

結論

厚労省の注意事項の対象は、妊娠している人・妊娠の可能性がある人だけです。子ども・授乳中の人・妊婦以外の大人は対象外です。

量の目安がある魚は16種です。週1回(約80g)まで:キンメダイ・メカジキ・クロマグロ(本マグロ)・メバチ・エッチュウバイガイ・ツチクジラ・マッコウクジラ。週2回(約160g)まで:キダイ・マカジキ・ユメカサゴ・ミナミマグロ・ヨシキリザメ・イシイルカ・クロムツ。コビレゴンドウは2週に1回、バンドウイルカは2か月に1回までです。

キハダ・ビンナガ・メジマグロ(クロマグロの幼魚)・ツナ缶は、通常の摂食で差し支えないとされています。エビ・サケ・タラは表になく、水銀の濃度は低く、特に注意を促す必要はない、と厚労省は説明しています。厚労省は、水銀の濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではない、とも書いています。

目安量の表(2010年6月1日改訂)

「1回約80g」は、刺身1人前・切り身1切れほどです(寿司・刺身1貫または1切れは約15g程度)。表の量は筋肉部の量です。右端の列は、公表された平均値からウラヨミが計算した「1食80gで、週の耐容量(食品安全委員会の2.0 μg/kg×55.5kg=111 μg)の何%か」です。

魚介類妊婦への目安メチル水銀の平均 mg/kg(検体数)1食80gで週の耐容量の
バンドウイルカ2か月に1回まで(約10g/週)6.622(5)477%
コビレゴンドウ2週に1回まで(約40g/週)1.488(4)107%
キンメダイ週1回まで(約80g/週)0.535(102)39%
メカジキ週1回まで(約80g/週)0.712(49)51%
クロマグロ(本マグロ)週1回まで(約80g/週)0.525(140)38%
メバチ週1回まで(約80g/週)0.539(91)39%
エッチュウバイガイ週1回まで(約80g/週)0.485(10)35%
ツチクジラ週1回まで(約80g/週)0.698(5)50%
マッコウクジラ週1回まで(約80g/週)0.7(5)50%
キダイ週2回まで(約160g/週)0.343(34)25%
マカジキ週2回まで(約160g/週)0.372(32)27%
ユメカサゴ週2回まで(約160g/週)0.309(139)22%
ミナミマグロ週2回まで(約160g/週)0.386(95)28%
ヨシキリザメ週2回まで(約160g/週)0.35(30)25%
イシイルカ週2回まで(約160g/週)0.37(4)27%
クロムツ週2回まで(約160g/週)。2010年6月に追加0.339(142)24%
キハダ(キハダマグロ)通常の摂食で差し支えない0.194(52)14%
ビンナガ通常の摂食で差し支えない0.164(15)12%
クロマグロの幼魚(メジマグロ)通常の摂食で差し支えない0.206(7)15%
ツナ缶(マグロ油漬フレーク)通常の摂食で差し支えない0.109(23)8%

クジラ・イルカは検体数が4〜5と少なく、平均が不安定です。バンドウイルカは1食で週の耐容量の約4.8倍になるため、目安は2か月に1回です。

魚介類の種類ごとの総水銀の平均(日本) 日本で測った総水銀の平均(mg/kg)の横棒グラフ。高い順に メカジキ 1.003、メバチ 0.832、クロマグロ 0.687、キンメダイ 0.654、マカジキ 0.515、ミナミマグロ 0.506、クロムツ 0.393、キダイ 0.313、キハダ 0.27、ビンナガ 0.229、ウナギ(蒲焼) 0.219、メジマグロ 0.165、カツオ 0.154、マサバ 0.151、ブリ 0.145、マダイ 0.127、ツナ缶 0.11、マダラ 0.099、スルメイカ 0.054、サンマ 0.052、マアジ 0.049、サケ 0.034、マイワシ 0.024、ホタテ 0.009、アサリ 0.008。濃い棒は妊婦への注意事項の表に載っている魚。破線は日本の暫定的規制値0.4(マグロ類・深海性魚介類・河川の魚には適用しない)。 妊婦への注意事項の表にある魚 表にない魚介 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 暫定的規制値 0.4 メカジキ メカジキ 1.003 mg/kg(n=51) 1.003 メバチ メバチ 0.832 mg/kg(n=113) 0.832 クロマグロ クロマグロ 0.687 mg/kg(n=163) 0.687 キンメダイ キンメダイ 0.654 mg/kg(n=145) 0.654 マカジキ マカジキ 0.515 mg/kg(n=35) 0.515 ミナミマグロ ミナミマグロ 0.506 mg/kg(n=102) 0.506 クロムツ クロムツ 0.393 mg/kg(n=173) 0.393 キダイ キダイ 0.313 mg/kg(n=54) 0.313 キハダ キハダ 0.27 mg/kg(n=209) 0.27 ビンナガ ビンナガ 0.229 mg/kg(n=21) 0.229 ウナギ(蒲焼) ウナギ(蒲焼) 0.219 mg/kg(n=63) 0.219 メジマグロ メジマグロ 0.165 mg/kg(n=36) 0.165 カツオ カツオ 0.154 mg/kg(n=79) 0.154 マサバ マサバ 0.151 mg/kg(n=212) 0.151 ブリ ブリ 0.145 mg/kg(n=199) 0.145 マダイ マダイ 0.127 mg/kg(n=478) 0.127 ツナ缶 ツナ缶 0.11 mg/kg(n=24) 0.11 マダラ マダラ 0.099 mg/kg(n=73) 0.099 スルメイカ スルメイカ 0.054 mg/kg(n=141) 0.054 サンマ サンマ 0.052 mg/kg(n=195) 0.052 マアジ マアジ 0.049 mg/kg(n=378) 0.049 サケ サケ 0.034 mg/kg(n=85) 0.034 マイワシ マイワシ 0.024 mg/kg(n=159) 0.024 ホタテ ホタテ 0.009 mg/kg(n=234) 0.009 アサリ アサリ 0.008 mg/kg(n=254) 0.008
魚介類ごとの総水銀の平均(国内、mg/kg。厚労省 2010年5月、平成20年度までの集計)

目安量の計算のしかた

  • 耐容量:食品安全委員会の週2.0 μg/kg × 妊婦の平均体重55.5kg = 週111 μg。
  • 引くもの:魚以外の食品の水銀(0.99 μg/日)と、表の対象にならない魚介類(魚介類由来7.18 μg/日の半分)を引くと、対象の魚に割り当てられる水銀は週78.94 μgです。
  • 魚ごとに割る:魚のメチル水銀の平均で割ります(例:メカジキ 78.94÷0.712=110.9 g/週)。
  • 表に載せる線:1回80gで週3回(240g)食べられない魚が、表に載りました。
  • 2010年6月の再計算で、エッチュウバイガイとユメカサゴは試算では目安が緩むことになりましたが、「目安」であることから据え置かれました。
  • 物差しで割合が変わります。同じメカジキ1食80g(メチル水銀57.0 μg)は、食品安全委員会の2.0に対して週の耐容量の51%、EFSA の1.3(週72.2 μg)に対しては79%です。耐容量は、厚生省1973年3.4・JECFA 2003年1.6・食品安全委員会2005年2.0・EFSA 2012年1.3と、機関によって約3倍違います。

組み合わせて食べるとき・食べ過ぎたとき(厚労省 Q&A)

  • 同じ週に「週1回」の魚を2種類・3種類食べるなら、量をそれぞれ2分の1・3分の1に。「週1回」と「週2回」の魚を同じ週に食べるなら、量をそれぞれ2分の1にします。
  • 食べ過ぎたら、次の週に減らします。1回または1週間の摂食が、体内の水銀の濃度を大きく変えるものではない、と説明されています。
  • 献立例(Q&A):マカジキの刺身1人前+ミナミマグロの刺身1人前(週2回まで枠のものを2回)+注意の要らない魚(サンマの塩焼き・アジのたたき・ツナサラダなど)。サンマ・アジ・サバ・イワシ・イカも「注意が必要ないもの」に入っています。
  • 妊娠に気づくのが遅れたとき:胎盤の形成は一般に妊娠4か月です。体内の水銀が半分に減る期間は約2か月です。気づいた段階から調整すれば、一定の効果が期待できるとされます。毛髪の水銀濃度の測定は不要(海外にも勧めている国はない)とされています。
  • 食品安全委員会の評価では、15〜49歳の女性の毛髪水銀の99.9%が10ppm以下で、耐容量の出発点(11ppm)を下回ります。
  • 加工食品は、いろいろな食材から作られているので、特に注意するものではないとされています。地方自治体には、母子健康手帳へ掲載することが推奨されています。

同じマグロでも分かれる:マグロ・ツナ缶、日本と米国

マグロで対象なのは、クロマグロ・ミナミマグロ・メバチです。キハダ・ビンナガ・メジマグロは対象外で、ツナ缶も通常の摂食で差し支えないとされています。国内の流通品では、ホワイトミートはビンナガ、ライトミートはキハダ・メバチ・カツオです。厚労省の調査のツナ缶(マグロ油漬フレーク)の原料の魚種は、資料に書かれていません。

魚日本の総水銀 mg/kg(検体数)米国 FDA の対応する魚(検体数)日本の妊婦向け目安米国 FDA/EPA 2021年の助言
メカジキ1.003(51)Swordfish 0.995(636)週80gまで避ける
メバチ0.832(113)Bigeye 0.689(21)週80gまで避ける
キハダ0.270(209)Yellowfin 0.354(231)制限なし週1回(Good)
ビンナガ0.229(21)Albacore 0.358(43)制限なし週1回(Good)
ツナ缶0.110(24)缶詰ライト 0.126(545)制限なし週2〜3回(Best)
ツナ缶0.110(24)缶詰アルバコア 0.350(451)制限なし週1回(Good)
ヨシキリザメ0.544(30)Shark 0.979(356)週160gまで避ける
マカジキ0.515(35)Marlin 0.485(16)週160gまで避ける
サケ0.034(85)Salmon 0.022(94)制限なし週2〜3回(Best)
  • 日本の「制限なし」は、注意事項の目安表に載っていない、という意味です。米国の濃度は FDA の公表表(1990〜2012年)、助言は2021年10月のものです。
  • 違うのは濃度ではなく、線引きの仕方です。日本は16種に量の目安を付け、米国は魚を3つに分類しています。メバチは、日本は週80gまで、米国は「避ける」。キハダは、日本は制限なし、米国は週1回です。なぜ違うかを説明した両国の資料は見つかっていません。
  • 米国の缶詰では、アルバコア(ホワイト)の水銀(平均0.350)が、ライト(0.126)の約2.8倍で、助言も分かれています。

魚を食べる利点との比較

国際機関の評価は、魚を食べることの利点を認めています。観察研究は「関連」を示すもので、「魚を食べると子どもの言語IQが上がる」と因果で書くことはできません。

資料内容
FAO/WHO 合同専門家会合(2010年)評価した大半の状況で、妊娠可能年齢の女性が魚を食べると、食べない場合より子の神経発達の不良のリスクが下がる。成人では、魚(特に脂の多い魚)が冠動脈疾患死亡のリスクを下げる、とされる
EFSA(2014年)週1〜2回(妊娠中は3〜4回まで)の魚介類は、食べない場合より子の神経発達が良好と関連。水銀の多い魚種は制限すべきとした
ALSPAC(英国、Hibbeln 2007)妊婦11,875人。魚介類が週340g未満の母の子は、言語IQが下位4分の1になる確率が高い(魚介類を食べない群 OR 1.48、95%CI 1.16〜1.90)。観察研究で、水銀自体は測っていない
Project Viva(米国、Oken 2005)135組。魚を1回増やすと6か月児の視覚認知記憶スコアが4.0点高い一方、毛髪水銀が1 ppm増えると7.5点低い
Choi ら(フェロー、2014年)脂肪酸の影響を調整すると、メチル水銀と記憶の関連が強まる(調整しないと、水銀の害も魚の利点も小さく見える)

セレンが水銀の毒性を防ぐという仮説(総説)があります。仮説・総説の段階で、食品安全委員会も、栄養素など他の成分の影響は評価できなかったと回答しています。「セレンのある魚なら水銀は大丈夫」とは言えません。

疫学の結論は割れ、日本の実測では関連が見つかっていない

  • フェロー諸島(出生1,022人、7歳で917人検査):胎児期のメチル水銀と、言語・注意・記憶の低下が関連しました。母親の毛髪水銀10 μg/g 超を除いても同じ関連でした。
  • セイシェル(779組、母親は平均して週12食の魚、毛髪水銀の平均6.9 ppm):9歳までの神経発達のリスクを支持しませんでした。
  • 日本(エコチル調査):臍帯血3,822人のメチル水銀の中央値は7.39 ng/mL。2歳・4歳の発達検査(3,083人)で水銀との有意な関連はありませんでした。著者は、安全な摂取量の閾値の勧告にはさらなる研究が必要と書いています。
  • クジラ・イルカを多く食べる太地町:住民1,017人の毛髪水銀は国内14地域より高く、50 ppm超は32人(3.1%)でした。中毒の可能性を疑わせる人は認められませんでしたが、調査の継続が検討されています。
  • 食事全体では、2024年の日本人のメチル水銀のハザード比は0.24〜0.36(国立医薬品食品衛生研究所)。水銀の摂取量の90.0%は魚介類由来です。
  • 限界:魚種ごとの濃度は平成20年度までの集計で、総水銀とメチル水銀は同じ検体ではありません。目安量の表は2010年6月以降改訂されていません。

出典

最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。

重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。

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