食品の重金属データベース魚確認日 2026.10.03
クジラ・イルカの水銀
クジラ・イルカのうち、ハクジラ類(バンドウイルカ・コビレゴンドウ・ツチクジラ・マッコウクジラ・イシイルカ)は、水銀の多いものがあり、妊婦向けの目安量の対象です。バンドウイルカの総水銀の平均は 20.84 ppm(5点)と、クロマグロ(0.687 ppm)の約30倍でした。一方、ヒゲクジラ類のミンククジラは低めです。ただし、調べた検体は4〜13点と少ない種が多く、平均は安定しません。
日本の公的調査などで測った値
| 金属 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 | 検体数 | 調査 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水銀 | バンドウイルカ・総水銀 | 20.840 | 1.000〜37.000 | 5点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | バンドウイルカ・メチル水銀 | 6.622 | 0.610〜9.700 | 5点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | コビレゴンドウ・総水銀 | 7.100 | 4.700〜8.900 | 4点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | コビレゴンドウ・メチル水銀 | 1.488 | 0.450〜2.300 | 4点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ツチクジラ・総水銀 | 1.168 | 0.440〜2.600 | 5点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ツチクジラ・メチル水銀 | 0.698 | 0.370〜1.300 | 5点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | マッコウクジラ・総水銀 | 2.100 | 0.860〜4.600 | 13点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | マッコウクジラ・メチル水銀 | 0.700 | 0.450〜1.100 | 5点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | イシイルカ・総水銀 | 1.035 | 0.740〜1.200 | 4点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | イシイルカ・メチル水銀 | 0.370 | 0.020〜0.670 | 4点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ミンククジラ・総水銀 | 0.154 | 最大0.830 | 874点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ミンククジラ・メチル水銀 | 0.120 | 0.017〜0.190 | 40点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ニタリクジラ・総水銀 | 0.048 | 0.004〜0.120 | 94点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ニタリクジラ・メチル水銀 | 0.025 | 0.001〜0.037 | 43点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
単位は mg/kg(=ppm)。可食部の流通品で、湿重量とみられます(資料に明記なし)。総水銀とメチル水銀は、必ずしも同じ検体を測ったものではありません。メチル水銀は種ごとに検体数が4〜5点しかないものがあります。
食べる量の目安(国の注意事項)
- 対象は「妊娠している人、妊娠の可能性がある人」です(厚生労働省、2010年6月改訂)。子ども、授乳中の人、妊婦以外の大人は対象外です。
- バンドウイルカ:2か月に1回まで(約10g/週)。
- コビレゴンドウ:2週に1回まで(約40g/週)。
- ツチクジラ・マッコウクジラ:週1回まで(約80g/週)。
- イシイルカ:週2回まで(約160g/週)。
- ミンククジラ・ニタリクジラなどのヒゲクジラ類は、目安量の表に載っていません(水銀濃度は高くないとされています)。
- 同じ週に「週1回まで」の魚を2種類食べるなら、量をそれぞれ2分の1に。「週1回まで」と「週2回まで」の魚を同じ週に食べるなら、量をそれぞれ2分の1にします。
- 食べ過ぎた週があっても、1回や1週間の摂食で体内の水銀濃度が大きく変わるわけではなく、次の週に減らせばよいと説明されています。
基準値(日本・国際・EU)
| 定めた機関 | 基準値 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本(水銀) | 魚介類の暫定的規制値(総水銀 0.4 ppm・メチル水銀 0.3 ppm)はあるが、クジラ・イルカへの適用は資料で確認できていません | 国の目安は、妊婦向けの注意事項(下の「食べる量の目安」)です。注意事項の「魚介類」には、クジラ類(クジラ・イルカ)が含まれます。 |
| Codex・EU(水銀) | クジラ・イルカ専用の基準値は確認できませんでした | 魚類のガイドライン値・最大基準値は魚介類向けです。 |
知っておきたいこと
- 桁が違います。バンドウイルカは、1食(約80g)のメチル水銀が約530 μgで、週の耐容量(週111 μg、体重55.5 kg の場合)の約4.8倍(477%)にあたります。コビレゴンドウは約119 μgで約107%、ツチクジラ・マッコウクジラは約56 μgで約50%、イシイルカは約30 μgで約27%です(ウラヨミの試算)。
- 検体数が少ない種が多く、平均は安定しません。バンドウイルカ 5点、コビレゴンドウ 4点、ツチクジラ 5点、イシイルカ 4点です。「この種は危険/安全」と、平均だけで言い切ることはできません。ミンククジラ(総水銀 874点)のように検体が多いものもあります。
- ハクジラ類とヒゲクジラ類で違います。厚労省は、ハクジラ類の一部(イシイルカ・バンドウイルカ・ツチクジラ・コビレゴンドウ・マッコウクジラ)は水銀濃度の高いものがあり、ヒゲクジラ類(ミンククジラ等)の水銀濃度は高くないと説明しています。
- 和歌山県太地町の調査(2009年夏)では、住民1,017人の毛髪水銀の幾何平均が男性 11.0 ppm・女性 6.63 ppm で、国内14地域(男性 2.47・女性 1.64)より顕著に高く、クジラ・イルカの摂取との関連が示唆されました。50 ppm超は32人(3.1%)です。「メチル水銀中毒の可能性を疑わせる者は認められなかった」とされましたが、毛髪水銀の非常に高い人がいるため、調査の継続が検討されました。横断調査なので、原因や長期の影響は断定できません。
- 疫学研究は結論が割れています。フェロー諸島(ゴンドウクジラ由来、出生1,022人、7歳で917人を検査)は、胎児期のばく露と言語・注意・記憶の低下が関連。セイシェル(779組、母は週に平均12回魚を食べる、9歳)は神経発達のリスクを支持しませんでした。食品安全委員会は両方を根拠に耐容量を計算していますが、魚の栄養素など他の成分の影響は評価できなかったと回答しています。
- 厚労省は、妊婦以外にも、クジラ・イルカなど水銀の特に多い魚介類は偏って食べず、バランスの良い食生活を心がけるよう呼びかけています。国内14地域のアンケートで、クジラを「よく食べる」人は0.7%でした。
関連する解説
金属ごとのページ
出典
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」(2010年6月改訂)
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」Q&A
- 厚生労働省 資料2-4「魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)」(2010年5月)
- 環境省 国立水俣病総合研究センター「太地町における水銀と住民の健康影響に関する調査」平成21年度報告(厚労省資料2-2)
- 食品安全委員会 メチル水銀の耐容週間摂取量の評価(2005年8月)— 厚労省掲載資料
- Grandjean P ほか. Neurotoxicol Teratol 1997;19:417-428(フェロー諸島)(PMID 9392777)
- Myers GJ ほか. Lancet 2003;361:1686-1692(セイシェル)(PMID 12767734)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。