食品の重金属データベース魚確認日 2026.10.03
クロマグロ(本マグロ)・ミナミマグロの水銀
クロマグロ(本マグロ)とミナミマグロ(インドマグロ)は、食物連鎖の上のほうにいる大きな魚で、体にたまるメチル水銀(水銀が魚の体内で変化した形)が比較的多い魚です。厚生労働省は、妊娠している人・妊娠の可能性がある人に限って、食べる量の目安を示しています。国内の集計では、総水銀の平均がクロマグロ 0.687 ppm、ミナミマグロ 0.506 ppm でした。
日本の公的調査などで測った値
| 金属 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 | 検体数 | 調査 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水銀 | クロマグロ・総水銀 | 0.687 | 0.047〜6.100 | 163点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | クロマグロ・メチル水銀 | 0.525 | 0.047〜4.200 | 140点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ミナミマグロ・総水銀 | 0.506 | 0.180〜2.600 | 102点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | ミナミマグロ・メチル水銀 | 0.386 | 0.090〜2.000 | 95点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | クロマグロ(天然)・総水銀 | 0.69(中央値0.65) | 0.27〜2.3 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | クロマグロ(天然)・メチル水銀 | 0.60(中央値0.55) | 0.26〜1.8 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | クロマグロ(養殖)・総水銀 | 0.49(中央値0.43) | 0.14〜2.0 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | クロマグロ(養殖)・メチル水銀 | 0.42(中央値0.36) | 0.12〜1.7 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | ミナミマグロ(天然)・総水銀 | 0.81(中央値0.58) | 0.28〜4.4 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | ミナミマグロ(天然)・メチル水銀 | 0.69(中央値0.52) | 0.26〜2.9 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | ミナミマグロ(養殖)・総水銀 | 0.32(中央値0.33) | 0.10〜0.59 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | ミナミマグロ(養殖)・メチル水銀 | 0.27(中央値0.28) | 0.08〜0.43 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
単位は mg/kg(=ppm)。可食部の流通品で、湿重量とみられます(資料に明記なし)。総水銀とメチル水銀は、必ずしも同じ検体を測ったものではありません。農水省(平成19〜22年度)の行は、平均に中央値を併記しています。
食べる量の目安(国の注意事項)
- 対象は「妊娠している人、妊娠の可能性がある人」です(厚生労働省、2010年6月改訂)。子ども、授乳中の人、妊婦以外の大人は対象外です。
- クロマグロ(本マグロ):週1回まで(約80g/週)。
- ミナミマグロ(インドマグロ):週2回まで(約160g/週)。
- 1回の量は約80g(刺身1人前・切り身1切れ)として計算されています。寿司・刺身1貫または1切れは約15gです。
- 同じ週に「週1回まで」の魚を2種類食べるなら、量をそれぞれ2分の1に。「週1回まで」と「週2回まで」の魚を同じ週に食べるなら、量をそれぞれ2分の1にします。
- 食べ過ぎた週があっても、1回や1週間の摂食で体内の水銀濃度が大きく変わるわけではなく、次の週に減らせばよいと説明されています。
基準値(日本・国際・EU)
| 定めた機関 | 基準値 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本(水銀) | 総水銀 0.4 ppm・メチル水銀 0.3 ppm(魚介類の暫定的規制値) | 1973年(昭和48年)に厚生省が通知した値です。マグロ類(マグロ・カジキ・カツオ)、河川産の魚介類(湖沼産を除く)、深海性魚介類などには適用されません。適用除外の理由を書いた公的な資料は見つかりませんでした。 |
| Codex(水銀) | メチル水銀 0.5 mg/kg(魚類のガイドライン値)。サメ・メカジキ・マグロ類などの捕食魚は 1 mg/kg | 1991年の Codex 委員会のガイドラインです。 |
| EU(水銀) | 1.0 mg/kg(マグロ類・カツオ・サメ・メカジキなどの筋肉) | 規則(EU)2023/915 に引き継がれた、規則 2022/617 の値です。湿重量です。 |
知っておきたいこと
- 国の注意事項の対象は、妊娠している人・妊娠の可能性がある人だけです。食品安全委員会が「最も影響を受けやすいのは胎児」と判断したためで、子ども・授乳中の人・妊婦以外の大人は対象外です。厚労省は、妊婦に水銀の多い魚を食べないよう求めるものではない、とも明記しています。→ 妊娠中の魚はどれだけ?
- 魚介類の暫定的規制値(総水銀 0.4 ppm)は、マグロ類には適用されません。クロマグロの平均(0.687)はこれを上回りますが、規制値の対象外で、代わりに妊婦向けの目安量が個別に付いています。適用除外の理由を書いた公的な資料は見つかりませんでした。
- 1食(約80g)に入るメチル水銀は、国内平均でクロマグロ(0.525 ppm)が約42 μg、ミナミマグロ(0.386 ppm)が約31 μgです。食品安全委員会の耐容量(週 2.0 μg/kg、体重55.5 kg なら週111 μg)の約38%と約28%にあたります(ウラヨミの試算)。
- 農水省の調査(平成19〜22年度、各120点)では、メチル水銀の平均はクロマグロが天然 0.60・養殖 0.42、ミナミマグロが天然 0.69・養殖 0.27 でした。同じ魚種でも個体差が大きく、厚労省の集計ではクロマグロの総水銀が最大 6.1 ppm の個体もあります。
- 「どこまでなら大丈夫か」の物差しは、機関によって約3倍違います。耐容量は、食品安全委員会(2005年)が週 2.0、JECFA(2003年)が 1.6、EFSA(2012年)が 1.3 μg/kg 体重、米国 EPA(2001年)は週に直すと 0.7 です。→ 水銀のページ
- FAO/WHO 合同専門家会合(2010年)は、評価した大半の状況で、妊娠可能な年齢の女性が魚を食べると、食べない場合より子の神経発達の不良のリスクが下がるとされています。厚労省も、水銀の多い魚を偏って多量に食べるのを避けて、魚を食べる良さを活かすよう呼びかけています。
- 魚種別の濃度は平成20年度までの集計(2010年5月)で、今の流通品とは違うかもしれません。国の目安の表も2010年6月以降は改訂されていません。魚の部位による水銀量の差はないと、食品安全委員会の資料(文献調査の転載)で整理されています。カドミウムは筋肉では低く、農水省の調査でクロマグロ <0.01(5点)、ミナミマグロ 0.03(最大0.06、5点)でした。
関連する解説
金属ごとのページ
出典
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」(2010年6月改訂)
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」Q&A
- 厚生労働省 資料2-4「魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)」(2010年5月)
- 農林水産省「有害化学物質含有実態調査結果データ集(平成15〜22年度)」
- 農林水産省「魚介類の水銀の暫定的規制値」
- 食品安全委員会 メチル水銀の耐容週間摂取量の評価(2005年8月)— 厚労省掲載資料
- 欧州委員会 規則(EU)2022/617(食品中の水銀の最大基準値)
- FAO/WHO 合同専門家会合「魚食のリスクと便益」報告(2010年)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。