食品の重金属データベース魚確認日 2026.10.03
メバチの水銀
メバチ(メバチマグロ、バチマグロ)は、クロマグロ・ミナミマグロとともに、妊婦向けの目安量の対象になっているマグロです。国内の集計では、総水銀の平均が 0.832 ppm、メチル水銀の平均が 0.539 ppm でした。米国の FDA と EPA は、同じメバチを「避けたい魚」に分類しています。
日本の公的調査などで測った値
| 金属 | 形態・状態 | 平均 | 範囲・最大 | 検体数 | 調査 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水銀 | 総水銀 | 0.832 | 0.120〜9.900 | 113点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | メチル水銀 | 0.539 | 0.180〜2.300 | 91点 | 厚労省 平成20年度まで集計 |
| 水銀 | 総水銀 | 0.64(中央値0.46) | 0.18〜2.3 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
| 水銀 | メチル水銀 | 0.55(中央値0.40) | 0.16〜2.0 | 120点 | 農水省 平成19〜22年度 |
単位は mg/kg(=ppm)。可食部の流通品で、湿重量とみられます(資料に明記なし)。総水銀とメチル水銀は、必ずしも同じ検体を測ったものではありません。農水省(平成19〜22年度)の行は、平均に中央値を併記しています。
食べる量の目安(国の注意事項)
- 対象は「妊娠している人、妊娠の可能性がある人」です(厚生労働省、2010年6月改訂)。子ども、授乳中の人、妊婦以外の大人は対象外です。
- メバチ(メバチマグロ):週1回まで(約80g/週)。
- 1回の量は約80g(刺身1人前・切り身1切れ)として計算されています。寿司・刺身1貫または1切れは約15gです。
- 同じ週に「週1回まで」の魚を2種類食べるなら、量をそれぞれ2分の1に。「週1回まで」と「週2回まで」の魚を同じ週に食べるなら、量をそれぞれ2分の1にします。
- 食べ過ぎた週があっても、1回や1週間の摂食で体内の水銀濃度が大きく変わるわけではなく、次の週に減らせばよいと説明されています。
基準値(日本・国際・EU)
| 定めた機関 | 基準値 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本(水銀) | 総水銀 0.4 ppm・メチル水銀 0.3 ppm(魚介類の暫定的規制値) | 1973年(昭和48年)に厚生省が通知した値です。マグロ類(マグロ・カジキ・カツオ)、河川産の魚介類(湖沼産を除く)、深海性魚介類などには適用されません。適用除外の理由を書いた公的な資料は見つかりませんでした。 |
| Codex(水銀) | メチル水銀 0.5 mg/kg(魚類のガイドライン値)。サメ・メカジキ・マグロ類などの捕食魚は 1 mg/kg | 1991年の Codex 委員会のガイドラインです。 |
| EU(水銀) | 1.0 mg/kg(マグロ類・カツオ・サメ・メカジキなどの筋肉) | 規則(EU)2023/915 に引き継がれた、規則 2022/617 の値です。湿重量です。 |
| 米国 FDA/EPA の助言(2021年) | Choices to Avoid(避けたい魚) | 妊娠中・授乳中の人と1〜11歳の子ども向けの助言です。1回量は約113g(4オンス)です。 |
知っておきたいこと
- メバチは2005年11月に、クロマグロ・ミナミマグロとともに目安量の対象に加わりました。国民栄養調査の解析で、マグロは刺身・寿司・鉄火丼で1回60〜100gを食べる人が多いことも理由とされています。→ 妊娠中の魚はどれだけ?
- 平均(総水銀 0.832 ppm)は暫定的規制値の 0.4 を超えますが、マグロ類は規制値の適用除外です。代わりに妊婦向けの目安量があります。
- 日本は「週1回まで(約80g)」、米国は「避ける」と、同じメバチへの助言が違います。濃度の差は小さく、米国の調査では総水銀の平均が 0.689 ppm(21点)、日本の集計では 0.832 ppm(113点)です。線引きが違う理由を説明した両国の資料は見つかっていません。
- 1食(約80g)に入るメチル水銀は、メバチ(平均0.539 ppm)で約43 μgです。食品安全委員会の耐容量(週 2.0 μg/kg、体重55.5 kg なら週111 μg)の約39%にあたります(ウラヨミの試算)。
- 個体差が大きい魚で、総水銀の最大は 9.9 ppm(1点)、メチル水銀の最大は 2.3 ppm でした。農水省の調査(平成19〜22年度、120点)の最大は総水銀 2.3、メチル水銀 2.0 ppm です。
- 日本の妊婦のデータもあります。環境省の子どもの健康調査(エコチル調査)では、臍帯血3,822人のメチル水銀の中央値は 7.39 ng/mL で、2歳・4歳の発達検査(3,083人)との有意な関連は見つかりませんでした。魚の中では「かつお・まぐろ」が臍帯血の水銀といちばん相関しました。著者は、安全な摂取量の目安を勧告するにはさらなる研究が必要と書いています。
- カドミウムは筋肉では低く、農水省の調査でメバチ 0.02(5点)です。魚の調査値は平成20年度までの集計で、今の流通品とは違うかもしれません。
関連する解説
金属ごとのページ
出典
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」(2010年6月改訂)
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」Q&A
- 厚生労働省 資料2-4「魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)」(2010年5月)
- 農林水産省「有害化学物質含有実態調査結果データ集(平成15〜22年度)」
- 米国 FDA/EPA「Advice about Eating Fish」(2021年10月)
- 米国 FDA「Mercury Levels in Commercial Fish and Shellfish(1990-2012)」
- Kuraoka ほか. Sci Total Environ 2024(エコチル調査・臍帯血のメチル水銀と発達)(PMID 39528210)
- 欧州委員会 規則(EU)2022/617(食品中の水銀の最大基準値)
最終確認日 2026.10.03(公的機関の資料・論文の原典で確認し、Gemini Notebook に集めて照合)。
重金属は自然の土や海にもともとある物質で、どの食品にも少しずつ含まれます。このページは、公的機関の調査・基準・評価と論文に書かれている事実を並べたもので、食品の良し悪しを判定するものではありません。妊娠中の方の魚の食べ方など、国の注意事項があるものはそれに従ってください。