マイクロプラスチック データベース解説確認日 2026.10.01
マイクロプラスチックは体のどこから見つかった? 血液・胎盤・脳・動脈の研究と批判
部位ごとの研究と、「脂肪をプラスチックと数えている」という測り方への批判
結論
血液・胎盤・母乳・肺・便・動脈・脳などから見つかったという報告があります。ただし、人の体の研究101件を品質の基準で点検した2026年の研究では、必須の基準をすべて満たした研究はゼロでした。
とくに、脂肪の多い組織を熱分解して測る方法(Py-GC/MS)は、脂肪をポリエチレンと数えてしまうおそれがあると指摘されています。見つかった量が健康に影響するかは、わかっていません。
部位ごとの研究
| 部位 | 研究 | 測り方 | 結果 | 注意 |
|---|---|---|---|---|
| 血液 | Leslie ら(2022年) 22人 | Py-GC/MS(0.0007mm 以上) | 平均1mLあたり1.6μg。PET・ポリエチレン・スチレン系が多い | 同じ方法で脂肪の干渉を抑えた研究(Rauert 2025、8人)では、ポリエチレン以外は検出下限未満 |
| 胎盤 | Ragusa ら(2021年) 6人 | ラマン | 4人から12粒(0.005〜0.01mm) | プラスチックと特定できたのは3粒(色のついたポリプロピレン)。ほかは顔料だけ特定 |
| 胎盤 | Garcia ら(2024年) 62人 | Py-GC/MS | 全員から1gあたり6.5〜685μg(平均126.8μg)。ポリエチレンが重さの54% | 主な成分が、Py-GC/MS で見分けにくいとされるポリエチレン・PVC |
| 母乳 | Ragusa ら(2022年) 34人 | ラマン | 26人から(0.002〜0.012mm)。ポリエチレン・PVC・ポリプロピレン | 年齢・魚介・包装食品との関連はなかった |
| 肺 | Jenner ら(2022年) 13検体(手術) | μFTIR(0.003mm 以上) | 11検体から。空試験を引くと1gあたり0.69個。ポリプロピレン23%・PET 18% | 肺の下のほうに多い |
| 便 | Schwabl ら(2019年) 8人 | FTIR(0.05〜0.5mm) | 全員から。10gあたり中央値20個 | 人数が少ない |
| 便(日本) | Tsuji ら(2026年) 日本人22人 | FT-IR(0.02mm 超) | 1gあたり中央値7.20個 | 魚介をよく食べる人で多い傾向は、多重比較の補正で有意でなかった |
| 首の動脈のプラーク | Marfella ら(2024年、NEJM) 257人 | Py-GC/MS・電子顕微鏡 | 150人(58.4%)からポリエチレン(プラーク1mgあたり平均21.7μg)。約3年で心筋梗塞・脳卒中・死亡は20.0% 対 7.5% | 観察研究。著者は因果を示さない・検査室の汚染を否定できないと明記 |
| 脳 | Nihart ら(2025年) 解剖 1時点20〜28人 | Py-GC/MS | 2024年の中央値1gあたり4,917μg(2016年は3,345μg)。認知症の12人は26,076μg | 著者は因果を想定しないと明記。ドイツ BfR は「ありえないほど多い」、別の研究者は汚染管理と検証の不足を指摘 |
| 精巣 | Hu ら(2024年) 23人(犬47匹) | Py-GC/MS | 1gあたり平均328μg、主にポリエチレン | 空試験・検出限界の報告がないと批判(批判は米国化学工業協会の資金) |
| 肝臓 | Horvatits ら(2022年) 肝硬変6人・対照5人 | ラマン(0.004〜0.03mm) | 肝臓の病気のない人の肝臓・腎臓・脾臓からは見つからず、肝硬変の肝臓だけから | 同じ肝臓でも、Py-GC/MS の研究(Nihart)は中央値1gあたり433μg |
ほかに、精液(45人中34人から、PET の多い人で精子の運動率が低めだったが統計的に有意でない、2025年)、腎臓・尿、骨髄、関節の報告があります。
測り方への批判
- 脂肪とポリエチレン:脂肪は熱で分解するとポリエチレンと同じ物質を出すため、ポリエチレンを多く見積もるおそれがあります。PVC も見分けるための物質が脂肪酸からも出ます。オーストラリアの研究者は「Py-GC/MS は生体試料のポリエチレン・PVC の測定には現時点で適さない」と結論し、脂肪の影響を抑えて8人の血液を測ると、ポリエチレン以外は検出下限未満でした(Rauert ら 2025年)。
- 同じ臓器で桁が違う:肝臓は、ラマン(0.004〜0.03mm の粒を数える)では病気のない人から見つからず、Py-GC/MS では1gあたり中央値433μg でした。
- 脳の研究(2025年):批判した研究者は「脳は約6割が脂肪」と指摘しています(報道)。研究者らは「汚染の管理が限られ、検証の手順がない」と指摘し(Nat Med 2025年)、ドイツ BfR は測定量を「ありえないほど多い」としました。著者側は、批判の多くは実際のデータに基づかないと反論しています(報道)。
- 首の動脈の研究(NEJM 2024年):著者自身が、検査室での汚染を完全には否定できないと書いています。
- 胎盤の最初の研究(2021年):見つかった12粒のうち、プラスチックの種類まで特定できたのは3粒でした。
- 小さい粒は逆に見落とされる:0.001mm 未満の粒は、重さが小さすぎて Py-GC/MS の検出下限に届かず、ろ過する方法では抜け落ちます。新しい方法で胎盤を見ると、粒の73%が0.001mm 未満でした(Wouters ら 2026年)。
批判の側の研究資金
- 精巣の研究への批判(2025年)は、米国化学工業協会(American Chemistry Council)の資金による専門家パネルの論文です(論文に明記)。
- 血液の研究への批判(2024年)の著者は、化学会社 INEOS Styrolution・Borealis の社員で、1人は欧州プラスチック工業会から報酬を受けています(論文に明記)。
- 一方、脂肪の問題を示した Rauert 2025 は利益相反なしと申告しています。批判の中身は、資金とは別にデータで確かめる必要があります。
日本の研究
日本人22人の便を調べた研究(2026年、0.02mm 超を FT-IR で同定)では、1gあたり中央値7.20個でした(科研費・環境研究総合推進費)。食品安全委員会・厚生労働省・環境省が、体の中のマイクロプラスチックについて見解を出した資料は見つかりませんでした。
出典
- Leslie ら(2022年)(血液)
- Ragusa ら(2021年)(胎盤)
- Garcia ら(2024年)(胎盤)
- Ragusa ら(2022年)(母乳)
- Jenner ら(2022年)(肺)
- Schwabl ら(2019年)(便)
- Tsuji ら(2026年)(便(日本))
- Marfella ら(2024年、NEJM)(首の動脈のプラーク)
- Nihart ら(2025年)(脳)
- Hu ら(2024年)(精巣)
- Horvatits ら(2022年)(肝臓)
- Rauert C ほか. Environ Sci Technol 2025;59(4):1984-1994
- Lane ほか. Environ Int 2026;214:110429
- Monikh FA, Materić D ほか. Nat Med 2025;31:4034(脳の研究への批判)
- Uppu RM ほか. Toxicol Sci 2025(精巣の研究への批判)
- Wilhelmus ほか. Microplastics and Nanoplastics 2024;4:28(血液の研究への批判)
- BfR「Microplastics in the brain」2025
- Wouters ほか. ACS Nano 2026(胎盤の 1μm 未満の粒)
- Guo ほか. 2025(精液)
- The Guardian「‘A bombshell’: doubt cast on discovery of microplastics throughout human body」2026年1月13日(報道)
最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。研究や制度は変わることがあります。
このページは、公的機関の資料・法令・査読論文に書かれている事実を並べたものです。マイクロプラスチックの測り方は研究ごとに違い、数字をそのまま比べられないことがあります。WHO・FAO・EFSA などの公的機関は、今のところ特定の食品を控えるような個人向けの食事制限は勧めていません。