マイクロプラスチック データベース解説確認日 2026.10.01
「週にクレジットカード1枚分」は本当? マイクロプラスチックを食べている量の推定
週5gの推定と、約100万分の1という推定。なぜ桁がこんなに違うのか
結論
「週5g(クレジットカード1枚分)」は、2021年の論文が出した推定の幅(週0.1〜5g)の上限で、WWF が「平均」として広めた数字です。
同じ年の別の研究は、大人の中央値を週約4.1μg(5gの約100万分の1)と推定し、「5gは私たちの分布の99パーセンタイルより上で、平均的な人を表していない」と書いています。
主な推定
| 推定 | 単位 | 値 | もとにしたもの |
|---|---|---|---|
| Cox ら(2019年) | 個数 | 年3.9万〜5.2万個(呼吸を含めると7.4万〜12.1万個) | 米国人のカロリーの約15%にあたる食品の報告値から。ペットボトルの水だけを飲むと年9万個上乗せ、水道水だけなら4千個。著者は少なめの推定としている |
| Mohamed Nor ら(2021年) | 重さ | 大人の中央値 1日583ng(週約4.1μg)、個数では1日883個 | 0.001〜5mm の粒、8種類の食品と空気から。分布の上限も計算 |
| Senathirajah ら(2021年) | 重さ | 週0.1〜5g | 59本の論文の個数を重さに換算(0〜1mm の粒の平均の重さを仮定) |
| WWF(2019年) | 重さ | 平均で週約5g=「クレジットカード1枚分」 | 上の研究(ニューカッスル大学に WWF が委託)をもとにした発表 |
Pletz(2022年)は、Senathirajah らの推定は、データの組み合わせ方と粒の大きさの選び方で「数桁の過大評価」になっていると指摘しています。
なぜ桁がこんなに違うのか
- 個数か重さか:粒の重さは直径の3乗で増えます。1mm の粒1個は、0.01mm の粒100万個と同じ重さです。数少ない大きな粒を入れるかどうかで、重さの合計は何桁も変わります。
- どの大きさまで入れるか:数える範囲の下限・上限が研究ごとに違います。
- 平均か、中央値か、上限か:一部の人の多い値に引っぱられる平均や、幅の上限を「平均」と呼ぶと、印象が大きく変わります。
- もとのデータの質:目視だけで数えた報告は、プラスチックでない粒まで数えて多くなりがちです。食塩では同定の方法で10〜600倍違いました(Lee ら 2021年)。
どこから入る量が多いのか
- Cox ら(2019年)の推定では、ペットボトルの水だけを飲む人は年9万個が上乗せされ、水道水だけの人は4千個でした(ただし、ペットボトルの水の研究には測り方への批判があります → ペットボトルの水)。
- 食事中に室内のほこりから皿に落ちる繊維は、1人年13,731〜68,415個と推計され、ムール貝から入る量(英国で年123個)より桁違いに多いという研究があります(→ 食事中に落ちる室内のほこり)。
- EFSA(2016年)は、最も汚染されたムール貝1皿(225g)でも約7μg と試算しています。
出典
- Cox KD ほか. Environ Sci Technol 2019;53:7068(訂正 2020あり)
- Mohamed Nor NH ほか. Environ Sci Technol 2021;55:5084
- Senathirajah K ほか. J Hazard Mater 2021;404:124004
- Pletz M. J Hazard Mater Lett 2022;3:100071
- ニューカッスル大学(豪)2019年6月の発表
- EFSA CONTAM Panel. EFSA J 2016;14(6):4501
- Catarino AI ほか. Environ Pollut 2018;237:675
- Lee HJ ほか. J Hazard Mater 2021;402:123743
最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。研究や制度は変わることがあります。
このページは、公的機関の資料・法令・査読論文に書かれている事実を並べたものです。マイクロプラスチックの測り方は研究ごとに違い、数字をそのまま比べられないことがあります。WHO・FAO・EFSA などの公的機関は、今のところ特定の食品を控えるような個人向けの食事制限は勧めていません。