マイクロプラスチック データベース解説確認日 2026.10.01
マイクロプラスチックは体に悪い? 公的機関の見解と人の研究
WHO・EFSA・FDA などの見解と、心臓・腸の研究でわかっていること・わかっていないこと
結論
公的機関は、食品や水から見つかる量で健康リスクは示されていないとしています。同時に、評価に必要なデータ(食品中の量・小さな粒の量・人での毒性)が足りない点でも一致していて、WHO は「安全だという意味ではない」と書いています。
人の研究は「体の中のプラスチックが多い人で病気が多かった」という観察研究で、原因かどうかはわかっていません。
公的機関の見解
| 機関・年 | 見解 |
|---|---|
| WHO 飲み水(2019年) | 「確固たる結論はまだ出せないが、現時点で明白な健康上の懸念を示すデータはない」。0.15mm 超の粒は吸収されにくく、小さい粒の取り込みも限られると見込まれる。定期的な検査は勧めず、病原体の対策を優先 |
| WHO 食事と吸入(2022年) | 量を定めて評価するにはデータが足りず、健康リスクを判断するには証拠が足りない。「一部が結論づけたように『安全』だということを意味しない」 |
| EFSA(2016年) | 最も汚染されたムール貝1皿(225g)で約900個・7μg。含まれる添加物がすべて溶け出しても、ビスフェノールA の摂取の上乗せは約2%、PCB は0.006%未満。腸を越えうるのは0.15mm 未満で、吸収は0.3%以下。ナノプラスチックは測る方法もない |
| FAO(2017年) | 同じ7μg の試算で、添加物などの総摂取の0.1%未満で「無視できる」。内臓を除いて食べる魚は曝露が小さく、丸ごと食べる二枚貝・小魚は別 |
| 英国 COT(2021年) | 口からとる経路の完全な評価は「まだできない」。人の疫学研究・投与研究がない。約90%超は体の外に出る |
| カナダ政府(2020年) | 健康への懸念は特定されないが、しっかり評価するにはデータが足りない。予防の考え方で環境への流出を減らす |
| 米 FDA(2024年) | 「現在の科学的証拠は、食品中に検出された量が健康リスクをもたらすことを示していない」 |
| ドイツ BfR(2024・2025年) | 食品のプラスチック粒子から健康リスクが生じることは考えにくい。脳の研究の測り方には疑問(測定量は「ありえないほど多い」) |
| オーストラリア・NZ FSANZ(2025年) | すぐに健康リスクが生じる可能性は低い。魚は無視できる可能性が高く、貝は非常に低い |
| EFSA(2025年) | 食品に触れる材料からは、こすれなどで粒子が出る。研究の多くは誤同定や汚染で多めに見積もりがち。欧州議会の依頼で健康リスクの評価を始め、2027年末に完了予定 |
| 食品安全委員会(日本、2025年) | 自ら評価する候補にあがったが、「WHO・欧州の機関とも食品中の含有量や人の毒性の情報が不十分としている」として見送り。国内で具体的な規制・基準は定められていない |
人の研究でわかったこと(関連だけで、原因は不明)
- 心臓・血管:首の動脈の手術を受けた257人で、プラークからポリエチレンが見つかった人は、約3年で心筋梗塞・脳卒中・死亡が20.0%、見つからなかった人は7.5%(ほかの要因を調整して4.53倍、NEJM 2024年)。著者は「因果関係を証明するものではない」「検査室での汚染を完全には否定できない」と明記しています。
- 心筋梗塞の患者などの冠動脈の血液を調べた61人の研究では、検出と独立して関係していたのは喫煙だけでした(2026年)。
- 腸:炎症性腸疾患(IBD)の人の便は、健康な人より多かった(1gあたり41.8個 対 28.0個、2022年)。病気のせいで腸にとどまりやすくなった可能性を著者自身が挙げていて、どちらが先かはわかりません。京都大学の研究者からコメント(反論)が出ています。
- 大腸がん:患者258人と対照493人の比較で、患者の側で多かった(2025年)。病気になってから調べる研究のため、逆の向き(病気が原因でたまる)を否定できません。
- 25研究をまとめた2026年のレビューは、交絡(ほかの要因)と量の測り方によるバイアスのリスクが中〜高で、因果を言うには限界があるとしています。
動物・細胞の実験
- 炎症や酸化ストレスなどが報告されていますが、234研究のレビューでは、結果がそろわず、量を増やすほど強くなる関係が見られないものも多いとされています。
- 多くの実験は球形のポリスチレンを、人がとる量よりはるかに高い濃度で使っていて、人にそのまま当てはめにくいと指摘されています(同レビュー、脳の研究の著者も同じ指摘)。
- 反対に、低い濃度でも同じ仕組みが保たれるという意見の論文もあります(2026年)。
プラスチックに含まれる化学物質は?
- EFSA(2016年)の試算では、ムール貝1皿のマイクロプラスチック(7μg)の添加物がすべて溶け出しても、ビスフェノールA の摂取の上乗せは約2%でした。
- EFSA は2023年に、ビスフェノールA の耐容一日摂取量を体重1kgあたり4μg から0.2ng に大きく引き下げました。この新しい値とマイクロプラスチック由来の量を比べた公的な評価は見つかりませんでした(2016年の試算は古い値にもとづくため、そのまま比べられません)。
- 原料や添加剤の評価は、プラスチックの種類ごとのページにまとめています。
体のどこから見つかったか
血液・胎盤・母乳・肺・便・動脈・脳・精巣などから見つかったという報告と、測り方への批判は → 体のどこから見つかった?
ドイツ BfR の研究者による総説(2025年)は、臓器から見つかってはいるが、とることと健康影響の因果関係は証明されておらず、今の証拠では健康影響について確かな結論は出せないとしています。
出典
- WHO『Microplastics in drinking-water』2019
- WHO『Dietary and inhalation exposure to nano- and microplastic particles and potential implications for human health』2022
- EFSA CONTAM Panel. EFSA J 2016;14(6):4501
- FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 615(2017)
- EFSA 2025 文献レビュー(EN-9733)
- 米 FDA『Microplastics and Nanoplastics in Foods』
- BfR「Microplastics in the brain」2025
- Health Canada / ECCC『Science assessment of plastic pollution』2020
- FSANZ『Microplastics in food』
- 食品安全委員会 企画等専門調査会(2025年2月6日)資料
- Marfella R ほか. N Engl J Med 2024;390:900-910
- Yan Z ほか. Environ Sci Technol 2022;56:414
- Xu ほか. 2025(大腸がん)
- Paolisso P ほか. Eur Heart J 2026
- Chartres N ほか. Environ Sci Technol 2024
- Tran ほか. Environ Health 2026
- Vojnits K ほか. 2025(動物・細胞研究のレビュー)
- Janzik R ほか. Dtsch Arztebl Int 2025(BfR)
- EFSA CEP Panel. EFSA J 2023;21(4):e06857(ビスフェノールA)
最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。研究や制度は変わることがあります。
このページは、公的機関の資料・法令・査読論文に書かれている事実を並べたものです。マイクロプラスチックの測り方は研究ごとに違い、数字をそのまま比べられないことがあります。WHO・FAO・EFSA などの公的機関は、今のところ特定の食品を控えるような個人向けの食事制限は勧めていません。