マイクロプラスチック データベース解説確認日 2026.10.01

マイクロプラスチックの数字はなぜ研究で違う? 測り方の4つのポイント

数えた粒の大きさ・同定の方法・個数か重さか・空試験。数字を読むときの見方

結論

マイクロプラスチックの数字は、①どの大きさまで数えたか ②どの方法で確かめたか ③個数か重さか ④実験中の汚染をどう差し引いたかで、何桁も変わります。食塩では、同定の方法だけで10〜600倍違いました。

数字を見るときは、この4つが書かれているかを確かめると、読み違いを減らせます。

① どの大きさまで数えたか

  • 小さい粒ほど数が多いため、数える下限を小さくすると数は大きく増えます。食塩の研究を集めた分析では、下限の大きさと結果の多さに相関がありました(Lee ら 2021年)。
  • 0.005mm まで数えた欧州の塩の調査は、0.1mm 以上だけなら見つかった粒の25%未満しか拾えなかったとしています(Thiele ら 2023年)。
  • EU は飲み水の測定方法を決め(2024年)、0.02mm〜5mm を、1,000L 以上ろ過して FTIR かラマンで確かめるとしました。方法をそろえる動きです。

② どの方法で確かめたか

方法下限の目安やっていること注意
目視・染色(Nile Red など)研究による顕微鏡で形と色を見て数えるプラスチックかどうかを確かめられない。目視で繊維を正しく判定できたのは48〜50%(Catarino 2018)
FTIR(赤外分光)約0.003〜0.02mm粒を1つずつ、光の吸収でプラスチックの種類を確かめる小さい粒は苦手
ラマン分光約0.001〜0.002mm粒を1つずつ確かめる。FTIR より小さい粒まで時間がかかり、一部の粒だけを調べることが多い
Py-GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析)—(重さ)試料を熱で分解し、出てきた物質からプラスチックの種類と重さを出す粒の数と大きさはわからない。体の脂肪をポリエチレンと区別しにくい(Rauert 2025)
SEM-EDX(電子顕微鏡+元素分析)とても小さい粒まで粒の形と元素を見るプラスチックの種類を同定できない(Oßmann 2019)
NTA(粒子追跡)ナノまで液の中の粒の数と大きさを測る粒の材質を区別しない

③ 個数か、重さか

FTIR・ラマンは「何個」、Py-GC/MS は「何μg」で出ます。粒の重さは直径の3乗で変わるため、個数と重さは換算できず、比べられません。食塩で「海塩が多い」か「岩塩が多い」かが研究で逆になるのも、この違いが一因です(→ 塩の選び方)。

④ 空試験と汚染

  • 空気・服・器具からもプラスチックの粒は入ります。そのため、何も入れない水などで同じ手順を行う「空試験」を測って差し引きます。
  • ペットボトルの水「1Lに約24万個」(2024年)には、空試験の超純水がボトルの水と同じくらい汚れていたのに使われず、それを基準にすると全検体が空試験以下になる、という批判が出ました。著者は「超純水そのものが汚れていて空試験に向かない」と反論しています。
  • ティーバッグ「1杯116億個」(2019年)は、抽出液を乾かすときに出てくるプラスチックの短い鎖(オリゴマー)を粒として数えたためで、実際は2〜3桁少ないとドイツ BfR が評価しています。

研究の質の点検

  • 水の研究50本を9項目(各0〜2点)で採点した研究では、0点の項目がなかったのは4本だけで、報告された濃度は10桁の幅がありました(Koelmans ら 2019年)。
  • 人の体の研究101件を14項目で点検した2026年の研究では、必須の基準をすべて満たした研究はゼロでした。足りなかったのは、試料の代表性・陽性対照・空試験の記録など。

出典

最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。研究や制度は変わることがあります。

このページは、公的機関の資料・法令・査読論文に書かれている事実を並べたものです。マイクロプラスチックの測り方は研究ごとに違い、数字をそのまま比べられないことがあります。WHO・FAO・EFSA などの公的機関は、今のところ特定の食品を控えるような個人向けの食事制限は勧めていません。

ほかの解説

← マイクロプラスチック データベースへ