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ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.02

界面活性剤とは? 種類・歴史・日本と海外の規制、体への影響と「強さランキング」の正体

PR この記事には、楽天市場・Amazon・A8.netのアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料・法令・論文をもとにしています。「Yahoo!ショッピングで見る」も、アフィリエイト広告のリンクです。

洗剤、シャンプー、歯みがき、柔軟剤。裏面を見ると、ほとんどの商品に「界面活性剤」と書いてあります。マヨネーズやパンの「乳化剤」も、実は界面活性剤の仲間です。

「界面活性剤は肌に悪い」「合成界面活性剤は危険で、石けんなら安心」「海外では禁止されている」。こうした話もよく聞きます。

この記事では、

  • 界面活性剤とは何か。どうやって生まれ、どんな種類があるのか
  • どんな用途に使われ、身近などの商品に入っているのか
  • ネットでよく見る「強さランキング」は本当か
  • 体への影響として、何が分かっていて、何が分かっていないのか
  • 日本と海外でどう扱われていて、禁止されているものはあるのか

を、公的機関の資料・法令・論文で確かめます。洗剤の裏面の読み方は 無添加洗剤の記事、シャンプーの全成分表示は 無添加シャンプー・ボディソープの記事、「経皮毒」説は 経皮毒・日用品の記事 で詳しく書いています。

結論

  • 界面活性剤は、1つの分子の中に「水になじむ部分」と「油になじむ部分」を持つ物質の総称です。水と油の境目(界面)に集まって、汚れを包んで落としたり、水と油を混ぜたりします。石けんも界面活性剤の一種で、法律(家庭用品品質表示法)でも「陰イオン系界面活性剤」の一つとして並んでいます
  • 「合成界面活性剤」という区分は、洗剤の表示ルールにはありません。法律が分けているのは、製品としての「石けん」「合成洗剤」「複合石けん」です。「植物由来」の洗剤でも、品名が「合成洗剤」のものはたくさんあります
  • 「界面活性剤」をまとめて禁止している国は、調べた範囲(日本・EU・米国・カナダ)にはありません。禁止・制限されているのは、分解されにくいもの(EU の洗剤規則)、ノニルフェノール系、フッ素系(PFOS・PFOA など)、除草剤の補助剤の POE タロウアミンなど、個別の物質と用途です
  • 「強さランキング」は、物差しを変えると順位が入れ替わります。皮膚への刺激、新型コロナウイルスへの効き目、魚や水草への毒性で、それぞれ並び方がちがいます。ネットでよく見る順位表には、試験の条件が書かれていないものがほとんどです
  • 人の体で確かめられている影響は、手荒れ・かぶれ(皮膚)、目の傷、誤飲による中毒です。洗濯用のパック型液体洗剤では、子どもと高齢者の誤飲事故が続いています。一方、「皮膚から入って体にたまる」ことや、食品の乳化剤で病気になることは、人では確かめられていません
  • 選ぶときは、「石けんか合成か」より、裏面の「界面活性剤」の欄に書かれた種類と、自分の使い方(手袋をするか、すすぐか、子どもの手が届くか)を見るのが確実です

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
シャボン玉スノール(洗濯用の液体石けん) 洗濯を「純石けん分」だけの洗剤にしたいとき 石けんも界面活性剤
エコデパジャパン(石けん・エコ雑貨の通販) ミヨシやシャボン玉の石けんをまとめて選びたいとき 石けんも界面活性剤
サラヤ ヤシノミ洗剤 無香料・無着色の台所用合成洗剤を使いたいとき 用途と、よく使われる商品
All things in Nature(洗濯用洗剤) 植物由来の界面活性剤の洗濯用合成洗剤を試したいとき 用途と、よく使われる商品
ショーワ ナイスハンド ミュー(炊事用手袋) 洗いものの手荒れが気になるとき 皮膚:手荒れ
シャボン玉 せっけんハミガキ ラウリル硫酸Naを使っていない歯みがき剤を探すとき 口の中:歯みがき剤と口内炎
『図解入門 よくわかる最新 界面活性剤の基本と仕組み』 しくみを化学からきちんと知りたいとき 界面活性剤とは

界面活性剤とは

界面活性剤は、1つの分子の中に「水になじみやすい部分(親水基)」と「油になじみやすい部分(親油基、疎水基ともいう)」の両方を持つ物質です。水と油、水と空気、水と汚れのような「境目(界面)」に集まって、その性質を変えます。

日本石鹸洗剤工業会(業界団体)は、界面活性剤の働きを4つにまとめています。

働き どういうことか
浸透 水の表面張力を下げて、繊維のすき間に水がしみこみやすくする
乳化 油を小さな粒にして、水の中に散らばらせる
分散 すすのような固体の粒を、水の中に散らばらせる
再付着防止 落ちた汚れが、また布にくっつくのを防ぐ

水に溶かした界面活性剤の濃度がある値(臨界ミセル濃度)を超えると、分子が油になじむ側を内側に向けて集まった粒(ミセル)ができ始めます。ミセルが油汚れを中に取りこむことで、汚れが水の中に引き離されます。WHO の国際化学物質安全性計画(IPCS)の評価書は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)について、ミセルが低い濃度ででき、油やしみを溶かしこむと書いています。

界面活性剤のしくみ。1つの分子に、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)がある。水と油の境目に集まって表面張力を下げ、濃度がある値を超えるとミセルという粒をつくる。ミセルが油汚れを包んで水の中に引き離す。石けんも、食品の乳化剤も、肺の中ではたらく肺サーファクタントも、同じ仲間。
図:界面活性剤が汚れを落とすしくみ(押すと拡大)

EU は2026年の新しい洗剤規則で、界面活性剤を法律として定義しました。「1つ以上の親水基と1つ以上の疎水基からなり、水の表面張力を 45 mN/m 未満に下げ、膜やミセルをつくり、固体の表面に吸着する」物質です。

界面活性剤は、洗剤だけのものではありません。

  • 食品:業界団体は、マヨネーズやバターには「天然の界面活性剤」が入っていると説明しています。大豆や卵黄のレシチン、パンやアイスの「乳化剤」も界面活性剤です
  • 体の中:脂肪の消化のために、体の中でも作られています(業界団体の説明)。肺には、肺がつぶれないようにする「肺サーファクタント」があります
  • 医療:肺サーファクタントが足りない早産児の治療に、人工のサーファクタントが使われています(後で書く1980年の日本の報告)

しくみを化学からきちんと知りたい人には、図の多い入門書があります。

石けんも界面活性剤

「石けんは界面活性剤ではない」と書かれたページを見かけますが、法律の上でも、石けんは界面活性剤の一種です。洗剤の表示を決めている家庭用品品質表示法の規程(雑貨工業品品質表示規程)は、界面活性剤を「陰イオン系・非イオン系・両性イオン系・陽イオン系」に分け、石けん(純石けん分=脂肪酸ナトリウム・脂肪酸カリウム)を「陰イオン系・脂肪酸系」の一つとして並べています。

同じ規程は、製品を次のように分けます。

品名 決まり(家庭用品品質表示法)
洗濯用石けん・台所用石けん 主な洗浄作用が純石けん分によるもの。界面活性剤のうち純石けん分が洗濯用70%以上・台所用60%以上で、ほかの界面活性剤を含まないもの
洗濯用複合石けん・台所用複合石けん 上と同じだが、純石けん分以外の界面活性剤も含むもの(表示ではその成分に下線を引く)
洗濯用合成洗剤・台所用合成洗剤 主な洗浄作用が純石けん分以外の界面活性剤によるもの(純石けん分以外が洗濯用30%超・台所用40%超)

この規程には「合成界面活性剤」という区分はありません(ウラヨミが確認した範囲で)。広告でよく見る「合成界面活性剤不使用」は、法律で決まった言葉ではなく、メーカーが自分で使っている言葉です。

なお、業界団体の日本石鹸洗剤工業会は「石けんだけを他の界面活性剤と切り離して扱う法律がある国は、世界的に見ても日本だけ」と説明しています(業界団体の説明で、ウラヨミでは各国の法律を全部は確かめていません)。

洗濯を「純石けん分」だけの洗剤にしたい場合は、品名が「洗濯用石けん」の商品を選びます。シャボン玉石けんの「スノール」は、成分表示が「純石けん分(30%、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム)」だけの液体の洗濯用石けんです。

ミヨシ石鹸やシャボン玉石けんの石けん類(洗濯用・ハンドソープ・シャンプーなど)は、エコ雑貨の通販「エコデパジャパン」にもまとまっています。

歴史と成り立ち

年 できごと 出典
紀元前3000年代 シュメール(いまのイラク)の粘土板に、薬としての石けんが出てくる 日本石鹸洗剤工業会(業界団体)
戦国時代の末 石けんがポルトガル船で日本に伝わる。それまでは、むくろじの果皮・さいかちのさや・灰汁などで洗っていた 同上
1791年 フランスのルブランが、石けんの原料になるソーダ灰(炭酸ナトリウム)の工場を開く。1861年にはベルギーのソルベーの工場が生産を始め、ソーダが安く大量に作れるようになる Science History Institute
1870年 京都舎密局で国内初の固形石けんの製造。その2年後に横浜の堤礒右衛門が民間で初めて製造 日本石鹸洗剤工業会
1890年 花王が化粧石けん「花王石鹸」を発売 花王
第一次世界大戦中 ドイツで、油脂を使う石けんの代わりになるものを探すことから合成洗剤が始まる 日本石鹸洗剤工業会
1933年 ドイツでアルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)が開発され、のちに主流になる 同上
1934年 第一工業製薬「モノゲン」が日本の合成洗剤の第1号 同上
1951年 花王「花王粉せんたく」発売(1953年に「ワンダフル」と改名)。電気洗濯機の普及とともに広がる 花王
1959年 国内の石けんの生産量が38万205トンでピーク 日本石鹸洗剤工業会
1950年代末〜 分解されにくい ABS で、欧州の川に泡の山ができる。ドイツが1961年の洗剤法で、界面活性剤の生分解性に最低の基準を設ける バイエルン州環境局
1960年代 分解されやすい直鎖型の LAS が ABS の代わりに導入され、欧州・日本・米国で川の陰イオン界面活性剤が減る。日本では1964年ごろ川の泡が問題になり、1966年ごろ直鎖型への切り替えが進む WHO/IPCS、日本石鹸洗剤工業会
1963年 日本で合成洗剤の生産量が石けんを上回る 日本石鹸洗剤工業会
1977年 琵琶湖で淡水赤潮が大規模に発生し、「粉石けんを使おう」という石けん運動が起きる。1979年の琵琶湖条例(1980年施行)は「りんを含む家庭用合成洗剤」の使用・販売を禁止。りんは洗浄を助ける成分(助剤)で、界面活性剤そのものではない 滋賀県
1980年 藤原哲郎らが、肺サーファクタントが足りない重い呼吸障害の早産児10人に人工サーファクタントを使い、8人が助かったと Lancet に報告 Fujiwara 1980
2005年 EU で洗剤規則(648/2004)が適用。洗剤の界面活性剤に「最後まで分解される」ことを求める EU 規則
2011年 日本で、洗濯用合成洗剤の液体が粉末を上回る 経済産業省、日本石鹸洗剤工業会
2020年 製品評価技術基盤機構(NITE)が、家庭用洗剤の界面活性剤9種類を新型コロナウイルスの「物品の消毒」に有効と発表 NITE
2026年 EU が新しい洗剤規則(2026/405)を公布。2029年9月から適用 EU 規則

石けんの起源を「紀元前2800年のバビロニア」とする説明もよく見ますが、もとの論文を確かめられなかったので、ここでは業界団体の説明(紀元前3000年代)にしています。

肺サーファクタントの研究は、1959年に米国の Avery と Mead が「早産児の呼吸窮迫症候群は肺サーファクタントの不足による」と示したところから始まり、医学史の総説は、1980年に日本の藤原らが補充療法を導入したと位置づけています。いまも肺サーファクタント製剤(サーファクテン)が使われています。

種類

界面活性剤は、水に溶けたときに、水になじむ部分がどんな電気を帯びるかで4つに分けます。

種類 水に溶けたとき 主なもの(洗剤の表示名) 化粧品の表示名の例 主な用途
陰イオン(アニオン) マイナスの電気を帯びる 純石けん分(脂肪酸ナトリウム・カリウム)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、アルキル硫酸エステルナトリウム(AS)、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(AOS) 石ケン素地、カリ石ケン素地、ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ココイルグルタミン酸Na(いわゆるアミノ酸系) 洗濯用・台所用洗剤、シャンプー、ボディソープ、歯みがき剤の発泡剤
陽イオン(カチオン) プラスの電気を帯びる アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩) ベヘントリモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド 柔軟剤、リンス・コンディショナー、消毒(逆性石けん)
両性 液の性質で変わる アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド コカミドプロピルベタイン 台所用洗剤、シャンプー(泡立ち・刺激の調整)
非イオン(ノニオン) 電気を帯びない ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、脂肪酸アルカノールアミド、しょ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド ラウリルグルコシド、ポリソルベート80、コカミドDEA 衣料用液体洗剤、台所用洗剤、食品・化粧品・医薬品の乳化剤

陽イオンの界面活性剤は、マイナスに帯電しやすい髪や布の表面にくっつくので、柔軟剤やリンスに使われます。花王は1962年に柔軟仕上げ剤・帯電防止剤「花王ソフター」(1966年に「ハミング」へ改名)を発売しています。

植物や微生物が作る界面活性剤もあります。むくろじの果皮やキラヤの樹皮に含まれるサポニン、大豆や卵黄のレシチンは、日本では食品添加物(既存添加物)として使われています。1968年には、有馬啓らが枯草菌の作る界面活性剤「サーファクチン」を報告しています。

「アミノ酸系」「植物由来」「天然由来」は、どれも界面活性剤の種類を言い換えたものではなく、原料の話です。たとえばアミノ酸系の多くは陰イオンの界面活性剤で、やし油の脂肪酸とアミノ酸から作ります。

日本では、どれくらい使われている?

経済産業省の生産動態統計によると、日本の界面活性剤(界面活性剤そのものの重さ)の生産量は、2025年で約102万トンでした。2003年と比べると、非イオンの割合が増え、陰イオンの割合が減っています。

日本の界面活性剤の生産量(種類別)トン。界面活性剤そのものの重さ(洗剤の製品の重さではない)。経済産業省 生産動態統計非イオン陰イオン陽イオン両性調合0万20万40万60万80万100万120万140万2003年 非イオン:492,159 t2003年 陰イオン:421,075 t2003年 陽イオン:54,214 t2003年 両性:33,416 t2003年 調合:34,973 t2003103.6万2004年 非イオン:484,554 t2004年 陰イオン:400,085 t2004年 陽イオン:48,658 t2004年 両性:34,076 t2004年 調合:37,287 t2005年 非イオン:489,553 t2005年 陰イオン:390,364 t2005年 陽イオン:50,467 t2005年 両性:34,438 t2005年 調合:46,525 t2006年 非イオン:492,583 t2006年 陰イオン:398,183 t2006年 陽イオン:49,586 t2006年 両性:33,520 t2006年 調合:42,246 t2007年 非イオン:514,191 t2007年 陰イオン:450,504 t2007年 陽イオン:49,123 t2007年 両性:32,945 t2007年 調合:34,830 t2008年 非イオン:496,106 t2008年 陰イオン:439,969 t2008年 陽イオン:48,322 t2008年 両性:30,934 t2008年 調合:33,038 t2009年 非イオン:428,897 t2009年 陰イオン:364,222 t2009年 陽イオン:41,843 t2009年 両性:24,615 t2009年 調合:28,377 t20092010年 非イオン:490,316 t2010年 陰イオン:368,515 t2010年 陽イオン:42,394 t2010年 両性:23,898 t2010年 調合:32,937 t2011年 非イオン:487,613 t2011年 陰イオン:364,001 t2011年 陽イオン:42,757 t2011年 両性:26,071 t2011年 調合:32,300 t2012年 非イオン:465,272 t2012年 陰イオン:379,870 t2012年 陽イオン:39,623 t2012年 両性:25,254 t2012年 調合:30,639 t2013年 非イオン:486,073 t2013年 陰イオン:403,182 t2013年 陽イオン:42,703 t2013年 両性:22,622 t2013年 調合:29,930 t2014年 非イオン:577,286 t2014年 陰イオン:450,448 t2014年 陽イオン:44,266 t2014年 両性:23,127 t2014年 調合:29,484 t2015年 非イオン:588,955 t2015年 陰イオン:429,069 t2015年 陽イオン:40,161 t2015年 両性:21,883 t2015年 調合:27,986 t20152016年 非イオン:608,352 t2016年 陰イオン:411,861 t2016年 陽イオン:40,808 t2016年 両性:23,198 t2016年 調合:30,172 t2017年 非イオン:623,297 t2017年 陰イオン:435,375 t2017年 陽イオン:41,657 t2017年 両性:24,090 t2017年 調合:31,021 t2018年 非イオン:665,432 t2018年 陰イオン:444,139 t2018年 陽イオン:43,106 t2018年 両性:24,705 t2018年 調合:32,231 t2019年 非イオン:603,159 t2019年 陰イオン:405,423 t2019年 陽イオン:40,123 t2019年 両性:25,763 t2019年 調合:30,427 t2020年 非イオン:602,775 t2020年 陰イオン:399,537 t2020年 陽イオン:38,742 t2020年 両性:29,815 t2020年 調合:30,940 t2021年 非イオン:707,199 t2021年 陰イオン:434,249 t2021年 陽イオン:44,522 t2021年 両性:32,984 t2021年 調合:40,057 t2021125.9万2022年 非イオン:675,523 t2022年 陰イオン:429,701 t2022年 陽イオン:46,089 t2022年 両性:30,844 t2022年 調合:38,310 t2023年 非イオン:589,943 t2023年 陰イオン:386,532 t2023年 陽イオン:38,480 t2023年 両性:26,734 t2023年 調合:32,086 t2024年 非イオン:585,842 t2024年 陰イオン:359,228 t2024年 陽イオン:38,067 t2024年 両性:26,877 t2024年 調合:32,371 t2025年 非イオン:568,724 t2025年 陰イオン:354,058 t2025年 陽イオン:36,452 t2025年 両性:27,665 t2025年 調合:31,767 t2025101.9万非イオンの割合:2003年 47.5% → 2025年 55.8%。陰イオン:40.7% → 34.8%。石けん(脂肪酸ナトリウム・カリウム)は、この統計では「石けん」として別に数えられている。2021年以降は月次・年報の内訳の合計。出典:経済産業省 生産動態統計 化学工業統計(e-Stat)。

洗濯用の合成洗剤は、この20年あまりで粉末から液体へ大きく入れかわりました。

洗濯用の合成洗剤:粉末から液体へ生産量(トン)。液体は中性と中性以外の合計。経済産業省 生産動態統計0万10万20万30万40万50万60万70万2003年 粉末:644,030 t2004年 粉末:634,319 t2005年 粉末:615,231 t2006年 粉末:572,620 t2007年 粉末:554,548 t2008年 粉末:511,364 t2009年 粉末:462,605 t2010年 粉末:420,036 t2011年 粉末:373,854 t2012年 粉末:323,849 t2013年 粉末:300,554 t2014年 粉末:255,609 t2015年 粉末:228,361 t2016年 粉末:232,928 t2017年 粉末:193,281 t2018年 粉末:165,769 t2019年 粉末:148,572 t2020年 粉末:132,792 t2021年 粉末:124,489 t2022年 粉末:105,312 t2023年 粉末:84,016 t2024年 粉末:79,743 t2025年 粉末:79,461 t粉末 64.4万t(2003)粉末 7.9万t(2025)2003年 液体:75,714 t2004年 液体:82,474 t2005年 液体:118,398 t2006年 液体:163,802 t2007年 液体:183,271 t2008年 液体:234,718 t2009年 液体:268,341 t2010年 液体:347,138 t2011年 液体:395,784 t2012年 液体:423,837 t2013年 液体:462,107 t2014年 液体:454,264 t2015年 液体:478,542 t2016年 液体:532,509 t2017年 液体:566,126 t2018年 液体:602,117 t2019年 液体:661,508 t2020年 液体:626,729 t2021年 液体:659,360 t2022年 液体:659,368 t2023年 液体:644,950 t2024年 液体:622,256 t2025年 液体:616,878 t液体 7.6万t(2003)液体 61.7万t(2025)20032008201320182025生産量では2011年に液体が粉末を上回った(業界団体がまとめた販売数量でも2011年に逆転)。出典:経済産業省 生産動態統計(e-Stat)、日本石鹸洗剤工業会「洗剤の販売推移」。

家庭からの排出量の推計(PRTR)の対象になっている界面活性剤で、出荷量が多いのは、AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、LAS、AES の順です。環境省の推計では、2023年度に家庭から出た化学物質(約34千トン)のうち、AE だけで35%、LAS が14%、AES が7.3%を占めました(下水処理の前の量です)。

出荷量の多い界面活性剤(2023年度)トン/年。PRTR の対象物質だけ(石けん・アミノ酸系などは入っていない)非イオン陰イオン両性陽イオン0千25千50千75千100千AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル):102,032 t102,032LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩):37,841 t37,841AES(アルキルエーテル硫酸エステル塩)AES(アルキルエーテル硫酸エステル塩):18,234 t18,234アミドプロピルベタイン類アミドプロピルベタイン類:7,200 t7,200アミンオキシドアミンオキシド:5,977 t5,977AS(ドデシル硫酸ナトリウム=SLS)AS(ドデシル硫酸ナトリウム=SLS):5,149 t5,149AE(炭素数9〜11)AE(炭素数9〜11):4,381 t4,381脂肪酸ジエタノールアミド(DEA 系)脂肪酸ジエタノールアミド(DEA 系):1,464 t1,464AOS(アルケンスルホン酸塩)AOS(アルケンスルホン酸塩):1,338 t1,338ジデシルジメチルアンモニウム塩ジデシルジメチルアンモニウム塩:872 t872ベンザルコニウム系ベンザルコニウム系:356 t356NPE(ノニルフェニルエーテル)NPE(ノニルフェニルエーテル):323 t323対象24物質の合計は190,063トン。元のデータは日本界面活性剤工業会・日本石鹸洗剤工業会の調査(業界団体)を環境省が排出量の推計に使ったもの。農薬用は除く。出典:環境省「令和5年度 PRTR 届出外排出量の推計方法 参考7」。

用途と、よく使われる商品

界面活性剤は、洗うためだけのものではありません。

分野 例
家庭用品 衣料用・台所用・住居用・トイレ用・浴室用の洗剤、柔軟剤
化粧品・医薬部外品 シャンプー、ボディソープ、洗顔料、クレンジング、歯みがき剤(発泡剤)、乳液・クリーム(乳化剤)
食品 乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、レシチンなど)。マーガリン、パン、アイス、チョコレート、コーヒー用クリームなど
医療 肺サーファクタント製剤、注射剤や軟膏の乳化剤
農業 農薬の展着剤・乳化剤
工業ほか 繊維、金属加工、塗料、泡消火薬剤 など

メーカーが成分を公表している商品で、実際に何が入っているかを見てみます(家庭用品の成分の公開は、業界団体の自主基準によるものです)。

商品群 商品(メーカーの公表) 書かれている界面活性剤
洗濯用の液体合成洗剤 花王 アタックZERO(本体380g) ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩とアルケンスルホン酸塩の混合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(LAS は入っていない)
台所用合成洗剤 花王 キュキュット(本体220ml) ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルベタイン、アルキルグリセリルエーテル、アルキルグリコシド、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム
柔軟剤 花王 ハミング 無香料 エステル型ジアルキルアンモニウム塩(陽イオン)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル
洗濯用石けん シャボン玉スノール 純石けん分(30%、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム)

「液体洗剤には LAS」「台所用にはアミンオキシド」のような決まった組み合わせはなく、同じ種類の商品でもメーカーと商品でちがいます。裏面の「界面活性剤」の欄を見るのがいちばん確実です(読み方は 無添加洗剤の記事)。

台所用で、無香料・無着色の合成洗剤を選ぶなら、サラヤの「ヤシノミ洗剤」があります。メーカーは「石油系合成界面活性剤不使用」と説明していますが、品名は「台所用合成洗剤」で、界面活性剤は「16%、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルカノールアミド」です。植物由来でも、法律の区分は「合成洗剤」という例です。

洗濯用でも同じです。All things in Nature の洗濯用洗剤は、界面活性剤が「16%、高級アルコール系(非イオン)・ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド」の洗濯用合成洗剤(中性)です。

「強さランキング」の正体

ネットでは「高級アルコール系>オレフィン系>…>アミノ酸系」のような「洗浄力ランキング」「刺激ランキング」をよく見かけます。ところが、こうした順位表の多くには、どの濃度で、何を物差しに比べたのかが書かれていません。

同じ条件で比べた研究や公的な評価書を並べると、物差しを変えるたびに順位が入れかわります。

物差し 「強い」側 「弱い」側 出典
皮膚への刺激(人、同じ濃度で貼る試験) ラウリル硫酸Na(SLS) ラウレス硫酸Na(SLES)、さらにアルキルグリコシド(APG) Löffler & Happle 2003
皮膚への刺激(人、20%・4時間閉じて貼る試験) ベタイン系で94%の人に反応、SLS(SDS)で84% 両方を混ぜると44% Hall-Manning 1998(Unilever 社の研究者)
新型コロナウイルスへの効き目(物品の消毒) 有効:LAS 0.1%、APG 0.1%、アミンオキシド 0.05%、塩化ベンザルコニウム 0.05%、AE 0.2%、石けん 0.22〜0.24% など 有効と判断されず:AES(0.5%まで)、アルキルベタイン(0.5%まで)、脂肪酸アルカノールアミド(0.2%まで) NITE 2020
魚・ミジンコ・藻類への毒性(急性、最も弱い生物での値) 陽イオン系、LAS、SLS、直鎖の AE(1mg/L 以下) 石けん・SLES・ベタイン(1〜10mg/L)、APG(炭素8〜10)(10〜100mg/L) デンマーク環境保護庁 2001
分解されやすさ(易生分解性) 分解されにくい:殺菌用の陽イオン系(ベンザルコニウムなど) 分解されやすい:LAS、SLS、SLES、石けん、APG、ベタイン 同上
界面活性剤の「強さ」は物差しで順位が変わる。人の皮膚への刺激(同じ濃度)ではSLSが強くAPGが弱い。高い濃度で長く貼るとベタイン系がSLSより多くの人に反応し、混ぜると下がった。新型コロナウイルスへの効き目ではAPGやLASが有効で、AESやベタインは有効と判断されなかった。魚や藻類への毒性では陽イオン系・LAS・SLSが強い側で、石けんも無毒ではない。分解されにくいのは殺菌用の陽イオン系。
図:物差しを変えると順位が入れかわる(押すと拡大)

この表から分かることは、次のとおりです。

  • 「ベタイン(両性)はやさしい」も「石けんはやさしい」も、条件しだいです。24時間貼った試験ではベタインは SLS より刺激が少なかった(Nicander 2003)一方、高い濃度で長く貼るとベタインのほうが多くの人に反応しました
  • 同じ種類の中でも差があります。アルキル硫酸塩では、炭素が12個のもの(SLS)で刺激が最も強く、それより長くても短くても弱くなりました(Wilhelm 1993)
  • 皮膚科の総説(Effendy & Maibach 1995)は、大まかな傾向として「陰イオンは刺激物として広く認められ、陽イオンは少なくとも同程度に刺激があり細胞への毒性はより強く、非イオンが最も刺激が少ない」と書く一方で、この分類では個々の物質の刺激の強さは正確に決められないとも書いています
  • 洗浄力を界面活性剤の種類ごとに同じ条件で比べた公的なデータは、見つかりませんでした。洗浄力は、汚れの種類(油・皮脂・泥)、水の硬さ、温度、助剤の有無で大きく変わります
  • たんぱく質(トウモロコシのゼイン)がどれだけ溶けるかで刺激を推定する「ゼイン試験」もありますが、査読つきの論文で多くの界面活性剤を同じ条件で並べた数値表は見つかりませんでした。原料メーカーの資料にはありますが、マグネシウムが入ると実際より低く出るなどの注意があります

つまり、「アミノ酸系=やさしい」「石けん=安全で環境にやさしい」「合成=危険」は、どれも物差しを1つ決めないと言えないことです。

体への影響

何がどこまで分かっているかを、先にまとめます。

影響 主な物質 根拠の強さ
皮膚の刺激(手荒れ・手湿疹の悪化) SLS など陰イオン系、殺菌用の陽イオン系 人で確かめられている
かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎) コカミドプロピルベタイン(主に不純物)、アルキルグルコシド、コカミドDEA 人で確かめられている(皮膚科を受診した人で1〜2%前後)
目の傷 高い濃度の SLS、濃縮した洗剤 人で確かめられている(事故例)+動物実験
誤飲による中毒 濃縮した液体洗剤、パック型洗剤 人で確かめられている(死亡例を含む)
発がん性 コカミドDEA(国際がん研究機関の分類 2B) 動物実験のみ(人での証拠はない)
口内炎の悪化 歯みがき剤の SLS 人の試験はあるが結果が一致しない
ぜんそく スプレー洗剤、消毒用の陽イオン系 人の観察研究(一貫しない)
腸内細菌・腸の炎症 食品の乳化剤(ポリソルベート80 など) マウス+人の観察研究のみ
皮膚から入って体にたまる SLS、LAS 吸収はごくわずかで、吸収された分は代謝・排泄される(動物・試験管が中心)

皮膚:手荒れ

界面活性剤で起きる体への影響で、いちばんはっきりしているのが手荒れです。

  • SLS は、皮膚への刺激を調べる研究の「標準の刺激物」として使われています。欧州接触皮膚炎学会は SLS を使う試験のガイドラインを出しており、ドイツなどの皮膚科では、パッチテストで皮膚の反応しやすさを見る対照として 0.25% の SLS を貼ります。43,478人に貼った解析では22.4%が陽性で(多くは弱い赤み)、強い反応は男性・40歳以上・仕事による皮膚炎・手湿疹の人に多く見られました(Forkel 2026)
  • WHO/IPCS の評価書は、LAS・AOS・AS について「皮膚の表面の脂を取り、天然の保湿因子を溶かし出し、表皮の外側のたんぱく質を変性させ、皮膚を水や物質が通りやすくした」と書いています。一方で、1%までの溶液を24時間貼っても軽い刺激だけだった、とも書いています
  • 日本皮膚科学会の「手湿疹診療ガイドライン」(2018年)は、刺激による手湿疹は「化学物質や洗剤などの日常生活品」で起き、こうした反応はもともと皮膚のバリアが弱っているところで起きやすいと書いています。水仕事のときの保護手袋は「考慮してもよい」(推奨度 C1)とし、長い時間つけるとかえって皮膚を傷めるので、下に綿の手袋をつけることをすすめています

食器洗いの手荒れが気になる場合は、炊事用の手袋があります。ショーワグローブの「ナイスハンド ミュー」は、塩化ビニール製の中厚手の手袋です。

かぶれ(アレルギー)

刺激による手荒れとは別に、特定の成分に体が反応して起きる「かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)」もあります。

  • コカミドプロピルベタイン(シャンプーなどの両性界面活性剤)は、米国接触皮膚炎学会が2004年の「今年のアレルゲン」に選びました。原因は、製造のときに残る不純物(アミドアミン、ジメチルアミノプロピルアミン)と考えられています
  • アルキルグルコシド(デシルグルコシド・ラウリルグルコシド)は、2017年の「今年のアレルゲン」です。北米の皮膚科で24,097人に貼った検査では2.0%が陽性でした
  • 北米の2009〜2014年の10,877人の検査では、コカミドプロピルベタイン1.4%、コカミドDEA 0.8% などが陽性でした

これらは皮膚炎で皮膚科を受診して検査を受けた人の数字で、一般の人がどれくらい反応するかではありません。また、「植物由来」とされることの多いアルキルグルコシドやベタインでもかぶれは起きる、ということです。

目

米国の化粧品成分評価の報告(CIR 1983)では、ウサギの目に10%の SLS を入れて洗い流さないと角膜が傷つきました。国民生活センターが引用する日本中毒情報センターの解説も、洗濯用の液体洗剤は「眼に入った場合は角膜を傷害することがある」としています。目に入ったら、すぐに水で十分に洗い流します。

誤飲:パック型の液体洗剤

濃縮した液体洗剤を水に溶けるフィルムで包んだ「パック型液体洗剤(いわゆるジェルボール)」は、子どもと高齢者の誤飲事故が続いています。

  • 消費者庁と国民生活センターによると、代表的な商品が出た2014年4月から2015年1月末までに、事故の情報が152件集まりました。3歳以下が72.4%、口に入った・飲んだが68.4%、目に入ったが30.3%でした
  • 国民生活センターは2024年に、子どもだけでなく70歳以上の高齢者が誤って口に入れる事故も起きていて、口に入れた後に死亡した例が2件あると発表しました
  • 洗濯用の液体合成洗剤は、陰イオン・非イオンの界面活性剤を20〜75%程度(濃縮タイプは50〜75%程度)含みます(日本中毒情報センター編の書籍、国民生活センターの資料から)
  • 日本中毒情報センターが2024年に受けた相談は22,475件で、そのうち衣料用洗剤が296件(5歳以下が192件)でした

EU は2015年6月から、パック型の液体洗剤に、中が見えない外箱、子どもが開けにくいふた、口に入れると6秒以内に吐き出させる苦み、水に入れても30秒は溶けないフィルムを法律で義務づけています。米国は業界の自主基準で同じような対策をとっています。日本の業界の自主的な対策の中身は、今回は確かめられませんでした。

子どもや、認知症の方がいる家庭では、パック型は手の届かないところに、ふたを閉めて置くようにします。

飲み込んだら:全身への影響

  • WHO/IPCS の評価書によると、LAS・AOS・AS は消化管から吸収されて全身に行き、代謝されて、主に尿から出ていきます
  • 急性毒性の目安(半数のラットが死ぬ量、LD50)は、LAS で体重1kgあたり404〜1,470mg、AS で1,000〜4,120mg、SLS で0.8〜1.1g です。これは動物の値で、人の危険な量にそのまま置きかえることはできません
  • 国際がん研究機関(IARC)は、コカミドDEA(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)を「人に対して発がん性がある可能性がある(2B)」に分類しています(2013年)。根拠は動物実験で、人での証拠はありません。LAS・SLS・SLES・第四級アンモニウム塩は、IARC では評価されていません

口の中:歯みがき剤と口内炎

多くの歯みがき剤には、泡立てるために SLS が入っています。くり返す口内炎(再発性アフタ性口内炎)と SLS の関係は、研究の結果が一致していません。

  • 4つのランダム化比較試験(124人)をまとめたシステマティックレビュー(Alli 2019)は、SLS の入っていない歯みがき剤で口内炎の数・続く日数・痛みが減ったとし、「利益があるかもしれないが、質の高い試験がもっと必要」と結論しました
  • 90人の試験(Shim 2012)では、口内炎の数は変わらず、続く日数と痛みだけが減りました。47人の試験(Healy 1999)では差がありませんでした

口内炎をくり返す人で SLS の入っていない歯みがき剤を試したい場合は、表示の「発泡剤」や「洗浄剤」の欄を見ます。シャボン玉石けんの「せっけんハミガキ」は、洗浄剤が石ケン素地で、ラウリル硫酸Na は入っていません。

呼吸:スプレーと消毒剤

欧州10か国の調査で、家庭でスプレー式の洗剤を週1回以上使う人は、ぜんそくの症状や薬の使用が新たに出る割合が1.49倍、週4日以上で医師に診断されたぜんそくが2.11倍でした。スプレー式でない洗剤では関連は見られませんでした(Zock 2007)。どの成分のためかは分かっていません。

消毒剤の陽イオン界面活性剤(第四級アンモニウム塩)については、医療従事者でぜんそくの症例報告や関連を示す調査がある一方、米国の看護師の大規模な追跡調査ではぜんそくとの関連は見られず(COPD とは関連あり)、結果は一貫していません。

食べものの乳化剤と腸

食品の乳化剤の一部も界面活性剤です。

  • 2015年の Nature の研究では、マウスの飲み水に乳化剤のポリソルベート80(界面活性剤)やカルボキシメチルセルロース(CMC、界面活性剤ではなく増粘剤)を1%入れて12週間与えると、腸の軽い炎症や肥満が起きました(Chassaing 2015)
  • 人では、CMC を1日15g、11日間(最初の3人は14日間)とった7人と、とらなかった9人を比べた小さな試験があり、腸内細菌の多様性が下がりました(Chassaing 2022)。ポリソルベート80で人に与えた試験は見つかりませんでした
  • フランスの約10万人の追跡調査(NutriNet-Santé)では、乳化剤の摂取量と心血管の病気・がん・2型糖尿病の関連が報告されています。ただし、これは観察研究で、乳化剤が病気の原因だとは示していません。また、この研究の「乳化剤」には CMC やカラギーナン、グアーガムのような界面活性剤ではないものも含まれ、ポリソルベート80は食べている人が少なく個別に調べられていません

「皮膚から入って体にたまる」は?

WHO/IPCS の評価書は、LAS などは「傷のない皮膚からはごくわずかしか吸収されないようだ」とし、吸収された分は代謝されて出ていくと書いています。一方で、長い時間触れていると皮膚のバリアが傷み、吸収が増えうるとも書いています。詳しくは 経皮毒・日用品の記事 にまとめています。

日本と海外の扱い:禁止されているものはある?

結論から言うと、「界面活性剤」をまとめて禁止している国は、調べた範囲(日本・EU・米国・カナダ)にはありません。規制は「どの物質を」「何に使うか」「どれくらいの濃度で」で決まっています。

テーマ 日本 EU 米国
界面活性剤全体の禁止 なし なし(洗剤用は分解されやすさが条件) なし
洗剤の界面活性剤の生分解性 法律の要件なし 必須。28日で60%(または70%)以上が分解されること(2005年〜、2029年9月から新規則) 連邦の法律の要件は見当たらない
洗剤の界面活性剤の表示 総含有率(%)と、3%以上入っている種類の名前 系統(陰イオン・非イオンなど)ごとに「5%未満/5〜15%/15〜30%/30%以上」の幅 連邦の表示義務は見当たらない
ノニルフェノール系(NPE) 2025年4月から化審法の第二種特定化学物質(水系洗浄剤に表示義務)。家庭用洗剤では1982年ごろから業界が使用を自粛 2005年から洗浄・化粧品など9つの用途で0.1%以上を禁止。2021年から衣類などの繊維製品も0.01%以上を禁止 規制案(2014年)、業務用洗濯洗剤は業界が自主的にやめた
フッ素系(PFOS・PFOA など) 化審法で製造・輸入を原則禁止(PFOS 2010年、PFOA 2021年) 国際条約(ストックホルム条約)に沿って規制。泡消火薬剤は2030年10月から PFAS を禁止 飲み水の規制値(2024年)
除草剤の補助剤(POE タロウアミン) 禁止リスト(33物質)に入っているかは未確認 2016年にグリホサート製剤で禁止、2021年から全農薬で不可 —
1,4-ジオキサン(製造時に混ざる不純物) 化粧品の基準に上限なし(水道水は0.05mg/L) 化粧品では禁止物質(技術的に避けられない微量は可) ニューヨーク州:家庭用洗浄剤・パーソナルケア製品は1ppm以下、化粧品は10ppm以下
抗菌せっけん 2016年に厚生労働省が、トリクロサンなど19成分を含む薬用石けんの切り替えを要請 — 2016年に FDA が19成分を認めず。塩化ベンザルコニウムなど3成分は判断を保留
食品の乳化剤 許可されたものだけ使える。「乳化剤」とまとめて表示できる 許可されたものだけ(E番号)。EFSA が再評価 —

それぞれの理由を短く書きます。

  • EU の生分解性:1950〜60年代の川の泡の経験から、EU は洗剤に使う界面活性剤に「最後まで分解されること」を求めています。満たさないものは洗剤に使えないので、結果として締め出されます。2026年3月に公布された新しい規則(2026/405)では、生分解性の求めを洗剤カプセルのフィルムなどにも広げます
  • ノニルフェノールエトキシレート(NPE):非イオンの界面活性剤で、環境の中で分解されてノニルフェノールになります。ノニルフェノールは魚などに強い毒性があり、魚でホルモンをかく乱する作用が報告されています。日本は2012年に、川の生き物を守るための環境基準にノニルフェノールを加えました
  • フッ素系:分解されず、体や環境にたまる「PFAS」の一部です。フライパンの加工の話は テフロン加工の記事 に書いています
  • POE タロウアミン:EU の食品安全機関(EFSA)は2015年に、グリホサートと比べて「調べたすべての項目で毒性が強い」とし、除草剤による人の中毒のデータはこの補助剤で説明できる可能性があるとしました
  • 1,4-ジオキサン:ラウレス硫酸Na(SLES)のような、エチレンオキシドを付けた界面活性剤を作るときに、副産物として少し混ざることがある物質です(意図して入れる成分ではありません)。IARC の分類は2B です
  • 食品の乳化剤の許容量:ポリソルベートの1日の許容摂取量(ADI)は、日本の食品安全委員会の評価書案が体重1kgあたり10mg、EFSA が25mg と、根拠にした試験がちがうため数字もちがいます

水道の水質基準には、泡立ちを防ぐために、陰イオン界面活性剤 0.2mg/L 以下、非イオン界面活性剤 0.02mg/L 以下という決まりがあります。

環境:川の泡は、いまどうなっている?

  • 日本は2013年3月に、LAS を「水生生物の保全に関する環境基準」に加えました。川・湖でイワナ・サケなどがすむ水域は0.03mg/L 以下、コイ・フナなどの水域は0.05mg/L 以下などです。2023年度の達成率は、川・湖・海とも100%でした
  • 北九州市の下水処理場の測定(2021年12月)では、流れこむ水の LAS は0.5〜1.3mg/L、処理して出す水は0.001〜0.002mg/L 程度でした
  • 石けんにも水の生き物への毒性はあります(上の表の1〜10mg/L の区分)。「石けんは使う量が多く、川の有機物の負荷が大きい」という指摘もありますが、公的な比較のデータは確かめられませんでした

新型コロナウイルスと界面活性剤

2020年、NITE(製品評価技術基盤機構)と経済産業省の委員会は、国立感染症研究所などの試験をもとに、家庭用洗剤の界面活性剤9種類を、新型コロナウイルスの物品の消毒に有効と判断しました。

界面活性剤 有効と判断された濃度
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS) 0.1%以上
アルキルグリコシド 0.1%以上
アルキルアミンオキシド 0.05%以上
塩化ベンザルコニウム 0.05%以上
塩化ベンゼトニウム 0.05%以上
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム 0.01%以上
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.2%以上
純石けん分(脂肪酸カリウム) 0.24%以上
純石けん分(脂肪酸ナトリウム) 0.22%以上

注意点もあります。

  • 対象は物品で、手指や皮膚、空間に吹きかける使い方は調べていません。また、安全性は評価していません
  • アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)とアルキルベタインは0.5%まで、脂肪酸アルカノールアミドは0.2%まで「有効と判断されない」とされました
  • 委員会には、業界団体(日本石鹸洗剤工業会)の役員も委員として入っていました
  • 有効な界面活性剤を含む製品のリストは、2021年10月末で更新が止まっています

「無添加」「植物由来」「アミノ酸系」という言葉

  • 化粧品の広告について、日本化粧品工業会のガイドライン(業界の自主基準)は、「無添加」は何を添加していないかを書き、強調しないこととしています。「敏感肌の方にも安心」のように安全を保証する言い方も使えない例に挙げています
  • 洗剤(雑貨)は医薬品医療機器等法の対象ではなく、家庭用品品質表示法と景品表示法がかかります。2021年4月、消費者庁は、洗剤を使わずに洗えるとうたった洗濯用品「洗たくマグちゃん」の販売会社に、景品表示法にもとづく措置命令を出しました。「弱アルカリイオン水は、洗剤と同じように、油脂を分解する界面活性作用があります」などの表示に、合理的な根拠が示されなかったためです
  • 重曹(炭酸水素ナトリウム)・セスキ炭酸ナトリウム・クエン酸は、アルカリや酸で、界面活性剤ではありません

裏面チェックのポイント

  1. 品名を見る:「石けん」「複合石けん」「合成洗剤」で、主な洗浄成分が何かが分かる
  2. 「界面活性剤」の欄を見る:洗剤なら総含有率(%)と、3%以上入っている種類の名前が書いてある。化粧品なら全成分表示の最初のほう
  3. 「植物由来」「アミノ酸系」「合成界面活性剤不使用」は原料や言い回しの話。界面活性剤が入っていないという意味ではない
  4. 手荒れが気になるなら、成分より先に使い方(手袋、すすぎ、使う量)を見直す。ガイドラインも手袋をすすめている
  5. 特定の成分でかぶれたことがあるなら、その表示名を覚えておく(コカミドプロピルベタイン、デシルグルコシドなど)
  6. パック型の洗剤は、子どもや高齢者の手が届かないところに

ウラヨミの考え方

界面活性剤は、石けんを含めて、水と油をつなぐ便利な物質です。そのぶん、皮膚の脂も落とし、高い濃度では目や口を傷つけます。これは石けんでも合成でも同じです。

一方で、「合成界面活性剤は危険」「海外では禁止」という話は、調べると、特定の物質(NPE や PFAS など)の特定の用途の規制のことが多く、身近な洗剤の主な界面活性剤(LAS、AES、AE、石けんなど)がまとめて禁止されているわけではありません。

ウラヨミは、どれが「安全」か「危険」かを決めるのではなく、裏面に何が書いてあり、それについて何が分かっているかを並べることにしています。

まとめ

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参考にした資料

公的機関・法令

  • 消費者庁「雑貨工業品品質表示規程(二十七 合成洗剤、洗濯用又は台所用の石けん及び住宅用又は家具用の洗浄剤)」
  • 経済産業省「生産動態統計 化学工業統計」(e-Stat、2003〜2025年)
  • 環境省「令和5年度 PRTR 届出外排出量の推計方法 参考7 洗浄剤・化粧品等に係る排出量」「令和5年度 PRTR データの概要」(2025年)
  • 環境省「水生生物の保全に係る水質環境基準の項目追加」(2013年)、「令和5年度公共用水域水質測定結果」(2025年)、化審法施行令の改正(NPE、2024年)、「PFOS、PFOA に関する Q&A 集」(2024年)
  • 製品評価技術基盤機構(NITE)「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告)」(2020年)、「ノニルフェノール及びノニルフェノールエトキシレートのリスク管理の現状と今後のあり方」(2004年)
  • 消費者庁・国民生活センター「洗濯用パック型液体洗剤に気を付けて!」(2015年)、国民生活センター「なくならない洗濯用パック型液体洗剤による事故」(2024年)、消費者庁「株式会社宮本製作所に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2021年)
  • 日本中毒情報センター「2024年受信報告」
  • 日本皮膚科学会「手湿疹診療ガイドライン」(2018年)
  • 厚生労働省「水質基準に関する省令」「化粧品基準」「薬用石けんに関する取扱い等について」(2016年)
  • 食品安全委員会「ポリソルベート類の評価書(案)」(2007年)
  • 滋賀県「びわ湖の日とは」「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」
  • バイエルン州環境局(ドイツ)「洗剤法」の解説
  • WHO/IPCS「Environmental Health Criteria 169: Linear alkylbenzene sulfonates and related compounds」(1996年)
  • 国際がん研究機関(IARC)分類一覧
  • デンマーク環境保護庁「Environmental Project No. 615」(2001年)
  • EU 規則 648/2004、2026/405(洗剤)、指令 2003/53/EC・規則 2016/26・2017/999(NPE)、規則 1297/2014(パック型洗剤)、実施規則 2016/1313・規則 2021/383(農薬の共製剤)、規則 2025/1988(泡消火薬剤)、化粧品規則 1223/2009・規則 866/2014
  • EFSA(欧州食品安全機関)のポリソルベート(2015年)・レシチン(2017年)・E471(2017年)の再評価
  • ニューヨーク州環境保全局「1,4-Dioxane Limits」、米国 FDA の抗菌せっけんの最終規則(2016年)、カリフォルニア州 OEHHA(Prop 65)
  • ストックホルム条約事務局「The new POPs」

論文

  • Fujiwara T ほか. Lancet 1980(人工サーファクタント)、Obladen M. Biol Neonate 2005、Avery ME, Mead J 1959、Arima K ほか 1968(サーファクチン)
  • Löffler H, Happle R. Contact Dermatitis 2003、Nicander I ほか. Skin Res Technol 2003、Hall-Manning TJ ほか. Food Chem Toxicol 1998、Wilhelm KP ほか. J Invest Dermatol 1993、Effendy I, Maibach HI. Contact Dermatitis 1995、Goffin V ほか 1995、Ward RK ほか 1998
  • Tupker RA ほか. Contact Dermatitis 1997(SLS 試験のガイドライン)、Forkel S ほか. Contact Dermatitis 2026
  • Jacob SE, Amini S. Dermatitis 2008、Fowler JF ほか. Dermatitis 2015、Sasseville D. Dermatitis 2017、Warshaw EM ほか. J Am Acad Dermatol 2022
  • Valdez AL ほか. Pediatrics 2014(米国のパック型洗剤の事故)
  • Alli BY ほか. J Oral Pathol Med 2019、Shim YJ ほか. Oral Dis 2012、Healy CM ほか. Oral Dis 1999
  • Zock JP ほか. Am J Respir Crit Care Med 2007、Dumas O ほか. Am J Ind Med 2020・JAMA Netw Open 2019
  • Chassaing B ほか. Nature 2015・Gastroenterology 2022、Sellem L ほか. BMJ 2023・PLoS Med 2024、Salame C ほか. Lancet Diabetes Endocrinol 2024
  • CIR「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Lauryl Sulfate and Ammonium Lauryl Sulfate」1983(CIR は業界団体の資金で運営される評価機関)

業界団体・メーカー

  • 日本石鹸洗剤工業会「界面活性剤ってなに?」「洗剤メモシート(商品の歩み・洗剤と法律)」「石けんの起源から渡来まで」「あゆみ」「洗剤の販売推移」
  • 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」2020年版
  • 花王「製品の歴史」、アタックZERO・キュキュット・ハミングの成分情報
  • Science History Institute「Making the Process」

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.02)。