農薬データベース解説確認日 2026.10.01

減農薬とは?「○割減」の数え方と、強い農薬を使うのかという疑問

特別栽培の「当地比○割減」は何を数えているのか

結論

いわゆる「減農薬」は、いまは特別栽培農産物として「節減対象農薬:当地比 ○割減」と表示されます。その地域のふつうの栽培(慣行レベル)と比べて、農薬を使う回数を5割以下にしたものです。

数えるのは有効成分ごとの延べ回数だけで、農薬の毒性の強さ・散布する量・効く期間は基準に入っていません。「回数を減らすために強い農薬に置き換えている」ことを示す公的資料は見つかりませんでしたが、基準のしくみ上、それを防ぐ決まりもありません。

特別栽培の「○割減」は回数で数えることを説明した図。農薬は有効成分ごとの延べ回数(成分回数)で数える。例:混合剤(成分A・成分B・成分C)を2回散布すると、A 2回+B 2回+C 0回(C は有機JASで使える農薬なので数えない)。除草剤(成分D)を3回散布すると D 3回。合計7回。その地域の慣行レベル(例:大阪府のトマト 29回)の5割以下(14回以下)なら特別栽培。数えないものは、有機JASで使える農薬と展着剤。数えるのは回数だけで、毒性の強さ・散布する量・効く期間はこの基準に入っていない。国の別の目標(化学農薬のリスク換算)は、量だけを減らすとかえって毒性の高い農薬の使用が増えるおそれがあるとして、ADI で重みをつけている。
図:特別栽培の「○割減」の数え方

数え方:有効成分ごとの延べ回数

  • 使用回数は、散布した農薬の有効成分ごとに数えます。除草剤・殺菌剤・殺虫剤のほか、植え付け前の土壌消毒剤や種子消毒剤も対象です(Q&A Q3)。
  • 2つ以上の成分を混ぜた農薬(混合剤)は、散布した回数ではなく、成分ごとの延べ回数で数えます。たとえば3成分の混合剤(うち1成分は有機JAS で使える農薬)を2回と、除草剤を3回使えば、2+2+0+3=7回です(Q&A Q15)。
  • 有機JAS で使える農薬(→ 無農薬とは?)と展着剤は数えません(Q&A Q11・Q17)。数える対象の農薬を「節減対象農薬」と呼びます。

「ふつう」の回数は、地域と作物で違う

比べる相手の「慣行レベル」は、都道府県などが地域・作物・作型ごとに決めて公開しています。大阪府の例では、なすやトマトは30回前後、水稲は14回です。

大阪府の慣行レベル(節減対象農薬の成分回数)と、特別栽培の上限 大阪府が定めた作物ごとの慣行レベル。なす(水なす(露地)) 40回、トマト 29回、きゅうり(施設) 29回、いちご 24回、ぶどう(デラウェア以外(露地)) 24回、うんしゅうみかん 20回、なし 19回、キャベツ 18回、もも 18回、たまねぎ 16回、水稲 14回、大豆 9回、だいこん 9回、ほうれんそう(施設) 8回。特別栽培農産物はこの5割以下(濃い色の部分)。 特別栽培の上限(5割) 慣行レベル 0回 10回 20回 30回 40回 なす(水なす(露地)) 40回(上限 20回) トマト 29回(上限 14回) きゅうり(施設) 29回(上限 14回) いちご 24回(上限 12回) ぶどう(デラウェア以外(露地)) 24回(上限 12回) うんしゅうみかん 20回(上限 10回) なし 19回(上限 9回) キャベツ 18回(上限 9回) もも 18回(上限 9回) たまねぎ 16回(上限 8回) 水稲 14回(上限 7回) 大豆 9回(上限 4回) だいこん 9回(上限 4回) ほうれんそう(施設) 8回(上限 4回) 出典:大阪府「慣行レベル一覧」。作型が複数ある作物は回数の多い作型。上限は慣行÷2(端数切り捨て)の計算値
図:大阪府の慣行レベル(節減対象農薬の成分回数)と、特別栽培の上限(5割)
作物大阪府青森県和歌山県
水稲14回17回20〜22回
トマト29回22回30〜44回
いちご24回40回32回
キャベツ18回14〜18回16回
なし19回18回23回

作型(促成・露地など)で分かれている作物は、その範囲。同じトマトでも県や作型で回数が大きく違うため、「○割減」はその地域の慣行と比べた割合で、県をまたいで回数を比べるものではありません。

減農薬は「量を減らして強い農薬を使う」のか

よく聞かれる疑問なので、分かっていることと、分かっていないことを分けます。

  • 基準は回数だけ:ガイドラインの定義は「節減対象農薬の使用回数」だけで、毒性の強さ・散布する量(有効成分の量)・効く期間で重みをつける決まりはありません。
  • 国の別の指標は毒性で重みをつけている:国の「みどりの食料システム戦略」の目標(化学農薬使用量のリスク換算)は、単純に量を減らす目標にすると「かえって毒性の高い農薬の使用が増えるおそれがある」として、ADI の小さい成分ほど重く数える方式にしています(農林水産省)。これは特別栽培の基準についての説明ではありません。
  • 長く効く使い方で回数を減らす技術はある:たとえば茨城県は、苗の箱に施す殺菌・殺虫剤(育苗箱施用剤)、カメムシの発生調査などを組み合わせて、除草剤を含めても成分回数を県の慣行の半分以下(5〜8回)にする稲の栽培指針を普及しています。
  • 分かっていないこと:特別栽培で「毒性の強い・長く残る農薬に置き換わっている」ことを示す公的資料・研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。逆に、毒性が下がっていることを示す資料もありません。

使った農薬は、成分名・用途・回数をラベルや店頭・ウェブで表示する決まりがあります(ガイドライン 第4の4)。気になるときは、その成分をこのデータベースで調べると、毒性の区分や ADI を確かめられます。

回数を数えて選ぶなら

特別栽培・有機JAS の野菜をまとめて買えるのが食材宅配です。どこまで農薬を減らすかの基準は会社ごとに違います。

5社の基準の比較 → 食材宅配の比較

出典

最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。制度や数字は変わることがあります。

このページは、法令・公的機関の資料・査読論文に書かれている事実を並べたもので、特定の農薬や栽培方法の良し悪しを判定するものではありません。

ほかの解説

← 農薬データベースの一覧へ