毒性の強い農薬・弱い農薬のランキング(急性毒性・ADI・発がん性)
WHO の急性毒性、日本の ADI、IARC の分類を、ものさしごとに並べる
結論
「毒性の強さ」には、ものさしが3つあります。①一度に大量にとったときの急性毒性(WHO の区分・日本の毒物/劇物)、②長く食べ続けたときの ADI、③発がん性の根拠の強さ(IARC)です。同じ成分でも、ものさしによって順位が変わります。
急性毒性がもっとも強い区分(WHO Ia)の成分の多くは、日本では登録が失効しています。いま登録されている製剤の90.5%は「普通物」(毒物・劇物に当たらないもの)です。
どのランキングも、成分そのものの性質(ハザード)の順位です。食品に残る量はとても少ないので、実際の健康へのリスクの順位とは違います。ふだんの食事からとっている量は、もっとも多い成分でも ADI の 0.5% 未満でした(消費者庁 令和6年度)→ 基準値の決まり方
① 急性毒性:一度に大量にとったとき
WHO は、薄める前の成分を主にラットに一度飲ませたときの LD50(半数が死ぬ量、体重1kgあたり mg)で、農薬を5つに分けています。LD50 が小さいほど急性毒性が強いという意味です。
WHO Ia(極めて危険) 3成分
WHO Ib(非常に危険) 8成分
WHO II(中程度に危険) 69成分
- ビフェントリン c55
- メチルイソチオシアネート 72
- エンドスルファン(ベンゾエピン) 80(2010年失効)
- フィプロニル 92
- DDT 113(1971年失効)
- クロルピリホス 135(2025年失効)
- アセタミプリド c140
- ジメトエート c150
- パラコート 150
- ベンフラカルブ 205
- ペルメトリン c220
- イマザリル 227(食品添加物)
- ジクワット 231
- フェンピロキシメート 245
- カルボスルファン 250
- シペルメトリン c250
- インドキサカルブ 268
- ダイアジノン 300
- カルバリル(NAC) c300(2026年失効)
- イミノクタジン 300
- イソプロチオラン ≥300
- トリシクラゾール 305
- カルタップ 325
- プロフェノホス 358(2025年失効)
- 2,4-D 375
- クロチアニジン 389
- チアクロプリド 396
- クロルメコート 433
- クロルフェナピル 441
- イミダクロプリド 450
- フェンバレレート c450
- クロルデン 460(1971年失効)
- フェニトロチオン(MEP) 503
- チウラム 560
- テブフェンピラド 595
- フェノブカルブ(BPMC) 620(2025年失効)
- ジチアノン 640
- ダゾメット 640
- メトコナゾール 660
- メタラキシル 670
- ジコホル(ケルセン) c690(2004年失効)
- トリフルミゾール 695
- MCPA 700
- トリクロピル 710
- フェリムゾン 725
- ニテンピラム 867
- チアメトキサム 871
- フロニカミド 884
- プロチオホス 925
- アセフェート 945
- スルホキサフロル 1000
- テトラコナゾール 1031
- ペンディメタリン 1050
- ベンタゾン 1100
- DCPA(プロパニル) c1400
- ジフェノコナゾール 1453
- グルホシネート >1500
- プロピコナゾール 1520
- ミクロブタニル 1600
- プロクロラズ 1600
- ピリミホスメチル 1667(2020年失効)
- テブコナゾール 1700
- ジカンバ 1707
- エマメクチン安息香酸塩 53-237
- フルピラジフロン 300-2000
- 除虫菊の抽出物(ピレトリン) 500-1000
- シハロトリン(ラムダ-シハロトリン) c56
- BHC(HCH)・リンデン 88(1971年失効)
- 銅剤(塩基性塩化銅・水酸化第二銅など) 1000
WHO III(やや危険) 36成分
- フルベンジアミド >2000
- ルフェヌロン >2000
- エトキサゾール D>2000
- シフルメトフェン >2000
- スピロジクロフェン D>2000
- ピメトロジン D>2000
- クレソキシムメチル >2000
- フルオピラム >2000
- ペンチオピラド >2000
- フルキサピロキサド >2000
- アトラジン c2000
- プロベナゾール 2030
- マラチオン c2100
- ヘキサコナゾール 2180
- ブプロフェジン 2200
- ジノテフラン 2450
- オルトフェニルフェノール(OPP) 2480(1969年失効)
- ビスピリバックナトリウム塩 2635
- S-メトラクロール 2780
- クロルピリホスメチル >3000(2014年失効)
- フルフェノクスロン >3000
- 硫黄 >3000
- ジフェニル(DP) 3280(食品添加物)
- ブタクロール 3300
- チアベンダゾール(TBZ) 3330(2006年失効)
- DCMU(ジウロン) 3400
- イプロジオン 3500
- ジメトモルフ 3500
- スピノサド 3738
- ヒドロキシイソキサゾール 3900
- BT 剤(バチルス・チューリンゲンシス) >4000
- リニュロン 4000
- アシュラム 4000
- エテホン >4000
- ピリメタニル 4150(2005年失効)
- グリホサート 4230
WHO U(通常の使用で急性の危険は低い) 38成分
- シラフルオフェン >5000(2023年失効)
- クロラントラニリプロール >5000
- シアントラニリプロール >5000
- スピネトラム >5000
- テフルベンズロン >5000
- ピリプロキシフェン >5000
- ビフェナゼート >5000
- アゾキシストロビン >5000
- トリフロキシストロビン >5000
- イミベンコナゾール >5000
- ボスカリド >5000
- チフルザミド >5000
- フルジオキソニル >5000
- フェンヘキサミド >5000
- ペンシクロン >5000
- シアゾファミド >5000
- マンジプロパミド >5000
- ベンスルフロンメチル >5000
- メフェナセット >5000(2024年失効)
- シマジン(CAT) >5000(2025年失効)
- ホセチル 5800
- プレチラクロール 6100
- プロシミドン 6800
- マレイン酸ヒドラジド 6950
- エチプロール >7080
- マンゼブ >8000
- オキサジアゾン >8000
- キャプタン 9000
- ピラゾレート 9550
- エトフェンプロックス >10000
- フルトラニル >10000
- ベノミル >10000
- TPN(クロロタロニル) >10000
- バリダマイシン >10000
- カスガマイシン >10000
- トリフルラリン >10000
- ジベレリン >10000
- カルベンダジム・チオファネートメチル >10000
数字は LD50(mg/kg)。「c」は値のばらつきが大きい中から分類用に選んだ値。くん蒸剤(ガスで使うもの)は WHO の区分の対象外。WHO 2019 に載っていない新しい成分もあります。
日本の「毒物」「劇物」
日本では、毒物及び劇物取締法で、急性毒性の強いものを「毒物」(特に強いものは「特定毒物」)、次に強いものを「劇物」に指定しています。どちらにも当たらないものを「普通物」と呼びます。
- 特定毒物の11製剤は、すべてリン化アルミニウムのくん蒸剤。毒物の4製剤は、青酸のくん蒸剤、ジクワット・パラコートの液剤(2製剤)、フッ化スルフリルのくん蒸剤です。
- 昔は違いました。生産金額の割合で、1970年は特定毒物0.4%・毒物6.8%、2010年は特定毒物0.0%・毒物0.8%・劇物14.9%・普通物84.3%でした(植物防疫 第68巻第10号、農薬要覧から作表)。
成分そのものが特定毒物(このデータベースの登録あり成分)
成分そのものが劇物(このデータベースの登録あり成分)
成分が劇物でも、薄めた製剤は普通物になるものが多くあります(例「劇(2%普)」=成分2%以下の製剤は普通物)。くわしくは各成分のページの「製剤の区分」を見てください。
② ADI:長く食べ続けたとき
ADI(一日摂取許容量)は、一生毎日食べ続けても健康への影響がないとされる量です。ADI が小さいほど、許される量が少ない(慢性の毒性が強い)ことを意味します。日本では食品安全委員会が決めています。
ADI の大きい成分(許される量が多い)
| 成分 | ADI(mg/kg 体重/日) |
|---|---|
| クロラントラニリプロール | 1.5 |
| グリホサート | 1 |
| ホセチル | 0.88 |
| ニテンピラム | 0.53 |
| アシュラム | 0.36 |
| バリダマイシン | 0.36 |
| クレソキシムメチル | 0.36 |
| フルジオキソニル | 0.33 |
| ジカンバ | 0.3 |
| マラチオン | 0.29 |
| マレイン酸ヒドラジド | 0.25 |
| ジノテフラン | 0.22 |
急性毒性と ADI は別のものさしです。たとえばグリホサートは WHO III(やや危険)で ADI も1と大きい一方、IARC はグループ2A に分類しています。
③ 発がん性:IARC の分類
IARC(国際がん研究機関)は、ある物質が「がんを起こしうるか」の根拠の強さで分類します。とる量でのリスクの大きさを表すものではありません(同じグループ1には、たばこや加工肉も入っています)。
グループ 1(ヒトに対して発がん性がある)
グループ 2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)
弱いほう:急性毒性も低く、ADI も大きい成分
WHO で「U(通常の使用で急性の危険は低い)」に分類され、日本で登録されている成分の例:
- クロラントラニリプロール
- シアントラニリプロール
- スピネトラム
- テフルベンズロン
- ピリプロキシフェン
- ビフェナゼート
- アゾキシストロビン
- トリフロキシストロビン
- イミベンコナゾール
- ボスカリド
- チフルザミド
- フルジオキソニル
- フェンヘキサミド
- ペンシクロン
- シアゾファミド
- マンジプロパミド
- ベンスルフロンメチル
- ホセチル
- プレチラクロール
- プロシミドン
- マレイン酸ヒドラジド
- エチプロール
- マンゼブ
- オキサジアゾン
- キャプタン
- ピラゾレート
- エトフェンプロックス
- フルトラニル
- ベノミル
- TPN(クロロタロニル)
- バリダマイシン
- カスガマイシン
- トリフルラリン
- ジベレリン
- カルベンダジム・チオファネートメチル
硫黄・炭酸水素ナトリウム(重曹)・マシン油などは、ポジティブリスト制度の「対象外物質」(人の健康を損なうおそれのないことが明らかなもの)で、残留基準値が設けられていません。
出典
- WHO "The WHO Recommended Classification of Pesticides by Hazard and Guidelines to Classification 2019"
- FAMIC 登録有効成分一覧・登録農薬の概要(2026年9月30日現在)
- 食品安全委員会 化学物質毒性評価データベース(農薬)・農薬評価書
- IARC Monographs "List of Classifications"(Volumes 1–142、2026年7月23日更新)
- 植物防疫 第68巻第10号(2014)「農薬のルーツと歴史、過去・現在・未来」(日本植物防疫協会)
- クロップライフジャパン Q&A「農薬の中には毒物や劇物があります…」(日本植物防疫協会『農薬概説 2021』から。業界団体の資料)
- 消費者庁『令和6年度 食品中に残留する農薬等の一日摂取量調査結果』
最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。制度や数字は変わることがあります。