農薬データベース解説確認日 2026.10.01

毒性の強い農薬・弱い農薬のランキング(急性毒性・ADI・発がん性)

WHO の急性毒性、日本の ADI、IARC の分類を、ものさしごとに並べる

結論

「毒性の強さ」には、ものさしが3つあります。①一度に大量にとったときの急性毒性(WHO の区分・日本の毒物/劇物)、②長く食べ続けたときの ADI、③発がん性の根拠の強さ(IARC)です。同じ成分でも、ものさしによって順位が変わります。

急性毒性がもっとも強い区分(WHO Ia)の成分の多くは、日本では登録が失効しています。いま登録されている製剤の90.5%は「普通物」(毒物・劇物に当たらないもの)です。

どのランキングも、成分そのものの性質(ハザード)の順位です。食品に残る量はとても少ないので、実際の健康へのリスクの順位とは違います。ふだんの食事からとっている量は、もっとも多い成分でも ADI の 0.5% 未満でした(消費者庁 令和6年度)→ 基準値の決まり方

① 急性毒性:一度に大量にとったとき

WHO は、薄める前の成分を主にラットに一度飲ませたときの LD50(半数が死ぬ量、体重1kgあたり mg)で、農薬を5つに分けています。LD50 が小さいほど急性毒性が強いという意味です。

急性毒性の強い農薬の成分(WHO の LD50、経口・ラット、小さいほど強い) WHO 2019 の LD50 が小さい順に20成分:アルジカルブ 0.93mg/kg(Ia)、カルボフラン 8mg/kg(Ib)、アバメクチン 8.7mg/kg(Ib)、パラチオン 13mg/kg(Ia)、メソミル 17mg/kg(Ib)、テフルトリン c22mg/kg(Ib)、メタミドホス 30mg/kg(Ib)、ビフェントリン c55mg/kg(II)、メチルイソチオシアネート 72mg/kg(II)、エンドスルファン(ベンゾエピン) 80mg/kg(II)、フィプロニル 92mg/kg(II)、イソキサチオン 112mg/kg(Ib)、DDT 113mg/kg(II)、クロルピリホス 135mg/kg(II)、アセタミプリド c140mg/kg(II)、ジメトエート c150mg/kg(II)、パラコート 150mg/kg(II)、ベンフラカルブ 205mg/kg(II)、ペルメトリン c220mg/kg(II)、イマザリル 227mg/kg(II)。目盛りは対数。日本で登録が失効しているものを含む。 Ia・Ib II III 1 10 100 1,000 10,000 アルジカルブ(失効・未登録) 0.93(Ia) カルボフラン(失効・未登録) 8(Ib) アバメクチン 8.7(Ib) パラチオン(失効・未登録) 13(Ia) メソミル 17(Ib) テフルトリン c22(Ib) メタミドホス(失効・未登録) 30(Ib) ビフェントリン c55(II) メチルイソチオシアネート 72(II) エンドスルファン(失効・未登録) 80(II) フィプロニル 92(II) イソキサチオン 112(Ib) DDT(失効・未登録) 113(II) クロルピリホス(失効・未登録) 135(II) アセタミプリド c140(II) ジメトエート c150(II) パラコート 150(II) ベンフラカルブ 205(II) ペルメトリン c220(II) イマザリル(失効・未登録) 227(II) LD50(mg/kg 体重)。出典:WHO Recommended Classification of Pesticides by Hazard 2019
図:このデータベースの成分のうち、WHO の LD50(経口)が小さい20成分

WHO Ia(極めて危険) 3成分

WHO Ib(非常に危険) 8成分

WHO II(中程度に危険) 69成分

WHO III(やや危険) 36成分

WHO U(通常の使用で急性の危険は低い) 38成分

数字は LD50(mg/kg)。「c」は値のばらつきが大きい中から分類用に選んだ値。くん蒸剤(ガスで使うもの)は WHO の区分の対象外。WHO 2019 に載っていない新しい成分もあります。

日本の「毒物」「劇物」

日本では、毒物及び劇物取締法で、急性毒性の強いものを「毒物」(特に強いものは「特定毒物」)、次に強いものを「劇物」に指定しています。どちらにも当たらないものを「普通物」と呼びます。

登録されている農薬の製剤3,741種類の毒性の区分(2026年9月30日現在) 普通物3,385(90.5%)、劇物228(6.1%)、毒物4(0.1%)、特定毒物11(0.3%、すべてリン化アルミニウムのくん蒸剤)、区分なし113(3.0%、天敵と微生物の農薬)。 普通物 3385 劇物 228 毒物 4 特定毒物 11 区分なし(天敵・微生物) 113 普通物 3,385(90.5%) 劇物 228(6.1%) 毒物 4(0.1%) 特定毒物 11(0.3%) 区分なし(天敵・微生物) 113(3.0%)
図:いま登録されている農薬の製剤3,741種類の区分(FAMIC、2026年9月30日現在)
  • 特定毒物の11製剤は、すべてリン化アルミニウムのくん蒸剤。毒物の4製剤は、青酸のくん蒸剤、ジクワット・パラコートの液剤(2製剤)、フッ化スルフリルのくん蒸剤です。
  • 昔は違いました。生産金額の割合で、1970年は特定毒物0.4%・毒物6.8%、2010年は特定毒物0.0%・毒物0.8%・劇物14.9%・普通物84.3%でした(植物防疫 第68巻第10号、農薬要覧から作表)。

成分そのものが特定毒物(このデータベースの登録あり成分)

成分そのものが毒物(このデータベースの登録あり成分)

成分そのものが劇物(このデータベースの登録あり成分)

成分が劇物でも、薄めた製剤は普通物になるものが多くあります(例「劇(2%普)」=成分2%以下の製剤は普通物)。くわしくは各成分のページの「製剤の区分」を見てください。

② ADI:長く食べ続けたとき

ADI(一日摂取許容量)は、一生毎日食べ続けても健康への影響がないとされる量です。ADI が小さいほど、許される量が少ない(慢性の毒性が強い)ことを意味します。日本では食品安全委員会が決めています。

ADI(一日摂取許容量)の小さい農薬の成分(日本の食品安全委員会) ADI が小さい順に20成分:カルボフラン 0.00015、フィプロニル 0.00019、エトプロホス 0.00025、アルジカルブ 0.00025、プロフェノホス 0.0005、エマメクチン安息香酸塩 0.0005、メタミドホス 0.00056、アバメクチン 0.0006、ダイアジノン 0.001、クロルピリホス 0.001、クロルピクリン 0.001、MCPA 0.0019、ホスチアゼート 0.002、イソキサチオン 0.002、イミノクタジン 0.0023、アセフェート 0.0024、プロチオホス 0.0027、オキサジアゾン 0.0036、テトラコナゾール 0.004、メチルイソチオシアネート 0.004(mg/kg 体重/日)。目盛りは対数。ADI が小さいほど、長く食べ続けたときに許される量が少ない。 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 カルボフラン(失効・未登録) 0.00015 フィプロニル 0.00019 エトプロホス(失効・未登録) 0.00025 アルジカルブ(失効・未登録) 0.00025 プロフェノホス(失効・未登録) 0.0005 エマメクチン安息香酸塩 0.0005 メタミドホス(失効・未登録) 0.00056 アバメクチン 0.0006 ダイアジノン 0.001 クロルピリホス(失効・未登録) 0.001 クロルピクリン 0.001 MCPA 0.0019 ホスチアゼート 0.002 イソキサチオン 0.002 イミノクタジン 0.0023 アセフェート 0.0024 プロチオホス 0.0027 オキサジアゾン 0.0036 テトラコナゾール 0.004 メチルイソチオシアネート 0.004 ADI(mg/kg 体重/日)。出典:食品安全委員会 農薬評価書(2026年10月1日確認)
図:ADI の小さい20成分(mg/kg 体重/日、食品安全委員会)

ADI の大きい成分(許される量が多い)

急性毒性と ADI は別のものさしです。たとえばグリホサートは WHO III(やや危険)で ADI も1と大きい一方、IARC はグループ2A に分類しています。

③ 発がん性:IARC の分類

IARC(国際がん研究機関)は、ある物質が「がんを起こしうるか」の根拠の強さで分類します。とる量でのリスクの大きさを表すものではありません(同じグループ1には、たばこや加工肉も入っています)。

グループ 1(ヒトに対して発がん性がある)

グループ 2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)

グループ 2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)

弱いほう:急性毒性も低く、ADI も大きい成分

WHO で「U(通常の使用で急性の危険は低い)」に分類され、日本で登録されている成分の例:

硫黄・炭酸水素ナトリウム(重曹)・マシン油などは、ポジティブリスト制度の「対象外物質」(人の健康を損なうおそれのないことが明らかなもの)で、残留基準値が設けられていません。

出典

最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。制度や数字は変わることがあります。

このページは、法令・公的機関の資料・査読論文に書かれている事実を並べたもので、特定の農薬や栽培方法の良し悪しを判定するものではありません。

ほかの解説

← 農薬データベースの一覧へ