「無農薬」とは? 表示できない理由と、有機JAS・特別栽培のちがい
野菜に「無農薬」と書けない理由と、代わりの表示の読み方
結論
「無農薬」は、2003年(平成15年)のガイドライン改正から、野菜や果物に表示しないことになっています。
理由は、消費者が「残留農薬がゼロ」と受け取って誤解が起きていたためです。いまは「農薬:栽培期間中不使用」(特別栽培)か、有機JAS マークで見分けます。

なぜ「無農薬」と書けなくなったのか
農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」は、表示しないものとして「無農薬栽培農産物」「無化学肥料栽培農産物」「減農薬栽培農産物」「減化学肥料栽培農産物」などを挙げています。
- 生産者にとって「無農薬」は「その作物を育てるときに農薬を使っていない」という意味でした。しかし消費者は、土に残った農薬や周りの畑から飛んできた農薬も含めて、残留農薬を一切含まないと受け取っていました(ガイドライン Q&A Q6)。
- 「無農薬」を「有機」より優良だと誤認している消費者が6割以上いた(2002年 総務省「食品表示に関するアンケート調査」、同 Q6)。
- 「減農薬」は、何と比べて、どれだけ、何を(使った回数か、残った量か)減らしたのかが分からなかった(同 Q6)。
2003年5月26日の改正で、それまでの「無農薬栽培農産物」「減農薬栽培農産物」などの区分を「特別栽培農産物」に一本化し、2004年3月31日までを新しい表示の普及・定着の期間としました。
加工食品でも、「無農薬栽培トマト使用」は適当でなく、「栽培期間中農薬不使用のトマト使用」などと書くのが適当とされています(Q&A Q50)。
代わりの表示の読み方
| 売り場の表示 | 農薬についての意味 |
|---|---|
| 有機JAS マーク | 原則として、化学的に合成された農薬・肥料を使わない。畑も、多年生の作物は最初の収穫の3年以上前、それ以外は種まき・植え付けの2年以上前から、使ってはいけない資材を使っていないこと。病害虫が急に広がるおそれがあり、ほかの方法で防げないときに限り、決められた農薬(下の表)は使える |
| 農薬:栽培期間中不使用 | 特別栽培農産物のうち、その作物を育てている間、農薬を使っていないもの |
| 節減対象農薬:栽培期間中不使用 | 有機JAS で使える農薬などは使ったが、それ以外の農薬(節減対象農薬)は使っていないもの |
| 節減対象農薬:当地比 ○割減 | その地域でふつうに使われる回数(慣行レベル)と比べて、節減対象農薬を5割以上減らしたもの。使った農薬の名前・用途・回数も表示される → 減農薬のしくみ |
「栽培期間中」なので、その前の土や、周りから飛んでくる農薬までは含みません。「農薬が残っていない」という意味ではないことは、「無農薬」と同じです。
有機JAS でも使える農薬がある
有機JAS の規格(JAS 1605:2024)の附属書B 表B.1 には、有機栽培でも使える農薬が決められています。たとえば、除虫菊乳剤・なたね油乳剤・マシン油乳剤・硫黄剤・炭酸水素ナトリウム(重曹)・銅水和剤・天敵等生物農薬(BT 剤など微生物そのものを使うもの)・スピノサド・ミルベメクチン・カスガマイシン・食酢などです。
このデータベースの成分のうち、FAMIC の登録有効成分一覧で「有機JAS で使える」とされているもの:
- スピノサド
- ミルベメクチン
- BT 剤(バチルス・チューリンゲンシス)
- 除虫菊の抽出物(ピレトリン)(条件つき)
- マシン油(鉱物油)
- なたね油
- 還元澱粉糖化物・でんぷん
- 銅剤(塩基性塩化銅・水酸化第二銅など)(条件つき)
- 硫黄
- 炭酸水素ナトリウム・炭酸水素カリウム
- カスガマイシン
表B.1 は製剤の種類ごとに条件があります(たとえば除虫菊乳剤は、効きを強めるピペロニルブトキサイドを含まないものに限る)。成分が同じでも、すべての製剤が使えるわけではありません。
農薬を使っていない野菜を選ぶには
店頭では「有機JAS マーク」と「農薬:栽培期間中不使用」が目印です。野菜の宅配サービスには、農薬を使わない・減らした野菜を中心に扱い、生産の基準を公開しているところがあります。
各社の栽培基準のくわしい比較は 食材宅配の比較・オイシックスの定期便と野菜の基準 にまとめています。
出典
- 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(平成19年3月23日改正)
- 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン Q&A」(平成20年6月)Q6・Q50・Q51
- 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインの改正について」(平成15年5月26日)
- 日本農林規格「有機農産物」JAS 1605:2024 附属書B 表B.1
- 農林水産省「有機農産物、有機加工食品、有機畜産物及び有機飼料のJASのQ&A」(令和7年10月現在)問17-2
- FAMIC 登録有効成分一覧(2026年9月30日現在)の「有機JAS」欄
最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。制度や数字は変わることがあります。