農薬データベース解説確認日 2026.10.01
残留農薬の基準値はどう決まる? ポジティブリスト制度と実際に食べている量
ADI から基準値を決めるしくみと、ふだんの食事からとっている量
結論
基準値は、決められた使い方で使ったときに残る濃度をもとに、日本人がその食品を食べる量から計算した摂取量が ADI・ARfD を超えないように、食品ごとに決められます。基準値のない農薬は、一律 0.01ppm を超えて残る食品の販売が禁止されています(ポジティブリスト制度、2006年5月29日から)。
ふだんの食事を実際に分析した調査では、とっている量はもっとも多い成分でも ADI の0.477%でした(消費者庁 令和6年度)。
だれが、何を決めるか
| 役割 | 担当 | 決めるもの |
|---|---|---|
| 安全な量を評価 | 食品安全委員会 | ADI(一生毎日とっても影響がない量)・ARfD(一度にとっても影響がない量) |
| 食品ごとの基準値 | 消費者庁(2024年4月から。それまでは厚生労働省) | 残留基準値。審議会の審議を経て決める |
| 使い方の基準 | 農林水産省 | 残留基準に合うように、作物・量・回数・収穫前日数を決めて登録(→ 作物で農薬は変わる?) |
| 検査 | 自治体・検疫所(結果は厚生労働省がまとめる) | 市場に出回る食品の検査 |
基準値の決め方
- 決められた使い方で使ったときに作物に残る濃度(作物残留試験)をもとに、基準値の案を作る。コーデックス(国際食品規格)の基準があれば参考にする。
- 日本人がそれぞれの食品を食べる量をかけて、1日にとる量を計算する。
- 長く食べ続けたとき:計算した量が ADI を超えないことを確かめる(厚生労働省の2015年の説明資料では「ADI の80%以下」。残りの20%は水や環境など食品以外からとる分を見込んだもの)。
- 一度に食べたとき:ARfD を超えないことを確かめる(2014年度から順に導入)。
- 国民平均だけでなく、幼い子ども・妊婦・高齢者でも確かめる。
例:クロラントラニリプロールの部会報告(2025年11月)では、推定摂取量は ADI の国民全体で1.5%、幼小児で2.6%でした。
ポジティブリスト制度と一律基準 0.01ppm
- 2006年5月29日から、基準値が決められていない農薬等が 0.01ppm を超えて残る食品は、販売・輸入などが禁止されました。国産も輸入品も同じです。
- 0.01ppm は、1つの農薬をとっても問題ない量の目安を1日 1.5μg とし、日本人の食品の摂取量から逆算して決めたものです(施行通知)。
- いま残留基準があるのは760品目(消費者庁)。銅・硫黄・重曹・マシン油など「人の健康を損なうおそれのないことが明らかな」77物質は対象外です。
実際に食べている量(マーケットバスケット調査)
消費者庁は、スーパーなどで買った食品をふだんの食事の量の割合で集め、調理して分析しています(令和6年度:8地域×14食品群、47農薬等)。定量できたのは19農薬等で、ADI に対する割合は次のとおりでした。
| 農薬 | ADI に対する割合 |
|---|---|
| プロシミドン | |
| フルフェノクスロン | |
| ピリダリル | |
| フロニカミド | |
| ファモキサドン | |
| チアクロプリド | |
| ミクロブタニル | |
| ブプロフェジン | |
| チアメトキサム | |
| ジフェノコナゾール | |
| スピロメシフェン | |
| ジノテフラン | |
| クロチアニジン | |
| スルホキサフロル | |
| イミダクロプリド | |
| ペンチオピラド | |
| アセタミプリド | |
| ニテンピラム | |
| グリホサート |
残りの28農薬等は、どの試料でも定量できませんでした。幅(下限〜上限)は、定量できなかった試料を0とみなすか、定量の下限値とみなすかの違い。調査で使った ADI は当時の値です(チアメトキサムは0.018。いまは0.012)。
基準値を超えた割合(令和6年度)
0.001%国産の農産物(約109万件の検査のうち14件)
0.022%輸入の農産物(約66万件の検査のうち148件)
0.34%すべての食品で、少しでも検出された割合
検査数は「農薬×検体」の延べ数。くわしくは 国の検査で検出の多い農薬 へ。
出典
- 消費者庁「食品中の残留農薬等」・よくある質問 Q1・Q5
- 平成17年11月29日 食安発第1129001号(ポジティブリスト制度の施行通知)
- 厚生労働省告示第497号(一律基準 0.01ppm)
- 食品安全委員会「ポジティブリスト制度における対象外物質の評価について」(令和5年4月1日更新)
- 厚生労働省 説明会資料(2015年)
- 消費者庁『令和6年度 食品中に残留する農薬等の一日摂取量調査結果』
- 厚生労働省『令和6年度 食品中の残留農薬等検査結果』
最終確認日 2026.10.01(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。制度や数字は変わることがあります。
このページは、法令・公的機関の資料・査読論文に書かれている事実を並べたもので、特定の農薬や栽培方法の良し悪しを判定するものではありません。