基準値を超えた割合(厚労省 令和4年度)
- 国産の農産物:0.001%(約100万件の検査)
- 輸入の農産物:0.018%(約66万件の検査)
- 農水省の国産農産物調査(令和4年度・7年度):基準値超過 0件
それでも知っておきたいこと
- 日本の基準値の中でも、EU では使えない農薬が検出されている(国産で検出率1位のジノテフランなど)。
- 同じ農薬でも、EU の方が「一度に食べてよい量」などを厳しく見積もっているものがある。
国産の農産物で、検出の多い農薬
厚労省『令和4年度 食品中の残留農薬等検査結果』表3
検出割合は、その農薬を調べた検査のうち、少しでも検出された割合です。基準値を超えたという意味ではありません。
野菜ごとの検出例
東京都『令和4・5年度 輸入農産物等の残留農薬検査結果』(輸入品)
国産の野菜について、野菜ごとにどの農薬が検出されたかの内訳は、今回照合した公的資料では公表されていませんでした。ここでは、東京都が公表している輸入野菜の検査結果を載せています。
ほうれんそう
冷凍(中国・台湾)いずれも基準値以内
えだまめ
冷凍(台湾・タイ)いずれも基準値以内
オクラ
生鮮(フィリピン)・冷凍(ベトナム)いずれも基準値以内
ピーマン・パプリカ
生鮮(韓国・ニュージーランド)いずれも基準値以内
ブロッコリー
冷凍(エクアドル)いずれも基準値以内
ねぎ・リーキ
生鮮(オランダほか)いずれも基準値以内
たまねぎ
生鮮(中国)基準値超過:チアメトキサム 0.04ppm(基準値0.02ppm)が基準値を超えていた(令和5年度)。
にんじん
生鮮いずれも基準値以内
いちご
冷凍(中国ほか)基準値超過:テブコナゾール 0.07ppm(基準値0.01ppm)が基準値を超えていた(令和5年度)。
赤い印は、EU で承認されていない農薬です。
農薬ごとの評価
日本(食品安全委員会)と EU の評価の違い
ジノテフラン
殺虫剤(ネオニコチノイド系)EUで非承認
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.22 mg
- 日本の ARfD
- 体重1kgあたり 1.2 mg
- EU
- EU では承認されていない。
- 国産農産物で、検出される割合がもっとも高い農薬(厚労省 令和4年度:検査910件中120件、13.2%)。
アセタミプリド
殺虫剤(ネオニコチノイド系)EUで承認
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.071 mg
- 日本の ARfD
- 体重1kgあたり 0.1 mg
- EU
- EU では承認されている(2033年まで)が、評価は大きく厳しくなった。
- EFSA は2013年、アセタミプリドとイミダクロプリドに発達神経毒性(子どもの脳や神経の発達への影響)の可能性があるとする科学的意見を出した。
- EFSA は2024年、ADI と ARfD をどちらも体重1kgあたり0.005mgに引き下げた(日本の ADI の約14分の1、ARfD の20分の1)。EU はこれを受けて、残留基準値を引き下げた(EU 規則 2025/158)。
クロチアニジン
殺虫剤(ネオニコチノイド系)EUで非承認
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.097 mg
- 日本の ARfD
- 体重1kgあたり 0.6 mg
- EU
- EU では2019年に承認が失効した。
- 一度に食べても健康への影響がないとされる量(ARfD)は、EU が体重1kgあたり0.1mg、日本は0.6mgで、日本の方が6倍大きい。
イミダクロプリド
殺虫剤(ネオニコチノイド系)EUで非承認
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU では2020年に承認が失効した(2018年から屋外での使用を禁止)。(公開情報による。未照合)
- EFSA は2013年、発達神経毒性の可能性があるとする科学的意見を出した。
チアメトキサム
殺虫剤(ネオニコチノイド系)EUで非承認
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU では2019年に承認が失効した(2018年から屋外での使用を禁止)。(公開情報による。未照合)
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.026 mg
- EU
- EU では承認されていない。
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.073 mg
- EU
- EU で承認されている(2026年11月まで)。
クロラントラニリプロール
殺虫剤(ジアミド系)EUで承認
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 1.5 mg
- EU
- EU で承認されている(2027年5月まで)。
- 食品安全委員会は2026年、急性参照用量(ARfD)は設定する必要がないと判断した。
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.001 mg
- EU
- EU では2020年1月に承認が失効した。
- EU では、遺伝毒性と発達神経毒性の懸念を否定できないとして、承認が更新されなかった。
- 輸入バナナから低い濃度で検出されている(東京都 令和4年度:14検体、0.01〜0.06ppm、基準値2ppm)。
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.044 mg
- EU
- EU で承認されている(2028年3月まで)。
アゾキシストロビン
殺菌剤(ストロビルリン系)EUで承認
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.18 mg
- EU
- EU で承認されている(2027年5月まで)。
ピラクロストロビン
殺菌剤(ストロビルリン系)EUで承認
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU で承認されている。(公開情報による。未照合)
クレソキシムメチル
殺菌剤(ストロビルリン系)EUで承認
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU で承認されている。(公開情報による。未照合)
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.035 mg
- 日本の ARfD
- 体重1kgあたり 0.3(妊婦などは0.035) mg
- EU
- EU では承認されていない。(公開情報による。未照合)
- 食品安全委員会は、妊婦または妊娠している可能性のある女性について、一般の人より低い急性参照用量(体重1kgあたり0.035mg)を別に定めている。
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 0.029 mg
- 日本の ARfD
- 体重1kgあたり 0.3 mg
- EU
- EU で承認されている。(公開情報による。未照合)
- 輸入冷凍いちご(中国)から基準値を超えて検出された例がある(東京都 令和5年度:0.07ppm、基準値0.01ppm)。
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU で承認されている(2028年1月まで)。
カルベンダジム・チオファネートメチル
殺菌剤(ベンゾイミダゾール系)EUで非承認
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU ではカルベンダジムが2014年に、チオファネートメチルが2020年に承認を失っている(チオファネートメチルは未照合)。
- チオファネートメチルは、体内や環境中でカルベンダジムに変わるため、残留基準はまとめて決められている。
- 日本の ADI
- —
- EU
- EU では2017年に承認が更新されなかった。(公開情報による。未照合)
- 日本の ADI
- 体重1kgあたり1日 1 mg
- EU
- EU で承認されている(2023年に10年間の更新)。(公開情報による。未照合)
- IARC は2015年、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(2A)に分類した。一方、EFSA や食品安全委員会は、発がん性の懸念はないと評価している。
- 輸入農産物で検出される割合が高い(厚労省 令和4年度:検査122件中18件、14.8%)。小麦の残留基準値は、日本30ppm、EU 10ppm。
ADI:一生、毎日食べ続けても健康への影響がないとされる量。ARfD:一度に(24時間以内に)食べても健康への影響がないとされる量。
家庭でできること
- 流水でよく洗う。外葉を1〜2枚むく、皮をむくと、表面に残る農薬は減らせる。
- 国産か輸入か、産地を見て選ぶ。輸入品は収穫後に使われる防かび剤などが検出されやすい。
- 有機JAS の野菜は、原則として化学的に合成された農薬を使わずに作られている(使える農薬は限られたものだけ)。
検出された量は、日本の基準値の範囲内です。EU で承認されていないことは、その農薬を含む食品がすぐに健康を害することを意味しません(承認されない理由には、ミツバチなど環境への影響も含まれます)。ここでは、判断材料として各国の評価の違いを並べています。
出典
- 厚生労働省『令和4年度 食品中の残留農薬等検査結果』
- 農林水産省『国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について』(令和4年度・7年度)
- 東京都『令和4年度・5年度 輸入農産物等の残留農薬検査結果』
- 食品安全委員会 農薬評価書(ADI・ARfD)
- EU Pesticides Database、EFSA(アセタミプリド 2013・2024)、EU 規則 2025/158
最終確認日 2026.09.28(Gemini Notebook に一次資料を集めて照合)。「未照合」と書いたものは、公開情報をもとに記載しています。