ナンプラー(魚醤)とは? 作り方、しょっつる・いしる・いかなご醤油とのちがい、塩分とヒスタミンを国際規格と食品成分表で確かめる

PR この記事には、楽天市場のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。
ナンプラーは、タイ料理のガパオやトムヤムクン、ベトナムのフォーなどに欠かせない調味料です。日本にも、秋田の「しょっつる」、能登の「いしる」、香川の「いかなご醤油」という魚醤があります。
一方で、「においが強い」「塩分が多い」「ヒスタミンが多いと聞いた」という声もよく見かけます。
この記事では、
- ナンプラー(魚醤)は何から、どうやって作るのか
- ナンプラー・ヌクマム・しょっつる・いしる・いかなご醤油は何がちがうのか
- 国際規格(コーデックス)とタイの基準では、何が決められているのか
- 食塩はしょうゆと比べてどのくらい多いのか
- うま味のもと(グルタミン酸)はどのくらい入っているのか
- ヒスタミンは、どんな基準があり、実際の検査値や食中毒の事例はどうなっているのか
を、国際規格・国の資料・食品成分表・論文で確かめます。
結論
- 魚醤は、魚と塩を混ぜて発酵・熟成させ、出てきた液をこしたものです。魚の内臓や筋肉にもともとある酵素が、たんぱく質をアミノ酸まで分解します(自己消化)。国際規格(コーデックス)は「発酵には通常6か月以上かかる」としています
- ナンプラー(タイ)とヌクマム(ベトナム)は主にカタクチイワシ類、しょっつる(秋田)はハタハタ、いしる(能登)はイカの内臓やイワシ、いかなご醤油(香川)はイカナゴで作ります
- コーデックスの魚醤規格は、全窒素1Lあたり10g以上、食塩200g以上、ヒスタミン100gあたり40mg(=400mg/kg)以下などを決めています。タイの保健省告示は、「本物の魚醤」の全窒素を9g/L以上とし、グルタミン酸の割合に上限を設けています
- 食品成分表では、魚醤4種の食塩相当量は100g当たり21.2〜24.3gで、こいくちしょうゆ(14.5g)の約1.5倍です
- ヒスタミンは、売られている魚醤からも検出されます。東京都の調査(55検体)では最高380mg/kgで、国際規格の400mg/kgを超えたものはありませんでした。日本では食品のヒスタミンに基準値はなく、ヒスタミン食中毒の主な原因はマグロ・カジキ・サバなどの魚そのもので、魚醤が原因と特定された食中毒の事例は、今回調べた資料には見当たりませんでした
この記事で紹介しているもの
記事の中で、論点に合わせて次のものを紹介しています(楽天市場のリンクです)。
| こんな人に | 紹介しているもの | 選んだ理由(事実) | 場所 |
|---|---|---|---|
| ナンプラーの原材料を見比べたい | メガシェフ ナンプラー 200ml | タイ製。原材料名はいわし・食塩・砂糖・果糖。瓶のタイ語の表示に、かたくちいわし70%・塩27%・砂糖2%と割合がある | ラベルで確かめられること |
| 魚と塩だけのナンプラーがいい | ユウキ ナンプラー 600g | 原材料名はカタクチイワシ・食塩の2つ(販売ページの表示) | ラベルで確かめられること |
| 日本の魚醤を使ってみたい | 諸井醸造 秋田しょっつる ハタハタ100%、カネイシ いしり | しょっつるはハタハタ(秋田県産)・食塩、いしりはいか(イカワタ)・食塩 | 日本の魚醤を使ってみるなら |
ナンプラー(魚醤)とは
魚醤(ぎょしょう)は、魚介を塩に漬けて発酵・熟成させ、出てきた液を調味料にしたものです。ナンプラー(nam pla)は、タイの魚醤の呼び名です。
国際的な食品規格をつくるコーデックス委員会(FAO と WHO が設けた機関)の「魚醤の規格(CXS 302-2011)」は、魚醤を次のように定義しています。
- 魚と塩を混ぜて発酵させた混合物から得られる、塩味と魚の風味のある、透き通った液体
- 発酵を助けるほかの材料を加えてもよい
- 酸で分解して作る魚醤は、この規格に入らない
食品成分表でも、ナンプラー・しょっつる・いしる(いしり)・いかなごしょうゆは「魚醤油」としてまとめられています。
作り方
魚と塩を混ぜて、長い時間おく
作り方は、どの国の魚醤もおおまかに同じです。
- 魚(丸ごと、または内臓)に大量の塩をまぶして、かめやタンク、樽に詰める
- ふたをして、数か月から数年おく。魚の形がくずれ、全体が液体になっていく
- 液をこして、びんに詰める。残った魚に塩水を足して、2番目の液をとることもある
コーデックスの「魚類及び水産製品の実施規範」は、魚と塩の重さの比は3:1、5:2、3:2が一般的で、腐敗や病原菌の増殖を防ぐため、塩の濃さは重さで20%を下回らないようにとしています。熱帯での自然発酵では、良い品質になるまで6〜18か月かかるのが一般的だとしています。
| 魚醤 | 魚と塩の割合(資料にある例) | 熟成期間(資料にある例) |
|---|---|---|
| ナンプラー(タイ) | 2:1 または 3:1(伝統的な製法) | 12〜18か月 |
| ヌクマム(ベトナム) | 3:1(家庭での作り方の例) | 家庭では2か月ほど。工場では12か月以上、18〜24か月のものも |
| しょっつる(秋田) | − | 1年以上 |
| いしる(能登) | − | 数年ほど |
| いかなご醤油(香川) | 塩分25%は必要という作り手の話 | 小さいイカナゴで半年〜1年、大きいもので3年という例 |
(ナンプラー・ヌクマムは古代の魚醤を研究した書籍『The Story of Garum』と Chan ら(2023)の総説、しょっつる・いしるは農林水産省「うちの郷土料理」、いかなご醤油は香川県の食文化の聞き取り調査(2018年)による)
たんぱく質を分解するのは、魚自身の酵素
魚醤のうま味は、魚のたんぱく質が分解されてできるアミノ酸やペプチドによるものです。
- 分解の主役は、魚の内臓や筋肉にもともとある、たんぱく質を分解する酵素(プロテアーゼ)です。魚が自分の酵素で自分を分解するので「自己消化」と呼ばれます
- 塩に強い細菌(好塩性・耐塩性の細菌)もかかわり、香りのもとになる成分や有機酸をつくると報告されています
- 東京都立衛生研究所の報告(2002年)は、魚醤油の製造には、しょうゆやみそのような麹菌・酵母・乳酸菌などの発酵用の微生物は使われず、塩分も高いため、たんぱく質の分解は主に自己消化によると考えられている、と書いています。ただし、しょっつるには麹を加えるものもあり、食品安全委員会の資料も「麹等を使用する製法も知られている」としています
塩の役割
20%前後の高い塩分は、魚が腐るのを防ぐためのものです。
- 塩が水分を引きつけ、腐敗菌や病原菌が増えにくくなります
- 一方で、高い塩分は魚の酵素のはたらきも弱めるため、分解がゆっくり進み、長い熟成期間が必要になります
- 塩を減らして早く作る研究もありますが、雑菌が増えないよう、温度管理などで代わりの対策が必要になります

ナンプラー・ヌクマム・しょっつる・いしる・いかなご醤油のちがい
| 名前 | 国・地域 | 主な原料 | ひとこと | 食塩相当量(100g当たり) |
|---|---|---|---|---|
| ナンプラー | タイ | カタクチイワシ類など | タイの保健省は、魚醤を「本物の魚醤」「ほかの動物から作った魚醤」「混合魚醤」に分けている | 22.9g |
| ヌクマム | ベトナム | カタクチイワシ類など | 産地として、フーコック島やファンティエットが知られる | (成分表になし) |
| しょっつる(塩魚汁) | 秋田県 | ハタハタ | 魚を塩漬けにし、1年以上、魚が溶けるまで寝かせる。しょっつる鍋に使う | 24.3g |
| いしる(いしり) | 石川県 能登地方 | スルメイカの内臓。地域によってマイワシ・ウルメイワシ・サバ・アジ | 「魚汁(うおしる)」がなまった名前とされる。少なくとも1700年代には作られていた | 21.9g |
| いかなご醤油 | 香川県 | イカナゴ | 昭和30年代以降ほとんど作られなくなり、1990年代以降に復活の動きがある | 21.2g |
(食塩相当量は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」)
- 農林水産省の「うちの郷土料理」は、いしるを、秋田県の「しょっつる」、香川県の「いかなご醤油」と並ぶ「日本三大魚醤」の一つとして紹介しています
- しょっつるの原料のハタハタは、秋田沖が日本でいちばん獲れる漁場です。資源を守るため、1992年9月から1995年9月まで、ハタハタ漁が全面的に禁止され、しょっつるの作り手も製造を止めざるをえなかったと伝えられています
- いしるは、流通網が行き届かなかった時代、山村で魚のかわりにうま味を加えるために、米と交換して手に入れたといいます(農林水産省「うちの郷土料理」)
日本の魚醤を使ってみるなら
原材料が魚と食塩だけの、日本の魚醤を2つ選びました。どちらも、原材料名に添加物の表示はありません。
国際規格とタイの基準
コーデックスの魚醤規格(CXS 302-2011)
コーデックスの規格は、各国が食品の基準を決めるときの国際的な目安です。魚醤では、次のような数値を決めています。
| 項目 | 基準 | 何を表すか |
|---|---|---|
| 全窒素 | 1Lあたり10g以上(国によってはもっと低い値にしてもよい) | たんぱく質やアミノ酸の量の目安。多いほど、魚から溶け出した成分が多い |
| アミノ酸態窒素 | 全窒素の40%以上 | たんぱく質がアミノ酸まで分解された割合 |
| 食塩 | 1Lあたり200g以上(塩化ナトリウムとして) | 腐敗を防ぐ |
| pH | 伝統的な製品は5.0〜6.5(発酵を助ける材料を使うときは4.5以上) | 酸っぱさの度合い |
| ヒスタミン | 100gあたり40mg以下(=400mg/kg) | 衛生の基準。どの検体もこれを超えてはいけない |
| 発酵期間 | 通常6か月以上 | 規格の「作り方の定義」にある記述 |
- 規格は、国が求めれば、全窒素(g/L)をラベルに書かせてもよい、品質の目安として全窒素の量を表す言葉を使わせてもよい、としています
- 使ってよい添加物も決めています。うま味調味料(グルタミン酸ナトリウムなど)、甘味料(アセスルファムK・スクラロース・アスパルテーム)、保存料(安息香酸・ソルビン酸、1kgあたり1,000mgまで)、カラメル色素(カラメルIII、1kgあたり50,000mgまで)などです。添加物を使うかどうかは商品によってちがうので、裏面の原材料名で確かめます(カラメル色素の記事)
タイの基準(保健省告示 第203号、2000年)
タイは、保健省の告示で魚醤の品質を決めています(英語の非公式訳による)。
| 項目 | 本物の魚醤(genuine fish sauce) | 混合魚醤(mixed fish sauce) |
|---|---|---|
| 中身 | 魚や魚の一部を発酵・分解して得たもの | 本物の魚醤などに、ほかの材料を加えたり、うすめたり、味付けしたもの |
| 全窒素 | 1Lあたり9g以上 | 1Lあたり4g以上 |
| アミノ酸態窒素 | 全窒素の40%以上60%以下 | (決めていない) |
| グルタミン酸 ÷ 全窒素 | 0.4以上0.6以下 | 0.4以上1.3以下 |
| 食塩 | 1Lあたり200g以上(塩化カリウムを使う場合は合計で) | 同じ |
| 色 | 黒糖(ブラウンシュガー)かカラメル色素以外の着色はしない | 同じ |
- 名前の書き方も決まっています。本物の魚醤は「genuine fish sauce」、混合魚醤は「mixed fish sauce」と表示します
- 塩化カリウムを使った魚醤には、「塩化カリウムを使用、腎臓病の人には適さない」と赤い太字で書くことが求められます。人工甘味料を使った場合も、その名前を赤い太字で書きます
- 2010年の改正(第2号)で、ヨウ素を加える魚醤は1Lあたりヨウ素2〜3mgとすることが加わりました。ヨウ素をとるのを控える必要がある人向けの魚醤は、ラベルに書けば対象外です。輸出用の魚醤には、この告示は適用されません(ヨウ素と甲状腺の関係は甲状腺がんの記事)
「グルタミン酸 ÷ 全窒素」に上限があるのは、本物の魚醤では、グルタミン酸の割合が魚から自然にできる範囲に収まるように決めている、と読めます。混合魚醤では上限が1.3まで広がっています。
日本には、魚醤の成分規格(全窒素など)にあたる国の基準は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。魚醤のラベルの決まりは、原材料じてんの「魚醤」のページにまとめています。
ラベルで確かめられること
日本で売られているナンプラーのラベルからは、原材料名と栄養成分表示(食塩相当量)が分かります。全窒素やヒスタミンの量は、ふつうは書かれていません。
このサイトで原材料を確かめたナンプラーと、比べやすい商品です。
| メガシェフ ナンプラー | ユウキ ナンプラー | |
|---|---|---|
| 製造国 | タイ | タイ |
| 原材料名 | いわし、食塩、砂糖、果糖 | カタクチイワシ、食塩 |
| 割合の表示 | 瓶のタイ語の表示に、かたくちいわし70%・塩27%・砂糖2% | なし |
| 食塩相当量 | 大さじ1杯(15ml)当たり3.95g(推定値) | 100g当たり21.6g |
| 添加物の表示 | なし | なし |
(メガシェフは輸入者の商品ページとカルディコーヒーファームの掲載画像の日本語表示、ユウキは楽天24の販売ページの表示。2026年9月30日〜10月1日確認)
食塩相当量は、しょうゆの約1.5倍
食品成分表で比べると、魚醤4種の食塩相当量は100g当たり21.2〜24.3gで、こいくちしょうゆ(14.5g)の約1.5倍、うすくちしょうゆ(16.0g)よりも多い値です。
- メガシェフ ナンプラーのラベルでは、大さじ1杯(15ml)で食塩相当量3.95g(推定値)です
- 日本の「食事摂取基準(2025年版)」の目標量は、大人で男性7.5g未満、女性6.5g未満(1日あたり)です。WHO は、大人の食塩を1日5g未満にするよう勧めています。くわしくは食塩摂取量の記事で書いています
- 成分表の値は重さ(100g)当たりです。液体の調味料は、同じ大さじ1杯でも重さがちがうことがあります
使う量を減らす工夫
塩分が多いからこそ、少しの量で味が決まるのも魚醤の特徴です。研究では、次のような結果が出ています。
- 食塩の一部を魚醤に置きかえる:米国の研究(Huynh ら 2016、試食した人は各料理70〜73人)では、鶏がらスープで25%、トマトソースで16%、ココナッツカレーで10%、食塩(塩化ナトリウム)を減らしても、魚醤で補えば、おいしさと味の強さは大きく変わりませんでした
- かけ方を変える:タイの大学の食堂での研究(Kanchanachitra ら 2020)では、魚醤を瓶ではなく小皿とスプーンで出すと、売れた麺1杯あたりの魚醤の量が平均0.25g減り、穴のあいた専用スプーン(説明つき)では0.58g減りました。ただし、魚醤をかける人の割合は変わりませんでした。この研究は、タイでは食塩のとりすぎが多く、魚醤が主な塩分のとり方の一つだと書いています
うま味のもと:グルタミン酸の量
食品成分表の「アミノ酸成分表」で、うま味成分のグルタミン酸を比べると、ナンプラーは100g当たり1,300mgで、うすくちしょうゆと同じくらい、こいくちしょうゆ(1,600mg)より少し少ない値でした。いかなごしょうゆ(1,900mg)といしる(1,500mg)は、こいくちしょうゆと同じくらいです。
ただし、読むときの注意があります。
- 成分表のアミノ酸は、たんぱく質を加水分解して測った量です。うま味を感じさせるのは、たんぱく質にくっついていない「遊離」のグルタミン酸なので、成分表の値がそのまま「うま味の強さ」になるわけではありません
- イタリアの魚醤(コラトゥーラ・ディ・アリーチ)を調べた研究(Corona ら 2022)は、魚醤にはアミノ酸が100mlあたり約10g含まれ、その約70%が遊離のものだという報告を紹介しています。この研究のコラトゥーラの遊離グルタミン酸は、100mlあたり0.56〜0.73gでした
- 2か月熟成させた鎌倉のしらすの魚醤を調べた研究では、グルタミン酸は100gあたり290mgで、魚醤はペプチドも多く、グルタミン酸だけがうま味のもとではないとしています
コーデックスの規格が「アミノ酸態窒素は全窒素の40%以上」とし、タイの基準が「グルタミン酸の割合」を決めているのも、魚醤の味のもとがアミノ酸だからです。
「調味料(アミノ酸等)」と書かれるうま味調味料と、魚醤のような食品のうま味のちがいは、うま味調味料の記事で整理しています。
ヒスタミン:規格・検査値・事例
ヒスタミンとは
ヒスタミンは、食中毒の原因になる化学物質です(厚生労働省、食品安全委員会)。
- 魚に多いアミノ酸の「ヒスチジン」に、細菌(ヒスタミン生成菌)の酵素がはたらいてできます。マグロ・カジキ・カツオ・サバ・イワシ・サンマ・ブリ・アジなどの赤身の魚は、もともとのヒスチジンが多いので、常温に置くなど管理が悪いとヒスタミンがたまります
- ヒスタミンは熱に強く、一度できると、加熱しても分解されません
- ヒスタミンが多い食品を食べると、食後数分〜30分ほどで、顔(特に口のまわりや耳たぶ)が赤くなる、頭痛、じんましん、発熱などが起こります。アレルギーに似ていますが、アレルギーではなく食中毒です。たいていは6〜10時間で回復します
- 食品安全委員会は、日本(1998〜2019年の届出)・EU・米国の報告で、死亡例は報告されていないとしています
魚醤の原料になるカタクチイワシやイワシも、ヒスタミンができやすい魚に入ります。コーデックスの実施規範の改正案(2018年)は、魚醤の原料のうちサバ・イワシ・カタクチイワシなどにはヒスタミンができる危険があるとして、漁船の上からの原料の管理を求めています。食品安全委員会の資料も、発酵調味料の製造の途中で「ヒスタミンが蓄積することがある」と書いています。
魚醤のヒスタミンの基準
| 国・機関 | 魚醤のヒスタミンの基準 |
|---|---|
| コーデックス | 100gあたり40mg(400mg/kg)を超えてはいけない |
| EU | 400mg/kg を超えてはいけない(1バッチにつき1検体を検査) |
| カナダ | アンチョビ・魚醤・発酵させた魚のペーストで 200mg/kg |
| タイ | 200mg/kg(米国海洋大気庁の各国の基準の調査による) |
| 日本 | 食品中のヒスタミンの基準値はない |
(食品安全委員会「ファクトシート ヒスタミン」2021年、DeBeer ら「Histamine Limits by Country」2021年、コーデックス CXS 302-2011)
- 魚そのもの(冷凍魚や缶詰など)の基準は、コーデックスでもEUでも200mg/kgです。魚醤や塩水で熟成させる製品は、その2倍の値になっています
- コーデックスは2010年に、タイの魚醤のヒスタミンのリスク評価を行い、200ppm(mg/kg)の場合と400ppm の場合でリスクは同程度という結果でした(食品安全委員会のファクトシートによる)
- 日本では基準値はありませんが、都道府県などが、食品衛生法にもとづいて流通する食品や飲食店の監視指導をしています
売られている魚醤の検査値
| 調査 | 検体 | 結果 |
|---|---|---|
| 東京都立衛生研究所(2002年) | 都内で買った魚醤油55検体(輸入品41・国産品14) | 輸入品は75%が100mg/kg未満で、最高310mg/kg。国産品は不検出が6検体、最高380mg/kg。400mg/kgを超えたものはなかった |
| 欧州食品安全機関(2011年) | 欧州の食品 | 魚醤の平均196〜197mg/kg |
| ベトナム(Tran ら 2020) | ホーチミン市で買った魚醤21検体(工場で作る魚醤と伝統的な魚醤) | 工場の魚醤 8.0〜80.9mg/L、伝統的な魚醤 385.6〜1436.4mg/L。著者らは、毎日の食事で使う量が多くないため、魚醤によるヒスタミン中毒はとてもまれだとしている |
| ベトナム(Pham ら 2025) | 伝統的な魚醤15検体ほか | すべての検体からヒスタミンが出て、高いものもあったが、スーパーで買った伝統的な魚醤はEUの上限より低かった |
| 米国 北カリフォルニア(Li ら 2018) | スーパーで買った魚醤4検体 | 4検体中3検体が、タイの200ppm か EU の400ppm を超えていた。著者らは、魚醤からとる量はほかの魚に比べてごく少ないとも書いている |
- 東京都の調査では、国産の魚醤油は、ハタハタなどを使ったしょっつるやブレンド品はアミン類が少なく、イワシ・サバ・イカの内臓を使ったいしるなどは多い、と二つに分かれていました
- 同じ調査では、血圧を上げることがあるチラミンも見つかり(最高1,700µg/g)、著者らは、モノアミン酸化酵素(MAO)のはたらきを抑える薬を飲んでいる人は注意が必要だとしています
食中毒の事例
日本では、ヒスタミンによる食中毒が毎年報告されています。2025年は13件・431人でした。
- 国立医薬品食品衛生研究所の分析(1998〜2008年の89件)では、原因の魚はマグロ(33%)、カジキ(18%)、サバ(13%)の順に多く、調理方法は焼き物が約6割でした
- 2015年には、流通段階で取り扱いが不適切だった魚のすり身(ヒスタミン3,600〜3,900mg/kg)による給食の食中毒で87人、2018年には保育所の給食で、マグロの料理(2,300〜3,600mg/kg)により92人が発症しています
- 魚醤が原因と特定されたヒスタミン食中毒の事例は、今回調べた国内外の資料には見当たりませんでした。 EU の食品の警告システム(RASFF)には、1981〜2020年に魚醤のヒスタミンに関する通報が10件ありますが、これは基準を超えた製品などの通報で、食中毒の件数ではありません(同じ期間のマグロ類は444件)
量で考える
ヒスタミンは、「入っているかどうか」より「一度にどれだけとるか」で考えます。
- 欧州食品安全機関と FAO/WHO の専門家会議は、健康な大人で1食あたり50mgまでは影響が見られない量(無毒性量)としています。FAO/WHO はこれと魚の1食の最大量250gから、魚の最大許容濃度を200mg/kgと計算しました
- 東京都の調査の著者らは、最も高かった380µg/g(=380mg/kg)の魚醤油を100g食べてもヒスタミンは38mgで、調味料として少しずつ使う限り、中毒は起こらないと判断しています
- ウラヨミの試算:コーデックスの上限ちょうど(400mg/kg)の魚醤を15g使うと、ヒスタミンは6mgです
- ただし、ヒスタミンへの強さには個人差があります。体調や薬、お酒・たばこで分解する力が下がることがあり、ヒスタミンをうまく分解できない「不耐症」の人もいます(食品安全委員会)
「ヒスタミンが多いから危ない」とも「まったく気にしなくてよい」とも言い切れません。分かっているのは、国際規格とEUには魚醤の上限(400mg/kg)があり、日本の店で売られていた魚醤の調査ではその範囲に収まっていたこと、そして食中毒のほとんどは鮮度の落ちた魚そのものが原因だということです。
まとめ
| 論点 | 分かったこと | 出典 |
|---|---|---|
| 作り方 | 魚と塩(重さで3:1など、塩20%以上)を混ぜ、6か月以上、多くは1年以上熟成。分解の主役は魚自身の酵素 | コーデックス規格・実施規範、東京都立衛生研究所 |
| 種類 | ナンプラー(タイ)・ヌクマム(ベトナム)はカタクチイワシ類、しょっつるはハタハタ、いしるはイカの内臓やイワシ、いかなご醤油はイカナゴ | 農林水産省ほか |
| 規格 | コーデックス:全窒素10g/L以上・食塩200g/L以上・ヒスタミン400mg/kg以下。タイ:本物の魚醤は全窒素9g/L以上、グルタミン酸の割合に上限 | CXS 302-2011、タイ保健省告示 |
| 食塩 | 100g当たり21.2〜24.3g。こいくちしょうゆの約1.5倍 | 食品成分表 |
| うま味 | グルタミン酸は100g当たり870〜1,900mg(成分表の値)。しょうゆと同じくらい | 食品成分表 |
| ヒスタミン | 日本の店の55検体は最高380mg/kgで、400mg/kg以下。食中毒の主な原因は魚そのもので、魚醤が原因と特定された事例は見当たらない | 東京都立衛生研究所、厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所 |
魚醤を選ぶときに、ラベルで確かめられるのは原材料名と食塩相当量です。
- 原材料が魚と塩だけのもの、砂糖などで味を整えたものがあります(メガシェフとユウキの比較)
- 日本の魚醤も、原材料が魚と食塩だけのものがあります(しょっつる・いしり)
- 塩分が多いので、しょうゆと同じ感覚で使わず、少しずつ加えるのが基本です
ご注意 ここで紹介した商品は、健康によいことを示すものではありません。価格・送料は変わることがあります(送料は地域で変わります)。
参考にした資料
- Codex Alimentarius Commission「Standard for Fish Sauce(CODEX STAN 302-2011、2012・2013年改正)」https://www.fao.org/input/download/standards/11796/CXS_302e.pdf
- Codex Alimentarius Commission「Code of Practice for Fish and Fishery Products(CAC/RCP 52-2003)」第18節 魚醤の製造
- Codex Alimentarius Commission「ヒスタミン管理の指針に合わせた実施規範・規格の改正案(CL 2018/70-FH)」
- タイ保健省「Notification of the Ministry of Public Health (No. 203) B.E. 2543 (2000) Re: Fish Sauce」(英語非公式訳)https://food.fda.moph.go.th/food-law/f2-fish-sauce
- タイ保健省「Notification of the Ministry of Public Health Re: Fish Sauce (No.2)」(2010年、英語非公式訳)同上
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」本表・アミノ酸成分表編(2026年3月27日更新)https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
- 農林水産省「うちの郷土料理」しょっつる鍋(秋田県)https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/29_23_akita.html 、いしる鍋(石川県)https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ishirunabe_ishikawa.html
- 厚生労働省「ヒスタミンによる食中毒について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html
- 食品安全委員会「ファクトシート ヒスタミン」(2021年3月30日更新)https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/210330histamine.pdf
- 消費者庁「ヒスタミンによる食中毒」(食品安全ポータル)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/other/contents_001
- 登田美桜ほか「国内外におけるヒスタミン食中毒」国立医薬品食品衛生研究所報告 127号(2009年)https://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2009/031-038.pdf
- 中里光男ほか「魚醤油中の揮発性塩基窒素及び不揮発性アミン類の分析」東京都立衛生研究所 研究年報 53号(2002年)https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/archive/issue/kenkyunenpo/nenpou53/53-19.pdf
- DeBeer J ほか(2021)Histamine Limits by Country: A Survey and Review. Journal of Food Protection(米国海洋大気庁 機関リポジトリ)
- Chan SXY ほか(2023)A Comprehensive Review with Future Insights on the Processing and Safety of Fermented Fish and the Associated Changes. Foods. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36766088/
- Tran QH ほか(2020)Development of the High Sensitivity and Selectivity Method for the Determination of Histamine in Fish and Fish Sauce from Vietnam by UPLC-MS/MS. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32612656/
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- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 輸入者 株式会社オーバーシーズ「メガシェフ ナンプラー 200ml」https://overseas-inc.jp/food/detail/3511 、楽天市場の各販売ページ(2026年10月1日確認)