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ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.03

醤油の種類と選び方 本醸造・混合醸造・混合のちがい、丸大豆と脱脂加工大豆、特選・天然醸造・減塩の条件、3-MCPD は大丈夫?

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しょうゆは、日本の台所でいちばん身近な調味料の一つです。それなのに、ボトルの裏を見ると「こいくちしょうゆ(混合)」「アミノ酸液」「脱脂加工大豆」「超特選」など、意味がよく分からない言葉が並んでいます。

しょうゆについては、こんな話もよく聞きます。

  • 「本醸造」と「混合」は何がちがうのか。混合しょうゆには発がん性のある物質(3-MCPD)が入っている、という話は本当か
  • 「丸大豆」のほうが体にいいのか。脱脂加工大豆には、油を抜くときの溶剤が残っているのではないか
  • 「特選」「超特選」は、添加物を使わない高級品という意味なのか
  • 「天然醸造」は、温めずにじっくり造ったという意味なのか
  • 減塩しょうゆは、塩の代わりにカリウムが入っているので腎臓に悪いのではないか
  • しょうゆは鎌倉時代に、和歌山の湯浅で生まれたのか
  • しょうゆを使う量は減っているのか。いちばん多かったのは1984年か

この記事では、

  • しょうゆはどこから来て、どう広まり、戦争と戦後にどう変わったのか
  • 本醸造・混合醸造・混合の作り方のちがいと、アミノ酸液とは何か
  • 名称欄・特級・特選・超特選・天然醸造・減塩・丸大豆を、ラベルでどう読むか
  • 食塩・カリウム・3-MCPD・アレルギー・添加物・遺伝子組換えについて、分かっていること
  • 混合しょうゆが、どの県で多く造られているのか(国の統計をもとにウラヨミで集計)
  • 何を見て選べばいいのか

を、法令・国の統計・農林水産省の調査・論文で確かめます。しょうゆと同じ発酵調味料の魚醤は 魚醤の記事、塩分のとり方の全体は 食塩摂取量の記事 にまとめています。

結論

  • しょうゆの祖先は、中国から伝わった「醤(ひしお)」です。「鎌倉時代の僧・覚心が、湯浅でしょうゆの始まりを作った」という話は、日本遺産のストーリーでも「という」と書かれた伝承です。記録で確かめられるのは、湯浅から1535年にしょうゆを大坂へ出荷した、という商いの記録です
  • しょうゆの作り方は3つあり、2024年は本醸造が89.8%、アミノ酸液などを加える混合醸造・混合が10.2%です。アミノ酸液は、大豆などのたんぱく質を酸(塩酸)で分解した液です。どの作り方かは、名称欄の「こいくちしょうゆ(本醸造)」のかっこの中で分かります
  • 出荷量がいちばん多かったのは1973年(129.4万kL)です。「ピークは1984年」とする記事がありますが、数字は1973年のものです。2024年は68.1万kLで、1973年の52.6%まで減りました。一方で、だし入りしょうゆ・つゆ・たれのような「しょうゆ加工品」は増えています
  • 「特選」「超特選」は、うま味のもとになる窒素分が多いという条件で、添加物の条件ではありません。実際に、「超特選」と書かれていても、調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・甘味料を使った商品があります。丸大豆を使うことも条件ではありません
  • 「天然醸造」と書ける条件は、法令では3つ(本醸造であること、酵素で醸造を早めていないこと、指定添加物を使っていないこと)です。よく言われる「温めていない」は、法令ではみその条件で、しょうゆについての根拠は確かめられませんでした
  • 減塩しょうゆは、できたしょうゆから食塩を抜くなどして作ります。食品成分表では、カリウムもふつうのこいくち(390mg)より減塩(260mg)のほうが少ないです(100gあたり)。ただし、商品によって量はちがいます
  • 3-MCPD は、アミノ酸液を作るときにできることがある物質です。農林水産省の調査では、本醸造のしょうゆは89%が測れる下限より少なく、混合系の一部に高いものがありました。アミノ酸液を「アルカリ処理」する対策で、問題のあった業者のしょうゆの中央値は0.83mg/kg(2006年度)から0.024mg/kg(2021年度)に下がりました。日本には法律の基準値がなく、EU は0.02、国際規格(コーデックス)は0.4mg/kg です
  • 混合しょうゆの割合は、県によって大きくちがいます(ウラヨミで集計)。千葉は1.2%、兵庫は2.0%なのに、九州7県では55.5%、鹿児島は94.1%、富山は89.8%、山形は86.2%でした。甘いしょうゆが好まれる地域と重なります

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
丸中醸造醤油(こいくち、本醸造) 原材料が大豆・小麦・食塩だけの、丸大豆の本醸造しょうゆを選びたいとき 本醸造・丸大豆を選ぶなら
ヤマキ醸造 国産有機醤油 濃口タイプ 500ml 原料の産地(国産)や有機かどうかでも選びたいとき 本醸造・丸大豆を選ぶなら
丸又商店 オーガニック たまり醤油 900ml 小麦を使っていないしょうゆを探しているとき、たまりしょうゆを試したいとき 小麦・大豆のアレルギーがあるなら

しょうゆの歴史

しょうゆは、中国から伝わった「醤(ひしお)」が、日本で液体の調味料に育ったものです。 ここでは、伝承と記録を分けてたどります。

醤(ひしお)から「醤油」へ

「醤」は、肉・魚・穀物などを塩に漬けて発酵させた食品の総称です。キッコーマンによると、いちばん古い記録は中国・周代の『周礼』で、そのころは肉や魚の醤でした。

日本では、701年の大宝律令で、宮中の食事を担当する役所に「醤院(ひしおつかさ)」が置かれ、大豆を原料にした醤が造られていたとされています(しょうゆ情報センター)。醤には草の醤(今の漬物)、肉の醤(塩辛)、穀物の醤があり、穀物の醤がしょうゆの原形と考えられています。

「醤油」という言葉がいつ現れたかは、資料によってちがいます。

年 資料 書かれていること 出典
1559年 公家の日記『言継卿記』 病気見舞いに「しようゆう」 しょうゆ情報センター
1568年 『多聞院日記』 「醤油」の記述 キッコーマン
1597年 用語辞典『易林本節用集』 「醤油(シヤウユ)」。この頃に呼び名が定着しはじめたと推定 両方

どれを「最初」とするかは、資料によって分かれます。この記事では決めません。

湯浅の「最初の一滴」は伝承

和歌山県湯浅町は、2017年に「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」として日本遺産に認定されました。日本遺産のストーリーは、次のように紹介しています。

  • 鎌倉時代の禅僧・覚心(法燈国師)が1249年に宋に渡り、径山寺(きんざんじ)味噌の作り方を学んで1254年に帰国した
  • 味噌を造るときに桶にたまる汁をなめてみると、おいしかった。湯浅の人々が工夫を重ね、「現在の醤油が生まれたという」

文化庁の日本遺産の本文そのものが、「という」と伝聞で書いています。しょうゆ情報センターも「言われています」という書き方です。キッコーマンの歴史のページは覚心に触れず、室町時代の中ごろから「醤油」に近い言葉が増えるのは日明貿易の影響の可能性がある、と書いています。

伝承として語られること 記録で確かめられること
覚心が径山寺味噌の作り方を伝えた(1254年に帰国) 1535年、湯浅の赤桐三郎四郎が、しょうゆ100石余りを大坂へ出荷した
味噌桶にたまった汁が、しょうゆの始まりになった 1591年、赤桐家が豊臣秀吉から大船1艘を持つことを許され、しょうゆの輸送に使った
1804〜18年(文化年間)に、湯浅のしょうゆ屋は92軒あった「という」

出典:日本遺産ポータル STORY #047。

湯浅がしょうゆの古い産地であることは記録から言えます。ただ、「覚心がしょうゆを始めた」ことを示す鎌倉時代の記録は、今回の調査では見つかりませんでした。この記事では伝承として紹介します。

関西のうすくち、関東のこいくち

年 できごと 出典
1640年 関東でこいくちしょうゆの生産が始まる しょうゆ情報センター
1666年 兵庫・龍野の円尾孫右衛門が、うすくちしょうゆを開発 しょうゆ情報センター
江戸時代の初め 江戸のしょうゆは、上方から運ばれた「下り醤油」が中心 キッコーマン
1700年代〜 下総国の野田・銚子(今の千葉県)で、江戸の好みに合わせたしょうゆ造りが広がる キッコーマン
1840年 江戸での売れ行きの番付で、野田・銚子のつくり手が上位に キッコーマン

いまも、この地図はあまり変わっていません。2024年の出荷量は、千葉県が37.6%、兵庫県が15.7%で、上位の2県です。兵庫県は全国のうすくちしょうゆの39.4%、愛知県はたまりしょうゆの57.4%を出荷しています(しょうゆ情報センターの統計。原資料は農林水産省)。

戦争と「新式醤油」・脱脂加工大豆

いまのしょうゆの作り方のちがい(本醸造と混合)は、戦争中の原料不足から始まっています。

年 できごと 出典
1939年 しょうゆの価格の統制が始まる しょうゆ情報センター統計の注
1940年 しょうゆが統制物資になる(1942年に配給の規制) しょうゆ情報センター
戦争中 大豆の輸入が止まり、油を搾ったあとの大豆(脱脂加工大豆)を使う作り方が確立。それも足りなくなると、ヤシ油の搾りかす(コプラミール)まで使われた キッコーマン
1943年 野田醤油(今のキッコーマン)が「新式醤油製造法」を考え、特許を業界に無償で公開 キッコーマン
戦争の終わりごろ しょうゆの規格は「比重」(重さ)だけになる キッコーマン
1947年 生産量は33.6万kL まで落ちる(1938年は93.9万kL) しょうゆ情報センター統計
1950年 統制が終わる しょうゆ情報センター

新式醤油は、化学的な処理を一部に使いながら醸造するしょうゆです。原料が足りない中で、アミノ酸液でうま味を補い、量を増やす作り方が広がりました(キッコーマン)。東京農業大学の舘博さんは、『味の素沿革史』(1951年)をもとに、戦前の1933年ごろから味の素がアミノ酸液を販売していたようだ、と紹介しています。

キッコーマンは、戦後に GHQ が脱脂加工大豆をアミノ酸の業界中心に配ろうとしたとき、改良した作り方をもう一度無償で公開し、しょうゆ業界中心の配給に変わった、と書いています。これはキッコーマン自身の社史の記述で、公的な資料では確かめられませんでした。

JAS と「本醸造」の表示

年 できごと 出典
1963年 しょうゆの JAS(日本農林規格)ができる。このときの定義に、すでに「植物性たん白質の塩酸による加水分解液を混合したもの」が入っていた 日本醤油技術センター 松本秀樹さんの寄稿
1970年 キッコーマンが新式醤油をやめ、本醸造100%に。同じ年の JAS の改定で「本醸造」と表示できるようになる(施行は翌年) キッコーマン
1972年 JAS で、作り方が「本醸造」「新式醸造」「アミノ酸液混合」の3つに分けられる キッコーマン
2004年 JAS の全面改正。10月から「新式醸造」「アミノ酸液混合」が、いまの「混合醸造」「混合」に変わる しょうゆ情報センター統計の注、JAS
2015年 品質表示の決まりが、食品表示基準にまとまる e-Gov 法令検索
2021年 JAS の改正(いまの JAS 1703:2021) 農林水産省

JAS は、受けるかどうかを事業者が選べる任意の規格です。しょうゆ全体のうち JAS の格付けを受けた量の割合は、1977年の92.9%がいちばん高く、2024年は53.2%でした(しょうゆ情報センター統計)。

出荷量のピークは1973年

しょうゆの出荷量の推移(1930〜2024年)1年間の出荷量(万kL)。いちばん多かったのは1973年0204060801001201401930194019501960197019801990200020102020統制(1940〜50年)1930年:682,560kL1931年:700,752kL1932年:694,656kL1933年:670,464kL1934年:880,200kL1935年:891,000kL1936年:901,800kL1937年:931,680kL1938年:939,420kL1939年:890,640kL1940年:892,260kL1941年:890,460kL1942年:734,580kL1943年:572,940kL1944年:628,020kL1945年:425,880kL1946年:399,780kL1947年:336,240kL1948年:491,760kL1949年:550,440kL1950年:655,560kL1951年:794,880kL1952年:748,620kL1953年:881,460kL1954年:934,020kL1955年:973,800kL1956年:1,006,560kL1957年:996,123kL1958年:997,657kL1959年:1,034,982kL1960年:1,046,982kL1961年:1,028,519kL1962年:1,013,759kL1963年:1,044,600kL1964年:1,033,590kL1965年:1,029,077kL1966年:1,028,833kL1967年:1,086,036kL1968年:1,018,565kL1969年:1,060,516kL1970年:1,125,742kL1971年:1,134,193kL1972年:1,177,131kL1973年:1,294,155kL1974年:1,199,155kL1975年:1,127,243kL1976年:1,230,076kL1977年:1,155,997kL1978年:1,197,798kL1979年:1,250,721kL1980年:1,190,425kL1981年:1,188,799kL1982年:1,184,306kL1983年:1,194,699kL1984年:1,201,122kL1985年:1,186,442kL1986年:1,199,194kL1987年:1,195,286kL1988年:1,198,200kL1989年:1,197,279kL1990年:1,176,187kL1991年:1,175,254kL1992年:1,183,136kL1993年:1,166,653kL1994年:1,140,172kL1995年:1,122,018kL1996年:1,123,204kL1997年:1,095,402kL1998年:1,067,533kL1999年:1,045,408kL2000年:1,061,475kL2001年:1,027,353kL2002年:999,465kL2003年:981,100kL2004年:953,919kL2005年:938,763kL2006年:941,570kL2007年:927,112kL2008年:904,813kL2009年:867,935kL2010年:848,926kL2011年:825,854kL2012年:807,060kL2013年:793,363kL2014年:790,165kL2015年:780,411kL2016年:776,408kL2017年:768,766kL2018年:757,237kL2019年:744,263kL2020年:702,423kL2021年:703,704kL2022年:697,422kL2023年:683,340kL2024年:681,019kL1973年 129.4万kL(最大)1984年 120.1万kL(「1984年がピーク」は誤り)1947年 33.6万kL2024年 68.1万kL(1973年の52.6%)出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」2.(1)(原資料は農林水産省。一部は業界の推計)。1956年までは生産量、1957年以降は出荷量。輸出を含む。だし入りなどの「しょうゆ加工品」は含まない。1973年は第1次オイルショックと価格改定の年(統計表の注)。1979年(125.1万kL)も最大ではない。1人あたり(出荷量÷人口)は1973年 11.9L → 2024年 5.5L。
しょうゆの出荷量の推移(1930〜2024年)。出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」(原資料は農林水産省)

しょうゆの出荷量がいちばん多かったのは1973年の129万4,155kLです。2024年は68万1,019kL で、ピークの52.6%でした。

「しょうゆの出荷量は1984年がピーク」と書いた記事を見かけます。たとえば、日本醤油技術センターの理事の寄稿(キッコーマン国際食文化研究センター『FOOD CULTURE』No.31)は、「最も出荷量が多かった1984年」の数字として1,294,155kL を挙げています。しかし、統計表で1,294,155kL は1973年の値で、1984年は1,201,122kL です。「1979年がピーク」という話もありますが、1979年は125万721kL で、1973年より少なめです。

統計表の注には、1973年が第1次オイルショックの年で、1973〜74年にしょうゆの価格改定が3回あったことも書かれています。

1973年 2024年
出荷量 129.4万kL 68.1万kL
1人あたり(出荷量÷人口) 11.9L 5.5L
1世帯が1年に買う量(家計調査) 23.2L 3.9L
しょうゆの企業(工場)の数 ― 1,013(1955年は約6,000)

出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」(総務省 家計調査・人口推計、農林水産省の資料をもとにしたもの)。

家庭で買うしょうゆは、1973年の約6分の1になりました。その一方で、だししょうゆ・めんつゆ・たれなどの「しょうゆ加工品」は増えています。先ほどの寄稿によると、しょうゆ加工品の出荷量は2003年の22.1万kL から2019年の32.0万kL へ、4割強増えました。スーパーの売れ筋上位50品のうち2割以上がしょうゆ加工品、とも書かれています。2024年の統計表では、しょうゆ加工品・めん類用のつゆ・たれ類の出荷量が合わせて約30万kL で、しょうゆの4割を超える量です(区分が同じ過去の数字との比較は、確かめられませんでした)。

海外へ

日本のしょうゆの輸出は江戸時代に始まり、長崎の出島からオランダ船や中国船で運ばれました。18世紀中ごろのフランスの『百科全書』には「SOUI(しょうゆ)」の項目があります(キッコーマン)。輸出は1941年ごろに止まり、1949年に再開しました。

年 できごと
1957年 キッコーマンが米国サンフランシスコに販売会社をつくる
1973年 キッコーマンが米国ウィスコンシン州ウォルワースに工場を完成させ、現地生産を始める(いまは海外9工場)
1989年 しょうゆの輸出 8,419kL・16.1億円(53か国)
2024年 輸出 47,490kL・121.9億円(79か国)。量は1989年の5.6倍、金額は7.6倍

出典:キッコーマン、財務省貿易統計をしょうゆ情報センターが集計したもの。

2024年の輸出は、出荷量の約7.0%です。米国向けは5,157kL で、輸出全体の10.9%と大きくありません。キッコーマンなどが米国で現地生産しているためと考えられます。

なお、日本は1998年に、国際規格(コーデックス)に日本のしょうゆの規格を提案しましたが、「海外の作り方の Soy sauce と区別するのが難しい」として取り下げています(松本秀樹さんの寄稿)。

しょうゆの作り方

同じ「しょうゆ」でも、作り方は3つあります。ちがいは、アミノ酸液などを加えるかどうかです。

しょうゆの3つの作り方を示した図。こいくちしょうゆの本醸造は、蒸した大豆と炒って砕いた小麦にこうじ菌を加えてしょうゆこうじを作り、食塩水と仕込んでもろみにし、約6〜8か月発酵・熟成させ、搾った液(生揚げ)を加熱してろ過する。本醸造(2024年89.8%)はアミノ酸液などを使わない。混合醸造(0.5%)はもろみにアミノ酸液などを加えて発酵・熟成させる。混合(9.8%)はできたしょうゆにアミノ酸液などを加える。アミノ酸液は植物のたんぱく質を塩酸で分解した液で、そのとき3-MCPDができることがあり、自製アミノ酸液の平均はアルカリ処理なしで11mg/kg、ありで0.099mg/kgと約100分の1だった(2006年度)。作り方は名称欄のかっこの中で分かる。
図:しょうゆの3つの作り方と、アミノ酸液を加える段階(押すと拡大)

本醸造:こうじ・もろみ・熟成

しょうゆ情報センターによると、こいくちしょうゆの本醸造は次のように作ります。

  1. 蒸した大豆(脱脂加工大豆)と、炒って砕いた小麦をほぼ同じ量まぜ、こうじ菌(種こうじ)を加えて「しょうゆこうじ」を作る
  2. こうじを食塩水と一緒にタンクに仕込み、「もろみ」にする
  3. かき混ぜながら約6〜8か月ねかせる。こうじ菌の酵素、酵母、乳酸菌が働いて、分解・発酵・熟成が進む
  4. もろみを搾った液が「生揚げ(きあげ)」。これを加熱(火入れ)して、ろ過する

食品表示基準と JAS は、本醸造を「もろみを発酵・熟成させた液体の調味料」と決めています。セルラーゼなどの酵素を補助的に使うことは認められています。

アミノ酸液とは

アミノ酸液は、大豆などの植物のたんぱく質を酸で分解した液です(JAS・食品表示基準の定義)。しょうゆ業界の申し合わせ(2007年)は、「脱脂加工大豆や小麦グルテンなどの植物たん白を酸で分解し、アルカリで中和してできた液体調味料」と説明し(使われる酸は塩酸です。農林水産省)、例として味の素の「味液」を挙げています。

加えるもの 作り方(定義)
アミノ酸液 大豆などの植物性たんぱく質を、酸で処理したもの
酵素分解調味液 大豆などの植物性たんぱく質を、たんぱく質を分解する酵素で処理したもの
発酵分解調味液 小麦グルテンを発酵させて分解したもの

出典:JAS 1703:2021、食品表示基準 別表第三。

たんぱく質をアミノ酸まで分解するので、うま味が強くなります。アミノ酸液は表示の上では「食品」の扱いで、添加物の欄には書かれません。くわしくは 原材料じてん:アミノ酸液 と うま味調味料の記事 にまとめています。

しょうゆに使われるアミノ酸液の量は、1984年の7万6,837kL から2024年の2万1,002kL へ、約7割減りました(しょうゆ情報センター統計)。

3つの製造方式

作り方 何をするか 2024年の割合 名称欄の書き方の例
本醸造 もろみを発酵・熟成させる 89.8% こいくちしょうゆ(本醸造)
混合醸造 もろみにアミノ酸液などを加えて、発酵・熟成させる 0.5% こいくちしょうゆ(混合醸造)
混合 できたしょうゆ(本醸造・混合醸造・生揚げ)にアミノ酸液などを加える 9.8% こいくちしょうゆ(混合)

出典:食品表示基準 別表第三・第四、JAS 1703:2021、しょうゆ情報センター統計(2024年)。混合の割合は、統計表の出荷量(6万6,534kL)からウラヨミで計算した値です(統計表の構成比の欄は9.7%ですが、出荷量から計算すると9.8%になります)。

しょうゆの種類と作り方の割合(2024年)出荷量 68.1万kL の内訳(%)種類こいくち:578,213kL(84.9%)うすくち:78,083kL(11.5%)たまり:14,018kL(2.1%)さいしこみ:6,518kL(1.0%)しろ:4,187kL(0.6%)こいくち 84.9%うすくち 11.5%たまり 2.1%さいしこみ 1.0%しろ 0.6%作り方本醸造:611,405kL(89.8%)混合醸造:3,080kL(0.5%)混合:66,534kL(9.8%)本醸造 89.8%混合 9.8%混合醸造 0.5%← どちらもアミノ酸液などを使う方式本醸造の割合の推移(%)。残りがアミノ酸液などを使う方式60%70%80%90%100%198019902000201020201977年:本醸造 66.6%1980年:本醸造 67.7%1985年:本醸造 71.2%1990年:本醸造 73.7%1995年:本醸造 76.6%2000年:本醸造 81.2%2003年:本醸造 82.1%2004年:本醸造 82.2%2010年:本醸造 85.4%2015年:本醸造 86.4%2020年:本醸造 89.2%2024年:本醸造 89.8%1977年 66.6%2024年 89.8%アミノ酸液などを使う方式(1977年 33.4% → 2024年 10.2%)出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」2.(1)(原資料は農林水産省。一部は業界の推計)。2003年までの名前は「新式醸造」「アミノ酸液混合」。2004年10月から「混合醸造」「混合」(中身の分け方も変わった)。1996〜98年は製造方式の調査がない。2024年の混合は出荷量(66,534kL)から計算した9.8%(統計表の構成比欄は9.7%)。
2024年の種類別・作り方別の割合と、本醸造の割合の推移。出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」(原資料は農林水産省)

本醸造の割合は、統計のある1977年には66.6%でした。2024年には89.8%まで増え、アミノ酸液などを使う方式は33.4%から10.2%に減っています。しょうゆ情報センターは、混合醸造・混合のしょうゆについて「アミノ酸液特有のうま味を生かしたしょうゆで、地域によってはこの特徴が好まれます」と説明しています。地域の差は 混合しょうゆが多い県・少ない県 で見ます。

丸大豆と脱脂加工大豆

いま、しょうゆの原料の大豆の8割は、油を搾ったあとの「脱脂加工大豆」です。

脱脂加工大豆は、しょうゆ情報センターの説明では「しょうゆ製造上必要なたんぱく質を残し、あまり必要のない脂肪分をあらかじめ取り除いたもの」です。法令の定義でも、しょうゆこうじの原料の「大豆」には脱脂加工大豆が含まれます。原材料名では「脱脂加工大豆」と書き分けられます。

年 脱脂加工大豆 丸大豆 丸大豆の割合(大豆に換算)
1984年 18万1,385t 4,654t 2.0%
1990年 17万4,206t 2万3,775t 9.8%
2005年 14万288t 4万94t 18.6%
2024年 10万8,479t 3万2,281t 19.2%

出典:しょうゆ情報センター統計 3.(1)(原資料は農林水産省。一部は業界の推計)。脱脂加工大豆は、油の分を約20%として大豆に換算した量で割合を計算しています。2024年の丸大豆のうち、国産は6,554t、外国産は2万5,727t でした。

丸大豆は、1984年には2%しか使われていませんでした。キッコーマンが「特選 丸大豆しょうゆ」を発売した1990年に約1割になり、2005年には2割近くまで増えて、その後はほぼ横ばいです。キッコーマンは丸大豆のしょうゆを「豊潤でまろやか」、脱脂加工大豆のしょうゆを「キレのある風味」と説明しています(メーカーの表現です)。

同じキッコーマンでも、原材料名を比べるとちがいが分かります。

商品 原材料名(公式サイト)
キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ 大豆(アメリカ)(分別生産流通管理済み)、小麦、食塩
キッコーマン しょうゆ 脱脂加工大豆(大豆(アメリカ又はカナダ(5%未満))(分別生産流通管理済み))、小麦、食塩、大豆(分別生産流通管理済み)/アルコール

味のちがいを調べた研究は、中国のものが見つかりました。官能評価で、丸大豆のしょうゆは酸味・果物のような香りが強く、脱脂大豆のしょうゆはスモーキーな香りが強かった、という報告です(Tian 2023)。ただし、中国のしょうゆメーカー(海天社)の社員が共著者に入っています。日本のメーカーや公的機関が比べたデータは、今回は手に入りませんでした。

「丸大豆」と書くための業界の決まり(公正競争規約)の中身は、原文を確かめられませんでした。

脱脂加工大豆に溶剤は残る?

大豆の油は、ヘキサンという溶剤で取り出すのが一般的です。日本の決まりでは、ヘキサンは「食用油脂を作るときの油の抽出に限る」「最終の食品ができる前に取り除く」という条件で使えます(食品添加物の使用基準、厚生省の通知 1976年)。残ってよい量の数値基準はありません。

EU は、脱脂したたんぱく製品を含む食品で10mg/kg、消費者向けの脱脂大豆製品で30mg/kg、油脂で1mg/kg という残留の上限を決めています(指令 2009/32/EC)。

しょうゆや脱脂加工大豆に、実際にどれだけヘキサンが残っているかを測った日本の公的なデータは、見つかりませんでした。「残っている」とも「残っていない」とも、この記事では言えません。

しょうゆの種類とラベルの読み方

しょうゆは5種類。どれか、どう作ったかは、名称欄を見ればいちばん早く分かります。

しょうゆのラベルの読み方を示した図。架空の表示の例で、名称欄からは種類(こいくち・うすくち・たまり・さいしこみ・しろ)と作り方(本醸造・混合醸造・混合)が分かる。原材料名は「大豆」なら丸大豆、「脱脂加工大豆」なら油を搾った大豆で、「アミノ酸液」があれば混合醸造・混合、「/」のあとが添加物。JAS の特級は本醸造が条件(さいしこみを除く)、特選・超特選は特級で全窒素分が1.1倍・1.2倍以上、天然醸造の法令上の条件は3つ、減塩は100gあたり食塩9g以下。
図:しょうゆのラベルで見る場所と、表示の言葉の条件(押すと拡大)

5つの種類

種類 原料・作り方(JAS の定義から) 2024年の割合 多く造っている県(2024年)
こいくち 大豆に、ほぼ同じ量の麦を加える 84.9% 千葉・兵庫・群馬など
うすくち 色が濃くならないようにする。米や甘酒を使ってもよい 11.5% 兵庫(39.4%)
たまり 大豆だけ、または大豆に少しの麦 2.1% 愛知(57.4%)
さいしこみ 食塩水の代わりに、しょうゆ(生揚げ)で仕込む 1.0% 群馬(19.6%)。山口県柳井の生まれ
しろ 少しの大豆に麦。色が濃くならないよう強く抑える 0.6% 愛知(35.7%)。愛知県碧南の生まれ

出典:JAS 1703:2021、しょうゆ情報センター統計 2.(1)(3)(かっこ内はその種類の全国出荷量のうちの割合。ウラヨミで計算)。

  • うすくちは「色がうすい」という意味です。色を淡くするため、食塩をこいくちより1割ほど多く使います(しょうゆ情報センター)。塩分がうすいわけではありません
  • さいしこみは、色・味・香りとも濃く、「甘露しょうゆ」とも呼ばれます
  • しろは、うすくちよりさらに淡い琥珀色で、甘みが強いしょうゆです

たまりしょうゆ

たまりしょうゆは、おもに中部地方で造られる、色が濃く、とろみのあるしょうゆです。原料はおもに大豆で、小麦はごくわずか。大豆で「味噌玉こうじ」を作り、底にたまった液をくみかけながら、ほぼ1年発酵・熟成させます(しょうゆ情報センター)。刺身や寿司のつけじょうゆのほか、加熱するときれいな赤みが出るので、照り焼きやせんべいにも使われます。

JAS の定義は「大豆、または大豆に少しの麦」なので、たまりでも小麦を使うものと使わないものがあります。小麦を使っていないかどうかは、商品ごとに原材料名で確かめる必要があります。

小麦を使っていないたまりしょうゆの例は、小麦・大豆のアレルギーがあるなら で紹介しています。

名称欄に「こいくちしょうゆ(本醸造)」

食品表示基準(別表第四)は、しょうゆの名称を「種類(作り方)」の形で書くよう決めています。

  • こいくちしょうゆ(本醸造)
  • うすくちしょうゆ(混合醸造)
  • たまりしょうゆ(混合)

5種類にあてはまらないものは「しょうゆ(本醸造)」などと書きます。

しょうゆ業界の申し合わせ(2007年)では、大豆をまったく使わないものは、「こいくちしょうゆ(本醸造)」などと書けません。また、酵母エキス・しいたけ・はちみつ・とうがらし・にんにく・昆布などを使ったものも「しょうゆ」にはなりません。かつお節や昆布のだしを入れたものは、商品名が「○○しょうゆ」でも名称欄は「しょうゆ」ではなく、「しょうゆ加工品」などになります(松本秀樹さんの寄稿)。

キッコーマンには、大豆も小麦も使わず、えんどう豆で作った「大豆と小麦を使わないしょうゆ」があります(原材料:えんどう豆(アメリカ)、食塩/アルコール)。この商品の名称欄に何と書かれているかは、確かめられませんでした。

特級・上級・標準(JAS)

JAS は、うま味のもとになる窒素の量(全窒素分)などで、しょうゆに3つの等級をつけています。

種類 特級になれる作り方 全窒素分(g/100mL 以上)特級/上級/標準
こいくち 本醸造だけ 1.50/1.35/1.20
うすくち 本醸造だけ 1.15/1.05/0.95
たまり 本醸造だけ 1.60/1.40/1.20
さいしこみ 本醸造、またはアミノ酸液などが20%以下の混合醸造 1.65(混合醸造は2.00)/1.50/1.40
しろ 本醸造だけ 0.40以上0.80未満(上級・標準は0.90未満)

出典:JAS 1703:2021。しろは全窒素分が少ないほうが条件で、ほかに無塩可溶性固形分・直接還元糖でも等級が決まります。

  • 特級は、さいしこみを除いて本醸造が条件です。上級と標準は、作り方を問いません
  • JAS の原材料は、大豆・麦・米・小麦グルテン・食塩・アミノ酸液など・砂糖類・アルコール・みりんなどに限られます。添加物は、国際規格(コーデックス)の食品添加物の一般規格に合うものを使えます
  • 先に書いたとおり、JAS の格付けを受けているしょうゆは、2024年で出荷量の53.2%です。JAS マークや等級の表示がないからといって、品質が低いとは限りません

「特選」「超特選」の条件

「特選」「超特選」は、食品表示基準(別表第二十二)で条件が決まっている言葉です。

表示 条件(こいくち・たまりの場合) こいくちで言えば
特選 JAS の特級に格付けされ、全窒素分が特級の基準の1.1倍以上 1.65g/100mL 以上
超特選 同じく1.2倍以上 1.80g/100mL 以上

うすくち・しろは、全窒素分の代わりに「無塩可溶性固形分」で判定し、砂糖類を加えていないことも条件です。さいしこみは、本醸造の特級だけが対象です。

ここから分かることは、次の3つです。

  • 特選・超特選は、本醸造の JAS 特級で、うま味のもと(窒素)が多いしょうゆです
  • こいくち・たまりでは、添加物を使っていないことは条件になっていません
  • 丸大豆を使うことも、条件ではありません

実際に、キッコーマンの公式サイトで原材料を比べると、次のとおりでした(2026年10月3日確認)。

商品 原材料名
いつでも新鮮 超特選 極旨しょうゆ 脱脂加工大豆(…)、小麦、食塩/アルコール
いつでも新鮮 超特選 九州あまくちさしみしょうゆ 脱脂加工大豆(…)、食塩、小麦、砂糖、みりん/調味料(アミノ酸等)、アルコール、着色料(カラメル)、甘味料(甘草、ステビア)、増粘剤(キサンタン)
特選 丸大豆しょうゆ 大豆(アメリカ)(分別生産流通管理済み)、小麦、食塩
特選有機しょうゆ 有機大豆(アメリカ)、有機小麦、食塩

「超特選」でも、調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・甘味料を使った商品があります。添加物を使っていないものを選びたいときは、「特選」の文字ではなく、原材料名の「/」のあと(添加物の欄)を見るのが確実です。

業界の申し合わせ(2007年)は、等級にまぎらわしい「最上」「極上」「最高」などの言葉を禁止し、特級のものには「特醸」「高逸」「ゴールド」など、上級のものには「上選」「優選」「吟醸」などを使ってよい、としています。この申し合わせは、2004年当時の JAS としょうゆ品質表示基準を補う文書です。いまの食品表示基準のしょうゆの項(別表第二十二)に書かれているのは「特選・超特選」「天然醸造」「減塩」の3つだけで、これらの言葉の決まりは見当たりません。業界でいまも同じ運用かどうかは、確かめられませんでした。

「天然醸造」の条件

食品表示基準は、しょうゆに「天然」「自然」と書くことを原則として禁止しています。例外が「天然醸造」で、次の3つをすべて満たすときだけ使えます。

  1. 本醸造方式で作ったもの
  2. セルラーゼなどの酵素で、醸造を早めていないもの
  3. 指定添加物(食品衛生法施行規則 別表第一に載っている添加物)を使っていないもの

「天然醸造は、温度を上げずに自然の気温で造ったもの」という説明をよく見かけます。しかし、食品表示基準で「加温により醸造を促進したものでなく」と書かれているのは、みその「天然醸造」の条件です。しょうゆの条件には「加温」という言葉がありません。

業界の自主的な決まり(醤油業中央公正取引協議会の「しょうゆの表示に関する公正競争規約」)に加温の条件があるかもしれませんが、規約の本文を手に入れられず、確かめられませんでした。この記事では、法令で確かめられた3つの条件だけを書きます。

なお、3つ目の条件は「指定添加物」(食品衛生法施行規則 別表第一)に限っています。カラメル色素(カラメルⅠ〜Ⅳ)・カンゾウ抽出物(甘草)・ステビア抽出物は、別の名簿の「既存添加物」(既存添加物名簿、2025年8月25日現在)に載っているもので、法令の文言の上ではこの条件に入りません。実際の運用がどうなっているかは確かめられませんでしたが、「天然醸造」の文字だけで、添加物がまったく入っていないとは言い切れません。ここでも、原材料名を見るのが確実です。

「減塩」「うす塩」「生」

表示 条件 決めているもの
減塩 しょうゆ100g中の食塩が9g以下 食品表示基準 別表第二十二
うす塩・あさ塩・あま塩・低塩 ふつうのしょうゆの食塩の80%以下(しょうゆ情報センターは「80%以下、50%以上」) 2004年当時の規格の文言と、それを補う業界の申し合わせ(2007年)。いまの食品表示基準のしょうゆの項にはない
生(き・なま) 「き」「なま」のふりがなをつける。火入れの代わりに、少なくとも酵母を取り除ける殺菌処理をしたもの 同上

キッコーマンは、ふつうのしょうゆの食塩の「半分近く」まで減らしたものが「減塩」、80%以下のものが「うす塩」などと説明しています。「減塩」「塩分○%カット」のような、ほかの食品と比べる表示の決まりは、食塩摂取量の記事 にまとめています。

しょうゆは体に悪い? 説ごとに確かめる

食塩:大さじ1でどれくらい?

しょうゆで気をつけたい成分は、まず食塩です。

しょうゆの種類ごとの食塩とカリウム(100gあたり)減塩しょうゆは、ふつうのこいくちよりカリウムも少ない食塩相当量(g)カリウム(mg)0510152002505007501000こいくちこいくち:食塩相当量 14.5g14.5こいくち:カリウム 390mg390うすくちうすくち:食塩相当量 16.0g16.0うすくち:カリウム 320mg320たまりたまり:食塩相当量 13.0g13.0たまり:カリウム 810mg810さいしこみさいしこみ:食塩相当量 12.4g12.4さいしこみ:カリウム 530mg530しろしろ:食塩相当量 14.2g14.2しろ:カリウム 95mg95うすくち 低塩うすくち 低塩:食塩相当量 12.8g12.8うすくち 低塩:カリウム 330mg330こいくち 減塩こいくち 減塩:食塩相当量 8.3g8.3こいくち 減塩:カリウム 260mg260出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(17007〜17011、17086、17139)。100g(mLではない)あたり。商品の表示は大さじ1(15mL)あたりのことが多い。減塩しょうゆの値は成分表の1つの値。商品によってカリウムの量は違う(表示は任意)。
しょうゆの種類ごとの食塩相当量とカリウム(100gあたり)。出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

商品の表示では、大さじ1(15mL)あたり次のとおりでした(各社の公式サイト、2026年10月3日確認)。

商品 食塩相当量(大さじ1)
キッコーマン うすくちしょうゆ 2.8g
キッコーマン しょうゆ 2.5g
キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ 2.5g
丸中醸造醤油 2.4g
キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ 2.3g
キッコーマン 減塩しょうゆ 1.2g
キッコーマン いつでも新鮮 すっきりClear by減塩しょうゆ 0.8g

ふつうのしょうゆは、大さじ1で食塩2.5g 前後です。日本の目標量(男性7.5g・女性6.5g未満)の3分の1ほどになります。

ウラヨミで計算すると、2024年の出荷量(68.1万kL)を人口で割った量は1人1日約15mL、食塩に直すと約2.5g です。ただし、出荷量には外食・加工食品の材料や輸出(約7%)も入っているので、1人が実際に口にする量とは同じではありません。

減塩しょうゆとカリウム

国内の減塩しょうゆは、食塩をほかの塩(塩化カリウム)に置き換えるのではなく、食塩を減らして作るのが基本です。

キッコーマンによると、減塩しょうゆの作り方には、イオン交換膜でしょうゆから食塩を取り除く「脱塩法」と、濃く作ったしょうゆを薄める「希釈法」があり、同社は脱塩法を使っています。1965年に、心臓や腎臓の病気で塩分を制限されている人向けに、塩分を約50%減らした「保健しょうゆ」を作ったのが始まりで、東京大学医学部附属病院などが使いました。

ふつうのこいくち こいくち 減塩
ナトリウム(100gあたり) 5,700mg 3,300mg
食塩相当量(100gあたり) 14.5g 8.3g
カリウム(100gあたり) 390mg 260mg

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。

食品成分表では、減塩しょうゆのほうがカリウムも少ない値になっています。キッコーマンの減塩しょうゆ3品の原材料にも、塩化カリウムはありませんでした(減塩しょうゆ:小麦、脱脂加工大豆、食塩、大豆/アルコール、酸味料、ビタミンB1)。

ただし、商品の表示では、カリウムは大さじ1あたり「減塩しょうゆ」25mg、「特選 丸大豆減塩しょうゆ」28mg、「すっきりClear by減塩しょうゆ」80mg と、商品によって3倍の差がありました。食塩を塩化カリウムに置き換える「減塩しお」のような商品もあり、塩化カリウムを使ったしょうゆを調べた研究もあります。国内外のすべての減塩しょうゆを調べたわけではないので、「減塩しょうゆはカリウムが少ない」とも一般化はできません。

腎臓の病気などでカリウムを制限されている人は、「減塩」の文字ではなく、栄養成分表示のカリウムの値と原材料名(塩化カリウムがないか)を見て、医師や管理栄養士に相談してください。カリウムの表示は任意なので、書かれていない商品もあります。

減塩しょうゆの効果を調べた試験としては、食塩を約25%減らしたしょうゆと約20%減らしたみそを6週間使う二重盲検のランダム化比較試験(64人)があります。全体では血圧に差がなく、40歳以上では拡張期血圧(下の血圧)が6.4mmHg 下がりました(Nakamura 2003。浜松医科大学の研究で、資金は日本学術振興会の科学研究費)。

3-MCPD は大丈夫?

3-MCPD(3-クロロ-1,2-プロパンジオール)は、アミノ酸液を作るときにできることがある物質です。 植物のたんぱく質を塩酸で分解するとき、原料にわずかに含まれる脂質と塩酸の塩素が反応してできます(農林水産省)。

EU の食品科学委員会は、1996年には3-MCPD を「発がん物質で、食品から検出されるべきでない」と判断しました。その後の研究をふまえ、2001年には「発がん性を示さない」と結論を変え、1日に体重1kgあたり2µg という耐容量を決めました(農林水産省の説明)。国際的な専門家会議(JECFA)は2016年に、3-MCPD と、その仲間(脂肪酸エステル)を合わせて、体重1kgあたり1日4µg という暫定の上限を決めています。

本醸造と混合系で、濃度はまったくちがった

農林水産省は2004年度に、しょうゆの3-MCPD を作り方ごとに調べました。

作り方 点数 測れる下限(0.004mg/kg)未満 中央値 最大値 平均値
本醸造 104 93点(89%) ― 0.008 0.003
混合醸造・混合 120 1点 0.016 7.8 0.21

単位は mg/kg。出典:農林水産省「平成16年度~令和3年度 食品中の3-MCPD 及び1,3-DCP の含有実態調査の結果について」(2024年5月29日更新)。

  • 本醸造はアミノ酸液を使わないので、3-MCPD はほとんど検出されませんでした。少しだけ検出されたものは、混合しょうゆと同じタンクや配管を使ったために混ざったと推察されています
  • 混合醸造・混合の120点のうち、110点(92%)は0.05mg/kg 以下でした。一部に高いもの(最大7.8mg/kg)がありました

中央値の食い違い:0.016 を採用した理由

農林水産省には、この調査の数字が載ったページが2つあり、混合系の中央値が食い違っています。

ページ 更新日 混合系の中央値 平均値
「食品中の3-MCPD 及び1,3-DCP の含有実態」 2023年3月24日 0.21 載っていない
「…含有実態調査の結果について」(調査結果の本体) 2024年5月29日 0.016 0.21

この記事では0.016 を採用しました。理由は2つです。

  1. 調査結果の本体のページは、中央値と平均値を別々の列に載せていて、平均値が0.21です
  2. 120点のうち92%が0.05mg/kg 以下なので、まん中の値(中央値)は0.05以下になるはずです。0.21 は中央値としてありえません

一部の高い値に引っぱられる平均値(0.21)が、もう一方のページで中央値として書かれてしまった可能性が高いと考えられます。

原因は「自社で作ったアミノ酸液」、対策は「アルカリ処理」

調べていくと、高い3-MCPD の原因が分かりました。アミノ酸液には、加工食品の材料として大きな工場で作られて売られているものと、混合しょうゆのメーカーが自社で作るもの(自製アミノ酸液)の2種類があります。

アミノ酸液(2004・2006年度) 点数 中央値 最大値 平均値
大規模に作られ、アルカリ処理されたもの 148 0.049 0.14 0.047
自製(2004年度) 9 2.7 44 8.4
自製・アルカリ処理なし(2006年度) 50 3.3 57 11
自製・アルカリ処理あり(2006年度) 31 0.053 0.30 0.099

単位は mg/kg。出典:同上。

アルカリ処理をすると、3-MCPD の平均は約100分の1になりました。アルカリ処理とは、塩酸で分解して中和したあと、さらにアルカリ性にして加熱し、3-MCPD を分解してから、もう一度中和する方法です。

農林水産省によると、この低減の技術は日本の産業界で開発されたもので、コーデックス委員会が2008年に採択した実施規範(CXC 64-2008「酸加水分解植物性たん白質の製造中の3-MCPD 低減に関する実施規範」)にも採用されています。

農林水産省は2008年度に、アルカリ処理を入れるか、アルカリ処理されたアミノ酸液を買って使うよう業界に求め、2012年度・2023年3月にも徹底を求めています。

しょうゆの3-MCPD:本醸造と混合系、対策の前と後農林水産省の調査(mg/kg)。目盛は1目盛で10倍の対数目盛中央値最大値0.0010.010.1110100全体自製液を使用対策後(同じ業者)2004200520062009201120162021コーデックス 0.4(本醸造を除く液状調味料)EU 0.02(しょうゆ。固形分40%として)本醸造 2004年度:最大0.008、104点中93点が0.004未満本醸造最大0.00889%が0.004未満2004年度 混合系しょうゆ全体(120点):最大 7.8 mg/kg2004年度 混合系しょうゆ全体(120点):中央値 0.016 mg/kg7.80.0162005年度 自製アミノ酸液を使ったもの(40点):最大 17 mg/kg2005年度 自製アミノ酸液を使ったもの(40点):中央値 1.5 mg/kg171.52006年度 自製アミノ酸液を使ったもの(54点):最大 20 mg/kg2006年度 自製アミノ酸液を使ったもの(54点):中央値 0.83 mg/kg200.832009年度 2006年に自製液を使っていた業者(55点):最大 4.6 mg/kg2009年度 2006年に自製液を使っていた業者(55点):中央値 0.069 mg/kg4.60.0692011年度 同上(55点):最大 3.4 mg/kg2011年度 同上(55点):中央値 0.087 mg/kg3.40.0872016年度 同上(55点):最大 1.2 mg/kg2016年度 同上(55点):中央値 0.035 mg/kg1.20.0352021年度 同上(55点):最大 1.6 mg/kg2021年度 同上(55点):中央値 0.024 mg/kg1.60.024出典:農林水産省「食品中の3-MCPD及び1,3-DCPの含有実態調査の結果」(2004〜2021年度)。年度によって調べた対象が違う。2005・06年度は自社製のアミノ酸液を使った混合系しょうゆ、2009年度からは、2006年度に自社製のアミノ酸液を使っていた業者のしょうゆ(各55点)。2004年度の混合系の中央値は、調査結果のページの表の値(0.016)。平均は0.21。日本には法律の基準値がない。EUの値は固形分の割合で変わる(固形分20%なら0.01)。定量下限は0.004 mg/kg(2016年度は0.003)。
しょうゆの3-MCPD 濃度(中央値と最大値、対数目盛)。出典:農林水産省 2004〜2021年度の含有実態調査
年度 調べたしょうゆ 点数 中央値 最大値
2005 自製アミノ酸液を使った混合系 40 1.5 17
2006 同上 54 0.83 20
2009 2006年度に自製アミノ酸液を使っていた業者の混合系 55 0.069 4.6
2011 同上 55 0.087 3.4
2016 同上 55 0.035 1.2
2021 同上 55 0.024 1.6

単位は mg/kg。出典:同上。

対策の前と後で、同じ業者のしょうゆの中央値は0.83から0.024へ約35分の1、最大値は20から1.6へ12.5分の1になりました。2021年度のアンケートでは、1業者を除くすべての業者が対策をしていて、自製をやめて処理済みのアミノ酸液だけを使う業者が増えていました。

日本・EU・国際規格の基準

国・地域 しょうゆなどの3-MCPD の基準(mg/kg) 対象
日本 法律の基準値はない 農林水産省の要請と実態調査で管理
EU 0.02 しょうゆ、酸加水分解植物性たん白(固形分40%の液体として。固形分の割合で変わる)
韓国 0.02 酸加水分解しょうゆ、それを混ぜたしょうゆ
シンガポール 0.02 しょうゆ、オイスターソース
オーストラリア・ニュージーランド 0.2 しょうゆ、オイスターソース
台湾 0.3 しょうゆ、しょうゆ加工品
コーデックス(国際規格) 0.4 酸加水分解植物性たん白を含む液状調味料(本醸造しょうゆを除く)
カナダ 1.0(暫定) しょうゆ、オイスターソースなど
米国 1(業界の自主基準) 酸加水分解植物性たん白

出典:農林水産省「クロロプロパノール類に関する国際的な取組」(2024年5月1日現在の表)。

本醸造の最大値(0.008)は、いちばん厳しい EU の値より低い値でした。一方、2021年度の混合系の最大値(1.6)は、コーデックスの値の4倍、EU の値の80倍です(固形分のちがいは考えていません)。日本は国際規格に技術を提供した国ですが、しょうゆの3-MCPD に法律の基準値を持っていない、というのが日本と海外のいちばん大きなちがいです。

海外のしょうゆでも、韓国の31点(平均11.6µg/kg、最大55µg/kg、23%が韓国の基準を超えた。Jang & Koh 2020)や、ブルガリアの加水分解植物性たん白を含むしょうゆ21点(3.7〜186µg/kg、33%が EU の基準を超えた)で、基準を超えるものが見つかっています。1µg/kg は0.001mg/kg です。

体に入る量で考える

農林水産省は、次のように評価しています。

  • 平均的な日本人がしょうゆからとる3-MCPD は、当時の耐容量(体重1kgあたり2µg)の1%未満
  • 食品全体からとる量は1日2.0〜4.7µg(2005〜2007年度のトータルダイエットスタディ)で、当時の耐容量の2〜5%
  • 2021年度の調査をもとに、濃度の高いしょうゆをとり続けたと仮定しても、2016年に決まった上限(体重1kgあたり4µg)の約1割

ウラヨミでも計算しました。1日にしょうゆを15g とり(1人あたりの出荷量は1日約15mL で、重さにするとこれより少し多くなります)、すべてが2021年度の最大値(1.6mg/kg)のしょうゆだったとすると、3-MCPD は1日約24µg です。体重50kg の人の上限(4µg×50kg=200µg)の約12%で、農林水産省の「約1割」とほぼ同じです。中央値(0.024mg/kg)のしょうゆなら約0.36µg、上限の0.2%ほどです。

本醸造を選べば、3-MCPD はほとんど気にしなくてよい量です。混合しょうゆも、対策のあとの濃度は大きく下がっています。気になる人は、名称欄の「(本醸造)」と、原材料名に「アミノ酸液」がないことを見れば見分けられます。なお、アミノ酸液は、めんつゆ・たれ・ソース・漬物の調味液などにも使われています(農林水産省)。

アレルギー:小麦・大豆

しょうゆの原料の小麦はアレルギー表示が義務の品目、大豆は表示が勧められている品目です。しょうゆそのものは、原材料名に「小麦」「大豆」と書かれます。ほかの食品の原材料としては「しょうゆ(小麦・大豆を含む)」のように書かれます。

研究 分かったこと 注意
Kobayashi 2004 小麦アレルギーの子ども5人の血液で調べると、小麦のアレルゲンは、もろみの段階で分解されて反応しなくなった。市販の10品からも検出されなかった(試験管の研究) ヒガシマル醤油の研究所
Magishi 2017 大豆のアレルゲンは発酵で完全には分解されず生揚げに残るが、火入れで固まり、ろ過で取り除かれた(大豆アレルギーの子ども2人の血液) ヒガシマル醤油の研究所と小児科医
Lee 2025 韓国のしょうゆで、小麦・大豆に反応する子どもの血液が、しょうゆの種類によって反応した 韓国の大学病院の小児科の研究者

キッコーマンは、小麦と大豆のたんぱく質は、しょうゆの中ではアミノ酸に分解されている、と説明しています。ただ、上の研究は人数が少なく、日本の2本はメーカーの研究です。火入れをしていない生しょうゆで、大豆のアレルゲンがどうなっているかを調べたデータは見つかりませんでした。

小麦や大豆のアレルギーがある人がしょうゆを使えるかどうかは、医師の指示に従ってください。小麦を使っていないしょうゆを探すときは、先に書いたとおり、たまりでも小麦を使うものがあるので、原材料名で確かめます(小麦を使っていない商品の例は 小麦・大豆のアレルギーがあるなら)。

しょうゆを使った食事のあとに口のまわりに炎症が出た4例の報告(名古屋の皮膚科)もあります。調べたソース類のうち、ヒスタミン(かゆみなどを起こす物質)が検出されたのは大豆とそら豆を原料にしたものだけで、ほかのソースからは検出されませんでした。著者は、ヒスタミンによる中毒ではなく、醸造中にできる物質へのアレルギーと考えています(Sugiura 2010)。日本の市販のしょうゆのヒスタミンの量を調べた調査は見つかりませんでした。魚醤のヒスタミンは 魚醤の記事 にまとめています。

添加物を使うしょうゆもある

「大豆・小麦・食塩」だけのしょうゆもあれば、甘味料や調味料を加えたしょうゆもあります。 キッコーマンの公式サイトで原材料名を比べました(2026年10月3日確認)。

商品 原材料名の主なもの 添加物(「/」のあと)
特選 丸大豆しょうゆ 大豆、小麦、食塩 なし
しょうゆ 脱脂加工大豆、小麦、食塩、大豆 アルコール
うすくちしょうゆ 食塩、脱脂加工大豆、小麦、果糖ぶどう糖液糖、米、大豆 アルコール
いつでも新鮮 九州うまくち まろやかしょうゆ 脱脂加工大豆、食塩、小麦、果糖ぶどう糖液糖、砂糖 アルコール、調味料(アミノ酸等)、着色料(カラメル)、甘味料(カンゾウ、ステビア)など
  • アルコールは、香りと保存のために加えるもので(しょうゆ情報センター)、JAS では原材料(食品)の扱いです。原材料名では「/」のあとに書かれています
  • 甘いしょうゆには、砂糖・果糖ぶどう糖液糖のほか、甘草・ステビアなどの甘味料が使われることがあります(甘味料の記事、異性化液糖の記事)
  • 保存料のパラオキシ安息香酸エステル類(パラベン)は、しょうゆでは1Lあたり0.25g まで、という使用基準があります(保存料の記事)

カラメル色素と4-MEI

カラメル色素の一部(III・IV)には、製造中に4-MEI という物質ができます(くわしくは カラメル色素の記事)。しょうゆの4-MEI を測った研究では、本醸造のしょうゆは1gあたり0.002µg 未満〜0.023µg とごくわずかで、カラメル色素を含むしょうゆは0.43〜4.8µg でした(Yamaguchi & Masuda 2011。著者はキッコーマンの研究者。調べた点数・銘柄は要旨に書かれていません)。

しょうゆ10gで言えば、カラメル色素入りは約4〜48µg、本醸造のものは0.23µg 以下です。米国カリフォルニア州は、4-MEI を1日29µg 以上とる場合に警告表示を求めています。カラメル色素は「特級」「本醸造」でも使えるので、避けたいときは原材料名で確かめます。

遺伝子組換えの表示がない理由

しょうゆは、遺伝子組換えの表示義務がない食品です。 消費者庁の説明では、組み換えられた DNA と、それによってできたたんぱく質が、加工の工程で取り除かれたり分解されたりして、今の検出技術でも見つけられないためです。この扱いは1997〜99年の検討で決まり、2017年の検討会でも変わりませんでした。

そのため、しょうゆの「遺伝子組換えでない」は任意の表示です。2023年4月からは、分けて管理し(分別生産流通管理)、遺伝子組換えのものが混ざっていないことを確かめた場合だけ「遺伝子組換えでない」と書けます。分けて管理しても少し混ざる可能性があるものは「分別生産流通管理済み」と書きます。

商品 大豆の書き方
キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ 大豆(アメリカ)(分別生産流通管理済み)
丸中醸造醤油 大豆(国産、遺伝子組換えでない)

2024年にしょうゆに使われた丸大豆3万2,281t のうち、国産は6,554t(約2割)でした。

「しょうゆは体にいい」という研究は?

しょうゆに含まれる成分の働きを調べた研究もありますが、多くはしょうゆメーカーの研究です。

研究 内容 注意
しょうゆ多糖類(SPS) 鼻炎の症状(21人・4週、51人・8週)、鉄の吸収(45人)、中性脂肪(30人)のランダム化比較試験 すべてヒガシマル醤油の研究所。成分を1日600mg のサプリメントにして飲んだ試験で、ふだん使う量のしょうゆでは試していない
しょうゆの機能のまとめ(総説) 消化を助ける、抗菌、血圧に関わる酵素を妨げる成分など キッコーマンの品質保証部の総説。動物・試験管の研究が中心

このため、この記事では「しょうゆは体にいい」の根拠にはしません。

混合しょうゆが多い県・少ない県

混合しょうゆの割合は、県によって1%台から90%台までちがいます。 国の統計の都道府県別・製造方法別の出荷量から、ウラヨミで割合を計算しました。

混合醸造・混合のしょうゆの割合(都道府県別、2024年)その県の工場が出荷したしょうゆのうち、アミノ酸液などを使う方式の割合(%)本醸造混合醸造・混合混合の割合出荷量0%25%50%75%100%全国全国 本醸造:89.8%全国 混合醸造・混合:10.2%10.2%681,019kL九州7県九州7県 本醸造:44.5%九州7県 混合醸造・混合:55.5%55.5%63,501kL出荷量の多い10県千葉千葉 本醸造:98.8%千葉 混合醸造・混合:1.2%1.2%256,218kL兵庫兵庫 本醸造:98.0%兵庫 混合醸造・混合:2.0%2.0%107,163kL群馬群馬 本醸造:97.0%群馬 混合醸造・混合:3.0%3.0%46,869kL愛知愛知 本醸造:97.4%愛知 混合醸造・混合:2.6%2.6%43,920kL香川香川 本醸造:96.1%香川 混合醸造・混合:3.9%3.9%36,194kL大分大分 本醸造:50.9%大分 混合醸造・混合:49.1%49.1%25,741kL青森青森 本醸造:87.1%青森 混合醸造・混合:12.9%12.9%20,684kL三重三重 本醸造:93.4%三重 混合醸造・混合:6.6%6.6%17,411kL北海道北海道 本醸造:96.3%北海道 混合醸造・混合:3.7%3.7%16,760kL大阪大阪 本醸造:96.8%大阪 混合醸造・混合:3.2%3.2%15,750kL混合の割合が高い県高知高知 本醸造:3.3%高知 混合醸造・混合:96.7%96.7%428kL鹿児島鹿児島 本醸造:5.9%鹿児島 混合醸造・混合:94.1%94.1%5,239kL鳥取鳥取 本醸造:6.8%鳥取 混合醸造・混合:93.2%93.2%294kL山口山口 本醸造:9.0%山口 混合醸造・混合:91.0%91.0%1,576kL富山富山 本醸造:10.2%富山 混合醸造・混合:89.8%89.8%1,116kL福井福井 本醸造:10.3%福井 混合醸造・混合:89.7%89.7%865kL山形山形 本醸造:13.8%山形 混合醸造・混合:86.2%86.2%2,191kL宮崎宮崎 本醸造:16.7%宮崎 混合醸造・混合:83.3%83.3%3,527kL秋田秋田 本醸造:20.5%秋田 混合醸造・混合:79.5%79.5%1,387kL熊本熊本 本醸造:33.0%熊本 混合醸造・混合:67.0%67.0%6,158kL福岡福岡 本醸造:43.0%福岡 混合醸造・混合:57.0%57.0%14,160kL出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」2.(4)(原資料は農林水産省)から、ウラヨミで割合を計算。工場のある県ごとの出荷量で、その県で使われた量(消費量)ではない。混合醸造・混合の出荷量 6.96万kL のうち、九州7県が 3.53万kL(約51%)、大分県だけで 1.26万kL(約18%)。高知・鳥取などは出荷量が少ない。東京・神奈川は混合が0。沖縄は出荷なし。
都道府県別の混合醸造・混合の割合(2024年)。出典:しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」2.(4)(原資料は農林水産省)からウラヨミで計算
県・地域 出荷量 混合醸造・混合の割合
全国 68万1,019kL 10.2%
千葉 25万6,218kL 1.2%
兵庫 10万7,163kL 2.0%
大分 2万5,741kL 49.1%
九州7県 6万3,501kL 55.5%
鹿児島 5,239kL 94.1%
富山 1,116kL 89.8%
山形 2,191kL 86.2%
宮崎 3,527kL 83.3%
秋田 1,387kL 79.5%

割合がいちばん高いのは高知(96.7%)でしたが、出荷量は428kL と少なめです。鳥取(93.2%)、山口(91.0%)、福井(89.7%)、愛媛(84.3%)も高い県でした。

  • 全国の出荷量の半分以上を占める千葉・兵庫は、ほとんどが本醸造です。だから全国で見ると、本醸造が9割になります
  • 混合醸造・混合のしょうゆ(6.96万kL)の約51%は九州7県、約18%は大分県1県で造られています
  • 千葉県は割合は1.2%でも、量では約3,000kL の混合しょうゆを出荷しています

この数字は、メーカーや研究者の説明とよく合います。キッコーマンは、九州について「甘味のある混合しょうゆが多くを占めます」、宮崎・鹿児島は「特に甘味の強い混合しょうゆが好まれている地域」と書き、高知・愛媛も九州の影響で甘い混合しょうゆが好まれる、金沢(石川)は九州と並ぶ甘い混合しょうゆの産地、と紹介しています。東京農業大学の舘博さんが2017年に東北6県のしょうゆメーカー19社を訪ねた調査でも、ほとんどのメーカーで混合しょうゆが生産量の60%以上でした。

ただし、これは工場のある県ごとの出荷量で、その県で使われた量ではありません。また、混合しょうゆが多い県のしょうゆの3-MCPD が高い、というデータはありません。農林水産省の調査は県ごとの結果を出していません。

混合しょうゆは、地域の味として好まれてきたしょうゆです。農林水産省も「本醸造方式しょうゆと比べて独特の風味を持ち、地域によっては好んで使われています」と書いています。どちらを選ぶかは好みの問題で、この記事では、見分け方(名称欄のかっこの中)を知っておくことをおすすめします。

しょうゆの選び方

選ぶときに見るのは、名称欄・原材料名・表示の3か所です。

知りたいこと 見る場所 例
種類と作り方 名称欄 こいくちしょうゆ(本醸造)/(混合)
丸大豆か、脱脂加工大豆か 原材料名 「大豆」だけなら丸大豆、「脱脂加工大豆」とあれば油を搾った大豆
アミノ酸液を使っているか 原材料名 「アミノ酸液」の文字
添加物を使っているか 原材料名の「/」のあと 調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、甘味料 など
うま味のもと(窒素)が多いか 等級・特選・超特選の表示 特選は特級の1.1倍以上、超特選は1.2倍以上
食塩・カリウム 栄養成分表示 大さじ1あたりの食塩相当量、カリウム(任意)

本醸造・丸大豆を選ぶなら

原材料が「大豆、小麦、食塩」の3つだけで、名称欄が「こいくちしょうゆ(本醸造)」のしょうゆなら、アミノ酸液も脱脂加工大豆も添加物も使っていないことがラベルで分かります。たとえば キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ は、原材料が大豆(アメリカ)・小麦・食塩の3つで、1L の希望小売価格が580円(税抜)です。

丸中醸造醤油 は、滋賀県愛荘町の丸中醤油のこいくちしょうゆ(本醸造)です。原材料は大豆(国産、遺伝子組換えでない)・小麦・食塩の3つで、メーカーは三年熟成を基本に杉樽で寝かせていると説明しています。720mL で1,788円(税込、公式ショップ)と、スーパーの一般的なしょうゆより高めです。

原料の産地や、有機かどうかでも選びたい人向けの例も挙げます。ヤマキ醸造の「国産有機醤油 濃口タイプ」(500ml)は、原材料名が「有機大豆(国産)、有機小麦(国産)、食塩」の3つです。「脱脂加工大豆」ではなく「大豆」と書かれているので丸大豆で、大豆も小麦も国産の有機原料です。

減塩したいなら

  • 「減塩」は100gあたり食塩9g以下(食品表示基準)、「うす塩」などはふつうの80%以下(業界の目安)です。比べるときは、栄養成分表示の食塩相当量を見ます
  • カリウムを制限されている人は、カリウムの値と、原材料に塩化カリウムがないかも見ます
  • しょうゆの量そのものを減らす工夫や、減塩しょうゆの例は、食塩摂取量の記事 にまとめています

3-MCPD が気になるなら

  • 名称欄が「(本醸造)」なら、アミノ酸液を使っていません。2004年度の調査で、本醸造の89%は3-MCPD が測れる下限より少なく、最大でも0.008mg/kg でした
  • 混合醸造・混合でも、対策のあとの中央値は0.024mg/kg(2021年度)まで下がっています

小麦・大豆のアレルギーがあるなら

  • 使えるかどうかは医師に確かめます
  • 小麦を使わないしょうゆを探すときは、たまりでも原材料名を確かめます。大豆も小麦も使わないしょうゆ(えんどう豆などで作ったもの)もあります

小麦を使っていないしょうゆの例を1つ挙げます。丸又商店の「オーガニック たまり醤油」(900ml)は、原材料名が「オーガニック大豆(中国産)、食塩」の2つで、小麦を使っていません(楽天市場の商品ページの表示)。大豆は使っているので、大豆のアレルギーがある人には向きません。同じ工場で小麦を扱っているかどうか(混入のおそれ)は原材料名からは分からないので、気になる人はメーカーに確かめてください。

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

紹介したもの 購入先
丸中醤油 丸中醸造醤油(こいくち)720ml 楽天市場で見る(成城石井) PR
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ヤマキ醸造 国産有機醤油 濃口タイプ 500ml 楽天市場で見る(楽天24) PR
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丸又商店 オーガニック たまり醤油 900ml(小麦不使用) 楽天市場で見る(リフココ) PR
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まとめ

気になること 分かったこと
しょうゆの始まりは? 中国から伝わった「醤」が原形。湯浅の覚心の話は伝承で、記録で確かなのは1535年の大坂への出荷
本醸造と混合のちがいは? 混合醸造・混合は、アミノ酸液(植物たんぱくを酸で分解した液)などを加える。2024年は本醸造89.8%。名称欄のかっこで分かる
しょうゆの消費は減っている? 出荷量のピークは1973年(129.4万kL)で、2024年はその52.6%。「1984年がピーク」は誤り。つゆ・たれなどの加工品は増えた
丸大豆と脱脂加工大豆は? 原料の大豆の約8割は脱脂加工大豆。丸大豆は1984年の2%から2024年の19.2%へ。溶剤の残りを測った日本の公的データは見つからない
特選・超特選は? JAS 特級で、窒素分が1.1倍・1.2倍以上という条件。添加物や丸大豆の条件はなく、超特選でもカラメル色素・甘味料入りがある
天然醸造は? 法令の条件は本醸造・酵素で早めない・指定添加物なしの3つ。「加温しない」はみその条件で、しょうゆでは確かめられなかった
減塩しょうゆはカリウムが多い? 成分表では減塩のほうが少ない(390mg→260mg/100g)。ただし商品で差があり、制限のある人は表示を見る
3-MCPD は? 本醸造は89%が測れる下限未満。混合系は対策で中央値0.83→0.024mg/kg。日本に法律の基準値はなく、EU 0.02・コーデックス0.4
混合しょうゆはどこで多い? 千葉1.2%・兵庫2.0%に対し、九州55.5%・鹿児島94.1%・富山89.8%・山形86.2%(出荷県の集計)

参考にした資料

法令・規格

  • 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第三・第四・第二十二(e-Gov 法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  • 農林水産省「しょうゆの日本農林規格」JAS 1703:2021 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-470.pdf
  • 日本醤油協会ほか「しょうゆの表示等に関する業界申し合わせ」(平成18年、平成19年改正)
  • 消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」(2019年)
  • 日本食品化学研究振興財団「各添加物の使用基準及び保存基準」、同「既存添加物名簿」(2025年8月25日現在)https://www.ffcr.or.jp/webupload/kizontenkameibo.pdf 、厚生省通知 昭和51年環食化第110-2号(ヘキサン)
  • EU 指令 2009/32/EC Annex I(抽出溶剤)、EU 規則(EC)1881/2006 Annex Section 4.1(3-MCPD)

統計

  • しょうゆ情報センター「しょうゆの統計資料」(2024年版。原資料は農林水産省、総務省 家計調査・人口推計、財務省 貿易統計)https://www.soysauce.or.jp/statistical-data
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品成分データベース https://fooddb.mext.go.jp/

3-MCPD

歴史

  • 日本遺産ポータル STORY #047「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story047/
  • しょうゆ情報センター「しょうゆの歴史」「製法」「種類」「JAS」
  • キッコーマン「しょうゆの歴史」「日本各地のしょうゆ」「世界に広がるしょうゆ」https://www.kikkoman.co.jp/enjoys/soysaucemuseum/history.html
  • 舘博「東北のしょうゆ」FOOD CULTURE No.29、松本秀樹「組合の取り組みから見たしょうゆの現状について」FOOD CULTURE No.31(キッコーマン国際食文化研究センター)

健康・成分

  • Nakamura M, et al. Circ J 2003(PMID 12808272)
  • Kobayashi M, et al. Int J Mol Med 2004(PMID 15138619)/Magishi N, et al. Mol Med Rep 2017(PMID 28656270)/Lee 2025 Asian Pac J Allergy Immunol(PMID 40321138)/Sugiura 2010 J Eur Acad Dermatol Venereol(PMID 19943834)
  • Yamaguchi H, Masuda T. J Agric Food Chem 2011(PMID 21879707)
  • Tian 2023 J Sci Food Agric(PMID 36054657)
  • しょうゆ多糖類の試験(PMID 15492861、15702239、17089021、18813866)、Kataoka S. 2005(PMID 16243270)

商品の情報

  • キッコーマン 商品情報(しょうゆ、特選 丸大豆しょうゆ、減塩しょうゆ、特選 丸大豆減塩しょうゆ、しぼりたて生しょうゆ、うすくちしょうゆ、九州うまくち まろやか、超特選 九州あまくちさしみ、すっきりClear by減塩、大豆と小麦を使わないしょうゆ、超特選 極旨、特選有機)、同「減塩しょうゆ」(2026年10月3日確認)
  • 丸中醤油 公式ショップ「丸中醸造醤油」
  • ヤマキ醸造「国産有機醤油 濃口タイプ」、丸又商店「オーガニック たまり醤油」(楽天市場の商品ページの原材料名)

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.03)。