ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.01

塩分のとりすぎはどこから? 日本人の食塩摂取量の推移と目標量、高血圧・胃がんとの関係を国の調査と研究で確かめる

PR この記事には、楽天市場とA8.netのアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

「塩分のとりすぎに注意」とはよく聞きますが、何gからが「とりすぎ」なのかは、案外はっきりしません。目標は7.5gと書いてあったり、6gだったり、5gだったりします。食品の裏面には「ナトリウム」ではなく「食塩相当量」と書かれていて、天然塩や海塩なら気にしなくてよい、という話も見かけます。

この記事では、次のことを国の調査・食品成分表・論文で確かめます。

  • 「とりすぎ」の線はどこにあるのか。日本・WHO・米国・英国の目標量のちがい
  • 日本人は実際にどれくらい食塩をとっていて、この20年あまりでどう変わったか
  • 海外とくらべて、日本人の食塩は多いのか。どこから食塩をとっているのか
  • 食塩と高血圧・脳卒中・胃がんの関係は、どの種類の研究でどこまで分かっているか
  • ラベルの「食塩相当量」とは何か。ナトリウムとのちがい(2.54倍のわけ)
  • しょうゆ・みそ・ナンプラー・塩だれなど、調味料ごとの食塩相当量
  • 減塩の工夫として、国や自治体はどんなことをすすめているか

結論

  • 日本の目標量は、18歳以上で男性7.5g未満・女性6.5g未満(日本人の食事摂取基準2025年版)。高血圧と慢性腎臓病の重症化予防では6g未満です。WHOは5g未満をすすめていますが、日本の目標量は「WHOの5gと、いまの日本人の摂取量の中間」をとった、当面の目標です
  • 日本人(20歳以上)の食塩摂取量の平均は、2001年の12.1gから2024年の9.6gへ減りました。それでも国の目標(平均7g)より約2.6g多く、2013年から2023年の10年間では男女とも統計的に意味のある増減はありませんでした(国民健康・栄養調査)
  • 海外の推定値(WHO、2019年)では、日本は10.2gで、中国17.7g・韓国12.3gより少なく、米国8.9g・英国7.1gより多い位置です。日本では食塩の約2割がしょうゆから来ていました(INTERMAP研究)
  • 食塩を減らすと血圧が下がることは、ランダム化比較試験をまとめたメタアナリシスで確かめられています(平均で約4.4g減らすと、上の血圧が約4.2mmHg低下)。脳卒中との関係は主に観察研究で、食塩が1日5g多いと脳卒中のリスクが23%高いという報告があります
  • 胃がんについて、国立がん研究センターは食塩・塩蔵食品で胃がんのリスクが「ほぼ確実」に上がると評価しています。胃がんのいちばん大きな原因はピロリ菌(「確実」)で、塩はそれとは別の要因として評価されています
  • ラベルの食塩相当量は「ナトリウム×2.54」で、塩の種類を問いません。天然塩・海塩でも、体に入るナトリウムの量はラベルの食塩相当量で決まります

この記事で紹介しているもの

記事の中で、論点に合わせて次のものを紹介しています(楽天市場とA8.netのリンクです)。

こんな人に 紹介しているもの 選んだ理由(事実) 場所
塩だれの味は好きだが、食塩相当量も知っておきたい 焼肉ザパンチ 塩だれの素(にとん屋) 原材料は天日塩・ガーリック・胡椒・唐辛子だけ。食塩相当量は100gあたり71.1gと表示されている 塩・塩だれ・顆粒だしは別の桁
みそ汁やスープの濃さを数字で確かめたい タニタ 電子塩分計 しおみくん SO-313 汁物の塩分濃度を0.4〜1.4%の6段階で表示する計測器 国や自治体がすすめる減塩の工夫
原材料のシンプルな減塩しょうゆを使いたい チョーコー醤油 超特選 減塩醤油 原材料は大豆・小麦・食塩だけ。食塩相当量は100mlあたり8.4g 減塩調味料を選ぶときは表示で比べる
減塩・無塩の食品をまとめて探したい 無塩ドットコム(減塩食品の通販) 減塩・無塩の食品や調味料を扱う専門の通販 減塩調味料を選ぶときは表示で比べる

「とりすぎ」の線はどこにあるか

日本・WHO・米国・英国の目標

食塩の目標は、出しているところと目的によってちがいます。

出しているところ 1日の量(食塩相当量) 位置づけ
WHO(2012年のガイドライン) 5g未満(ナトリウム2,000mg未満) 成人向けの「強い推奨」。子どもはエネルギーの必要量に合わせて下げる
日本人の食事摂取基準(2025年版) 男性7.5g未満、女性6.5g未満 18歳以上の「目標量」。生活習慣病の予防のため
同上(重症化予防) 6g未満 高血圧と慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のため(男女とも)
健康日本21(第三次) 平均7g 国民全体の平均値の目標
日本高血圧学会 6g未満 高血圧の治療・予防の減塩目標
米国(食事ガイドライン) ナトリウム2,300mg未満(食塩に換算すると約5.8g) 成人。14歳未満はさらに低い
英国(食品基準庁) 成人の平均を6gに 2012年までの国の目標として掲げた値

どれも「これを1gでも超えたら危険」という線ではありません。 WHOの5gは、血圧と心臓病・脳卒中のリスクを下げるための推奨です。日本の7.5g・6.5gは、後で見るように「実行できること」を考えて決めた当面の目標です。

日本の目標量は「5gといまの量の中間」

日本人の食事摂取基準(2025年版)は、ナトリウムについて次のように決めています。

  • 推定平均必要量(体に必要な量の目安)は、成人でナトリウム600mg(食塩相当量1.5g)。報告書は、通常の食事で日本人の食塩摂取量が1.5gを下回ることはない、としています
  • 目標量は、WHOがすすめる5gをそのまま目標にすると、いまの食生活で達成できる人がきわめて少ないため、「5g」と「国民健康・栄養調査の摂取量の中央値」の中間の値をもとに決めています

たとえば18〜29歳の男性は、5.00gと摂取量の中央値10.07gの中間が7.54g。これを切りのよい値にして「7.5g未満」です。女性は同じ計算で6.73gとなり「6.5g未満」になります。

つまり日本の目標量は、「健康のための理想の値」ではなく「いまの食生活から一歩近づくための値」です。理想に近い値として示されているのは、WHOの5gのほうです。

1日の食塩(食塩相当量)の目標と日本人の平均を、横棒で並べた図。日本人の平均は2001年12.1g、2024年9.6g(男性10.5g・女性8.9g、国民健康・栄養調査)。日本の目標量は18歳以上の男性7.5g未満・女性6.5g未満(日本人の食事摂取基準2025年版)。健康日本21(第三次)の目標は平均7g。高血圧・慢性腎臓病の重症化予防は6g未満で、日本高血圧学会も6g未満。WHOの推奨は成人5g未満(ナトリウム2,000mg未満、2012年)。推定平均必要量は1.5g(ナトリウム600mg)で、通常の食事で下回ることはない。日本の目標量は、WHOの5gと国民健康・栄養調査の摂取量の中央値の中間をもとに決めた当面の目標で、2024年の平均9.6gは目標7gより約2.6g多い。
図:1日の食塩の目標と日本人の平均(「とりすぎ」の線はどこにある?)(押すと拡大)

日本人はどれくらいとっているか

2001年の12.1gから2024年の9.6gへ

厚生労働省は、毎年「国民健康・栄養調査」で、20歳以上の人の1日の食塩摂取量を調べています(実際には、食べたものを記録してもらい、食品成分表のナトリウムから計算した値です)。

日本人の食塩摂取量の平均値(20歳以上、g/日)468101214200120052010201520192024調査中止健康日本21(第三次)の目標 7gWHO の推奨 5g未満2001年 男性 12.9g2002年 男性 12.8g2003年 男性 12.7g2004年 男性 12.1g2005年 男性 12.4g2006年 男性 12.2g2007年 男性 12.0g2008年 男性 11.9g2009年 男性 11.6g2010年 男性 11.4g2011年 男性 11.4g2012年 男性 11.3g2013年 男性 11.1g2014年 男性 10.9g2015年 男性 11.0g2016年 男性 10.8g2017年 男性 10.8g2018年 男性 11.0g2019年 男性 10.9g2022年 男性 10.5g2023年 男性 10.7g2024年 男性 10.5g男性 12.9男性 10.52001年 総数 12.1g2002年 総数 12.0g2003年 総数 11.7g2004年 総数 11.2g2005年 総数 11.5g2006年 総数 11.2g2007年 総数 11.1g2008年 総数 10.9g2009年 総数 10.7g2010年 総数 10.6g2011年 総数 10.4g2012年 総数 10.4g2013年 総数 10.2g2014年 総数 10.0g2015年 総数 10.0g2016年 総数 9.9g2017年 総数 9.9g2018年 総数 10.1g2019年 総数 10.1g2022年 総数 9.7g2023年 総数 9.8g2024年 総数 9.6g総数 9.62001年 女性 11.5g2002年 女性 11.2g2003年 女性 10.9g2004年 女性 10.5g2005年 女性 10.7g2006年 女性 10.5g2007年 女性 10.3g2008年 女性 10.1g2009年 女性 9.9g2010年 女性 9.8g2011年 女性 9.6g2012年 女性 9.6g2013年 女性 9.4g2014年 女性 9.2g2015年 女性 9.2g2016年 女性 9.2g2017年 女性 9.1g2018年 女性 9.3g2019年 女性 9.3g2022年 女性 9.0g2023年 女性 9.1g2024年 女性 8.9g女性 11.5女性 8.9出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」(平成20年・令和元年・令和5年・令和6年)。2001-2008年は「成人」の値。2012・2016・2024年は全国補正値。2020・2021年は調査中止。

  • 2001年の12.1g(男性12.9g・女性11.5g)から、2024年は9.6g(男性10.5g・女性8.9g)まで減りました。2024年の9.6gは、この12年間でいちばん低い値です
  • ただ、健康日本21(第三次)の目標7gよりは、まだ約2.6g多い状態です
  • 2013年から2023年までの10年間で見ると、男女とも統計的に意味のある増減はありませんでした(令和5年の調査結果)。2000年代は年々下がりましたが、2010年代の後半からはほぼ横ばいです
  • 2020年と2021年は、新型コロナウイルスの影響で調査が中止されました

年代では60歳代、地域では東日本に多い傾向

2024年の調査で、年代別にいちばん多かったのは、男女とも60歳代(男性11.1g、女性9.3g)でした。少なかったのは男性の20歳代(9.9g)、女性の20歳代・30歳代(8.3g)です。

都道府県別(年齢をそろえて計算した値)では、男性は山梨県と秋田県が11.7gで高く、女性は宮城県・長野県・秋田県が9.8gで高い値でした。都道府県を4つの群に分けると、男性では上位の群(平均11.4g)と下位の群(9.6g)の間に約1.7gの差がありました。

数字の読み方 国民健康・栄養調査の食塩は、1日分(日曜・祝日を除く任意の1日)の食事の記録から計算した値です。1日だけの記録なので、一人ひとりの「ふだんの量」とはずれがあります。国全体の平均や、年ごとの変化を見るための数字です。

海外とくらべると日本は多いのか

国別の推定値

WHOは2023年の報告書で、各国の成人の食塩(ナトリウム)摂取量の推定値を並べています。各国の調査をそのまま集めたものではなく、米国の保健指標評価研究所(IHME)が世界の疾病負担研究(2019年)で計算したモデルの推定値です。

国別の食塩摂取量の推定値(成人、g/日、2019年)WHO 推奨 5g未満世界平均 約10.9g中国中国:食塩17.7g(ナトリウム6,954mg)17.7 g(Na 6,954mg)韓国韓国:食塩12.3g(ナトリウム4,854mg)12.3 g(Na 4,854mg)タイタイ:食塩10.8g(ナトリウム4,250mg)10.8 g(Na 4,250mg)日本日本:食塩10.2g(ナトリウム4,027mg)10.2 g(Na 4,027mg)イタリアイタリア:食塩9.7g(ナトリウム3,810mg)9.7 g(Na 3,810mg)カナダカナダ:食塩9.1g(ナトリウム3,575mg)9.1 g(Na 3,575mg)米国米国:食塩8.9g(ナトリウム3,492mg)8.9 g(Na 3,492mg)ドイツドイツ:食塩8.7g(ナトリウム3,410mg)8.7 g(Na 3,410mg)フランスフランス:食塩7.6g(ナトリウム2,976mg)7.6 g(Na 2,976mg)オーストラリアオーストラリア:食塩7.4g(ナトリウム2,920mg)7.4 g(Na 2,920mg)英国英国:食塩7.1g(ナトリウム2,780mg)7.1 g(Na 2,780mg)出典:WHO「Global report on sodium intake reduction」(2023年)Annex 1。IHME(世界の疾病負担研究 2019)のモデル推定。各国の調査とは方法がちがい、日本の国民健康・栄養調査(2019年 10.1g)とも一致しない。世界平均はナトリウム×2.54で換算。

  • 世界平均はナトリウム4,310mg(WHOの本文では食塩10.78g)で、WHOの推奨の2倍以上です。国ごとの推定値は、ナトリウム2,006mgから6,950mgまで幅があります
  • 日本は10.2g(ナトリウム4,027mg)。中国(17.7g)や韓国(12.3g)より少なく、米国(8.9g)、フランス(7.6g)、英国(7.1g)より多い位置です
  • WHOは、とりすぎたナトリウムに関連する死亡を、世界で年間約189万人と推計しています

日本の国民健康・栄養調査の2019年の値は10.1gでした。WHOの表の10.2gとは計算のしかたがちがうので、小さな差は気にしなくてかまいません。

日本人の塩は「しょうゆ・魚・汁物・漬物」から

どこから食塩をとっているかは、国によって大きくちがいます。1996〜1999年に日本・中国・英国・米国の40〜59歳を調べた国際共同研究(INTERMAP)では、次のような結果でした。

国 主な食塩のとり方
日本 しょうゆ(約20%)、加工した魚介類(塩蔵魚・魚卵など、約15%)、汁物(約15%、そのうちみそ汁が9.7%)、漬物(約13%)。この4つで約63%
中国(農村部) 約76%が、家庭で料理するときに加える塩
英国・米国 パン・穀類などの加工食品が大部分(英国95%、米国71%。米国は調べ方の関係で少なめに出ている)

この研究では、日本人の24時間の尿で測ったナトリウムは男性で1日4.49〜5.06g(ナトリウムとして)で、米国(4.14〜4.37g)や英国(3.70g)より多い水準でした(中国北部はさらに多い)。

日本の場合、「料理のときに振る塩」より「しょうゆ・みそ・加工食品に最初から入っている塩」が大きいということです。減塩の工夫が「調味料の量」や「表示を見ること」に向くのは、このためです。

食塩と高血圧・脳卒中:研究で分かっていること

食塩と病気の関係を調べた研究には、いくつか種類があります。

  • ランダム化比較試験:くじ引きで「減塩する人」と「しない人」に分けて比べる。原因と結果を確かめるのに向いている
  • コホート研究(観察研究):たくさんの人の食生活を調べ、何年も追いかけて病気になった人を数える。ほかの生活習慣の影響が混ざることがある
  • メタアナリシス:同じテーマの研究を集めて、結果をまとめて計算し直す

減塩で血圧が下がる:ランダム化比較試験のまとめ

研究 種類 主な結果
He ら 2013(BMJ、コクラン) 4週間以上の試験34件・3,230人のメタアナリシス 食塩を平均約4.4g減らすと、上の血圧が4.18mmHg、下の血圧が2.06mmHg下がった。高血圧の人では上が5.39mmHg、血圧が正常な人でも2.42mmHg下がった
Huang ら 2020(BMJ) 試験133件・12,197人のメタアナリシス 尿中ナトリウム50mmol(食塩約2.9g)減るごとに、上の血圧が1.10mmHg低下。15日以上続けた試験では、短い試験の約2倍下がっていた
Filippini ら 2021(Circulation) 試験85件のメタアナリシス(用量反応) ナトリウムを減らした量に比例して血圧が下がり、高血圧の人で効果が大きかった

「食塩を減らすと血圧が下がる」は、人を対象にした試験で確かめられていることです。 下がり方には個人差があり、もともと血圧が高い人ほど大きく下がる傾向があります。

脳卒中・心臓病:観察研究が中心

血圧の先にある脳卒中・心臓病については、何年も追いかける必要があるため、観察研究が中心です。

研究 種類 主な結果
Strazzullo ら 2009(BMJ) コホート研究13件・177,025人のメタアナリシス 食塩が1日5g多いと、脳卒中のリスクが23%高い。心血管病全体は14%高い(統計的にはぎりぎり意味がない)
Aburto ら 2013(BMJ、WHOの依頼による) 試験37件とコホート研究14件のメタアナリシス ナトリウムの多い人は脳卒中のリスクが24%高かった。全死亡とは意味のある関係がなかった
Takachi ら 2010(日本・JPHC研究) 45〜74歳の約7万7,500人のコホート研究 ナトリウムがいちばん多い群は、いちばん少ない群より循環器病のリスクが19%高い。がん全体とは関係がなかった
Ma ら 2022(NEJM) 米国・欧州の6つのコホート、10,709人(24時間の尿を複数回集めて測定) 尿中ナトリウムが1日1,000mg多いごとに、心血管病のリスクが18%高い。量に比例した関係で、少ない側でリスクが上がる形は見られなかった

「減らしすぎもよくない」という研究もある

一方、17か国の約10万人を調べたPURE研究(O’Donnell ら 2014、NEJM)では、ナトリウムが1日7g以上(食塩約18g以上)の人でリスクが高いだけでなく、3g未満(食塩約7.6g未満)の人でもリスクが高いという「J字型」の結果が出ました。

ただし、この研究は朝1回の尿(スポット尿)から1日の量を推定しています。24時間の尿を複数回集めたMa ら 2022では、少ない側でリスクが上がる形は見られませんでした。測り方によって結果が分かれていて、議論が続いているところです。いずれにしても、日本人の平均(9.6g)は、どちらの研究でも「少なすぎる」側には入りません。

塩をカリウムに置き換える試験

中国の農村部600村・20,995人(脳卒中を経験した人か、60歳以上で高血圧の人)を対象にしたランダム化比較試験(SSaSS、Neal ら 2021、NEJM)では、ふつうの塩のかわりに「塩化ナトリウム75%+塩化カリウム25%」の減塩塩を約4.7年使ってもらいました。

  • 脳卒中は14%少なく、主な心血管の病気は13%少なく、死亡は12%少なかった
  • 心配された高カリウム血症(血液中のカリウムが多すぎる状態)は、増えていなかった

ただし、カリウムを多く含む塩は、腎臓の働きが落ちている人や、カリウムを体にためやすくする薬(カリウム保持性利尿薬など)を使っている人では、高カリウム血症のおそれがあると、国内の医療機関の解説などで注意されています(WHOのファクトシートは、食卓塩を使うならカリウムを含む減塩の代替塩への置き換えを提案していますが、この点の個別の注意は書いていません)。使う前に医師に相談してください。

食塩と胃がん

国立がん研究センターの評価は「ほぼ確実」

国立がん研究センターは、日本人を対象にした研究をもとに、がんの原因ごとに証拠の強さを4段階(確実・ほぼ確実・可能性あり・データ不十分)で評価しています。

要因 胃がんへの影響
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染 確実にリスクが上がる
ピロリ菌の除菌 確実にリスクが下がる
食塩・塩蔵食品 ほぼ確実にリスクが上がる
野菜・果物 胃がんのリスクを下げる「可能性あり」

国立がん研究センターは、日本人のがんのうち、男性の3.0%・女性の1.6%は、減塩することで防げると試算しています。

研究で分かっていること

研究 種類 主な結果
Tsugane ら 2004(日本・JPHC研究) 40〜59歳の約3万9,000人を11年追ったコホート研究 男性では食塩が多いほど胃がんが多かった(女性ははっきりしない)。たらこ・いくらなどの塩蔵魚卵や、塩辛などの塩蔵珍味は男女ともリスクの上昇と関係していた
Shikata ら 2006(日本・久山町研究) 40歳以上の2,476人を14年追ったコホート研究 食塩が1日10g未満の人にくらべ、16g以上の人は胃がんのリスクが約3倍(ハザード比2.98)。ピロリ菌に感染し、萎縮性胃炎もある人で関係がはっきりしていた
Ge ら 2012 観察研究11件のメタアナリシス 塩分の多い人は胃がんのリスクが約2倍(オッズ比2.05)。日本の研究に限ると2.61
Morais ら 2022(StoP研究) 25の症例対照研究・約3万5,000人をまとめた解析 塩辛い味が好きな人(1.59倍)、食卓塩をいつも使う人(1.33倍)でリスクが高い。一方、計算したナトリウムの総量では、統計的に意味のある差はなかった

国際的にも、WHOとFAO(国連食糧農業機関)の合同専門家会議(2003年)が「塩蔵食品と食塩は、おそらく胃がんのリスクを上げる」と結論しています。

しくみについて。 動物や細胞の実験では、濃い塩が胃の粘膜を傷つけて炎症を起こすこと、ピロリ菌がすみつきやすくなること、ピロリ菌の毒素の遺伝子(cagA)の働きが強まることなどが報告されています。人の研究でも、塩とピロリ菌が重なったときに関係がはっきりする結果が出ています(久山町研究)。

塩だけを気にすればよい、ではない 胃がんについては、ピロリ菌の感染が「確実」な原因で、除菌でリスクが下がることも「確実」とされています。国立がん研究センターは、ピロリ菌の検査を一度受けること、胃がん検診を定期的に受けることもすすめています。

ナトリウムと食塩相当量:ラベルの読み方

食塩相当量は「ナトリウム×2.54」

食品の裏面の栄養成分表示には、「ナトリウム」ではなく「食塩相当量」が書かれています。食品表示基準では、ナトリウムの量に2.54をかけた値を「食塩相当量」と呼び、これで表示することになっています。

2.54は、食塩(塩化ナトリウム)の重さとナトリウムの重さの比です。食塩の分子量(約58.5)をナトリウムの原子量(約23)で割ると2.54になります。

ナトリウム 食塩相当量
400mg 約1.0g
1,000mg 2.54g
2,000mg(WHOの推奨の上限) 約5.1g
2,300mg(米国の上限) 約5.8g

海外の商品や、英語の論文・WHOの資料はナトリウム(mg)で書かれていることが多いので、比べるときは2.54をかけて食塩に直します。

食塩相当量には、食塩以外のナトリウムも入る 食塩相当量は、食品に含まれるナトリウムの量から計算した値です。そのため、塩(塩化ナトリウム)だけでなく、グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料の記事)や重曹(炭酸水素ナトリウム)など、ほかの形のナトリウムも合わせた数字になります。

「ナトリウム」から「食塩相当量」へ

2015年4月に食品表示法が施行され、容器包装に入った加工食品には、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム(食塩相当量で表示)の5つを表示することが義務になりました。それまでの経過措置期間は、加工食品で2020年3月31日まででした。

食品表示基準をつくるとき、消費者委員会の資料では「ナトリウムの表示は、消費者になじみが深い『食塩相当量』に代える」と整理されています。いまでも「ナトリウム」の数字を書いてよいのは、ナトリウム塩を加えていない食品で、食塩相当量と並べて書く場合に限られます。

「減塩」「塩分ひかえめ」と書ける条件

「減塩」「塩分○%カット」「食塩無添加」などの表示には、決まりがあります(食品表示基準、東京都のガイドブックで整理)。

表示の種類 例 条件(100gあたり)
含まない 「無塩」「食塩ゼロ」 ナトリウム5mg未満
低い 「低塩」「塩分ひかえめ」 ナトリウム120mg以下(食塩相当量で約0.3g以下)
減らした 「減塩」「塩分○%カット」 比べる食品よりナトリウムが120mg以上少なく、かつ25%以上少ない。みそは15%以上、しょうゆは20%以上でよい特例がある
加えていない 「食塩無添加」 ナトリウム塩を加えていないこと、塩の代わりになる原材料(しょうゆなど)も使っていないことなど

しょうゆには別のルールもあり、「減塩」と書けるのは100gあたりの食塩量が9g以下のものです。

「減塩」は「ふつうの品より少ない」という意味で、少ないという意味ではありません。減塩しょうゆでも100gあたり8g前後の食塩相当量があります。量を比べるときは、表の「減塩」の文字より、栄養成分表示の食塩相当量を見るのが確実です。

調味料ごとの食塩相当量

しょうゆ・みそ・ナンプラー・ソース

文部科学省の食品成分表で、よく使う調味料の100gあたりの食塩相当量をくらべました。

調味料100gあたりの食塩相当量(g)ふつうの品減塩の品ナンプラー(魚醤油)ナンプラー:22.9g22.9うすくちしょうゆうすくちしょうゆ:16.0g16.0こいくちしょうゆこいくちしょうゆ:14.5g14.5赤色辛みそ(米みそ)赤色辛みそ:13.0g13.0淡色辛みそ(米みそ)淡色辛みそ:12.4g12.4オイスターソースオイスターソース:11.4g11.4減塩みそ減塩みそ:10.7g10.7めんつゆ 三倍濃縮めんつゆ 三倍濃縮:9.9g9.9ウスターソースウスターソース:8.5g8.5焼き肉のたれ(推計値)焼き肉のたれ:8.3g8.3こいくちしょうゆ 減塩こいくちしょうゆ 減塩:8.3g8.3ぽん酢しょうゆ 市販品ぽん酢しょうゆ 市販品:7.8g7.8中濃ソース中濃ソース:5.8g5.8トマトケチャップトマトケチャップ:3.1g3.1マヨネーズ 全卵型マヨネーズ 全卵型:1.9g1.9出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。食塩相当量=ナトリウム×2.54。焼き肉のたれは成分表で推計値(かっこ付き)。商品によって値はちがうので、実際は各商品の表示を見る。

  • ナンプラー(22.9g)は、こいくちしょうゆ(14.5g)の約1.6倍です。いしる(21.9g)、しょっつる(24.3g)など、日本の魚醤も同じくらいです
  • うすくちしょうゆ(16.0g)は、こいくちしょうゆ(14.5g)より多い。「うすくち」は色がうすいという意味で、塩分がうすいわけではありません
  • 減塩しょうゆ(8.3g)は、こいくちしょうゆの約57%。減塩みそ(10.7g)は、淡色辛みそ(12.4g)の約86%です
  • ケチャップ(3.1g)やマヨネーズ(1.9g)は、100gあたりでは少なめです。ただし、使う量が多ければその分だけ増えます

食塩1gになる量で見ると、こいくちしょうゆは約6.9g、ナンプラーは約4.4g、淡色辛みそは約8.1gです(100÷食塩相当量で計算)。

塩・塩だれ・顆粒だしは別の桁

粉や粒の調味料は、液体の調味料とは桁がちがいます。

名前 100gあたりの食塩相当量 食塩1gになる量 出典
精製塩(家庭用) 99.6g 約1.0g 食品成分表
食塩 99.5g 約1.0g 食品成分表
並塩 97.3g 約1.0g 食品成分表
セル マラン ド ゲランド ゲランドの塩(顆粒) 93.9g(推定値) 約1.1g 商品の表示
沖縄の海水塩 青い海 91.1g(推定値) 約1.1g 商品の表示
雪塩(パウダータイプ) 72.6g 約1.4g 商品の表示(公式通販の値)
焼肉ザパンチ 塩だれの素 71.1g 約1.4g 商品の表示
顆粒中華だし 47.5g 約2.1g 食品成分表
減塩タイプ食塩(調味料不使用) 45.7g(カリウム25,000mg) 約2.2g 食品成分表
固形ブイヨン 43.2g 約2.3g 食品成分表
顆粒和風だし 40.6g 約2.5g 食品成分表

塩の種類で見ると、海水だけを原材料にした塩でも、食塩相当量は100gあたり70〜90g台です。雪塩は食塩相当量が精製塩の約7割で、ラベルにはマグネシウム(100gあたり3,310mg)などの量も書かれています。

ただ、体に入るナトリウムの量は「どの塩か」より「何g使ったか×食塩相当量」で決まります。「天然塩・海塩だから、たくさん使っても大丈夫」と言える根拠は、今回調べた公的資料にはありませんでした。気になるときは、ラベルの食塩相当量で比べるのが確実です(塩の原材料と工程の表示の読み方は、原材料じてんの「食塩・海水」のページで説明しています)。

塩だれの素の焼肉ザパンチは、中身のほとんどが塩です。1g使うと、食塩相当量は約0.7gになります。液体の焼肉のたれ(成分表の推計値で100gあたり8.3g)とは、作りがまったくちがいます。使う量で食塩相当量が決まるので、振る量を量っておくと計算しやすくなります。

国や自治体がすすめる減塩の工夫

農林水産省や自治体の資料には、次のような工夫が挙がっています。

工夫 内容 資料
はかる 目分量ではなく、計量スプーンなどで量る 船橋市
汁を残す ラーメン・うどんなど、めん類のスープはできるだけ残す さいたま市
かけるより味を確かめてから 卓上の調味料は、味を確かめてから控えめに さいたま市
味のアクセント 酢などの酸味、香辛料、薬味を使う 船橋市
表示を見る 栄養成分表示の食塩相当量を見て、食品や外食を選ぶ さいたま市
腹八分目 食べすぎると食塩の量も増える 船橋市
野菜・果物をとる 食塩のナトリウムはカリウムと一緒に体の外に出る。カリウムは野菜・海藻・いも・果物・牛乳などに多い 農林水産省

日本人の場合、食塩の多くはしょうゆ・みそ・加工食品から来ているので(INTERMAP研究)、「何にどれだけ入っているか」を知ることがいちばんの近道です。汁物は、塩分計で濃さを測ってみると、ふだんの味が数字で分かります。

減塩調味料を選ぶときは表示で比べる

減塩しょうゆや減塩みそは、ふだんの料理を変えずに食塩を減らす方法の一つです。ただ、「減塩」の度合いは商品によってちがうので、栄養成分表示の食塩相当量で比べるのが確実です。原材料も、ふつうのしょうゆと同じ「大豆・小麦・食塩」だけのものから、だしや調味料を加えたものまであります。

減塩食品や無塩の調味料をまとめて探すなら、専門の通販もあります。

カリウムを使った減塩塩(塩化カリウム入りの塩)を選ぶ場合は、前に書いたとおり、腎臓の病気がある人やカリウムを制限されている人は、先に医師に相談してください。

まとめ

論点 分かっていること 証拠の強さ・出典
目標量 日本は男性7.5g未満・女性6.5g未満(高血圧・CKDの重症化予防は6g未満)。WHOは5g未満。日本の値は「5gといまの量の中間」 日本人の食事摂取基準2025年版、WHO 2012年
日本人の摂取量 2001年12.1g → 2024年9.6g。目標7gより約2.6g多く、2013〜2023年は横ばい 国民健康・栄養調査
海外との比較 日本10.2g(推定)。中国・韓国より少なく、米国・英国より多い WHO 2023(IHMEの推定)
日本人の塩の出どころ しょうゆ約20%、魚介加工品・汁物・漬物を合わせて約63% INTERMAP研究
高血圧 減塩で血圧が下がる ランダム化比較試験のメタアナリシス
脳卒中・心臓病 食塩が多いほどリスクが高い傾向。少ない側でリスクが上がるかは研究で分かれる 観察研究のメタアナリシス、代替塩のランダム化比較試験
胃がん 食塩・塩蔵食品で「ほぼ確実」にリスクが上がる。ピロリ菌は「確実」 国立がん研究センター、日本と海外の観察研究
ラベル 食塩相当量=ナトリウム×2.54。塩の種類を問わない。「減塩」は比べた品より少ないという意味 食品表示基準

この記事で紹介したもの:

減塩・無塩の食品の通販(無塩ドットコム)は、減塩調味料を選ぶときは表示で比べるで紹介しています。

「何gからがとりすぎか」に、ひとつの答えはありません。ただ、日本人の平均9.6gは、日本の目標・WHOの推奨のどちらよりも多いことは、国の調査ではっきりしています。まずは、ふだん使うしょうゆ・みそ・たれのラベルで、食塩相当量を一度確かめてみるところから始められます。

参考にした資料

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.01)。