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日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.08

胃がんになりやすい食べ物は? 塩分・ピロリ菌・小麦・焼き魚の焦げを国の評価と論文で確かめる

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胃がんは、日本人に多いがんです。2023年に新たに胃がんと診断された人は約10万5千人、2024年に胃がんで亡くなった人は約3万8千人でした(国立がん研究センター がん統計)。

胃がんと食べ物については、いろいろな話を聞きます。

  • 「胃がんになりやすい食べ物は、しょっぱいもの」
  • 「パンやラーメン(小麦)を食べると胃がんになる」
  • 「たらこ・明太子・塩辛・漬物は胃がんのもと」
  • 「焼き魚の焦げを食べると胃がんになる」
  • 「熱いお茶は胃に悪い」
  • 「緑茶やみそ汁は胃がんを防ぐ」
  • 「日本人に胃がんが多いのは食事のせい」
  • 「若い女性の胃がんが増えている」

この記事では、

  • 胃がんの原因は何か。食べ物の影響は、ほかの原因と比べてどのくらいか
  • 胃がんになりやすい食べ物、なりにくい食べ物は何か。国の評価と、世界の評価は同じか
  • 小麦(パン・麺)で胃がんは増えるのか。国の評価「穀類=可能性あり」の根拠の論文までたどる
  • ラーメン・うどんの「麺」と「汁」では、どちらに塩が多いのか
  • 焼き魚の焦げ、熱い飲みもの、みそ汁、緑茶は
  • 日本人に胃がんが多い理由と、減ってきた理由。若い人・女性の胃がん
  • 食事より大きい対策(ピロリ菌の除菌と胃がん検診)は、どのくらい効くのか

を、国立がん研究センター・世界がん研究基金・国際がん研究機関の評価と、論文・国の統計で確かめます。小麦と大腸がんの関係は 小麦粉とがんの記事、食塩の目標量と減塩の工夫は 食塩摂取量の記事 にまとめています。

この記事は、病気の診断や治療の代わりにはなりません。胃の不調が続くときや、気になる症状があるときは、消化器内科を受診してください。

結論

  • 胃がんのいちばん大きな原因は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)です。国立がん研究センターは「確実」と判定し、除菌でリスクが下がることも「確実」としています。2015年の推計では、胃の出口側(非噴門部)の胃がんの約9割がピロリ菌によるものとされています
  • 食べ物で「ほぼ確実」にリスクを上げるとされているのは、食塩と塩蔵食品です。研究の中心は、たらこ・明太子・塩辛・漬物・塩魚などの塩でつけた食べものです。ただし、世界がん研究基金は「塩蔵食品はおそらく確実」「食塩の総量は結論なし」と、少し違う判定をしています
  • 小麦(パン・麺)で胃がんが増える、とは言えません。国の「穀類=可能性あり」の根拠の論文は5本で、抄録に出てくる穀物は米(ご飯)だけでした。世界の20研究をまとめた解析(2026年)では、精製穀物(白米・パスタ・白パン)が多い人で1.39倍でしたが、アジアの研究だけでは1.13倍で、差ははっきりしませんでした
  • 麺類で気をつけるなら、麺より汁です。小麦粉そのものの塩は0gです。カップ麺1食の塩(4.6〜5.1g)のうち、46〜59%はスープでした。国立がん研究センターも「麺類の汁は全部飲み切らないように」としています
  • 焼き魚の焦げで胃がんになる、という人での証拠は弱いです。国際的な評価の根拠は日本の古い研究3本で、結果もそろっていません。国の評価の項目にもありません。「熱いもの」でリスクが上がるのは、胃ではなく食道です
  • 下げる側では、野菜・果物が「可能性あり」です。緑茶は女性で1日5杯以上の人に胃がんが21%少なかった一方、男性では差がありませんでした。みそ汁は、研究で結果が割れています
  • 日本人の胃がんは減り続けています。年齢をならした死亡率は、1960年の73.1から2024年の9.7へ、約87%下がりました(人口10万あたり)。主な理由は、生まれた年が新しいほどピロリ菌の感染率が低いことと考えられています。20〜30代では、男性と女性の患者数がほぼ同じです
  • 食事より大きいのは、ピロリ菌の除菌と胃がん検診です。食べ物の差は多くが1.1〜1.5倍程度なのに対し、ピロリ菌は、日本の推計で約15倍(感染と萎縮性胃炎の両方がある人を、どちらもない人と比べた値)が使われています。除菌のランダム化比較試験では、胃がんが0.64倍に減りました。国の胃がん検診は50歳以上・2年に1回です

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
減塩の食品(減塩しょうゆ・減塩みそ・塩分を控えたカップ麺など) 汁物・麺類・ふだんの味付けで、食塩を減らしたいとき 減塩の食品を選ぶなら

ピロリ菌の検査・除菌と胃がん検診は、広告ではなく、国の検診の案内と医療機関の受診を 食事より大きい対策:ピロリ菌の除菌と胃がん検診 で紹介しています。

胃がんの原因と食べ物の判定一覧

国立がん研究センターは、日本人の研究をもとに、胃がんの原因を主に「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」「データ不十分」の段階で判定しています(2025年からは新しい区分も加わりました)。2026年5月版の一覧の、胃がんの欄をまとめました。

要因 判定 胃がんとの関係
ピロリ菌の感染 確実にリスクを上げる 胃がんのいちばん大きな原因
喫煙 確実にリスクを上げる 喫煙者は吸わない人の約1.6倍(男性1.8倍・女性1.2倍)
ピロリ菌の除菌 確実にリスクを下げる 除菌した人で胃がんが少ない
食塩・塩蔵食品 ほぼ確実にリスクを上げる たらこ・塩辛・漬物・塩魚などを多くとる人で多い
飲酒(男性) ほぼ確実にリスクを上げる 量が多いほど高い(1.09〜1.29倍)
穀類 可能性あり(上げる) 根拠の論文に出てくる穀物は米(くわしくは後で)
肥満 可能性あり(上げる) 胃の入り口に近い部分(噴門部)のがん
野菜・果物 可能性あり(下げる) 多く食べる人で少ない傾向
緑茶(女性) 可能性あり(下げる) 1日5杯以上で21%少ない
肉・魚・牛乳・乳製品・イソフラボン・ビタミン・脂質・食パターン・糖尿病・受動喫煙・飲酒(女性)・緑茶(男性) データ不十分 判定できるだけの研究がない
大豆・コーヒー・熱い飲食物・食物繊維など 胃がんでは評価していない 熱い飲食物は「食道がん」で、ほぼ確実にリスクを上げる
焼き魚・焦げ 評価の項目にない ―

出典:国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」評価一覧(2026年5月26日版)。

  • 判定は、ときどき見直されています。たとえば「ピロリ菌の除菌=確実に下げる」は2020年11月、「飲酒(男性)=ほぼ確実」は2022年3月に加わりました
  • センター自身が、「食事の要因については、ほとんどの食品・栄養素で、まだデータ不十分」と書いています。日本人どうしでは食生活の差が小さく、食品の影響は小さめに出ている可能性がある、とも説明しています

国と世界で、判定が違うものがある

胃がんと食べ物の評価は、国立がん研究センターのほかに、世界がん研究基金・米国がん研究協会(WCRF/AICR、食事とがんの国際的な評価)と、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)も出しています。同じ食べ物でも、判定が同じとは限りません。

要因 国立がん研究センター WCRF/AICR(2016年、2018年改訂) IARC
食塩・塩蔵食品 ほぼ確実に上げる 塩蔵食品はおそらく確実に上げる。食塩の総量は結論なし アジアの伝統的な漬物、中国式の塩漬け魚は「限定的な証拠」
穀類 可能性あり(上げる) 穀物とその製品は結論なし ―
飲酒 男性でほぼ確実に上げる 1日約45g以上で、おそらく確実に上げる 胃は一覧に載っていない
焼いた肉・魚 評価の項目にない 限定的に示唆(根拠は日本の研究3本) 焦げにできる物質(PhIP など)は「発がん性の可能性がある」(2B)
加工肉 肉はデータ不十分 胃の出口側で限定的に示唆 胃は「限定的な証拠」(大腸では十分)
野菜・果物 可能性あり(下げる) 果物が少ないと上げる側で限定的に示唆。野菜は結論なし ―
緑茶 女性で可能性あり(下げる) 結論なし ―

WCRF/AICR は、穀物と胃がんについて「2007年の報告のあと新しい証拠がなく、結論なしのまま」と書いています。「小麦で胃がん」という話の出どころになりやすい「穀類=可能性あり」は、日本の評価だけの判定です。

胃がんの原因は? いちばん大きいのはピロリ菌

ピロリ菌は「確実」、除菌も「確実」

ピロリ菌は、胃の粘膜にすみつく細菌です。国際がん研究機関は「ヒトに対して発がん性がある」(グループ1)に分類し、国立がん研究センターは「確実にリスクを上げる」と判定しています。

国立がん研究センターによると、

  • 日本のある研究では、胃がんになった人は、ならなかった人に比べて、ピロリ菌に感染している割合が約5倍でした
  • 感染の多くは、おおむね5歳ごろまでに起きると考えられています。家族で箸やスプーンを共用したり、口移しで食べものを与えたりすることが、主な経路とされています
  • 戦後の衛生環境の改善で、若い世代の感染率は大きく下がりました(生まれた年で感染率が違う)

日本の胃がんの約9割はピロリ菌によると推計

国立がん研究センターなどの研究者は、2015年の日本のがんのうち、それぞれの原因によるものがどれだけあるかを推計しています(Lin ら 2021年)。

  • 胃の出口側(非噴門部)の胃がんでは、男性の89%・女性の90%がピロリ菌によるものと推計されました
  • 計算には、胃の出口側のがんで15倍(ピロリ菌の感染と萎縮性胃炎の両方がある人を、どちらもない人と比べた日本のメタ解析の値)、入り口側(噴門部)で2倍という相対リスクが使われています

「約9割」は、胃の出口側のがんについての推計です。胃がん全体の割合ではない点に注意してください。

食べ物の影響は「1.1〜1.5倍」、ピロリ菌(萎縮性胃炎も)は「約15倍」

胃がんの要因は「何倍」か:ピロリ菌と食事は桁が違う1倍が「差なし」。右に行くほどリスクが高い側、左は低い側(対数目盛り)ピロリ菌上げる側下げる側有意差なし0.5倍1倍2倍5倍10倍20倍ピロリ菌の感染+萎縮性胃炎非噴門部。どちらもない人と比べた値ピロリ菌の感染+萎縮性胃炎:15倍(非噴門部。どちらもない人と比べた値)15倍喫煙(男性)日本の研究のメタ解析喫煙(男性):1.8倍(日本の研究のメタ解析)1.8倍胃がんの家族歴アジア12コホート胃がんの家族歴:1.44倍(アジア12コホート)1.44倍塩魚が多い(男性)JPHC、最多と最少の5分の1塩魚が多い(男性):1.43倍(JPHC、最多と最少の5分の1)1.43倍精製穀物が多いStoP、症例対照20本、多い3分の1精製穀物が多い:1.39倍(StoP、症例対照20本、多い3分の1)1.39倍塩辛い味が好きJACC塩辛い味が好き:1.31倍(JACC)1.31倍飲酒 1日92g以上(男性)日本の6コホート飲酒 1日92g以上(男性):1.29倍(日本の6コホート)1.29倍精製穀物(エネルギーで調整)StoP のうち11研究精製穀物(エネルギーで調整):1.21倍(StoP のうち11研究)1.21倍精製穀物(アジアの4研究)StoP。有意差なし精製穀物(アジアの4研究):1.13倍(StoP。有意差なし)1.13倍全粒穀物が多いStoP、中央値以上全粒穀物が多い:0.86倍(StoP、中央値以上)0.86倍緑茶 1日5杯以上(女性)日本の6コホート緑茶 1日5杯以上(女性):0.79倍(日本の6コホート)0.79倍ピロリ菌の除菌健康な感染者、RCT 8本ピロリ菌の除菌:0.64倍(健康な感染者、RCT 8本)0.64倍追跡研究・症例対照研究・ランダム化比較試験(RCT)の値を並べた目安。何と何を比べたか(最多と最少、喫煙者と非喫煙者など)は研究ごとに違う。ピロリ菌の15倍は、感染と萎縮性胃炎の両方がある人を、どちらもない人と比べた日本のメタ解析の値。Lin 2021 が、胃がんのうちピロリ菌による割合を推計するときに使った(推計に使われた値)。出典:Lin 2021、国立がん研究センター(喫煙・家族歴・飲酒・緑茶)、Hirabayashi 2024、Umesawa 2016、Turati 2026(StoP)、Ford 2025。くわしくは本文の表。
図:胃がんの要因ごとに、リスクが何倍になるか(Lin 2021、国立がん研究センターの評価ページ、Hirabayashi 2024、Umesawa 2016、Turati 2026、Ford 2025 をもとにウラヨミで作成。研究の種類と比べ方がそろっていないので目安)

研究で出てきた「何倍か」を並べると、食べ物の差の多くは1.1〜1.5倍の範囲です。ピロリ菌の約15倍(感染と萎縮性胃炎の両方がある人を、どちらもない人と比べた値)とは、桁が違います。

要因 何倍か 研究
ピロリ菌の感染+萎縮性胃炎(胃の出口側) 約15倍 両方がある人を、どちらもない人と比べた日本のメタ解析の値。推計に使われた値(Lin 2021)
喫煙 1.6倍(男性1.8・女性1.2) 日本の研究のメタ解析(追跡研究10・症例対照研究16)
胃がんの家族歴 1.44倍 アジアの12の追跡研究、約55万人
塩魚を多く食べる 男性1.43倍・女性1.33倍 日本の追跡研究(JPHC、約9万人)
精製穀物を多く食べる 1.39倍(アジアだけでは1.13倍で有意差なし) 世界の症例対照研究20本の統合解析(StoP)
飲酒(男性、1日エタノール92g以上) 1.29倍 日本の6つの追跡研究、約25.6万人
緑茶(女性、1日5杯以上) 0.79倍 日本の6つの追跡研究、約20万人
ピロリ菌の除菌 0.64倍 ランダム化比較試験8本のメタ解析(Ford 2025)

言葉の説明です。

  • 追跡研究(コホート研究):健康な人の食事などを先に調べ、何年も追いかけて、病気になった人を数える研究
  • 症例対照研究:病気になった人と、なっていない人に、昔の食事を思い出して答えてもらい比べる研究。思い出し方の偏りが出やすい
  • ランダム化比較試験(RCT):くじ引きでグループを分けて、片方にだけ治療などをする試験。原因と結果を確かめる力がいちばん強い

なお、体格(BMI)は、やせすぎ(18.5未満)で15%、太りすぎ(27.5以上)で12%高いという、アジアの研究のまとめがあります(約54万人)。この解析では、高い BMI の影響は国の判定の噴門部ではなく胃の出口側で見られ、ピロリ菌は考慮されていません。糖尿病で15%高いという結果もありますが、国の判定は「データ不十分」のままです。

胃がんになりやすい食べ物は? 塩分と塩蔵食品

「ほぼ確実」なのは、塩でつけた食べもの

国が「ほぼ確実」としているのは、食塩と塩蔵食品(塩でつけて保存した食べもの)です。日本の研究で関係が見られたのは、次のような食べものです。

研究 対象 分かったこと
JPHC 研究(Tsugane 2004、国立がん研究センターの紹介) 日本の追跡研究 男性で食塩が多いほど多い。男女とも、いくら・塩辛・練りうになど塩分の濃い食品を多くとる人で多い傾向
JPHC 研究(Takachi 2010) 日本の追跡研究 漬物・塩魚・塩蔵魚卵などの塩蔵食品を多くとる人で、がん全体と胃がんが多い
JPHC 研究(Hirabayashi 2024) 約9万人を平均15年、胃がん2,701人 塩魚を最も多く食べる5分の1の人は、最も少ない5分の1の人より、男性1.43倍・女性1.33倍
JACC 研究(Umesawa 2016) 約4万人を約14年、胃がん787人 塩辛い味がとても好きな人は1.31倍。みそ汁1日3杯で1.67倍、4杯以上で1.64倍
韓国の研究と統合解析(Yoo 2020) 韓国の追跡研究2つ+メタ解析 漬物1日40gごとに1.15倍

Hirabayashi 2024 では、ピロリ菌の感染と萎縮性胃炎(ピロリ菌などで胃の粘膜がやせた状態)を考えに入れると、関係は弱まりました。塩とピロリ菌は、重なって働いている可能性があります。動物や細胞の実験で分かっている、塩が胃の粘膜を傷つけるしくみは 食塩摂取量の記事 にまとめています。

たらこ・明太子・漬物の塩はどのくらい?

文部科学省の日本食品標準成分表から、研究で名前が出てくる食べものの食塩相当量(100gあたり)を抜き出しました。

食べもの 食塩相当量(g/100g)
からしめんたいこ 5.6
たらこ(生) 4.6
すじこ 4.8
梅干し(塩漬) 18.2
きゅうりのぬかみそ漬 5.3
たくあん漬(塩押しだいこん漬) 3.3
はくさいのキムチ 2.9
はくさいの塩漬 2.1
塩ざけ 1.8
まあじの開き干し(生) 1.7
こいくちしょうゆ 14.5
米みそ(淡色辛みそ) 12.4

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。1回に食べる量は100gより少ないことが多いので、目安として見てください。

「食塩の総量」より「塩蔵食品」

世界がん研究基金(WCRF/AICR)は、塩蔵食品は「おそらく確実」に胃がんを増やすとする一方、食塩の総量や、食卓で加える塩は「結論なし」としています。世界25の症例対照研究をまとめた解析(StoP)でも、塩辛い味が好きな人では多かったのに対し、計算したナトリウムの総量では差がはっきりしませんでした(くわしくは 食塩摂取量の記事)。

つまり、研究で目立つのは「塩全体」より「塩でつけた食べもの」です。ただし、塩蔵食品を多くとる人は食塩も多くとっているので、どちらが原因かを完全に切り分けることはできていません。

小麦・パン・麺は胃がんを増やす?

国立がん研究センターは、穀類と胃がんの関係を「可能性あり(リスクを上げる)」と判定している。その根拠になった論文5本を、抄録で確かめた表。Kato 1992(追跡研究、胃がん45人)では米・漬物・塩辛やたらこが多い傾向があったが、統計的な差はなかった。Tajima 1985(症例対照研究、93人)では、塩辛い味が好きな人で2.60倍、洋風の朝食をとる人は少ない側だった(0.50倍、有意差なし)。Kono 1988とIto 2003は、抄録に穀物の記載がない。Machida-Montani 2004(胃の出口側のがん122人、ピロリ菌の感染を調整)では、米を多く食べる人で2.5倍だった。穀物の名前が出てくるのは米だけで、小麦・パン・麺をリスクとした論文はなかった。ただし本文は確かめておらず、米と塩の影響は切り分けにくい。世界がん研究基金は、穀物を「結論なし」としている。
図:国の「穀類=可能性あり」の根拠になった論文5本と、抄録に出てくる穀物(国立がん研究センター「評価対象文献リスト」、各論文の抄録、WCRF/AICR をもとに作成)(押すと拡大)

国の「穀類=可能性あり」の根拠は5本、出てくる穀物は米

国立がん研究センターは、「穀類」と胃がんを「可能性あり(リスクを上げる)」と判定しています。この判定の根拠になった論文を、センターの文献検索でたどると、5本でした。

論文 研究の種類・人数 抄録で分かる穀物の話
Kato ら 1992 追跡研究。愛知県で胃の内視鏡を受けた3,914人を平均4.4年、胃がん45人 胃がんになった人は、たばこ・酒・米・漬物・塩辛やたらこが多い傾向。統計的な差はなし
Tajima ら 1985 症例対照研究。名古屋、胃がん93人 塩辛い味(白菜漬け・干物)が好きな人で2.60倍。洋風の朝食をとる人は胃がんが少ない側(0.50倍、有意差なし)
Kono ら 1988 症例対照研究。北九州、胃がん139人 抄録に穀物の記載なし。果物で低く、喫煙で高い
Ito ら 2003 症例対照研究。愛知、女性の胃がん508人 抄録に穀物の記載なし。野菜・果物・魚・大豆製品で低い
Machida-Montani ら 2004 症例対照研究。長野、胃の出口側のがん122人。ピロリ菌の感染を調整 米を多く食べる人で2.5倍(95%信頼区間 1.0〜6.1)。みそ汁2.1倍(有意差なし)

出典:国立がん研究センター「評価対象文献リスト」(要因=穀類、がん=胃がん)、各論文の抄録(PubMed)。

抄録で確かめられる範囲では、5本のうち穀物の名前が出てくるのは「米」だけで、小麦・パン・麺をリスクとした論文はありませんでした。むしろ、パンなどの洋風の朝食は、胃がんが少ない側に出ています。

ただし、注意点があります。

  • 5本のうち、本文まで確かめられたものはありません(抄録だけ)。本文の表に、ほかの穀物の項目がある可能性は残ります
  • 米は、漬物や塩魚などの塩辛いおかずと一緒に食べることが多く、米そのものの影響と塩の影響を切り分けるのは難しいです。日本の追跡研究(JPHC)の論文も、この点に触れています
  • 「穀類=可能性あり」は、「小麦=可能性あり」という意味ではありません

世界の研究のまとめ:精製穀物で1.39倍、アジアでは差がはっきりしない

2026年に、胃がんと穀物について、いちばん大きな解析が発表されました。世界の胃がん研究のグループ「StoP プロジェクト」の Turati らの解析です。

  • 対象:症例対照研究20本(欧州8、アジア4=中国3・日本1、北米2、中南米6)。胃がん7,943人、胃がんでない人19,729人
  • 「精製穀物」は、白米・パスタ・白パンなどを合計したものです。小麦だけ、米だけの結果は出していません
  • 食べる量で3つのグループに分け、いちばん多いグループといちばん少ないグループを比べました
  • 資金はイタリアがん研究協会など。著者は利益相反なしと申告しています
条件 精製穀物がいちばん多い3分の1
全体(20研究) 1.39倍
ケーキ・クッキーなど穀物のお菓子も含めると(17研究) 1.52倍
総エネルギー量(食べた量の合計)で調整できた11研究 1.21倍
ピロリ菌の感染も調整できた10研究 1.39倍
欧州 1.34倍
アジア(中国3・日本1) 1.13倍(有意差なし)
米州 1.54倍
入院患者を比べる相手にした研究 1.53倍
地域の住民を比べる相手にした研究 1.30倍

この表から分かることは、次のとおりです。

  • 食べた量の合計で調整すると、1.39倍が1.21倍に小さくなりました。精製穀物が多い人は、食べる量そのものが多い可能性があります
  • アジアの4研究では、精製穀物(主食だけ)で差がはっきりしませんでした。ただし、お菓子を含めると、アジア(3研究)でも1.38倍で、有意な差がありました
  • 比べる相手を入院患者にした研究で強く、地域の住民にした研究で弱く出ました。研究のやり方で数字が変わることを示しています
  • 塩・野菜・果物・喫煙・飲酒は、データのある研究で調整してあります(塩は20本中17本)。著者は「精製穀物には、エネルギー量だけでは説明できない役割がある可能性」と考察していますが、症例対照研究なので、思い出し方の偏りの可能性も書いています
  • 著者はまた、精製穀物を多く食べる人の食事は、全粒穀物・食物繊維・野菜・果物が少なくなりやすいこと、全粒穀物と精製穀物は「片方が増えれば片方が減る」関係にあることも挙げています。精製穀物の数字には、食事全体の違いが混ざっている可能性があります

「精製穀物で36%多い」の元の論文

ウラヨミの 小麦粉とがんの記事 でも紹介した「精製穀物が多い人で胃がんが36%多い」は、中国の研究者による2020年のメタ解析(Wang ら)の数字です。

  • 精製穀物を週1〜2回食べる人で1.28倍、週3回以上で1.63倍でした
  • 含まれる研究の数は、紹介する論文によって16本とも18本とも書かれ、食い違っています。抄録からは、米か小麦かの区別も、塩の調整の有無も読み取れませんでした
  • 別のメタ解析(Xu ら 2019、11研究)では、穀物全体では胃がんとの関係はありませんでした(1.11倍、有意差なし)。精製穀物で1.65倍という結果は、研究3本だけからのものです
  • 2025年のアンブレラレビュー(Kim ら、メタ解析を集めた研究)は、既存のメタ解析を計算し直して精製穀物で1.36倍とし、アジアに限ると「炭水化物の量」が関係していた、とまとめています

全粒穀物は少ない側、ただし追跡研究でははっきりしない

全粒穀物(玄米・全粒粉のパンなど)は、胃がんが少ない側に出ています。

  • メタ解析(Zhang ら 2020、11研究):多く食べる人で0.64倍。ただし症例対照研究では0.55倍、追跡研究では有意差なし
  • StoP(2026年):全粒穀物を中央値以上食べる人で0.86倍。計算のしかたを変えると0.87倍で、有意差がなくなりました
  • 全粒穀物の研究をまとめた論文(Gaesser 2020)は「全粒穀物で13〜39%少ない」としていますが、米国製パン協会の資金で、著者は穀物業界の団体の科学顧問でした

全粒粉と大腸がんの関係、国産の全粒粉の選び方は 小麦粉とがんの記事 にまとめています。

日本の追跡研究では、小麦で胃がんは増えていない

日本の追跡研究で、主食と胃がんを調べたものを並べます。

研究 対象 分かったこと
JACC 研究(Tokui ら 2005) 日本の追跡研究(胃がんの死亡) 米の量(いまと30代のころ)と胃がんに関係なし。洋風の朝食(パンなど)をとる男性で胃がん死亡が約半分(0.49倍)。茶がゆの朝食の男性で1.50倍
JPHC 研究(Cai ら 2022) 約9万人を17年 炭水化物の少ない食事のスコアが高い人で、胃がんが0.81倍。日本人の炭水化物の多くは米
JPHC 研究(Katagiri ら 2021) 約9.2万人、胃がん2,228人 食物繊維の総量と胃がんに関係なし
都道府県の比較(Hara ら 1984) 46都道府県の統計 胃がんの死亡と関係したのは、生魚・塩干魚・塩・特級酒。パンは結腸がんの側に出て、胃がんの側には出なかった
  • JACC 研究の「洋風朝食で0.49倍」は、年齢だけを調整した結果です。パンが胃を守るというより、和食の朝食(みそ汁・漬物・塩魚など)との違いが出ている可能性があります
  • 日本で、小麦・パン・ラーメン・うどんを別々の項目にして胃がんとの関係を追いかけた研究は、今回の検索では見つかりませんでした

アジアでは、中国・上海の症例対照研究(Ji ら 1998、胃がん1,124人)で、炭水化物の多い人に胃がんが多く(男性1.5倍・女性1.9倍)、麺・パンをよく食べる人でも増える傾向がありました。ただし、麺・パンの結果は、統計的に意味のある差には届いていません(女性は p=0.05 で境界)。

小麦について、言えること・言えないこと

言えること 言えないこと
国の「穀類=可能性あり」の根拠の抄録に出てくる穀物は米 「国が小麦で胃がんになると認めている」
世界の症例対照研究では、白米・パスタ・白パンを合わせた精製穀物が多い人で1.2〜1.4倍 「小麦そのもの」が胃がんを増やす(米・パン・パスタ・お菓子・食べすぎを切り分けていない)
アジアの研究だけでは、精製穀物(主食)で差がはっきりしない 「パンをやめれば胃がんが防げる」
全粒穀物は、少ない側に出る研究が多い(主に症例対照研究) 「全粒粉を食べれば胃がんを防げる」
日本の追跡研究では、小麦・パンで胃がんが増えたという結果は見当たらない ―

小麦で起きるアレルギーやセリアック病などは 小麦で起きる病気の記事、「小麦は体に悪い」という説の検証は 小麦は体に悪い説の記事 にまとめています。

ラーメン・うどんで胃がんになる? 塩は麺より汁

麺類の食塩相当量(100gあたり)が、作る段階でどう変わるかを示した流れ図。1:小麦粉(薄力粉・強力粉・全粒粉)は0g。2:作るときに塩が入り、うどん生2.5g、干しうどん乾4.3g、手延そうめん乾5.8g、中華めん生1.0g。3:ゆでると塩の多くが湯に出て、うどん0.3g、干しうどん0.5g、手延そうめん0.3g、中華めん0.2gになる。スパゲッティは逆で、1.5%の塩水でゆでると0gから1.2gになる。4:汁・スープにも塩が入り、めんつゆ(ストレート)は3.3g。下の段はカップヌードル1食4.6gの内訳で、めん・かやく2.5g、スープ2.1g(46%)。どん兵衛 きつねうどんのスープは2.7g(57%)と3.0g(59%)。1食で1日の目標量の6〜8割になる。国立がん研究センターは、麺類の汁を全部飲み切らないよう勧めている。
図:麺類の塩はどこから入るか(文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」、日清食品 公式商品ページ、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、国立がん研究センター「日本人のためのがん予防法」をもとに作成)(押すと拡大)

小麦粉の塩は0g

小麦粉そのものには、塩は入っていません。塩が入るのは、麺やパンを作るときと、汁・スープです。

食べもの(100gあたり) 食塩相当量(g)
小麦粉(薄力粉・強力粉・全粒粉) 0
ご飯(精白米) 0
うどん 生 → ゆで 2.5 → 0.3
干しうどん 乾 → ゆで 4.3 → 0.5
手延そうめん 乾 → ゆで 5.8 → 0.3
中華めん 生 → ゆで 1.0 → 0.2
干しそば 乾 → ゆで 2.2 → 0.1
スパゲッティ 乾 → ゆで 0 → 1.2(1.5%の塩水でゆでた場合)
食パン(角形) 1.2
フランスパン 1.6
全粒粉パン 1.0
めんつゆ(ストレート) 3.3

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。

  • 生や乾燥の麺には作るときに塩が入りますが、ゆでると多くが湯に出ていきます。ゆでうどんは100gあたり0.3g、ゆでた中華めんは0.2gです
  • パスタは逆で、塩を入れた湯でゆでると、ゆでたあとのほうが塩が多くなります
  • パンは、小麦粉に塩を入れて焼くので、100gあたり1〜1.6gあります。食パン6枚切り1枚を約60gとすると、約0.7gです(ウラヨミの計算)

ウラヨミに載っているゆで麺でも、「太鼓判」中華そば の麺の食塩相当量は、1食130gで0.1〜0.5gでした(パッケージの表示)。

カップ麺1食の塩、半分前後はスープ

カップ麺1食の塩、半分前後はスープ1食あたりの食塩相当量(g)。メーカーの表示めん・かやくスープ内訳の表示なし(合計)0g2g4g6g8gWHO 5g女性 6.5g男性 7.5gカップヌードル78gカップヌードル めん・かやく:2.5gカップヌードル スープ:2.1g2.52.1計4.6g(スープ46%)どん兵衛 きつねうどん(東日本向け)96gどん兵衛 きつねうどん(東日本向け) めん・かやく:2.0gどん兵衛 きつねうどん(東日本向け) スープ:2.7g2.02.7計4.7g(スープ57%)どん兵衛 きつねうどん(西日本向け)95gどん兵衛 きつねうどん(西日本向け) めん・かやく:2.1gどん兵衛 きつねうどん(西日本向け) スープ:3.0g2.13.0計5.1g(スープ59%)カップヌードルPRO 塩分控えめ75gカップヌードルPRO 塩分控えめ めん・かやく:1.5gカップヌードルPRO 塩分控えめ スープ:1.6g1.51.6計3.1g(スープ52%)日清デカうま 油そば(汁なし)157g。内訳の表示なし日清デカうま 油そば(汁なし):6.2g6.2g(たれは全部口に入る)ゆでた中華めん(麺だけ)太鼓判 中華そば 1食130gゆでた中華めん(麺だけ):0.5g0.1〜0.5g「めん・かやく」の塩の一部は調理中にスープへ溶け出す。スープを全部残すと、口に入る塩は「めん・かやく」の数字より少なくなる(どれだけ減るかはメーカーの表示に無い)。ゆでた麺そのものの塩は少ない(成分表100gあたり:ゆでうどん0.3g、ゆで中華めん0.2g、小麦粉0g)。目標量:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、WHO。出典:日清食品 公式商品ページ(2026年10月確認)、シマダヤ「太鼓判」中華そばのパッケージ表示。
図:麺類1食の食塩相当量の内訳(日清食品の公式商品ページ、2026年10月確認。シマダヤ「太鼓判」中華そばのパッケージ表示)と、1日の目標量(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、WHO)

カップ麺は、栄養成分表示で「めん・かやく」と「スープ」の食塩を分けて書いているものがあります。日清食品の公式の表示から計算しました。

1食 食塩相当量 めん・かやく スープ スープの割合
カップヌードル(78g) 4.6g 2.5g 2.1g 46%
どん兵衛 きつねうどん(東日本向け、96g) 4.7g 2.0g 2.7g 57%
どん兵衛 きつねうどん(西日本向け、95g) 5.1g 2.1g 3.0g 59%
カップヌードルPRO 塩分控えめ(75g) 3.1g 1.5g 1.6g 52%

出典:日清食品 公式商品ページ(2026年10月8日確認)。スープの割合はウラヨミの計算。

  • カップ麺1食で、1日の目標量(男性7.5g未満・女性6.5g未満)の6〜8割になります(塩分控えめタイプを除く)。カップヌードル1食4.6gは、男性の目標量の61%、女性の71%、WHO の目標(5g未満)の92%です
  • どん兵衛は、西日本向けのほうがスープの塩が0.3g多い表示でした(東2.7g・西3.0g)
  • スープの割合は46〜59%で、塩の半分前後はスープに入っています

汁のない麺は、たれをそのまま食べることになります。たとえば 日清デカうま 油そば は1食6.2gでした(メーカーの表示。内訳の表示はありません)。

麺つゆも、濃縮タイプは塩が多めです。追いがつおつゆ2倍 は、薄める前の100gあたり5.7gでした(表示どおり2倍に薄めると、100gあたり約2.9g。ウラヨミの計算)。つけ汁を全部飲むことは少なくても、かけうどん・かけそばのように汁ごと食べる料理では、汁の量がそのまま塩の量になります。

汁を残すと、どれだけ減る?

国立がん研究センターは、胃がんの予防として「汁物や麺類の汁は全部飲み切らないように」と書いています。

ただし、汁を残したときに減る量は、表示からは正確に計算できません。

  • 「めん・かやく」の塩の一部は、お湯を注いだあとスープに溶け出します。逆に、麺はスープを吸います
  • 成分表には、カップ麺の「スープを残した調理後のめん」の値(100gあたり1.1g)がありますが、1食の麺の重さが分からないので、1食あたりには直せませんでした
  • 店のラーメン・うどん1杯の食塩量について、国などがまとめた信頼できるデータは見つかりませんでした

それでも、スープの塩が1食の半分前後を占めることは、表示から確かめられます。

「麺類で胃がん」の研究は、汁を含んでいる

麺類と胃がんを直接調べた研究は少なく、見つかったのは韓国の症例対照研究です(Kwak ら 2021年)。

  • 対象:胃がんの人と、そうでない人の307組
  • 結果:麺・餃子類(汁ものを含む)を多く食べる3分の1の人で1.65倍。ピロリ菌の感染・エネルギー量・喫煙・飲酒を調整したあとの値です。お酒を飲む人に限ると2.00倍でした
  • 一方で、同じ研究でスープ・チゲ(鍋)類は関係なしでした
  • 著者は、韓国の人に「麺を食べるときの汁を減らす」ことを提案しています

麺・餃子類のどの部分(麺・汁・具)が関係しているのかは、この研究では分かりません。「小麦の麺が原因」とも「汁が原因」とも、まだ決まっていません。はっきりしているのは、汁に塩が多いことです。

減塩の食品を選ぶなら

食塩を減らす具体的な工夫(はかる・汁を残す・酸味や薬味を使うなど)は、食塩摂取量の記事 にまとめています。

胃がんについて国が「ほぼ確実」としているのは、食塩と塩蔵食品です。汁物・麺つゆ・しょうゆなどで毎日の塩を減らしたいときは、食塩相当量を表示で比べられる減塩の食品があります。ただし、減塩の食品を使って胃がんが減ることを直接確かめた研究は、見つかっていません。

焼き魚の焦げは胃がんの原因?

「焼き魚の焦げで胃がんになる」は、人での証拠が弱い話です。

肉や魚を高温で焼くと、ヘテロサイクリックアミン(HCA)という物質ができます。細菌の試験で遺伝子に変化を起こし、動物ではがんを起こすことが分かっています。国際がん研究機関は、PhIP・MeIQ・MeIQx などを「ヒトに対して発がん性がある可能性」(グループ2B)に分類しています(1993年)。

一方、人の研究では、

研究・評価 分かったこと
WCRF/AICR(2016年) 焼いた肉・魚は「限定的に示唆」。根拠は日本の研究3本だけで、焼き魚で胃がんの死亡1.7倍の研究と、0.84倍(差なし、1,270人)の研究に分かれた。焼き肉で2.27倍の研究は死亡57人。メタ解析はできなかった
Kono ら 1988(北九州の症例対照研究) 焼き魚(生・干物・塩魚)と胃がんに関係なし
Kobayashi ら 2009(長野の症例対照研究、胃がん149人) 食事からとる HCA の量と胃がんに関係なし(ピロリ菌の感染なども調整)
国立がん研究センター 焼き魚・焦げは評価の項目にない

国立がん研究センターの研究者のまとめ(Iwasaki・Tsugane 2021)によると、

  • 日本人が食事からとる HCA は比較的少なく、本土では半分以上が魚からでした
  • HCA は魚の皮に多く含まれていました
  • 日本で HCA とがんを調べた研究はまだ4本だけで、胃がんでは関係が見られていません
焼いた魚(100gあたり) 皮の PhIP 身の PhIP
塩魚 700ng 37ng
さけ 593ng 29ng
干物 368ng 52ng
あじ・いわし 147ng 8ng
さんま・さば 160ng 28ng
うなぎ 11ng 15ng

出典:Iwasaki・Tsugane 2021 の表1(もとは Kobayashi ら 2002 の分析)。塩魚はほっけ、干物はあじの開き干しを測った値。PhIP は HCA の一種。1ng は10億分の1g。

皮の焦げに HCA が集まっているのは確かですが、その量で人の胃がんが増えることは示されていません。

気になる人ができることとして、肉の焦げの物質は、焼く前に電子レンジで少し加熱しておくと大きく減ったという実験があります(電子レンジの記事)。なお、2011年の「がんを防ぐための新12か条」には、焦げについての項目はありません。古い12か条に「焦げた部分は避ける」があったという話は、今回、原文を確かめられませんでした。

熱いものは胃がんになる? それは食道がんの話

「熱い飲みもの・食べものでリスクが上がる」とされているのは、胃ではなく食道です。

  • 国立がん研究センター:熱い飲食物は食道がんを「ほぼ確実」に増やす。胃がんでは評価していない
  • 国際がん研究機関:65℃を超える非常に熱い飲みものは、食道のがん(扁平上皮がん)で「おそらく発がん性がある」(グループ2A)
  • 世界がん研究基金:南米で非常に熱くして飲むマテ茶は、食道がんを「おそらく確実」に増やす。原因はお茶の成分ではなく、熱で食道の粘膜が傷つくことと説明されています

国立がん研究センターは「熱い飲み物や食べ物は冷ましてからとる」ことを勧めています。これは食道を守るための推奨です。

なお、緑茶と胃がんの日本の研究では、女性で胃の下部のがんは少なかったのに、胃の上部(食道に近い側)では差が出ませんでした。国立がん研究センターは、その理由の一つとして、温度の高い飲みものが胃の上部に影響し、緑茶の効果を打ち消した可能性に触れています。ただし、これは確かめられた話ではありません。

胃がんを防ぐ食べ物は? 野菜・果物・緑茶

野菜・果物は「可能性あり」

国は、野菜と果物が胃がんを減らすことを「可能性あり」と判定しています。

  • 日本の4つの追跡研究をまとめた約19万人の解析では、平均約11年で2,995人が胃がんになりました。男性では、野菜全体を最も多く食べる人で、胃の出口側のがんが0.78倍、緑黄色野菜で0.81倍でした
  • この解析では、ピロリ菌の感染は調べられていません
  • 世界がん研究基金は「果物が少ないとリスクが上がる」を限定的に示唆とし、野菜は2007年の評価から格下げして「結論なし」としています

緑茶は女性で「可能性あり」

緑茶は、女性でだけ、胃がんが少ない結果が出ています。

  • 日本の6つの追跡研究、約20万人のまとめ(2009年):女性は1日5杯以上で、1杯未満の人より21%少ない(胃の出口側では30%少ない)。男性では関係なし
  • この研究では、米飯・みそ汁・漬物・喫煙・飲酒などの違いを調整しましたが、ピロリ菌の感染は調べられていません
  • 国の判定は、2009年に一度「ほぼ確実」にされたあと、2012年の見直しで「可能性あり」になりました。世界がん研究基金は「結論なし」です

ビタミンC・辛いもの

  • ビタミンC:世界の症例対照研究14本のまとめ(StoP、Sassano 2024)で、食事からとるビタミンCが最も多い4分の1の人は0.64倍でしたが、野菜・果物の量で調整すると0.85倍に小さくなりました。調べたのは食事からのビタミンCで、サプリメントではありません。国の判定は、ビタミンは「データ不十分」です
  • 辛いもの:世界がん研究基金は、唐辛子を2007年の評価から格下げして「結論なし」としています。メタ解析を集めた研究では、辛いものと胃がんに関係が出ていますが、著者は健康への影響ははっきりしないとしています。唐辛子の話は 唐辛子とカプサイシンの記事 にまとめています

みそ汁は胃がんに悪い? 良い?

みそ汁は、研究によって結果が割れています。「胃がんを防ぐ」とも「胃がんの原因」とも言い切れません。

研究 分かったこと
JACC 研究(Umesawa 2016) みそ汁1日3杯で1.67倍、4杯以上で1.64倍
Machida-Montani ら 2004(長野) みそ汁を多くとる人で2.1倍(有意差なし)
日本と韓国の研究のメタ解析(Kim ら 2011) 発酵した大豆食品(みそ・納豆など)で1.22倍、発酵していない大豆食品(豆腐など)で0.64倍
JPHC 研究(Hara ら 2012) 大豆イソフラボンの摂取量と胃がんに関係なし
国立がん研究センターの判定 大豆は、胃がんでは評価していない
世界がん研究基金 大豆製品は「結論なし」

米みそ(淡色辛みそ)の食塩相当量は100gあたり12.4gです。みそ汁で胃がんが多く出る研究があるのは、大豆よりも塩の量の問題である可能性があります。「みそ汁は胃がんを防ぐ」という話は、今回の調査では元になる研究を確かめられませんでした。

肉・加工肉・パンの焦げは?

  • 肉:JPHC 研究では、肉全体も種類別も、胃がん全体との関係はありませんでした。女性で鶏肉を多く食べる人に、胃の出口側のがんが少ない(0.75倍)という結果がありました。国の判定は「データ不十分」です
  • 加工肉(ハム・ソーセージなど):世界がん研究基金は胃の出口側で「限定的に示唆」、国際がん研究機関は胃で「限定的な証拠」(大腸では「十分な証拠」)です。日本人の研究では、差がはっきりしていません
  • 亜硝酸塩:国際がん研究機関は、体の中でニトロソ化合物ができる条件での硝酸塩・亜硝酸塩を、胃がんで「限定的な証拠」としています。世界がん研究基金は「結論なし」です。食品添加物の亜硝酸ナトリウムは 発色剤の記事 にまとめています
  • パンの焦げ(アクリルアミド):JPHC 研究では、食事からのアクリルアミドが最も多い5分の1の人で0.84倍(有意差なし)で、関係はありませんでした。くわしくは 小麦粉とがんの記事

お酒・たばこと胃がん

たばこは「確実」、お酒は男性で「ほぼ確実」に胃がんを増やすと判定されています。

  • 喫煙:日本の研究のメタ解析で、喫煙者は吸わない人の男性1.8倍・女性1.2倍・全体1.6倍
  • 飲酒(男性):日本の6つの追跡研究、約25.6万人(胃がん8,586人)のまとめで、1日のエタノール量が23〜46gで1.09倍、46〜69gで1.18倍、69〜92gで1.21倍、92g以上で1.29倍。女性では差がありませんでした。この解析では、ピロリ菌の感染は調整できていません
  • 1日23gは、日本酒1合・ビール500mL 1本くらいにあたります(国立がん研究センター)
  • 世界がん研究基金は「1日約45g以上で、おそらく確実」、国際がん研究機関の部位別の一覧には、飲酒と胃がんは載っていません

お酒の種類とがんの関係は お酒の種類とがんの記事 にまとめています。

ストレス・遺伝・コーヒー・牛乳は胃がんと関係ある?

食べ物以外にも、胃がんの原因としてよく聞く話があります。国立がん研究センターの判定と、日本・アジアの研究で確かめます。

よく聞く話 国の判定 分かっていること
ストレスで胃がんになる? 「社会心理学的要因」はデータ不十分 判定できるだけの研究がない
胃がんは遺伝する? 家族歴は一覧の項目にない アジアの12の追跡研究、約55万人のまとめで、家族に胃がんの人がいると1.44倍。ただし家族歴は自己申告で、ピロリ菌の感染は調べられていない
太っていると胃がんになる? 肥満は噴門部で可能性あり アジアの13の追跡研究、約54万人で、やせすぎ(BMI 18.5未満)で15%、太りすぎ(27.5以上)で12%高い「U字型」。この解析では、高い BMI の影響は噴門部ではなく胃の出口側で見られた。ピロリ菌は考慮していない
糖尿病だと胃がんになる? データ不十分 アジアの12の追跡研究、約56万人で15%高い。ピロリ菌と塩の情報はない
コーヒーは? 胃がんでは評価していない 日本の研究(JACC、年齢だけを調整)では、コーヒーを1日1杯より多く飲む男性で0.81倍だった一方、1日3〜4杯飲む女性では1.70倍で、結果はそろっていない。国は判定していない
牛乳・乳製品は? データ不十分 ―
運動は? 胃がんでは評価していない ―

家族に胃がんの人がいる場合、家族の中でピロリ菌がうつっていることもあります。家族歴の研究ではピロリ菌を調べていないので、遺伝の影響と感染の影響は分けられていません。国立がん研究センターは(家族歴に限らず)、胃がん検診を定期的に受け、機会があればピロリ菌の検査を受けて、除菌は医師とよく相談して決めることを勧めています。

日本人に胃がんが多い理由と、減ってきた理由

世界の胃がんの7割はアジア

世界保健機関の国際がん研究機関の推計(GLOBOCAN 2024)では、世界で1年に約98万人が胃がんと診断され、約64万人が亡くなっています。どちらも、がんの中で5番目です。

  • 診断される人の70.8%、亡くなる人の69.7%がアジアです
  • 地域別では、東アジアの年齢をならした罹患率が最も高く、国別ではモンゴルが最も高い値でした
  • 東アジアに多い理由としては、ピロリ菌の感染率の高さ、東アジアに多いタイプのピロリ菌(CagA という毒素の型。アジアの研究のまとめで、東アジア型〔EPIYA-D〕の菌は、欧米に多い EPIYA-C 型と比べて胃がん1.91倍)、塩蔵食品の多い食事などが挙がっています。それぞれがどれだけ効いているかを分けた資料は、見つかりませんでした

死亡率は1960年の7分の1以下に

小麦の量は1975年度からほぼ一定、胃がんの死亡率は1960年の7分の1以下に上:小麦の供給量(1人1年あたり、kg) 下:胃がんの年齢調整死亡率(人口10万あたり、男女計)010203040小麦(kg)1960年度 25.8kg2024年度 32.3kg020406080胃がんの死亡率(人口10万あたり)19601970198019902000201020201975年度1958年:72.71959年:73.11960年:73.11961年:71.91962年:70.51963年:70.91964年:70.91965年:70.51966年:69.21967年:68.81968年:69.51969年:68.11970年:65.31971年:64.21972年:63.21973年:61.91974年:59.91975年:56.91976年:55.61977年:53.91978年:51.61979年:51.11980年:49.41981年:47.61982年:45.01983年:43.91984年:42.91985年:40.81986年:38.81987年:37.51988年:36.01989年:35.11990年:33.41991年:32.61992年:31.61993年:30.11994年:29.51995年:29.81996年:28.91997年:27.71998年:27.31999年:26.42000年:25.52001年:24.22002年:23.02003年:22.42004年:22.22005年:21.22006年:20.72007年:20.02008年:19.32009年:18.72010年:18.12011年:17.62012年:16.92013年:16.32014年:15.62015年:14.82016年:14.02017年:13.52018年:12.92019年:12.22020年:11.82021年:11.42022年:10.92023年:10.22024年:9.71960年 73.11985年 40.82005年 21.22024年 9.7小麦:1人1年あたりの供給純食料(年度)。死亡率:年齢構成をならした値(昭和60年モデル人口)。同じ時期にピロリ菌の感染率が大きく下がった(生まれた年ごとの感染率のグラフ)。この図だけで原因を決めることはできない。出典:農林水産省「食料需給表」、国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(人口動態統計)。
図:小麦の1人1年あたり供給量(農林水産省「食料需給表」)と、胃がんの年齢調整死亡率(国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」、人口動態統計。昭和60年モデル人口)

日本の胃がんは、年齢の影響をならすと、ずっと減り続けています。

年 年齢調整死亡率(人口10万あたり) 死亡数
1960年 73.1 ―
1975年 56.9 49,857人
1995年 29.8 50,076人
2015年 14.8 46,681人
2024年 9.7 37,867人

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」。

  • 年齢調整死亡率(年齢の構成の違いをならした値)は、1960年から2024年で約87%下がりました
  • 一方、死亡数は高齢化のため長く横ばいで、最も多かったのは1998年の50,680人です。2024年は37,867人で、がんの死亡数では肺・大腸・すい臓に次ぐ4番目です
  • 診断される人の数も減っています。全国がん登録では、2016年の約13万5千人から、2023年は約10万5千人(男性71,135人・女性33,729人)でした
  • 年齢をならした罹患率(診断される人の割合)も、長く記録のある3県のデータで、1985年の84.8から2023年の38.7(人口10万あたり)へ、半分以下になっています

同じ時期の小麦の量を重ねると、日本人1人あたりの小麦の量は1975年度から31〜33kgでほぼ一定です。その間に、胃がんの死亡率は約6分の1になりました(1975年56.9→2024年9.7)。このグラフだけで原因を決めることはできませんが、「小麦が増えたから胃がんが増えた」という動きは、統計には見えません。

ピロリ菌の感染率は生まれた年で大きく違う

ピロリ菌の感染率は、生まれた年で大きく違う日本人の生まれた年ごとの感染率(%、日本の研究をまとめて推計した値)0%20%40%60%80%1910年生まれ:60.9%60.9%1910年1920年生まれ:65.9%65.9%1920年1930年生まれ:67.4%67.4%1930年1940年生まれ:64.1%64.1%1940年1950年生まれ:59.1%59.1%1950年1960年生まれ:49.1%49.1%1960年1970年生まれ:34.9%34.9%1970年1980年生まれ:24.6%24.6%1980年1990年生まれ:15.6%15.6%1990年2000年生まれ:6.6%6.6%2000年生まれた年感染の多くは5歳ごろまでに起きると考えられている(国立がん研究センター)。衛生環境の改善で若い世代ほど低い。別の研究(Ishibashi 2025、46,704人)では「一度も感染していない人」は1930年生まれ21.1%、1990年生まれ91.7%。出典:Wang C, et al. Sci Rep 2017;7:15491(PMID 29138514)の予測値。
図:生まれた年ごとのピロリ菌の感染率(Wang C ら 2017、日本の研究をまとめた170,752人のメタ回帰の予測値)

胃がんが減った主な理由は、ピロリ菌に感染している人の割合が、若い世代ほど低いことと考えられています。

  • 日本の研究をまとめた解析(Wang ら 2017、170,752人)では、1930年生まれの67.4%から、1970年生まれ34.9%、1990年生まれ15.6%、2000年生まれ6.6%へ下がっていました
  • 別の解析(Ishibashi ら 2025、46,704人)では、一度も感染していない人の割合は、1930年生まれの21.1%から、1990年生まれで91.7%、2010年生まれで97.7%でした
  • 国立がん研究センターは「1940年代ごろまでに生まれた世代では約70〜80%、2000年以降に生まれた世代では10%未満」とまとめています

Wang らは、日本の胃がんの死亡が減ってきた主な理由は、この世代による感染率の違いだと考えられている、と書いています。Ishibashi らは、この結果をもとに、今の胃がん検診のやり方を見直せる可能性に触れています。

若い人・女性の胃がん

全年齢では、胃がんの患者は男性が女性の約2.1倍です。ところが20〜30代では、男性と女性がほぼ同じ数です。

年齢 診断された人 男性(2023年) 女性 亡くなった人 男性(2024年) 女性
20〜29歳 44人 51人 17人 12人
30〜39歳 264人 261人 61人 71人
20〜39歳 計 308人 312人 78人 83人
40〜49歳 1,055人 842人 235人 175人
全年齢 71,135人 33,729人 24,720人 13,147人

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録・人口動態統計)からウラヨミで集計。

  • 20〜39歳の胃がんは、2023年に620人で、胃がん全体の約0.6%です。数は少ないものの、男女の差がないのが特徴です
  • 50歳未満の胃がんの研究をまとめた解析(Li ら 2024、84研究・89,447人)では、女性が53.7%、がんが胃の壁に広がるように進む「びまん型」が71.1%、ピロリ菌に感染していた人は60.0%、胃がんの家族歴がある人は4.0倍でした
  • 国立がんセンター中央病院で1971〜1990年に治療した胃がん4,608人の報告では、40歳未満は7.1%で、若い人ほど男女比が小さく、びまん型が多い一方、早く見つかれば、その後の経過は高齢の人と変わらなかったと報告されています
  • 「若い女性の胃がんは、スキルス胃がん(びまん型の一種)が多い」「増えている」という話について、全国の統計は見つかりませんでした

国の胃がん検診は50歳以上が対象です。若い人で胃の不調が続くときは、検診を待たずに消化器内科を受診してください。

食事より大きい対策:ピロリ菌の除菌と胃がん検診

ここまでの食べ物の話は、多くが1.1〜1.5倍の差でした。胃がんでいちばん大きく効くことが確かめられているのは、ピロリ菌の除菌と、胃がん検診です。この節には広告を置いていません。

除菌で、胃がんはどれだけ減る?

研究 分かったこと
ランダム化比較試験のメタ解析(Ford ら 2025) 健康な感染者で、除菌すると胃がんが0.64倍(8試験)、胃がんの死亡が0.78倍(5試験)。早期の胃がんを内視鏡で切除した人の再発は0.52倍(3試験)
コクラン・レビュー(Ford ら 2020) 胃がん0.54倍(7試験・8,323人、うち6試験はアジア)、胃がんの死亡0.61倍。すべての原因による死亡は0.97倍で差なし。著者は「アジアの健康な感染者で」と範囲を限っている
日本の研究のメタ解析(国立がん研究センター、19研究) 除菌で胃がん0.42倍(ほとんどは観察研究)。国の判定は「確実に下げる」

国立がん研究センターは、次のように説明しています。

  • 除菌の成功率は9割程度が期待される
  • 除菌のあとに、逆流性食道炎が起きることがある
  • 除菌しても、胃がんのリスクがゼロになるわけではない。除菌のあとも、定期的に胃の内視鏡検査を受ける
  • ピロリ菌の検査を受けるか、除菌するかは、医師とよく相談して決める

ピロリ菌に感染している慢性胃炎の除菌は、2013年2月から健康保険の対象になっています(それ以前は胃潰瘍・十二指腸潰瘍などが対象)。

胃がん検診は50歳以上・2年に1回

国の指針では、胃がん検診は50歳以上・2年に1回です(厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」、2026年10月7日一部改正)。

決まっていること 中身
対象 50歳以上。胃のX線検査は、当分の間40歳以上でもよい
とくに受けることを勧める年齢 50〜69歳
回数 原則2年に1回。胃のX線検査は、当分の間、年1回でもよい
検査 問診に加え、胃のX線検査か、胃の内視鏡検査のどちらか

指針は、胃がんの予防には「食生活の改善、禁煙、ピロリ菌の除菌などの一次予防」と「検診(二次予防)」がともに重要としています。

検診は、住んでいる市区町村が実施しています。受け方・費用は、市区町村の案内で確かめてください。国の案内は 厚生労働省「がん検診」、予防法の全体は 国立がん研究センター「日本人のためのがん予防法」 にあります。

数字で比べる

対策・要因 大きさ 研究の種類
ピロリ菌の感染と萎縮性胃炎の両方がある 約15倍(胃の出口側、どちらもない人と比べて) 推計に使われた値
ピロリ菌を除菌する 0.64倍(0.54倍) ランダム化比較試験のメタ解析
塩魚を多く食べる 1.43倍(男性)・1.33倍(女性) 追跡研究
精製穀物を多く食べる 1.39倍(アジアだけでは1.13倍、有意差なし) 症例対照研究の統合解析
野菜を多く食べる(男性、胃の出口側) 0.78倍 追跡研究
緑茶を1日5杯以上(女性) 0.79倍 追跡研究

食べ物の研究は、ほとんどが観察研究で、ほかの生活習慣の影響を完全には取り除けません。原因と結果まで確かめられているのは、除菌のランダム化比較試験です。

胃がんの予防について、食べ物で分かっていること

研究と国の推奨から、事実だけを並べます。

  • 塩蔵食品(たらこ・明太子・塩辛・漬物・塩魚)と食塩:多くとる人で胃がんが多い(国の判定は「ほぼ確実」)。国の目標量は、食塩で男性7.5g未満・女性6.5g未満
  • 麺類・汁物の汁:国立がん研究センターは「全部飲み切らないように」と推奨。カップ麺の塩の半分前後はスープ
  • 野菜・果物:多い人で少ない傾向(可能性あり)
  • 緑茶:女性で1日5杯以上の人に少ない(可能性あり)。男性では差なし
  • お酒:男性で量が多いほど多い(ほぼ確実)
  • 小麦・パン・麺:避けると胃がんが減る、という研究はない。精製穀物より全粒穀物のほうが少ない側に出る研究が多い(主に症例対照研究)
  • 焼き魚の焦げ・熱いもの・みそ汁:胃がんについての人での証拠は弱いか、結果が割れている

そして、食べ物よりも先に大きいのは、ピロリ菌の検査・除菌(医師と相談)と、胃がん検診です。

この記事で紹介したもの(まとめ)

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まとめ

気になること 分かったこと
胃がんの原因は? いちばん大きいのはピロリ菌(確実)。胃の出口側の胃がんの約9割がピロリ菌によると推計。喫煙も確実
胃がんになりやすい食べ物は? 国が「ほぼ確実」とするのは食塩・塩蔵食品(たらこ・明太子・塩辛・漬物・塩魚)。世界の評価は「塩蔵食品はおそらく確実、塩の総量は結論なし」
小麦・パン・麺で胃がんになる? 言えない。国の「穀類=可能性あり」の根拠に出てくる穀物は米。世界の研究の精製穀物1.39倍は米・パスタ・白パンの合計で、アジアだけでは差がはっきりしない
ラーメン・うどんは? 小麦粉の塩は0g。カップ麺1食の塩の46〜59%はスープ。国は「麺類の汁は飲み切らない」と推奨
焼き魚の焦げは? 人での証拠は弱い(日本の古い研究3本で結果がそろわない)。国の評価項目にない
熱い飲みものは? リスクが上がるとされているのは食道がん。胃がんでは評価されていない
胃がんを防ぐ食べ物は? 野菜・果物は「可能性あり」。緑茶は女性で1日5杯以上21%少ない。みそ汁は結果が割れる
日本人に多い理由・減った理由は? 世界の胃がんの7割はアジア。日本の死亡率は1960年から約87%減。主な理由はピロリ菌の感染率が若い世代ほど低いこと
若い人・女性は? 20〜30代では男女ほぼ同数。若い人はびまん型が多い。全国で「増えている」という統計は見つからなかった
いちばん効く対策は? ピロリ菌の除菌(ランダム化比較試験で0.64倍)と、50歳以上・2年に1回の胃がん検診

参考にした資料

評価・予防法

  • 国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」評価一覧(2026年5月26日版)・評価対象文献リスト(穀類×胃がん)https://epi.ncc.go.jp/can_prev/outcome/index.html
  • 国立がん研究センター「日本人のためのがん予防法」https://epi.ncc.go.jp/can_prev/93/9830.html
  • 同 評価ページ:喫煙と胃がん(785)、緑茶と胃がん(794・2947)、野菜・果物と胃がん(3492)、ピロリ菌除菌と胃がん(8790)、飲酒と胃がん(8904)、家族歴(9480)、糖尿病(9481)、体格(9177)https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/
  • World Cancer Research Fund / American Institute for Cancer Research. Diet, nutrition, physical activity and stomach cancer(Continuous Update Project, 2016, revised 2018)https://www.wcrf.org/resources/stomach-cancer-report
  • IARC Monographs「List of classifications by cancer sites with sufficient or limited evidence in humans」(Volumes 1–141)
  • 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(2026年10月7日一部改正)、同「がん検診」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html

統計

  • 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(人口動態統計によるがん死亡データ 1958〜2024年、全国がん登録 2016〜2023年、地域がん登録 3県)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html
  • 農林水産省「食料需給表」(小麦の1人1年あたり供給純食料)
  • International Agency for Research on Cancer. GLOBOCAN 2024, Stomach fact sheet
  • Wang C, et al. Sci Rep 2017;7:15491(PMID 29138514)/Ishibashi F, et al. Helicobacter 2025(PMID 40500921)
  • Lin Y, et al. GHM Open 2021;1(2):63-69(PMID 40145072)
  • Li Q, et al. Medicine 2017(PMID 28445260)

小麦・穀物

  • Kato I, et al. Jpn J Cancer Res 1992(PMID 1483928)/Tajima K, Tominaga S. Jpn J Cancer Res 1985(PMID 3930448)/Kono S, et al. Jpn J Cancer Res 1988(PMID 3143695)/Ito LS, et al. Ann Epidemiol 2003(PMID 12547482)/Machida-Montani A, et al. Gastric Cancer 2004(PMID 15052440)
  • Turati F, et al. Consumption of whole and refined grains and the risk of gastric cancer: a pooled analysis within the StoP Project. Eur J Nutr 2026(PMID 42287468)
  • Wang T, et al. Int J Food Sci Nutr 2020(PMID 31314629)/Xu Y, et al. Food Sci Nutr 2019(PMID 30680179)/Zhang XF, et al. Nutr J 2020(PMID 32493399)/Gaesser GA. Nutrients 2020(PMID 33297391)/Kim S, et al. J Gastric Cancer 2025(PMID 40200873)
  • Tokui N, et al. J Epidemiol 2005(JACC 研究、PMID 16127240)/Cai H, et al. Cancer Sci 2022(PMID 34821435)/Katagiri R, et al. Int J Cancer 2021(PMID 33348433)/Hara N, et al. Nutr Cancer 1984(PMID 6545578)/Ji BT, et al. Int J Cancer 1998(PMID 9610722)

塩・麺類

  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
  • 日清食品 公式商品ページ(カップヌードル、カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質 さらに塩分控えめ、日清のどん兵衛 きつねうどん 東・西)2026年10月8日確認
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • Hirabayashi M, et al. Eur J Nutr 2024(PMID 38703225)/Umesawa M, et al. J Epidemiol 2016(PMID 26477994)/Takachi R, et al. Am J Clin Nutr 2010(PMID 20016010)/Yoo JY, et al. Cancers 2020(PMID 32316595)
  • Kwak JH, et al. Nutrients 2021;13:1365(PMID 33921757)

そのほかの食べ物

  • Iwasaki M, Tsugane S. Genes Environ 2021(PMID 34315542)/Kobayashi M, et al. Mutat Res 2002;506-507:233-241/Kobayashi M, et al. Gastric Cancer 2009;12:198-205
  • Kim J, et al. Cancer Sci 2011(PMID 21070479)/Hara A, et al. Am J Clin Nutr 2012(PMID 22170362)
  • Wilunda C, et al. Am J Clin Nutr 2022(PMID 34788357)/Liu R, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2019(PMID 31186264)
  • Sassano M, et al. Gastric Cancer 2024(PMID 38436761)/Ao Z, et al. Mol Nutr Food Res 2022(PMID 36111960)

若い人・除菌

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.08)。