English
確認日 2026.10.15

中咽頭がんとは? 原因はタバコ・お酒・HPV、乳製品や砂糖は関係ある? 日本で増える理由と最新の治療・生存率

PR この記事には、楽天市場・A8.net・もしもアフィリエイトのアフィリエイト広告のリンクを含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、国立がん研究センター・厚生労働省・IARC(国際がん研究機関)・WCRF(世界がん研究基金)などの公的な資料と論文をもとにしています。この記事は診断や治療の代わりにはなりません。気になる症状があるときは耳鼻咽喉科・頭頸部外科で相談してください。「Amazonで見る」「Yahoo!ショッピングで見る」も、アフィリエイト広告のリンクです。

口を大きく開けたとき、のどの奥に見えるところ。そこが「中咽頭(ちゅういんとう)」です。ここにできるがんは、日本では年に4,000人あまりが診断される、数としては多くないがんです。

ところが中咽頭がんには、ほかのがんにはあまりない特徴があります。同じ場所にできるのに、原因がまったく違う2つのがんが混ざっていることです。ひとつはタバコとお酒によるもの。もうひとつは、子宮頸がんと同じウイルス(HPV=ヒトパピローマウイルス)によるもの。2つは、かかりやすい人も、最初の症状も、治りやすさもちがいます。そして日本でも海外でも、増えているのはおもに後者です。

この記事では、次の問いに公的な統計と論文の数字で答えます。

  • 中咽頭はどこで、なぜそこにウイルスのがんができるのか
  • 日本と世界の患者数。増えているのか、減っているのか
  • 原因はタバコ・お酒・HPV だけ? 乳製品・砂糖・甘いもの・小麦など食事は関係あるのか
  • 治療の方法と、2026年10月時点の「最先端」。HPV が原因なら治療を軽くできるのか
  • 生存率は何%か。予防のためにできること

お酒やタバコとがん全般のことはお酒の種類とがんの記事・タバコと肺がんの記事でも書いています。

結論

  • 中咽頭がんには「HPV が原因のもの」と「タバコ・お酒が原因のもの」がある。日本の中咽頭がんのおよそ半分が HPV 陽性で、その割合は2000年代から上がってきた
  • 日本の患者は増えている。全国がん登録では、2016年の3,609人から2023年の4,307人へ8年で約2割増え、年齢の影響を除いた罹患率も上がった。同じ期間、タバコとの結びつきが強い喉頭がんは下がっている
  • 評価機関が「確実」としている原因は HPV16・喫煙・飲酒の3つだけ。乳製品・砂糖(清涼飲料・果汁)・小麦(穀類)は、WCRF の判定で「結論が出せない」。国立がん研究センターは頭頸部がんについて食事を評価していない。研究は「上げる」「下げる」の両方があり、割れている
  • 治療は手術・放射線・抗がん剤(化学放射線療法)が中心。2026年2月には、手術の前後に使う免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)が日本で承認された。一方で、HPV 陽性だからといって治療を軽くするのは、まだ標準ではない。軽くした治療を試した大きな試験は、どれも標準の治療に及ばなかった
  • 生存率は HPV 陽性かどうかで大きく違う。米国の臨床試験の再解析では3年生存率が HPV 陽性82.4%、陰性57.1%。米国の統計で5年相対生存率は全体74.4%
  • 予防は、禁煙・節酒と HPV ワクチン。日本では男性への HPV ワクチンは任意接種で、中咽頭がんの予防は効能に入っていない(米国では入っている)。男性の定期接種化は2026年10月の審議でも結論が出ていない

この記事で紹介しているもの

記事の中で、論点に合わせて次のものを紹介しています。

こんな人に 紹介しているもの 場所
お酒で赤くなる体質かを知りたい アルコール分解の遺伝子検査キット お酒で顔が赤くなる人は?
タバコをやめたい 禁煙補助薬(ニコチンパッチ・ニコチンガム) 禁煙と節酒
お酒を減らしたい アルコールの入っていない飲みもの 禁煙と節酒
治療のあと、口が渇く 口腔保湿ジェル 治療の後遺症:口の渇きと飲み込み
治療のあと、かむ・飲み込むのがつらい やわらか宅配食(ウェルネスダイニング)・嚥下対応の冷凍おかず(食楽膳) 治療の後遺症:口の渇きと飲み込み
主治医の説明の元になっている本を読みたい 頭頸部癌診療ガイドライン 2025年版 治療の基本

中咽頭はどこ?

のど(咽頭)は、上から上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分かれます。中咽頭は真ん中で、口を開けたときに見える奥の部分です(がん情報サービス)。厚生労働省の HPV ワクチンのファクトシートは、中咽頭を次の4つの壁に分けています。

部位 含まれるところ
前壁 舌根(舌の奥3分の1)、喉頭蓋谷
側壁 扁桃(口蓋扁桃)、口蓋弓、舌扁桃溝
上壁 軟口蓋の下の面、口蓋垂(いわゆる「のどちんこ」)
後壁 咽頭の後ろの壁
頭と首を横から見た断面の模式図。左が顔の側。鼻の奥の鼻腔と口の中の舌の後ろに、のどの管(咽頭)が上下に通っている。咽頭は3色に塗り分けてある。鼻の奥の高さが上咽頭、口の奥の高さ(軟口蓋から喉頭蓋の上あたりまで)が濃い緑の中咽頭、その下で喉頭の後ろにあたる部分が下咽頭。中咽頭は真ん中で、口を開けたときに見える奥の部分。中咽頭には4つの壁があり、①前壁は舌根、②側壁は扁桃、③上壁は軟口蓋の下の面と口蓋垂、④後壁は咽頭の後ろの壁。のどの下では、前が気管、後ろが食道に分かれる。下の表では、HPV が原因の中咽頭がん(p16 陽性)の割合が側壁(扁桃)で63.3%、前壁(舌根)で40.0%と示されている。
図:のどは上・中・下の3つに分かれ、中咽頭は口を開けて見える奥。4つの壁に分かれる(押すと拡大)

なぜ扁桃と舌根に HPV のがんができるのか

HPV が原因の中咽頭がんは、扁桃と舌根に多いことが分かっています。日本頭頸部癌学会の全国登録(2019年症例)では、HPV の目印になる p16 というたんぱく質が陽性だった割合は、側壁(扁桃)で63.3%、前壁(舌根)で40.0%でした。

理由ははっきり分かっていませんが、厚生労働省のファクトシートは次の説明を挙げています。

  • 扁桃は子宮頸部と同じように、ウイルスが粘膜の奥の細胞に届きやすい構造をしている
  • 粘膜の下の膜(基底膜)がところどころ途切れている
  • 扁桃や舌根には「陰窩(いんか)」という深いくぼみがあり、ウイルスがとどまりやすい

なお、HPV が原因の中咽頭がんの約9割は HPV16型によるものです(同ファクトシート)。

2つの中咽頭がん:HPV 陽性と陰性

中咽頭がんは、がんの組織を調べて HPV 陽性(p16 陽性)か 陰性かを分けます。2017年からは、国際的な病期(ステージ)分類も2つで別の表を使うようになりました(AJCC/UICC 第8版。日本の『頭頸部癌取扱い規約』も第6版から同じ)。HPV 陽性は、昔の分類で病期を進めても生存率がほとんど変わらず、病期で見通しを分けられなかったためです。

HPV 陽性(p16 陽性) HPV 陰性(p16 陰性)
おもな原因 HPV(9割が16型) 喫煙・飲酒
関連が報告されている要因 オーラルセックスの相手の数など、口の HPV 感染にかかわるもの 喫煙・飲酒・歯を失っていること
多い年齢(日本) 陰性より若い。59歳以下が32.5% 70代が最も多い。59歳以下は17.1%
最初の症状で多いもの 首のしこり(53.1%) のどの痛み(60.0%)
3年生存率(米国の試験、III〜IV期) 82.4% 57.1%
再発(デンマークの1,244人) 15% 35%

危険因子は Gillison 2008(米国、頭頸部がん)、年齢は日本頭頸部癌学会 全国登録 2019年症例(陰性には不明を含む)、症状はフィンランドの118人(Carpén 2018)、生存率は Ang 2010、再発は Grønhøj 2018。

HPV 陽性(p16 陽性)と HPV 陰性(p16 陰性)の中咽頭がんを左右に並べた比較図。おもな原因は、陽性が HPV(9割が16型)、陰性が喫煙・飲酒。関連が報告されている要因は、陽性がオーラルセックスの相手の数など口の HPV 感染にかかわるもの、陰性が喫煙・飲酒・歯を失っていること。日本で多い年齢は、陽性が陰性より若く59歳以下が32.5%、陰性は70代が最も多く59歳以下は17.1%。最初の症状で多いものは、陽性が首のしこり(53.1%)、陰性がのどの痛み(60.0%)。米国の試験(III〜IV期)の3年生存率は陽性82.4%、陰性57.1%。デンマークの1,244人での再発は陽性15%、陰性35%。2017年からは病期分類も2つで別の表を使う。
図:同じ中咽頭がんでも、原因・年齢・最初の症状・生存率が違う(押すと拡大)

中咽頭がんは増えているのか

日本:8年で約2割増えた

国立がん研究センターの全国がん登録で、中咽頭がん(舌根・扁桃・中咽頭)と診断された人は、2016年の3,609人から2023年の4,307人に増えました。人口の高齢化の影響を除いた年齢調整罹患率も、1.67から1.92(人口10万人あたり)へ上がっています。

一方で、同じのどのがんでも、喉頭がんは2.02から1.60へ下がりました。喉頭がんは、たばこと酒で説明できる割合が89%と、頭頸部のがんでいちばん高いがんです(INHANCE の解析、Hashibe 2009)。たばこに強く結びついたがんが減り、ウイルスが関わるがんが増えている、という形です。

全国がん登録(国立がん研究センター がん情報サービス)の詳細部位別の年齢調整罹患率(昭和60年モデル人口、人口10万人あたり、男女計)。中咽頭(舌根C01・扁桃C09・中咽頭C10の合計。がん情報サービスの「中咽頭がん」と同じ範囲)は2016年1.67から2023年1.92へ上がり、患者数は3,609人から4,307人。喉頭(C32)は2.02から1.60へ下がり、患者数は5,285人から4,648人。下咽頭(C12・C13)は1.97から2.12、上咽頭(C11)は0.45から0.35。
図:中咽頭がんは増え、喉頭がんは減っている(全国がん登録 2016〜2023年)(押すと拡大)

全国がん登録 2016〜2023年(がん情報サービス「がん統計」の詳細部位)。男女計。2020年の落ち込みは新型コロナの流行で受診が減った時期と重なる。

  • 男女の内訳(2023年):男性3,467人、女性840人。男性が約4倍
  • 亡くなった人は、2020年に1,141人(中咽頭 C10。口蓋なども含めた「中咽頭部周辺のがん」では1,300人)でした(厚生労働省 HPV ワクチン ファクトシート)
  • もっと長い期間では、19の地域がん登録を合わせた研究で、1993〜2015年の中咽頭がんの年齢調整罹患率は男性で年5.0%、女性で年7.6%ずつ増えていました(Kawakita 2022)。同じ期間、口腔がんは男性で年1.2%、喉頭がんは男性で年1.1%減
  • HPV 陽性の割合も上がっています。東京大学病院では2000〜2003年の15.2%から2008〜2011年の33.3%へ(Saito 2013)。全国の多施設調査では2009〜2011年の50%から2014〜2016年の71%へ(III・IV期、丹生・土井 2023)。2019年の全国登録では中咽頭がん全体の47.9%が p16 陽性でした
  • 北日本の病院の研究では、HPV 陰性の患者の数はほぼ変わらず、陽性の患者が増えた分だけ全体が増えていたと報告されています(Tsuchida 2024)

参考:厚生労働省の HPV ワクチン ファクトシートは、口蓋も含めた「中咽頭部周辺のがん」として2019年に4,826人(男性3,760人・女性1,066人)と書いています。数え方(どこまでを中咽頭とするか)で人数が変わります。

米国:子宮頸がんを追い越した

米国では、HPV 陽性の中咽頭がんの罹患率が1988年から2004年に225%増え、HPV 陰性は半分に減りました(Chaturvedi 2011)。この論文は「このままなら2020年までに HPV 陽性の中咽頭がんの数が子宮頸がんを上回る」と予測し、実際には2015年に中咽頭の扁平上皮がん(18,917人)が子宮頸がん(11,788人)を上回りました(米国 CDC、Van Dyne 2018)。

米国 CDC の最新の集計(2018〜2022年の平均)では、中咽頭がんは年22,585人で、そのうち約70%が HPV によると推定されています。CDC は中咽頭がんを「男性で最も多い HPV 関連がん」としています。

世界:年に約10.8万人。日本は世界平均と同じくらい

IARC の GLOBOCAN 2024(2026年7月公開)では、世界で中咽頭がんと診断される人は年107,887人、亡くなる人は51,823人と推計されています(扁桃・中咽頭。舌根は含まない)。2022年版では男性が女性の約4.3倍でした。

IARC(国際がん研究機関)Global Cancer Observatory の GLOBOCAN 2024 による、中咽頭がん(扁桃C09・中咽頭C10)の年齢調整罹患率(世界人口で調整、人口10万人あたり、男女計)。ポルトガル4.38、デンマーク4.14、フランス3.85、米国2.66、ブラジル2.36、英国2.19、オーストラリア2.11、ドイツ2.05、インド1.49、世界1.07、日本1.07、韓国0.81、中国0.34。世界の新しい患者は107,887人、日本は3,215人(推計)。
図:中咽頭がんの年齢調整罹患率。日本は世界平均と同じくらい(GLOBOCAN 2024)(押すと拡大)
  • 年齢調整罹患率が高いのはポルトガル・デンマーク・フランスなどヨーロッパと、米国・ブラジル・英国。日本(1.07)は世界平均(1.07)と同じくらいで、韓国・中国より高い
  • 42か国の登録を比べた研究では、1993〜2012年に男性の中咽頭がんが年3%を超えて増えた13か国に、日本・韓国・中国・米国・英国などが入っています(Zumsteg 2023)。逆にフランスとスペインの男性では減っていました
  • 人口の高齢化と増加だけを入れた IARC の予測では、世界の患者は2045年に約16万人(2022年比+53%)。日本は人口が減るため横ばい(−2%)です。この予測には HPV による増加は入っていません

原因を「証拠の強さ」で並べる

中咽頭がんの原因として言われることを、評価機関の判定と研究の数字で並べました。

中咽頭がんの原因として言われるものを、証拠の強さで5段に並べた図。いちばん上の「確実」はHPV16・喫煙・飲酒の3つで、IARCが「十分な証拠」、国立がん研究センターやWCRFが「確実」としている。次の「経路として関連」はオーラルセックスの相手の数で、6人以上で約3.4倍(口のHPV感染の経路として)。「限定的」は歯の喪失・口の手入れ、マウスウォッシュ、受動喫煙、大麻で、研究によって結果が違うか、別の要因の影響が混ざっている。「結論が出せない」は乳製品、砂糖・甘い飲み物、小麦・穀類、赤肉・加工肉、果物で、WCRF 2018の判定は「limited – no conclusion」。乳製品は上げる研究と下げる研究の両方があり、甘いものの報告はイタリアの研究に偏り、小麦は直接調べた研究が見つからない。「研究がない」は電子たばこ・加熱式たばこ。乳製品・砂糖・小麦が原因になると判定した公的機関はなく、国立がん研究センターは頭頸部がんについて食事を評価していない。
図:評価機関が「確実」としているのは HPV16・喫煙・飲酒の3つ。乳製品・砂糖・小麦は「結論が出せない」(押すと拡大)
証拠の強さ 要因 根拠
確実 HPV16 IARC が中咽頭・扁桃に「十分な証拠」としているのは HPV16 だけ
確実 喫煙 IARC(咽頭)「十分な証拠」。国立がん研究センター(頭頸部がん)「確実」
確実 飲酒 IARC(咽頭)「十分な証拠」。WCRF「確実(convincing)」。国立がん研究センター「確実」(2023年〜)
経路として関連 オーラルセックスの相手の数 6人以上で約3.4倍(D’Souza 2007)。口の HPV 感染の経路として
限定的 歯の喪失・口の手入れ、マウスウォッシュ、受動喫煙、大麻 研究によって結果が違う、または別の要因の影響が混ざっている(下の表)
結論が出せない 乳製品、砂糖・甘い飲み物、小麦・穀類、赤肉・加工肉、果物 WCRF 2018「limited – no conclusion」
研究がない 電子たばこ・加熱式たばこ IARC の評価がなく、がんの発症を調べた疫学研究も見当たらない

HPV:がんになる10年以上前から

  • 欧州の大規模な追跡研究(EPIC)では、のちに中咽頭がんになった人の34.8%が、診断より前の血液で HPV16 の E6 という抗体が陽性でした。ならなかった人では0.6%。陽性は診断の10年以上前から見られました(Kreimer 2013)。その後、欧州・北米・オーストラリアの9つの追跡研究(患者743人)を合わせた研究では、抗体が陽性に変わった時期は診断の6〜28年前でした(Kreimer 2019)
  • 米国の研究では、口の中に HPV16 がいる人は中咽頭がんが14.6倍。がんの72%から HPV16 が見つかりました(D’Souza 2007)
  • 口の中の HPV 感染はめずらしくありません。健康な日本人435人のうがい液では5.7%(男性8.3%、女性2.6%)が HPV 陽性でした(Cho 2020)。米国では男性11.5%、女性3.2%(Sonawane 2017)。感染しても、ほとんどの人はがんになりません

タバコとお酒:足し算ではなく掛け算

  • 17の研究(症例1万1千人)を合わせた国際共同解析(INHANCE)では、吸って飲む人のリスクは、喫煙と飲酒それぞれのリスクを掛け合わせたよりも大きくなりました(Hashibe 2009)。咽頭のがんの72%がたばこか酒で説明できました
  • 日本の11の追跡研究(43万人)を合わせた国立がん研究センターの解析では、男性で吸って飲む人の頭頸部がんのリスクは、吸わず飲まない人の2.34倍でした(2026年)
  • たばこを吸わない人だけで見ても、1日3杯以上飲む人では頭頸部がんが約2倍で、その関連は中咽頭・下咽頭と喉頭に限られていました(Hashibe 2007)

お酒で顔が赤くなる人は?

飲むと顔が赤くなる体質(ALDH2 という酵素の働きが弱い)の人は、お酒でできるアセトアルデヒドが体にたまりやすく、頭頸部がんのリスクが高いと報告されています(Boccia 2009 のメタ解析で約1.8倍)。ただし日本人男性を部位別に調べた研究では、この体質の影響は下咽頭で10倍と強かった一方、口腔・中咽頭でははっきりした差がありませんでした(Asakage 2007、患者96人と小さい研究)。同じ研究では、アルコールを分解するもう1つの酵素の遺伝子(ADH1B)が分解の遅い型の人で、口腔・中咽頭のがんが4.24倍でした。また、「飲むと顔が赤くなるか」を聞く簡単な質問でも、遺伝子検査とほぼ同じ結果が得られています。

自分の体質を遺伝子で確かめる方法として、口の中の粘膜を綿棒でとって送る検査キットがあります。結果で分かるのは分解の型で、がんになるかどうかではありません。

そのほかの要因

要因 分かっていること
歯の喪失・口の手入れ 歯を失った本数が少ない、年1回の歯科受診、毎日の歯みがきで、頭頸部がんが0.8倍前後(INHANCE、Hashim 2016)。HPV 陰性のがんとだけ関連したという研究もある
マウスウォッシュ 中咽頭で1.28倍という解析がある(Boffetta 2016)。ただし著者はマウスウォッシュのメーカーとの契約で口腔がんの論文を書いており、関連の訴訟で証人も務めた(論文に記載)
大麻 中咽頭で1.24倍。HPV を調整すると0.99倍になり、関連は消えた(Marks 2014)
受動喫煙 IARC(咽頭)「限定的な証拠」、国立がん研究センター「データ不十分」
電子たばこ・加熱式たばこ がんの発症を調べた疫学研究は見当たらない。安全とも危険とも言えない
免疫が弱っている(HIV・臓器移植) HPV に関係するがん全般が増える(Grulich 2007)
体重 WCRF は口・咽頭・喉頭をまとめて「体脂肪はおそらく上げる」とするが、たばこを吸わない人の中咽頭だけで見ると関連はなかった(WCRF 2018 の表14)

食事は関係あるのか:乳製品・砂糖・小麦

「乳製品や砂糖、小麦ががんの原因になる」という話は、がん全般についてよく聞きます。中咽頭がんではどうなのか、評価機関の判定と研究を食品ごとに並べました。

評価機関の判定

WCRF(世界がん研究基金)は、「口・咽頭・喉頭のがん」と食事・栄養・運動の関係を、世界の研究を集めて判定しています(2018年版)。国立がん研究センターも、日本人の研究をもとに評価しています。

食べもの WCRF 2018 の判定 国立がん研究センター 研究で報告されていること
乳製品 結論が出せない 頭頸部がんは評価なし 上げる:イタリアなど1.50倍(Bravi 2013)、米国1.64倍(Peters 2008)。下げる:メタ解析で0.74倍(Yuan 2019)、0.73倍(Rodriguez-Archilla 2023、口腔がん)
砂糖・甘い飲み物 清涼飲料・果汁とも結論が出せない 評価なし 血糖を上げやすい食事(高 GI)で1.5倍、デザートで1.68倍(いずれもイタリアの症例対照研究)。遺伝子を使った研究では、糖尿病や血糖が原因だという証拠は乏しい(Gormley 2023)
小麦・穀類 結論が出せない(穀類も食物繊維も) 評価なし 小麦・精製穀物と中咽頭がんを直接調べた研究は見つからない。食物繊維を多くとる人で0.49倍(INHANCE、Kawakita 2017)
野菜(でんぷんの少ないもの) 下げる方向で限定的 評価なし 野菜0.66倍・果物0.52倍(INHANCE、Chuang 2012)。ただし、たばこを吸わない・あまり飲まない人では有意でなかった
果物 結論が出せない(2007年の「おそらく下げる」から格下げ) 評価なし 同上
コーヒー 下げる方向で限定的 評価なし 1日4杯を超えると中・下咽頭で0.58倍(INHANCE、Galeone 2010)
赤肉・加工肉 結論が出せない 評価なし 加工肉で口腔・中咽頭1.91倍(Xu 2014 のメタ解析)
食塩 項目なし 評価なし(胃がんは「ほぼ確実」) 日本の JACC 研究で口腔・咽頭・食道を合わせて1.67倍。咽頭は17人と少ない
マテ茶(南米) 上げる方向で限定的 — 南米の飲み方に限る。65℃を超える熱い飲みものは IARC で「おそらく発がん性がある」(根拠は食道がん)

WCRF の判定は「確実」「おそらく」「限定的(関連を示唆)」「限定的(結論が出せない)」の順に弱くなる。研究の倍率は、いちばん多くとる人とあまりとらない人を比べた値。

乳製品・牛乳を多くとる人とあまりとらない人を比べた研究の倍率(オッズ比)。Bravi 2013(イタリア・スイス、口腔・咽頭がん)1.50、Peters 2008(米国、頭頸部がん)1.64(95%信頼区間1.09〜2.46)、Yuan 2019(メタ解析、口腔・中咽頭がん)0.74(0.59〜0.92)、同じメタ解析の牛乳と中咽頭がん0.63(0.44〜0.90)、Rodriguez-Archilla 2023(メタ解析、口腔がん、牛乳)0.73。1より大きいと上げる方向、小さいと下げる方向。
図:乳製品の研究は「上げる」と「下げる」に割れている(押すと拡大)

「乳製品・砂糖・小麦が原因」と言える根拠はない

  • 乳製品・砂糖(清涼飲料・果汁)・小麦(穀類)が中咽頭がんの原因になる、と判定した公的機関はありません。WCRF はどれも「limited – no conclusion(証拠が足りず結論が出せない)」、国立がん研究センターは頭頸部がんについて食事を評価していません
  • 乳製品は「上げる」と「下げる」の両方の研究があり、結果がそろっていません
  • 甘いものが上げる方向という報告は、イタリアの症例対照研究に偏っています
  • 小麦については、中咽頭がんとの関係を直接調べた研究が見つかりませんでした

乳製品・砂糖・小麦そのものについては、乳製品と日本人の記事・砂糖の種類の記事・小麦粉とがんの記事・小麦は体に悪い説の記事で詳しく書いています。

なぜ食事の研究は結論が出にくいのか

  1. 思い出してもらう研究が中心。食事の研究の多くは、がんになった人とならなかった人に昔の食事を聞く「症例対照研究」で、記憶のずれが入ります。WCRF はこの種の研究のまとめを判定の中心にしていません
  2. HPV を調べていない。WCRF 自身が「口・咽頭・喉頭のがんと食事の研究の多くは HPV のデータを含んでいない」と書いています。いまの中咽頭がんの半分以上は HPV 陽性なので、昔の研究がそのまま当てはまるとは限りません
  3. たばこ・お酒の影響が混ざる。たばこを吸い、酒を多く飲む人は、野菜や果物が少ない傾向があります。実際、果物・野菜の関連は、たばこを吸わない・あまり飲まない人では有意ではありませんでした
  4. 日本の研究が少ない。国立がん研究センターの研究班は、食事の要因は「ほとんどの食品、栄養素において未だデータ不十分」とし、理由に日本人の食生活のばらつきの少なさと食事調査の難しさを挙げています

HPV 陽性のがんと陰性のがんで、食事の影響が違うかを調べた研究は、ほとんどありません。

症状と見つけ方

がん情報サービスの冊子(2026年4月作成)は、中咽頭がんの症状として、飲み込むときの違和感、おさまらないのどの痛み、のどからの出血、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくい、耳の痛み、口の奥やのど・首のしこり、声の変化を挙げています。初期には症状が出ないこともあります。

  • HPV 陽性のがんは、のどの症状より先に首のしこり(リンパ節への転移)で見つかることが多いと報告されています。フィンランドの118人では、HPV 陽性の人の最初の症状で最も多かったのが首のしこり(53.1%)でした(Carpén 2018)
  • お笑いコンビ「ペナルティ」のワッキーさんは、2020年4月に首のしこりに気づいたのがきっかけで初期の中咽頭がんと分かり、手術をせずに化学放射線療法を受けたと所属事務所が発表しています(デイリースポーツ 2020年6月8日)。のちに、唾液が出にくい後遺症についても話しています(同 2026年6月4日)

診断の流れ

  1. 口からライトで見る・指で触る(首のリンパ節も)
  2. 鼻や口から内視鏡。中咽頭がんは食道がんなどが同時に見つかることがあるので、胃カメラで重なったがんがないか調べることが勧められています
  3. 組織をとって調べる(生検)。p16 の染色で HPV 陽性かどうかを判断
  4. CT・MRI・超音波・PET で広がりを調べる

検診はない

中咽頭がんの検診は確立していません。国が勧めるがん検診(胃・大腸・肺・乳・子宮頸)にも入っていません。米国予防医学専門委員会も、症状のない人の口腔がん検診は「利益と害を比べる証拠が不十分」としています。血液で HPV の抗体や遺伝子を調べる方法は研究段階です。

治療の基本

日本の治療の指針は『頭頸部癌診療ガイドライン 2025年版』(日本頭頸部癌学会、2025年6月)です。がん情報サービスの冊子はこの版をもとに、次のように書いています。

  • 治療は、がんの場所と広がり、転移の有無に加え、飲み込みや声の機能を残したいかで決める
  • 手術と、手術以外の治療(放射線・化学放射線療法)を比べて、どちらがよいかはまだ分かっていない
  • p16 陽性か陰性かで治療の選択は変わらない
治療 内容 日本での位置づけ
口から切る手術 口から内視鏡や器具を入れて切る(TOVS・ELPS など)。ロボット(ダヴィンチ)を使う TORS も 鏡視下の手術は2020年、ロボット手術は2022年4月に保険適用。早期(T1・T2)でできることが多い
首のリンパ節の手術 転移があればリンパ節を取る(郭清) 標準
放射線 IMRT(強度変調放射線治療)が勧められる。33〜35回(6〜7週) 標準
化学放射線療法 放射線にシスプラチンを組み合わせる 標準。進んだがん・手術後に再発の危険が高いとき
免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブ(2017年)、ペムブロリズマブ(2019年) 再発・転移したがん
手術の前後のペムブロリズマブ 手術の前に2回、後に15回 2026年2月に承認(局所進行の頭頸部がん)
光免疫療法・ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) 下の「最先端の治療」で説明 切除できない局所進行・再発のがん

治療の後遺症:口の渇きと飲み込み

がん情報サービスの冊子によると、放射線治療では始まって1〜2週目から口内炎・のどの炎症・唾液の減少・味が分からないなどが起き、照射が終わって7〜10日ごろが最も強くなります。粘膜の炎症は2週間〜1か月で治まりますが、唾液・味覚・声がれは戻るのに時間がかかり、十分に戻らないこともあります。数年たってから、飲み込みにくさ・口が開きにくい・むし歯が増えるなどが出ることもあります。

  • 唾液をつくる耳下腺をよけて当てる IMRT では、1年後の中等度以上の口の渇きが74%から38%に減りました(英国の試験 PARSPORT)
  • 飲み込みの筋肉に当たる量を抑える IMRT では、1年後の飲み込みの生活の質が改善しました(英国の試験 DARS)

口の渇きには、口の中を保湿するジェルが使われます。むせやすい・かみにくいときは、やわらかさを段階で選べる食事もあります。使う前に、治療を受けている病院の医師・歯科医師・管理栄養士に相談してください。

HPV 陽性なら治療を軽くできる?

HPV 陽性の中咽頭がんは治りやすいので、「放射線の量や抗がん剤を減らして、後遺症を少なくできないか」という試験が、米国や英国で次々に行われてきました。結果は次のとおりです。

HPV陽性の中咽頭がんで治療を軽くできるかを調べた試験の結果。RTOG 1016:5年生存率 シスプラチン84.6%、セツキシマブ77.9%。De-ESCALaTE:2年生存率 シスプラチン97.5%、セツキシマブ89.4%。NRG-HN005:2年無増悪生存率 標準(70Gy+シスプラチン)98.1%、60Gy+シスプラチン88.6%、60Gy+ニボルマブ90.3%。どの試験でも、軽くした治療は標準に及ばなかった。
図:治療を軽くした群は、どの試験でも標準の治療に及ばなかった(押すと拡大)
試験 何を軽くしたか 結果
RTOG 1016(米国・カナダ、849人) シスプラチンをセツキシマブに替える 5年生存率 77.9%(標準 84.6%)。劣らないことを示せず、副作用も減らなかった
De-ESCALaTE(英国ほか、334人) 同上 2年生存率 89.4%(標準 97.5%)。再発16.1%(標準 6.0%)
NRG-HN005(米国、382人) 放射線を70→60Gy に。シスプラチンをニボルマブに替える群も 2年無増悪生存率 88.6%・90.3%(標準 98.1%)。どちらも劣らないことを示せず早期終了
  • 米国の全国データ(1万4,869人、2026年)では、試験の外で放射線の量を減らした人の3年生存率は82.1%で、標準の88.9%より低く、論文は「試験の外ではまねしないで」としています
  • 研究が続いているのは、手術のあとの放射線を減らす方向(米国の E3311・MC1675、英国の PATHOS)と、血液の中のがん由来の HPV DNA の減り方で治療を軽くする人を選ぶ方向です
  • 日本のガイドライン(2025年版)をもとにした冊子も、p16 陽性か陰性かで治療の選択は変わらないとしています

最先端の治療(2026年10月時点)

中咽頭がんの治療と研究の年表。日本の出来事を緑、海外・国際の出来事を灰色の点で示す。2010年、米国の臨床試験の再解析で3年生存率がHPV陽性82.4%・陰性57.1%と報告された。2017年に国際的な病期分類(AJCC/UICC第8版)でHPV陽性に別の表ができ、日本ではニボルマブ、2019年にペムブロリズマブが再発・転移したがんに使われるようになった。2019年の試験ではシスプラチンをセツキシマブに替えた治療が標準に及ばなかった。2020年は鏡視下手術とBNCTが保険適用、米国FDAが9価ワクチンに中咽頭がんの予防を追加、日本が光免疫療法を世界で初めて承認、4価ワクチンの男性への使用を承認。2022年4月にロボット手術が保険適用。2024年のNRG-HN005は治療を軽くした群が標準に劣らないことを示せなかった。2025年に米国で、2026年2月に日本でペムブロリズマブを手術の前後に使う治療を承認。2026年は陽子線の大きな試験2本、男性ワクチンの定期接種化の継続審議、PDS0101の論文、BNT113で差なしの企業発表があった。
図:2010年の HPV と生存率の報告から、2026年の承認・試験結果まで(押すと拡大)
治療・検査 日本 米国 中身
ペムブロリズマブを手術の前後に(KEYNOTE-689) 2026年2月 承認 2025年6月 承認 3年の無イベント生存率 58.2%(手術だけ 44.9%、PD-L1 の目印 CPS 1以上)。HPV 陽性の中咽頭がんで対象になったのは T4 のⅢ期だけ
光免疫療法(アキャルックス+レーザー) 2020年9月 条件付き承認(世界初)・保険 未承認 切除できない局所進行・局所再発の頭頸部がん
ロボット手術(TORS) 2022年4月 保険 普及 口から切る手術
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) 2020年6月 保険 — 切除できない局所進行・局所再発の頭頸部がん
陽子線 中咽頭の扁平上皮がんは保険の対象外(2026年度の改定でも同じ) 2026年に大きな試験2本(結果は割れた) 下で説明
血液の HPV DNA 検査(ctHPVDNA) 承認・保険なし 高齢者向け公的保険(Medicare)の対象 治療後の再発を見張る研究
HPV を狙う治療ワクチン 治験なし 第3相は成功例なし 下で説明

光免疫療法(頭頸部アルミノックス治療)

がん細胞の表面にある EGFR というたんぱく質にくっつく薬(セツキシマブ)に、光に反応する色素をつけた「アキャルックス」を点滴し、そのあと専用のレーザー光を当ててがん細胞を壊す治療です。2020年9月に日本が世界で初めて承認しました。

  • 承認は、海外39人・国内3人の小さな試験をもとにした「条件付き早期承認」で、効果を確かめる第3相試験(ECLIPSE、日米台)が進行中です。2026年10月時点で、条件が外れた・対象が広がったという発表は見当たりません
  • 日本の40人の多施設研究では、がんが小さくなった人の割合(奏効率)は75.0%。3度以上の副作用は17.5%で、のどの粘膜のむくみ(喉頭浮腫)が42.5%に起きました(2025年8月)
  • 日本の副作用報告227件を調べた2026年8月の論文でも、最も多かったのは喉頭浮腫でした
  • 対象は切除できない局所進行・再発のがんで、最初の治療の標準ではありません

陽子線:2026年の2つの試験

  • 米国の第3相(440人、Lancet 2026年1月):がんが進まない割合は IMRT と同じくらいで、5年生存率は陽子線90.9%・IMRT81.0%。重い飲み込みの障害は31%と49%
  • 英国の第3相 TORPEdO(205人、Lancet 2026年3月):1年後の胃ろう・体重減少・生活の質に差はなかった
  • 日本では、陽子線・重粒子線の保険の対象は「頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)」で、中咽頭がんの大部分を占める扁平上皮がんは対象外です

治療ワクチンと血液検査

  • HPV16 を狙う治療ワクチン PDS0101 とペムブロリズマブの併用(第2相、53人)は、奏効率34.0%と報告されました(JAMA Oncology 2026年9月)。比べる群のない試験で、第3相は計画変更で登録を一時止めています
  • mRNA の治療ワクチン BNT113 とペムブロリズマブの併用(第2/3相)は、2026年10月13日に「がんが進むまでの期間で差がなかった」と企業が発表しました。生存期間は評価が続いています
  • 血液で HPV の遺伝子を読む検査(HPV-DeepSeek)は、9部位の HPV 関連がん235人で感度・特異度が99%と報告されました(2026年8月)。研究段階です

2026年8月〜10月の動き

時期 出来事
7月30日 EGFR と MET を狙うアミバンタマブ皮下注が、米国 FDA の優先審査に(HPV に関係しない頭頸部がん、2回目以降の治療)。まだ承認ではない
8月 光免疫療法の副作用報告227件の解析、血液の HPV 遺伝子検査 HPV-DeepSeek の論文
9月17日 PDS0101 の第2相の論文(JAMA Oncology)
9月26〜30日 米国放射線腫瘍学会(ASTRO 2026)。血液の HPV DNA の減り方で放射線を減らす試験の途中経過など
10月13日 BNT113 の第2/3相で、がんが進むまでの期間に差なし(企業発表)

8月〜10月15日に、頭頸部がんで新しく承認された薬は日本・米国とも見つかりませんでした(米国 FDA の7〜9月のがん領域の承認一覧にも頭頸部はありません)。

ご注意 がん情報サービスは、中咽頭がんで効果が証明されている免疫療法は免疫チェックポイント阻害薬だけで、自由診療で行われている免疫療法には注意が必要としています。

生存率はどれくらいか

HPV陽性と陰性の中咽頭がんの3年生存率。米国の臨床試験RTOG 0129の再解析(Ang 2010、III〜IV期、化学放射線療法、323人)では、HPV陽性82.4%、陰性57.1%。東京大学の173人(齊藤、学位論文要旨、2001〜2012年)では、p16陽性82.9%、陰性47.2%。
図:HPV 陽性と陰性で3年生存率が大きく違う(押すと拡大)
  • 米国の臨床試験の再解析(Ⅲ・Ⅳ期、化学放射線療法、323人)では、3年生存率は HPV 陽性82.4%、陰性57.1%。年齢や病期をそろえても、陽性の人は死亡のリスクが58%低く、喫煙歴が長いほどリスクは上がりました(Ang 2010)
  • 東京大学病院の173人でも、3年生存率は p16 陽性82.9%、陰性47.2%でした(齊藤)
  • 米国の統計(SEER、扁桃・中咽頭)の5年相対生存率は74.4%。がんがその場にとどまっている「限局」85.5%、リンパ節などに広がった「領域」79.0%、遠くに転移した「遠隔」37.6%。診断されたときに72%がすでに「領域」なのに生存率が高いのが特徴です。ただし米国がん協会は「この数字は HPV の状態を考えていない」と注意しています
  • 日本では、中咽頭がんだけの公的な5年生存率は公表されていません。全国がん登録(2016年診断)は「口腔・咽頭」をまとめた値(59.8%)だけで、中咽頭の値として使うことはできません

再発と「2つ目のがん」

  • 再発はデンマークの1,244人で HPV 陽性15%、陰性35%(Grønhøj 2018)。手術のあとの再発やがんによる死亡は、手術から2年目が山でした(2026年の論文)
  • 中咽頭がんの人は、食道がんなど2つ目のがん(重複がん)ができやすいことが知られています。東京大学病院の150人では、同時に見つかったものが14%、あとから見つかったものが20.7%で、最も多いのは食道がんでした。飲酒と HPV 陰性が関係していました(Saito 2014)

予防のためにできること

禁煙と節酒

喫煙と飲酒は、HPV 陰性の中咽頭がんの最大の原因で、2つが重なると掛け算で効きます。HPV 陽性のがんでも、喫煙歴が長いほど生存率が下がると報告されています(Ang 2010)。

HPV ワクチン

  • 口の HPV 感染を減らす証拠:コスタリカの女性7,466人の試験で、ワクチンを打った人は4年後の口の HPV16/18 感染が93.3%少なかった(Herrero 2013)。米国の調査でも、打った人の口のワクチン型 HPV 感染は88.2%少なかった(Chaturvedi 2018)
  • がんそのものを減らす証拠は、まだ観察研究だけです。米国の電子カルテの研究で、打った人の中咽頭がんは0.087倍と報告されていますが、患者の数が少ない後ろ向きの研究です(2026年)
  • 米国 FDA は2020年6月、9価ワクチン(ガーダシル9)に「中咽頭がんとその他の頭頸部がんの予防」を迅速承認で加えました。根拠は肛門や性器の病変を防いだ効果で、確認の試験が続いています

日本の状況(2026年10月15日時点):

項目 状況
女性 定期接種(小学6年〜高校1年相当)
男性 任意接種(全額自己負担)。4価は2020年12月、9価は2025年8月に男性への使用が承認。効能は肛門がん・尖圭コンジローマで、中咽頭がんは入っていない
男性の定期接種化 2026年7月22日の小委員会、10月8日の予防接種基本方針部会とも継続審議
自治体の助成 東京都は区市町村が男性の接種費用を助成する事業に補助している(令和6年度〜)

HPV ワクチンと口の HPV 感染の研究には、ワクチンのメーカーが資金や人で関わったものが多くあります(Herrero 2013 はメーカーがワクチンを提供)。

よくある疑問

キスでうつる?

米国の男子大学生210人の研究で、口を開けたキスの相手の数が、口の HPV 感染と関連していました(D’Souza 2009)。ただし、これは HPV 感染との関連で、がんとの関連を調べた研究ではありません。

子宮頸がん検診や血液検査で分かる?

分かりません。中咽頭がんの検診は確立しておらず、腫瘍マーカーで見つけるものでもありません(腫瘍マーカーの記事)。首のしこり、のどの違和感や痛み、耳の痛み、飲み込みにくさなどが続くときは、耳鼻咽喉科で相談してください。

若い人もなる?

日本頭頸部癌学会の全国登録(2019年症例、2,322人)では、60代と70代が中心です。ただ、HPV 陽性の人は陰性より若く、59歳以下が3人に1人でした。

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

紹介したもの 購入先
ビズジーン アルコール分解型判定キット(VGAL-01) 楽天市場で見る(ビズジーン) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
ハーセリーズ アルコール感受性遺伝子検査キット 『アルコール感受性遺伝子分析キット』 PR
頭頸部癌診療ガイドライン 2025年版(日本頭頸部癌学会 編) 楽天市場で見る(楽天ブックス) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
バイオティーン オーラルバランスジェル 42g 楽天市場で見る(マツモトキヨシ) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
ピジョン ハビナース クリンスマイル 口腔保湿ジェル 60g 楽天市場で見る(サンドラッグ) PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
ウェルネスダイニング やわらか宅配食 PR
食楽膳(SOMPOケアの冷凍おかず宅配) 管理栄養士監修、嚥下対応の冷凍惣菜を自宅へ【食楽膳】 PR
ワタミの宅食ダイレクト 介護食(やわらかおかず・ムース食) “冷凍惣菜”をご自宅まで宅配便でお届け!【ワタミの宅食ダイレクト】 PR
ニコチネル パッチ20(14枚) 楽天市場で見る(サンドラッグ) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
ニコレット(96個) 楽天市場で見る(楽天24) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
アルプス ヴァン フリー 赤 720ml(アルコール0.00%) 楽天市場で見る(フェリシティー) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
サントリー のんある酒場 レモンサワー 350ml×24本 楽天市場で見る(楽天24) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR

まとめ

  • 中咽頭がんには、HPV が原因のものと、タバコ・お酒が原因のものがあり、年齢・症状・生存率が違う
  • 日本の中咽頭がんは増えている(2016→2023年に3,609人→4,307人)。増えているのはおもに HPV 陽性のがん
  • 「確実」な原因は HPV16・喫煙・飲酒。乳製品・砂糖・小麦が原因だという評価機関の判定はなく、研究も割れている
  • 治療は手術・放射線・化学放射線療法が基本。HPV 陽性でも治療を軽くするのは標準ではない。2026年2月に手術の前後の免疫療法が日本で承認された
  • 3年生存率は HPV 陽性で約8割、陰性で約5〜6割
  • 予防は禁煙・節酒と HPV ワクチン。日本では男性のワクチンは任意接種で、定期接種化は審議中

ご注意 この記事は一般的な情報で、診断や治療の代わりにはなりません。治療は主治医と相談して決めてください。ここで紹介した商品は、がんを防いだり治したりするものではありません。医薬品は添付文書をよく読み、用法・用量を守ってください。お酒は20歳になってから。価格・送料は変わることがあります。

参考にした資料

  • 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」全国がん登録 罹患データ(2016〜2023年、詳細部位)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん」患者数・治療のページ、でんし冊子「中咽頭がん」(2026年4月作成)https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/ ・ https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/116-2E.pdf
  • 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン ファクトシート追補版」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001224778.pdf
  • 厚生労働省「2016年 全国がん登録 5年生存率報告書」(2026年1月)https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001630334.pdf
  • Japan Society for Head and Neck Cancer. Report of Head and Neck Cancer Registry of Japan, Clinical Statistics of Registered Patients, 2019
  • IARC Global Cancer Observatory: Cancer Today(GLOBOCAN 2022・2024)・Cancer Tomorrow https://gco.iarc.who.int/
  • IARC「List of classifications by cancer sites with sufficient or limited evidence in humans」(Volumes 1–141)
  • WCRF/AICR「Diet, nutrition, physical activity and cancers of the mouth, pharynx and larynx」(2018)https://www.wcrf.org/wp-content/uploads/2024/10/mouth-pharynx-larynx-cancer-report.pdf
  • 国立がん研究センター がん対策研究所「がんのリスク・予防要因 評価一覧」(2026年5月版)、「喫煙・飲酒と頭頸部がん」https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/9821.html
  • 東京都保健医療局「HPVワクチンの男性への接種について」(2026年7月更新)
  • 米国 CDC「How Many Cancers Are Linked with HPV Each Year?」、SEER*Explorer(Oropharynx & Tonsil)
  • Kawakita D, et al. Cancer Med 2022(PMID 35029329)/Saito Y, et al. Cancer 2013(PMID 23504914)/Tsuchida K, et al. Anticancer Res 2024(PMID 38159973)/丹生健一・土井麻理子 保健医療科学 2023;72(4)
  • Chaturvedi AK, et al. J Clin Oncol 2011(PMID 21969503)/Van Dyne EA, et al. MMWR 2018(PMID 30138307)/Zumsteg ZS, et al. J Natl Cancer Inst 2023(PMID 37603716)
  • Kreimer AR, et al. J Clin Oncol 2013(PMID 23775966)・Ann Oncol 2019(PMID 31185496)/D’Souza G, et al. N Engl J Med 2007(PMID 17494927)/Gillison ML, et al. J Natl Cancer Inst 2008(PMID 18334711)/Cho H, et al. Oral Oncol 2020(PMID 32259682)/Sonawane K, et al. Ann Intern Med 2017(PMID 29049523)
  • Hashibe M, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2009(PMID 19190158)・J Natl Cancer Inst 2007(PMID 17505073)/Asakage T, et al. Carcinogenesis 2007(PMID 17071628)/Boccia S, et al. 2009(PMID 19124505)
  • Hashim D, et al. Ann Oncol 2016(PMID 27234641)/Boffetta P, et al. Eur J Cancer Prev 2016(PMID 26275006)/Marks MA, et al. 2014(PMID 24351902)/Grulich AE, et al. Lancet 2007(PMID 17617273)
  • Bravi F, et al. 2013(PMID 24149181)/Peters ES, et al. 2008(PMID 18642285)/Yuan S, et al. 2019(PMID 31789344)/Rodriguez-Archilla A, et al. 2023(PMID 37650016)/Augustin LSA, et al. 2003(PMID 14575363)/Gormley M, et al. eLife 2023(PMID 37042641)/Kawakita D, et al. Int J Cancer 2017(PMID 28710831)/Chuang SC, et al. 2012(PMID 22037906)/Galeone C, et al. 2010(PMID 20570908)/Xu J, et al. 2014(PMID 24736706)
  • Carpén T, et al. Acta Otolaryngol 2018(PMID 29161981)/Ang KK, et al. N Engl J Med 2010(PMID 20530316)/O’Sullivan B, et al. Lancet Oncol 2016(PMID 26936027)/Grønhøj C, et al. Oral Oncol 2018(PMID 30098768)/Saito Y, et al. Jpn J Clin Oncol 2014(PMID 24729622)
  • Gillison ML, et al. Lancet 2019(RTOG 1016、PMID 30449625)/Mehanna H, et al. Lancet 2019(De-ESCALaTE、PMID 30449623)/NRG-HN005(ASTRO 2024)/Shin AJ, et al. Front Oncol 2026(PMID 42769207)
  • Uppaluri R, et al. N Engl J Med 2025(KEYNOTE-689、PMID 40532178)/MSD「キイトルーダ 電子添文改訂のお知らせ」(2026年2〜3月)
  • PMDA アキャルックス 審査報告書/PMID 40867300・42581129(光免疫療法)/PMID 41391462・41875914(陽子線)/PMID 42752531(PDS0101)/PMID 42606335(HPV-DeepSeek)
  • Nutting CM, et al. Lancet Oncol 2011(PARSPORT、PMID 21236730)/Nutting C, et al. Lancet Oncol 2023(DARS、PMID 37423227)
  • Herrero R, et al. PLoS One 2013(PMID 23873171)/Chaturvedi AK, et al. J Clin Oncol 2018(PMID 29182497)/PMID 42604649(米国の電子カルテ研究 2026)
  • デイリースポーツ「ペナルティ・ワッキー 中咽頭がん」2020年6月8日・2026年6月4日

よくある質問

中咽頭がんとは? 原因はタバコ・お酒・HPV、乳製品や砂糖は関係ある? 日本で増える理由と最新の治療・生存率の結論・要点は?
中咽頭がんの原因で「確実」とされるのはHPV16・喫煙・飲酒の3つで、乳製品・砂糖・小麦は結論が未定です。日本の患者は2016年から2023年に約2割増えて4,307人、約半分がHPV陽性。3年生存率は陽性82.4%、陰性57.1%です。
中咽頭はどこ?
のど(咽頭)は、上から上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分かれます。中咽頭は真ん中で、口を開けたときに見える奥の部分です(がん情報サービス)。厚生労働省の HPV ワクチンのファクトシートは、中咽頭を次の4つの壁に分けています。
2つの中咽頭がん:HPV 陽性と陰性についてはどうなっていますか?
中咽頭がんは、がんの組織を調べて HPV 陽性(p16 陽性)か 陰性かを分けます。2017年からは、国際的な病期(ステージ)分類も2つで別の表を使うようになりました(AJCC/UICC 第8版。日本の『頭頸部癌取扱い規約』も第6版から同じ)。HPV 陽性は、昔の分類で病期を進めても生存率がほとんど変わらず、病期で見通しを分けられなかったためです。
中咽頭がんは増えているのかについてはどうなっていますか?
国立がん研究センターの全国がん登録で、中咽頭がん(舌根・扁桃・中咽頭)と診断された人は、2016年の3,609人から2023年の4,307人に増えました。人口の高齢化の影響を除いた年齢調整罹患率も、1.67から1.92(人口10万人あたり)へ上がっています。

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.15)。