日本と海外の違い説の検証確認日 2026.09.30

乳製品のとりすぎは日本人に悪い? 外国人との違い、日本と外国の乳製品事情、「ヨーグルトの国」ブルガリアまで

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「牛乳は日本人の体に合わない」「乳製品をとりすぎるとがんになる」。一方で「カルシウムが足りないから牛乳を飲もう」とも言われます。

どちらが本当なのでしょうか。この記事では、

  • 日本と外国で、乳製品をどれくらい食べているのか
  • 乳糖(牛乳の糖)を分解できる人の割合は、日本人と外国人でどう違うのか
  • 日本人を長く追跡した研究で、乳製品と病気の関係はどう出ているのか。外国の研究とは何が違うのか
  • 「ヨーグルトの国」ブルガリアの人は、本当に乳製品に強いのか
  • 裏面で見分ける、牛乳・ヨーグルト・チーズの種類

を、国の統計と論文で確かめます。

結論

  • 日本人が食べる乳製品は、欧米の3分の1〜4分の1です(国民1人1年あたり、日本90kg、アメリカ262kg、フランス393kg。生乳に換算)
  • 日本人の研究では、今の日本人の量の範囲で、乳製品が多い人のほうが脳卒中や(男性の)死亡、(閉経後の女性の)骨折が少ないという結果が多く出ています。日本人はカルシウムが推奨量より少ないため、その不足を補う形になっている可能性があります
  • 外国で「とりすぎ」の害が話題になった研究(スウェーデン)は、牛乳を1日3杯(600ml)以上飲む人のものです。日本の20歳以上の平均は、乳類全体で1日108gです
  • ただし前立腺がんは、日本人の研究でも、乳製品や牛乳が多い男性で1.4〜1.6倍ほど多いという結果が2つ出ています。世界がん研究基金も「増やす可能性がある(証拠は限定的)」としています。国立がん研究センターの評価は「データ不十分」です
  • 乳糖を大人になっても分解できる人は、デンマークやイギリスで9割以上、日本人では少数です。ただ、分解しにくい人の多くも、牛乳コップ1杯分(乳糖12g程度)までなら症状が出にくいとされています。ヨーグルトやチーズは乳糖が少なくなっています
  • 「ブルガリア人がいちばん乳製品に強い」という根拠は見つかりませんでした。2025年のブルガリアの小規模な調査では、74%が乳糖を分解しにくい遺伝子の型でした。ブルガリアは、生の牛乳ではなく発酵させたヨーグルトの文化の国です

この記事で紹介しているもの

記事の中で、論点に合わせて次のものを紹介しています(楽天市場のリンクです)。

こんな人に 紹介しているもの 場所
牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする 乳糖を約8割分解した乳飲料(雪印メグミルク アカディ) 乳糖が気になる人の選び方
乳糖をほとんどとらずにカルシウムをとりたい 原材料が生乳と食塩だけのチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ) 乳糖が気になる人の選び方
ブルガリア由来のヨーグルトを食べてみたい・家で作りたい 明治ブルガリアヨーグルト(原材料は生乳と乳製品)、ヨーグルトメーカー 家でヨーグルトを作るなら

日本と外国の乳製品事情

日本の量は、欧米の3分の1〜4分の1

農林水産省が国連食糧農業機関(FAO)のデータから試算した、国民1人1年あたりの牛乳・乳製品の量です。チーズやバターも、もとの生乳の重さに換算しています。

国民1人あたりの牛乳・乳製品の量(1年、2023年)国民1人1年あたりの牛乳・乳製品の供給量(生乳に換算、バターを含む、2023年)。フランス393.2kg、オランダ368.7kg、スイス356.1kg、ドイツ324.2kg、スウェーデン313.8kg、イタリア292.4kg、オーストラリア275.1kg、イギリス273.7kg、カナダ268.3kg、アメリカ262.3kg、スペイン219.2kg、日本90.1kg。日本は欧米の約4分の1〜3分の1。0kg100kg200kg300kg400kg生乳に換算した重さ(チーズ・バター・ヨーグルトも含む)フランスフランス 393.2kg393.2オランダオランダ 368.7kg368.7スイススイス 356.1kg356.1ドイツドイツ 324.2kg324.2スウェーデンスウェーデン 313.8kg313.8イタリアイタリア 292.4kg292.4オーストラリアオーストラリア 275.1kg275.1イギリスイギリス 273.7kg273.7カナダカナダ 268.3kg268.3アメリカアメリカ 262.3kg262.3スペインスペイン 219.2kg219.2日本日本 90.1kg90.1
農林水産省「食料需給表 令和7年度」参考表「諸外国の国民1人・1年当たり供給食料(2023年)(試算)」から作成。生乳換算、バターを含む。供給量(出回った量)で、実際に食べた量とは少し違います。

日本は90.1kg(1日あたり約250g)で、ヨーロッパや北米の国のおよそ3分の1〜4分の1です。

アジアの国やブルガリアは、この表に入っていません。FAO の同じ基準(バターを除く)の数字でくらべると、次のとおりです。

国 1人1年あたり(FAO、2022年)
オランダ 311kg
フィンランド 265kg
ギリシャ 231kg
アメリカ 229kg
ブルガリア 172kg
日本 62kg
中国 34kg
韓国 32kg

(FAO「Food Balance Sheets」の Milk - Excluding Butter を Our World in Data 経由で取得。農水省の表とは計算の基準が違うため、日本の数字が異なります)

日本は、中国・韓国よりは多く、欧米よりはずっと少ない、という位置です。

日本の移り変わり:牛乳は減り、チーズ・ヨーグルトが増えた

日本の牛乳・乳製品の量の移り変わり(1人1年あたり)日本の国民1人1年あたりの牛乳・乳製品の供給量(生乳換算)。1960年度22.2kg→1980年度65.3kg→2000年度94.2kgで頭打ち、2024年度90.7kg。内訳は、飲む牛乳向けが1996年度40.8kgをピークに2024年度30.2kgへ減り、チーズ・ヨーグルトなど乳製品向けが1960年度10.5kgから2024年度60.3kgへ増えた。02550751001960197019801990200020102020kg飲む牛乳チーズ・ヨーグルトなど1960年度 22kg2000年度 94kg2024年度 91kg牛乳は1996年度が最多
農林水産省「食料需給表」品目別累年表(令和6年度確報、e-Stat)の「牛乳及び乳製品」「飲用向け生乳」「乳製品向け生乳」の1人1年当たり供給純食料から作成。生乳換算。
  • 1960年度の22kgから、2000年度の94kgまで、約4倍に増えました。戦後の学校給食で牛乳(はじめは脱脂粉乳)が出されるようになったことも、広まるきっかけの一つです
  • その後はほぼ横ばいで、2024年度は90.7kg、2025年度(概算)は88.2kgです
  • 中身は変わりました。飲む牛乳は1996年度の40.8kgが最多で、2024年度は30.2kg。かわりにチーズ・ヨーグルトなどの乳製品向けが1960年度の10.5kgから60.3kgに増えています

日本人は年代でこんなに違う

2023年の国民健康・栄養調査で、乳類(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)を1日にどれだけとっているかを見ると、次のとおりです。

年代 乳類(1日) カルシウム(1日)
7〜14歳 313g 624mg
20〜29歳 94g 422mg
30〜39歳 88g 420mg
40〜49歳 86g 411mg
50〜59歳 93g 449mg
60〜69歳 118g 516mg
70〜79歳 129g 546mg
20歳以上の平均 108g 482mg

(厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査 結果の概要」から)

いちばん多いのは給食の牛乳がある7〜14歳です。大人になると3分の1以下に減り、40代がいちばん少なくなります。

カルシウムの推奨量(日本人の食事摂取基準2025年版)は、成人男性で1日750〜800mg、成人女性で650mgです。20歳以上の平均482mgは、男女とも推奨量に届いていません。

国がすすめる量のくらべ

日本 アメリカ イギリス EU
乳製品の目安 1日「2つ」(牛乳ならコップ1杯200ml、ヨーグルトなら2パック) 1日3カップ分(2025〜2030年版の食事指針。脂肪をのぞいていない乳製品もよいと変更) 量の数字は示さず、「いくらかの乳製品か代わりのもの」 国ごとに決める
カルシウムの推奨量(成人) 男性750〜800mg、女性650mg 1,000mg(19〜50歳) 700mg 950mg(25歳以上、EFSA)

(厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」、日本人の食事摂取基準2025年版、米国 Dietary Guidelines for Americans 2025–2030、英国 Eatwell Guide、EFSA の食事摂取基準から)

日本の目安は、アメリカの約3分の1です。国によって、すすめる量そのものが大きく違います。

乳糖を分解できる人の割合

北欧・イギリスは9割以上、日本人は少数

牛乳の糖(乳糖)は、小腸の酵素(ラクターゼ)で分解されます。この酵素は多くの人で離乳のあとに減り、大人になっても働き続ける人(ラクターゼ持続)は、長く牛乳を飲んできた地域に多いことが分かっています。

地域 大人になっても乳糖を分解できる人の割合 調べ方
アイルランド 96% 血糖の検査(50人)
デンマーク 96% 血糖の検査(91人)
イギリス 96% 3つの調査(計292人)
ドイツ 86% 7つの調査(計1,286人)
フィンランド 84% 4つの調査(計1,044人)
フランス 63% 6つの調査(計413人)
ギリシャ 54% 5つの調査(計1,116人)
イタリア 40% 14の調査(計915人)
日本 28% 血糖の検査(40人、1975年)
中国北部(漢族) 8% 呼気の検査(248人)

(Itan 2010, BMC Evolutionary Biology の付表から、国ごとに人数で重みをつけて計算。検査の方法や年代がそろっていないため、目安として見てください)

日本人のデータは古く、人数も少ないものしかありません。遺伝子で見ると、ヨーロッパで乳糖の分解にかかわる型(-13910T)は、調べた日本人62人に1人もいませんでした(同じ付表)。

2025年に発表された日本の調査(弘前市岩木地区の住民843人、2023年の健診)では、乳製品でおなかの症状が出ると答えた人は22.7%でした。症状のある人は牛乳とカルシウムの摂取が少なく、骨密度も低い傾向がありました。

注意 「世界の68%は乳糖を分解しにくい」という数字は、2017年の論文(Lancet Gastroenterology & Hepatology)からよく引用されますが、この論文は2025年1月に撤回されています。この記事では使っていません。

分解しにくくても、少しなら大丈夫な人が多い

乳糖を分解しにくい人でも、すぐに症状が出るわけではありません。米国の研究のまとめ(Wilt 2010)では、多くの人は乳糖12〜15g(牛乳コップ1杯ほど)までなら症状が出にくいとされています。24gを超えると症状がはっきりしてきます。

食品ごとの乳糖の量は、次のとおりです。

1回分に含まれる乳糖の量1回分の量に含まれる乳糖。牛乳コップ1杯(200ml)約9.1g、乳糖を約8割分解した乳飲料は計算上約1.8g、プレーンヨーグルト100gは2.9g、クリームチーズ20gは約0.5g、カマンベール・パルメザン・プロセスチーズは0g。乳糖不耐の人の多くは12g程度までなら症状が出にくいとされる(Wilt 2010)。0g4g8g12g多くの人が症状なくとれる目安 12g牛乳 コップ1杯(200ml≒206g)牛乳 コップ1杯(200ml≒206g) 9.1g9.1g乳糖を約8割分解した乳飲料 200ml乳糖を約8割分解した乳飲料 200ml 1.8g1.8gプレーンヨーグルト 100gプレーンヨーグルト 100g 2.9g2.9gクリームチーズ 20gクリームチーズ 20g 0.5g0.5gカマンベール 20g0.0gパルメザン(粉) 5g0.0gプロセスチーズ 20g0.0g
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」炭水化物成分表の乳糖(100gあたり、牛乳4.4g・プレーンヨーグルト2.9g・クリームチーズ2.4g・カマンベール0g・パルメザン0g・プロセスチーズ0g)から1回分に計算。乳糖を分解した乳飲料は「乳糖約80%分解」(雪印メグミルク)から計算した目安。12gの線は Wilt 2010。
  • ヨーグルトは、乳酸菌が乳糖の一部を分解するので、牛乳より少なくなります。EU の食品安全機関(EFSA)は2010年、「ヨーグルトの生きた菌(ブルガリア菌とサーモフィルス菌)は、乳糖を分解しにくい人の乳糖の消化を助ける」と認めています
  • 熟成したチーズは、乳糖がほとんど残っていません。乳糖はチーズを作るときに水分(ホエイ)と一緒に抜け、残りも熟成の間に分解されます
  • 日本の小さな研究(2023年、32人)では、牛乳を30mlから少しずつ増やして約6週間で200mlまで慣らすと、9割の人で症状が軽くなりました。ただし比べる群のない試験です。試すなら体調を見ながら、症状が強い人は医師に相談してください

乳糖が気になる人の選び方

牛乳でおなかがゴロゴロする人が、乳製品を続けたいときの選び方です。

1. 乳糖を分解した牛乳を選ぶ

乳糖を酵素であらかじめ分解した乳飲料があります。雪印メグミルクの「アカディ」は、乳糖を約80%分解しています。種類別は「乳飲料」、原材料名は「乳(国内製造)、乳製品」です。分解に使う酵素は原材料名に出てこないため、裏面では「乳糖分解」の表示で見分けます。

2. 熟成したチーズでカルシウムをとる

パルメザン(粉チーズ)は、食品成分表で乳糖0g、カルシウムは100gあたり1,300mgです(牛乳は110mg)。パルミジャーノ・レッジャーノはイタリアの原産地呼称の決まりで作り方が定められたハードチーズで、原材料名は「生乳、食塩」だけです。粉にして料理にかければ、少ない量でカルシウムを足せます。塩分はあるので、量は大さじ1杯(約5g)程度が目安です。

3. 一度にたくさん飲まない

同じ量でも、食事と一緒に、何回かに分けてとると症状が出にくいとされます。

ご注意 牛乳アレルギーは、乳糖ではなく牛乳のたんぱく質への反応です。乳糖を分解した牛乳やチーズでも症状が出ます。アレルギーの人は使えません。

日本人の研究と外国の研究

病気ごとのまとめ

乳製品と病気の関係を、日本人を長く追跡した研究と、外国の研究・研究のまとめに分けて並べました。どれも「食べ方と病気の関係」を見た観察研究で、乳製品が原因だと確かめたものではありません。

病気 日本人の研究 外国の研究・まとめ 国際機関・国の評価
前立腺がん JPHC(男性43,435人):乳製品が最も多い群で1.63倍(牛乳1.53倍、ヨーグルト1.52倍)/JACC(男性26,464人):牛乳が最も多い群で1.37倍 32研究のまとめ:乳製品1日400gごとに1.07倍(Aune 2015)。進行がん・死亡では関係なし(Zhao 2023) 世界がん研究基金:増やす可能性(証拠は限定的)/国立がん研究センター:データ不十分
大腸がん 国内で乳製品についての結論なし(カルシウムは「可能性あり・下げる」) 31研究のまとめ:乳製品が多い群で0.79倍(Jin 2020) 世界がん研究基金:おそらく下げる/国立がん研究センター:乳製品はデータ不十分
脳卒中 JPHC(41,526人):乳製品からのカルシウムが最も多い群で0.69倍/JACC:牛乳を毎日飲む男性で脳卒中死亡0.80倍(女性ははっきりせず) 研究のまとめ:牛乳・低脂肪乳製品で低い傾向(Sharifan 2025。根拠の確からしさは「弱い〜示唆的」) ―
死亡(全体) JPHC(93,310人):男性で0.87〜0.89倍、女性は関係なし/宮城(34,161人):男女とも関係なし スウェーデン:牛乳1日3杯以上の女性で1.93倍/米国(21.7万人):1日4.2回分(乳製品の1回分)の群で1.07倍 ―
骨折 JPOS(閉経後女性1,429人):牛乳1日1杯で0.71倍、2杯以上で0.57倍/JPHC:カルシウムが最も少ない女性で背骨の骨折2.10倍 スウェーデン:女性で牛乳1杯ごとに大腿骨骨折1.09倍/女性19.5万人のまとめで関係なし(Bischoff-Ferrari 2011) ―
2型糖尿病 ― 22研究のまとめ:乳製品1日200gごとに0.97倍、ヨーグルト1日80gで0.86倍(Gijsbers 2016) ―
パーキンソン病 ― 研究のまとめ:乳製品が多い群で1.21〜1.40倍。牛乳1日200gごとに10万人あたり年2〜4人増える計算(Jiang 2014、Yang 2026) ―
ニキビ ― 14研究(7.8万人)のまとめ:乳製品をとる若い人で1.25倍(Juhl 2018) ―
食道がん・膵臓がん JACC:どちらも関係なし 膵臓がん5研究のまとめ:関係なし ―

(倍率は、乳製品が最も少ない群〔またはとらない人〕を1としたときの値。JPHC=多目的コホート研究、JACC=文部科学省の大規模コホート研究、JPOS=日本人女性の骨粗しょう症コホート研究)

日本人の研究と外国の研究で、結果が違うのはなぜか

1. 量の範囲がまったく違う

日本の研究で「最も多い群」は、宮城の研究で1日211〜325gでした。スウェーデンの研究で死亡が多かったのは、牛乳だけで1日600ml以上の人です。日本人の研究は、外国では「少ない〜ふつう」にあたる範囲をくらべています。

2. 日本人はカルシウムが足りていない

JPHC の脳卒中の研究は、「カルシウムの平均摂取量が少ない日本人で」調べたと書いています。日本人の多くは推奨量に届いていないため、乳製品が多い人ほど不足が小さくなり、良い方向の結果が出やすいと考えられます。欧米のようにもともと十分にとっている人では、さらに増やしても同じ効果は期待できません。

3. 前立腺がんは例外

前立腺がんは、日本人の研究でも、日本人の量の範囲で「多い人ほど多い」という結果が2つ出ています。牛乳が血液中の IGF-1(成長にかかわるホルモン)を増やすことが、仕組みの候補として挙げられています(日本人1万人の調査でも、牛乳が多い人で IGF-1 が高めでした)。

一方で、前立腺がんは PSA 検診で見つかる数が大きく変わるがんで、健康に気をつかう人ほど検診を受けやすいという偏りもあります。進行がんや死亡でくらべると関係が見られなかったまとめもあり、国立がん研究センターは「データ不十分」としています。

日本人にとっての「とりすぎ」とは

乳製品の量のものさし(1日あたり)1日あたりの乳製品の量のくらべ。日本の20歳以上の平均は108g、7〜14歳は313g。食事バランスガイドの目安「2つ」は牛乳コップ1杯(200ml)ほど。宮城県の研究で最も多く食べる群は211〜325g。スウェーデンの研究で死亡や骨折が多かったのは牛乳1日3杯以上(600ml以上)の女性。アメリカの食事指針は1日3カップ(約720ml)。0200400600800(g・ml)日本の20歳以上の平均 国民健康・栄養調査 2023年(乳類)日本の20歳以上の平均 108108日本の7〜14歳の平均 給食の牛乳を含む日本の7〜14歳の平均 313313日本の目安(食事バランスガイド「2つ」) 牛乳ならコップ1杯(200ml)日本の目安(食事バランスガイド「2つ」) 200200宮城の研究で最も多い群 死亡との関係は見られず宮城の研究で最も多い群 211〜325g211〜325スウェーデンで死亡・骨折が多かった群 牛乳1日3杯以上(女性)スウェーデンで死亡・骨折が多かった群 600約600以上アメリカの食事指針の目安 1日3カップ(1カップ約240ml)アメリカの食事指針の目安 720約720
日本の平均は厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」(乳類)、目安は食事バランスガイド、宮城の研究は Lu 2022(最も多い群の範囲)、スウェーデンは Michaëlsson 2014(BMJ)、アメリカは Dietary Guidelines for Americans 2025–2030。牛乳は1ml≒1gとして同じ目盛りに並べた。
  • 国や国際機関は、乳製品の「上限」を決めていません。カルシウムには上限があり、日本の基準では成人1日2,500mgです。食事だけでここに届くことはほとんどなく、サプリメントとの重ねどりで注意するものです
  • 外国で害が話題になった量(牛乳1日600ml以上)は、日本の大人の平均の5倍以上です
  • 日本の目安の「2つ」(牛乳コップ1杯分ほど)は、日本人の研究で良い方向の結果が出ている範囲に入っています
  • 前立腺がんが心配な男性は、牛乳を大量に飲む習慣を見直す、という考え方はありえます。ただ、日本の研究の「最も多い群」がどのくらいの量かは、論文の抄録からは読み取れませんでした

ブルガリアの人は乳製品に強い?

ヨーグルトの国になったわけ

  • 1900年代のはじめ、ロシア帝国出身の研究者メチニコフが、ブルガリアの農村の人が長生きなのは発酵乳(ヨーグルト)をよく食べるからではないか、と考えました。ここから、腸内の細菌と健康を結びつける考え方が広まりました
  • ヨーグルトを作る菌の一つは「ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)」と名づけられています
  • 日本の「明治ブルガリアヨーグルト」は、1970年の大阪万博のブルガリア館がきっかけで生まれ、1972年にブルガリア政府から国名を使う許可を得て、1973年に発売されました(明治の発表から)
  • ブルガリアには、ヨーグルト(キセロ・ムリャコ)のほかに、白いチーズ(シレネ)やカシュカヴァルなど、発酵させた乳製品の伝統がたくさんあります

乳糖を分解できる人は多くない

2025年にブルガリアの医学誌に載った予備的な調査(Chengolova ほか)では、遺伝子の検査を受けた31人のうち、

  • 乳糖を分解しにくい型(C/C):23人(74%)
  • どちらの遺伝子も持つ型(C/T):7人(23%)
  • 分解できる型(T/T):1人(3%)

でした。一方で、203人へのアンケートで「乳糖不耐がある」と答えた人は6.7%だけでした。研究者は、自覚している人は少ないが、遺伝子では分解しにくい人が多いと報告しています。

人数が少ない予備的な調査ですが、ヨーロッパ全体の研究のまとめ(Itan 2009)でも、大人になっても乳糖を分解できる人は東ヨーロッパ・南ヨーロッパで15〜54%、イギリス諸島・北欧で89〜96%とされています。「乳製品に強い」のは、ブルガリアよりも北欧・イギリス・アイルランドです。

ブルガリアで食べられてきたのは、生の牛乳ではなく、乳糖が一部分解されたヨーグルトやチーズでした。乳糖を分解しにくい人が多い土地で、発酵させて食べる文化が根づいたと考えると、つじつまが合います(ただし、これを直接確かめた研究は見つけられませんでした)。

量は日本の約3倍、でも欧米より少ない

FAO の同じ基準でくらべると、ブルガリアの乳製品は1人1年172kgで、日本(62kg)の約3倍ですが、オランダ(311kg)やフィンランド(265kg)より少なくなっています。

「ヨーグルトで長生き」は今のデータと合わない

メチニコフの時代の「ブルガリアは長寿」というイメージとは逆に、EU の統計局(Eurostat)によると、2024年のブルガリアの平均寿命は75.9歳で、EU で最も短い国です(EU 平均81.7歳)。平均寿命は喫煙や医療など多くのことで決まるので、ヨーグルトの影響だけを取り出すことはできません。「ヨーグルトを食べれば長生きできる」とは言えません。

家でヨーグルトを作るなら

ブルガリアのヨーグルトに近いものを食べたいなら、原材料が生乳と乳製品だけのプレーンヨーグルトを選びます。「明治ブルガリアヨーグルト LB81 プレーン」は、種類別「発酵乳」、原材料名「生乳(国産)、乳製品」です(明治の商品ページ。特定保健用食品の許可を受けていますが、この記事では原材料と由来だけを紹介します)。

市販のプレーンヨーグルトを種にして、牛乳から増やすこともできます。牛乳パックのまま温度を保てるヨーグルトメーカーを使うと手軽です。容器やスプーンは清潔にし、できたものは冷蔵して早めに食べてください。

気をつけたい人

  • 牛乳アレルギーの人:乳糖を分解した牛乳やチーズでも症状が出ます。医師の指示に従ってください
  • 乳糖でおなかの症状が出る人:量を減らす、分けてとる、ヨーグルト・チーズ・乳糖分解乳に替える、という方法があります。症状が強い、ほかの病気が心配なときは消化器内科に相談してください
  • 前立腺がんの家族歴がある男性:牛乳を大量に飲む習慣があれば、見直す考え方もあります。検診については医師と相談してください
  • 腎臓病で治療中の人:乳製品はリンやカリウムを含みます。量は担当医・管理栄養士の指示に従ってください
  • カルシウムのサプリメントを使っている人:食事と合わせて上限(成人1日2,500mg)を超えないようにします

裏面チェックのポイント

牛乳は「種類別」を見る

牛乳のパックには「種類別」の欄があり、中身のちがいが分かります(乳及び乳製品の成分規格等に関する命令)。

種類別 中身
牛乳 生乳だけ。成分の調整をしていない(無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分3.0%以上)
成分調整牛乳 生乳から水分や脂肪などの一部を除いたもの
低脂肪牛乳 乳脂肪分を0.5〜1.5%に減らしたもの
無脂肪牛乳 乳脂肪分を0.5%未満に減らしたもの
加工乳 生乳に脱脂粉乳やバターなどの乳製品を加えたもの。乳製品と水以外は加えられない
乳飲料 乳や乳製品に、乳製品以外のもの(コーヒー、果汁、カルシウム、ビタミン、甘味料など)を加えたもの。乳糖分解乳もここに入る

原料が生乳だけなのは「牛乳」「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」の4つです。乳飲料は、原材料名に砂糖や香料、安定剤などが並ぶことがあります。

ヨーグルトは原材料名を見る

  • プレーンヨーグルトは、原材料名が「生乳、乳製品」だけのものが多くあります
  • 「加糖」「フルーツ」などは、砂糖・果糖ぶどう糖液糖・安定剤(ペクチン、ゼラチンなど)・香料が加わります。果糖ぶどう糖液糖については果物の果糖の記事も参考にしてください
  • 「乳酸菌飲料」は発酵乳とは別の種類で、乳の成分が少なく、糖が多いものがあります

チーズは「ナチュラル」と「プロセス」

  • ナチュラルチーズ:乳を固めて作ったもの。熟成タイプは乳糖がほとんど残っていません
  • プロセスチーズ:ナチュラルチーズを加熱して溶かし、固め直したもの。溶かすときに「乳化剤」(クエン酸ナトリウムやリン酸塩など)が使われることが多く、原材料名に出ます

この記事で紹介した商品のまとめ

アカディ おなかにやさしく パルミジャーノ・レッジャーノ 明治ブルガリアヨーグルト LB81 プレーン アイリスオーヤマ ヨーグルトメーカー
こんな人に 牛乳でおなかがゴロゴロする 乳糖をほとんどとらずにカルシウムを足したい ブルガリア由来のヨーグルトを食べたい 牛乳からヨーグルトを作りたい
原材料名など 乳(国内製造)、乳製品(乳飲料・乳糖約80%分解) 生乳、食塩 生乳(国産)、乳製品(発酵乳) 牛乳パックのまま使える
価格(税込) 900ml×4本 2,360円(送料無料) 200g 1,620円+送料 400g×6個 2,052円(送料無料) 4,180円(送料無料)
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(2026年9月30日に楽天市場の販売ページで確認。価格・送料は変わることがあります)

ウラヨミの考え方

  • 「乳製品は日本人に悪い」「乳製品は体によい」のどちらも、そのままでは言えません。結果は量ともともとの食事で変わります
  • 日本人の大人の平均(1日108g)は、外国で害が話題になった量よりずっと少なく、日本人の研究では目安の範囲で良い方向の結果が多く出ています
  • 前立腺がんは、日本人の研究でも気になる結果があり、はっきりしていません
  • 乳糖を分解しにくい人が多いのは本当です。ただ、少量なら大丈夫な人が多く、ヨーグルトやチーズ、乳糖分解乳という選び方があります
  • 「ブルガリア人は乳製品に強い」「ヨーグルトの国は長寿」は、今のデータとは合いません

出典

  • 農林水産省「食料需給表 令和7年度」(2026年8月)参考表・品目別累年表(e-Stat)
  • 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査 結果の概要」、日本人の食事摂取基準(2025年版)、食事バランスガイド
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(2026年3月27日更新)
  • 国立がん研究センター「がんのリスク・予防要因 評価一覧」(2026年5月26日版)
  • FAO Food Balance Sheets(Our World in Data 経由)/Eurostat(2024年の平均寿命)
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この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.09.30)。