English
ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.03

マーガリンは体に悪い? 歴史・作り方・バターやファットスプレッドとの違い、「プラスチック」「日本だけ」説を確かめる

PR この記事には、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングのアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

パンに塗るマーガリンについては、いろいろな話を聞きます。

「マーガリンは体に悪い」「食べるプラスチックと呼ばれている」「虫も寄ってこない」「日本でしか売られていない」「海外では禁止されている」。一方で、「バターより体にいい」と言われた時代もありました。

Google の検索候補(2026年10月3日、ウラヨミで集計)を見ると、マーガリンについて打たれている言葉は、おおよそ次のように分かれます。

読者の疑問 検索候補の種類数 例
体に悪い・危険・発がん 129 マーガリン 体に悪い/マーガリン 危険性
ファットスプレッド・ショートニングとの違い 80 マーガリン ファットスプレッド 違い
不使用・おすすめ・ランキング 83 マーガリン おすすめ/パン屋 マーガリン 不使用
原料・作り方・いつからある 50 マーガリン 原料/マーガリン なぜ作られた
バターとの違い・どっち 41 マーガリン バター どっち が体に悪い
子ども・給食・赤ちゃん・妊娠 37 マーガリン 給食/マーガリン 妊娠中
日本だけ・アメリカ禁止・海外 32 マーガリン 日本だけ/マーガリン アメリカ 禁止
プラスチック・虫・アリ・腐らない 28 マーガリン プラスチック コピペ/マーガリン 蟻 実験

これは検索の回数ではなく、「実際に打たれている問い」の幅です。多くの人が「体に悪いのか」を知りたい一方で、「そもそも何からどう作るのか」「ファットスプレッドとは何か」を知りたい人も、同じくらいいることが分かります。

この記事では、

  • マーガリンはいつ、どこで、何のために生まれたのか(ナポレオン3世・米国のバター業界との戦い・水素添加・日本の人造バター)
  • どうやって作るのか。「部分水素添加」「完全水素添加」「エステル交換」「分別」は何が違うのか
  • 法律上の「マーガリン」「ファットスプレッド」「バター」の違い
  • 昔のマーガリンと今のマーガリンは何が変わったのか(国の3回の調査)
  • 体への影響は、どこまで分かっているのか。バターとどちらがいいのか
  • 「プラスチックと1分子違い」「虫も寄らない」「日本だけ」「海外では禁止」は本当か
  • ラベルのどこを見て選べばよいか、子ども・給食・パンやお菓子はどう考えるか

を、国の統計、法令、公的機関の資料、論文で確かめます。「体に悪い」「体にいい」と一言で決めるのではなく、何が確かめられていて、何が確かめられていないかを分けて書きます。

マーガリン・ショートニング・トランス脂肪酸のシリーズ(3本)

結論

  • マーガリンは、1869年にフランスで特許が出された「バターの代わり」です。ナポレオン3世が安いバターの代わりを求めていた、と伝えられています。最初のマーガリンは、牛脂と牛乳から作りました。「普仏戦争でバターが不足したのがきっかけ」という説明は、特許の出願(1869年7月)が開戦(1870年7月)より前なので、年が合いません
  • 「植物油を固めたマーガリン」になったのは、水素添加の技術のあとです。そして、その副産物であるトランス脂肪酸の害が分かる前、1970〜80年代の米国の報告書は「懸念する理由はほとんどない」と書いていました。1990年のオランダの試験(59人)で流れが変わります
  • 昔のマーガリンと今のマーガリンは、別物です。農林水産省が同じ品目を3回調べた中央値(100gあたり)は、マーガリンで 8.7g(2006・07年度)→0.99g(2014・15年度)→0.65g(2022・23年度)。ただし、調査ごとに試料が違うので、単純な増減ではありません
  • 家庭の冷蔵庫に入っているのは、法律上は「ファットスプレッド」のことが多いです。2025年は、家庭用のマーガリン類 28,787トンのうち、油脂が80%未満の「ファットスプレッド」が 23,987トン(83%)でした。しかも、マーガリン類の85%は、家庭用ではなく業務用です
  • 体への影響で確かめられているのは、血液のLDLコレステロールが上がりHDLコレステロールが下がること(人を使った試験)と、心臓病が増える関連(追跡研究)です。食品安全委員会(2012年)は、日本人の平均の摂取量では「通常の食生活では健康への影響は小さい」と評価しています。「バターとマーガリンのどちらが体に悪い」は、1つの数字では決まりません(パンに塗る10gあたり、飽和脂肪酸はバターが5.05g、マーガリンが2.30g)
  • 「プラスチックと1分子違い」「虫も寄らない・腐らない」は、2003年ごろに英語圏で出回ったチェーンメールが出どころで、事実ではありません。「日本だけ」も誤りで、世界のマーガリン生産は約938万トン(2020年)、日本は1.5%です。米国が禁止したのは「部分水素添加油」で、マーガリンそのものではありません
  • 規制がなくても、日本の原料は入れ替わりました。マーガリン類の原料に占める硬化油の割合は、10.2%(2016年)から3.2%(2025年)へ。2018年3月には、明治と雪印メグミルクが家庭用を「部分水素添加油脂不使用」に切り替えました
  • 選ぶときに見るのは、名称(マーガリンかファットスプレッドか)・油脂含有率・「部分水素添加油脂不使用」の表示・10gあたりの飽和脂肪酸とトランス脂肪酸です。「トランス脂肪酸0g」は、100gあたり0.3g未満なら書ける、という指針の運用で、実測のゼロではありません

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
部分水素添加油脂を使わないマーガリン・ファットスプレッド トランス脂肪酸の量を、公表値で確かめて選びたいとき マーガリンの選び方とラベルの読み方
バター マーガリンとバターを比べたいとき、バターに替えたいとき バターを選ぶときの見方
パンに塗るほかの油脂(オリーブオイルなど) マーガリンやバター以外の塗り方・つけ方を探すとき パンに塗るほかの選択肢

マーガリンはどうやって生まれた?

マーガリンの歴史を、世界と日本に分けて並べた年表。世界は、1869年にフランスで特許の出願(メージュ=ムーリエ、牛脂と牛乳)、1886年に米国で連邦のマーガリン税、1901年にノルマンが水素添加の実験に成功、1950年に米国で連邦税を廃止、1958年に米国で供給量がバターを初めて上回る、1976年に最多(1人あたり11.9ポンド)、1990年に Mensink と Katan の試験(59人)でトランス型の脂肪酸の食事は LDL が高く HDL が低かった、1993年に看護師85,095人の追跡研究で冠動脈疾患が1.50倍(観察研究)、2005年に供給量がバターを再び下回る、2015年に FDA が PHO を GRAS から外し、2018年に規制が始まる。日本は、1887年に人造バターとして輸入、1908年に帝国社が国産化(いずれも原典は未確認)、1913年に尼崎に硬化油の工場(原料は魚油)、1970年に最初の JAS、1989〜90年に家庭用の中心がファットスプレッドへ、2012年に食品安全委員会の評価書、2018年3月に明治・雪印メグミルクが部分水素添加油脂の使用をやめる、2024年3月にラーマ終了、2025年に硬化油の割合は3.2%(2016年は10.2%)。
図:マーガリンの年表(Fondation Napoléon、米国農務省 ERS、AOCS、触媒学会、FDA、日本マーガリン工業会、農林水産省、食品安全委員会 をもとに作成)(押すと拡大)

マーガリンの歴史は、「バターが足りない・高い」から始まり、「バターより体にいい」を経て、「トランス脂肪酸」で転機を迎える、という流れをたどります。ここでは、できごとを年表にして、資料で食い違うところは両方書きます。

1869年、フランスで特許が出された

  • フランスの化学者イポリット・メージュ=ムーリエが、1869年7月15日にフランスで、7月17日に英国で特許を出願しました(フランス特許 No.86480。ナポレオン財団の資料)。なお、フランスの脂質研究者のサイトは、同じ特許の日付を「1869年10月20日に受理」とも書いています。出願日と受理日の違いかもしれませんが、確かめられませんでした
  • 最初の製法は、牛脂を砕いて水で洗い、消化酵素で処理して取り出した液状の脂を、脱脂乳や牛の乳腺組織などと混ぜるものでした。水素添加はまだなく、植物油も使っていません
  • 1873年の米国特許(US 146,012)には、「乳牛が自分の脂肪を再吸収してバターに変える自然の働きを、人工的に再現する」と書かれています。化学としては誤った理解だったと評価されていますが、牛脂を低温で処理してにおいの少ない脂を取り出し、牛乳と混ぜるとバターに似た風味になる、という発見そのものは本物でした

ナポレオン3世は、「安いバターの代わりを求めていた」とされています。ただ、よく書かれる「懸賞に応募して賞金を得た」という話は、確かめられませんでした。

資料 書いてあること
フランスの脂質研究者のサイト 1866年のパリ万博のときに、政府が安い脂肪源を募った
百科事典(英語版) 1870年に政府から賞を受けた
英国の非営利団体の解説 1869年に政府が特許を与えた、とだけ書く
米国の雑誌(ナショナル ジオグラフィック) 「巨額の賞金」と書くが、金額は書かない

賞金の額・受賞の年・条件を書いた一次資料は、見つかりませんでした。この記事では「ナポレオン3世が安いバターの代わりを求めていた」までにとどめます。

「普仏戦争がきっかけ」は、年が合わない

日本の食品業界紙などに、「普仏戦争でバターが不足し、ナポレオン3世が懸賞をかけた」という説明が出てきます。しかし、特許の出願(1869年7月)は、普仏戦争の開戦(1870年7月19日)より前です。順序が逆なので、「戦争がきっかけ」とは書けません。パリが包囲された1870〜71年に使われた、という話は資料にあります。

名前の由来:真珠

「マーガリン」の名前については、2つの説明があり、両立します。

  • 日本マーガリン工業会:製造の途中で脂の粒が真珠のように見えたので、ギリシャ語の「margarite(真珠)」から
  • フランスの脂質研究者のサイト:1813年にシュヴルールが名づけた「margaric acid」(のちにパルミチン酸とステアリン酸の混合物と分かった)にちなみ、メージュ=ムーリエが「oleo-margarine」と名づけた

酸の名前そのものが、真珠のような光沢に由来します。

ヨーロッパへの広がり

  • 1871年、オランダのバター商ユルゲンス(のちにユニリーバの源流になった会社)に製法が渡りました。当時のオランダには特許法がなかったため、売ったのは「特許」というより「製法の知識」だったとする研究があります
  • 各国への導入は、ドイツ1872年、オーストリア1873年、米国1874年、ノルウェー1876年、スウェーデンとデンマーク1884年、英国1889年(フランスの脂質研究者のサイト)。英国は工業会の資料では1895年で、資料によって食い違います
  • 1900年のデンマークでは、1人あたり年間でバター約7kg、マーガリンは8kg近かったとされます(久野愛『視覚化する味覚』の抜粋。二次資料)。オランダ・ドイツ・デンマークでは、1900年までにマーガリンがバターと同程度かそれ以上だった、とも書かれています
  • フランス自身も、上院が1897年4月6日に、マーガリンの着色の禁止と、同じ場所でバターとマーガリンを売ることの禁止を可決しています

米国では「色」をめぐる戦いになった

米国では、マーガリンはバター業界との争いの的になりました。バターより安く、バターのように黄色く着色できたからです。

年 できごと
1884〜1891年 バーモント州(1884年)・ニューハンプシャー州(1891年)・サウスダコタ州(1891年)が、「バターの代用品は、ピンク色でなければ売ってはならない」という「ピンク法」を作る
1886年8月2日 連邦の「オレオマーガリン法」。製造業者に年600ドル、卸売に480ドル、小売に48ドルの特別税、さらに製品1ポンドあたり2セントの税(着色そのものは禁じていない)
1894年 連邦最高裁(Plumley 対 マサチューセッツ州):バターの黄色に似せたマーガリンの販売を禁じる州法は、合憲
1898年 連邦最高裁(Collins 対 ニューハンプシャー州):ピンク色を強いる州法は、違憲
1898年/1902年 着色を禁じた州は、1898年までに26州(スミソニアン)、1902年までに32州(ナショナル ジオグラフィック)。数字が食い違います
1902年 連邦法の改正で、着色したマーガリンは1ポンド10セント、着色しないものは1/4セントに(スミソニアン)
1950年3月16日 連邦のマーガリン税を廃止する法律が成立(7月1日施行)。百科事典は「1951年」と書きますが、法令の原文は1950年です
1967年 ウィスコンシン州が、最後まで残った州の規制を終える(百科事典など)

白いマーガリンに黄色い着色料の小袋を付けて、家で混ぜさせる売り方も広がりました。「黄色くすることを禁じる州法は合憲で、ピンクにすることを強いる州法は違憲」という、ちぐはぐな状態が長く続いたことになります。

米国の人は、バターとマーガリンをどれだけ食べてきたか1人あたり・1年の供給量(ポンド。1ポンドは約454g)。食べた量そのものではなく、出回った量から割り出した数字マーガリンバター05101520191019301950197019902010マーガリンの統計は2010年で終わり1958年 8.91958年 マーガリンが初めてバターを上回るマーガリン8.9 > バター8.41976年 11.91976年 マーガリンが最多(11.9)バターは4.32005年 4.02005年 マーガリン4.0 < バター4.5再び逆転(マーガリンは2010年に3.5)1909年 バター17.91909年 マーガリン1.22021年 バター6.5出典:米国農務省 経済研究局(ERS)の油脂・乳製品の供給量データ。バターの2011年以降は乳製品の統計から。ERS はバター以外の油脂の統計を2010年で打ち切っている。1957年は両方8.5で、1958年にマーガリンが上回った。「供給量」は食べた量ではなく、出回った量から割り出した数字。
出典:米国農務省 経済研究局(ERS)の油脂・乳製品の供給量データ(1人あたり。2026年10月3日確認)

この争いの結果は、米国人の食卓の数字に表れています。ERS の統計では、1人あたり年間の供給量は次のように動きました。

  • 1909年:バター17.9ポンド、マーガリン1.2ポンド(1ポンドは約454g)
  • 1958年:マーガリン8.9ポンドが、バター8.4ポンドを初めて上回る
  • 1976年:マーガリンが11.9ポンドで最多(バターは4.3ポンド)
  • 2005年:マーガリン4.0ポンドが、バター4.5ポンドを再び下回る
  • 2010年:マーガリン3.5ポンド(ERS はこの年で油脂の統計を打ち切りました)

1946年の価格は、1ポンドあたりマーガリン0.23ドル、バター0.71ドルでした(ERS)。ERS は、バターの消費が増えた一因について、「マーガリンのトランス脂肪酸への懸念と、飽和脂肪酸はそれほど悪くないという最近の見方が一因かもしれない」と書いています。あくまで推測で、原因が確かめられているわけではありません。なお、これは「食べた量」ではなく、出回った量から割り出した「供給量」です。

水素添加が、牛脂から植物油への切り替えを可能にした

マーガリンの原料が牛脂から植物油に変わっていくうえで、欠かせなかったのが水素添加です。液体の植物油に水素を結びつけて、常温で固い脂に変える技術です。

  • 1897年(1899年とする資料もあります)、フランスのサバティエが、ニッケルを使って気体の水素をくっつける反応を見つけました(1912年にノーベル賞)
  • 1901年2月27日、ドイツのノルマンが、液体のオレイン酸にニッケルと水素を作用させ、ステアリン酸(固い脂肪酸)を得る実験に成功しました。ドイツの特許は1902年8月14日付、英国の特許は1903年です
  • 1914年、第一次世界大戦でヨーロッパにバター不足が起き、油脂の部分水素添加でマーガリンの製造が始まった、と触媒学会の資料が書いています
  • 米国では、1930年代には国産の植物油を部分水素添加したものが主流になり(ERS)、1950年ごろにはメーカーがほぼ植物油に切り替えた、とされます
  • クジラ油の硬化は、国際的な捕鯨規制で1950年以降は使われなくなり、魚油に置き換わりました(フランスの脂質研究者のサイト)

同じ技術から、1911年に米国で「Crisco」が生まれました。ショートニングの歴史は ショートニングの記事 に書きます。

ここで、見落とされがちなことが1つあります。水素添加の途中で「トランス脂肪酸」ができることを、当時の化学者は認識していなかったとされます(米国油化学会 AOCS の解説。二次資料)。1920年に米国最高裁がクリスコの特許を無効にしたころも、そうでした。

「バターより体にいい」から、転換へ

植物油から作ったマーガリンは、長いあいだ「バターより体にいい」と考えられていました。その経緯を、資料の残っている範囲でたどります。

年 できごと
1961年 米国心臓協会(AHA)が、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えることを勧める(JAMA)
1976年 米国実験生物学会連合(FASEB)の報告(FDA の依頼):硬化大豆油について「公衆への危険を示す証拠はない」
1985年8月 FASEB の報告:トランス脂肪酸の安全性について、「今の摂取量でも将来の予想量でも、懸念する理由はほとんどない」
1989年 FDA は、欧州でマーガリンに使われていた部分水素添加の魚油(メンハーデン油)を GRAS(一般に安全と認められる)と判断
1990年8月16日 オランダの Mensink と Katan(NEJM):健康な59人(女性34人・男性25人)が、3種類の食事を各3週間ずつ、順番を無作為に食べる試験。トランス型の脂肪酸の食事は、オレイン酸の食事より LDL が14mg/dL 高く、HDL が7mg/dL 低かった
1993年3月6日 米国の Willett ら(Lancet):看護師85,095人を8年追跡し、トランス脂肪酸の摂取が最も多いグループは、最も少ないグループの冠動脈疾患が 1.50倍(95%信頼区間 1.12〜2.00)。観察研究
1993年10月・1994年2月 米国の消費者団体(CSPI)が、トランス脂肪酸の表示を求めて FDA に書簡・請願
1999年11月 FDA が表示案を公表。FDA は「1980年代後半の連邦政府や米国科学アカデミーの報告は、有害な影響はなさそうとした」と書いた
2006年1月 米国の栄養成分表示で、トランス脂肪酸が義務に
2015年6月17日 FDA の最終決定:部分水素添加油(PHO)は GRAS ではない。遵守期限は2018年6月18日。完全水素添加油と、牛などに由来する天然のトランス脂肪酸は対象外

1976年と1985年の報告の引用は、CSPI の請願書(団体の文書)にもとづきます。団体の立場がある文書なので、原典(FASEB の報告書)は確かめられていません。

この表から言えるのは、「当時は安全とされていた」と「いまは違う」の両方が事実である、ということです。科学は更新されます。1990年の試験が出るまで、トランス脂肪酸が血液の脂質に与える影響は、公的な報告書では重く見られていませんでした。逆に言えば、いま「確かだ」と言われていることも、新しい研究で更新されることがあります。

日本のマーガリン:人造バターから

日本の歴史は、二次資料を中心に、次のように伝えられています。

  • 1887年に「人造バター」として輸入され、1908年に帝国社(横浜)が国産化した(久野愛の岩波新書の抜粋と百科事典の2つが一致しますが、原典は確かめていません)
  • 辞書(日本国語大辞典)の用例に、ミルクホールで出る「マアガリン」を、嫌なにおいのするものとして書いた1926年の文章があります
  • 「人造バター」から「マーガリン」に呼び名が変わったのは、1952年11月とする資料と、1954年とする資料があります(原典は確かめていません)
  • マーガリンの最初の JAS(日本農林規格)は、1970年(昭和45年)3月24日の農林省告示です

マーガリンの原料の油を固める「硬化油」の工業は、魚油から始まりました。

  • 1908年、農商務省の工業試験所の辻本満丸が、魚油の水素化に成功しました
  • 英国のリーバー・ブラザーズは、1910年に日本に石けん・グリセリン・硬化油の工場を建設し、1913年(大正2年)に尼崎で、日本最初の硬化油の製造を始めました(日本・アジアで最初の硬化油製造工場とされます)。原料は日本近海の魚油です
  • 花王石鹸が、1928年に食用の硬化油(ヤシ油)の製造を始めました
  • 原料の魚油は、石けんやマーガリンの原料の硬化油として、ヨーロッパに大量に輸出されていました(触媒学会)

日本の水素添加は、魚油から始まったのです。この話は、あとの「原料の入れ替わり」でもう一度出てきます。

生産量は、農林水産省の統計を日本マーガリン工業会が転載したものと、工業会の会員の統計からたどれます。

年 マーガリン(類)の生産量 ショートニングの生産量 注
1926年 618トン — 業界全体
1940年 7,840トン — 業界全体
1945年 826トン — 戦争中の落ち込み
1950年 20,060トン — 業界全体
1960年 43,029トン 45,637トン ショートニングが初めてマーガリンを上回ったのは1959年
1970年 108,440トン 77,038トン
1980年 222,289トン 136,816トン
1990年 249,715トン 175,833トン 1986年以降は、ファットスプレッドを含む「マーガリン類」
2009年 233,833トン 207,643トン 業界全体の最後の年
2016年 225,275トン 251,272トン 会員のみ(ショートニングはこの年が最大)
2025年 192,749トン 185,329トン 会員のみ

2010年から、工業会の統計は会員企業だけの集計になり、2009年以前(業界全体)とは連続しません(工業会の注記)。1945年は終戦の年で、826トンまで落ち込みました。その3年後の1948年には22,422トンと、約27倍に戻っています。

マーガリンはどうやって作る?

マーガリンの中身は、油の中に、水が細かい粒になって散らばったもの(油中水型)です。バターと同じ形で、油脂の量は80%前後、水分は十数%です。作り方は「液体の油を、常温で固い脂にする」部分と、「油と水を混ぜて、なめらかに固める」部分に分かれます。

工程:油と水を混ぜ、急に冷やして練る

日本マーガリン工業会と日本食品油脂検査協会の手引書(厚生労働省のサイトに掲載。2020年)では、家庭用マーガリンの工程は次のとおりです。

  1. 原料の受け入れ・計量(原料の油脂/水・食塩・粉乳/乳化剤・着色料・香料)
  2. 油の側と水の側を、それぞれ混ぜて溶かす
  3. 乳化:50〜60℃でかき混ぜて、油と水を混ぜる
  4. 殺菌:例として63℃・30分(重要な管理の点)
  5. ろ過
  6. 急冷練り合わせ:冷やしながら練って固める
  7. 充填・成型・包装、金属検査
  8. 熟成、保管、出荷

水の側には、塩や香料が入ります。乳化には乳化剤(大豆由来のレシチンなど)が使われます(くわしくは 乳化剤の記事)。完成品の水分は約13〜16%で、水分活性は0.901〜0.924と、手引書に書かれています。

1940年代には、冷やしながら練る装置(かき取り式熱交換器、商品名「ボテーター」)が工程を密閉・連続化し、のちに包装機と一体になりました(フランスの脂質研究者のサイト。特許番号や開発者は確かめられませんでした)。

日本で開発されたのが「逆相型」のマーガリンです。通常は油の中に水が散らばりますが、逆相型は水の中に油が散らばった形で、固い油脂を使っても全体が硬くならず、伸ばしやすいとされます。二重乳化型は、逆相型の外側をさらに油で包んだものです(日本マーガリン工業会)。

固くするための4つの方法

植物油を常温で固くする4つの方法を比べた図。液体の油(植物油)から矢印が4本出て、部分水素添加・完全水素添加・エステル交換・分別に分かれる。部分水素添加は、触媒(ニッケルなど)を加えて加熱し、水素を送って不飽和の部分の一部を飽和させる。完全水素添加は、同じ方法でほぼすべてを飽和させる(極度硬化油)。エステル交換は、触媒(ナトリウムメトキシドなど)や酵素で脂肪酸の位置を入れ替える。分別は、油を冷やし、融点の違いで固い部分と柔らかい部分に分ける(パーム油からパームステアリンを取るなど)。トランス脂肪酸は、部分水素添加が「できやすい」、完全水素添加が「通常の精製油なみ(2%未満、FDA)」、エステル交換が「トランス型の脂肪酸が結合していない油ができる(農林水産省)」、分別が「加工による増加はない」。2025年の日本の会員企業の原料(マーガリン類)は、硬化油4,760トン(3.2%、完全硬化油も含む)、エステル交換油57,451トン(39.1%)、分別油4,505トン(3.1%)、加工していない油80,193トン(54.6%)。下の帯に、ラベルの「食用精製加工油脂」だけではどの方法か分からず、「部分水素添加油脂不使用」のような別の表示が手がかりになる、とある。
図:油を固くする4つの方法(JAS 1424、農林水産省、FDA、触媒学会、雪印メグミルク、日本マーガリン工業会「原料使用量」2025年 をもとに作成)(押すと拡大)

植物油は、常温では液体です。パンに塗れるくらいの固さにするには、油の中の脂肪酸の種類や並び方を変えます。方法は大きく4つあります。

方法 しくみ トランス脂肪酸 日本の会員企業の原料(2025年、マーガリン類)
部分水素添加 触媒(ニッケルなど)を加えて加熱し、水素を送り、不飽和の部分の一部を飽和させる できやすい 硬化油 4,760トン(3.2%)※完全硬化油も含む
完全水素添加 同じ方法で、不飽和の部分をほぼすべて飽和させる 通常の精製油なみ(FDA は不完全分で2%未満) 上の硬化油に含まれる
エステル交換 触媒(ナトリウムメトキシドなど)や酵素で、脂肪酸の位置を入れ替える トランス型の脂肪酸が結合していない油ができる(農林水産省) 57,451トン(39.1%)
分別 油を冷やして、融点の違いで固い部分と柔らかい部分に分ける(パーム油からパームステアリンを取るなど) 加工による増加はない 4,505トン(3.1%)

そのほか、加工をしていない油(パーム油など)を、そのまま使う分が80,193トン(54.6%)あります。

水素添加の反応条件の例は、ニッケル系の触媒(油に対して質量で0.05〜0.15%)、水素の圧力が常圧〜0.5MPa、温度が120〜175℃です(触媒学会)。この過程で、トランス脂肪酸が副産物としてできます。

農林水産省は、トランス脂肪酸ができる理由を次のように説明しています。

  • 水素添加(硬化処理)や、高温での脱臭で、不飽和脂肪酸のシス型の二重結合の一部が、トランス型に変わることがある
  • 牛などの反すう動物の胃の中の微生物でも、同じことが起こる
  • 揚げ物(160〜200℃、繰り返し加熱)でも起こるが、ごく微量で影響は無視できる

「部分」と「完全」は別物です。米国 FDA の定義では、ヨウ素価(不飽和の度合いの目安)が4を超えるものが部分水素添加油(PHO)、4以下が完全水素添加油(FHO)です。FHO でも反応は100%にならず、トランス脂肪酸は精製油と同じ程度(2%未満)残ります。精製しただけの普通の植物油にも、高温の脱臭で、一般に2%未満のトランス脂肪酸ができます。牛などの脂肪には、約3%含まれます(FDA)。

日本の原料は、この10年で入れ替わった

マーガリン類の原料:硬化油は減り、エステル交換油が増えた日本マーガリン工業会の会員の原料油(硬化油・非加工油・分別油・エステル交換油の合計)に占める割合(%)硬化油(完全硬化油を含む)エステル交換油0%10%20%30%40%20162017201820192020202120222023202420252016年:10.2%2017年:8.9%2018年:8.0%2019年:6.9%2020年:6.3%2021年:5.0%2022年:4.2%2023年:3.6%2024年:3.5%2025年:3.2%2016年:31.3%2017年:33.3%2018年:34.3%2019年:34.9%2020年:34.9%2021年:37.6%2022年:37.8%2023年:38.6%2024年:39.1%2025年:39.1%2016年 10.2%3.2%2016年 31.3%39.1%硬化油の量:2016年 17,286 t → 2025年 4,760 t。うち動物性(魚油など)は、マーガリン類で 4,380 t → 224 t。硬化油には完全硬化油も含まれ、トランス脂肪酸の多い部分水素添加油だけの数字ではない。会員企業だけの集計。出典:日本マーガリン工業会「原料使用量」2016〜2025年(ウラヨミで再集計。精製油ベース)。
出典:日本マーガリン工業会「原料使用量」2016〜2025年の各年のデータを、ウラヨミで再集計(2026年10月3日確認)

日本マーガリン工業会が公表している原料の使用量を、ウラヨミで年ごとに集計し直しました。マーガリン類(ファットスプレッドを含む)に使う原料の油の変化は、次のとおりです。

  • 硬化油:17,286トン(2016年)→4,760トン(2025年)。原料の合計に占める割合は 10.2%から3.2%
  • エステル交換油:53,067トン(31.3%)→57,451トン(39.1%)
  • 硬化魚油(硬化油のうち動物性):4,380トン(2016年)→224トン(2025年)。日本の水素添加の起点だった魚油の使い方が、ほぼなくなりました
  • 「硬化油(植物+動物)」「加工していない油」「分別油」「エステル交換油」の合計に対する割合です

大事な注意が3つあります。

  • 「硬化油」には完全硬化油も含まれるため、トランス脂肪酸の多い部分水素添加油だけの数字ではありません
  • 集計は工業会の会員企業だけです
  • 「硬化油が減った」ことは、トランス脂肪酸がゼロになったことを意味しません

日本には、トランス脂肪酸の上限や表示の義務がありません(くわしくは トランス脂肪酸の記事)。それでも、規制のない市場で、原料は入れ替わりました。きっかけの1つが2018年の米国の規制だった、というのが企業の説明です(後述)。

なお、2026年1〜6月(半年)の原料使用量では、マーガリン類72,153トンのうち、エステル交換油が28,247トン、非加工のパーム油が13,694トン、非加工のなたね油が8,646トン、硬化油が2,232トン(植物性2,160トン・動物性72トン)でした。ほかの油も使われています。

「食用精製加工油脂」と書かれているとき、中身は読めない

ここで、ラベルの話に戻ります。食品表示基準は、食用の油脂を原材料名に書くときに、次のような「まとめた名前」を使ってよいと決めています。

  • 植物油、植物脂、植物油脂
  • 動物油、動物脂、動物油脂
  • 加工油、加工脂、加工油脂

つまり、「食用植物油脂」「食用精製加工油脂」と書かれていても、中身が部分水素添加なのか、エステル交換なのか、分別なのかは分かりません。「ショートニング」「硬化油」「トランス脂肪酸」という言葉は、食品表示基準の本文には出てきません(e-Gov の全文を検索して0件。2026年10月3日)。マーガリン類・ショートニングの JAS(日本農林規格)にも、「トランス脂肪酸」「部分水素添加」の語は出てきません。ただし、食用精製加工油脂そのもの(業務用の油脂)の JAS では、名称に「硬化油」などを併記する決まりがあります。

雪印メグミルクは、食用精製加工油脂には水素添加・分別・エステル交換の加工油脂があり、部分的に水素添加した油脂を作る工程でトランス脂肪酸ができる、と説明しています。だから、ラベルの「食用精製加工油脂」だけでは判断できず、「部分水素添加油脂不使用」のような別の表示が手がかりになります。

「植物油脂」という書き方そのものの意味は、植物油脂の記事 にまとめています。

また、トランス脂肪酸を減らす方法が、別の脂肪酸を増やすこともあります。創健社は、公式の Q&A で、原料の一部に完全に水素添加された油脂(極度硬化油)を使い、トランス脂肪酸の多い部分水素添加油脂は使っていない、と説明しています。完全水素添加は飽和脂肪酸に変わる、ということです。

法律上、マーガリン・ファットスプレッド・バターはどう違う?

「マーガリン」と「ファットスプレッド」の違いは、検索候補でも80種類ありました。答えは、油脂の量です。

項目 マーガリン ファットスプレッド バター
根拠 食品表示基準・JAS 0932 同じ 乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)
油脂の量 油脂含有率 80%以上 油脂含有率 80%未満(風味原料を加えたものも) 乳脂肪分 80.0%以上
水分 17.0%以下 油脂含有率+水分が85%以上(砂糖・蜂蜜・風味原料入りは65%以上) 17.0%以下
乳脂肪 40%未満 40%未満かつ油脂中50%未満 乳脂肪が主原料
表示 名称「マーガリン」 名称「ファットスプレッド」。油脂含有率をパーセントで表示する義務がある 名称「バター」
  • マーガリン類の定義は、食用油脂に水などを加えて乳化し、急冷練り合わせをした、可塑性(力を加えると形が変わり、そのまま保たれる性質)または流動状のものです
  • マーガリンの水分の上限は、2008年のJAS の見直しで、旧規格の「16.0%以下。ただし業務用(25g以下を除く)は17.0%以下」から、17.0%以下にそろえられました。バターと同じ数字です。農林水産省は、業務用として区分されている水分17%の製品も一般消費者向けに市販されているため、17.0%以下に統一した、と説明しています
  • 見直しのときに、融点の基準(家庭用35℃以下)も削除されています。農林水産省は、一般消費者向けの製菓・製パン用の製品も、業務用と同様に融点の幅が広いことを理由にしています。当時の国内工場は26、JAS の格付率は87%(2006年度)でした

JAS は任意の規格です。「JAS に合わなければマーガリンと名乗れない」わけではありません(食品表示基準に別の定義があります)。

家庭の冷蔵庫のマーガリンは、8割以上がファットスプレッド

では、実際に売られているのはどちらでしょうか。日本マーガリン工業会(会員)の統計で、家庭用の内訳を並べます。

年 家庭用の「マーガリン」 家庭用の「ファットスプレッド」
1986年 86,524トン 1,887トン
1989年 60,690トン 25,034トン
1990年 23,847トン 54,798トン
2000年 12,227トン 58,484トン
2010年 11,348トン 43,037トン
2020年 13,550トン 25,577トン
2025年 4,801トン 23,987トン(83%)

1989年から1990年の1年で、家庭用の「マーガリン」と「ファットスプレッド」が入れ替わりました。合計はほぼ同じ(85,724トン→78,645トン)なので、低脂肪のスプレッドタイプに商品が移ったか、区分が変わったことが考えられますが、どちらなのかは確かめられませんでした。

  • 2025年の家庭用のマーガリン類は 28,787トン。そのうち「マーガリン」は4,801トン、残りの23,987トン(83%)は法律上「ファットスプレッド」です
  • 家庭用の「マーガリン」は、2023年の7,805トンから2024年の4,952トンへ大きく減りました。工業会は、2024年に家庭用マーガリンの生産を終えた会社の影響、と説明しています(会社名は書かれていません。家庭用からの撤退の例として、後述のラーマがあります)。家庭用のファットスプレッドは、2023年23,175トン、2024年24,027トン、2025年23,987トンと、ほぼ横ばいです
  • マーガリン類の85%は、家庭用ではなく業務用です。2025年は、業務用が163,419トン、家庭用が28,787トン、学校給食用が543トンでした(合計192,749トン)

「家のマーガリンの話」だけでは、マーガリン類の全体像は見えません。パンやお菓子、外食で使われる分が、ほとんどです。

つまり、冷蔵庫のマーガリンのパッケージを裏返すと、名称の欄は「ファットスプレッド」で、油脂含有率が60%や66%と書いてある、ということが多いはずです。たとえば、明治「コーンソフト」は油脂含有率60%、雪印メグミルク「ネオソフト」は66%、同「ネオソフト べに花」は39%と、各社の公式ページに書かれています。

今のマーガリンは、昔のマーガリンと別物?

「マーガリンは体に悪い」という話の根拠は、多くが昔のマーガリンの数字です。ここでは、国が同じ品目を3回調べた結果を並べます。

油脂のトランス脂肪酸:農林水産省の3回の調査食品100gあたり(g)の中央値。かっこ内は調べた点数と、いちばん低い値〜高い値2006・07年度2014・15年度2022・23年度02468101214マーガリンマーガリン 2006・07年度:8.7g(20点)8.7(20点・0.36〜13)マーガリン 2014・15年度:0.99g(46点)0.99(46点・0.44〜16)マーガリン 2022・23年度:0.65g(60点)0.65(60点・0.33〜1.3)ファットスプレッドファットスプレッド 2006・07年度:6.1g(14点)6.1(14点・0.99〜10)ファットスプレッド 2014・15年度:0.69g(33点)0.69(33点・0.32〜4.4)ファットスプレッド 2022・23年度:0.48g(60点)0.48(60点・0.20〜1.3)ショートニングショートニング 2006・07年度:12.0g(10点)12(10点・1.2〜31)ショートニング 2014・15年度:1.0g(24点)1(24点・0.46〜24)ショートニング 2022・23年度:0.61g(12点)0.61(12点・0.52〜0.86)農林水産省は「調査ごとに試料の採り方・銘柄が違い、違いは増減だけを表すものではない。点数はおおよその目安」と注意している。2022・23年度は販売量を考えて試料を選んだ。2014・15年度は販売量を考えず、一般用と業務用の両方を含む。出典:農林水産省「食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査」(平成18・19年度、平成26・27年度、令和4・5年度)。
出典:農林水産省「食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査」3回分(中央値。2026年10月3日確認)

農林水産省は、トランス脂肪酸を、優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質の1つに選んで、年度ごとに品目を決めて含有量を調べています。

品目 2006・07年度 2014・15年度 2022・23年度
マーガリン 8.7g(20点) 0.99g(46点) 0.65g(60点)
ファットスプレッド 6.1g(14点) 0.69g(33点) 0.48g(60点)
ショートニング 12g(10点) 1.0g(24点) 0.61g(12点)

(食品100gあたり、中央値)

  • いちばん低い値〜高い値の範囲を見ると、マーガリンは、2006・07年度が0.36〜13g、2014・15年度が0.44〜16g、2022・23年度が0.33〜1.3gです。2014・15年度のショートニングは最大24gでしたが、2022・23年度は最大0.86gでした
  • 農林水産省は、「調査ごとに試料の採り方・銘柄が違い、違いは増減だけを表すものではない」と注意しています。2022・23年度は販売量を考えて試料を選び、2014・15年度は販売量を考えずに一般用と業務用の両方を調べました。調査点数も「国内流通の分布を把握するには十分ではなく、おおよその目安」としています
  • そのうえで農林水産省は、「平成18・19年度と26・27年度に比べて、トランス脂肪酸が全体的に減少傾向」とまとめています

自分で計算した例です(公式の評価ではありません)。2022・23年度のマーガリンは、最大でも100gあたり1.3gで、脂質は81%以上です。脂肪100gあたりに直すと最大でも約1.6gです。EU や WHO が勧める上限は、脂肪100gあたり2g(天然のものを除く)なので、この調査では、マーガリン60点の全部が、その水準に収まる計算になります。ただし、分析では天然由来と工業由来を区別できません。ファットスプレッドは、脂質との組み合わせが分からないので計算できません。

食品安全委員会は、飽和脂肪酸が増えたと書いた。農林水産省は、増えていないと書いた

トランス脂肪酸を減らすと、その分、固さを保つために飽和脂肪酸が増えることがあります。これについて、日本の2つの調査は食い違っています。

調査 結果
食品安全委員会(2006年度と2010年度で、同じ銘柄を比較。2012年の評価書) 一般用マーガリンのトランス脂肪酸は、平均5.28g→3.13g(約41%減)。業務用マーガリン・ショートニングは、2006年度の10分の1以下(ほとんどの試料で約1g)。一方で飽和脂肪酸は、業務用マーガリンで29.9g→40.9g(1.4倍)、業務用ショートニングで23.9g→45.4g(1.9倍)に増えた。評価書は「飽和脂肪酸の増加に留意」と書いた
農林水産省(2022・23年度) 飽和脂肪酸は「大きな変動なし」。「トランス脂肪酸の低減に伴い、飽和脂肪酸が増加する傾向は確認されなかった」

試料も、年度も、一般用と業務用の割合も違うので、両方を書くしかありません。「飽和脂肪酸が増えたかどうか」は、調べ方によって答えが違う、ということです。飽和脂肪酸の健康への影響については、研究者のあいだでも意見が割れています(植物油と動物性の油の記事)。

規制がなくても、企業が先に動いた

日本には、トランス脂肪酸の上限も、表示の義務もありません。それでも、数字は下がりました。何が起きたのでしょうか。

  • 2018年3月:明治は、家庭用マーガリン類の対象10商品で、部分水素添加油脂の使用をやめ、「部分水素添加油脂不使用」のロゴを包装に付けました。雪印メグミルクは、14商品(とショートニング1商品)で、部分水素添加油脂の使用を取りやめました。米国で FDA の規制が始まる2018年6月に合わせた切り替えです(明治は、プレスリリースでその旨を明記しています)
  • 雪印メグミルクは、切り替えの理由を、「消費者にマーガリンがトランス脂肪酸を多く含む食品というイメージが広がり、買い控えにつながっている」と説明しました(日刊工業新聞、2018年2月)。明治は、資料の中で、「米国 FDA が除外したのは『トランス脂肪酸を含む部分水素添加油脂』なのに、日本では『トランス脂肪酸』が使用禁止になるかのように伝わった」と書いています
  • 2024年3月末:J-オイルミルズが、家庭用マーガリン類(「ラーマ」、1966年発売)の製造・販売を終了しました(発表は2023年11月9日)。理由は「製造設備の老朽化と市場動向」で、業務用は継続しています

ここで押さえておきたいのは、「トランス脂肪酸の量」と「部分水素添加油(PHO)を使うかどうか」は、別の話だということです。FDA が2015年に決めたのは PHO の扱いで、マーガリンの禁止ではありません。なお、ここまでの理由づけは、メーカー自身の説明です。実際に量が減ったかどうかは、前の節の公的な調査の数字で確かめられます。

日本マーガリン工業会(業界団体)は、2024年11月の資料で、多くのマーガリン類の包装に「トランス脂肪酸の低減に取り組んでいます」「原料油脂に、トランス脂肪酸を多く含む食用硬化油(部分水素添加油脂)を使用していません」と表示している、と説明しています。業界団体の資料なので、数字は農林水産省・食品安全委員会の資料と合わせて読むのが確実です。

マーガリンは体に悪い? 研究で分かっていること

先に、書き方のルールを決めます。ここでは「悪い」「安全」と断定しません。研究の種類(人を使った試験か、追跡する観察研究か)・人数・期間・お金の出どころを添えて、確かめられている範囲だけを書きます。

確かめられていること①:血液の脂質(人を使った試験)

1990年の Mensink と Katan の試験(NEJM)が、出発点です。

  • 健康な59人(女性34人・男性25人)が、3種類の食事を、各3週間ずつ、順番を無作為にして食べました(クロスオーバー試験)
  • 食事のエネルギーの10%を、オレイン酸(オリーブ油などに多い脂肪酸)・トランス型のオレイン酸・飽和脂肪酸のどれかに置き換えました
  • オレイン酸の食事と比べて、トランス型の食事は LDL コレステロールが14mg/dL 高く、HDL コレステロールが7mg/dL 低かった。飽和脂肪酸の食事は、LDL が18mg/dL 高かったものの、HDL は変わりませんでした

「トランス脂肪酸は、LDL を上げるだけでなく HDL も下げる点で、飽和脂肪酸より不利」という言い方は、ここから来ています。60の試験をまとめた研究(Mensink ら、2003年)でも、総コレステロールと HDL の比に与える影響は、トランス脂肪酸のほうが飽和脂肪酸の約2倍でした。

確かめられていること②:心臓病(追跡する観察研究)

人を何年も追う研究では、トランス脂肪酸が多い人に冠動脈疾患が多い、という結果が繰り返し出ています。

研究 内容 結果
看護師健康調査(Willett ら、1993年、Lancet) 米国の女性85,095人を8年追跡。冠動脈疾患431件 摂取が最も多いグループは、最も少ないグループの1.50倍(95%信頼区間 1.12〜2.00)。マーガリンを10年間安定して食べていた69,181人では1.67倍(1.05〜2.66)
同(Hu ら、1997年、NEJM) 女性80,082人を14年追跡。939件 エネルギーの2%分が増えると、1.93倍(1.43〜2.61)
同(Oh ら、2005年) 女性78,778人を20年追跡。1,766件 最も多いグループは1.33倍(1.07〜1.66)
メタ分析(de Souza ら、2015年、BMJ) 観察研究のまとめ 冠動脈疾患 1.21倍(1.10〜1.33)。工業由来は1.42倍(1.05〜1.92)、反すう動物由来(天然)は0.93倍(0.73〜1.18)。確実性は冠動脈疾患で「中程度」

ただし、これらは観察研究です。食事のアンケートで摂取量を推定し、ほかの生活習慣の違い(マーガリンや菓子をたくさん食べる人は、ほかの点でも違う)の影響を完全には取り除けません。トランス脂肪酸を減らして、心臓病が実際に減るかを調べた試験は、ありません(食品安全委員会、WHO も、血液の脂質は試験で、病気は観察研究で、と区別しています)。

1993年の研究の時期は、マーガリンのトランス脂肪酸が今よりはるかに多かった時代です。「昔のマーガリンの研究結果を、今のマーガリンにそのまま当てはめられるか」は、別の問題です。

公的な評価:食品安全委員会・厚生労働省・WHO

機関 内容
食品安全委員会(2012年3月) 日本人の平均摂取量は、エネルギーの0.3%(約0.67g/日)。「通常の食生活では健康への影響は小さい」。ただし、脂質に偏った食事をしている人は留意が必要。摂取量の多い方から5%の人は、男性0.70%・女性0.75%、1〜6歳の男児は1.02%でWHOの目標(1%未満)を超える。ただし、食品安全委員会の調査の値で推計し、硬化油・食用植物油由来に限ると、99パーセンタイルでも1%を超えない。農林水産省の調査の上限値を使った推計では、1〜14歳の男性などの99パーセンタイル値が1%を超える
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」 トランス脂肪酸の目標量は設けていない(日本人の摂取量が欧米より少ないため)。ただし「現状のままでよいという意味ではない」として、参考値として1%エネルギー未満、できるだけ低くが望ましいとした。飽和脂肪酸と比べた影響は、日本人の平均の摂取量で計算すると12分の1程度
WHO(2023年) トランス脂肪酸は総エネルギーの1%まで(強い推奨)、さらに1%未満へ(条件付きの推奨)。工業由来と天然を区別しない。2000kcal の食事なら、1%は2.2g/日

食品安全委員会は、日本人の摂取量で病気のリスクとどれだけ関係があるかは、明らかではないとも書いています。評価の後ろ盾は、欧米の研究です。

「体に悪い」と「影響は小さい」は、矛盾しません。有害性(量が多いとき)と、リスク(実際の摂取量のとき)は別の話です。これは トランス脂肪酸の記事 でくわしく扱います。

自分で計算する:食パン1枚のマーガリンのトランス脂肪酸

パンに塗るマーガリンは、1枚あたり8〜10gです(雪印メグミルクの資料の目安)。10gで計算します(ウラヨミの計算です。調査年も試料も違うので、「目安」として読んでください)。

時期 中央値(100gあたり) 10gあたり WHO の目安(2.2g)に達するのは
2006・07年度 8.7g 0.87g マーガリンだけなら約25g
2022・23年度 0.65g 0.065g マーガリンだけなら約340g
  • 2.2g は、2000kcal の食事の1%にあたる量です。実際には、トランス脂肪酸は、マーガリン以外の食品(パン・菓子・揚げ物・乳製品・肉など)からも入ります
  • 10gあたり0.065gは、2.2gの約3%です。昔のマーガリンと今のマーガリンは、別物と言える理由です
  • 一方、「だから食べていい」「だから悪い」という計算ではありません。マーガリンだけで見ると小さく、ほかの食品と足し合わせると、食べ方によっては1%に近い人もいる(食品安全委員会の上位5%の人、女子学生の食事調査 平均0.90%エネルギー〈Yamada ら、2009年、1,136人、横断研究〉など)からです

「トランス脂肪酸が減った」だけでは決まらない:飽和脂肪酸

マーガリンのトランス脂肪酸が減っても、飽和脂肪酸は別です。パンに塗る10gあたりで比べると、次のようになります(後述のグラフ)。

  • 有塩バター:飽和脂肪酸 5.05g
  • 家庭用ショートニング:4.62g
  • 家庭用マーガリン:2.30g
  • ファットスプレッド:2.04g

飽和脂肪酸は、LDL コレステロールを上げます。ただし、研究者のあいだで意見が割れているテーマでもあります。

  • 米国心臓協会(2017年)は、飽和脂肪酸を減らして多価不飽和脂肪酸の植物油に置き換えた試験で、心血管疾患が約30%減ったとして、強く推奨しています(飽和脂肪酸を精製した炭水化物や糖で置き換えても減りません)
  • 一方、2014年のメタ分析(Chowdhury ら)では、飽和脂肪酸は冠動脈疾患と関連が見えませんでした(1.02倍、0.97〜1.07)。2020年の JACC の総説(Astrup ら)は、飽和脂肪酸を減らす勧告に反する証拠が積み上がっているとし、全脂肪の乳製品・無加工の肉・ダークチョコレートなど飽和脂肪酸の多い食品を、これ以上制限する根拠はないとしています

日本人は欧米人より飽和脂肪酸の摂取が少なく、「減らせば減らすほどよい」とは言い切れない研究もあります(くわしくは 植物油と動物性の油の記事)。

ほかの病気は?:がん・認知症など

「マーガリンでがんになる」「認知症になる」という話は、因果が言えない段階です。

  • がん:食品安全委員会は、乳がん・大腸がん・前立腺がんは「研究は多いが結果は一致していない」、そのほかは「結論できない」としています。46論文のメタ分析(2021年)では、前立腺がん(オッズ比1.49)と大腸がん(1.26)は有意で、乳がん(1.12)は有意ではありませんでした。研究の種類は観察研究です
  • 認知症:日本の久山町研究(1,628人・中央値10.3年、2019年)では、血液のエライジン酸(工業由来のトランス脂肪酸の指標)が高い人に認知症とアルツハイマー病が多く、血管性認知症は関連がありませんでした。観察研究で、血液を測ったのは1回です。2022年の系統的レビューは、「どの脂肪酸も、認知症と頑強な関連は見られない」としています(くわしくは 油と認知症・うつ病の記事)
  • 妊婦・胎児:食品安全委員会の評価書は、胎児の体重の減少、流産、死産との関連が報告されている、と書いています。詳しくは トランス脂肪酸の記事
  • 糖尿病:人を使った7つの試験のまとめでは、血糖・インスリンは変わりませんでした(2012年)。食品安全委員会は「結論できない」としています

「マーガリンだけ」を軸にした、長期追跡の大規模なメタ分析は、今回の調査では見つかりませんでした。研究の多くは「トランス脂肪酸」全体を見たもので、マーガリンかどうかは区別していません。

また、トランス脂肪酸をほとんど含まないマーガリンの試験もあります。高コレステロールの77人(35〜65歳。完了は72人)が、バターとの入れ替えで各23日食べた試験(2001年)では、マーガリンの期間は LDL コレステロールがバターより11.3%低くなりました。ただし、この製品を開発した食品会社が関わっており、資金の出どころは記録がありません。

ラベルの読み方

ここからは、売り場でマーガリンを選ぶときの話です。

名前の欄:「マーガリン」か「ファットスプレッド」か

先ほどのとおり、家庭用の8割以上はファットスプレッドです。名称の欄を見ると、どちらなのか分かります。

  • マーガリン:油脂含有率80%以上
  • ファットスプレッド:油脂含有率80%未満。油脂含有率が%で書かれている

油脂含有率が低いほど、水分や、水の側の原料(食塩・粉乳など)の割合が高くなります。同じ10gでも、脂質の量が違います。栄養成分表示の「脂質」「飽和脂肪酸」を、10gあたりにそろえて比べると、違いが見えます。

原材料の欄:食用植物油脂・食用精製加工油脂

原材料名は、使った量の多い順に書かれます。家庭用では、次のような書き方が多く見られます(各社の公式表示。2026年10月3日確認)。

  • 食用植物油脂(国内製造)、食用精製加工油脂、脱脂粉乳、食塩、牛乳/乳化剤(大豆由来)、香料、着色料(β-カロテン)(明治コーンソフト)
  • 食用植物油脂(国内製造)、食用精製加工油脂、食塩、粉乳/乳化剤、香料、着色料(カロテン)(雪印メグミルク ネオソフト)
  • 食用植物油脂(国内製造)、食用精製加工油脂、発酵乳、全粉乳、クリーム、食塩/レシチン(大豆由来)(創健社 べに花ハイプラスマーガリン)

「食用精製加工油脂」の中身は、先ほど書いたとおり、ラベルからは分かりません。乳成分や大豆は、アレルギー表示(一部に乳成分・大豆を含む)で分かります。乳化剤の中身は 乳化剤の記事 にあります。

トランス脂肪酸の欄:「0g」の意味

日本では、トランス脂肪酸の表示は義務ではありません(食品表示基準に、トランス脂肪酸という言葉は出てきません)。消費者庁の「情報開示に関する指針」(2011年)にもとづいて、事業者が自主的に書いています。指針のルールは、次のとおりです。

  • 単位はg。誤差はプラス20%(下限は設けない)
  • 「0g」と書けるのは、食品100gあたり0.3g未満のとき
  • 「含まない(ゼロ・ノン・フリー)」と強調するには、さらに、飽和脂肪酸が100gあたり1.5g未満(または熱量の10%未満)が必要

つまり、「0g」と書いてあっても、実測のゼロとは限りません。たとえば、マーガリンの10gを塗ると0.065gで、100gに直すと0.65gなので、日本の指針では「0g」とは書けません。一方、米国(1回あたり0.5g未満)や韓国(1回あたり0.2g未満)の基準では、同じマーガリンの10g(10gを1回量とした場合)は「0g」と書ける水準です(ウラヨミの計算。国ごとに栄養成分表示の「0」と強調表示の「フリー」は別のルールなので、実際のラベルでの運用は国ごとに確認が必要です)。

「部分水素添加油脂不使用」と、企業の公表値

日本の家庭用マーガリン類は、明治と雪印メグミルクが2018年3月に切り替え済みです(J-オイルミルズは2024年3月に家庭用から撤退)。いま選ぶときの違いは、「不使用かどうか」より、次のようなところに移っています。

企業・商品 公表の内容 数字
明治「コーンソフト」(ファットスプレッド・油脂含有率60%) 商品ごとにトランス脂肪酸を公表 10gあたり0.1g(2018年3月時点)。同社は2005年比で約10分の1と書く
雪印メグミルク「ネオソフト」(ファットスプレッド・66%) 10gあたりのトランス脂肪酸・飽和脂肪酸を公表(2021年9月更新) トランス脂肪酸0.05g、飽和脂肪酸2.3g。同じ資料の家庭用マーガリン類の表(9行)は0.02〜0.1g
創健社「べに花ハイプラスマーガリン」「発酵豆乳入りマーガリン」 公式の商品ページで公表 10gあたり約0.03g
セブン-イレブン(パン) 栄養成分表でトランス脂肪酸を表示 主要パン27品は全て0g(2025年12月22日現在)。100gあたり0.3g未満は0gと表示する運用
ミスタードーナツ 平均値を公表 全アイテム平均で約0.25g/個(2026年4月1日時点、配合に基づく計算値)。2007年12月に低トランス脂肪酸のフライオイルへ切り替え、それまでの平均約1.44gから約83%減(計算値)
日本マクドナルド 2007年にフライ油の仕様を変更 公式ページでは数値を確認できませんでした

ローソン・ファミリーマートは、公表ページを確認できませんでした。開示の温度差は、「商品ごとに g を出す」(明治・雪印・創健社)、「0g のみ」(セブン-イレブン)、「平均値だけ」(ミスタードーナツ)、「数値なし」(確認できた範囲のマクドナルド)と、はっきりあります。パンの「0g」の下には、実際にはどのくらいあるのでしょうか。農林水産省の2022・23年度の調査では、食パンの中央値が100gあたり0.03g(範囲0.03〜0.16g)、クロワッサンが0.20g(0.12〜2.3g)でした。くわしくは トランス脂肪酸の記事 にまとめます。

マーガリンの選び方とラベルの読み方

ここまでを、売り場で見る順にまとめます。

  1. 名称:「マーガリン」か「ファットスプレッド」か。ファットスプレッドは油脂含有率(60%、66%、39%など)が書かれている
  2. 原材料:「食用植物油脂」「食用精製加工油脂」のほか、バター・乳・発酵乳が入っているか(乳由来の天然のトランス脂肪酸を含む)。乳成分・大豆のアレルギー表示
  3. 「部分水素添加油脂不使用」などの表示:包装に書かれているか。書かれていなくても、メーカーの公式サイトで確かめられる場合がある
  4. 栄養成分表示:脂質・飽和脂肪酸を10gあたりにそろえる。トランス脂肪酸は任意の表示なので、書かれていないことも多い。公式サイトの公表値を探す
  5. 価格:1gあたりで比べる。たとえば、明治コーンソフトの希望小売価格は、300gで324円(税込、2024年9月1日の発売時)で、1gあたり約1.08円。創健社の「べに花ハイプラスマーガリン」は180gで443円(税込)、1gあたり約2.46円(2026年10月3日確認)

価格の差は、油脂含有率・原料・容量の違いです。価格が高いことは、トランス脂肪酸が少ないことを意味しません(公表値を見て選びます)。

部分水素添加油脂を使っていないかどうかは、包装の表示と各社の公表資料で確かめられます。ここでは、そうした表示のある家庭用のマーガリン・ファットスプレッドを紹介します。

「プラスチックと1分子違い」「日本だけ」「海外では禁止」を確かめる

ここから、俗説の検証です。まず、「日本だけ」と「海外では禁止」から確かめます。

「マーガリンは日本だけで売られている」は本当?

結論から言うと、誤りです。

マーガリンは日本だけではない:世界の生産量(2020年)国別のマーガリンの生産量(千トン)。世界の合計は約938万トン05001,0001,500ロシアロシア:1,365千トン1,365パキスタン※パキスタン※:915千トン915ブラジルブラジル:810千トン810インド※インド※:692千トン692トルコ※トルコ※:640千トン640米国米国:460千トン460中国中国:440千トン440ドイツドイツ:353千トン353ポーランドポーランド:328千トン328英国英国:255千トン255オランダオランダ:210千トン210日本日本:143千トン143(世界の1.5%)※パキスタン・インドは「バナスパティ」(水素添加した植物性の脂)を含む数字。トルコはバナスパティを含む、と原典に注記。日本の143千トンは工業会の会員統計(2020年のマーガリン類 約211千トン)より小さい。集計の範囲が違うとみられるが、理由は確かめられなかった。出典:OIL WORLD ANNUAL 2021(日本マーガリン工業会の転載)。上位12か国だけを表示。
出典:OIL WORLD ANNUAL 2021(日本マーガリン工業会の転載。2026年10月3日確認)

世界のマーガリンの生産量は、2020年に約938万トン(9,377千トン)でした。上位は、ロシア136.5万トン、パキスタン91.5万トン、ブラジル81万トン、インド69.2万トン、トルコ64万トン、米国46万トン、中国44万トン、ドイツ35.3万トン。日本は14.3万トンで、世界の1.5%です。パキスタン・インド・トルコは、水素添加した植物性の脂「バナスパティ」を含む数字です。

日本の数字(14.3万トン)は、工業会の会員統計(2020年のマーガリン類 約21万トン)より小さく、集計の範囲が違うとみられますが、理由は確かめられませんでした。

米国の消費は、先ほどのとおり1976年にピークがあり(1人あたり11.9ポンド)、2005年にバター以下になりました。EU には年約230万トンの市場がある、と欧州マーガリン工業会(IMACE)は自己紹介で書いています(調査年は不明)。

「海外では禁止されている」は本当?

マーガリンが禁止された国は、確かめられませんでした。禁止や上限が決まっているのは、「トランス脂肪酸」や「部分水素添加油(PHO)」です。

国・地域 決まっていること(施行)
デンマーク 最終製品の油脂100gあたり2g超を禁止(2004年1月。世界で最初)
米国 FDA が PHO を GRAS から除外(2015年6月17日決定、2018年6月18日が遵守期限)
カナダ PHO の使用を禁止(2018年9月17日)
台湾 PHO の食品への使用を禁止(2018年7月1日)
タイ PHO と、それを使う食品の製造・輸入・販売を禁止(2019年1月9日)
EU 天然を除くトランス脂肪は、脂肪100gあたり2gまで(規則2019/649。2021年4月1日まで経過措置)

どの国も、対象は「マーガリン」ではなく、「トランス脂肪酸が多い油」です。2015年の FDA のニュースが「マーガリン禁止」と伝わって、誤解が広がったとされています(J-CAST 2015年、松永和紀 2022年のファクトチェックなど)。タイの保健省は、「食品からトランス脂肪酸が検出されることを禁止するものではない」と説明しています。

WHO によると、トランス脂肪酸の「最良の政策」を実施している国は、2023年末で53か国(人口の46%)です。日本は入っていません(日本に規制や表示義務がないことは事実です。理由は トランス脂肪酸の記事 に書きます)。

つまり、「日本だけ売っている」は誤りで、「日本には規制がない」は事実、という整理になります。

「プラスチックと分子が1つ違うだけ」は本当?

この説の出どころは、はっきり分かっています。英語のチェーンメール「Butter vs. Margarine」で、2003年6月ごろから出回りました(米国のファクトチェックサイト Snopes ほか)。

  • 「マーガリンはプラスチックまであと1分子」「トーストに、タッパーウェアを溶かして塗りますか」という言い回しがセットになっていました
  • 「ハエも寄らない」「何も育たない」「虫も食べない」という話も、同じチェーンメールにあります
  • 2024年11月にも、Facebook で6万回超シェアされていました

判定は「誤り」です。

  • マーガリンは、複数の化合物の混合物で、中心はトリグリセリド(脂肪酸3つとグリセリンが結びついたもの)です。プラスチック(重合体=同じ構造が長く連なったもの)とは別物です
  • 「1分子違い」は、たとえばこう言い換えられます。過酸化水素(H₂O₂)と水(H₂O)は、酸素原子が1個違うだけですが、飲めるものと飲めないものです。「1つ違い」は、似ていることの証拠になりません(Snopes と Lead Stories の指摘)
  • 「七面鳥を太らせるために作られた」という前置きも誤りです。1869年にナポレオン3世の求めで、牛脂と脱脂乳などから作られました

日本語では、「食べるプラスチック」という言い方が、少なくとも2015年9月5日の J-CAST の記事にあります。科学ジャーナリストの松永和紀さんは、2022年3月25日に「マーガリンは食べるプラスチックというのは事実ではない」とファクトチェックしています。日本語で最も古い用例は、確かめられていません。

「plastic は『可塑性』の誤訳」説は、成り立たない

「日本のローカルな迷信で、英語の plastic(可塑性)を誤訳した」という説明も、SNS で見かけます。これも当たりません。英語圏に同じ話が先にあり、原文は「タッパーウェア」を挙げているからです。

ただし、不思議な符合はあります。米国の連邦規則(21 CFR 166.110)は、マーガリンを「plastic form(可塑性のある形)」または液状の乳化物で、脂肪が80%以上の食品と定義しています。日本の JAS も「可塑性または流動状のもの」と書きます。「plastic」という言葉自体が、マーガリンの定義に入っているのです。これが、言葉遊びの種になった可能性は考えられますが、仮説であり、裏付けはありません。

「虫も寄らない・腐らない・カビない」は本当?

チェーンメールの「ガレージ実験」は、「ハエが寄らず、何も育たず、腐らない」というものでした。

  • 「腐らない」は、言えません。工業会と日本食品油脂検査協会の手引書では、マーガリンの水分は約13〜16%、水分活性は0.901〜0.924です。増えられる微生物は限られる範囲ですが、低温で管理して、黄色ブドウ球菌などの増殖を抑えると書かれています。賞味期限の設定例は240日です
  • マーガリンは、水が油の中に細かく散った状態(油中水型)で、微生物が使える水が少なくなります。ショートニングは水分が0.1%未満で、さらに少なくなります
  • 「ハエが寄らない」を実際に調べた査読論文は、見つかりませんでした。ブログなどの実験談は、条件が分かりません

つまり、「何も寄らない食品」ではなく、「水が少なく、低温と包装で品質を保つ食品」です。

バターとマーガリン、どっちが体に悪い?

「どっちが体に悪い」は、検索候補が41種類ある話です。英語でも、バターとの比較は目立つ問いです。ここでは、どちらとも断定せず、数字を並べます。

10gあたりで比べる

パンに塗る10gあたり:バターとマーガリン類飽和脂肪酸は成分表の値÷10、トランス脂肪酸は農林水産省の調査の中央値÷10(g)飽和脂肪酸(g)トランス脂肪酸(g)024600.10.2有塩バター有塩バター 飽和脂肪酸 5.05g/10g5.05有塩バター トランス脂肪酸 0.19g/10g(H18・19年度 13点)0.19(H18・19年度 13点)ショートニングショートニング 飽和脂肪酸 4.62g/10g4.62ショートニング トランス脂肪酸 0.061g/10g(R4・5年度 12点)0.061(R4・5年度 12点)マーガリンマーガリン 飽和脂肪酸 2.3g/10g2.3マーガリン トランス脂肪酸 0.065g/10g(R4・5年度 60点)0.065(R4・5年度 60点)ファットスプレッドファットスプレッド 飽和脂肪酸 2.04g/10g2.04ファットスプレッド トランス脂肪酸 0.048g/10g(R4・5年度 60点)0.048(R4・5年度 60点)バターのトランス脂肪酸は牛などの胃で自然にできるもの(天然)。調査年が古い(2006・07年度)ので、ほかと同じ条件の比較ではない。飽和脂肪酸は成分表の100gあたり(バター50.45g・家庭用マーガリン23.04g・ファットスプレッド20.40g・家庭用ショートニング46.23g)を10gに換算。トランス脂肪酸の調査は、一般用・業務用の区別が公表資料に明記されていない。出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」、農林水産省のトランス脂肪酸の含有実態調査(ウラヨミで計算)。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」、農林水産省のトランス脂肪酸の含有実態調査(ウラヨミで計算)
10gあたり 飽和脂肪酸 トランス脂肪酸 トランス脂肪酸の出どころ
有塩バター 5.05g 0.19g 天然(牛などの胃で自然にできる)。2006・07年度の調査(13点)
ショートニング 4.62g 0.061g 2022・23年度(12点)
マーガリン 2.30g 0.065g 2022・23年度(60点)
ファットスプレッド 2.04g 0.048g 2022・23年度(60点)

(注)飽和脂肪酸は食品成分表の「家庭用」の値、トランス脂肪酸は農林水産省の市販品の調査の値です。この調査の公表資料には、一般用・業務用の区別が明記されていません。

  • 飽和脂肪酸は、バターがマーガリンの約2.2倍です。雪印メグミルクが公表している「ネオソフト」の10gあたり2.3gとも、一致しています
  • トランス脂肪酸は、今のマーガリンのほうが、バターより少ないという結果です(天然のものを含むバターは0.19g)
  • ただし、バターの値は2006・07年度の調査で、その後は調べられていません。マーガリンの値とは調査年が違うので、同じ条件の比較ではありません
  • バターの値には、牛などの胃でできる「天然の」トランス脂肪酸が含まれます。WHO(2023年)は、工業由来と天然を区別しないとしています。一方、研究者のあいだでは、天然のものの影響を巡って意見が割れています(試験のまとめでは、LDL と HDL の比を上げる力に統計上の差がなく、追跡研究では天然由来と冠動脈疾患の関連は見えていません)
  • 「飽和脂肪酸は倍、トランス脂肪酸は逆」で、1つの数字では決められません

研究では

  • バターを追った研究(Pimpin ら、2016年、9研究・636,151人のメタ分析):1日14g(大さじ1)あたり、全死亡 1.01倍、冠動脈疾患 0.99倍、糖尿病 0.96倍で、「小さいか中立の関連」。試験はなく、観察研究です
  • 米国の3つの追跡研究(Zhang ら、2025年、JAMA Intern Med):221,054人を最長33年追跡し、死亡は50,932人。バターが最も多いグループは、全死亡が1.15倍(1.08〜1.22)。バター10gを植物油に置き換えると、全死亡が17%低いという計算です。観察研究です
  • オリーブ油(Guasch-Ferré ら、2020年、約9.3万人・24年):マーガリン・バター・マヨネーズ・乳脂肪を1日5gオリーブ油に置き換えると、心血管疾患が5〜7%低いという結果。ほかの植物油との比較では差がありませんでした。観察研究です
  • 「バターに戻せばいい」ではない(Mozaffarian と Clarke、2009年):トランス脂肪酸が35%の部分水素添加油を、エネルギーの7.5%分、バターに置き換えると、冠動脈疾患のリスクの減りは小さい(試験のデータからの試算で −11.9%、追跡研究のデータからの試算で −14.4%)。キャノーラ油なら −16.0%(試験)、大豆油なら −33.4%(追跡)と、置き換える相手で効果が変わります。古いタイプの部分水素添加油を想定した試算で、今のマーガリンの話ではありません

バターと植物油・動物性の油の脂肪酸の詳しい比較は、植物油と動物性の油の記事 にあります。

日本の家庭では、まだマーガリンのほうが多い

総務省の家計調査(二人以上の世帯)では、1世帯あたりの年間購入量は、次のように動いています。

年 マーガリン バター マーガリン:バターの購入量 100gあたりの価格(マーガリン/バター)
2011年 1,255g 500g 約2.5倍 70.0円/173.6円
2016年 954g 471g 約2.0倍 73.5円/208.2円
2020年 911g 650g 約1.4倍 74.4円/215.2円
  • マーガリンは減り、バターは増えていますが、2020年でも購入量はマーガリンのほうが多いです(2021年以降の値は確かめられませんでした)
  • 100gあたりの価格は、2020年で、マーガリンが約74円、バターが約215円。バターの価格は、マーガリンの約2.9倍です
  • 総務省の小売物価統計調査では、マーガリンの調査銘柄が「ファットスプレッド・ポリ容器入り(300〜320g)の雪印『ネオソフト』または明治『コーンソフト』」、バターは「箱入り200g(食塩不使用を除く)」です。この2つが、日本の物価統計の代表になっています

国内の生産では、令和6年度(2024年度)のバターの推定出回り量は83,521トン(農林水産省の統計を農畜産業振興機構が紹介)でした。マーガリン類の国内消費(2025年、会員のみ、約19.1万トン)は、バターの約2.3倍です(年度と集計範囲が違う概算)。

バターを選ぶときの見方

バターの法律上の定義は、「乳脂肪分80.0%以上・水分17.0%以下」(乳等省令)です。原材料は、「生乳」(有塩は「生乳、食塩」)だけで、代表的なバターの公式表示は、次のとおりです。

  • 明治北海道バター 200g:生乳、食塩。100gあたり脂質81.5g
  • 雪印北海道バター 200g:生乳(北海道産)、食塩。脂質81.0g、飽和脂肪酸50.5g
  • 雪印北海道バター 食塩不使用 200g:生乳(北海道産)。脂質83.0g、飽和脂肪酸52.4g

食品成分表では、有塩バターの飽和脂肪酸は、脂肪酸100gのうち71.5%です(発酵バターの有塩も71.5%)。選ぶときに見るのは、食塩の有無(有塩・食塩不使用)、脂質・飽和脂肪酸の量、発酵の有無、価格です。

なお、バターを煮詰めて水分とたんぱく質を除いた「ギー」は、日本の食品成分表には載っていません。米国の統計(USDA)の値は、飽和脂肪酸60.0g/100g、トランス脂肪酸0.0gとなっていますが、牛乳由来なので天然のトランス脂肪酸が全くないはずはなく、「0.0」は分析されていない欠損値の可能性が高いとみられます(同じ統計の有塩バターは3.28g。日本の値とは調査年や分析法が違うので、並べて断定しません)。

バターは原材料が「生乳」だけの食品で、法律上も乳脂肪分80%以上・水分17%以下と決まっています。マーガリン類と比べる材料として、バターを並べます。

子どもに食べさせていい? 学校給食のマーガリン

「マーガリン 給食」は、検索候補が13種類ありました(いちご・はちみつ・ココア・ジャムなど、給食の味つきの話を含む)。「マーガリン 妊娠中」「マーガリン いつから 赤ちゃん」も出てきます。

給食用のマーガリンは、この50年あまりで大きく減りました。

年 学校給食用マーガリンの生産量(会員)
1972年 7,708トン
1980年 4,790トン
1990年 1,951トン
2000年 1,925トン
2010年 1,126トン
2020年 639トン
2025年 543トン(1972年から93%減)

給食用は、1食分が6〜10gの小さな包装で、融点が38℃以下と、家庭用より約3℃高く作られています(日本マーガリン工業会)。1950年の給食の献立にマーガリンがある、とする学校や自治体の資料はありますが、文部科学省の一次資料は確かめられませんでした。

子どもについては、公的な資料の数字を知っておく価値があります。

  • 食品安全委員会(2012年)の推計では、1〜6歳の男児は、摂取量の多い方から5%の人で、エネルギーの1.02%でした。WHO の目標(1%未満)をわずかに超えます。平均は、男児0.47%、女児0.46%です
  • ただし、食品安全委員会の調査の値で推計し、硬化油・食用植物油由来だけに限ると、99パーセンタイルでも1%を超えません。農林水産省の調査の上限値を使った推計では、1〜14歳の男性などの99パーセンタイル値が1%を超えます。平均を見るか、上位の人を見るか、どの調査で見るかで、受け止めが変わる数字です
  • 2022年3月、小学校の先生が、「今日の給食のマーガリンは毒なので食べません」と申し出た子どもがいた、とX(旧Twitter)に投稿し、議論になりました(神戸新聞、2022年3月)。先生自身は、学校給食の安全性を信用する立場で投稿しています。「毒」という言葉は、事実とは言えません。食品安全委員会は、「通常の食生活では健康への影響は小さい」と評価しています。一方で、不安が今も広いことも確かです

赤ちゃんが何歳から食べてよいか、妊娠中はどうかは、この記事では調べていません(検索の意図が離乳食であることが多い、という点だけ記します)。自治体の離乳食の資料や、かかりつけの小児科・産科で確認してください。

「マーガリン不使用」のパンやお菓子は選ぶべき?

検索候補には、「パン屋 マーガリン 不使用」「ショートニング マーガリン 不使用 パン」のような言葉が、83種類並んでいます。家庭のマーガリンを避けても、パンやお菓子の中の油脂は避けられていない、と感じる人が多いようです。

事実を確認しておきましょう。

  • マーガリン類の85%は業務用です(2025年)。パンやお菓子、外食に使われる分が、ほとんどです
  • 農林水産省の2022・23年度の調査(100gあたりの中央値):食パン 0.03g(範囲0.03〜0.16g)、ロールパン 0.05g、菓子パン 0.08g、クロワッサン 0.20g(0.12〜2.3g)、ドーナツ 0.16g
  • 1回量に直すと、食パン6枚切1枚(56〜69g)で0.017〜0.021g、クロワッサン1個(27〜57g)で0.054〜0.114g、マーガリン10gで0.052〜0.065gです(農林水産省の1個・1食あたりの重量の範囲から、ウラヨミで計算)
  • つまり、食パンに塗るマーガリン10gと、クロワッサン1個は、同じくらいの量です。ただし、点数が少なく、クロワッサンの最大は2.3gと、幅があります

セブン-イレブンの主要パン27品は、全て「トランス脂肪酸0g」と表示しています(2025年12月22日現在)。100gあたり0.3g未満は0gと表示する運用なので、実測のゼロとは限りません。

ショートニングやパンの話は ショートニングの記事 に、「0g」表示の国ごとの違いや多い食品は トランス脂肪酸の記事 にまとめています。

パンに塗るほかの選択肢

マーガリンをやめて、何を塗るか。選択肢を、原材料の側から見ておきます。

「パンにぬるクリーム」の原材料にもショートニングがある

ソントンの「パンにぬるホイップクリーム」は、パンに塗るものですが、マーガリンではありません。原材料名は、次のとおりです(公式サイト。2026年10月3日確認)。

  • ピーナッツ:ピーナッツバター(中国製造)、砂糖、ショートニング、植物油脂、デキストリン、食塩、澱粉、全粉乳/乳化剤
  • ミルク:砂糖、植物油脂、ショートニング、全粉乳、たん白質濃縮ホエイパウダー、乳等を主要原料とする食品 ほか

商品名が「ピーナッツ」でも、原材料の1番目が「ピーナッツバター」で、ショートニングや植物油脂も入っています。ナッツのペーストについて、脂肪酸の組成やトランス脂肪酸の公表値は、この記事の調査では確かめていません。「ナッツだけ」で作ったものかどうかは、原材料の欄で見分けます。

オリーブ油(エキストラバージン)とギー

  • オリーブ油(エキストラバージン)は、食品成分表で、飽和脂肪酸が脂肪酸100gのうち14.1%、一価不飽和脂肪酸が78.3%です。バターの飽和脂肪酸(71.5%)の約5分の1です
  • トランス脂肪酸は、メーカーの公表値で100gあたり0.1g未満です(J-オイルミルズ「AJINOMOTO オリーブオイル エクストラバージン」、2024年3月の分析例。日清オイリオの「ボスコ エキストラバージンオリーブオイル」も0.1g未満、2023年4月現在)。ちなみに同じ表で、サラダ油は1.2g、キャノーラ油は0.8gです
  • 研究では、先ほどの米国の観察研究(約9.3万人・24年)で、マーガリン・バターなど5gをオリーブ油に置き換えると、心血管疾患が5〜7%低い、という結果があります
  • ギーは、バターの一種で、日本の食品成分表には載っていません。先ほどのとおり、米国の「トランス脂肪酸0.0g」は欠損値の可能性が高く、確かめられていません

トランス脂肪酸がゼロの食品は、ほとんどありません。精製した油にも、高温の脱臭で微量はできます(サラダ油の1.2gは、水素添加ではなく精製の工程でできたもの、とされます)。エキストラバージンオリーブ油は精製をしない油なので公表値が小さいとみられますが、メーカーの説明では確かめていません。

オリーブ油(エキストラバージン)は、食品成分表で飽和脂肪酸が脂肪酸100gのうち14.1%で、バターの約5分の1です。トランス脂肪酸も、メーカーの公表値で100gあたり0.1g未満です。パンにつけるものの選択肢として紹介します。

日本語と英語で、気にしていることはこんなに違う

ここは、ウラヨミの独自の集計です。同じ「マーガリン」でも、日本語と英語で、検索の問いが違います(2026年10月3日、Google の検索候補。取得した機器が日本にあるため、偏りがあり得ます)。

日本語(候補2,031種) 英語(候補3,176種)
目立つ問い 体に悪い・日本だけ・給食・赤ちゃん・「パン屋 不使用」 マーガリンとバターを比べる問い(butter や better・worse などの語を含む候補)、banned・illegal(79種)、halal・vegan・kosher(120種)
宗教・食の制限 ハラルなど、3種 120種
代わりのもの 「ショートニング 代用」「パン 不使用」 substitute・alternative 103種
商品名 「ミスド」「マクドナルド バンズ」など、店の名前 Crisco 系だけで104種

(英語の種類数は、取得した3,176種の候補のうち、その語を含むものの数です。たとえば banned・illegal は、banned か illegal を含む候補の数です。ウラヨミの数え方で、集計の仕方によって数は変わります。)

日本語では、「マーガリン」だけでなく、「ミスド ショートニング マーガリン」「マクドナルド バンズ マーガリン」「トランス脂肪酸 山崎パン」のように、店やパンの名前を打つ人もいます。疑いは、家庭のマーガリンだけでなく、店のパンや揚げ物にも向いています。

英語の margarine in japan や shortening in japan は、取得機器が日本にあるための偏りの可能性が高く、世界の関心とは読みません。一方で、halal に関する候補が出てくること自体は、日本のマーガリンの原材料を宗教の面から調べる人(訪日客や日本に住むムスリム)がいることの手がかりです。この記事では、マーガリンの原材料が動物由来かどうかなどは調べていません。

Wikipedia の閲覧数でも、違いが出ます(年間の閲覧数。記事どうしの相対比較にだけ使います)。

記事 2023年 2024年 2025年
日本語版「マーガリン」 79,494 62,102 56,354
日本語版「ショートニング」 64,542 68,314 50,614
日本語版「トランス脂肪酸」 43,551 40,316 29,272
英語版 Margarine 400,086 385,528 291,103
英語版 Shortening 184,379 166,537 121,253
  • 2024年は、日本語版でショートニングの閲覧数が、マーガリンを上回りました。英語版では、マーガリンがショートニングの約2.3倍(2024年)です
  • 日本では、ショートニングが、パンの裏の表示として単独で気になる食品になっていることが、うかがえます
  • ただし、Wikipedia 全体の閲覧が2025〜26年に急に減っているため、時間の増減は、話題の盛衰とは言えません

ウラヨミで読んだ食品の中の油脂表示

ウラヨミで裏面を読んできた食品・日用品は、2026年10月3日時点で78品です。この中の油脂の書き方を、整理し直しました。

裏面の書き方 該当する品数 例
「マーガリン」「ショートニング」「ファットスプレッド」「硬化油」 0品 —
「食用加工油脂」 2品 味の素KK コンソメ、クノール カップスープ コーンクリーム
「植物油脂」「食用植物油脂」「動植物油脂」 9品 ハウス シチューミクス クリーム、キユーピー マヨネーズ、エム・トゥ・エム カレールー など
「食用油脂」(牛脂豚脂混合油・パーム油など) 8品 コスモ直火焼のカレー・ルー、ハウス バーモントカレー など
パーム油・なたね油の混合油脂 1品 エスビー ゴールデンカレー
油脂系の表記がある品の合計 20品(78品中)
  • マーガリンやショートニングと書かれた品は、1品もありません。ウラヨミの商品は調味料が大半で、パンや菓子の品がほとんどないためです
  • ただし、「食用加工油脂」や「植物油脂」の中身は、裏面からは分かりません。食品表示基準が、まとめた名前でよいと決めているからです。「加工油脂」が水素添加を意味するとは限りません(エステル交換・分別も含みます)
  • カレールウの油脂とトランス脂肪酸は、カレールウの記事 にまとめています

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

紹介したもの 購入先
創健社 べに花ハイプラスマーガリン 180g(要冷蔵) 楽天市場で見る(お得に選べるフードショップ) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
創健社 植物素材でつくった発酵豆乳入りマーガリン 160g(要冷蔵) 楽天市場で見る(ビーライフショップ) PR
Amazonで見る PR
雪印メグミルク 雪印北海道バター 200g(要冷蔵) 楽天市場で見る(Smile Spoon) PR
Amazonで見る PR
Yahoo!ショッピングで見る PR
日清オイリオ BOSCO エキストラバージンオリーブオイル 228g 楽天市場で見る(楽天24) PR
Amazonで見る PR

まとめ

気になること 分かったこと
マーガリンはいつ生まれた? 1869年にフランスで特許。牛脂と牛乳から作った「バターの代わり」。「普仏戦争がきっかけ」は年が合わない
どう作る? 油と水を乳化→殺菌→急冷練り合わせ。固くする方法は、部分水素添加・完全水素添加・エステル交換・分別
法律上の違いは? マーガリン=油脂80%以上、ファットスプレッド=80%未満、バター=乳脂肪80%以上。家庭用の83%はファットスプレッド(2025年)
昔と今は同じ? 別物。農林水産省の中央値(100gあたり)は、8.7g→0.99g→0.65g。ただし試料が違う
体に悪い? 確かなのは、LDL上昇・HDL低下(試験)と冠動脈疾患の関連(観察研究)。食品安全委員会は「通常の食生活では健康への影響は小さい」。がん・認知症は因果が言えない
バターとどっち? 10gあたり、飽和脂肪酸はバター5.05g・マーガリン2.30g。トランス脂肪酸は今のマーガリン0.065g、バター0.19g(天然・2006・07年度)。1つの数字では決まらない
プラスチック・虫・腐らない 2003年ごろの英語のチェーンメールが出どころ。誤り。「誤訳説」も成り立たない
日本だけ? 禁止? 世界の生産は約938万トン、日本は1.5%。禁止・上限の対象は「部分水素添加油」「トランス脂肪酸」で、マーガリンではない。日本に規制がないのは事実
企業は? 2018年3月に明治・雪印が不使用へ。原料の硬化油は10.2%(2016年)→3.2%(2025年)。J-オイルミルズは2024年3月に家庭用から撤退
選び方は? 名称・油脂含有率・「部分水素添加油脂不使用」・10gあたりの飽和脂肪酸とトランス脂肪酸。「0g」は100gあたり0.3g未満の運用

参考にした資料

歴史

  • Fondation Napoléon「L’invention de la margarine」(ガリカの書誌。1869年の特許)、米国特許 US 146,012(1873年)、GB 190301515(ノルマン、1903年)
  • Cyberlipid「Margarine」「Mège-Mouriès」、米国油化学会(AOCS)「The Battle over Hydrogenation 1903–1920」「Wilhelm Normann」
  • 米国法令:Oleomargarine Act(24 Stat. 209、1886年)、64 Stat. 20(1950年)、Plumley v. Massachusetts(155 U.S. 461、1894年)、Collins v. New Hampshire(171 U.S. 30、1898年)
  • Smithsonian Magazine「How the government came to decide the color of your food」、National Geographic「The Butter Wars」(2014年)
  • 米国農務省 経済研究局(ERS)「Butter and margarine availability over the last century」(2016年)、Food Availability(Per Capita)Data System
  • 米国 FDA, Final Determination Regarding Partially Hydrogenated Oils, 80 FR 34650(2015年6月17日)
  • 触媒学会シニア懇談会ニュース No.77(2015年)、工業触媒研究会ニュース No.73(2012年)
  • 久野愛『視覚化する味覚』(岩波新書。二次資料の抜粋)、日本国語大辞典(コトバンク)

作り方・定義・表示(日本)

  • 農林水産省「マーガリン類の日本農林規格」(JAS 0932)、「食用精製加工油脂の日本農林規格」(JAS 1424:2024)、同「ショートニングの日本農林規格」(JAS 0989)、JAS 見直しの資料(2008年3月)
  • 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号、e-Gov 法令検索、2026年10月3日確認)、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令
  • 日本マーガリン工業会・日本食品油脂検査協会「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」(厚生労働省掲載、2020年3月)、日本マーガリン工業会「製造方法」「種類」「生産量」「原料使用量」2016〜2025年、同「今どきのトランス脂肪酸の話し」(2024年11月)
  • 農林水産省「トランス脂肪酸ができる過程」「トランス脂肪酸を減らす取組」、総務省「家計調査」「小売物価統計調査」、農畜産業振興機構(バターの需給)
  • 米国 21 CFR 166.110(マーガリン)

含有量・規制・評価

  • 農林水産省「食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査」(平成18・19年度、平成26・27年度、令和4・5年度)、同「トランス脂肪酸に関する海外の取組」
  • 食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書(2012年3月)と Q&A、消費者庁「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」(2011年2月)、消費者委員会 食品WG とりまとめ(2015年5月)
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」脂肪酸成分表編
  • WHO「Saturated fatty acid and trans-fatty acid intake for adults and children: WHO guideline」(2023年)、WHO fact sheet「Trans fat」(2024年1月24日)、WHO「Countdown to 2023」

研究

  • Mensink RP, Katan MB. N Engl J Med 1990(PMID 2374566)、Mensink RP ら. Am J Clin Nutr 2003(PMID 12716665)
  • Willett WC ら. Lancet 1993(PMID 8094827)、Hu FB ら. N Engl J Med 1997(PMID 9366580)、Oh K ら. Am J Epidemiol 2005(PMID 15781956)
  • de Souza RJ ら. BMJ 2015(PMID 26268692)、Chowdhury R ら. Ann Intern Med 2014(PMID 24723079)、Mozaffarian D, Clarke R. Eur J Clin Nutr 2009(PMID 19424216)、Astrup A ら. J Am Coll Cardiol 2020(PMID 32562735)
  • Tonstad S ら. Nutr Metab Cardiovasc Dis 2001(PMID 11887429)、Pimpin L ら. PLoS One 2016(PMID 27355649)、Zhang Y ら. JAMA Intern Med 2025(PMID 40048719)、Guasch-Ferré M ら. J Am Coll Cardiol 2020(PMID 32147453)
  • Michels N ら. Nutr Rev 2021(PMID 34104953)、Honda T ら. Neurology 2019(PMID 31645469)、Nwaru BI ら. Food Nutr Res 2022(PMID 35950105)、Yamada M ら. Asia Pac J Clin Nutr 2009(PMID 19786384)

俗説の検証

  • Snopes「The Butter Truth」「Crisco invented as submarine lubricant?」、Lead Stories(2019年)、Science Feedback、J-CAST ニュース(2015年9月5日)、松永和紀「マーガリンは食べるプラスチックというのは事実ではない」(おいしい健康、2022年3月25日)、神戸新聞(2022年3月)

企業の公表・関心

  • 明治「トランス脂肪酸について」「コーンソフト」、プレスリリース(2018年2月8日・2024年8月23日)、雪印メグミルク「トランス脂肪酸やその他の脂質成分について」(2021年9月更新)、創健社、J-オイルミルズ(2023年11月9日の発表ほか)、日清オイリオ、セブン-イレブン、ミスタードーナツ(ダスキン)、日本マクドナルド、ソントン食品工業の公式サイト
  • 日刊工業新聞(2018年2月2日)、FoodNavigator-Asia(2018年6月11日)
  • Google の検索候補(2026年10月3日取得、ウラヨミで分類・集計)、Wikimedia REST API(ページビュー)

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.03)。