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ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.03

ショートニングとは? 歴史・原料・作り方、「体に悪い」「発がん性がある」は本当か、パンやお菓子に使う理由と代わりの油脂

PR この記事には、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングのアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

パンやクッキー、ドーナツ、スナック菓子。裏面の原材料を見ると、「ショートニング」と書かれていることがあります。家の台所にはほとんど置いていないのに、食品の裏面ではよく目にする。それがショートニングです。

そして、よく聞く話もたくさんあります。

  • ショートニングは何からできている? マーガリンとは違う?
  • なぜ「ショートニング」という名前なの?
  • 発がん性がある? 体に悪いというのは本当?
  • アメリカでは禁止されている? 日本は?
  • なぜパンやお菓子に使うの? 使っていないパンは探せる?
  • ラードやバターで代わりになる? 家庭で買える?

2026年10月3日に Google の検索候補(サジェスト)を調べると、日本語で「ショートニング」を含む候補が約600種ありました。いちばん多かったのは「ショートニング 不使用 食パン」「ショートニング 不使用 お菓子市販」のような「使っていないものを探す」問い(89種)、次が「ショートニング ラード 違い」「ショートニング 代用 サラダ油」のような違いと代わりの問い(79種)、「ショートニング とは」「ショートニング 原料」が47種、「ショートニング 発がん性」「体に悪い 嘘」が31種でした(種類は重なって数えています)。検索の量ではなく、「実際に打たれる問い」の幅の目安です。

この記事では、

  • ショートニングはいつ、どこで、何のために生まれたのか(世界と日本の歴史)
  • 何から、どうやって作るのか。マーガリンやバター、ラードと何が違うのか
  • パン・お菓子・揚げ物に使われるのはなぜか
  • 裏面の「ショートニング」「植物油脂」「加工油脂」から、何が分かって何が分からないか
  • トランス脂肪酸は、いまのショートニングにどれくらい入っているのか
  • 「発がん性がある」という話の出どころと、日本の実測値
  • 完全水素添加やエステル交換のショートニングは、どこまで調べられているか
  • アメリカや EU の規則と、日本の違い
  • 家庭で買えるショートニング、パン・お菓子の選び方、代わりの油脂

を、法令・農林水産省の資料・論文で確かめます。

ショートニングとマーガリン、トランス脂肪酸のシリーズ(3本)

  • マーガリンの記事:歴史・作り方・バターやファットスプレッドとの違い、「プラスチック」「日本だけ」説の検証
  • ショートニングの記事:この記事。原料・作り方・発がん性説・パンやお菓子に使う理由・代わりの油脂
  • トランス脂肪酸の記事:心臓病の研究・世界の規制と日本に規制がない理由・多い食品と日本人の摂取量

結論

  • ショートニングは、19世紀末の米国で「ラードの代わり」として生まれました。最初は綿実油と牛脂を混ぜたもので、1911年に水素添加した油を使った Crisco が発売され、レシピ615個つきの料理本を配る宣伝で広まりました。日本では1951年の統計に初めて出てきて、1959年にマーガリンの生産量を上回りました
  • ショートニングは「ほぼ100%が油脂」の、練り込み用の固形(または液状)の油脂です。水分は0.5%以下、乳成分は入らず、無味無臭です。日本ではほとんどが業務用(パン・菓子・揚げ油)で、家庭用はごく一部です
  • いまの原料は、パーム油が中心です。日本マーガリン工業会の会員の2026年1〜6月の原料使用量(89,000トン)では、精製したパーム油が39%、エステル交換油が24%、硬化油が8%でした。硬化油の割合は、ショートニングで14.2%(2016年)→7.9%(2025年)に下がっています
  • トランス脂肪酸は、農林水産省の3回の調査の中央値で 12 → 1.0 → 0.61 g/100g と下がりました(2006〜07年度→2014〜15年度→2022〜23年度)。2014〜15年度には最大24 g/100gの試料がありましたが、2022〜23年度は最大0.86でした。ただし調査ごとに試料の採り方が違い、点数も少ないので、「おおよその目安」です
  • 「発がん性がある」の出どころは、2つの話の混同です。国際がん研究機関(IARC)の一覧に、トランス脂肪酸もマーガリンもショートニングも載っていません。載っているのは、精製した油の副産物のグリシドール(2A)と 3-MCPD(2B)で、ショートニングだけでなく精製油全般の話です。日本の実測(2023年度)の中央値は、パーム油が3.4、ショートニングが1.5、マーガリンが0.51 mg/kg(3-MCPD 脂肪酸エステル)でした
  • トランス脂肪酸を減らすと、飽和脂肪酸が増えることがあります。食品安全委員会が業務用を2006年度と2010年度に調べたところ(購入方法も銘柄も同じではありません)、業務用ショートニングの飽和脂肪酸の平均は 23.9 → 45.4 g/100g でした。一方、農林水産省の2022〜23年度の調査は「増える傾向は確認されなかった」としていて、結果が分かれます
  • 完全水素添加・エステル交換のショートニングの長期の影響は、まだ分かっていません。主なヒトの試験は数十人・4〜8週間で、資金の多くがパーム油の業界団体です
  • 日本には、トランス脂肪酸の上限も表示義務もありません。米国は部分水素添加油を2018年6月から規制し、EU は脂肪100gあたり2gを上限にしています。「ゼロ」と書ける条件も、日本は100gあたり0.3g未満、米国は1回量あたり0.5g未満と違います

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
部分水素添加油脂を使っていない家庭向けのショートニング お菓子やパンを家で作るとき、原材料を確かめて選びたいとき 家庭で買えるショートニング
ショートニングの代わりになる油脂(ラード・ココナッツオイルなど) 脂肪酸の組成を見ながら、代わりの油脂を選びたいとき 代わりの油脂は脂肪酸で比べる
原材料にショートニングやマーガリンを使わないパンの通販 裏面の油脂を確かめて、パンを選びたいとき パンやお菓子を選ぶとき

ショートニングはどうやって生まれた?

ショートニングの歴史を、世界と日本に分けて並べた年表。世界は、1887年に Cottolene(綿実油に牛脂のステアリンを混ぜたもの。水素添加は使っていない)、1893年に Cottosuet、1897年にサバティエがニッケルで水素を結びつける方法を発明、1901年にノルマンが液体のオレイン酸から固いステアリン酸を得る実験に成功、1911年に Crisco 発売、1920年に最高裁が特許の一部を無効に(当時はトランス型の脂肪酸ができていることが認識されていなかった)、1990年に Mensink と Katan の試験で LDL が上がり HDL が下がった、2015年に FDA が部分水素添加油を GRAS から外し、2018年に規制開始。日本は、1908年に魚油の水素化に成功、1913年に尼崎に硬化油工場、1928年に花王石鹸が食用の硬化油、1951年に生産が統計に出る(1,504トン)、1959年にマーガリンを上回る(41,617トン)、1991年に JAS、2011年に消費者庁の指針(100gあたり0.3g未満なら「0g」)、2012年に食品安全委員会の評価書、2016年に生産が最大(251,272トン)、2018年3月に雪印メグミルクと明治が部分水素添加油をやめる、2025年に185,329トン・硬化油の割合は7.9%(2016年は14.2%)。
図:ショートニングの年表(AOCS、日本マーガリン工業会、触媒学会、食品安全委員会、FDA、消費者庁 をもとに作成)(押すと拡大)

ショートニングの歴史は、ラードの代用品を探した歴史です。そこに「水素添加」という技術が加わり、固まる油を安く大量に作れるようになりました。

ラードの代わりに:綿実油と牛脂の混ぜもの(1880〜90年代)

日本マーガリン工業会の説明では、ショートニングは19世紀末のアメリカで、ラード(豚の脂)の代用品として生まれ、「ラードコンパウンド」とも呼ばれていました。

最初のものは、水素添加を使っていません。

  • 1887年:N.K. フェアバンクスの「Cottolene(コットリーン)」
  • 1893年:スウィフト社の「Cottosuet(コットスエット)」
  • どちらも、綿花の種から取る綿実油を70〜80%、牛脂のステアリン(固い部分)を20〜25%混ぜたもの(米国油化学会 AOCS の解説)

綿実油は、綿の繊維を取ったあとに残る種からしぼる油です。液体の油に固い牛脂を混ぜて、ラードのように固くしたのが、ショートニングの始まりでした。つまり、後で有名になる Crisco は「最初のショートニング」ではありません。

水素添加の発明(1897〜1903年)

液体の油を、牛脂などを混ぜずに固くする方法が、水素添加です。日本の JAS(日本農林規格)は水素添加を「ニッケル、銅等の触媒を加えて加熱し、水素を送入することによって、不飽和部の一部又は全部を飽和させる工程」と定めています。

  • 1897年(1899年とする資料もある):フランスのサバティエが、ニッケルを触媒にして気体の水素を化合物に結びつける方法を発明(1912年にノーベル化学賞)
  • 1901年2月27日:ドイツのノルマンが、液体のオレイン酸にニッケルと水素を作用させて、固いステアリン酸を得る実験に成功
  • 1902〜03年:ノルマンの特許(ドイツ特許141,029は1902年8月14日付で効力、1903年に付与。英国特許は1903年)
  • 1909年:英国のクロスフィールド社が大規模な工業化。1911年9月には、米国の P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)が、この方法の米国特許を取得

P&G が水素添加を手に入れた当初の目的は、石けんの原料にする油を固めることでした。食べものへの転用は、そのあとです。

1911年、Crisco 発売:料理本を配って広めた

1911年6月、P&G が水素添加した綿実油の「Crisco(クリスコ)」を発売しました。名前は「crystallized cottonseed oil(結晶化した綿実油)」を縮めたものとされています。

宣伝の方法が、いまのマーケティングのようでした(AOCS の解説による)。

項目 数字
広告費 1911年に18万ドル、1912〜15年は年に約40万ドル
出荷先 全米の約1万5千の小売店
料理本 615のレシピをのせた本を無料で配った
販売量 1912年 260万ポンド → 1916年 6,000万ポンド
価格(1915年) 競合品の Kream-Krisp が1ポンド16セント、上質のバターが44セント

当時の Crisco の組成は、飽和脂肪酸が20〜25%、オレイン酸が65〜75%、リノール酸が5〜10%、融点は33〜40℃でした(AOCS)。「バターより安く、ラードより扱いやすい固い油」が、料理本とともに家庭に入っていきました。

なぜ「ショートニング」という名前?

日本マーガリン工業会の説明では、ショートニング(shortening)は「サクサクさせる、ポロポロにする」という意味を持つ言葉です。パンやビスケットの原料に使うと、口あたりをよくし、もろさを与えるという意味の英語(shorten)からきています。

「ショートケーキの『ショート』はショートニングのこと」という説明も、同じ工業会のページにあります。ただし、その語源を確かめられる一次資料は見つからなかったので、この記事では採用しません。

1920年の裁判と、そのころ知られていなかったこと

1920年12月6日、米国の最高裁判所は、P&G が持っていた Crisco 関連の特許(Burchenal 特許)のうち、請求項1と2を無効としました(Berlin Mills 対 P&G)。P&G は、同じように水素添加の油を売っていた Berlin Mills 社を訴えていました。

このとき、AOCS は「当時の化学者が、部分水素添加でエライジン酸(トランス型)ができていることを認識していた証拠はない」と書いています。

トランス脂肪酸が健康の問題として表に出るのは、ずっとあとです。

年 できごと
1976年 米国の学術団体 FASEB が、硬化した大豆油について「公衆への危険を示す証拠はない」とする(消費者団体 CSPI の請願書の引用)
1985年 FASEB が「摂取量が今の水準でも将来の予想でも、懸念する理由はほとんどない」とする(同上)
1990年 Mensink と Katan が、トランス脂肪酸の食事ではオレイン酸の食事に比べて LDL コレステロールが上がり HDL が下がることを、人の試験で示す
1993年 米国の看護師85,095人を8年追った研究で、トランス脂肪酸が最も多い群の冠動脈疾患のリスクは、最も少ない群の 1.50倍
2015年 米 FDA が、部分水素添加油を「一般に安全と認められるもの」から外すと決める

「当時は、問題が見えていなかった」ことと、「いまは違う」ことの両方が、記録に残っています。

米国で増えて、減った:1人あたりの供給量

米国農務省の経済調査局(ERS)は、1人あたりのバター・マーガリン・ラード・ショートニングの供給量を、1909年から公表しています(単位はポンド、製品の重さ。「食べた量」ではなく供給量)。

年 ショートニング ラード バター マーガリン
1909年 8.0 6.9 17.9 1.2
1940年 9.0 14.4 17.0 2.4
1965年 14.2 6.2 6.6 9.8
1985年 22.1 1.6 4.9 10.8
2000年 31.5 0.8 4.5 8.2
2005年 29.0 1.6 4.5 4.0
2010年 15.3 1.5 4.9 3.5

出典:米国農務省 ERS の食品供給量統計。ERS は、バター以外の油脂の統計を、2010年以降は更新していません。

  • ラードは1940年の14.4ポンドから、2000年には0.8ポンドまで減り、ショートニングが入れ替わったように見えます
  • ショートニングは、1909年から2000年までに約4倍。2000年の急増は、統計に報告する会社が増えた影響の可能性があります
  • 2005年から2010年に、29.0 → 15.3ポンドとほぼ半分になりました。米国で栄養成分表示のトランス脂肪酸が義務になった(2006年1月)時期と重なりますが、その因果は確かめていません

日本:魚の油の硬化から、パンと菓子の油へ

日本の水素添加は、魚の油から始まりました(触媒学会の資料)。

  • 1908年:農商務省工業試験所の辻本満丸が、魚油の水素化に成功
  • 1913年(大正2年):リーバー・ブラザーズが、尼崎で日本・アジア最初の硬化油の製造を始める(工場の建設は1910年)。原料は日本近海の魚油で、製品の大部分は中国に輸出された。明治後期の日本の魚油は、硬化油の原料として欧州へ大量に輸出されていた
  • 1928年:花王石鹸が、食用の硬化油(ヤシ油)の製造を始める

ショートニングの生産が統計に出てくるのは戦後です。

日本のショートニングとマーガリン類の生産量1年間に作られた量(トン)。農水省の統計と、日本マーガリン工業会の会員統計ショートニングマーガリン類010万t20万t30万t195019601970198019902000201020202010年から会員のみマーガリン類 1950年:20,060トンマーガリン類 1955年:45,227トンマーガリン類 1959年:39,926トンマーガリン類 1960年:43,029トンマーガリン類 1964年:51,818トンマーガリン類 1970年:108,440トンマーガリン類 1980年:222,289トンマーガリン類 1990年:249,715トンマーガリン類 2000年:255,296トンマーガリン類 2009年:233,833トンマーガリン類 2010年:230,185トンマーガリン類 2016年:225,275トンマーガリン類 2020年:211,352トンマーガリン類 2025年:192,749トンショートニング 1951年:1,504トンショートニング 1955年:20,408トンショートニング 1959年:41,617トンショートニング 1960年:45,637トンショートニング 1964年:64,517トンショートニング 1970年:77,038トンショートニング 1980年:136,816トンショートニング 1990年:175,833トンショートニング 2000年:198,107トンショートニング 2009年:207,643トンショートニング 2010年:204,571トンショートニング 2016年:251,272トンショートニング 2020年:204,955トンショートニング 2025年:185,329トン1959年 ショートニングが初めてマーガリンを上回る(4.16万t 対 3.99万t)2016年 25.1万t(最大)2025年 18.5万t1951年 1,504t2009年まで:農水省の統計を日本マーガリン工業会が転載した業界全体の数字。2010年から:工業会の会員企業のみ(連続しない)。2012年の増加(20.5万t→22.9万t)は会員の入れ替えなど集計範囲の影響かもしれず、線は2010年・2016年の点だけをつないでいる。ショートニングはほとんどが業務用(パン・菓子・揚げ油)。マーガリン類は2025年で家庭用15%・業務用85%。出典:日本マーガリン工業会 統計データ(data04.xlsx・production-volume_r7.xlsx)。
出典:農林水産省の統計を日本マーガリン工業会が転載したもの(〜2009年)と、同工業会の会員統計(2010年〜)
  • 1951年:1,504トンで統計が始まる
  • 1959年:41,617トンで、初めてマーガリン(39,926トン)を上回る
  • 1991年:ショートニングの JAS が制定される(平成3年8月1日、農林水産省告示989号)
  • 2016年:251,272トンで最大(会員統計)。2025年は185,329トン

2010年からは日本マーガリン工業会の会員だけの集計で、それ以前とは連続しません。グラフでは点線で区切っています。農林水産省の2013年の資料は、ショートニングの生産数量は減少傾向だが、その減り方はゆるやかだとしています。

日本ではマーガリンより気になる存在に

ウィキペディアの年間閲覧数(Wikimedia の公開データ)を、日本語版と英語版で比べると、違いがありました。

記事 2023年 2024年 2025年
日本語版「マーガリン」 79,494 62,102 56,354
日本語版「ショートニング」 64,542 68,314 50,614
英語版「Margarine」 400,086 385,528 291,103
英語版「Shortening」 184,379 166,537 121,253
  • 日本語版では、2024年に「ショートニング」が「マーガリン」を上回りました(68,314対62,102)
  • 英語版では、3年ともマーガリンのほうがショートニングの約2.2〜2.4倍です

この4記事とも2023年から2025年に減っているので、記事どうしの比べ方にだけ使える数字です。「日本ではパンの原材料欄で目にするため、ショートニングが単独で気になる食品になっているのでは」と考えられますが、確かめた話ではありません。

検索候補にも違いがありました。英語の候補3,176種のうち、halal・haram・kosher・vegan・vegetarian を含むものが120種、banned・illegal(どの国で禁止か)を含むものが79種ありました。日本語の候補2,031種のうち、宗教や菜食に関するものは5種だけで、代わりに「給食」「赤ちゃん」「パン屋 不使用」が並びます。取得した環境が日本なので偏りがありえますが、同じ脂でも、世界で聞かれることは違います。

「潜水艦の潤滑油として発明された」は本当?

「ショートニングは、ドイツ海軍が潜水艦の潤滑油として作らせたもの」という話があります。これは、ファクトチェックサイトの Snopes が「根拠なし(Unfounded)」と判定しています。

  • 出どころは、2019年12月10日の YouTube 動画とされる
  • AOCS は「ドイツ海軍が Crisco を使った記録はない」と回答した
  • Snopes は、ドイツの化学者ノルマンが1901年に水素添加(液体の油を固める化学の技術)を開発し、Crisco はその約10年後の1911年に発売されたので、Crisco が潜水艦用に作られたという話に根拠はない、と説明しています

ここまでの歴史で、記録で確かめられるのは、「ラードの代わりとして19世紀末に生まれた」ことと、「P&G が水素添加の技術を手に入れた当初の目的は石けんの原料だった(AOCS)」ことです。

ショートニングとは:定義・原料・作り方

ここからは、いまの日本のショートニングを、法令と統計で見ます。

JAS の定義:バター・マーガリンとの違い

ショートニングには、日本農林規格(JAS)があります。農林水産省の資料は、ショートニングを、食用油脂を原料にした固状または流動状のもので、可塑性(形の変わりやすさ)や乳化性などの加工性を付けたもの。ほぼ100%が油脂成分と説明しています。

項目 ショートニング マーガリン バター
根拠 JAS(平成3年制定、2024年改正) JAS・食品表示基準 乳等省令
主な原料 食用油脂(植物・動物) 食用油脂に水・乳成分・食塩などを加えて乳化 生乳(乳脂肪)
油脂の割合 ほぼ100% 80%以上(80%未満はファットスプレッド) 乳脂肪80.0%以上
水分 0.5%以下(揮発分を含む) 17.0%以下 17.0%以下
作り方の特徴 窒素ガスを混ぜて急冷・練り合わせたものと、練り合わせないもの 乳化して急冷・練り合わせ (確かめていない)
  • ショートニングは、水も乳成分も入れないのがマーガリンとの違いです。マーガリンは水を加えて乳化したもので、くわしくは マーガリンの記事 で書いています
  • 業務用では、加工性を高めるために乳化剤(レシチン、グリセリン脂肪酸エステル)を使うものがあり、JAS ではその場合だけ酸価(油脂の劣化度合い)の基準が別に決まっています(乳化剤の記事)
  • ラードは豚の脂です。100%豚脂のものが「純製ラード」、豚脂を中心に牛脂やパーム油などを混ぜたものが「調製ラード」です(日本マーガリン工業会)
  • ショートニングについて、コーデックス規格などの国際的な規格は、2012年6月の時点では制定されていません(農林水産省の2013年の資料。その後は確かめていません)

「可塑性」とは

JAS の定義にある「可塑性」は、力を加えると形が変わり、力を抜いても形が保たれる性質です。バターを押すと伸びる、粘土をこねると形になる、あの感じです。日本マーガリン工業会は、ショートニングの特徴として「常温における伸びのよさ、生地への混ざりやすさ」を挙げています。

英語の「plastic」も同じ語で、米国の連邦規則はマーガリンを「plastic form(可塑性のある形)」と定義しています。この言葉が「マーガリン=プラスチック」という話の種になった、という説明を見かけますが、仮説で、裏付けはありません。確かな出どころは、2003年ごろから英語圏で出回ったチェーンメールとされています(マーガリンの記事で確かめています)。

何から作る? 原料の中身

日本マーガリン工業会の会員企業が使った原料(精製した油ベース)を、2026年1〜6月の分で見ると、ショートニングはパーム油が中心でした。

原料 ショートニング(トン) 割合 マーガリン類の割合
合計 89,000 100% (72,153トン)
パーム油(精製しただけのもの) 35,040 39% 19%
エステル交換油 21,026 24% 39%
硬化油(水素添加した油) 7,279 8% 3%
なたね油(精製しただけのもの) 5,024 6% 12%
そのほか(大豆油・動物の脂など。内訳は未確認) 20,631 23% 27%

出典:日本マーガリン工業会「原料使用量」(2026年1〜6月、精製油ベース)。「そのほか」は合計から引いた残りで、ウラヨミで計算しました。

  • ショートニングは、パーム油の割合がマーガリン類の2倍です。固くしやすい性質の油が、練り込み用の固形に向いているためと考えられます(理由は工業会の資料では確かめていません)
  • 硬化油には、完全に水素を添加したもの(完全硬化油)も含まれます。トランス脂肪酸が多い部分水素添加油だけの数字ではありません

硬化油の割合は、ここ10年で下がっています(ウラヨミが工業会の PDF から再集計)。

年 ショートニング マーガリン類 全品目
2016年 14.2% 10.2% 11.3%
2018年 12.8% 8.0% 8.8%
2020年 10.5% 6.3% 7.3%
2022年 9.7% 4.2% 6.6%
2024年 8.2% 3.5% 5.6%
2025年 7.9% 3.2% 5.5%

「硬化油(植物+動物)」「植物・動物の非加工油」「分別油」「エステル交換油」の合計に対する、硬化油の割合です。工業会の会員企業の分だけで、完全硬化油を含みます。日本には規制がなくても、原料の入れ替えは進んでいます。マーガリン類に使う硬化魚油は、4,380トン(2016年)から224トン(2025年)に減りました。

農林水産省の2013年の資料では、国内で使われるショートニングの99%以上が国産で、輸入品は0.8%ほど(2011年)です。

作り方:精製して、固さを調える

ショートニングの作り方を、上から下へ6つの工程で示した流れ図。1は原料の油(パーム油・なたね油・大豆油など)。2は精製(脱ガム(リン酸)→脱酸(苛性ソーダ)→脱色(活性白土)→ろ過)。3は加工で、配合に応じて水素添加・エステル交換・分別のどれか(または組み合わせ)。部分水素添加はニッケル触媒で水素を結びつけて途中で止め、トランス脂肪酸ができやすい。完全水素添加は最後まで結びつけて飽和脂肪酸(ステアリン酸)にし、トランス脂肪酸はほぼできない(FDA は通常の精製油なみ・2%未満)。エステル交換は触媒や酵素で脂肪酸の位置を入れ替え、液体の油と完全硬化油を混ぜるのが主流。分別は冷やして固い部分と軟らかい部分に分ける水素添加をしない方法。4は脱臭で、高温・真空でにおいを取り、このときトランス脂肪酸(一般に2%未満)や副産物のグリシドール・3-MCPD の脂肪酸エステルができる。5は練り合わせで、窒素ガスを混ぜながら急冷して練る。6は充填・包装で、油脂がほぼ100%。下の帯グラフは2026年1〜6月の原料(会員企業、合計89,000トン)で、パーム油39%、エステル交換油24%、硬化油8%、なたね油6%、そのほか23%。
図:ショートニングの作り方(厚生労働省掲載の手引書、JAS 1424、農林水産省、FDA、日本マーガリン工業会 をもとに作成)(押すと拡大)

厚生労働省が掲載している『HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書』(日本マーガリン工業会・日本食品油脂検査協会、2020年)には、ショートニングの工程が書かれています。水素添加・エステル交換・分別をした「食用精製加工油脂」は、原料として受け入れます。

  1. 精製:脱ガム(リン酸)→脱酸(苛性ソーダ)→脱色(活性白土)→ろ過
  2. 混合・脱臭:油を混ぜ合わせて溶かし、においを取る(途中でろ過をはさみます)
  3. 練り合わせ:混ぜ合わせた油を急冷しながら練る。窒素ガスを混ぜて練るもの(農林水産省の2013年の資料)と、混ぜないものがあります
  4. 充填・包装・熟成:容器に詰め、熟成させて出荷する

ショートニングは、油脂がほぼ100%(手引書では水分0.1%未満)なので、微生物は増えません。ショートニングで手引書が挙げる危害は、アレルギー物質の交差接触と、金属などの異物です(ろ過のストレーナー点検と金属探知機)。水素添加した油(食用精製加工油脂)では、触媒のニッケルが残っていないことも毎日確認します。

4つの加工:水素添加・完全水素添加・エステル交換・分別

固くするための方法は、4つあります。「水素添加」と「完全水素添加」が別物であることが、健康の話では大事になります。

方法 何をするか トランス脂肪酸 注意
部分水素添加 ニッケル触媒で油に水素を結びつけ、途中で止める(反応条件の例:触媒0.05〜0.15%、水素圧は常圧〜0.5MPa、120〜175℃) できやすい(部分水素添加油のトランス脂肪酸は平均25〜45%、WHO) 米 FDA の定義では、ヨウ素価(二重結合の多さの目安)が4を超えるもの
完全水素添加 水素を最後まで結びつけ、飽和脂肪酸(ステアリン酸)にする ほぼできない。FDA は「通常の精製油並み(2%未満)」 農林水産省は「トランス脂肪酸を含め、不飽和脂肪酸は含まれない」と説明。FDA の説明と少し違う
エステル交換 触媒(ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、酵素)で、脂肪酸のくっつく位置を入れ替える トランス型の脂肪酸が結合していない油から作れば、できない(農林水産省) 液体の油と完全硬化油を混ぜて入れ替えるのが主流
分別 油を冷やして、固い部分と軟らかい部分に分ける (水素添加をしない方法) パーム油から、固いパームステアリンなどを取る

トランス脂肪酸ができる理由を、農林水産省は次のように説明しています。

  • 水素添加(硬化処理)や、脱臭の高温加熱で、油の中の不飽和脂肪酸のシス型の二重結合の一部が、トランス型に変わることがある
  • 牛や羊などの反すう動物の胃の中の微生物でも同じことが起きる(乳・牛肉・羊肉に天然のトランス脂肪酸がある理由)
  • 揚げ調理(160〜200℃、繰り返し加熱)では、できるのはごく微量で影響は無視できる

FDA によると、水素添加をしていない精製した植物油にも、高温の脱臭の工程で、一般に2%未満のトランス脂肪酸が含まれます。反すう動物の脂肪では、およそ3%です。つまり、「水素添加をしていない=トランス脂肪酸がゼロ」ではありません。

パン・お菓子・揚げ物に使われる理由

サクサク・ふわふわ・カラッと

ショートニングは、味がありません。そのまま食べることはなく、他の食材のおいしさを引き出すために練り込む油脂として作られています。日本マーガリン工業会は、使い道を次のように説明しています。

  • クッキー・ビスケット:サクサク、ポロポロとした軽い食感にする。レシピのバターやマーガリンの分量の半分をショートニングに替えると、バターの風味とサクサクした食感の両方が楽しめる
  • パン:やわらかく、ふわふわに焼き上がる
  • フライ用:常温で固まる性質があるので、油がにじまず、カラッと仕上がる。揚げたてでも油が手に付きにくい。ただし、ファーストフードで使われるものは、市販のものと成分が少し違う、と工業会は書いている
  • そのほか、アイスクリームにも使われる

これは業界団体の説明です。なぜサクサクになるのかというくわしいしくみは、今回調べた公的な資料では確かめられなかったので、書きません。

日持ちがよい

ショートニングは、水分がほとんどない(手引書では0.1%未満)ので、微生物が増えません。業務用の例では、ミヨシ油脂のショートニング(業務用10kg)の賞味期間は、製造後120日と210日(未開封)と製品情報にあります。油脂の劣化の度合いを示す酸価も、JAS で上限が決まっています(0.2以下。乳化剤を使った業務用は2.0以下)。

どれくらい使われている?ほとんどが業務用

  • 2025年の国内の消費(出荷)は、ショートニングが189,023トン(日本マーガリン工業会の統計)。マーガリン類は約19万トン、バターの出回りは約8.4万トン(2024年度)です。ショートニングの量は、バターの出回りの約2.3倍です。ほとんどが業務用なので、店頭では目にしにくい形で使われています(年度と集計の範囲が違う概算)
  • 農林水産省の2013年の資料も、ショートニングはほとんどが業務用で、菓子・パンの原材料や揚げ油に使われ、家庭用として小売店で売られるのはごく一部だと書いています
  • 窒素ガスを混ぜて練り合わせたものは、クッキー・ビスケットなどの菓子やパンの原材料に、ガスを入れないものは揚げ油に使われます

マーガリンの場合は、2025年に家庭用が約15%、業務用が約85%でした。ショートニングも、私たちが食べる量の大半は、お菓子やパンの中に入った形です。

ラベルの読み方:「ショートニング」「植物油脂」「加工油脂」

名前の書き方

ショートニングの JAS(JAS 0989:2024)では、名称は「ショートニング」と書きます。未練りのものと流動状のものは、名称のあとにかっこ書きで「未練り」「流動状」と書きます。急冷して練り合わせていないものを、未練りと呼びます。

原材料名は、使った原材料を重さの多い順に、「大豆油」「豚脂」「硬化油」などの最も一般的な名前で書くのが基本です。ただし、「食用植物油脂」「食用動物油脂」「食用精製加工油脂」とまとめて書いてもよいとされています。

食品表示基準では「植物油脂」「加工油脂」でまとめられる

パンやお菓子の裏面(食品表示基準)では、食用の油脂を「植物油脂」「動物油脂」「加工油脂」などでまとめて書けます(植物油脂の記事)。

  • 食品表示基準の本文に、「ショートニング」「硬化油」「トランス脂肪酸」という語は出てきません(2026年10月3日に e-Gov の全文を検索して0件)
  • 「加工油脂」と書いてあっても、中身(水素添加・エステル交換・分別のどれか)は書かなくてよいことになっています。「加工油脂」が水素添加を意味するとは限りません
  • 雪印メグミルクも、「食用精製加工油脂」には水素添加・分別・エステル交換の加工油脂があり、水素添加した部分でトランス脂肪酸ができると説明しています。つまり、「食用精製加工油脂」とだけ書いてあっても、部分水素添加かどうかは、「部分水素添加油脂不使用」のような別の表示がなければ分かりません

ウラヨミの78品の裏面を見ると

ウラヨミで紹介している食品・日用品78品(2026年10月3日、調査メモの集計時点)の原材料欄を数えました。

原材料欄の言葉 該当した品数 例
マーガリン・ショートニング・ファットスプレッド・硬化油 0品 —
加工油脂(食用加工油脂) 2品 味の素KKコンソメ(固形)、クノール カップスープ コーンクリーム
植物油脂(食用植物油脂・動植物油脂を含む) 9品 ハウス シチューミクス クリーム、キユーピー マヨネーズ、創味シャンタン など
食用油脂(まとめ名称) 8品 コスモ直火焼のカレー・ルー、ハウス バーモントなど
混合油脂(パーム油・なたね油) 1品 エスビー ゴールデンカレー
牛脂・ラードの表示がある 牛脂4品・ラード1品 ハウス3品、味覇など

油脂の表記がある品は、78品のうち20品でした。

  • 「ショートニング」「マーガリン」と書いた品が0だったのは、ウラヨミの品がルウ・スープ・だし・ソース・たれ・ドレッシングなど調味料が中心で、パンやお菓子がほとんど無いからです
  • ルウのように、固めるために油が必要な食品でも、裏面の「植物油脂」「食用油脂」の中身は分かりません。農林水産省の調査では、ルウのトランス脂肪酸の中央値は0.46 g/100g(2022〜23年度)ですが、最大は7.0でした(カレールウの記事)

つまり、「ショートニング」と書いてある食品を避けても、「加工油脂」「植物油脂」という名前の中に、同じ加工をした油が入っている可能性は否定できません。入っているかどうかは、裏面だけでは判断できません。

体に悪い? 説ごとに確かめる

「ショートニングは体に悪い」という言い方は、実は3つの別の話が混ざっています。

  1. 部分水素添加でできるトランス脂肪酸(心臓病との関係)
  2. 固くするために増えた飽和脂肪酸
  3. 精製の工程でできる副産物(グリシドール・3-MCPD。次の節で扱います)

ショートニングという食品そのものを、長期間食べ続けた人の健康を調べた研究は、今回集めた資料の中にはありませんでした。以下は、成分ごとの研究です。

トランス脂肪酸の数字は、この15年で大きく下がった

農林水産省は、同じ品目のトランス脂肪酸を、3回調べています(2006〜07年度・2014〜15年度・2022〜23年度)。ショートニングの中央値は、12 → 1.0 → 0.61 g/100gでした。

ショートニング・マーガリン・ファットスプレッドのトランス脂肪酸食品100gあたりのg(中央値)。農水省が3回、同じ品目を調べた結果2006〜07年度2014〜15年度2022〜23年度036912ショートニングショートニング 2006〜07年度:12.0 g/100g(10点、最大 31)12.0(10点、最大 31)ショートニング 2014〜15年度:1.0 g/100g(24点、最大 24)1.0(24点、最大 24)ショートニング 2022〜23年度:0.61 g/100g(12点、最大 0.86)0.61(12点、最大 0.86)マーガリンマーガリン 2006〜07年度:8.7 g/100g(20点、最大 13)8.7(20点、最大 13)マーガリン 2014〜15年度:0.99 g/100g(46点、最大 16)0.99(46点、最大 16)マーガリン 2022〜23年度:0.65 g/100g(60点、最大 1.3)0.65(60点、最大 1.3)ファットスプレッドファットスプレッド 2006〜07年度:6.1 g/100g(14点、最大 10)6.1(14点、最大 10)ファットスプレッド 2014〜15年度:0.69 g/100g(33点、最大 4.4)0.69(33点、最大 4.4)ファットスプレッド 2022〜23年度:0.48 g/100g(60点、最大 1.3)0.48(60点、最大 1.3)かっこ内は調べた点数と、その中の最大値(g/100g)。ショートニングは2014〜15年度に最大24、2022〜23年度は最大0.86。2022〜23年度は販売量を考えて試料を選び、2014〜15年度は考えていない。農水省は「違いは増減だけを表さない」と注意している。2006〜07年度は食品安全委員会と農水省委託の調査の合算(点数が少なく「おおよその目安」)。出典:農林水産省「食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査」(平成18・19年度、26・27年度、令和4・5年度)。
出典:農林水産省「食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査」(平成18・19年度、26・27年度、令和4・5年度)
調査 点数 中央値(g/100g) 範囲
2006〜07年度 10点 12 1.2〜31
2014〜15年度 24点 1.0 0.46〜24
2022〜23年度 12点 0.61 0.52〜0.86
  • 食品安全委員会が2006年度に調べたショートニング10点は、平均が13.574 g/100g(最大31.210、最小1.150)でした
  • 同じ委員会が2010年度に業務用のマーガリンとショートニングを調べ直すと、平均値は2006年度の10分の1以下(ほとんどの試料で約1 g/100g)でした。ただし業務用は購入方法も銘柄も同じではなく(同一銘柄で比べたのは一般家庭用11点だけ)、「低減されていないものや濃度の高い銘柄も存在した」とも書いています
  • 2022〜23年度の最大値0.86 g/100gは、ショートニングが脂質100%なので、脂肪100gあたり0.86gにあたります。EU や WHO が勧める上限(脂肪100gあたり2g)に収まる計算です。2014〜15年度の最大24は、収まりません。分析は天然由来のトランス脂肪酸と区別できません

この3回の調査は、そのまま増減としては読めません。

  • 2022〜23年度は販売量を考えて試料を選び、2014〜15年度は考えていません。2006〜07年度は、食品安全委員会と農林水産省委託の調査の合算で、点数が少なく、農林水産省自身が「おおよその目安」と書いています
  • 農林水産省は「各調査の結果の違いは、増減だけを表すものではない」と注意しています
  • ショートニングの点数は12で、国内に流通する分布を見るのに十分とは言えません

それでも、「ショートニングは昔のまま、トランス脂肪酸が多い」とは言えないことは分かります。企業は、規制がなくても、エステル交換や分別などの加工技術を使って、トランス脂肪酸の少ない油脂を作ってきました。

「トランス脂肪酸ゼロ」と書いてあっても

パンやお菓子の栄養成分表示で「トランス脂肪酸 0g」と書いてあっても、本当にゼロとは限りません。日本には、書き方の目安があります。

  • 消費者庁の「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」(2011年2月21日)では、食品100gあたり0.3g未満なら「0g」と書ける。誤差は+20%まで認められる
  • 「含まない(ゼロ・ノン・フリー)」と強調するには、さらに飽和脂肪酸が100gあたり1.5g未満(または熱量の10%未満)が必要
  • 米国は、1食(1回量)あたり0.5g未満で「0g」と書ける。韓国は1回量あたり0.2g未満(食用油脂は100gあたり2g未満)

ショートニングに当てはめると、農林水産省の2022〜23年度の12点は、最小でも0.52 g/100gでした。日本の指針の基準(0.3g未満)では、調べた12点のどれも「0g」と書けない水準です。10gあたりに直すと0.052〜0.086gです。

「トランス脂肪酸 0g」や「トランス脂肪酸フリー」は、ゼロという意味ではなく、国のルールで書ける量の下限、と読んでください。「ゼロ」と書ける条件は国ごとに違うので、同じ食品でも、国によって書けたり書けなかったりします(トランス脂肪酸の記事で国別に比べています)。

心臓病:血中脂質の試験と、追跡研究

トランス脂肪酸と心臓病の研究は、血液の脂質を調べる試験と、多くの人を追いかけた観察研究の2種類です。

研究 種類・人数・期間 結果
Mensink と Katan(1990年、NEJM) 無作為化クロスオーバー試験。健康な59人(女34・男25)、3種類の食事を各3週間、エネルギーの10%を置き換え オレイン酸の食事に比べ、トランス脂肪酸の食事は LDL が14 mg/dL高く、HDL が7 mg/dL低い。飽和脂肪酸の食事は LDL が18 mg/dL高かったが、HDL は変わらなかった
Mensink ら(2003年、AJCN) 60の対照試験のメタ分析 総コレステロール/HDL 比への影響は、トランス脂肪酸のほうが飽和脂肪酸の約2倍
Willett ら(1993年、Lancet) 米国の看護師85,095人、8年、冠動脈疾患431件(観察研究) トランス脂肪酸が最も多い群は最も少ない群の 1.50倍(95%信頼区間 1.12〜2.00)
Oh ら(2005年、AJE) 同じ研究を20年に延長。女性78,778人(観察研究) 最も多い群は最も少ない群の 1.33倍(1.07〜1.66)
de Souza ら(2015年、BMJ) 観察研究のメタ分析 総トランス脂肪酸で、全死亡 1.34、冠動脈疾患死亡 1.28、冠動脈疾患 1.21。工業由来は冠動脈疾患 1.42(1.05〜1.92)、反すう動物由来は 0.93(0.73〜1.18)。脳梗塞(1.07)と2型糖尿病(1.10)は有意でない
  • 血液の脂質については、人を使った試験で、はっきり差が出ています
  • 心臓病の発生については、追跡研究(観察研究)の結果です。食事アンケートで摂取量を推定し、ほかの生活習慣の影響も混ざるので、原因そのものの証明にはなりません。トランス脂肪酸を減らして心臓病が減るかを調べた介入試験の報告は、食品安全委員会(2012年)の時点でありません。WHO も、血中脂質は試験、病気は観察研究と分けて書いています
  • de Souza の「1.21・1.28・1.34」は、WHO のファクトシートが引いている数字ですが、天然のトランス脂肪酸を含めた合計の数字です。工業由来だけの値は上の表のとおりです

日本の公的な評価は、WHO の見方と書きぶりが違います。

  • 食品安全委員会(2012年3月):日本人の平均摂取量はエネルギーの0.3%(約0.67g/日)で、「通常の食生活では健康への影響は小さい」。ただし、脂質に偏った食事をしている人は留意が必要。摂取量の多いほうから5%の人は男0.70%・女0.75%で、1〜6歳の男児は1.02%と、WHO の目標(1%未満)を超えます。ただし、食品安全委員会の2006年度の調査値を使った推計では、硬化油・食用植物油由来に限ると、99パーセンタイルでも1%を超えません。農林水産省の調査値の上限で推計すると、一部の年齢層の99パーセンタイル値は1%を超えます
  • 日本人の食事摂取基準(2025年版):トランス脂肪酸の目標量は設けていません(日本人の摂取量が欧米より少なく、影響の報告も十分でないため)。ただし「現状のままでよいという意味ではない」として、参考値に1%エネルギー未満、できるだけ低くを示しています。日本人の平均摂取量で比べると、トランス脂肪酸の影響は飽和脂肪酸の約12分の1と計算しています
  • WHO(2023年):トランス脂肪酸は総エネルギーの1%までにするよう強く勧告。工業由来と天然を区別しません。2000kcalで1%は2.2g/日です

くわしい研究と、摂取量の3つの推計は、トランス脂肪酸の記事 に書いています。

トランス脂肪酸を減らしたら、飽和脂肪酸が増えた?

ショートニングのトランス脂肪酸を減らすには、固さを別の手段で作る必要があります。その手段が、パーム油、分別した固い油、完全に水素添加した油(どれも飽和脂肪酸が多い油)です。

トランス脂肪酸を減らした分、飽和脂肪酸は増えた?飽和脂肪酸の量(食品100gあたりのg)。調査によって結果が分かれる2006年度2010年度別の調査(試料・年度が違う)015304560業務用ショートニング食品安全委員会(業務用・平均・銘柄は同じでない)業務用ショートニング 2006年度:23.9 g/100g2006年度 23.9業務用ショートニング 2010年度:45.4 g/100g2010年度 45.4業務用マーガリン食品安全委員会(業務用・平均・銘柄は同じでない)業務用マーガリン 2006年度:29.9 g/100g2006年度 29.9業務用マーガリン 2010年度:40.9 g/100g2010年度 40.9ショートニング農水省 2022〜23年度(中央値・12点)ショートニング 2022〜23年度:46.0 g/100g2022〜23年度 46マーガリン農水省 2022〜23年度(中央値・60点)マーガリン 2022〜23年度:30.0 g/100g2022〜23年度 30上の2つ:食品安全委員会が業務用を2006年度と2010年度に調べた平均。購入方法も銘柄も同じではない。トランス脂肪酸の平均は1/10以下(ほとんど約1 g/100g)で、飽和脂肪酸の平均は増えた。下の2つ:農水省が別の試料で調べた値。農水省は「飽和脂肪酸が増える傾向は確認されなかった」としていて、上の調査と線でつなげない(試料・年度・業務用の割合が違う)。出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書(2012年3月)、農林水産省 令和4・5年度の調査。
出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書(2012年3月)、農林水産省 令和4・5年度の含有実態調査
  • 食品安全委員会(業務用を2006年度と2010年度に調べた結果。購入方法も銘柄も同じではない):飽和脂肪酸の平均は、業務用ショートニングで 23.9 → 45.4 g/100g(約1.9倍)、業務用マーガリンで 29.9 → 40.9(約1.4倍)。評価書は、低減に伴って増えた飽和脂肪酸に、今後とも留意が必要と書いています
  • 農林水産省(2022〜23年度):トランス脂肪酸が減った分、飽和脂肪酸が増える傾向は確認されなかったとしています。ショートニングの飽和脂肪酸の中央値は46(範囲38〜54)g/100gで、マーガリンは30(17〜45)g/100g
  • 2つの結果は、試料も年度も業務用の割合も違うので、食い違いとして両方を書きます。数字だけ並べると、2022〜23年度のショートニング(46)は、2010年度の業務用ショートニング(45.4)とほぼ同じ水準ですが、別の調査なので、増えたとも減ったとも言えません
  • デンマークでも、規制のあと2回調べた製品のうち、トランス脂肪酸が減っていた製品の3分の2以上で、主に飽和脂肪酸(ココナッツ油・パーム油由来が多い)に置き替わっていました(農林水産省の整理)

では、飽和脂肪酸は害なのでしょうか。研究者の間でも見方が割れています(植物油と動物性の油の記事でくわしく書いています)。

  • 米国心臓協会(AHA、2017年):飽和脂肪酸を減らして多価不飽和の植物油に置き換えた試験で、心血管疾患が約30%減った。ただし、精製した炭水化物や糖で置き換えても減らない
  • コクラン・レビュー(2020年):飽和脂肪酸を減らす2年以上の試験15件で、心血管イベントは17%減。全死亡と心血管死亡は差がなかった
  • 反論もあります:Chowdhury ら(2014年)は、飽和脂肪酸の冠動脈疾患のリスクを 1.02(0.97〜1.07)と、関連なしと報告。Astrup ら(2020年)は、全脂乳製品など飽和脂肪酸が多い食品について「さらに制限する根拠はない」と主張

一方で、トランス脂肪酸の害そのものは、ほとんど議論されていません。日本の食事摂取基準は、日本人の平均的な摂取量では、飽和脂肪酸の影響のほうが大きいと計算しています。「トランス脂肪酸を減らす」ことと「飽和脂肪酸を増やさない」ことは、別の課題です。

「発がん性がある」は本当?

ショートニングについて、「発がん性がある」という話は、検索候補にも出てきます(日本語で31種)。ここでは、2つの別の話が混ざっていることを、先に分けます。

  • 話A:トランス脂肪酸が、がんの原因になる?
  • 話B:精製した油にできる副産物(グリシドール・3-MCPD)が、発がん物質?

国際がん研究機関(IARC)の一覧にあるもの・ないもの

IARC は、世界保健機関(WHO)の機関で、発がん性の証拠の強さを分類しています。2018年版の一覧(第1〜123巻)をウラヨミが検索して、確かめました。

物質 分類 巻・年
グリシドール 2A(おそらく発がん性がある) 第77巻(2000年)
3-MCPD(3-モノクロロ-1,2-プロパンジオール) 2B(発がん性があるかもしれない) 第101巻(2013年)
トランス脂肪酸・マーガリン・ショートニング・硬化油・植物油 一覧に載っていない —
  • ショートニングも、トランス脂肪酸も、IARC の一覧にはありません(それ以降の巻に入っていないかは、確かめていません)
  • この分類は「発がん性の証拠の強さ(ハザード)」で、食べる量でどれくらいのリスクになるかを示すものではありません
  • グリシドールと 3-MCPD は、油に直接入っているのではなく、精製(高温の脱臭)の工程でできる副産物が、脂肪酸と結びついた形(脂肪酸エステル)で食用油に含まれます。このうちグリシドール脂肪酸エステルは、体の中でほぼ分解されて、グリシドールとして吸収されると、欧州食品安全機関(EFSA)は仮定しています

話B:精製した油全般の話で、ショートニング固有ではない

農林水産省は、食用油脂やマーガリン類を買って調べています(2012〜13年度と、2023年度)。2023年度(令和5年度)の中央値は、次のとおりです。

精製した油脂に出る副産物:ショートニング固有ではない3-MCPD 脂肪酸エステルとグリシドール脂肪酸エステルの量(mg/kg、中央値)3-MCPD 脂肪酸エステルグリシドール脂肪酸エステル01234パーム油(23点)パーム油 3-MCPDE:3.4 mg/kg3.4パーム油 GE:1.1 mg/kg1.1ショートニング(12点)ショートニング 3-MCPDE:1.5 mg/kg1.5ショートニング GE:0.62 mg/kg0.62こめ油(30点)こめ油 3-MCPDE:0.6 mg/kg0.6こめ油 GE:1.1 mg/kg1.1マーガリン(60点)マーガリン 3-MCPDE:0.51 mg/kg0.51マーガリン GE:0.33 mg/kg0.33オリーブ油(5点)オリーブ油 3-MCPDE:0.28 mg/kg0.28オリーブ油 GE:0.15 mg/kg0.15ラード(20点)ラード 3-MCPDE:0.15 mg/kg0.15ラード GE:0.07 mg/kg0.07大豆油(24点)大豆油 3-MCPDE:0.095 mg/kg0.095大豆油 GE:0.29 mg/kg0.29どちらも精製の高温の工程(脱臭)などでできる副産物で、水素添加とは別の話。点数が少ない品目(オリーブ油5点)は参考値。日本には、精製油・マーガリンなどの最大基準値は(確かめた範囲では)ない。EU は食用植物油脂に上限を設けている(本文参照)。3-MCPD エステルは 3-MCPD の量に換算した値、グリシドール脂肪酸エステルはグリシドールの量に換算した値。出典:農林水産省「食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類・グリシドール脂肪酸エステル類の含有実態調査」令和5年度。
出典:農林水産省「食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類・グリシドール脂肪酸エステル類の含有実態調査」令和5年度
品目 点数 3-MCPD エステル(mg/kg) グリシドールエステル(mg/kg)
パーム油 23 3.4(1.3〜5.4) 1.1(0.81〜3.2)
こめ油 30 0.60(0.15〜7.3) 1.1(0.32〜3.5)
ショートニング 12 1.50(0.38〜2.44) 0.62(0.12〜1.08)
マーガリン 60 0.51(0.09〜1.42) 0.33(0.07〜1.54)
大豆油 24 0.095 0.29
オリーブ油 5 0.28 0.15
ラード 20 0.15 0.07
  • 3-MCPD エステルが最も多いのはパーム油、グリシドールエステルが最も多いのはこめ油とパーム油(どちらも1.1)です。ショートニングの3-MCPD エステルは、パーム油の半分以下です
  • ショートニングは、パーム油を主な原料の一つにしているので、原料の油の性質が製品にも出ると考えられます(因果は調べていません)
  • 農林水産省は、製造事業者の低減の取り組みで低減したと説明しています。ただし、マーガリン・ショートニングのグリシドールエステルは、2012〜13年度と「概ね同程度」とも書いています。ショートニングの2012〜13年度は3点だけなので、参考値です
  • 日本には、精製油・マーガリンなどの最大基準値は、確かめた範囲ではありません。EU には上限があり、食用植物油脂のグリシドールエステルは 1 mg/kg、3-MCPD エステルは 1.25 mg/kg(ココナッツ・トウモロコシ・なたね・ひまわり・大豆・パーム核・オリーブ)または 2.5 mg/kg(パームなどそのほか)です(EU の規則。農林水産省の一覧から)
  • 数字だけ並べると、日本の調査のパーム油(3.4)は、EU の上限(2.5)より高い値です。日本には基準がないので「違反」の意味ではなく、分析法や試料の採り方も違いえます。単純には比べられませんが、日本で売られる油にも、EU が上限を設ける水準の副産物が含まれることは確かです

自分で計算してみる:耐容一日摂取量(TDI)

EFSA は2018年に、3-MCPD とその脂肪酸エステルのグループの耐容一日摂取量(TDI)を、体重1kgあたり1日2μgとしました(腎臓の細胞が増えすぎる変化を指標に、不確実係数100をかけて決めた値)。TDI は、一般に、一生食べ続けても健康への悪影響がないと推定される量の目安です。

  • EFSA は、成人は平均も高摂取の人も TDI を超えないとしました
  • ただし、乳児用調製乳だけを飲む乳児と、高摂取の10歳未満の子どもは、超える可能性があるとしています
  • グリシドール脂肪酸エステルには TDI がありません。遺伝毒性のある発がん物質なので、「摂取量と毒性の目安との比(MOE)」で評価し、25,000以上なら懸念は低いとされます。乳児と10歳未満は、平均でも25,000を下回る可能性があり、10歳以上でも高摂取の人は下回る可能性があります(EFSA の推定範囲:10歳以上の高摂取群で MOE 9,300〜51,000)

日本の実測の中央値を、TDI に当てはめて計算します(ウラヨミの計算で、公式の評価ではありません)。

食品(3-MCPD エステルの中央値) 体重60kgの人が TDI(120μg)に達する量 体重20kgの子どもが TDI(40μg)に達する量
パーム油(3.4 mg/kg) 約35g 約12g
ショートニング(1.5 mg/kg) 約80g 約27g
マーガリン(0.51 mg/kg) 約235g 約78g
  • 計算式:TDI(μg/日)÷ 中央値(μg/g)。体重60kg なら 2μg × 60 = 120μg です
  • ショートニングは、80g ぶんを1日に食べるわけではなく、パン・お菓子・揚げ物など、いろいろな食品に少しずつ入ります。実際の評価は、1つの食品ではなく、食事全体の合計で行われます(EFSA も、そうしています)
  • 中央値で計算しているので、点数のばらつき(ショートニングは0.38〜2.44)は含んでいません

この計算で言えるのは、ショートニングの副産物は、パーム油より低く、こめ油・大豆油・マーガリンより高い、精製油の中の一つの水準で、ショートニングだけが突出して高いわけではないということです。「だから安全」とも「だから危険」とも言えません。農林水産省は、一部の食品は、さらなる低減が必要だとしています。

話A:トランス脂肪酸とがん

トランス脂肪酸とがんの研究は、すべて観察研究です。

研究 結果
Michels ら(2021年、46編の観察研究の系統的レビューとメタ分析) 前立腺がん OR 1.49(1.13〜1.95)、大腸がん 1.26(1.08〜1.46)は有意。乳がん 1.12(0.99〜1.26)は有意でない。研究ごとのばらつきが大きい
Anjom-Shoae ら(2020年、乳がん・前向き研究7件) 食事のトランス脂肪酸は 1.02(0.95〜1.10)。血中の値は閉経後の女性でのみ 1.37
Salemi ら(2023年、大腸がん) 全体で 1.093(1.017〜1.176)だが、コホート研究だけにすると 1.027(0.976〜1.081)で、関連が見えない
  • 食品安全委員会(2012年)は、乳がん・大腸がん・前立腺がんは「研究は多いが、結果は一致していない」、そのほかのがんは「結論できない」としています
  • 公的機関の発がん性の分類(IARC)に、トランス脂肪酸はありません

「発がん性」への答え

  • 「トランス脂肪酸が発がん物質」とは、言えません。観察研究の結果は一致せず、公的な分類にもありません
  • 「ショートニングが発がん物質」とも、言えません。ショートニングは、IARC の一覧に載っていません。載っているのは、精製した油の副産物(グリシドール・3-MCPD)で、パーム油やこめ油など、精製油全般の話です
  • 日本の実測では、ショートニング(1.5)は、パーム油(3.4)より低く、マーガリン(0.51)より高い値でした
  • IARC の2A・2B は、証拠の強さの分類で、食べる量でのリスクの大きさではありません

つまり、「ショートニング=発がん性」という図式は、精製した油を使う食品の多くに当てはまる話を、ショートニングだけの話にしてしまったものです。精製した油は、サラダ油(大豆油・なたね油など)にも使われ、日本の実測では大豆油にも微量が検出されています(植物油脂の記事)。

完全水素添加・エステル交換のショートニングは? 業界資金の研究

トランス脂肪酸を出さずに固めるために、完全水素添加の油と液体の油をエステル交換した脂肪が使われるようになりました。その健康への影響は、どこまで調べられているのでしょうか。主な論文を、資金源を並べて見ます。

研究 種類・人数・期間 結果 資金・利益相反
Sundram ら(2007年) 無作為化クロスオーバー。健康な30人、全食事を管理して4週間×3回。パーム油オレイン/部分水素添加大豆油/ステアリン酸が多いエステル交換脂肪 部分水素添加大豆油とエステル交換脂肪の両方で、LDL/HDL 比と空腹時血糖が上がった。エステル交換は血糖が約20%高く、インスリンが22%低かった マレーシアパーム油庁(MPOB)が資金。第一著者は MPOB の社員、共著者の Hayes はパーム油諮問会議のメンバー
Ng ら(2018年) 並行群間二重盲検。過体重の健康な成人85人、8週間 パルミチン酸型・ステアリン酸型のエステル交換脂肪と、天然のパーム油で、インスリン抵抗性の指標に差なし MPOB の研究費
Hall ら(2025年) 無作為化クロスオーバー。健康な51人(完了47人)、各6週間。エネルギーの10%を、マフィンとマーガリンスプレッドで パルミチン酸型とステアリン酸型のエステル交換脂肪で、総コレステロール/HDL 比に差なし(差0.05、−0.08〜0.18)。IL-10 のみ低下。長期の影響は不明 MPOB の研究費(資金提供者は計画・解析に関与せず)。共著者に ADM 社員、Zoe 社との関係の申告あり
Mills ら(2021年) 食後の無作為化試験(20人) パルミチン酸が多い油は、エステル交換の有無に関わらず、菜種油(一価不飽和脂肪酸が多い油)より、動脈硬化に関わるリポ蛋白(小粒子 LDL・レムナント)が増えた(20人)。エステル交換そのものは、脂肪の消化や食後の脂質を変えない 英国 BBSRC の資金。試験用の脂肪は ADM 社が提供
Hayes と Pronczuk(2010年) 約25のヒト試験のレビュー 少量のエステル交換脂肪を含む試験は「検出できる異常なし」。ステアリン酸型を総エネルギーの高い割合で与えた5〜6試験は、リポ蛋白・血糖・インスリンなどに悪影響。悪影響は7〜8%エネルギーから 著者 Hayes は、2007年の論文でパーム油諮問会議のメンバーと申告している
  • 日常的な量での試験は、多くが「差なし」でした。ただし期間は4〜8週間、人数は数十人です
  • 主な試験の資金は、パーム油の業界団体(MPOB)です。結果が悪いからと隠されたという意味ではなく、資金源が偏っているという意味です
  • 完全水素添加は、固い飽和脂肪酸(ステアリン酸)の油になります。トランス脂肪酸は、FDA の説明では、完全に近い水素添加でも2%未満が残りえます
  • 「安全が確認された」とも「危険」とも言えません。研究が少なく、長期の影響は分かっていないが、正確です

日本の裏面表示では、完全水素添加もエステル交換も「加工油脂」の一語に入るため、消費者が選び分けることはできません(前の節)。

アメリカでは禁止? 日本は? 世界の規制

結論から言うと、日本には、トランス脂肪酸の含有量の上限も、栄養成分表示の義務もありません。消費者庁の指針に沿って、事業者が自主的に表示します。

米国:禁止されたのは「部分水素添加油」

「米国ではショートニングが禁止された」と伝わることがありますが、正確には違います。

  • 2015年6月17日:FDA が、部分水素添加油(PHO)を「一般に安全と認められるもの(GRAS)」から外すと最終決定
  • 2018年6月18日が遵守期限。その後の延期で、申請のなかった用途は、製造が2018年6月18日まで・流通が2020年1月1日まで。申請があった用途は、製造が2019年6月18日まで・流通が2021年1月1日までとされた
  • 対象はトランス脂肪酸ではなく、部分水素添加油です。完全水素添加油と、天然(反すう動物由来)のトランス脂肪酸は対象外。新たに FDA が認めれば、使うこともできます
  • 米国の工業由来トランス脂肪酸の摂取量は、4.6 g/日(2003年)→1.3(2010年)→1.0(2012年)に下がりました(FDA の推計)

世界の主な規制

国・地域 規制 開始
デンマーク 最終製品の油脂100gあたり2g超を禁止(天然由来を除く)。世界初 2004年1月(2003年6月に規則開始、移行措置あり)
スイス 食用植物油脂100gあたり2g超を禁止 2008年4月1日
米国 部分水素添加油(PHO)を GRAS から除外 2018年6月18日(流通は2020〜21年)
カナダ PHO の使用を禁止 2018年9月17日
台湾 PHO(ヨウ素価4超)の使用を禁止。完全水素添加は可 2018年7月1日
タイ PHO と PHO を使った食品の製造・輸入・販売を禁止 2019年1月9日
EU 天然を除くトランス脂肪は脂肪100gあたり2gまで(規則2019/649) 経過措置は2021年4月1日まで
インド 工業由来を油脂の2%以下に 2022年1月1日
香港 PHO の使用と、PHO を含む油脂の輸入を禁止 2023年12月1日
マレーシア 脂質100gあたり2g以上(動物性脂肪由来を除く)の食品の販売などを禁止 2025年9月1日
日本 上限なし、表示は任意(指針) —
  • WHO が勧める「最良の政策」は、脂肪100gあたり2gの上限か、部分水素添加油の製造・使用の禁止のどちらかです。実施している国は、2018年の11か国(世界人口の6%)から、2023年末には53か国(37億人、人口の46%)に増えました。日本は含まれていません
  • WHO の「排除の検証証明」を受けた国は9か国(デンマーク・リトアニア・ポーランド・サウジアラビア・タイ、2025年にオーストリア・ノルウェー・オマーン・シンガポール)です。日本は入っていません
  • 日本の位置づけは、農林水産省(2024年11月)が「WHO の4段階のうちスコア2(ほかの補完的な措置を講じている国)」と説明する一方、WHO の2023年報告書の表では「データなし」の欄で、食い違っています

日本は「規制しない」のではなく、「いまは数字が理由で任意」

消費者委員会の食品ワーキング・グループのとりまとめ(2015年5月)は、トランス脂肪酸の表示を義務にしない理由を、「平均的な日本人の推定摂取量が、エネルギー比1%未満だから」としました。同時に、摂取量が増える傾向が認められた場合は、上限値の規制や表示の義務づけを検討する必要があるとも書いています。規制がない根拠は「数字」で、永久の結論ではありません。

  • 企業は、規制なしで先に動きました。雪印メグミルクは、家庭用のマーガリン類14商品とショートニング1商品で、明治は家庭用10商品で、2018年3月に部分水素添加油を使うのをやめました。雪印は、マーガリンにトランス脂肪酸が多いというイメージが広がり、買い控えにつながっていると説明しています(日刊工業新聞)
  • 消費者庁の2020年の調査(942社が回答)では、自社製品にトランス脂肪酸を含む商品があると答えた事業者のうち、消費者に情報を発信しているのは14.3%でした。発信しない理由は、「含有量を把握していない」31.1%、「日本人の摂取量が人体に影響のないレベルと言われている」28.4%などです
  • 日本が WHO の目標に届いていないという見方と、日本の評価書の「通常の食生活では影響は小さい」は、見ている単位が違います(WHO の報告書は、人口の多い国は割合が低くても、世界全体の死亡数に寄与すると説明)

国ごとの規制のくわしい比較と、日本に規制がない理由は、トランス脂肪酸の記事 にまとめています。

選び方・使い方

ここからは、実際にどうするかの話です。ショートニングは、家庭で買う食品というより、パンやお菓子の中に入っている油です。だから、「家庭で使うショートニング」「パンやお菓子を選ぶとき」「代わりの油脂」の3つに分けます。

家庭で買えるショートニング

日本でショートニングが家庭用として売られるのは、ごく一部です(日本マーガリン工業会、農林水産省)。

  • 雪印メグミルクの家庭用ショートニング(チューブ入り)は、公式ページが見つからず、取り扱いは確認できませんでした
  • 農林水産省の2013年の資料は、家庭用ショートニングは「JAS 品の流通がほとんどない」状況だが、調べた消費者の約80%が JAS 規格が必要と答えた、と書いています(家庭用の規格を求める声はあった)
  • 今回、小売店のページで確かめられた家庭向けのショートニングは、商品名に「有機パーム油100%」「トランスファットフリー」とある輸入品でした。メーカー名と原材料欄は確かめられませんでした
  • 「トランスファットフリー」は、米国のルールでは、1食あたり0.5g未満なら「0」と書けることに注意が必要です。名前だけで「ゼロ」とは言えません

家庭用のショートニングは、成分表には載っています(日本食品標準成分表、八訂増補2023年、可食部100gあたり)。

食品 脂質 飽和脂肪酸 一価不飽和 多価不飽和
ショートニング(家庭用) 99.9g 46.23g 35.54g 11.56g

確かめるポイントは、3つです。

  1. 原材料欄が、油脂1種類だけか(パーム油など)。「加工油脂」とだけ書かれていると、中身は分かりません
  2. 「部分水素添加油脂」「硬化油」の語がないか。ある場合は、トランス脂肪酸が多いかもしれません。「部分水素添加油脂不使用」のように、別の表示で書かれているかも探します
  3. 飽和脂肪酸の量。ショートニングは、バターに近い量の飽和脂肪酸(家庭用で100gあたり46.23g)を含みます

家庭用ショートニングのトランス脂肪酸の個別の公表値は、企業の公式ページから見つけられませんでした。参考になるのは、農林水産省の12点の調査値(中央値0.61、範囲0.52〜0.86 g/100g)です。

ショートニングは、パンに塗る商品にも原材料として使われます。たとえば、ジャムメーカーの「パンにぬるホイップクリーム」(ピーナッツ味・ミルク味)の原材料には、「ショートニング」「植物油脂」と書かれています。マーガリンの代わりにパンに塗るものが、ショートニング入りのこともあるので、原材料欄で確かめましょう。

家庭で作るお菓子やパンに使うなら、原材料欄が油脂だけで、部分水素添加油脂を使っていないと確かめられるものを選ぶのが、まず1つめの目安です。

パンやお菓子を選ぶとき

ショートニングの大半は、パンやお菓子の中にあります。食べる量に直すと、どれくらいになるでしょうか。

農林水産省の2022〜23年度の中央値(100gあたり)に、1回に食べる量(2014〜15年度の調査の表の範囲)をかけて、WHO の目標(総エネルギーの1%未満=2000kcalで2.22g/日)に対する割合を計算しました(ウラヨミの計算)。

食品 中央値(g/100g) 1回量 1回あたり(g) 2.22gに対する割合
食パン(6枚切1枚) 0.03 56〜69g 0.017〜0.021 0.8〜0.9%
クロワッサン(1個) 0.20 27〜57g 0.054〜0.114 2.4〜5.1%
ドーナツ(1個) 0.16 34〜111g 0.054〜0.178 2.4〜8.0%
ショートケーキ(1切れ) 0.12 70〜143g 0.084〜0.172 3.8〜7.7%
アップルパイなど(1個または1切れ) 0.13 79〜181g 0.103〜0.235 4.6〜10.6%
即席めん(1食) 0.10 71〜160g 0.071〜0.160 3.2〜7.2%
  • 食パンは0.8〜0.9%と小さく、洋菓子やパイでも1回あたり数%〜10%ほどです。1回の食事では、WHO の目標の大部分を使うほどではありません。ただし、1日に何回食べるかで変わります
  • この値には、ショートニング由来のトランス脂肪酸だけでなく、バターや乳製品由来の天然のものも含まれます(分析では区別できません)
  • 農林水産省の注意:調査値は「おおよその目安」で、食べる量も考える必要があります
  • 「多い食品のランキング」は、100gあたりの濃度です。1回に食べる量とは別に考える必要があります。くわしいランキングは トランス脂肪酸の記事 に載せています

0g表示の下にあるものも見ておきましょう。セブン-イレブンの主要なパン27品の栄養成分表(2025年12月22日現在)は、すべてトランス脂肪酸が「0g」です。理由は、「商品100gあたり0.3g未満は0gと表示する」という指針の運用です。実測がゼロという意味ではありません。農林水産省の調査では、クロワッサンの中央値は0.20、範囲は0.12〜2.3 g/100gで、食パンは0.03(0.03〜0.16)でした。

外食やパンの会社は、公表のしかたに差があります。

事業者 公表している内容 数字の公表
ミスタードーナツ(ダスキン) 2007年12月から低トランス脂肪酸のフライオイルを全店で採用。ドーナツ・パイ・マフィン1個あたりの平均は約1.44g→約0.25g(約83%低減、計算値)。現在の取り扱い全アイテムの平均は約0.25g(2026年4月1日時点、配合に基づく計算値) 平均値のみ(商品別は確認できず)
セブン-イレブン 2007年に揚げ油を低トランス脂肪酸のオリジナル油に切り替え。主要パン27品は、すべて0g表記 0g表記のみ
山崎製パン トランス脂肪酸の低減に取り組み、エステル交換・分別・結晶調整の技術を使うと説明。栄養成分情報は製品分類ごとにホームページで公開していると説明 製品分類ごとにホームページで公開と説明。表の本体は確認できず
日本マクドナルド 2007年にフライ油の仕様を変更し、フライドポテトのトランス脂肪酸を減らしたと説明 公式ページで数値は確認できず(動的表示で見えていない可能性)
ローソン・ファミリーマート 今回の調べでは、公表ページを確認できなかった —

どれも会社自身の説明です。商品ごとの数値(g/10gなど)を出しているのは、マーガリンの明治・雪印メグミルク・創健社で、パンや外食では、平均値か「0g」だけの公表が目立ちました(マーガリンの記事)。

ショートニングやマーガリンを使っていないパンを探すときは、次のようにします。

  • パンの裏面の原材料名に、「ショートニング」「マーガリン」「加工油脂」と書かれていないかを見る
  • かわりに「バター」「なたね油」「オリーブ油」など、油脂の種類が具体的に書かれているかを見る。ただし、バターにも天然のトランス脂肪酸があり、農林水産省の2006〜07年度の調査(13点)では中央値1.9 g/100gでした
  • 「植物油脂」と書かれているとき、中身は分かりません(植物油脂の記事)
  • 個人のパン屋さんで、包装されていないパンには、裏面のような原材料の表示がない場合があります。そのときは、店の人に聞くのが確実です(細かい表示のルールまでは確かめていません)

裏面の原材料欄で、ショートニングやマーガリンが書かれているかどうかは、パンを選ぶときに自分で確かめられる数少ない手がかりです。通販でパンを選ぶときも、商品ページに原材料名がのっているものなら、同じように確かめられます。

代わりの油脂は脂肪酸で比べる

ショートニングの代わりに使える油脂は、何でしょうか。使い道(練り込む・揚げる)で変わりますが、まず脂肪酸の組成を比べます。

ショートニングと、代わりの油脂:脂肪酸の組成脂肪酸100gのうち、飽和・一価不飽和・多価不飽和がそれぞれ何%か飽和脂肪酸一価不飽和多価不飽和0%25%50%75%100%有塩バター有塩バター 飽和:71.5%71.5有塩バター 一価不飽和:25.5%25.5有塩バター 多価不飽和:3.0%ショートニング(家庭用)ショートニング(家庭用) 飽和:49.5%49.5ショートニング(家庭用) 一価不飽和:38.1%38.1ショートニング(家庭用) 多価不飽和:12.4%12.4ショートニング(業務用・製菓)ショートニング(業務用・製菓) 飽和:55.7%55.7ショートニング(業務用・製菓) 一価不飽和:35.5%35.5ショートニング(業務用・製菓) 多価不飽和:8.9%8.9ショートニング(業務用・フライ)ショートニング(業務用・フライ) 飽和:44.5%44.5ショートニング(業務用・フライ) 一価不飽和:41.3%41.3ショートニング(業務用・フライ) 多価不飽和:14.2%14.2マーガリン(家庭用)マーガリン(家庭用) 飽和:30.6%30.6マーガリン(家庭用) 一価不飽和:52.2%52.2マーガリン(家庭用) 多価不飽和:17.2%17.2ラードラード 飽和:42.4%42.4ラード 一価不飽和:47.0%47.0ラード 多価不飽和:10.6%10.6パーム油パーム油 飽和:50.7%50.7パーム油 一価不飽和:39.5%39.5パーム油 多価不飽和:9.9%9.9やし油(ココナッツオイル)やし油(ココナッツオイル) 飽和:91.2%91.2やし油(ココナッツオイル) 一価不飽和:7.2%やし油(ココナッツオイル) 多価不飽和:1.7%オリーブ油(エキストラバージン)オリーブ油(エキストラバージン) 飽和:14.1%14.1オリーブ油(エキストラバージン) 一価不飽和:78.3%78.3オリーブ油(エキストラバージン) 多価不飽和:7.7%なたね油なたね油 飽和:7.6%なたね油 一価不飽和:64.4%64.4なたね油 多価不飽和:28.0%28.0数字は脂肪酸100g中の%(3つの合計が100)。小さい値は図に入りきらないので、本文の表で確かめられる。トランス脂肪酸は日本食品標準成分表の脂肪酸成分表にそもそも列がない(この図に含まれない)。出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」脂肪酸成分表編 第2表(ウラヨミで作図)。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」脂肪酸成分表編 第2表(脂肪酸100gあたりの組成)
油脂 飽和脂肪酸 一価不飽和 多価不飽和 トランス脂肪酸(出典・年)
有塩バター 50.45g 17.97g 2.14g 1.9(農水省 2006〜07年度・13点。天然由来)
ショートニング(家庭用) 46.23g 35.54g 11.56g 0.61(農水省 2022〜23年度・ショートニング12点の中央値)
ラード 39.29g 43.56g 9.81g 1.0(農水省 2006〜07年度・3点)
パーム油 47.08g 36.70g 9.16g 個別の値は確かめていない
やし油(ココナッツオイル) 83.96g 6.59g 1.53g 個別の値は確かめていない
オリーブ油(エキストラバージン) 13.29g 74.04g 7.24g 0.1未満(日清オイリオ 2023年4月・J-オイルミルズ 2024年3月の分析例)
なたね油 7.06g 60.09g 26.10g 0.8(日清キャノーラ油、2023年4月)

脂肪酸は、食品100gあたりのg(成分表の第1表)です。日本食品標準成分表の脂肪酸成分表には、トランス脂肪酸の値がありません。右の列は、農林水産省の調査値か、企業の公表値です。調査年も試料も違うので、同じ線では比べられません。

  • 飽和脂肪酸が多い油脂は、固くなる傾向があります(固さは脂肪酸の種類でも変わるので、順番は一致しません)。バター(71.5%)、やし油(91.2%)、パーム油(50.7%)、ショートニング(家庭用49.5%)、ラード(42.4%)が、常温で固体または半固体の油脂です(脂肪酸100gあたりの割合)
  • ココナッツオイル(やし油)は、飽和脂肪酸の割合がこの表で最も高い(91.2%)。バターよりさらに高い数字です
  • パーム油だけで作ったショートニングは、成分表に載っていません。原料のパーム油の組成(飽和脂肪酸50.7%)が目安になりますが、分別などの加工で変わりえます。製品の栄養成分表示で確かめてください
  • バターは、飽和脂肪酸の量が家庭用ショートニングより多い(50.45g対46.23g)ですが、トランス脂肪酸は反すう動物由来の天然のものを含みます。農林水産省の値を並べると、バター1.9、ショートニング0.61 g/100gですが、年度も調査も違うので、「バターのほうが多い」とは決めつけられません
  • ラードは、豚の脂です。日本マーガリン工業会は、ラードの特徴を、風味が強く、融点が低くすぐ液状になることと説明しています。フライやラーメンなど、風味を生かす食品に向きます
  • 置き換えの相手で効果は変わります。研究者の試算(Mozaffarian と Clarke、2009年)では、トランス脂肪酸35%の部分水素添加油を、エネルギーの7.5%分、バターに置き換えると、冠動脈疾患のリスクの減りは小さい(試験データから−11.9%、追跡研究から−14.4%)。キャノーラ油なら−16.0%(試験データ)、大豆油なら−33.4%(追跡研究)でした。いずれも試算で、昔の高い値のショートニングを想定した話です

脂肪酸の健康への影響(LDL コレステロール・心臓病・認知症)の研究は、植物油と動物性の油の記事 と 油と認知症・うつ病の記事 で書いています。ここでは、「ショートニングの代わり」を選ぶときに見る点だけに絞ります。

  1. 固さが必要か:ショートニングは、練り込み専用の固形の油脂として作られたものです(日本マーガリン工業会)。液体の油(なたね油・オリーブ油)で代えられるかは、レシピによります。この記事では、焼き上がりの比較までは確かめていません
  2. 飽和脂肪酸の量:固い油脂は、飽和脂肪酸が多い傾向です。表のように、ラード・バター・ショートニングは同じ程度、ココナッツオイルはさらに多い
  3. トランス脂肪酸の量:調べた範囲では、いずれも農林水産省の調査値や企業の公表値が出ていますが、調査年が違うので、並べて決めない
  4. 風味:ショートニングは無味無臭、バターやラードは風味があり、焼き上がりの味が変わる

保存と賞味期限・アレルギー表示

  • 賞味期限:業務用のショートニング(10kg)は、製造後120日または210日(未開封)という製品情報があります(ミヨシ油脂)。家庭用は、商品ごとの表示に従ってください
  • 冷蔵庫で固くなったとき:日本マーガリン工業会によると、ラードやショートニングは常温でも固体の脂肪です。冷蔵庫で硬くなったら、使う前にしばらく常温に置くと柔らかくなります
  • 「未練り」とは:急冷して練り合わせていないもの。窒素ガスを入れないものは、揚げ油などに使われます(農林水産省の資料)。「ショートニング 未練り」は、検索候補にも出てくる言葉です
  • アレルギー表示:ショートニング自体の扱いは、今回の調べでは確かめられていません。包装の「(一部に〜を含む)」の表示で確かめてください。たとえば、雪印メグミルクのネオソフトの表示には「(一部に乳成分・大豆を含む)」と書かれています

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

紹介したもの 購入先
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まとめ

気になること 分かったこと
ショートニングとは? ほぼ100%が油脂の、練り込み用の固形(液状もある)。水・乳成分は入らない。JAS がある。日本では業務用が中心
いつ生まれた? 19世紀末の米国で、ラードの代用品(綿実油+牛脂)。1911年に水素添加の Crisco。日本は1951年の統計に初めて出て、1959年にマーガリンを上回った
名前の由来 shorten(もろさを与える)。サクサクにするという意味(工業会の説明)
何から作る? パーム油39%・エステル交換油24%・硬化油8%(2026年1〜6月、会員企業)。硬化油の割合は14.2%(2016年)→7.9%(2025年)
なぜパン・お菓子に? サクサク・ふわふわ・カラッとさせる(工業会の説明)。水分がほぼなく日持ちがよい
トランス脂肪酸は? 農林水産省の中央値で12→1.0→0.61 g/100g。最大は31→24→0.86。調査ごとに試料の採り方が違う
「0g」は本当にゼロ? 日本は100gあたり0.3g未満で書ける。ショートニング12点は最小0.52で、「0g」と書けない水準
発がん性は? IARC の一覧に、トランス脂肪酸・マーガリン・ショートニングはない。グリシドール(2A)・3-MCPD(2B)は精製した油全般の副産物
日本の実測は? 3-MCPD エステルの中央値は、パーム油3.4・ショートニング1.5・マーガリン0.51 mg/kg(2023年度)
飽和脂肪酸は? 業務用ショートニングの平均は23.9→45.4(2006→2010年度。銘柄は同じではない)。農水省(2022〜23年度)は増える傾向なしで、結果が分かれる
完全水素添加・エステル交換は? 試験は数十人・4〜8週間。主な資金はパーム油の業界団体。長期の影響は不明
アメリカは禁止? 規制されたのは部分水素添加油(2018年6月18日〜)。完全水素添加は対象外。日本には上限も表示義務もない
家庭で買える? 代わりは? 家庭用は少ない。代わりの油脂は、飽和脂肪酸の量が違うので成分表で確かめる

参考にした資料

歴史・原料・作り方

  • 日本マーガリン工業会「ショートニングってなに?」「ラードってなに?」「よくあるQ&A(ショートニング・マーガリン)」https://j-margarine.com/kiso2/short/
  • 日本マーガリン工業会 統計データ(生産量 data04.xlsx・production-volume_r7.xlsx、原料使用量 2016〜2025年・2026年1〜6月、国内消費 transition_r7_1.xlsx)
  • AOCS「The Battle Over Hydrogenation(1903–1920)」「Wilhelm Normann(1870–1939)」https://www.aocs.org/resource/the-battle-over-hydrogenation-1903-1920/
  • Google Patents「GB190301515A(Normann)」、Berlin Mills v. P&G, 254 U.S. 156(1920年)
  • Snopes「Was Crisco Invented as a Submarine Lubricant?」
  • 米国農務省 ERS「Butter and Margarine Availability Over the Last Century」、Food Availability Per Capita Data System
  • 触媒学会 シニア懇談会ニュース No.77(2015年)、工業触媒研究会ニュース No.73(2012年)
  • 厚生労働省掲載「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(マーガリン類・ショートニング・食用精製加工油脂)」(日本マーガリン工業会・日本食品油脂検査協会、2020年)
  • 農林水産省「ショートニングの日本農林規格の見直しについて(案)」(2013年)、JAS 0989・JAS 1424(食用精製加工油脂)、「トランス脂肪酸ができる過程」「トランス脂肪酸の低減」
  • ミヨシ油脂「パールインショートニング」「クローネショートニング」製品情報
  • Wikimedia REST API(ページビュー)、Google の検索候補(2026年10月3日取得、ウラヨミで分類・集計)

健康・研究

  • Mensink RP, Katan MB. N Engl J Med 1990(PMID 2374566)、Mensink RP, et al. Am J Clin Nutr 2003(PMID 12716665)
  • Willett WC, et al. Lancet 1993(PMID 8094827)、Oh K, et al. Am J Epidemiol 2005(PMID 15781956)
  • de Souza RJ, et al. BMJ 2015(PMID 26268692)
  • Michels N, et al. Nutr Rev 2021(PMID 34104953)、Anjom-Shoae J, et al. Clin Nutr 2020(PMID 30954361)、Salemi M, et al. Eur J Nutr 2023(PMID 36322289)
  • Sundram K, et al. Nutr Metab 2007(PMID 17224066)、Ng ら Nutrients 2018(PMID 30126103)、Hall ら Am J Clin Nutr 2025(PMID 40975239)、Mills ら Am J Clin Nutr 2021(PMID 33675343)、Hayes KC, Pronczuk A. J Am Coll Nutr 2010(PMID 20823487)
  • Mozaffarian D, Clarke R. Eur J Clin Nutr 2009(PMID 19424216)
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  • 食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書(2012年3月)・Q&A https://www.fsc.go.jp/sonota/trans_fat/iinkai422_trans-sibosan_hyoka.pdf
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • WHO「Saturated fatty acid and trans-fatty acid intake for adults and children: WHO guideline」(2023年)、WHO fact sheet「Trans fat」(2024年1月)
  • IARC「Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–123」https://monographs.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/09/ClassificationsAlphaOrder.pdf
  • EFSA. Risks for human health related to the presence of 3- and 2-monochloropropanediol (MCPD), and their fatty acid esters, and glycidyl fatty acid esters in food. EFSA Journal 2018(PMC7009698)
  • 農林水産省「食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類・グリシドール脂肪酸エステル類の含有実態調査」(令和5年度、平成24〜25年度)、EFSA の評価の解説

規制・表示・含有量

  • 農林水産省「食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査」(平成18・19年度、26・27年度、令和4・5年度)、「トランス脂肪酸に関する国際的な取組」「海外の規制」(デンマーク・米国・EU・カナダ・台湾ほか)
  • 消費者庁「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」(2011年2月21日)、「トランス脂肪酸の情報開示に係る周知・普及について」(2020年6月)、消費者委員会 食品ワーキング・グループ「トランス脂肪酸に関するとりまとめ」(2015年5月)
  • 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号、e-Gov 法令検索、2026年10月3日確認)
  • FDA「Final Determination Regarding Partially Hydrogenated Oils」(Federal Register 2015年6月17日)、EU 規則2019/649
  • WHO「Countdown to 2023」(2023年)、WHO 2024年1月29日・2025年5月19日の発表
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」脂肪酸成分表編 第1表・第2表
  • ウラヨミの商品データ(2026年10月3日、78品)

企業の公表

  • 雪印メグミルク「トランス脂肪酸やその他の脂質成分について」(2021年9月更新)、明治「トランス脂肪酸」ページ・2018年2月8日リリース、日清オイリオ・J-オイルミルズの公表値、ミスタードーナツ(ダスキン)、セブン-イレブン、山崎製パン、日本マクドナルドの公式ページ
  • 日刊工業新聞(2018年2月2日)、FoodNavigator-Asia(2018年6月11日)

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.03)。