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ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.03

酸味料・pH調整剤とは? クエン酸の歴史・一括名で隠れる中身・リン酸塩と腎臓・「保存料不使用」との関係・日本と EU の表示の違い

PR この記事には、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・A8.net のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

カレールウ、ぽん酢、コンソメ、中華スープの素、コンビニのお弁当。裏面の原材料名を見ると、「/」より後ろの添加物の欄に「酸味料」「pH調整剤」と書かれていることがよくあります。

でも、この2つの言葉からは、何が入っているのかが分かりません。よく聞く疑問や説は、たとえば次のようなものです。

  • 「酸味料」の中身は何? 酢やレモン果汁と何が違うの?
  • 「pH調整剤は危険」「腸内細菌を殺す」と聞いた
  • 「保存料不使用」のお弁当に、なぜ pH調整剤が入っているの?
  • リン酸塩は腎臓に悪い? 骨が溶ける?
  • 海外では、同じものをどう表示しているの?

この記事では、

  • クエン酸などの酸味料は、いつ、どうやって作られるようになったのか
  • 「酸味料」「pH調整剤」という書き方(一括名)は、いつ、なぜできたのか
  • 一括名の中には何が入っていて、どこが重なっているのか
  • 日本・Codex(国際食品規格)・EU・米国で、表示はどう違うのか
  • 体への影響は。リン酸塩と腎臓・骨、クエン酸と炎症・疲労・歯について、研究は何を示しているのか
  • 「保存料不使用」と pH調整剤の関係を、国の検討会はどう議論したのか
  • ウラヨミに載せている 71品では、酸味料・pH調整剤はどう書かれているのか

を、国の通知・検討会の議事録・統計・論文で確かめます。保存料そのものの話は 保存料の記事、「無添加」「不使用」の表示のルールは 「無添加」表示のルールの記事、お酢の酢酸の話は お酢の記事 にまとめています。

結論

  • 「酸味料」「pH調整剤」は、中身の物質名を書かなくてよい「一括名」です。酸味料は指定添加物24品目、pH調整剤は35品目(どちらも、ほかに既存添加物のフィチン酸)の中から、何をいくつ使っても「酸味料」「pH調整剤」と書くだけで済みます
  • 酸味料の24品目は、すべて pH調整剤にも入っています。pH調整剤だけにあるのは、重曹(炭酸水素ナトリウム)などアルカリ性の物質やリン酸のナトリウム・カリウム塩など11品目です。同じグルコノデルタラクトンが、使う目的によって「酸味料」「豆腐用凝固剤」「pH調整剤」「膨張剤」の4つの名前になります
  • クエン酸は 1784年にレモン果汁から取り出され、いまは黒カビの仲間を使った発酵で作られています。日本は 1953年に鹿児島でさつまいものでん粉かすから国産化しましたが、いまは輸入が中心で、2025年の輸入 57,210トンの 88.4% が中国からでした
  • 一括名の制度は 1988年にでき、「酸味料」「pH調整剤」は最初の11名称から入っていました。国の検討会は 2019〜2020年に、Codex 型の表示例まで作って比べたうえで「現状維持」としました。一括名でまとめて書けることを知っている消費者は 12.0% です
  • Codex・EU・米国では、「pH調整剤」だけの表示は認められていません。EU は「分類名+物質名か E 番号」、米国は物質名です。同じコカ・コーラでも、米国の公式サイトは「PHOSPHORIC ACID(リン酸)」、日本の公式サイトは「酸味料」です
  • クエン酸・乳酸・酢酸は、国際的な評価で「一日摂取許容量(ADI)を制限しない」とされています。「クエン酸で炎症」の元は症例報告4例だけでした。「pH調整剤は危険」「腸内細菌を殺す」は、根拠になる研究を見つけられませんでした。気をつけたいのは、酸っぱい飲みものを長くちびちび飲むことによる歯の酸蝕症です
  • リン酸塩は話が別です。一括名の中に、pH調整剤で6品目、かんすいで13品目、膨張剤で15品目のリン酸塩が入っていますが、表示からは分かりません。日本腎臓学会は、食品加工に使う無機リンの吸収率は90%以上としています。リンを制限している腎臓病の人がいちばん知りたい情報が、一括名でいちばん見えなくなります。一方、健康な人で心臓病や骨折との関係ははっきりしていません
  • 「保存料不使用」なのに pH調整剤で日持ちさせる表示は、国のガイドラインで「誤認のおそれが高い例(類型4)」に挙がっています。検討会では、コンビニの委員が、業界の人たちから聞いた話として「保存料のイメージが悪いので、pH調整剤とかグリシンに(中略)切り替えていく」という事情を話しています。工場炊飯の米飯を調べた小さな試験では、pH調整剤によるはっきりした菌の抑え込みは見られませんでした

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
河原酢造 老梅 有機純米酢 酸味を酢でつけたいとき 酢やレモン果汁と酸味料はどう違う
腎臓病の人向けの食事宅配 リン・たんぱく質を調整した食事を探すとき(医師・管理栄養士の指示のもとで) 腎臓病の人は一括名から中身が分からない
FIT FOOD HOME(冷凍惣菜の宅配) おかずを原材料で選びたいとき 惣菜や弁当を選ぶときに見るところ

酸味料の歴史:レモンから黒カビへ、そして輸入へ

いまの酸味料の中心はクエン酸です。レモンから取り出す時代、カビで作る時代を経て、日本では「輸入 → 国産 → 輸入」と一回りしてきました。

1784年、レモン果汁から取り出されたクエン酸

クエン酸は、1784年にスウェーデンの化学者シェーレ(Scheele)が、レモン果汁から結晶として取り出し、レモン(citrus)にちなんで名づけられました(Ciriminna ら 2017、査読のある総説)。シェーレは、1780年には酸っぱくなった牛乳から乳酸も見つけています。乳酸の工業的な発酵生産は 1881年に始まったとされますが、だれが始めたのか(フランスの研究者か、米国の企業家か)は資料によって食い違っています。

シチリアのレモン産業

19世紀のクエン酸は、イタリアのシチリア島のレモン果汁から作られていました。濃縮したレモン果汁に石灰を加えて「クエン酸カルシウム」として沈め、薄い硫酸で戻して取り出す方法です。レモン由来の生産は 1915〜1916年の 17,500トンが頂点で、1930年にはシチリアのパレルモに欧州最大のクエン酸工場がありました(Ciriminna 2017)。

1917年、黒カビでクエン酸を作る

流れを変えたのは、カビによる発酵です。

年 できごと 出典
1893年 ドイツのヴェーマーが、アオカビの仲間(ペニシリウム)がクエン酸を作ることに気づく Książek 2023(総説)
1917年 米国の食品化学者カリー(Currie)が、黒カビの仲間(アスペルギルス・ニガー)を砂糖の液で育てると、クエン酸を大量に作ると報告 Currie 1917(J Biol Chem)、Cairns ら 2018
1919年 ベルギーで、別のカビ(シトロミセス、いまのペニシリウム)による商業生産が始まる Ciriminna 2017
1919〜1923年 米国でカリーの方法が工業化される。「発見の2年後にファイザー社がパイロットプラント」(Cairns 2018)、「1923年にニューヨークで商業生産」(Ciriminna 2017。社名は書かれていない)と、資料で書き方が違う 両論文

ファイザー社の公式の沿革は確かめられませんでした。ここでは「カリーの発見から数年のうちに、ファイザーが工業化した」とだけ書いておきます。

発酵法が広がると、レモンからの生産は減っていきました。世界のクエン酸の生産量(クエン酸塩を含む)は、1989年に約50万トン、2015年に200万トン超になり、2015年は中国が世界の生産の 59%、輸出の 74%を占めていました(Ciriminna 2017)。

日本のクエン酸:ベルギーの輸入品から、鹿児島の芋のかすへ

日本のクエン酸は、1950年代のはじめまで、主にベルギー産の輸入クエン酸石灰(クエン酸カルシウム)から作られていました。

1953年(昭和28年)、鹿児島県の上村化学工業が、でん粉を取ったあとのさつまいものかす(澱粉粕)を原料に、固体発酵でクエン酸石灰を作る年産160トンの設備を完成させます。1962年には4社で年産2,000トンになり、需要は清涼飲料水や粉末ジュースの酸味づけで「4,000トンを相当超える」と見込まれていました(松村 1963、澱粉工業学会誌)。

いま国内でクエン酸を発酵で作っている会社があるかは、確かめられませんでした。統計で分かるのは、輸入がどんどん増え、その大半が中国からということです。

日本のクエン酸の輸入量と、中国からの割合棒:輸入量(トン、左の目盛り)。線:そのうち中国からの割合(%、右の目盛り)中国以外から中国から中国の割合(%)0千t20千t40千t60千t80千t0%50%100%2000年:輸入 32,361トン2000年:中国から 19,375トン(59.9%)20002001年:輸入 29,256トン2001年:中国から 16,773トン(57.3%)2002年:輸入 30,677トン2002年:中国から 18,928トン(61.7%)2003年:輸入 33,511トン2003年:中国から 22,462トン(67.0%)2004年:輸入 34,797トン2004年:中国から 24,084トン(69.2%)2005年:輸入 35,034トン2005年:中国から 25,895トン(73.9%)20052006年:輸入 35,805トン2006年:中国から 28,143トン(78.6%)2007年:輸入 37,791トン2007年:中国から 30,281トン(80.1%)2008年:輸入 40,484トン2008年:中国から 35,877トン(88.6%)2009年:輸入 35,666トン2009年:中国から 32,518トン(91.2%)2010年:輸入 40,158トン2010年:中国から 36,232トン(90.2%)20102011年:輸入 41,077トン2011年:中国から 36,539トン(89.0%)2012年:輸入 42,442トン2012年:中国から 38,952トン(91.8%)2013年:輸入 42,336トン2013年:中国から 39,039トン(92.2%)2014年:輸入 43,074トン2014年:中国から 39,844トン(92.5%)2015年:輸入 43,777トン2015年:中国から 40,371トン(92.2%)20152016年:輸入 47,744トン2016年:中国から 44,296トン(92.8%)2017年:輸入 49,426トン2017年:中国から 46,609トン(94.3%)2018年:輸入 50,667トン2018年:中国から 47,876トン(94.5%)2019年:輸入 52,378トン2019年:中国から 49,058トン(93.7%)2020年:輸入 52,683トン2020年:中国から 49,239トン(93.5%)20202021年:輸入 55,392トン2021年:中国から 53,117トン(95.9%)2022年:輸入 61,976トン2022年:中国から 57,313トン(92.5%)2023年:輸入 54,245トン2023年:中国から 48,453トン(89.3%)2024年:輸入 55,805トン2024年:中国から 49,414トン(88.5%)2025年:輸入 57,210トン2025年:中国から 50,598トン(88.4%)20252000年:中国 59.9%2001年:中国 57.3%2002年:中国 61.7%2003年:中国 67.0%2004年:中国 69.2%2005年:中国 73.9%2006年:中国 78.6%2007年:中国 80.1%2008年:中国 88.6%2009年:中国 91.2%2010年:中国 90.2%2011年:中国 89.0%2012年:中国 91.8%2013年:中国 92.2%2014年:中国 92.5%2015年:中国 92.2%2016年:中国 92.8%2017年:中国 94.3%2018年:中国 94.5%2019年:中国 93.7%2020年:中国 93.5%2021年:中国 95.9%2022年:中国 92.5%2023年:中国 89.3%2024年:中国 88.5%2025年:中国 88.4%2000年 59.9%2021年 95.9%2025年 88.4%32,361t57,210tHS 2918.14(クエン酸)の輸入。食品用のほか、洗剤・工業用なども含む。クエン酸の塩(クエン酸ナトリウムなど)は入っていない。中国以外の主な輸入元はオーストリア・タイ(2025年)。2000年はベルギーも多かった。2025年の値は国連の年報値で、財務省 貿易統計の確報とは照合していない。出典:UN Comtrade(日本が報告した輸入。元データは財務省 貿易統計)。ウラヨミが集計。
図:日本のクエン酸の輸入量と、中国からの割合(UN Comtrade、HS 2918.14。食品用以外を含む。2025年は財務省の確報と未照合。ウラヨミが集計)
年 クエン酸の輸入 うち中国 中国の割合
2000年 32,361トン 19,375トン 59.9%
2010年 40,158トン 36,232トン 90.2%
2021年 55,392トン 53,117トン 95.9%(最大)
2025年 57,210トン 50,598トン 88.4%

25年で輸入は約1.8倍になりました。中国以外の主な輸入元は、2025年はオーストリアとタイです。この数字は洗剤や工業用も含み、クエン酸ナトリウムなどの塩は入っていません。2025年の値は国連の年報値で、財務省の確報とは照合していません。

日本で添加物として認められた年

酸味料・pH調整剤に使う物質の多くは、食品衛生法ができてまもない時期に認められました(日本食品化学研究振興財団の「指定・削除等の経緯」)。

年 物質
1948年7月 酢酸(食品衛生法の最初の指定。1950年に一度外れ、1957年に再指定。1959年に「氷酢酸」に名称変更)
1957年7月 乳酸、フマル酸、DL-リンゴ酸、リン酸、クエン酸三ナトリウム、コハク酸、グルコン酸 など
1959年12月 クエン酸、DL-酒石酸・L-酒石酸
1962年 グルコノデルタラクトン(豆腐の凝固剤にも使う)
1983年 アジピン酸
2013年 乳酸カリウム

1960年3月に出た「食品添加物公定書」の第1版(198品目)には、すでにクエン酸・乳酸・フマル酸・酒石酸・リンゴ酸・リン酸・酢酸が載っています。いまは第10版(2024年)です。

1988年、「一括名」ができた

「酸味料」「pH調整剤」という書き方は、1988年の制度改正で生まれ、最初の11名称に2つとも入っていました。

年 できごと
1984年 厚生省が「食品添加物表示検討会」をつくる
1987年9月 検討会の最終報告。「有機酸、アミノ酸等食品中にも常在する食品添加物」などは、機能をまとめた名前で表示してよい、とした
1987年秋 報告書を英訳し、GATT(関税と貿易に関する一般協定)を通じて各国に通告。韓国はチューインガムのグリセリンを「軟化剤」の一括名に入れるよう求めて認められ、米国は「合成添加物だけ表示させて天然添加物を免除するのは新たな非関税障壁だ」と求め、EC・豪州も同調した
1988年7月 厚生省令で一括名を 11名称に:イーストフード、ガムベース、かんすい、香料、酸味料、調味料、pH調整剤、豆腐用凝固剤、乳化剤、膨張剤、チューインガム軟化剤
1989年11月 天然の添加物も表示の対象に。一括名に酵素・光沢剤・苦味料が加わり 14名称
1991年7月 経過措置(1991年6月30日まで)が終わり、原則すべての添加物を表示する制度が本格的に始まる。1988年の解説記事の時点では、猶予は1990年末までの予定だった

(醸協 1988・生活衛生 1990 の解説記事、消費者庁 検討会資料。1988年の通知の原文そのものは確かめられませんでした)

1990年の解説記事は、pH調整剤を「酢酸、クエン酸、重曹などの、食品の酸度を調整するのに添加するもの」、酸味料を「酸味をつけるために使われた有機酸やその塩類」と説明しています。一括名は、表示の制度が「すべての添加物を書く」方向に広がるのと同時に、「まとめて書いてよい」例外として、貿易交渉の中で形になったものでした。

酸味料と pH調整剤は何がちがう?

酸味料は「酸っぱくする」ため、pH調整剤は「酸性・アルカリ性の度合いを保つ」ための一括名です。ただ、中身の物質の多くは同じです。

pH とは

pH(ピーエイチ、ペーハー)は、酸性・アルカリ性の度合いを表す数字です。7が中性で、小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性です。レモン果汁やお酢は酸性、重曹を溶かした水は弱いアルカリ性です。

国の定義と範囲

酸味料 pH調整剤(水素イオン濃度調整剤)
定義 酸味をつけたり強めたりして、味をよくするために使う添加物 食品を適切な pH の範囲に保つために使う添加物(中華めんの「かんすい」の目的は除く)
書いてよい物質 指定添加物24品目+フィチン酸 指定添加物35品目+フィチン酸
主なもの クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸ナトリウム、氷酢酸、グルコン酸、リン酸 など 酸味料の24品目すべて+炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸のナトリウム・カリウム塩 など

出典:消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4(2026年4月1日版)

酸味料の24品目は、すべて pH調整剤にも入っている

「酸味料」と「pH調整剤」の関係を入れ子の枠で示した図。外側の枠はpH調整剤(指定添加物35品目+フィチン酸)、内側に酸味料の枠(24品目+フィチン酸)があり、酸味料の24品目がすべてpH調整剤にも入っている。酸味料にはクエン酸・乳酸・リンゴ酸・酒石酸・フマル酸・酢酸ナトリウムなどと、酸味料の中で唯一のリン酸類であるリン酸がある。pH調整剤だけにある11品目は、重曹などアルカリ性の物質、リン酸のナトリウム・カリウム塩など。グルコノデルタラクトンやクエン酸三ナトリウムは目的によって3〜4つの一括名になり、どの書き方でも物質名は出ない。リン酸・リン酸塩類がpH調整剤に6品目、かんすいに13品目、膨張剤に15品目入っていても、表示からは分からない。
図:「酸味料」の24品目は、すべて「pH調整剤」の35品目に入っている(押すと拡大)

国の通知の一覧を突き合わせると、酸味料の24品目は、1つ残らず pH調整剤の35品目にも入っています。pH調整剤だけにあるのは、次の11品目です。

種類 物質
アルカリ性の物質 炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム(無水)
リン酸のナトリウム・カリウム塩 ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム
そのほか DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、乳酸カリウム

つまり、pH調整剤は「酸っぱくする」だけでなく、アルカリ側に寄せることもある一括名です。消費者庁の検討会のアンケートにも、「pH調整剤や膨張剤は内容が書かれているのを見たことがなく、酸性と塩基性のどちらに調整しているのかが分かると分かりやすい」という声が寄せられていました。

1996年の通知と比べると、pH調整剤の範囲は34品目から35品目に増えています。増えたのは、2013年に指定された乳酸カリウムだけです。

同じ物質が、いくつもの名前になる

一括名は「物質」ではなく「使う目的」で決まります。そのため、同じ物質でも、目的によって裏面の書き方が変わります。目的を判断するのは、作る会社です。

物質 入っている一括名
グルコノデルタラクトン 酸味料/豆腐用凝固剤/pH調整剤/膨張剤(4つ)
クエン酸三ナトリウム 酸味料/調味料(有機酸)/乳化剤(プロセスチーズなど)/pH調整剤(4つ)
クエン酸・乳酸・DL-リンゴ酸・フマル酸 酸味料/pH調整剤/膨張剤(3つ)
酢酸ナトリウム・乳酸ナトリウム 酸味料/調味料(有機酸)/pH調整剤(3つ)
リン酸 酸味料/pH調整剤

出典:消費者庁 別添 添加物1-4 からウラヨミが集計

同じクエン酸が、ジュースでは「酸味料」、お弁当では「pH調整剤」、ホットケーキミックスでは「膨張剤」と書かれることがありえます。どの書き方でも、物質名は出てきません。

酢やレモン果汁と酸味料はどう違う

酸っぱさのもとは同じ「酸」でも、酢やレモン果汁は「食品」、酸味料は「添加物」として扱われます。

酢・レモン果汁 酸味料
扱い 食品 添加物
裏面での場所 原材料名の「/」より前 「/」より後ろ
主な酸 酢は酢酸、レモンはクエン酸 クエン酸・乳酸・リンゴ酸・氷酢酸など、純度の高い物質
書き方 「醸造酢」「りんご酢」「レモン果汁」など 「酸味料」とだけ書いてよい

酢そのものは食品ですが、酢酸を精製した「氷酢酸」や「酢酸ナトリウム」は添加物で、酸味料・pH調整剤に入ります。

ウラヨミに載せている71品を数えると、醸造酢などの酢で酸味をつけている商品は20品、レモンやゆずなどの果汁を使う商品は9品ありました。味ぽんのように、「醸造酢」「かんきつ果汁」と「酸味料」の両方を使う商品もあります。

河原酢造の老梅 有機純米酢は、原材料名が「有機栽培米(国産)」の1つだけの米酢です。ラベルには、商標の「老梅」の「梅」は伝統の酸味料を意味する、と書かれています(梅は原材料に入っていません)。料理の酸味を、添加物ではなく酢でつけたい人向けに紹介します。お酢の種類や「純米酢」と書ける条件は お酢の記事 にまとめています。

表示のルール:日本・Codex・EU・米国

日本は「酸味料」「pH調整剤」と書くだけでよく、海外の主な制度は物質名か番号を求めています。

日本:用途名を書く添加物、一括名でまとめてよい添加物

日本の添加物の表示は、原則として物質名です。そのうえで、

  • 甘味料・着色料・保存料・増粘剤など・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤の8つの用途は、「保存料(ソルビン酸K)」のように用途名と物質名を並べて書く義務があります
  • 酸味料・pH調整剤・乳化剤・香料・調味料など14の一括名は、物質名の代わりに一括名だけを書いてもよい、とされています(義務ではありません)

食品表示基準の Q&A では、「酸味料(クエン酸等)」のように、一括名のあとに中身を書き添えることも認めています。ただし、範囲内の物質であること、重い順であること、ほかにも使っているのに1つだけのように書かないこと、が条件です。

原料の段階で使われた酸味料が、できあがった食品で効果を発揮しない量なら表示されないこともあります。くわしくは キャリーオーバーの記事 にまとめています。

一括名を知っている人は12.0%

消費者庁が1万人に聞いた調査(平成29年度)では、

知っていること 割合
一括名でまとめて表示されるものがある 12.0%
添加物は原材料と区別して表示される 11.7%
添加物も重い順に書かれる 35.8%

でした。「酸味料」が1つの物質の名前ではないことを知っている人は、1割ほどしかいないことになります。

消費者庁は、一括名で書かれた添加物の中身を知りたいときは、表示に書かれた製造者・販売者に問い合わせるよう案内しています。

国の検討会は「現状維持」とした

消費者庁の「食品添加物表示制度に関する検討会」(2019〜2020年)は、一括名を見直すかどうかを議論しました。検討会の資料では、同じお弁当の表示を3通りで比べています。

書き方 例
いまの日本 pH調整剤、グリシン
Codex 型(物質名) pH調整剤(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)、日持向上剤(グリシン)
Codex 型(番号) pH調整剤(330、331(iii))、日持向上剤(640)

(消費者庁の検討会資料の表示例。架空のお弁当の例です)

結論は「現状維持とすることが適当」でした。一括名は30年以上使われてきたこと、表示の文字数が増えること、国際番号(INS 番号)が消費者になじみがないこと、などが理由です。そのかわり、事業者には、問い合わせへの丁寧な対応やウェブでの情報提供に努めることが望まれる、としました。

ただ、2019年の調査では、ウェブで一括名の物質名まで載せている例は、豆腐用凝固剤と苦味料くらいでした。

Codex・EU・米国の表示

同じクエン酸を使った食品を例に、日本・EU・米国の表示の違いを比べた図。日本は「…/酸味料」と一括名だけでよく、物質名を書き添えるかは任意で、裏面からは何が入っているか分からない。EUは「Acid: citric acid」または「Acid: E330」のように分類名+物質名かE番号で書く。米国は「CITRIC ACID」と物質名で書く。Codexでも分類名だけでよいのは香料と加工でん粉だけ。同じコカ・コーラの原材料は、米国の公式サイトではPHOSPHORIC ACID、日本の公式サイトでは酸味料。日本でも「酸味料(クエン酸等)」と書き添えられるが、ウラヨミの71品では0品だった。
図:同じクエン酸でも、日本は「酸味料」、EUは「Acid: citric acid」か「E330」、米国は「CITRIC ACID」と書く(押すと拡大)
酸の添加物の書き方 例
日本 一括名だけでよい 酸味料、pH調整剤
Codex 分類名だけでよいのは「香料」と「加工でん粉」の2つだけ。pH調整剤(acidity regulator)を含む機能分類は、物質名か国際番号を併せて書く。この機能分類の一覧に、EU の「Acid(酸)」に当たるものはない acidity regulator(sodium citrates)、acidity regulator(331)
EU 「Acid(酸)」「Acidity regulator(pH調整剤)」などの分類名+物質名か E 番号 Acid: citric acid、Acid: E330
米国 原材料は通称名(物質名)で書く。機能でまとめる一括表示の制度はない(香料などを除く) CITRIC ACID、PHOSPHORIC ACID

出典:Codex 包装食品の表示に関する一般規格(消費者庁の仮訳)、EU 規則 1169/2011 附属書VII、米国連邦規則 21 CFR 101

EU で使う主な番号は、E330 クエン酸、E270 乳酸、E296 リンゴ酸、E297 フマル酸、E260 酢酸、E338 リン酸、E339〜E341 リン酸のナトリウム・カリウム・カルシウム塩、E450〜E452 二リン酸・三リン酸・ポリリン酸、E575 グルコノデルタラクトンなどです。EU では「pH調整剤」とだけ書くことはできません。

同じコーラが、米国では「PHOSPHORIC ACID」、日本では「酸味料」

制度の違いは、同じブランドの飲みもので見ると分かりやすくなります(2026年10月3日確認)。

原材料の表示
米国のコカ・コーラ(公式サイト) CARBONATED WATER, HIGH FRUCTOSE CORN SYRUP, CARAMEL COLOR, PHOSPHORIC ACID, NATURAL FLAVORS, CAFFEINE
日本のコカ・コーラ(公式サイト) 糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)/炭酸、カラメル色素、酸味料、香料、カフェイン

米国では「リン酸」と書かれています。日本では「酸味料」とだけ書かれていて、日本コカ・コーラのよくある質問のページも「酸味料」としか説明していません。日本で売られているコーラの酸味料がリン酸かどうかは、日本の公式資料では確かめられませんでした。言えるのは、「同じ名前の飲みものでも、米国の表示ではリン酸と分かり、日本の表示では分からない」ということです。カラメル色素については カラメル色素の記事 にまとめています。

酸味料・pH調整剤は体に悪い?

酸味料の中心であるクエン酸・乳酸・酢酸は、国際的な評価で量の上限を決める必要がないとされた物質です。一方、リン酸塩は、腎臓の働きが落ちた人にとっては話が別です。

国際機関の評価

物質 JECFA(FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議) EFSA(欧州食品安全機関)
クエン酸とその塩 ADI「制限しない」 食品添加物としての再評価は見つからなかった
乳酸とその塩 ADI「制限しない」 同上
酢酸とその塩 ADI「制限しない」 同上
グルコノデルタラクトン・グルコン酸塩 ADI「特定せず」 同上
リンゴ酸塩類 ADI「特定せず」 同上
酒石酸と塩 ADI 30 mg/kg 体重 2020年に 240 mg/kg に引き上げ
リン酸・リン酸塩 最大耐容一日摂取量 70 mg/kg(リンとして、1982年) 2019年に ADI 40 mg/kg(リンとして)

ADI(一日摂取許容量)は、一生毎日とり続けても健康への悪い影響がないと考えられる量です。出典:厚生労働科学研究 生産量統計 第12回報告の注、EFSA 2019・2020

「ADI 制限しない」とはどういう意味?

「制限しない」「特定せず」は、毒性がとても低く、目的の効果を得るのに必要な量を使っても健康上の害にならないので、数値の ADI を決める必要がない、という意味です(EFSA のガイダンスの定義)。「いくらとってもよい」という意味ではなく、「必要な量だけ使う」ことが前提です。

再評価は、基準が厳しくなる方向にも、ゆるくなる方向にも動きます。リン酸塩は JECFA の 70 から EFSA の 40 へ厳しくなり、酒石酸は 30 から 240 へ8倍に上がりました(人はラットより酒石酸を吸収しにくい、という理由です)。「再評価された=危険が見つかった」ではありません。

添加物として、どのくらい口に入っている?

酸味料・pH調整剤に使われる物質の推定摂取量添加物として口に入る量(1人1日あたり、mg)。2016年度の生産量・輸入量からの推計0100200300400500クエン酸クエン酸:483 mg/日483酢酸ナトリウム酢酸ナトリウム:189.8 mg/日189.8クエン酸三ナトリウムクエン酸三ナトリウム:173 mg/日173炭酸水素ナトリウム(重曹)炭酸水素ナトリウム(重曹):158 mg/日158乳酸乳酸:89.7 mg/日89.7グルコノデルタラクトングルコノデルタラクトン:51.8 mg/日51.8DL-リンゴ酸DL-リンゴ酸:51.8 mg/日51.8乳酸ナトリウム乳酸ナトリウム:51.8 mg/日51.8フマル酸フマル酸:31.1 mg/日31.1氷酢酸氷酢酸:20.7 mg/日20.7L-酒石酸L-酒石酸:13.8 mg/日13.8リン酸リン酸:12.9 mg/日12.9クエン酸は第2回調査(1980年代後半)の 230.8 mg から約2.1倍。物質ごとの量で、酸味料・pH調整剤・調味料・膨張剤などの用途は区別できない。メーカー・輸入業者へのアンケート(回答率 89.2%)の出荷量の80%を口に入る量とし、人口と日数で割った値。研究業務は日本食品添加物協会が受託。食品にもともと含まれる量(果物のクエン酸など)は入っていない。出典:厚生労働科学研究「生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究」第12回最終報告(2020年3月)。
図:酸味料・pH調整剤に使われる物質の推定摂取量(厚生労働科学研究「生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究」第12回最終報告、2020年3月。2016年度分。研究業務は日本食品添加物協会が受託)

国の研究班が、メーカー・輸入業者へのアンケートから食品向けの出荷量を集め、1人1日あたりの量に割り算した推計です(2016年度分)。

  • クエン酸は 1人1日 483 mg で、1980年代後半の調査(230.8 mg)の約2.1倍になりました
  • 次いで、酢酸ナトリウム 190 mg、クエン酸三ナトリウム 173 mg、炭酸水素ナトリウム 158 mg、乳酸 90 mg
  • 物質ごとの量なので、酸味料・pH調整剤・調味料・膨張剤のどの目的で使われたかは分かりません。果物などにもともと含まれる量は入っていません

研究の実務は業界団体(日本食品添加物協会)が受託していて、データはメーカーの申告です。

リン酸塩:EFSA は2019年に ADI を決めた

リン酸塩(リン酸・リン酸ナトリウム・ピロリン酸・ポリリン酸など)は、酸味料・pH調整剤のほか、かんすい・膨張剤、ハムやソーセージの結着剤などに使われます。リンは体に必要なミネラルでもあります。

EFSA は 2019年にリン酸塩を再評価し、グループ ADI を「リンとして体重1kgあたり 40 mg」と決めました。体重70kgの大人なら 1日 2,800 mg です。

  • 根拠は、ラットの長期試験で腎臓に石灰がたまるなどの影響が出なかった量に、さらに安全のための係数をかけた値です
  • この ADI は、添加物の分だけでなく、食べもの全体からとるリンの総量に対する値です
  • EFSA は「中等度から高度に腎機能が落ちた人には当てはまらない」と明記し、一般の人の約10%が慢性腎臓病(CKD)かもしれない、と書いています
  • EFSA の計算では、欧州の乳児・幼児・小児は平均で、思春期は多くとる人で ADI を超えていました。それでも結論は「健康な大人は守れる」で、栄養素でもある物質の基準値の作り方を見直すよう、EFSA 自身の科学委員会に勧めています
  • 「食品の総リン量の表示は義務になっていない」とも書いています

評価には、欧州のリン酸塩の業界団体も資料を出しています。

日本人はリンをどのくらいとっている?

項目 値 出典
平均摂取量 986 mg/日(中央値 956 mg) 令和5年 国民健康・栄養調査
目安量(成人) 男性 1,000 mg/日、女性 800 mg/日 日本人の食事摂取基準 2025年版
耐容上限量(成人) 3,000 mg/日(小児は設定なし) 同上

注目したいのは、厚生労働省自身が、食事摂取基準 2025年版で「国民健康・栄養調査の値には、加工食品に添加されたリンの量は加味されていない」と書いていることです。そのため、実際の摂取量はこれより多い可能性がある、として、大人の目安量は各年齢の中央値のうち最も少ない値を採っています。添加物の寄与率は「不明」とされています。

添加物のリンは何 mg? 推計の方法で大きく違う

推計のしかた 添加物由来のリン(1日) 出典
加工食品と、添加物を使わない原料を両方測って差を出す(1988・1989年) 36 mg 食品安全委員会 2023 の引用
生産量から割り算する(2016年度分) 53.4 mg 食品安全委員会 2023
加工食品をまるごと測る(令和3年度、正リン酸+縮合リン酸) 248 mg(天然のリンを含む) 厚生労働省 マーケットバスケット調査

食品安全委員会は、添加物由来のリンは「50 mg/日程度」で、国民健康・栄養調査の約1,000 mg を平均で数%押し上げる程度、と判断しています。248 mg のほうは、加工食品にもともと含まれるリンも一緒に測っているため、添加物だけの量ではありません。

同じ報告書は、コンビニ弁当16種類で、1食のリンを計算すると平均259 mg、実際に測ると平均320 mg と、実測のほうが約60 mg(61 mg)多かったという研究も紹介しています(谷崎ら 2017、微量栄養素研究。原典は確かめられませんでした)。ふつうは調理で減るので実測のほうが少なくなるはずで、計算に入っていないリンがあることをうかがわせます。

吸収率:加工に使う無機リンは90%以上

リンは、とった量のすべてが体に吸収されるわけではありません。日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版」は、

リンのもと 吸収される割合
植物性食品(豆・穀物など) 20〜40%
動物性食品(肉・魚・卵・乳) 40〜60%
食品加工に用いられる無機リン(添加物) 90%以上

としています。EFSA は、食品にもともと含まれるリンの吸収率を 55〜90% と幅で書き、添加物の無機リン酸塩は「約80〜90%が吸収される」「効率よく吸収される」としています。量としては少なくても、添加物のリンは「よく吸収されるリン」です。

腎臓病の人は一括名から中身が分からない

一括名の中に、リン酸塩はいくつある?その一括名で書いてよい指定添加物の品目数(棒全体)と、そのうちリン酸・リン酸塩類の数リン酸・リン酸塩類それ以外010203040かんすいかんすい:全16品目かんすい:うちリン酸塩類 13品目13 / 16品目ピロリン酸・ポリリン酸・メタリン酸のK・Na塩など膨張剤膨張剤:全41品目膨張剤:うちリン酸塩類 15品目15 / 41品目ピロリン酸二水素Ca・リン酸二水素CaなどpH調整剤pH調整剤:全35品目pH調整剤:うちリン酸塩類 6品目6 / 35品目リン酸+リン酸水素二Naなどリン酸のNa・K塩5品目酸味料酸味料:全24品目酸味料:うちリン酸塩類 1品目1 / 24品目リン酸のみ品目は指定添加物。酸味料・pH調整剤には、このほか既存添加物のフィチン酸も入る。どの一括名も、裏面には「かんすい」「膨張剤」「pH調整剤」「酸味料」とだけ書けばよく、リン酸塩かどうかは分からない。出典:消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4(2026年4月1日版)。ウラヨミが数えた。
図:一括名ごとの品目数と、そのうちのリン酸塩類の数(消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4、2026年4月1日版。ウラヨミが数えた)

国の通知の一覧で、一括名ごとにリン酸塩類を数えました。

一括名 書いてよい指定添加物 うちリン酸・リン酸塩類
かんすい 16品目 13品目
膨張剤 41品目 15品目
pH調整剤 35品目 6品目
酸味料 24品目 1品目(リン酸)

中華めんのかんすいに使える16品目のうち、13品目(約8割)がリン酸塩ですが、裏面には「かんすい」とだけ書かれます。pH調整剤・膨張剤・酸味料も、リン酸塩を使っているかどうかは表示から分かりません。このほか、「調味料(無機塩)」にはリン酸塩が6品目、プロセスチーズ類に使う「乳化剤」には19品目入っています。

腎臓の働きが落ちると、リンを尿に出しにくくなります。日本腎臓学会の基準は、透析をしている人のリンの目安を「リン(mg)≦ たんぱく質(g)× 15」としています。保存期(透析の前の段階)は、たんぱく質の指導とあわせて考え、検査値を見て評価します。

研究 種類・規模 分かったこと
Sullivan ら 2009(米国) クラスター RCT(施設ごとに割り付けた試験)、透析患者279人、3か月 リン添加物を避ける買い物・外食の選び方を教えた群で、血清リンの下がり方が対照より 0.6 mg/dL 大きかった。公的資金
Benini ら 2011(イタリア) 食品の分析、ハム・七面鳥・鶏肉 60検体 リン酸塩の添加表示があるものは、ないものより総リンが約70%多かった
León ら 2013(米国) 売れ筋 2,394品の表示調査 44%にリンの添加物。冷凍調理品72%、包装肉65%、パン・焼き菓子57%
Cochrane レビュー 2015 RCT 9本・634人のまとめ 低リン食で血清リンは下がるが、死亡・心臓病・骨折への効果を調べた研究はほとんどなく、根拠の質は低い

国の食事摂取基準 2025年版も、腎臓病の早い段階からリンを制限するのがよいという考えはあるものの、「どの段階からどの程度制限すればよいかの科学的根拠は十分ではない」としています。

なお、日本の栄養成分表示では、リンは書いてもよい(任意)項目で、義務ではありません。「リンを表示する欄がない」のではなく、「書かなくてよい」のです。

リンやたんぱく質の制限がどのくらい必要かは、病気の段階や検査値で一人ひとり違います。食事の制限は、自己判断ではなく、主治医・管理栄養士の指示に従ってください。そのうえで、リンやたんぱく質の量を調整した食事の宅配もあります。

健康な人では? 心臓・血管との関係は一貫しない

腎臓の働きがふつうの人については、はっきりした結論は出ていません。

  • EFSA(2019)は、食事のリンと心臓・血管の病気の関係は、観察研究で一貫していないと結論しています。食品成分表が添加物のリンを含まないため、摂取量を少なく見積もっている、という限界も挙げています
  • 「リンを1日1,400 mg 以上とると死亡リスクが高い」とよく引かれる米国の研究(Chang ら 2014、9,686人を追跡)には、2017年に訂正が出ていて、心臓・血管の病気による死亡との関係は取り消されました。抄録だけを引用している記事には注意が必要です
  • 血液中のリンが高い人ほど心臓・血管の病気で亡くなりやすい、というまとめ(7つのコホート、41,764人)はあります。ただし、血液中のリンは腎臓で厳しく調整されていて、食べた量とは別ものです

米国の調査では、大人の添加リンは1日155 mg(総量の11.6%)という推計がありますが(Fulgoni 2021)、この研究は食品添加物の業界団体の資金で、資金を出した側がデータを提供し、原稿も確認しています。

「リンをとりすぎると骨が溶ける」は?

  • 介入研究12本・269人をまとめた解析(Fenton ら 2009)では、リン酸を増やすと尿のカルシウムはむしろ減り、カルシウムの出入りは良くなっていました。「酸性の食べもので骨が溶ける」という説は支持されませんでした(業界資金なし)
  • 一方、米国のフラミンガム研究(2,538人の横断研究)では、コーラを毎日飲む女性は、月1杯未満の女性より、股関節(大腿骨頸部など)の骨密度が 3.7〜5.4% 低いという結果でした。コーラ以外の炭酸飲料では関係がなく、男性でも関係はありませんでした。リン酸・カフェイン・牛乳を飲まなくなることのどれが原因かは分かっていません
  • 食事摂取基準 2025年版も「高リン摂取と骨量の減少の関係について、人での研究は十分ではない」としています

「酸味料で発がん」は?

酸味料に使われる物質そのもので、発がん性を示した公的機関の評価は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。酒石酸は、EFSA の再評価で、いちばん多い量を与えた動物実験でも発がんの兆候はなかったとされています。

リン酸塩では、肺がんのマウスに高リンの餌を与えると腫瘍が増えたという動物実験がありますが、同じ研究グループが、低リンの餌でも腫瘍が増えたと報告しています。人の前立腺がんとリン摂取の関係を示した研究もありますが、これは乳製品などを含む食事全体のリンで、添加物の話ではありません。

「工業製のクエン酸で炎症が起きる」は?

「黒カビで作ったクエン酸が炎症を起こす」という話の元は、米国の医師が 2018年に出した症例報告4例です(Sweis & Cressey 2018)。

  • 4人が、クエン酸入りの食品や飲みものをとった2〜12時間後に、関節痛・筋肉痛・息苦しさ・おなかの症状が出た、と本人が報告したものです
  • 目隠しをした負荷試験も、偽物との比較も、クエン酸の中の不純物の測定もしていません
  • 著者自身が「原因と断定はできない」「二重盲検試験が必要」と書いています

「こういう仮説を出した報告がある」以上のことは言えません。

「クエン酸で疲れがとれる」は?

代表的な試験は、健康な18人が8日間、クエン酸を1日 2,700 mg とったクロスオーバー試験(Sugino ら 2007)です。運動のあとの「疲れた感じ」と、唾液のストレスの指標が下がりました。

ただし、18人・8日間・主に自己評価の結果で、著者は受託研究機関の所属、資金の記載はありません。1日 2,700 mg は、添加物としての推定摂取量(483 mg)の約5.6倍です。食品に入っている酸味料の量で、疲れがとれることを期待できる根拠にはなりません。

歯の酸蝕症:酸の強さと回数

酸で歯の表面が溶けるのが「酸蝕症(さんしょくしょう)」です。虫歯と違って、細菌は関係しません。

  • 米国で売られている飲みもの379本を測ると、93% が pH 4.0 未満、39% が pH 3.0 未満でした(Reddy ら 2016)。クエン酸はカルシウムと結びつくので、pH が高めでも歯を溶かすことがあります
  • 東京の大人1,108人を調べると、26.1% に酸蝕の兆候があり、若い世代は酸っぱいジュースを飲む回数、年配の世代は酸っぱい果物を食べる回数と関係していました(Kitasako ら 2015。26.1% は抄録の値です。2015年12月に訂正が出ていますが、訂正の中身は確かめられませんでした)

酸はレモンにも酢にももともと含まれるので、「添加物だから」溶けるわけではありません。問題は、pH の低い飲みものを長い時間ちびちび飲むことです。お酢を飲むときの注意は お酢の記事 にもまとめています。

「pH調整剤は危険」「腸内細菌を殺す」は?

この2つの説は、出どころをたどることができず、根拠になる人の研究も見つかりませんでした。

  • pH調整剤は、国の定義では「食品を適切な pH の範囲に保つ」ための添加物です。お弁当などで日持ちのために使われることがあるので、「菌を殺す」という連想につながっているのかもしれません(推測です)
  • 健康な大人62人に、リン酸ナトリウムでリンを1日 1,000 mg 上乗せした8週間の RCT(Trautvetter ら 2018)では、便の毒性は変わりませんでした。カルシウムも多くとった群で腸内でできる短鎖脂肪酸が増え、男性で腸内細菌の構成が変わった、という「手がかり」の段階です
  • 食品に入っている量の酸味料で人の腸内細菌が減った、という研究は、PubMed で探した範囲では見つかりませんでした

乳化剤の一部(CMC やポリソルベート80)では腸内細菌への影響を調べた研究があり、話が混ざっている可能性もあります。くわしくは 乳化剤の記事 にまとめています。

説の判定

よく聞く話 判定
酸味料・pH調整剤は危険 主な物質(クエン酸・乳酸・酢酸)は JECFA で ADI「制限しない」。「危険」の根拠は見つからなかった
pH調整剤は腸内細菌を殺す 根拠になる人の研究は見つからなかった
工業製のクエン酸で炎症が起きる 症例報告4例の仮説。原因は示されていない
クエン酸で疲れがとれる 18人・8日の試験1本。食品の酸味料の量では期待できない
リンで骨が溶ける 介入研究のまとめでは支持されない。コーラと骨密度の観察研究はあるが原因は不明
リン酸塩は腎臓に悪い 腎臓の働きが落ちた人では、リンを減らす意味がある(量は医師の指示で)。健康な人での結論は出ていない
酸っぱい飲みもので歯が溶ける 酸蝕症は実際にある。酸の強さと飲む回数・時間が問題

「保存料不使用」なのに pH調整剤?

お弁当や総菜では、保存料の代わりに pH調整剤やグリシンで日持ちを助けることがあります。国のガイドラインは、それを隠して「保存料不使用」と書く表示を、誤認のおそれが高い例に挙げています。

保存料と日持ち向上剤の違いは 保存料の記事、ガイドラインの10類型の全体は 「無添加」表示のルールの記事 にまとめています。ここでは、検討会の議事録や調査から、ほかの記事で書いていない材料を紹介します。

なぜ pH調整剤で日持ちするのか

多くの菌は、中性に近い環境で増えやすく、酸性にすると増えにくくなります。ソルビン酸や安息香酸のような保存料も、酸性で効きやすいので、食品を酸性にするために pH調整剤を一緒に使うのが一般的です(広島県 食品工業技術センター)。

ガイドラインの類型4と類型7

消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月)には、次の例があります。

類型 例
類型4 例1 日持ちをよくする目的で保存料以外の添加物を使った食品に「保存料不使用」と書く
類型7 例2 「開封後」と書かずに「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と書く

ガイドラインは、これらを「表示禁止事項に当たるおそれが高い」としています。「禁止された」と言い切る説明も見かけますが、ガイドラインの文言は「おそれが高い」です。

検討会の議事録に残った発言

ガイドラインを作った検討会(2021年)の議事録には、pH調整剤をめぐる具体的なやりとりが残っています。

  • 第6回(2021年11月):コンビニ大手(セブン-イレブン)の委員は、「お早めに」の注意書きをつけている業界の人たちと話した経験から、保存料のイメージが悪いので、pH調整剤やグリシンに切り替えていく中で、開封後の品質の劣化が早まるのは間違いない、という趣旨の発言をしています。別の委員は、「保存料は使っていないが pH調整剤で保存効果を高めている、ただし十分ではないので早めに、と書けばよい」と提案しました
  • 第7回(2021年12月):事務局(消費者庁)は、保存料の代わりに日持ち向上剤や pH調整剤を使っている場合は類型4に当たりうるし、「お早めに」と書けば類型7にも当たりうると答えています。保存料も日持ちのための添加物も使っていない場合は、別の類型(類型8)になりうる、とも説明しました
  • 同じ回には、「グリシンは保存料に分類されていないのだから、事実として『保存料不使用』と書くことがそんなにいけないのか、事業者には分かりにくい」という異論も出ています
  • 第2回(2021年5月):清涼飲料の業界団体は、もともと pH が低く保存料が要らない飲みものに「保存料不使用」と書いている例が少しある、と説明しました

セブン-イレブンは不使用表示を約20%に減らした

第3回の検討会(2021年7月)で、セブン-イレブンは、

  • お弁当・おにぎりなどの「フレッシュフード」で、「保存料・合成着色料不使用」をうたうことを原則としてやめた
  • プライベートブランド(セブンプレミアム)で不使用の表示をしている品目は、2019年と比べて約20%になった

と説明しています。同じ回で、イオンのトップバリュは、お客様から寄せられる添加物の質問の例として「pH調整剤とは何か、害はないのか」を挙げていました。

消費者はどう受け止めている?

消費者庁の調査(令和2年度)で、「保存料を使用していない」と書かれた商品に日持ち向上剤が使われていた場合どう思うかを聞いた結果です。

受け止め 割合
事実なので問題ない 28.6%
紛らわしいので表示すべきでない 34.5%
日持ち向上剤を使っていることもあわせて書くべき 36.3%

「問題ない」以外を選んだ人が約7割(70.8%)でした。不使用の表示を見て買う人のうち、裏面の一括表示欄も見ている人は 54.1% でした。

pH調整剤で、どれくらい日持ちする? 米飯の試験

大阪健康安全基盤研究所などが、工場で炊いたごはんを調べた試験があります(梅田ら 2022、日本食品微生物学会雑誌)。

  • 炊飯工場6か所のごはん7検体(pH調整剤あり3・なし4)を調べました。使われていた pH調整剤は、乳酸・乳酸ナトリウム・アジピン酸の製剤、酢酸ナトリウム・グルコン酸・クエン酸の製剤、クエン酸などの製剤でした
  • 届いたときの pH は、pH調整剤なしが 6.8〜6.9、ありが 5.3〜6.2 でした
  • 35℃に置くと、今回の条件では、pH調整剤によるはっきりした菌の抑え込みは見られませんでした
  • 黄色ブドウ球菌を少し加えると、24時間で大きく増え、食中毒の原因になる毒素も出ました。黄色ブドウ球菌は pH 4〜9.6 で増えることができ、pH調整剤を入れたごはんもこの範囲に入っていました

著者は「pH調整剤などの添加物の効果を過信せず、温度と時間の管理を」とまとめています。検体が7つだけの小さな試験で、pH調整剤の入ったごはんも3つ(製剤も3種類)だけなので、すべての食品に当てはまるわけではありません。それでも、「pH調整剤が入っているから傷みにくい」と思い込まないほうがよいことは分かります。

惣菜や弁当を選ぶときに見るところ

  • 「保存料不使用」と書かれていても、原材料名の「/」の後ろに、pH調整剤・グリシン・酢酸Na などがないかを見ます
  • お弁当や総菜は、表示の保存方法(10℃以下など)を守り、早めに食べます。pH調整剤が入っていても、温度の管理が大事です(上の米飯の試験)
  • 中身を知りたいときは、表示の製造者・販売者に問い合わせます

おかずを原材料で選びたい人向けに、国産の素材を使い、「無添加調理」と説明している冷凍惣菜の宅配があります。食材宅配の比較は 食材宅配の比較記事 にまとめています。

ウラヨミで数えてみた

ここからは、ウラヨミのデータと、公的な数字を組み合わせた独自の集計です。

71品のうち「酸味料」は10品、物質名まで書いたものは0品

ウラヨミに載せている食品・調味料71品の原材料を数え直しました(2026年10月3日時点)。

区分 品数 割合
添加物が1つでもある 29品 40.8%
「酸味料」と書かれている 10品 14.1%
「pH調整剤」と書かれている 1品 1.4%
クエン酸・乳酸などを物質名で書いている 0品 0%
「酸味料(クエン酸等)」のように中身を書き添えている 0品 0%
醸造酢などの酢(食品)を使っている 20品 28.2%
レモン・ゆずなどの果汁を使っている 9品 12.7%
  • 「酸味料」があるのは、Cook Do 回鍋肉用、味の素KKコンソメ、ジャワカレー、こくまろカレー、シチューミクス、バーモントカレー、味ぽん、日清デカうま油そば、ゴールデンカレー、創味シャンタンでした
  • カレー・シチューのルウは11品のうち5品に「酸味料」があり、それは大手(ハウス食品・エスビー食品)の5品すべてでした。たとえば ハウス バーモントカレー 中辛 は、りんごペーストやトマトパウダーに加えて「酸味料」を使っています。残りの6品(コスモ食品・エム・トゥ・エム・創健社)には酸味料はありませんでした。たとえば コスモ直火焼 カレー・ルー 中辛 の原材料に酸味料はなく、トマトペースト・チャツネ・りんごピューレが入っています。カレールウの原材料は カレールウの記事 でくわしく比べています
  • 「pH調整剤」は 丸鶏がらスープ の1品でした。味の素の公式 Q&A は「pH調整剤とは何ですか」という質問に、目的だけを答えていて、物質名は書いていません
  • 「かんすい」(2品)・「膨脹剤」(1品)も合わせると、リン酸塩が入りうる4つの一括名(酸味料・pH調整剤・かんすい・膨張剤)のどれかがある商品は13品(18%)です。このうち、リン酸塩を使っているかどうかが表示から分かる商品は1つもありません(「調味料(アミノ酸等)」や「乳化剤」にもリン酸塩が入る場合がありますが、ここでは数えていません)

国のルールでは「酸味料(クエン酸等)」と中身を書き添えることができます。国の検討会は「現状維持のかわりに、事業者は情報提供に努める」としましたが、ウラヨミの71品では、書き添えている商品は1つもありませんでした。

EFSA の基準で、日本の子どもを計算し直すと

リンの摂取量と、体重から計算した基準値1日あたり(mg、リンとして)。基準値=体重×EFSA の ADI 40 mg/kg、または JECFA の MTDI 70 mg/kg平均摂取量EFSA ADI 相当JECFA MTDI 相当01,0002,0003,0004,0001〜6歳体重16.5kg1〜6歳 平均摂取:676 mg/日6761〜6歳 EFSA ADI 相当:660 mg/日660(摂取はこの102%)1〜6歳 JECFA MTDI 相当:1,155 mg/日1,1557〜14歳体重37.9kg7〜14歳 平均摂取:1045 mg/日1,0457〜14歳 EFSA ADI 相当:1,516 mg/日1,516(摂取はこの69%)7〜14歳 JECFA MTDI 相当:2,653 mg/日2,65315〜19歳体重55.9kg15〜19歳 平均摂取:1053 mg/日1,05315〜19歳 EFSA ADI 相当:2,236 mg/日2,236(摂取はこの47%)15〜19歳 JECFA MTDI 相当:3,913 mg/日3,91320〜29歳体重58.8kg20〜29歳 平均摂取:939 mg/日93920〜29歳 EFSA ADI 相当:2,352 mg/日2,352(摂取はこの40%)20〜29歳 JECFA MTDI 相当:4,116 mg/日4,116成人の耐容上限量 3,000添加物由来のリンは何 mg? 推計の方法で大きく違う0100200300加工食品と原料の差(1988・89年)加工食品と原料の差(1988・89年):36 mg/日36 mg添加物の分だけを差し引きで推計生産量から割り算(2016年度分)生産量から割り算(2016年度分):53.4 mg/日53.4 mg食品安全委員会は「50 mg/日程度」と判断加工食品をまるごと測定(令和3年度)加工食品をまるごと測定(令和3年度):248 mg/日248 mg正リン酸+縮合リン酸。天然のリンを含む摂取量は令和5年国民健康・栄養調査(第1表の1)。厚労省は、この値に加工食品に添加されたリンは「加味されていない」と書いている。体重は令和3年度マーケットバスケット調査の平均で、摂取量とは別の調査。20〜29歳には20歳以上の体重を当てた。EFSA の ADI は腎機能が落ちた人には当てはまらない(EFSA)。小児の耐容上限量は設定されていない。出典:EFSA 2019、JECFA 1982、厚労省「日本人の食事摂取基準 2025年版」・令和3年度 マーケットバスケット調査、食品安全委員会 2023(添加物由来の推計)。比率はウラヨミの計算。
図:リンの摂取量と、体重から計算した基準値(摂取量は令和5年国民健康・栄養調査、体重は令和3年度マーケットバスケット調査、基準値は EFSA 2019・JECFA。添加物由来の推計は食品安全委員会 2023・厚生労働省。ウラヨミが計算)

EFSA の ADI(リンとして体重1kgあたり 40 mg)を、日本人の摂取量に当てはめてみました。

年齢 平均摂取量 平均体重 EFSA の ADI 相当 摂取量の割合 JECFA の基準 相当
1〜6歳 676 mg 16.5 kg 660 mg 約102% 1,155 mg(59%)
7〜14歳 1,045 mg 37.9 kg 1,516 mg 69% 2,653 mg
15〜19歳 1,053 mg 55.9 kg 2,236 mg 47% 3,913 mg
20〜29歳 939 mg 58.8 kg 2,352 mg 40% 4,116 mg

1〜6歳は、平均でほぼ EFSA の ADI に届きます。ただし、次の点に注意してください。

  • 摂取量(令和5年 国民健康・栄養調査)と体重(令和3年度 マーケットバスケット調査)は別の調査の値です。20〜29歳には、20歳以上の平均体重を当てています
  • 摂取量には、添加物のリンがほとんど入っていません(厚生労働省)。実際にはもう少し多い可能性があります
  • そもそも、国が決めた3〜5歳のリンの目安量は 1日 700 mg で、EFSA の基準で計算した 660 mg より多くなります

これは、EFSA 自身が「欧州の幼児・小児は平均で ADI を超える」と書いたのと同じことが、日本でも起きるということです。リンは体に必要な栄養素でもあるので、「子どものリンが危険な量」という意味ではありません。栄養素でもある物質に、添加物の物差し(ADI)を当てはめる難しさを示す数字です。EFSA が自分たちの基準の作り方の見直しを求めたのも、このためです。

裏面チェックのポイント

  • 「酸味料」「pH調整剤」は物質名ではなく一括名です。「/」より後ろにあり、何をいくつ使っていても1語で書かれます
  • 主な中身(クエン酸・乳酸・酢酸など)は、国際的な評価で ADI を「制限しない」物質です。書かれているだけで心配する必要はありません
  • リンを制限している人は、「pH調整剤」「かんすい」「膨張剤」「酸味料」と、ハム・ソーセージ・練り製品などの加工品に注意します(「調味料」やプロセスチーズの「乳化剤」に入っていることもあります)。表示からリン酸塩かどうかは分からないので、必要なら製造者に問い合わせます。食事の制限は主治医・管理栄養士の指示に従います
  • 「保存料不使用」は、日持ちのための添加物が入っていないという意味ではありません。pH調整剤・グリシン・酢酸Na などがないかを見ます
  • 酸味を食品でつけたいなら、「醸造酢」「米酢」「レモン果汁」などが「/」の前にあり、「酸味料」がない商品を選びます
  • 酸っぱい飲みものは、長い時間ちびちび飲まない。歯の酸蝕症の原因になります

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

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まとめ

気になること 分かったこと
酸味料・pH調整剤とは? 中身を書かなくてよい一括名。酸味料は24品目、pH調整剤は35品目(ほかにフィチン酸)。酸味料の24品目はすべて pH調整剤にも入る
いつからある? クエン酸は1784年にレモンから。1917年に黒カビでの発酵が報告され、工業化が進んだ。日本は1953年に国産化、いまは輸入の約9割が中国から。一括名は1988年にでき、2つとも最初の11名称に入っていた
海外ではどう書く? Codex・EU は分類名+物質名か番号、米国は物質名。米国のコーラは「PHOSPHORIC ACID」、日本は「酸味料」
体に悪い? クエン酸・乳酸・酢酸は ADI「制限しない」。「危険」「腸内細菌を殺す」「炎症」の根拠は確かめられなかった。歯の酸蝕症には注意
リン酸塩は? 添加物の無機リンは吸収率90%以上。腎臓病の人には大事な情報だが、一括名で見えない。健康な人で心臓・骨への影響ははっきりしない
「保存料不使用」との関係は? pH調整剤で日持ちさせて「保存料不使用」と書くのは、ガイドラインの類型4(誤認のおそれが高い例)。米飯の小さな試験では、はっきりした静菌効果は見られなかった
ウラヨミの71品では? 「酸味料」10品、「pH調整剤」1品。物質名まで書いた商品は0品。酢で酸味をつける商品は20品

参考にした資料

歴史・生産

  • Ciriminna R, et al. Citric acid: emerging applications of key biotechnology industrial product. Chem Cent J 2017;11:22(PMID 28326128)
  • Cairns TC, et al. How a fungus shapes biotechnology: 100 years of Aspergillus niger research. Fungal Biol Biotechnol 2018;5:13(PMC5966904)
  • Currie JN. The citric acid fermentation of Aspergillus niger. J Biol Chem 1917;31:15-37
  • Książek E. Citric Acid: Properties, Microbial Production, and Applications in the Food Industry—A Review. Molecules 2023;29(1):22(PMC10779990)
  • 乳酸発酵(Rhizopus)のレビュー 2025(PMC12675874)
  • 松村晴之「澱粉粕を原料としたクエン酸発酵工業について」澱粉工業学会誌 1963;10(2):98
  • 日本食品化学研究振興財団「添加物一覧 指定・削除等の経緯」(令和3年1月)
  • 厚生労働省・消費者庁「第10版食品添加物公定書」沿革略記(2024年)
  • UN Comtrade(日本の輸入、HS 2918.14、2000〜2025年)

一括名・表示の制度

  • 「食品添加物表示の動向」日本醸造協会誌 1988;83(10):660、川井信子「食品添加物の表示が変わりました」生活衛生 1990;34(5):241
  • 厚生省 衛化第56号(1996年5月23日)
  • 消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4・別添 添加物2-1(2026年4月1日版)、「食品表示基準Q&A」加工食品(2026年10月1日版)
  • 消費者庁 食品添加物表示制度に関する検討会 資料(2019年4月・8月・11月)、同 報告書(2020年3月)
  • 髙橋亨「食品添加物表示制度に関する検討会報告書について」ALIC 砂糖類・でん粉情報(2020年7月)
  • 消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」(2026年4月版)
  • Codex 包装食品の表示に関する一般規格(消費者庁の仮訳)
  • EU 規則 1169/2011 附属書VII Part C、英国食品基準庁「Approved additives and E numbers」
  • 米国連邦規則 21 CFR 101.4・101.22・172.350・182.1073・184.1005・184.1033・184.1061・184.1069
  • 日本コカ・コーラ 製品情報・よくある質問、The Coca-Cola Company「Coca-Cola Original」製品ページ(2026年10月3日確認)

「保存料不使用」

  • 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月30日)
  • 消費者庁 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会 第2回・第3回・第6回・第7回 議事録(2021年)、第3回 資料(令和2年度 消費者意向調査)
  • 梅田薫ほか「工場で炊飯された米飯による食中毒リスクの調査」日本食品微生物学会雑誌 2022;39(2):70
  • 広島県 食品工業技術センター「『保存料』、『日持ち向上剤』について」

人体への影響

  • EFSA FAF Panel. Re-evaluation of phosphoric acid–phosphates – di-, tri- and polyphosphates (E 338–341, E 343, E 450–452). EFSA J 2019;17(6):5674(PMID 32626329)
  • EFSA FAF Panel. Re-evaluation of L(+)-tartaric acid (E 334) and its salts. EFSA J 2020;18:6030(PMID 32874248)
  • EFSA 科学委員会 ガイダンス(2026、PMC12817064)
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、「令和5年 国民健康・栄養調査報告」、「令和3年度 マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査」
  • 食品安全委員会「食品添加物のばく露評価に関する情報収集調査」(2023年3月)
  • 厚生労働科学研究「生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究 その1 指定添加物品目(第12回最終報告)」(2020年3月)
  • 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版」
  • Sullivan C, et al. JAMA 2009(PMID 19211470)/Benini O, et al. J Ren Nutr 2011(PMID 21055967)/León JB, et al. J Ren Nutr 2013(PMID 23402914)/Liu Z, et al. Cochrane 2015(PMID 26376110)
  • Chang AR, et al. Am J Clin Nutr 2014(PMID 24225358)、訂正 2017(PMID 28373320)/Torrijo-Belanche C, et al. 2024(PMID 38892532)/Fulgoni K, Fulgoni VL. 2021(PMID 34210102)
  • Fenton TR, et al. Nutr J 2009(PMID 19754972)/Tucker KL, et al. Am J Clin Nutr 2006(PMID 17023723)
  • Jin H, et al. 2009(PMID 18849498)/Xu CX, et al. 2010(PMID 20432174)/Wilson KM, et al. 2015(PMID 25527761)
  • Sweis IE, Cressey BC. Toxicol Rep 2018;5:808-812(PMID 30128297)
  • Sugino T, et al. J Clin Biochem Nutr 2007(PMID 18299720)
  • Reddy A, et al. J Am Dent Assoc 2016(PMID 26653863)/Kitasako Y, et al. J Dent 2015(PMID 25684603)
  • Trautvetter U, et al. Nutr J 2018(PMID 29452584)

ウラヨミのデータ

  • ウラヨミ 商品ページ71品の原材料(2026年10月3日時点、ウラヨミが集計)
  • 味の素「丸鶏がらスープ」お客様相談 Q&A「pH調整剤とは何ですか。」

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.03)。