ラベルの読み方日本と海外の違い確認日 2026.09.28

「無添加」でも入っている? ラベルに書かれない添加物「キャリーオーバー」と「加工助剤」

裏面の原材料名を見て、「添加物が少ないな」と思ったことはありませんか。実は、食品に使われた添加物のすべてが、裏面に書かれているわけではありません。

食品表示のルールには、添加物を使っていても表示しなくてよい場合が決められています。代表的なのが「キャリーオーバー」と「加工助剤」です。

この記事では、

  • キャリーオーバーと加工助剤とは何か、どんな例があるのか
  • それでも表示しなければならないのは、どんな場合か
  • 「効果がない量」は誰がどう決めているのか
  • 海外にも同じ仕組みがあるのか
  • 「無添加」「不使用」の表示とどう関係するのか

を、法令と国・自治体の資料をもとに整理します。

結論:表示されない添加物は、ルールとして存在します

  • 食品表示基準は、添加物を原則すべて表示するよう求めています。ただし「キャリーオーバー」と「加工助剤」は表示しなくてよいとされています
  • キャリーオーバーは、原材料をつくるときに使われ、できあがった食品では効果を発揮しない量しか残らない添加物です。代表例は、せんべいの味付けに使ったしょうゆに入っていた保存料です
  • ただし、アレルゲンの表示は免除されません。また、色・香り・味など五感で分かる添加物や、添加物を含む原材料が原型のまま残っている場合は、キャリーオーバーにならないと自治体は説明しています
  • 「効果を発揮しない量」に数値の基準はなく、食品をつくる事業者が個別に判断します
  • EU・米国・国際規格(Codex)にも同じ考え方があり、日本だけの仕組みではありません
  • 消費者庁のガイドラインは、キャリーオーバーとして添加物が使われている食品に「無添加」「不使用」と表示することを、誤解を招くおそれが高い例に挙げています

キャリーオーバーとは

法律の定義

食品表示基準は、キャリーオーバーを次のように定めています。

食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には当該添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの

言いかえると、次の3つすべてに当てはまる添加物です。

  1. 原材料をつくるときに使われた
  2. その食品をつくるときには使われていない
  3. その食品の中では、添加物としての効果を発揮できる量より少ない量しか残っていない

「キャリーオーバー(carry over)」は「持ち越し」という意味です。原材料から持ち越されてきた添加物、ということです。

国や自治体の資料にある例

できあがった食品 使った原材料 原材料から持ち込まれる添加物
せんべい 味付けのしょうゆ 保存料(安息香酸)
揚げパン・ドーナツ 揚げ油 消泡剤(シリコーン樹脂)
シュークリーム 少量使うマーガリン 乳化剤
ビール スターチ・ホップ 二酸化硫黄

(せんべいは消費者庁・札幌市、ほかの3つは東京都保健医療局の例)

せんべいの例では、しょうゆには保存料が入っていても、せんべいの中ではごく少量になり、せんべいを長持ちさせる効果はない、という考え方です。

加工助剤とのちがい

表示しなくてよい添加物には、もうひとつ「加工助剤」があります。こちらは、原材料ではなくその食品をつくるときに使われる添加物です。

キャリーオーバー 加工助剤
使われる段階 原材料をつくるとき その食品をつくるとき
表示しなくてよい理由 できあがった食品では、効果を発揮できる量より少ないから 次のどれかに当てはまるから
・完成前に取り除かれる
・食品にもともと含まれる成分に変わり、その量をはっきり増やさない
・量が少なく、食品に影響しない
例 上の表 油をしぼるときの溶剤(ヘキサン)=完成前に取り除かれる
豆腐をつくるときの泡消し(シリコーン樹脂)=量が少なく影響しない

(例は東京都保健医療局・札幌市)

「栄養強化」の免除はなくなりました

以前は、ビタミンやミネラルなど栄養を強化するために使った添加物も、表示しなくてよいとされていました。2025年3月の食品表示基準の改正でこの免除はなくなり、今、条文で表示が免除されているのは「加工助剤」と「キャリーオーバー」の2つだけです。

ただし切り替えには猶予があり、2030年3月31日までに製造・加工・輸入される一般向けの加工食品などは、以前のルールで表示してもかまいません。しばらくは、栄養強化の添加物が書かれていない商品も店に並びます。

キャリーオーバーにならない場合

原材料から持ち込まれた添加物でも、次の場合は表示が必要です。

アレルゲンは、表示が免除されない

消費者庁の通知は、加工助剤やキャリーオーバーとして添加物の表示が免除される場合でも、その添加物に由来するアレルギーの原因物質(特定原材料)は表示が必要としています。添加物の名前は書かれなくても、「(一部に小麦・大豆を含む)」のようなアレルゲンの表示は残ります。

五感で分かる添加物

札幌市・福島県・神奈川県の解説では、調味料・着色料・香料・甘味料など、効果が見た目や味・香りで分かる添加物は、少量でもキャリーオーバーにならないとしています。できあがった食品でも、色や味として効き目が残っているからです。

  • 例:着色料を使ったメロンソースを、メロンアイスに使った場合 → アイスにも色の効果があるので、表示が必要(札幌市)

原材料が原型のまま残っている場合

  • 例:発色剤を使ったハムを、ポテトサラダに入れた場合 → ハムがそのままの形で入っているので、表示が必要(札幌市)

「五感で分かる添加物」「原型のまま残る場合」の考え方は、自治体の解説に書かれている運用です。国の法令の条文に、そのままの言葉で書かれているわけではありません。

「効果を発揮しない量」は、誰が決めている?

キャリーオーバーかどうかを分ける「効果を発揮することができる量より少ない」には、数値の基準がありません。

  • 消費者庁は、キャリーオーバーに当たるかどうかは各食品事業者が、定義をふまえ、使用基準や使用実態に即して個別に判断するものだと説明しています(食品安全委員会のQ&Aへの回答、2011年)
  • 消費者庁の通知も、添加物の使用基準や使用実態に即して個別に判断されるとしています
  • 迷ったときは、管轄の保健所に確認するよう自治体は案内しています(東京都)

このため、「判断があいまいではないか」「保健所によって考え方がちがう」という声も、食品安全委員会のQ&Aに寄せられています。数値で線を引くのではなく、添加物ごとの使い方に照らして個別に判断する、というのが今のしくみです。

日本と海外のちがい

原材料から持ち込まれた添加物の表示を省いてよい、という考え方は、海外にもあります。

原材料から持ち込まれた添加物の扱い
日本 食品表示基準で、キャリーオーバーは表示が免除される
国際規格(Codex) 「持ち越しの原則(carry-over principle)」がある。原材料に使ってよい添加物で、量が上限の範囲内であり、できあがった食品で効果を発揮するのに必要な量より十分に少ないなどの条件で、持ち越しを認める
EU 規則1169/2011 第20条で、持ち越しの原則にもとづいて存在し、できあがった食品で技術的な働きをしない添加物は、原材料の表示に含めなくてよい
米国 21 CFR 101.100(a)(3)(i) で、ほかの食品の原材料として持ち込まれ、できあがった食品で技術的・機能的な効果を持たない微量の添加物は、表示を免除している

EUの添加物の規則(1333/2008)第18条にも「持ち越しの原則」があります。これは、原材料から持ち越された添加物が食品に含まれていてよいことを定めたもので、表示の免除を定めているのは表示の規則(1169/2011)のほうです。

キャリーオーバーは、日本だけの「抜け道」ではありません。ただ、こうした仕組みがあることを知らないと、「原材料名に書いていない=使っていない」と読み違えてしまう点には注意が必要です。

化粧品・日用品にも、同じ考え方がある

化粧品の「全成分表示」にも、キャリーオーバーの考え方があります。

  • 厚生労働省の通知(2001年)は、配合した成分に付いてくる成分で、製品の中では効果を発揮する量より少ないもの(いわゆるキャリーオーバー成分)は、表示しなくてよいとしています
  • 業界団体のガイドラインは、その例として、原料の油脂に加えられた酸化防止剤(BHTなど)や、原料の植物エキスに加えられた防腐剤(ソルビン酸など)を挙げています

シャンプーやボディソープの「全成分」も、文字どおりの「すべて」とは限りません(→ 経皮毒・日用品の記事)。

「無添加」「不使用」の表示との関係

消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月策定。事業者の見直し期間は2024年3月末で終了)は、誤解を招くおそれが高い表示を10の類型に分けています。その類型9が、キャリーオーバーに関係するものです。

  • 加工助剤やキャリーオーバーとして添加物が使われている(または使われていないことが確認できない)食品に、「無添加」「不使用」と表示すること
  • 例:原材料の一部に保存料を使いながら、できあがった商品に「保存料不使用」と表示する

ガイドラインは、添加物の表示には原材料の製造や加工の段階までさかのぼって確認することが必要で、表示の枠の外に書く「不使用」であっても、確認の結果にもとづかない表示は、中身を誤解させるおそれがあるとしています。

なお、このガイドラインは「無添加」「不使用」の表示を一律に禁止するものではありません。原材料までさかのぼって確認し、何が不使用なのかがはっきりしていれば、表示できます。

裏面チェックのポイント

  1. 添加物の欄に書かれているのは、主に「その食品をつくるときに使った添加物」:原材料の中に入っていた添加物は、キャリーオーバーとして書かれていないことがあります
  2. 原材料名に、それ自体が加工食品の原材料があるかを見る:しょうゆ、マーガリン、揚げ油など。その中に使われた添加物は、書かれていないことがあります(ただし、色・香り・味の効果が残る添加物は書かれます。4を参照)
  3. アレルゲンの表示は免除されない:原材料名に見当たらない食材のアレルゲン表示があるときは、原材料の中に使われた成分がある手がかりになります(これは制度ではなく、ウラヨミの読み方です。添加物とは限りません)
  4. 色・香り・味の添加物は、原材料由来でも書かれる:着色料・香料・甘味料・調味料などは、原材料から持ち込まれたものでも表示の対象です
  5. くわしく知りたいときは、表示責任者に問い合わせる:消費者庁は、表示の枠にある製造者・販売者などに問い合わせる方法を案内しています。問い合わせの例として「表示を省略している食品添加物を教えてほしい」も挙げています
  6. 「無添加」「不使用」の文字だけで判断しない

ウラヨミの考え方

ここまでをまとめると、

  • キャリーオーバーと加工助剤は、国際的にも共通の考え方にもとづく、ルールとして決められた表示の免除です
  • 一方で、数値の基準がなく事業者が判断するため、裏面だけでは、原材料の中に何が使われたかまでは分かりません
  • アレルゲン、五感で分かる添加物、原型のまま残る原材料は、原材料由来でも表示されます

ウラヨミでは、キャリーオーバーを「隠された危険」とは書きません。知らないと表示を読み違えてしまう、知っておくべき制度として紹介します。

そのうえで、商品ページでは次のように書き分けています。

  • メーカーが表示している「〇〇不使用」は、メーカーの表示としてそのまま引用する
  • ウラヨミが原材料名を見て、書かれていないことを確かめたものは「原材料名に見当たらないもの」として載せる。これは「入っていない」という意味ではありません。キャリーオーバーのように、表示されない添加物がありうるからです

しょうゆそのものの裏面の読み方は、丸中醤油の記事 で紹介しています。

あわせて知っておきたいこと

参考にした資料

  • 食品表示基準(内閣府令)第3条第1項の表「添加物」の項(e-Gov 法令検索、2026年9月確認)/附則(2025年3月改正の経過措置)
  • 消費者庁「食品表示基準について」(別添 添加物関係・別添 アレルゲン関係)
  • 消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」
  • 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月)
  • 食品安全委員会 Q&A「キャリーオーバーの考え方について」(2011年)、「食品添加物のキャリーオーバーの判断基準について」(2008年)
  • 東京都保健医療局「食品衛生の窓」加工食品(添加物)
  • 札幌市保健所「添加物(一般用加工食品)」
  • 福島県相双保健福祉事務所「食品表示について」
  • 神奈川県「食品表示法(衛生事項)添加物表示について」
  • 消費者庁「食品添加物の表示について」(食品添加物表示制度に関する検討会 資料、2019年。Codex・EU・米国との比較)
  • Regulation (EU) No 1169/2011 Article 20/Regulation (EC) No 1333/2008 Article 18
  • 21 CFR 101.100(a)(3)
  • 厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(2001年3月6日)/日本化粧品工業連合会「化粧品の全成分表示記載のガイドライン」

※この記事は、表示のルールを説明するもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。食物アレルギーのある方は、商品の表示を必ずご確認のうえ、わからない点は製造者・販売者にお問い合わせください。

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.09.28)。