「香料」の中身はなに? 1語で書かれる理由と、日本と海外のルールの違い
ジュース、ガム、アイス、スナック菓子、カップ麺、パン。裏面を見ると、かなりの確率で「香料」と書かれています。
でも、それがレモンから取った香りなのか、化学的に作った香りなのか、何種類の成分が入っているのかは書かれていません。
この記事では、
- なぜ「香料」とだけ書けばよいのか(表示のルール)
- 日本の香料には、どんな種類があって、どう安全性を確かめているのか
- 「天然香料」「natural flavor」の意味が、日本・EU・米国でどう違うのか
- 海外で使えなくなった香料や、注意が必要な香りの成分
を、国や海外の公的機関の資料をもとに整理します。
結論:「香料」は、中身が何でも1語で書ける表示です
- 香料は、何種類の成分を使っても「香料」とだけ書いてよい決まり(一括名)になっています。化学的に作ったものも、植物などから取ったものも、同じ「香料」です
- 香料はごく少ない量しか使われないため、国際的にも、成分の構造と摂取量の推計から安全性を確かめる香料専用の評価方法がとられています
- 「天然」の意味は国によって大きく違います。日本は添加物の表示に「天然」という言葉を使えません。 EUは「天然〇〇香料」と書くのに厳しい条件があり、米国の「natural flavor」はかなり幅広い意味です
- 海外では、EUが燻製の香りをつける「煙香料」を段階的に禁止し、米国が合成香料7種類の使用許可を取り消すなど、見直しが続いています
香料の種類と、裏面での書かれ方
| 種類 | 中身 | 例 | 裏面での書かれ方 |
|---|---|---|---|
| 化学的に作る香料など(指定添加物) | 「エステル類」「アルデヒド類」など18の類(グループ)でまとめて指定された香料と、1つずつ指定された香料 | バニリン、酢酸エチル など | 香料 |
| 天然香料 | 動植物から取る、香りをつけるための物質。量はごくわずかと考えられている | バニラ香料、カニ香料 など | 香料、または「バニラ香料」のように元の物質名+香料 |
(厚生労働省「食品添加物」より。日本で使える添加物は、このほかに「既存添加物」「一般飲食物添加物」という区分があります)
表示のルールで知っておきたいこと
- 「香料」は一括名です。 使った成分を1つずつ書かなくてよく、何十種類をまぜた香料でも「香料」の2文字で済みます。調味料(アミノ酸等)・乳化剤・pH調整剤などと同じ仕組みです
- 「天然」という言葉は、添加物の表示には使えません。 国のルールでは、天然香料を表示するときは「バニラ香料」のように元の物質名に「香料」をつけて書き、「天然」やこれに近い言葉は使えないことになっています
- 香料はアレルギー表示の義務がありません。 卵や乳などから作った香料でも、実際に食物アレルギーを起こしたという知見が乏しいため、現時点では表示を義務づけていないと消費者庁は説明しています。ただし、香りの成分以外の部分(香料を溶かす液などの「副剤」)にアレルギーの原因となる原材料を使っている場合は、表示が必要です
- 香料の多くは「着香の目的以外に使ってはいけない」という使用基準がついています。香りをつける以外の目的(保存料や甘味料の代わりなど)には使えません
香料の安全性は、どうやって確かめている?
香料は、ほかの添加物と比べて使う量がとても少なく、種類がとても多いのが特徴です。そのため、国際的な評価機関(JECFA)やEU、日本の食品安全委員会は、香料専用の評価方法を使っています。
- まず、遺伝子を傷つける性質(遺伝毒性)がないかを確かめる。 懸念が否定できなければ、次の段階には進まない
- 成分の化学構造から、毒性の強さのグループ(クラスI〜III)に分ける
- 推計した摂取量が、そのグループの「これ以下なら健康への懸念がない量」を下回っているかを見る
| グループ | これ以下なら懸念がないとされる量(1人1日あたり) |
|---|---|
| クラスI(体の中で無害なものに分解されやすい構造) | 1,800µg(1.8mg) |
| クラスII(中間) | 540µg |
| クラスIII(毒性が出る可能性がある構造) | 90µg |
(食品安全委員会「香料に関する食品健康影響評価指針」より)
日本では、摂取量を「1年間に使われた量を、人口の10%が均等に食べる」と仮定して推計しています(MSDI法)。JECFAは、これに加えて「ある食品を毎日1回食べる人」を想定した推計(SPET法)も計算し、2つのうち高いほうを使って評価しています。特定の商品ばかり食べる人や、一部の人しか食べない食品の香料も見落とさないためです。日本の指針も、国際的な方法にそろえるためSPET法を使うことが望まれるとしていますが、SPET法は欧米の食習慣をもとにしているため、今は日本ではMSDI法で推計しています。
海外で使われている香料を、日本でも使えるように
欧米で広く使われ、JECFAで安全性が確認されている香料のうち、日本で使えなかったもの(国際汎用香料54品目)について、国は企業からの申請を待たずに安全性を確かめ、順次使えるようにしてきました。
日本と海外の違い
「天然」の意味の違い
| 日本 | EU | 米国 | |
|---|---|---|---|
| 「天然」を表示に使えるか | 使えない(添加物の表示に「天然」やこれに近い言葉は不可) | 使える。ただし条件が厳しい | 使える(natural flavor) |
| 条件 | ― | 「天然レモン香料」と書くには、香りの成分の95%以上がレモンから取れたものでなければならない。95%に満たないときは「天然レモン香料(ほかの天然香料入り)」または単に「天然香料」と書く | スパイス、果物、野菜、酵母、肉、魚、卵、乳などから取った精油・抽出物や、それらを加熱・酵素分解・発酵させたものなら「natural flavor」。1つずつ名前を書かなくてよい |
同じ「天然」でも、EUは「どの原料から取ったか」を厳しく問い、米国はかなり幅広いのが特徴です。日本はそもそも「天然」と書けないので、裏面の「香料」の2文字からは、天然か化学的に作ったものかは分かりません。
バニリンの例:バニラの香りの主成分バニリンは、バニラ豆から取るほか、化学的に作ることもでき、植物の成分から微生物や酵素で作ることもできます。EUでは、植物などの原料から物理的な方法・酵素・微生物で作ったものは「天然香料物質」になり、化学的に作ったものは同じ物質でも「天然」とは書けません。
EU:燻製の香り「煙香料」を段階的に禁止
木を燃やした煙を集めて精製した「煙香料」は、燻製の風味をつけるのに使われてきました。EUでは、もともと伝統的な燻製よりも健康的な方法として位置づけられていたものです。
EUが認めていた10品目のうち、2品目は企業が更新を申請しなかったため、2024年1月に認可が切れました。残る8品目について、EFSA(欧州食品安全機関)は2023年11月、「遺伝毒性の懸念を否定できない」と評価しました。これを受けてEUは2024年、10品目すべてを認可リストから外しました。更新を申請した8品目については、次の移行期間が設けられています。
| 食品 | 8品目の煙香料を使った食品を市場に出せる期限 |
|---|---|
| スープ、ソース、スナック菓子など(下の4つ以外すべて) | 2026年7月1日まで(すでに終了) |
| チーズ、肉、加工した魚介類、魚卵 | 2029年7月1日まで |
※期限までに市場に出したものは、賞味期限・消費期限まで売ることができます。
なお、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、EFSAが問題にした遺伝毒性のある物質は、伝統的な燻製でもできると考えられるとしています。
EU:植物にもともと含まれる成分にも上限
EUは、香料や香りのある食材(スパイス・ハーブなど)にもともと含まれる成分のうち、体に負担をかけるおそれのあるものについて、
- そのまま食品に加えることを禁止(クマリン、エストラゴール、プレゴン、サフロール、メチルオイゲノールなど15物質)
- そのうち11物質について、香料やスパイスなどから食品に入ってくる量の上限を、食品ごとに決めている
ことが特徴です(EU規則1334/2008 附属書III)。
| 成分 | 主に含まれるもの | 上限の例(食品1kgあたり) |
|---|---|---|
| クマリン | シナモン(特にカシア) | シナモン入りと表示した伝統的・季節の焼き菓子 50mg、シリアル 20mg、その他の焼き菓子 15mg、デザート 5mg |
| プレゴン | ペパーミントなど | ミントのお菓子 250mg、ガム 350mg、ミント入りの清涼飲料 20mg |
| エストラゴール | バジル、フェンネル、タラゴンなど | 乳製品・加工した果物や野菜・魚製品 50mg、清涼飲料 10mg |
| サフロール | ナツメグなど | 肉・魚の加工品 15mg、スープ・ソース 25mg、清涼飲料 1mg |
クマリンは、とりすぎると肝臓に負担がかかることが知られている成分です。
- EFSAは2004年に、クマリンの耐容一日摂取量(TDI)を体重1kgあたり0.1mgとしました。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)の研究者は、クマリンを薬として使った人のデータからも同じ値になることを確かめ、人の中には肝臓への影響を受けやすい人がいることも指摘しています
- 同じ研究では、カシア(シナモンの一種)をたくさんとる人は、TDIに届く量のクマリンをとる可能性があるとしています(ドイツのクリスマスシーズンの調査)
- 東京都健康安全研究センターの調査(2008年)では、市販のシナモンの粉やスティックから1gあたり11〜6,700µg、シナモンを使ったお菓子では10製品中9製品から検出されています。シナモンの種類によって量が大きく違います
- 海外では、減量のためにシナモンを煮出した水を長く飲み、量を増やしたあとに肝障害を起こした人の報告もあります(1例の症例報告。シナモンをやめて回復)
日本では、クマリンそのものは、国が香料として使えると確認した物質に入っていません(個別に指定された添加物、「類」で指定された香料のリスト〔2024年3月版〕、既存添加物のいずれにも見当たりません)。一方で、クマリンを含むシナモンは食品として、トンカ豆は天然香料の原料(天然香料基原物質リスト)として使うことができ、食品中のクマリンの量の上限は決められていません(ウラヨミが調べた範囲)。
米国は1954年から、クマリンを加えた食品を認めていません。クマリンそのものだけでなく、トンカ豆やその抽出物として加えた場合も対象です(21 CFR 189.130)。
米国:合成香料7種類の使用許可を取り消し(2018年)
米国FDA(食品医薬品局)は2018年10月、市民団体などの請願を受けて、合成香料7種類(ベンゾフェノン、アクリル酸エチル、メチルオイゲノール、ミルセン、プレゴン、ピリジン、スチレン)の使用許可を取り消しました。
- 6種類は、動物に大量に与えた試験でがんが起きたことから、「人か動物でがんを起こす添加物は認めない」という法律の条文(デラニー条項)に従って取り消した。スチレンは、業界がもう使っていないため取り消した
- ただしFDAは、通常の使い方では公衆衛生上のリスクはないと判断していて、取り消しはあくまで法律上の措置だと説明しています
- また、これらの成分は食品や天然の香料にももともと含まれていて、そうした「natural flavors」の扱いは変わらないとしています
米国の香料は、業界団体(FEMA)の専門家パネルが「一般に安全と認められる(GRAS)」と判断したものが広く使われているのも特徴です。
EU:データ不足の香料を削除
EUでは、安全性を確かめるデータが出されなかった香料が認可リストから外されることがあります。2024年には8物質が削除されました。
「香料は体に悪い」は本当?
食べることで問題になった例は少ない
公的機関の評価では、決められたルールの中で使われる香料について、通常の食べ方で健康への懸念はないとされています。米国の合成香料の取り消しも、FDA自身は「通常の使い方ではリスクはない」としたうえでの法律上の措置でした。
ダイアセチル:問題になったのは「吸い込んだ」工場の労働者
バターの香りの成分ダイアセチルは、米国で電子レンジ用ポップコーンや香料の工場で働く人に、治らない肺の病気(閉塞性細気管支炎)を起こしたことで知られています。
- 原因は、工場で蒸気を長く吸い込んだこと。米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は2016年、職場の空気中の濃度を8時間平均で5ppb以下にするよう勧めています
- 米国FDAは、ダイアセチルなどの香料成分を食べるぶんには「一般に安全と認められる(GRAS)」としています。CDCも、問題は食べることではなく、労働者が汚れた空気を吸い込むことだと説明しています
「食べて安全」と「吸い込んで安全」は別の話だということが分かる例です。
気をつけたいこと
- シナモンのとりすぎ:シナモンをたくさん使うお菓子や、シナモンのサプリメントを毎日多くとる場合は、クマリンに注意が必要です(EUの上限の考え方を参考に)
- 香りの成分でかぶれる人も:香りの成分の中には、触れるとかぶれ(接触皮膚炎)を起こすものがあります。シナモンによる接触アレルギーや、スペアミント味の歯みがき粉の香り成分(アネトール)による唇の炎症などが報告されています(いずれも症例報告)。食べ物より、化粧品・日用品・歯みがき粉など肌や口の粘膜に直接触れるものでの問題が中心です → 経皮毒・日用品の記事(準備中)
「香料不使用」「天然香料」の表示に注意
- 「天然香料使用」「合成香料不使用」:消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年)は、「合成」「人工」「天然」という言葉と一緒に「不使用」を書く表示を、消費者に誤解を与えるおそれが高い例に挙げています。添加物の表示のルールには、もともと合成と天然の区別がないためです
- 「香料不使用」:同じガイドラインは、「〇〇不使用」と書きながら同じ働きをする原材料を使っている表示も、誤解を招くおそれがある例としています。香りの強いエキスなどで風味をつけている場合は、裏面の原材料名も見るのが確実です
ウラヨミの考え方
ここまでをまとめると、
- 香料はごく少ない量しか使われず、国際的にも香料専用の方法で安全性が確かめられている。通常の食べ方で健康への懸念はないというのが公的機関の評価
- 一方で、「香料」の2文字からは、何がどれだけ入っているかは分からない。天然か化学的に作ったものかも、日本の表示では分からない
- 海外では、煙香料の禁止や合成香料の取り消し、植物由来の成分の上限など、見直しが続いている
ウラヨミでは、香料を一律に「危険」とは書きません。そのかわり商品ページでは、「香料」の表示があるかどうかを裏面の表示どおりに載せ、メーカーが香料の中身(「バニラ香料」「レモン果汁」など)を公開している場合は、あわせて紹介していきます。
裏面チェックのポイント
- 添加物の欄で「香料」を探す:何種類の成分でも、この2文字で書かれます
- 「〇〇香料」と書かれていれば、元の物質が分かる:「バニラ香料」「レモン香料」など、天然香料の元の物質名が書かれていることがあります
- 原材料名の欄も見る:果汁、エキス、スパイスなど、香りのもとになる原材料が書かれていることがあります
- 香りの中身を知りたいときは、メーカーに問い合わせる:消費者庁も、一括名で書かれた添加物の中身は表示責任者に問い合わせるよう案内しています
- シナモンの多いお菓子やサプリは、とりすぎに注意
あわせて知っておきたいこと
- 原材料から持ち込まれた香料は、表示されないことがあります → キャリーオーバーの記事
- 「無添加」「不使用」表示のガイドライン → 保存料の記事
- 添加物ごとの海外のルール → 添加物データベース
参考にした資料
- 厚生労働省「食品添加物」(指定添加物・既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物、18類香料)
- 消費者庁「食品表示基準について」(別添 添加物:天然香料の表示、「天然」表示の禁止)/「別添 アレルゲン」(香料のアレルギー表示、2026年4月版)
- 消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」(一括名)
- 消費者庁「国際汎用添加物の指定」
- 日本食品化学研究振興財団「各添加物の使用基準及び保存基準」(2024年11月)
- 食品安全委員会「香料に関する食品健康影響評価指針」(Food Safety 2016)
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月)
- 東京都健康安全研究センター「シナモン含有食品のクマリン分析法及び実態調査」(研究年報 第59号、2008年)
- 厚生労働省「類又は誘導体として指定されている18項目の香料に関するリストについて」(2024年3月15日、健生食基発0315第6号)/食品衛生法施行規則 別表第1/日本食品化学研究振興財団「天然香料基原物質リスト」
- 21 CFR 189.130(Coumarin)
- Abraham K, et al. Toxicology and risk assessment of coumarin: focus on human data. Mol Nutr Food Res 2010(PMID 20024932)
- Yesukumar et al. Probable Cinnamon-Induced Mixed Hepatocellular-Cholestatic Liver Injury(2025、PMID 41158894)
- Contact allergy to cinnamon: case report(PMID 18538070)/Cheilitis caused by contact allergy to anethole in spearmint flavored toothpaste(PMID 17034478)
- Regulation (EC) No 1334/2008(第16条、附属書III)
- European Commission “Smoke flavouring renewals – existing”(2024年8月更新)/Commission Implementing Regulation (EU) 2024/2067
- U.S. FDA “FDA Removes 7 Synthetic Flavoring Substances from Food Additives List”(2018年10月)
- 21 CFR 101.22(natural flavor / artificial flavor の定義と表示)
- CDC/NIOSH “Flavorings and Lung Disease”/“Criteria for a Recommended Standard: Occupational Exposure to Diacetyl and 2,3-Pentanedione”(2016年)
- AGRINFO “EU withdraws eight flavourings”(2024年)
※この記事は、特定の食品や添加物の安全性・危険性を断定するものではありません。食物アレルギーのある方は、香料の中身をメーカーに確認し、医師にご相談ください。