マスタードとからしのちがいは? 種の種類、水で練ると辛くなるしくみ、ディジョン・粒・和からしの原材料とアレルギー表示を確かめる

PR この記事には、楽天市場のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。
おでんの和からし、ホットドッグの黄色いマスタード、ソーセージに添える粒マスタード、ドレッシングに入れるディジョンマスタード。どれも「からし」の仲間ですが、辛さも色も、裏面の原材料名もかなりちがいます。
「和からしとマスタードは何がちがうの?」「粉からしは水で練らないと辛くないのはなぜ?」「熱湯で練ると辛くないって本当?」という疑問もよく見かけます。
この記事では、次のことを、論文・法令・公的機関の資料とメーカー公式の原材料名で確かめます。
- からし(マスタード)の種には、どんな種類があるのか(白・ブラウン・黒)
- 辛さはどこから来るのか。水で練ると辛くなるのはなぜか。熱湯や酢で練るとどうなるのか
- 和からし・イエローマスタード・ディジョンマスタード・粒マスタードは、作り方と原材料がどうちがうのか
- からし(マスタード)のアレルギーは、日本・EU・カナダ・米国で表示のルールがどうちがうのか
結論
- からし(マスタード)の種は主に3種類です。白からし(シナピス・アルバ)、ブラウン(からし菜、ブラッシカ・ユンセア)、黒からし(ブラッシカ・ニグラ)。和からしは辛みの強いブラウン系(オリエンタル種)の種から作られます
- 種そのものや粉は、ほとんど辛くありません。水を加えると、種の中の酵素「ミロシナーゼ」が、辛くない成分(シニグリン・シナルビン)を分解して、辛み成分を作ります。ブラウンと黒からしではアリルイソチオシアネート(揮発しやすく、鼻にツンとくる)、白からしでは4-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート(揮発しにくく、辛みが穏やか)です
- ミロシナーゼは熱と酸に弱い酵素です。白からしの酵素は70℃で10分加熱すると働きが残りませんでした(実験の結果)。白からしの酵素はpH4.5でほぼ働かなくなることも報告されています。メーカーは40℃くらいのぬるま湯で溶いて4〜5分おく使い方を案内しています
- フランスの法令では、「ディジョンマスタード」は黒かブラウンの種だけで作り、種の皮を除いたもの、「昔風(粒)マスタード」は皮ごと粗くひいたもの、と決まっています。日本の商品の原材料名は、粉からしの「からし」だけのものから、食塩・でん粉・植物油・ソルビット・酸味料・香料などが入るチューブのものまでさまざまです
- からし(マスタード)は、EU・英国・スイス・カナダではアレルギー表示の義務がありますが、日本(義務9品目・推奨19品目)と米国(9品目)では対象外です。フランスの子どもの調査では食物アレルギーの原因の6%を占めた一方、日本の2023年の全国調査では6,033例中1例でした(調査の方法がちがうため、数字は直接くらべられません)
この記事で紹介しているもの
| こんな人に | 紹介しているもの | 選んだ理由(原材料など) | 場所 |
|---|---|---|---|
| 粉から練って、和からしの辛さを確かめたい | 山清 有機 鬼からし(30g) | 原材料名は「有機からし(カナダ産)」だけ | 和からしとチューブの練りからし |
| 添加物のないディジョンマスタードと比べたい | ビオスター 有機ディジョンマスタード(200g) | 原材料名は有機マスタード・有機醸造酢・食塩の3つ | ディジョンマスタード |
| 砂糖を使わない粒マスタードを試したい | ビオスター 有機粒マスタード(200g) | 原材料名は有機マスタード・有機醸造酢・食塩の3つ | 粒マスタード |
| 近くの道の駅で買いたい(大阪) | 月のアムリタ 粒マスタード(店頭のみ) | マスタードシード・3種類の酢・食塩。砂糖・添加物の表示なし | 粒マスタード |
からしの種は3種類
白・ブラウン・黒
からし(マスタード)は、アブラナ科の植物の種です。エスビー食品の説明でも、からしは「アブラナ科のからし菜の種子を粉末にしたもの」とされています。料理に使われる種は、主に次の3種類です(カナダ保健省の評価書、Lietzow ら2021年の総説)。
| 白からし | ブラウン(からし菜) | 黒からし | |
|---|---|---|---|
| 学名 | シナピス・アルバ(Sinapis alba) | ブラッシカ・ユンセア(Brassica juncea) | ブラッシカ・ニグラ(Brassica nigra) |
| ほかの呼び名 | イエローマスタード、洋からし | オリエンタルマスタード、和からしの原料 | ブラックマスタード |
| 種の色 | 薄いわら色の黄色 | 茶色(英語名のとおり) | 黒っぽい赤茶色 |
| 辛みのもと | シナルビン | シニグリン | シニグリン |
| できる辛み成分 | 4-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート | アリルイソチオシアネート | アリルイソチオシアネート |
| 辛さ | 穏やか | 強い | 白・ブラウンより強く、少し苦い |
| 主な使われ方 | アメリカ式の黄色いマスタード、ピクルスやソーセージ | 和からし、ディジョンマスタード | ディジョンマスタード(法令で使える種の一つ) |
- 黒からしは、さやがはじけやすく機械で収穫しにくいため、米国や欧州では使われにくくなりました。ブラウンのからし菜は背が高く、さやがはじけにくいので、機械で収穫しやすいとされています(Lietzow ら2021年)
- ブラウンのからし菜は、黒からしと、かぶ・白菜の仲間(ブラッシカ・ラパ)が自然に交わってできた種だと考えられています。朝鮮半島出身の植物学者、禹長春(ウ・ジャンチュン。論文は日本名の「U Nagaharu」で発表)が1935年に示した「禹(う)の三角形」と呼ばれる関係で、その後の遺伝子の研究でも支持されています
- 日本では、からし菜は葉を食べる野菜としても使われます。食品成分表の「からしな」の別名は「葉がらし」「菜がらし」です
どこで作られている?
- 2019年の世界のからしの種の生産は、ネパールが32%超、ロシア25%、カナダ21%でした(Lietzow ら2021年)
- カナダ保健省は、カナダが世界の生産の約35%、輸出の約50%を占めるとしています(2010年ごろの評価書)
- 日本の市販品の原材料名にも「からし(カナダ)」とあるものが多く、エスビー食品の粉からし・チューブの和からしは、どちらもカナダ産のからしを使っています
和からしと洋からし
日本では、辛みの強い「和からし」と、穏やかな「洋からし」を分けて呼ぶことがあります。エスビー食品は、和からしを「日本古来からの辛みが強い」もの、洋からしを「欧米から渡来したマイルドな辛み」のものと説明しています。
日本でも古くから使われていて、平安時代初めの儀式や制度をまとめた「延喜式」には、税として納める作物の一つとして「芥子(からし)」の名前があります(エスビー食品の解説)。
水で練ると辛くなるしくみ

種の中では「別々の部屋」にある
からしの種は、そのままかじっても、粉のままなめても、あまり辛くありません。種の中には、辛みのもとになる成分(グルコシノレートという成分の仲間)と、それを分解する酵素「ミロシナーゼ」が、別々の細胞や細胞の中の別の場所に分かれてしまわれています。
種を砕くと両方が出会い、そこに水が加わると、ミロシナーゼが働いて辛み成分ができます。水はこの反応の材料そのものです(Lietzow ら2021年、Barba ら2016年)。
- 和からし・黒からし:シニグリン → アリルイソチオシアネート(アリルからし油)。揮発しやすい(気体になりやすい)ので、鼻にツンとくる刺激になります
- 白からし:シナルビン → 4-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート(ベンジルからし油)。揮発しにくいので、白からしのほうが辛みが穏やかです(エスビー食品の解説)。この成分は水の中で分解しやすく、時間がたつと辛くない成分に変わっていきます(Choubdar ら2010年など)
湿った空気だけでも反応は進みます。からしの粉を湿度の高い容器に入れた実験では、湿度と温度が高いほど、アリルイソチオシアネートが多く速く出てきました(Dai ら2014年)。
辛さの感じ方は、成分の量と比べた研究があります。いくつかのブランドの市販のマスタード(甘口から激辛まで)を調べた研究では、アリルイソチオシアネートが多い商品ほど、人が感じる辛さが強く、長く続きました(Eib ら2020年)。
アリルイソチオシアネートは、わさびやホースラディッシュの辛みと同じ仲間の成分です。神経にある「TRPA1」(発表時の名前は ANKTM1)という受け口を刺激して、痛みのような刺激として感じられることが、2004年に動物の細胞の実験で示されました(Jordt ら2004年)。唐辛子の辛さ(カプサイシン)は、しくみがちがいます(唐辛子の記事で書いています)。
溶いてすぐは苦い
エスビー食品は、粉からしを溶いてすぐは苦みを感じることがあり、それは苦味成分のシニグリンが残っているためで、時間がたつと辛味成分(アリルからし油)に変わると説明しています。
熱湯・酢で練ると辛くなりにくい
ミロシナーゼは酵素なので、熱と酸の影響を受けます。
| 条件 | 分かっていること | 出典 |
|---|---|---|
| ぬるま湯 | 白からしの種のミロシナーゼは、60℃でいちばんよく働いたという報告がある | Lietzow ら2021年(Van Eylen らの研究の紹介) |
| 熱い湯・加熱 | 70℃で10分加熱すると、酵素の働きが白からし0%、黒からし59%、ブラウン35%しか残らなかった | Okunade ら2015年(試験管の実験) |
| 酢(酸性) | 白からしのミロシナーゼは、pH5.0で最大の約50%、pH4.5ではほぼ働かない | BRENDA(酵素のデータベース) |
| 酢(酸性) | 酸性では、辛いイソチオシアネートではなく、辛くない「ニトリル」という成分ができやすくなる | Barba ら2016年 |
メーカーの案内は、粉からし小さじ2を、40℃くらいのぬるま湯か水小さじ1で溶き、ラップをして4〜5分おくというものです。水でも溶けますが、ぬるま湯を使うと辛みが出やすい、としています(エスビー食品)。
(ここで試した実験の多くは、酵素を取り出したり、条件を決めて試験管の中で調べたものです。台所で練るときの温度と時間とは同じではありません)
和からし・イエロー・ディジョン・粒のちがい
食品成分表(八訂 増補2023年)では、粉からし100gの食塩相当量は0.1gですが、練りからしは7.4g、練りマスタード3.0g、粒入りマスタード4.1gです。5gあたりに直すと、練りからしで約0.4g、粒入りマスタードで約0.2gです(成分表の値からの計算)。食塩のとり方は、食塩摂取量の記事にまとめています。
作り方と原材料の比較
| 種類 | 主な種 | 作り方 | 原材料名の例(メーカー公式・販売ページ、2026年10月確認) |
|---|---|---|---|
| 粉からし(和からし) | ブラウン(オリエンタル種) | 種をひいて粉にする。使う前に水で練る | エスビー食品「漬物やおでんに合う辛さひきたつ和からし」:からし/エスビー食品「からし 35g」(缶):からし(カナダ)/着色料(ターメリック) |
| チューブの練りからし | ブラウン系 | 練った状態で売る。保存や食感のための材料が入ることが多い | エスビー食品「本生和からし」:からし(カナダ)、食塩、デキストリン、コーン油、でん粉/ソルビット、酸味料、香料、増粘剤(キサンタン)、酸化防止剤(ビタミンC) |
| イエローマスタード(アメリカ式) | 白からし | 白からしを酢と香辛料で練り、ターメリック(うこん)で黄色く色づけすることが多い | エスビー食品「マスタード(スクイズパック)」:からし、醸造酢、食塩、パプリカ、ガーリック/着色料(ターメリック)、増粘剤(キサンタン) |
| ディジョンマスタード | 黒かブラウンだけ(フランスの法令) | 種の皮を除いてすりつぶし、酢・ワインなどで練る | MAILLE「ディジョンマスタード」(エスビー食品):からし、醸造酢、食塩/酸味料、酸化防止剤(亜硫酸塩)/ビオスター「有機ディジョンマスタード」:有機マスタード、有機醸造酢、食塩 |
| 粒マスタード(昔風) | 黒かブラウンだけ(フランスの法令) | 皮ごと粗くひく(ふるわない) | MAILLE「種入りマスタード」(エスビー食品):醸造酢、からし、食塩、白ワイン、砂糖/香料、酸味料、酸化防止剤(亜硫酸塩)/月のアムリタ「粒マスタード」:マスタードシード・酢・白ワインビネガー・シェリービネガー・食塩 |
- 日本の原材料名では、種の種類に関係なく「からし」「マスタード」「マスタードシード」と書かれます。どの種を使っているかは、原材料名からは分かりません
- 原材料名は、使った重さの多い順に書きます。MAILLE の「種入りマスタード」は醸造酢が最初で、月のアムリタの粒マスタードはマスタードシードが最初です
- 「酸化防止剤(亜硫酸塩)」はワインやドライフルーツにも使われる添加物で、EU ではアレルギー表示の対象(1kgあたり10mgを超える場合)になっています(添加物データベース)
- 「香料」については香料の記事、「ソルビット」などの甘味のある材料については甘味料の記事で書いています
和からしとチューブの練りからし
粉からしは、原材料名が「からし」だけのものが多く、自分で水を加えて練ります。チューブの練りからしは、すぐ使える代わりに、食塩・でん粉・デキストリン・植物油・ソルビット・酸味料・香料・増粘剤などが加わります。
同じ「粉からし」でも、着色料(ターメリック、うこん)で色をそろえているものと、からしだけのものがあります。黄色い色が「からしの色」とは限らないので、原材料名を見るのが確実です。
成分表の「練りからし」は和風と洋風の両方を含む値です。
ディジョンマスタード
フランスには、マスタードの名前の使い方を決めた政令(2000年7月6日の政令2000-658号)があります。この中で、「ディジョンマスタード(moutarde de Dijon)」と名乗れる条件は次のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 種 | 黒からしかブラウンのからし菜の種だけ(白からしは使えない)。油を絞っていない種 |
| 皮 | ふるいにかけて皮を除く。残る皮は製品の重さの2%まで |
| 中身の濃さ | 種に由来する固形分が22%以上、種に由来する脂質が8%以上 |
| 練る液体 | 酢(発酵酢・ワインビネガー・アルコール酢・シードル酢)、未熟なぶどうの果汁(ヴェルジュ)、ぶどう果汁、ワイン。水は液体全体の4分の3まで |
| 香り | 天然の香りづけは使えるが、からしの風味のもの(アリルイソチオシアネートなど)は加えてはいけない。穀物の粉や皮を足すのも禁止 |
この政令の条件は、種・皮・中身・液体についてのもので、「ディジョンの町で作ること」は条件に入っていません。また、ほかの EU の国で合法に作られたマスタードは、フランスでも売ってよいとしています。エスビー食品も、ディジョンマスタードは「ディジョンの伝統的な製法」で作られ、細かい基準を満たしたものだけがそう呼ばれる、と説明しています。
ブラウンの種を使った研究では、同じ種から作っても、皮を除いてなめらかにするディジョン風は、粒を残す製法よりも、シニグリンと辛み成分(イソチオシアネート)の量が加工で大きく変わりました(Cools ら2018年、抄録)。
粒マスタード
粒マスタードは、種を細かくせずに、皮ごと粗くつぶして作ります。フランスの政令では「昔風マスタード(moutarde à l’ancienne)」が、黒かブラウンの種だけを、ふるいにかけずに粗くひいたもので、種に由来する固形分18%以上・脂質5%以上と決まっています。
エスビー食品は、種皮には辛みのもとになる酵素がほとんど含まれないので、皮ごと使う粒入り(オールドタイプ)は風味がマイルドになる、と説明しています。
日本で売られている粒マスタードの原材料名は、商品によってかなりちがいます。
- 大阪市浪速区日本橋の月のアムリタ(レガサルト株式会社)の粒マスタードは、原材料名が「マスタードシード・酢・白ワインビネガー・シェリービネガー・食塩」の5つです。砂糖・添加物の表示はありません。内容量は「1瓶」でグラム数の表示はなく、メーカーの通販は見つかりませんでした。道の駅 いずみ山愛の里(大阪府和泉市)の店頭で売られています
- MAILLE の「種入りマスタード」は、醸造酢・からし・食塩・白ワイン・砂糖に、香料・酸味料・酸化防止剤(亜硫酸塩)が入ります
- エスビー食品のチューブの「つぶ入りマスタード」は、からし・リンゴ濃縮果汁・醸造酢・コーン油・食塩・はちみつに、ソルビット・酸味料・増粘剤が入ります
イエローマスタード
ホットドッグに使うアメリカ式の黄色いマスタードは、白からしの種を酢と香辛料で練り、ターメリック(うこん)で色をつけたものが多い、とされています(Lietzow ら2021年)。カナダ保健省の評価書も、白からしの種はブラウンより大きく、辛さがずっと弱く、北米式のマスタードの主な原料だとしています。白からしの辛み成分は揮発しにくいので、鼻にツンとくる辛さは強くありません。
日本で売られているものでは、エスビー食品の「マスタード(スクイズパック)」の原材料名に、からし・醸造酢・食塩・パプリカ・ガーリックと、着色料(ターメリック)・増粘剤(キサンタン)があります。
マスタードのアレルギー
どんなアレルギーか
マスタードのアレルギーは、からしの種のたんぱく質に体の免疫が反応して起こる食物アレルギーです。辛み成分(アリルイソチオシアネート)による刺激とは別のものです。
- 主な原因のたんぱく質は、白からしの「Sin a 1」と、ブラウンの「Bra j 1」です。どちらも「2Sアルブミン」という種類で、形がよく似ているため、1種類のからしに反応する人は、ほかの種類のからしにも反応しやすいとされています(カナダ保健省の評価書)
- Sin a 1 は熱に強く、消化酵素(トリプシンなど)でも分解されにくいたんぱく質です。からしのアレルゲンは熱や加工に強いとされています(カナダ保健省の評価書、Løvik ら2005年)
- 症状が出た量はとても少なく、フランスの子どもの試験では、マスタードの調味料40mg(からしの種13.5mg、たんぱく質約0.8mgに相当)で症状が出た例がありました(Morisset ら2003年、カナダ保健省の評価書による紹介)
- 皮膚の検査や血液検査で反応が出ても、実際に食べて症状が出るとは限りません。フランスで、からしに反応する3〜20歳の30人に食べる試験をしたところ、症状が出たのは7人(23%)でした。著者は、検査だけで除去をすすめず、食べる試験で確かめる必要があるとしています(Morisset ら2003年)
- スペインで主に大人38人のからしアレルギーの人を調べた研究では、10.5%が全身のアナフィラキシーを経験していて、97.4%がよもぎの花粉にも反応していました。ほかのアブラナ科の植物、ナッツ、豆、バラ科の果物にも反応(感作)している人が多く、著者は「マスタード・よもぎ症候群」を提案しています(Figueroa ら2005年)
国・調査ごとの数字
マスタードのアレルギーがどのくらい多いかは、国と調査の方法で大きくちがいます。
| 国・地域 | 調査 | 結果 |
|---|---|---|
| フランス | 食べる試験で確かめた食物アレルギーの子ども544人(Rancé ら1999年) | 原因の6%がマスタードで、卵・落花生・牛乳に次ぐ4番目 |
| フランス | 研究論文の背景の記述(Morisset ら2003年) | 子どもの食物アレルギーの1.1% |
| ドイツ語圏 | アナフィラキシー(重いアレルギー反応)の登録(Worm ら2016年) | マスタードは「まれな原因」 |
| 米国 | 2歳前の子どものアナフィラキシーの症例報告(Katz ら2026年) | 米国ではあまり知られていない原因で、表示義務もないと指摘 |
| 日本 | 2023年に医療機関を受診した即時型食物アレルギー6,033例(消費者庁 令和6年度報告書) | マスタードは1例 |
(フランスの研究は、アレルギーの専門施設に来た子どもを対象にしたもので、国全体の人数の割合ではありません。日本の調査は、食べて60分以内に症状が出て受診した例を、協力した医師が報告したものです)
表示のルールは国でちがう
| 国・地域 | マスタードの表示 | ルール |
|---|---|---|
| EU | 義務 | 食品情報規則(1169/2011)の附属書IIの14品目の一つ「マスタードとその製品」。原材料名の中で、太字など、ほかと区別できる書き方で強調する |
| 英国 | 義務 | EU と同じ14品目 |
| スイス | 義務 | 14品目の一つ |
| カナダ | 義務 | 「優先アレルゲン」11品目の一つ。2011年2月に規則の改正を公表し、事業者に18か月の準備期間をおいて2012年から適用。カナダ保健省は2008年の意見募集のあと、科学的な評価をして追加を決めた |
| 米国 | 対象外 | 主要アレルゲンは乳・卵・魚・甲殻類・木の実・小麦・落花生・大豆・ごまの9品目(ごまは2023年1月から) |
| 日本 | 対象外 | 表示義務の「特定原材料」9品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生・カシューナッツ)、表示推奨の「特定原材料に準ずるもの」19品目のどちらにも入っていない(2026年4月時点) |
| オーストラリア・ニュージーランド、韓国、中国 | 対象外 | 消費者庁の委託調査(2023年度)による |
日本のラベルで気をつけたいこと
日本では、マスタードはアレルギー表示の対象ではないので、ラベルの「アレルギー物質」の欄には出てきません。たとえば上で紹介した有機ディジョンマスタードの販売ページでは、アレルギー物質は「小麦」だけが書かれています。
さらに、日本の食品表示基準では、香辛料の重さの合計が原材料全体の2%以下なら、「香辛料」「混合香辛料」とまとめて書いてよいことになっています。消費者庁の Q&A には、レトルトカレーに入れたマスタード(0.3%)を「その他香辛料」にまとめる例が出ています。カレー、ソース、ドレッシング、ソーセージなどの「香辛料」に、マスタードが入っていても名前が出ないことがあります。
マスタードのアレルギーがある人は、原材料名に「からし」「マスタード」がないかに加えて、「香辛料」と書かれた商品はメーカーに問い合わせるのが確実です。マスタードが入ることがある食品として、海外の総説はバーベキューソース・カレーソース・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシング・ソーセージなどの加工肉・揚げ物用の粉などを挙げています。
まとめ
| 論点 | 分かっていること | 根拠の強さ |
|---|---|---|
| 種の種類 | 白からし・ブラウン(からし菜)・黒からしの3種類。和からしはブラウン系 | 総説・メーカーの解説・カナダ保健省 |
| 辛さのしくみ | 水が入るとミロシナーゼが働き、シニグリン→アリルイソチオシアネート(ツンとくる)、シナルビン→4-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート(穏やか) | 総説・実験の論文 |
| 熱湯・酢 | 酵素は熱と酸で働きにくくなる。メーカーは40℃くらいのぬるま湯で溶いて4〜5分おく使い方を案内 | 試験管の実験・酵素のデータベース・メーカーの案内 |
| ディジョン・粒 | フランスの政令で、ディジョンは黒かブラウンの種だけ・皮を除く、昔風(粒)は皮ごと粗くひく | 法令 |
| 原材料名 | 粉からしは「からし」だけのものも。チューブは食塩・でん粉・油・ソルビット・酸味料・香料など。ディジョンには亜硫酸塩が入るものがある | メーカー公式の表示 |
| 食塩 | 100gあたり 粉からし0.1g、練りからし7.4g、練りマスタード3.0g、粒入りマスタード4.1g | 食品成分表 |
| アレルギー表示 | EU・英国・スイス・カナダは義務、日本・米国は対象外。日本では「香辛料」にまとめて書かれることがある | 法令・消費者庁の資料 |
| どのくらい多いか | フランスの子どもの研究では原因の6%。日本の2023年の全国調査では6,033例中1例 | 観察研究・全国調査(方法がちがい比較できない) |
紹介した商品:
| 商品 | 選んだ理由 | 楽天市場 |
|---|---|---|
| 山清 有機 鬼からし 30g | 原材料名は有機からしだけ。自分で練って辛さを確かめられる | 楽天市場で見る(ナチュルネスパ) PR |
| ビオスター 有機ディジョンマスタード 200g | 有機マスタード・有機醸造酢・食塩の3つ。亜硫酸塩の表示なし | 楽天市場で見る(楽天24) PR |
| ビオスター 有機粒マスタード 200g | 有機マスタード・有機醸造酢・食塩の3つ。砂糖の表示なし | 楽天市場で見る(楽天24) PR |
| 月のアムリタ 粒マスタード | マスタードシード・3種類の酢・食塩。砂糖・添加物の表示なし | 通販なし(道の駅 いずみ山愛の里の店頭) |
(価格・原材料は2026年10月1日に販売ページで確認。変わることがあります)
マスタードは「辛い調味料」として同じ棚に並びますが、種の種類、練り方、加える液体で、辛さも中身もちがいます。裏面の原材料名で、何が入っているかを確かめてみてください。
参考にした資料
- Lietzow J(2021)Biologically Active Compounds in Mustard Seeds: A Toxicological Perspective. Foods. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34574199/
- Health Canada(2010ごろ、アーカイブ)Mustard: A Priority Food Allergen in Canada – A Systematic Review. https://www.canada.ca/en/health-canada/services/food-nutrition/reports-publications/food-labelling/mustard-priority-food-allergen-canada-systematic-review.html
- Health Canada「Food Allergen Labelling」 https://www.canada.ca/en/health-canada/services/food-nutrition/food-labelling/allergen-labelling.html
- Barba FJ ら(2016)Bioavailability of Glucosinolates and Their Breakdown Products: Impact of Processing. Front Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27579302/
- Okunade OA ら(2015)Thermal and pressure stability of myrosinase enzymes from black mustard, brown mustard and yellow mustard seeds. Food Chem. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25977054/
- Choubdar N ら(2010)Supercritical fluid chromatography of myrosinase reaction products in ground yellow mustard seed oil. J Food Sci. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20546392/
- Dai R, Lim LT(2014)Release of allyl isothiocyanate from mustard seed meal powder. J Food Sci. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24313968/
- Eib S ら(2020)Relationship between mustard pungency and allyl-isothiocyanate content. J Food Sci. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32844444/
- Cools K, Terry LA(2018)The effect of processing on the glucosinolate profile in mustard seed. Food Chem. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29478552/
- Jordt SE ら(2004)Mustard oils and cannabinoids excite sensory nerve fibres through the TRP channel ANKTM1. Nature. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14712238/
- BRENDA Enzyme Database「EC 3.2.1.147 thioglucosidase(Sinapis alba)」 https://www.brenda-enzymes.org/enzyme.php?ecno=3.2.1.147
- Xue JY ら(2020)Maternal Inheritance of U’s Triangle and Evolutionary Process of Brassica Mitochondrial Genomes. Front Plant Sci. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32595682/
- Décret n° 2000-658 du 6 juillet 2000 relatif aux dénominations des moutardes(フランス政令、官報 2000年7月14日). FAOLEX https://faolex.fao.org/docs/pdf/Fra20682.pdf
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
- エスビー食品「スパイス&ハーブ検索 マスタード/からし」 https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00043.html 、お客様相談センター Q&A(00346・00348・00349)、お客様相談センターたより「からしは何からできている?のお話」、各商品ページ(原材料名)
- Rancé F ら(1999)Food hypersensitivity in children: clinical aspects and distribution of allergens. Pediatr Allergy Immunol. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10410915/
- Morisset M ら(2003)Prospective study of mustard allergy: first study with double-blind placebo-controlled food challenge trials (24 cases). Allergy. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12708976/
- Figueroa J ら(2005)Mustard allergy confirmed by double-blind placebo-controlled food challenges. Allergy. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15575930/
- Løvik M ら(2005)Mustard – an important food allergen?(ノルウェー語). Tidsskr Nor Laegeforen. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15776067/
- Worm M ら(2016)Food-induced anaphylaxis – data from the anaphylaxis registry(ドイツ語). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27255298/
- Katz ら(2026)Mustard-Induced Anaphylaxis in a 23-Month-Old Male. Cureus. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42732437/
- 消費者庁「令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書(即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査)」(2024年9月) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(2026年4月 カシューナッツを特定原材料に追加) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
- 消費者庁 委託調査「諸外国における食物アレルギーの表示対象品目等に関する調査事業 報告書」(2023年度、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
- 消費者庁「食品表示基準Q&A」加工-64(令和7年3月28日改正版)
- Regulation (EU) No 1169/2011 on the provision of food information to consumers, Article 21・Annex II. https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2011/1169/oj/eng
- 米国食品医薬品局(FDA)「Food Allergies」 https://www.fda.gov/food/food-labeling-nutrition/food-allergies
- 英国食品基準庁(FSA)「Allergen guidance for food businesses」 https://www.food.gov.uk/business-guidance/allergen-guidance-for-food-businesses
- 楽天市場 やさしいくらし ナチュルネスパ「山清 鬼からし(粉からし)有機JAS認定」、楽天24「ビオスター 有機ディジョンマスタード(200g)」「ビオスター 有機粒マスタード(200g)」販売ページ(2026年10月1日確認)