トマトケチャップとは? JAS の「特級」、トマトソースとのちがい、リコピンは加熱と油で吸収が変わるのかを確かめる

PR この記事には、楽天市場のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。
オムライスやナポリタンに欠かせないトマトケチャップ。ラベルには「特級」「トマトケチャップ」「糖類(砂糖・ぶどう糖果糖液糖、ぶどう糖)」「酸化防止剤(V.C)」などの言葉が並びます。
「ケチャップはリコピンがたっぷり」「加熱したトマトのほうがリコピンをとれる」「リコピンは前立腺がんを防ぐ」という話もよく見かけます。
この記事では、次のことを国の規格・法令と論文で確かめます。
- 「トマトケチャップ」と名乗れるのはどんなものか。トマトソース・チリソース・トマトピューレーとは何がちがうのか
- JAS 規格の「特級」と「標準」は何がちがうのか
- 甘みの原料(砂糖・ぶどう糖果糖液糖)と、塩・糖の量
- 「酸化防止剤(ビタミンC)」「V.C」という表示の意味
- リコピンは、加熱や油で吸収が変わるのか(人の試験)
- リコピンと前立腺がん・心臓病の研究は、どこまで分かっているのか。国や国際機関はどう評価しているのか
結論
- 「トマトケチャップ」は、食品表示基準で濃縮トマトに食塩・香辛料・食酢・砂糖類・たまねぎかにんにくを加え、可溶性固形分(糖度計で測る、溶けている成分の割合)が25%以上のものと決まっています。定義に合わない食品は「トマトケチャップ」と名乗れません。25%未満の調味品は「トマトソース」の範囲です
- JAS 規格(JAS 1419)の「特級」は可溶性固形分30%以上、「標準」は25%以上。原材料は両方とも、濃縮トマト・たまねぎ・にんにく・食塩・香辛料・醸造酢・砂糖類の7つだけです。JAS の格付けを受けるかどうかは事業者の任意です
- 食品成分表では、ケチャップ100gに食塩相当量3.1g・糖(利用可能炭水化物)22.7g。大さじ1杯(約17g)なら食塩約0.5g・糖約3.9gです
- リコピンは、生のトマトより、加熱・濃縮したトマト加工品を油といっしょに食べたほうが血液中の量が増えやすいことが、人の試験で繰り返し確かめられています(ただし、どれも数人〜数十人の小さな試験で、血液中の量が増えることが病気を防ぐことの証明ではありません)
- 前立腺がんは、観察研究のまとめでは「リコピンを多くとる人でリスクがやや低い」という結果が多い一方、リコピンのランダム化比較試験のまとめでは、前立腺がんの発症や PSA に、はっきりした差は出ていません。世界がん研究基金(WCRF)は2007年の「おそらく確実」から、2014年に「限られた証拠で結論は出せない」に引き下げました。米国 FDA は2005年に「リコピンそのもの」についての表示を、信頼できる根拠がないとして認めていません
- 機能性表示食品にはリコピンを使った届出がありますが、国が審査して許可したものではありません。EU では、リコピンの健康強調表示は申請されたものがすべて不認可です
この記事で紹介しているもの
| こんな人に | 紹介しているもの | 場所 |
|---|---|---|
| 甘みが砂糖だけで、にんにく入りのケチャップを試したい | ユーサイド トマトケチャップ(300g) | 原材料名の読み方 |
| 添加物を使っていない、有機 JAS のケチャップと比べたい | 光食品 有機トマトケチャップ(300g) | 原材料名の読み方 |
| 塩も砂糖も自分で決めて、トマトの味だけを足したい | アルチェネロ 有機トマトピューレー(200g×3) | 塩と糖の量 |
「トマトケチャップ」と名乗れる条件
食品表示基準の定義
トマトケチャップの定義は、国の「食品表示基準」(内閣府令)の別表第三に書かれています。
- 濃縮トマトに、食塩・香辛料・食酢・砂糖類・たまねぎ又はにんにくを加えて調味したもので、可溶性固形分が25%以上のもの
- または、これに酸味料(かんきつ類の果汁を含む)・調味料(アミノ酸等)・糊料などを加えたもので、可溶性固形分が25%以上のもの
「濃縮トマト」は、トマトを破砕して搾り、または裏ごしして、皮や種を除いたもの(トマトの搾汁)を濃縮したもので、塩を除いた可溶性固形分が8%以上のものです。
同じ基準の別表第五には「トマトケチャップ」が入っています。これは、定義に合う食品以外は、この名前を表示してはいけないという意味です(第三条)。
可溶性固形分とは
可溶性固形分は、液体に溶けている成分(主に糖・酸・塩など)の割合です。JAS 規格では、20℃で糖用屈折計の目盛りを読み取り、パーセントで表した値と決めています。いわゆる「糖度(Brix)」と同じ測り方です。
トマトピューレーとトマトペーストは、ここから食塩分を引いた「無塩可溶性固形分」で分けます。
トマト加工品のちがい
食品表示基準と JAS 1419 の定義を並べると、次のようになります。
| 名前 | 中身(定義の要点) | 濃さの基準 |
|---|---|---|
| トマトジュース | トマトの搾汁、またはそれに食塩を加えたもの。濃縮トマトを薄めて戻したものは「(濃縮トマト還元)」と書く | 無塩可溶性固形分4.5%以上(JAS) |
| トマトピューレー | 濃縮トマト(少量の食塩・香辛料・野菜・レモン・pH 調整剤を加えたものを含む) | 無塩可溶性固形分24%未満 |
| トマトペースト | 同上 | 無塩可溶性固形分24%以上 |
| トマトケチャップ | 濃縮トマト+食塩・香辛料・食酢・砂糖類・たまねぎ又はにんにく | 可溶性固形分25%以上 |
| トマトソース | 濃縮トマト(刻んだトマトを加えてもよい)+食塩・香辛料。食酢・砂糖・油・酒・野菜なども加えてよい | 可溶性固形分8%以上25%未満 |
| チリソース | 種を残したまま皮をむいて刻んだトマトを濃縮し、食塩・香辛料・食酢・砂糖類を加えたもの | 可溶性固形分25%以上(JAS では30%以上) |

(食品表示基準 別表第三、JAS 1419:2026)
ケチャップとトマトソースの境目は、可溶性固形分25%です。ケチャップとチリソースは、どちらも25%以上ですが、チリソースは種を残したトマトを使う点がちがいます。
なお、ここでいう「チリソース」はトマト加工品の名前です。食品成分表でも、チリソース(トマト加工品類)と、とうがらしの辛いソースのチリペッパーソース(辛味調味料類、タバスコソース等を含む)は別の食品として載っています。
JAS の「特級」と「標準」
JAS(日本農林規格)の「トマト加工品」(JAS 1419)は、1979年に制定され、最新の改正は2026年2月16日(4月1日施行)です。ケチャップには「特級」と「標準」の2つの等級があります。
| 項目 | 特級 | 標準 |
|---|---|---|
| 性状 | 香味と色が優良で、異味異臭がない。粒子が細かく均一で、粘りが適度 | 香味と色が良好で、異味異臭がない。粒子が細かく均一で、粘りが適度 |
| 可溶性固形分 | 30%以上 | 25%以上 |
| トマト以外の野菜の割合 | 1%以上5%未満(両方共通) | |
| 使える原材料 | 濃縮トマト・たまねぎ・にんにく・食塩・香辛料・醸造酢・砂糖類の7つだけ(両方共通) | |
| 添加物 | 国際食品規格(コーデックス)の添加物の一般規格に合うものだけ。使用量を記録し、合っていることを消費者に伝える(両方共通) |
(JAS 1419:2026 表4)
- 特級と標準のちがいは、濃さ(可溶性固形分)と、香味・色の評価です
- 使ってよい原材料は、特級も標準も同じ7つです。食品表示基準の定義では、酸味料・調味料(アミノ酸等)・糊料なども加えられますが、JAS ではこれらの原材料は使えません
- JAS では、使う濃縮トマトのリコピンの量にも基準があります。塩を除いた可溶性固形分4.5%に換算して70mg/kg以上(7×10mg/kg)です。リコピンが少ないトマトは、JAS のケチャップの原料になりません
JAS の格付けは、事業者が受けるかどうかを選ぶ制度です。JAS マークや「特級」の表示がないケチャップでも、食品表示基準の定義に合っていれば「トマトケチャップ」と名乗れます。等級の表示がないことは、そのまま品質が低いという意味にはなりません。
原材料名の読み方
重さの順、トマトは「トマト」と書ける
原材料名は、使った重さの多い順に書く決まりです(食品表示基準 第三条)。ケチャップでは、トマトの搾汁や濃縮トマトを「トマト」と書いてよいことになっています(別表第四)。ラベルに「トマト」とあっても、生のトマトをそのまま煮たとは限りません。
甘みの原料:砂糖か、ぶどう糖果糖液糖か
ケチャップの甘みには、砂糖のほか、ぶどう糖果糖液糖(異性化液糖)やぶどう糖が使われることがあります。メーカーの公式ページの原材料名をくらべると、次のとおりです。
| ユーサイド トマトケチャップ | 光食品 有機トマトケチャップ | カゴメ トマトケチャップ | |
|---|---|---|---|
| 原材料名 | トマト、砂糖、醸造酢(りんごを含む)、たまねぎ、食塩、香辛料、にんにく/酸化防止剤(ビタミンC) | 有機トマト、糖類(有機砂糖、麦芽水飴)、有機醸造酢(有機米酢、有機りんご酢)、食塩、有機たまねぎ、有機にんにく、香辛料 | トマト(輸入又は国産(5%未満))、糖類(砂糖・ぶどう糖果糖液糖、ぶどう糖)、醸造酢、食塩、たまねぎ、香辛料 |
| 甘みの原料 | 砂糖 | 有機砂糖・麦芽水飴 | 砂糖・ぶどう糖果糖液糖・ぶどう糖 |
| 添加物(「/」の後ろ) | 酸化防止剤(ビタミンC) | なし | なし |
| にんにく | 入っている | 入っている | 入っていない |
| 100gあたり(表示値) | 136kcal、炭水化物31.8g、食塩相当量3.0g(推定値) | 122kcal、炭水化物28.7g、ナトリウム1.1g(食塩相当量に換算すると約2.8g) | 118kcal、炭水化物27.9g、食塩相当量3.3g、リコピン18mg |
(ユーサイド・カゴメは各社の公式ページ、光食品は楽天市場「楽天24」の商品ページの表示。2026年10月1日確認。食塩相当量はナトリウム×2.54で換算)
- 「糖類(砂糖・ぶどう糖果糖液糖、ぶどう糖)」のように、同じ種類の原材料をまとめて「糖類」と書き、かっこの中に中身を書く書き方は、食品表示基準で認められています
- ぶどう糖果糖液糖・果糖ぶどう糖液糖・高果糖液糖は、まとめて「異性化液糖」と書くこともできます。作り方や名前のちがいは異性化液糖の記事で詳しく書いています
- どの甘み原料が体によい・悪いと決めた公的機関の評価はありません。果糖そのものの話は果物の果糖の記事、甘味料の表示ルールは甘味料の記事をどうぞ
ラベルの文字だけで選ぶなら、上の表のように「/」の後ろ(添加物)と甘みの原料、にんにくが入っているかの3つを見ると、ちがいが分かりやすくなります。
塩と糖の量
食品成分表でくらべる
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」で、トマト加工品とほかの調味料の100gあたりの食塩相当量と糖をくらべました。
| 100gあたり | エネルギー | 食塩相当量 | 糖(利用可能炭水化物・単糖当量) | 食物繊維 | カリウム |
|---|---|---|---|---|---|
| トマト(赤色トマト・生) | 20kcal | 0g | 3.1g | 1.0g | 210mg |
| トマトピューレー | 44kcal | 0g | 5.2g(推計) | 1.8g | 490mg |
| トマトペースト | 94kcal | 0.1g | 13.5g(推計) | 4.7g | 1,100mg |
| トマトソース | 41kcal | 0.6g | 5.3g(推計) | 1.1g | 340mg |
| トマトケチャップ | 116kcal | 3.1g | 22.7g | 1.7g | 380mg |
| チリソース | 112kcal | 3.0g | 測定値なし | 1.9g | 500mg |
| 中濃ソース | 129kcal | 5.8g | 26.9g | 1.0g | 210mg |
| ウスターソース | 117kcal | 8.5g | 24.1g | 0.5g | 190mg |
| マヨネーズ(全卵型) | 668kcal | 1.9g | 2.1g | (0) | 13mg |
(文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」2026年3月27日更新版。かっこ付きの値は推計値)
- ケチャップの食塩は100gあたり3.1gで、トマトピューレー(0g)やトマトソース(0.6g)よりずっと多く、ウスターソース(8.5g)や中濃ソース(5.8g)より少なめです
- 糖は22.7gで、生のトマト(3.1g)の約7倍です。トマトを濃縮したうえに、砂糖類を加えているためです
ケチャップの糖の中身
成分表の炭水化物成分表では、ケチャップ100gの糖はぶどう糖12.3g・果糖8.5g・ショ糖(砂糖の成分)1.3gなどです。生のトマトは、ぶどう糖1.4g・果糖1.6gで、ショ糖はごくわずかです。
成分表には、分析したケチャップにどの甘み原料が使われていたかは書かれていません。商品によって甘みの原料はちがうので、この内訳がどの商品にも当てはまるわけではありません。
大さじ1杯では
成分表の備考では、ケチャップは100mLが115gです。大さじ1杯(15mL)は約17gになり、
- 食塩相当量:約0.5g
- 糖:約3.9g
- エネルギー:約20kcal
です。日本人の食事摂取基準(2025年版)は、食塩の目標量を18歳以上の男性で1日7.5g未満、女性で6.5g未満としています。大さじ1杯で、女性の目標量の1割弱にあたります。
塩を自分で決めたいなら
塩や砂糖の量を自分で決めたいときは、食塩を加えていないトマトピューレーを使い、味つけを自分でする方法があります。成分表では、トマトピューレーは100gあたり食塩0g、糖5.2g(推計)です。
「酸化防止剤(ビタミンC)」「V.C」の意味
ユーサイドのケチャップのラベルには「酸化防止剤(V.C)」、公式ページには「酸化防止剤(ビタミンC)」と書かれています。
- 食品表示基準では、添加物は「/」の後ろなどに、物質名で書きます。「酸化防止剤」は、物質名といっしょに用途名も書かなければならない添加物の1つです(別表第六)。そのため「酸化防止剤(ビタミンC)」という形になります
- ビタミンC は、食品衛生法施行規則で指定されている添加物「L-アスコルビン酸」の別名です
- 消費者庁の「簡略名」の一覧では、L-アスコルビン酸は「アスコルビン酸」「V.C」と書いてよく、L-アスコルビン酸ナトリウム・カルシウム・エステル類なども「ビタミンC」「V.C」と書いてよいことになっています。つまり、ラベルの「V.C」だけでは、アスコルビン酸そのものか、そのナトリウム塩などかは分かりません
酸化防止剤は、空気にふれて色や風味が変わるのを防ぐために使われます。中身はビタミンC 類ですが、この目的で使うと添加物として表示されます。EU でも E300(アスコルビン酸)などとして認められています。添加物ごとの日本と海外の扱いは添加物データベースにまとめています。
リコピンは、加熱と油で吸収が変わるのか
リコピンとは
リコピン(リコペン)は、トマトの赤い色のもとになる色素で、カロテノイドの仲間です。水に溶けにくく、油に溶けやすい性質があります。
日本の食品成分表には、リコピンの項目がありません。米国農務省(USDA)の食品データでは、100gあたりの量は次のとおりです。
トマトを煮詰めて水分を減らした加工品ほど、100gあたりのリコピンは多くなります。日本の商品では、カゴメのトマトケチャップが100gあたり18mgと表示しています(公式ページ)。大さじ1杯(約17g)なら約3mgです。
人の試験で分かっていること
「加熱したトマトのほうがリコピンをとれる」「油といっしょに食べると吸収がよい」という話は、人に食べてもらって血液中の量を測った試験がもとになっています。主なものを並べます。
| 試験(年) | 人数 | くらべたもの | 結果 |
|---|---|---|---|
| Stahl ら(1992) | 抄録に記載なし | 1%のコーン油と1時間煮たトマトジュース/加熱しないトマトジュース | 血清のリコピンが増えたのは、加熱したジュースを飲んだときだけ |
| Gärtner ら(1997) | 抄録に記載なし | トマトペースト/生のトマト(どちらもリコピン23mg、コーン油15g) | ペーストのほうが、血液中のリコピンの最高値が2.5倍、全体の量(曲線下面積)が3.8倍 |
| Porrini ら(1998) | 女性10人 | トマトピューレー/生のトマト(どちらもリコピン16.5mg) | 1回食べたときも、7日間続けたときも、ピューレーのほうが血液中のリコピンが高い |
| Fielding ら(2005) | 23人 | 刻んだトマト470gをオリーブ油25mLと加熱/油なしで加熱(5日間) | 油ありでは trans 型リコピンが82%増。油なしでは trans 型は変わらず |
| Unlu ら(2005) | 11人 | サルサにアボカド150gを加える/加えない | アボカドを加えると、リコピンの吸収量が4.4倍 |
| Brown ら(2004) | 7人 | ミニトマトなどのサラダを、油なし・油6g・油28gのドレッシングで | 油なしのドレッシングでは、リコピンなどの吸収はほとんど見られず、油が多いほど吸収が多い |
| Unlu ら(2007) | 12人 | 加熱の仕方を変えて cis 型を多くしたトマトソース/trans 型の多いソース | cis 型の多いソースのほうが、吸収された量が多い |
(各論文の抄録から)
- 加熱や濃縮で、トマトの細胞の壁がこわれ、リコピンが出てきやすくなると考えられています。Fielding らは、加工すると細胞の組織がこわれてリコピンが利用されやすくなる、と説明しています
- リコピンは油に溶けるので、いっしょに油をとると吸収が増えることが、アボカド・オリーブ油・ドレッシングの試験で確かめられています
- 加熱で、リコピンの形の一部が trans 型から cis 型に変わります。人の血液や組織のリコピンは cis 型が多く、cis 型の多いソースのほうが吸収されやすかったという試験があります
ケチャップは、トマトを加熱・濃縮して作るので、この「加工したトマト」に入ります。ただし、ケチャップ自体には油がほとんど入っていません(成分表で脂質0.2g)。オムレツや炒めものなど、油を使う料理といっしょに食べると、上の試験の条件に近くなります。
注意したいこと
- どの試験も、数人〜数十人の小さな試験で、測っているのは「血液中のリコピンの量」です。血液中の量が増えることが、病気を防ぐことの証明ではありません
リコピンと前立腺がんの研究
観察研究のまとめ:「多くとる人でリスクがやや低い」が多い
食事の内容を聞き取り、何年もその後を追う研究(観察研究)を集めたまとめ(メタアナリシス)がいくつかあります。
| まとめ(年) | 集めた研究 | 主な結果 |
|---|---|---|
| Chen J ら(2013) | コホート研究11・コホート内症例対照研究6 | 生のトマト・加熱したトマト・リコピンの摂取・血清リコピンのどれも、多い群と少ない群で統計的にはっきりした差はなかった(リコピン摂取のオッズ比0.93、95%信頼区間0.86〜1.01) |
| Chen P ら(2015) | 26研究、約56万人 | 全体では「多くとるほど少ない」傾向(P=0.078)。中国の1研究を除く・質の高い研究だけにすると、はっきりした関係が出た。血中のリコピンが高い人でリスクが低い |
| Wang ら(2015) | 34研究 | リコピンの摂取が多い人で0.86倍、血中濃度が高い人で0.81倍。進行した前立腺がんとは関係が見られなかった |
| Rowles ら(2017) | 42研究、約69万人・4万3,851人の前立腺がん | 摂取・血中濃度とも0.88倍。リコピンが2mg/日増えるごとに1%低い。進行がんとの関係はなかった |
(各論文の抄録から)
米国の医療職の男性約4万7,000人を追った研究(Giovannucci ら、2002年)では、リコピンの摂取が最も多い群で0.84倍、トマトソースを週2回以上食べる人は月1回未満の人より0.77倍でした。同じ研究の2014年の報告(Zu ら、約5万人)では、命にかかわる前立腺がんで0.72倍でした。
観察研究は、「トマトをよく食べる人」が、ほかの面でもちがう生活をしている可能性を完全には除けません。また、多くは欧米の研究です。
ランダム化比較試験のまとめ:はっきりした差は出ていない
リコピンを飲む群と飲まない群に分けて比べる試験(ランダム化比較試験)のまとめでは、結果は次のとおりです。
- Ilic ら(2012):8つの試験。リコピンを飲んだ群で、前立腺肥大症や前立腺がんと診断される人が減ったとは言えなかった(前立腺がん:相対リスク0.92、95%信頼区間0.66〜1.29)。研究の数が少なく質もばらばらで、「すすめることも否定することもできない」と結論しています
- Sadeghian ら(2021):転移のない前立腺がんの患者の6試験。全体では、PSA(前立腺がんの検査値)は下がらなかった。PSA がもともと高い人だけに限ると下がった
- Sharifi-Zahabi ら(2022):6試験。リコピンやトマト抽出物で、PSA にはっきりした差はなかった
国際機関・海外の評価
- 世界がん研究基金(WCRF)・米国がん研究協会:2007年の報告書では「リコピンを含む食品」は前立腺がんのリスクを「おそらく確実(probable)」に下げるとしていました。2014年の前立腺がんの報告では、新しい研究を加えた結果、証拠が限られているとして「限られた証拠・結論なし(limited – no conclusion)」に引き下げました。WCRF は、関係がないと決めたわけではなく、診断や分類のちがいで関係が見えにくくなっている、と説明しています
- 米国食品医薬品局(FDA):2005年、「トマト・トマトソースを週に半カップ〜1カップ食べると前立腺がんのリスクを下げるかもしれない」という表示について、「非常に限られた予備的な研究」「この主張を支える科学的証拠はほとんどない」という但し書きを付けることを条件に、取り締まらない方針を示しました。一方、リコピンそのもの(食品の成分・サプリメント)と前立腺がんについては、表示を支える信頼できる証拠はないとしています。この申請をしたのは「リコピン健康強調表示連合」という団体で、ケチャップを作る H.J. Heinz 社、リコピン原料の会社(LycoRed 社)などで作られていました。容認された表示の対象は「トマト」と「トマトソース」で、ケチャップなどほかのトマト製品は含まれていません
リコピンと心臓病・脳卒中の研究
観察研究:血液中のリコピンが高い人で脳卒中が少ない
- Cheng ら(2019):25研究のまとめ。リコピンの摂取か血中濃度が最も高い群で、脳卒中が0.74倍、心血管病が0.86倍。血中濃度が高い群で死亡が0.63倍。心筋梗塞とは関係がなかった
- Li ら(2014):7つの前向き研究(約11万6,000人)。リコピン全体で脳卒中が0.81倍。ただし関係がはっきりしたのは血中のリコピンで、食事からの摂取量では関係がはっきりしなかった。著者は理由の1つとして、ある研究の食事の質問票にケチャップやリコピンのサプリメントが入っていなかったことなど、食事からの量を正しく測りにくい点を挙げています
- Aune ら(2018):ビタミンC・カロテノイド(リコピンを含む)・ビタミンE の摂取や血中濃度が高い人で、心血管病・がん・死亡が少ない傾向。著者は、これらを果物・野菜をよく食べていることの目印と考え、果物・野菜をとるすすめを支持するが、抗酸化サプリメントの使用は支持しないとしています
介入試験:結果が分かれる
- Ried ら(2011):12研究。リコピン1日25mg以上の試験に限ると、LDL コレステロールが約10mg/dL 下がった。それより少ない量では差がなかった
- Cheng ら(2017):21試験。トマトを食べる試験で LDL コレステロールが0.22mmol/L 下がり、血管の広がりやすさ(FMD)がよくなった。リコピンの試験で収縮期血圧が下がった
- Tierney ら(2020):43研究。リコピンの量(1日1.44〜75mg)やとり方がばらばらで、まとめると血圧・コレステロールに差はなかった
2021年の、まとめ研究をさらにまとめた研究(Li N ら、アンブレラレビュー)は、トマトやリコピンと、死亡・前立腺がん・脳卒中などとの関係を整理したうえで、根拠の質(GRADE)は大部分が「低い」か「非常に低い」としています。
ケチャップでとると、どのくらいになるか
Ried らのまとめで差が出た「1日25mg以上」のリコピンを、カゴメのトマトケチャップ(表示値100gあたり18mg)だけでとろうとすると、約140gが必要です。このとき食塩相当量は約4.6g(表示値100gあたり3.3gから計算)になり、女性の目標量(6.5g未満)の7割ほどです。ケチャップは調味料なので、リコピンをとるためにたくさん使う食品ではありません。
日本の研究と、企業との関係
- Odai ら(2019):北海道栗山町の住民481人に、食塩無添加のトマトジュースを1年間、好きなだけ飲んでもらった研究。治療していない高血圧ぎみの94人で血圧が141.2→137.0mmHg、治療していない脂質異常症の125人で LDL コレステロールが155.0→149.9mg/dL に下がりました。比べる群(対照群)のない前後比較です。論文には、キッコーマン社から研究資金を受けたことが書かれています(使ったトマトジュースは日本デルモンテの製品)
- Inoue ら(2021):12の試験(781人)をまとめ、リコピンで HDL コレステロールが上がった(中性脂肪には差なし)とするまとめ。著者5人のうち4人はカゴメ社の研究部門に所属しています
- Yoshida ら(2026):リコピンを含む食品で、血管内皮の働き(FMD)がよくなったとするまとめ。カゴメ社が資金を出し、著者3人はカゴメ社の社員で、まとめた試験の1つの著者でもあります。論文自身が、1つの試験を除くと統計的な差がなくなる小さなまとめだと書いています
機能性表示食品のリコピン
日本:届出制で、国の許可ではない
機能性表示食品は、事業者が科学的根拠を消費者庁に届け出て、自分の責任で機能を表示する制度です。国が個別に審査して許可する特定保健用食品(トクホ)とはちがいます。
消費者庁の届出データ(2026年9月30日取得、撤回を除く)では、リコピンを機能性関与成分とする届出は27件あり、最初の届出は2015年、リコピンだけを関与成分とする届出は11件です。表示の内容は、主に血中の LDL コレステロールと、紫外線の刺激から肌を守るのを助けるというものです。
この記事では、届出の表示や商品の宣伝の言葉は引用しません。成分ごとの届出の件数と、日本・EU の扱いのちがいは、ウラヨミのサプリメント成分データベースのリコピンのページにまとめています。
EU:申請された表示はすべて不認可
欧州食品安全機関(EFSA)は2011年、リコピンについて「DNA・たんぱく質・脂質を酸化から守る」「紫外線による肌のダメージから守る」「正常な心臓の働きに役立つ」「正常な視力を保つ」という表示を評価し、リコピンをとることとこれらの効果の因果関係は確立されていないと結論しました。EU の健康強調表示の登録簿では、リコピンの表示は認可されたものがありません。
日本と海外のちがい
| 日本 | EU | 米国 | |
|---|---|---|---|
| リコピンの健康の表示 | 機能性表示食品として届出あり(27件。LDL コレステロール・紫外線と肌など)。国の許可ではない | EFSA が因果関係を認めず、表示は不認可(2011年) | リコピンそのものと前立腺がんの表示は「信頼できる証拠がない」として認めない(2005年) |
| トマトと前立腺がんの表示 | ― | ― | トマト・トマトソースについて「証拠はほとんどない」などの但し書きつきで容認(2005年)。ケチャップは対象外 |
国際的な研究団体の世界がん研究基金(WCRF)は、リコピンを含む食品と前立腺がんの関係を「限られた証拠・結論なし」としています(2014年)。
裏面チェックのポイント
- 名称:「トマトケチャップ」と書かれていれば、可溶性固形分25%以上などの定義に合っています。「トマトソース」なら、ケチャップより薄い範囲(8%以上25%未満)です
- JAS マークと等級:「特級」は可溶性固形分30%以上で、原材料はトマト・たまねぎ・にんにく・食塩・香辛料・醸造酢・砂糖類の7つだけ。マークがなくても、定義に合っていればケチャップです
- 甘みの原料:「砂糖」か、「糖類(砂糖・ぶどう糖果糖液糖…)」か
- 「/」の後ろ:酸化防止剤(ビタミンC・V.C)、酸味料、調味料(アミノ酸等)、増粘剤(糊料)などがあるか
- 栄養成分表示の食塩相当量:100gあたりで3g前後が多い。大さじ1杯は約17g
- リコピンの表示:表示がある商品もありますが、量の多さが健康への効果を示すものではありません
まとめ
| 論点 | 分かっていること | 根拠の強さ・出典 |
|---|---|---|
| ケチャップの定義 | 濃縮トマト+食塩・香辛料・食酢・砂糖類・たまねぎ又はにんにく、可溶性固形分25%以上。定義外は名乗れない | 法令(食品表示基準) |
| 特級と標準 | 特級30%以上・標準25%以上。原材料は両方7つだけ。格付けは任意 | JAS 1419:2026 |
| トマトソース・ピューレーとのちがい | ソースは8%以上25%未満。ピューレー・ペーストは無塩可溶性固形分24%で分かれる | 法令・JAS |
| 塩と糖 | 100gで食塩3.1g・糖22.7g。大さじ1杯で食塩約0.5g | 食品成分表 |
| 酸化防止剤(V.C) | ビタミンC(L-アスコルビン酸)類。用途名の併記が必要。V.C だけでは塩の種類は分からない | 法令・消費者庁の通知 |
| リコピンの吸収 | 加熱・濃縮したトマトと油で、血液中の量が増えやすい | 人の小規模な試験(7〜23人ほど) |
| 前立腺がん | 観察研究では「やや低い」が多いが、ランダム化比較試験では差なし。WCRF は「結論なし」 | メタアナリシス・国際機関 |
| 心臓病・脳卒中 | 血中リコピンが高い人で脳卒中が少ない。介入試験は結果が分かれる。根拠の質は多くが低い | メタアナリシス・アンブレラレビュー |
| 機能性表示食品 | 届出27件。国の許可ではない。EU では表示不認可 | 消費者庁の届出データ・EFSA |
この記事で紹介したもの:
| 選んだ理由 | 購入先 | |
|---|---|---|
| ユーサイド トマトケチャップ 300g | 甘みは砂糖だけ、にんにく入り。添加物は酸化防止剤(ビタミンC)だけ | 楽天市場で見る(プロフーズ) PR |
| 光食品 有機トマトケチャップ 300g | 有機 JAS。原材料名に添加物の表示なし | 楽天市場で見る(楽天24) PR |
| アルチェネロ 有機トマトピューレー 200g×3 | 原材料は有機トマトだけ。食塩0gで、味つけを自分で決められる | 楽天市場で見る(楽天24) PR |
(2026年10月1日に楽天市場の商品ページで確認。価格・送料は変わることがあります)
関連:異性化液糖の記事(ぶどう糖果糖液糖の作り方と名前)/甘味料の記事/果物の果糖の記事/添加物データベース
参考にした資料
- 消費者庁「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)第三条・別表第三・第四・第五・第六(e-Gov 法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/
- 農林水産省「日本農林規格 トマト加工品 JAS 1419:2026」(令和8年2月16日 農林水産省告示第165号). https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/
- 農林水産省「認証を取得するメリット」(JAS 制度). https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_certification_benefits.html
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(2026年3月27日更新). https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
- 消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-1 簡略名又は類別名一覧表. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/files/tsuuchi-additives.pdf
- 食品衛生法施行規則 別表第1(e-Gov 法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(ナトリウム)、健康長寿ネットの解説. https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-na.html
- U.S. Department of Agriculture, FoodData Central(SR Legacy, 2019). https://fdc.nal.usda.gov/
- World Cancer Research Fund / American Institute for Cancer Research(2014)Continuous Update Project Report: Diet, Nutrition, Physical Activity, and Prostate Cancer. https://www.wcrf.org/wp-content/uploads/2024/10/prostate-cancer-report.pdf
- World Cancer Research Fund「Latest research on tomatoes, lycopene & prostate cancer」. https://www.wcrf.org/about-us/news-and-blogs/latest-research-on-tomatoes-lycopene-prostate-cancer/
- U.S. FDA(2005)Qualified Health Claims: Letter Regarding Tomatoes and Prostate Cancer(Lycopene Health Claim Coalition)(Docket No. 2004Q-0201). http://wayback.archive-it.org/7993/20171114183649/https://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabeling/LabelingNutrition/ucm072767.htm
- EFSA NDA Panel(2011)Scientific Opinion on the substantiation of health claims related to lycopene. EFSA Journal 9(4):2031. https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2031
- 消費者庁「機能性表示食品の届出情報」(2026年9月30日取得の CSV を集計). https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/
- カゴメ「カゴメトマトケチャップ」商品情報. https://www.kagome.co.jp/products/food/A2803/
- ユーサイド「トマトケチャップ 300g」. https://u-side.net/products-item/tomato-ketchup-150
- Stahl W, Sies H(1992)J Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1432255/
- Gärtner C ら(1997)Am J Clin Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9209178/
- Porrini M ら(1998)Br J Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9924277/
- Brown MJ ら(2004)Am J Clin Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15277161/
- Unlu NZ ら(2005)J Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15735074/
- Fielding JM ら(2005)Asia Pac J Clin Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15927929/
- Unlu NZ ら(2007)Br J Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17391568/
- Chen J ら(2013)J Nutr Sci Vitaminol. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23883692/
- Chen P ら(2015)Medicine. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26287411/
- Wang Y ら(2015)PLoS One. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26372549/
- Rowles JL ら(2017)Prostate Cancer Prostatic Dis. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28440323/
- Giovannucci E ら(2002)J Natl Cancer Inst. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11880478/
- Zu K ら(2014)J Natl Cancer Inst. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24463248/
- Ilic D, Misso M(2012)Maturitas. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22633187/
- Sadeghian M ら(2021)Nutr Cancer. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33355018/
- Sharifi-Zahabi E ら(2022)Complement Ther Med. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35031434/
- Cheng HM ら(2019)Crit Rev Food Sci Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28799780/
- Li X, Xu J(2014)Sci Rep. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24848940/
- Aune D ら(2018)Am J Clin Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30475962/
- Ried K, Fakler P(2011)Maturitas. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21163596/
- Cheng HM ら(2017)Atherosclerosis. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28129549/
- Tierney AC ら(2020)Adv Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32652029/
- Li N ら(2021)Food Chem. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33131949/
- Odai T ら(2019)Food Sci Nutr. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31367355/
- Inoue T ら(2021)J Food Sci. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34268742/
- Yoshida K ら(2026)Nutrients. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42588128/