ビールの種類を網羅:ビール・発泡酒・新ジャンルのちがい(酒税一本化後)、ラガー・エール・IPAなどビアスタイル、造り方、ラベルの読み方

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「ビール」と一口にいっても、缶には「ビール」「発泡酒」「発泡酒②」と書き分けがあり、店では「ピルスナー」「IPA」「ヴァイツェン」「スタウト」など、いくつもの名前が並びます。
この2つは、別の物さしです。
- 「ビール」「発泡酒」は、日本の法律(酒税法)の区分。税金の額を決めるための分け方です
- 「ピルスナー」「IPA」などは、ビアスタイル。発祥の地・原料・発酵のしかた・色・苦味で分けた、味のタイプの名前です
この記事では、次のことを順番に整理します。
- 日本の法律でいう「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」の定義と、2026年10月1日の酒税一本化で何が変わったか
- ビールの造り方と、上面発酵・下面発酵・自然発酵のちがい
- 世界のビアスタイルを、基準(BJCP 2021年版)の数値つきで網羅
- 缶のラベルの読み方と、大手23銘柄の原材料・添加物
- ドイツの「ビール純粋令」と、日本のクラフトビール
- おいしく飲むための温度・泡・日光臭・賞味期限の事実
体への影響(カロリー・プリン体・グルテン・ビール酵母)はビールと健康の記事、ビールの発祥と世界の消費量はビールの歴史と世界の記事で書いています。
結論
- 日本の法律で「ビール」と名乗れるのは、麦芽が、水とホップ以外の原料の重さの50%以上のもの(2018年4月に67%以上から引き下げ)。「5%まで」の制限は、果実やハーブなどの香味料だけにかかり、米・コーン・スターチ・糖類にはかかりません
- 「新ジャンル(第3のビール)」は、2023年10月に品目が「発泡酒」に統合されました。缶の「発泡酒②」がその印です
- 2026年10月1日、ビール・発泡酒・旧新ジャンルの酒税は350mlあたり54.25円にそろいました。ビールは2020年までの77円から下がり、新ジャンルは28円から上がりました。金麦・麦とホップ・GOLD STAR・クリアアサヒは10月中に、キリンの本麒麟は11月4日発売分から「ビール」に変わります
- 造り方の大きなちがいは発酵です。低温で発酵させて沈む酵母のラガー(下面発酵)、高めの温度で浮く酵母のエール(上面発酵)、空気中の酵母や菌にまかせる自然発酵。ラガー酵母は、エール酵母と、南米パタゴニアで見つかった野生の酵母の雑種です
- スタイルの基準 BJCP 2021年版は34カテゴリ・107スタイル。日本の大手のビールの多くはピルスナー系のラガーで、アサヒスーパードライは BJCP で「インターナショナル・ペール・ラガー」の例に挙げられています
- お酒は食品表示基準で原材料名の表示が義務ではありません。ビールの原材料名は業界の公正競争規約で表示され、順番は重さの順ではなく法律の順です。「生」は熱処理していないという意味で、「ピルスナー」「プレミアム」には定義がありません
- 確認した大手23銘柄では、品目が「ビール」のものに添加物はなし。カラメル色素・香料・酸味料・甘味料などが入っていたのは、発泡酒・新ジャンルで、とくに「ゼロ」系でした
この記事で紹介しているもの
記事の中で、論点に合わせて次のものを紹介しています(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・A8.net・もしもアフィリエイトのリンクです)。
| こんな人に | 紹介しているもの | 場所 |
|---|---|---|
| ピルスナーの元祖を飲んでみたい | ピルスナーの元祖の名を名乗るビール(ピルスナー ウルケル) | ラガーのスタイル |
| ドイツとベルギーの小麦ビールを飲み比べたい | ドイツの白ビール(ヴァイエンシュテファン)・ベルギーのホワイト(ヒューガルデン) | 小麦ビールのスタイル |
| ペールエール・IPA・スタウトを試したい | ペールエール(よなよなエール)・IPA(インドの青鬼)・スタウト(ギネス) | エールのスタイル |
| トラピストや自然発酵のビールを知りたい | トラピスト(シメイ)・ランビック(リンデマンス) | 自然発酵とサワー |
| 日本のクラフトビールをタイプ別に選びたい | 長野のクラフトビールをタイプ別に選べる通販(NAGANOSAKE.JP) | 日本のクラフトビール |
| 冷やしすぎず適温で飲みたい | 氷で薄めずにビールを冷やすステンレスの保冷キューブ(ビアキューブ) | 温度・注ぎ方・グラス |
| スタイルと造り方をもっと詳しく知りたい | ビールの基本をまとめた本(日本ビール検定公式テキスト) | もっと知りたい人へ |
日本の法律でのビールの種類
お酒の分け方の中のビール
酒税法では、アルコール分1度(1%)以上の飲み物が「酒類」です。お酒は「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の4つに分けられ、ビールは発泡性酒類に入ります。
| 発泡性酒類の中の区分 | どういうものか |
|---|---|
| ビール | 麦芽・ホップ・水が主な原料で、麦芽の割合などの条件を満たすもの(第3条第12号) |
| 発泡酒 | 麦芽や麦を使うが、ビールの条件を満たさないものなど(第3条第18号) |
| その他の発泡性酒類 | 上の2つ以外で泡のあるもの(チューハイなど)。アルコール分11度未満(2026年10月1日に「10度未満」から変更) |
- アルコール分が1%未満のノンアルコール・ビールテイスト飲料は、法律上お酒ではありません
ビールの定義(酒税法の原文)
酒税法第3条第12号は、ビールを次のように決めています(e-Gov 法令検索の現行の条文)。
十二 ビール 次に掲げる酒類でアルコール分が二十度未満のものをいう。 イ 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの ロ 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の百分の五十以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五を超えないものに限る。) ハ イ又はロに掲げる酒類にホップ又は政令で定める物品を加えて発酵させたもの(ロと同じ二つの条件)
言いかえると、ビールは次の3つのどれかです。
| 号 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| イ | 麦芽・ホップ・水だけ | 原材料が「麦芽、ホップ」のビール |
| ロ | 麦芽・ホップ・水に、決められた副原料を加える | 「麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ」のビール |
| ハ | イやロのビールに、ホップや香味料を加えて、もう一度発酵させる | 2018年に認められた造り方 |
副原料と「5%」のルール
「麦芽以外の原料は5%まで」と説明されることがありますが、正確ではありません。酒税法施行令第6条は、副原料を2つのグループに分けています。
| グループ | 使えるもの | 量の条件 |
|---|---|---|
| 第1号 | 麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でん粉、糖類、苦味料、着色料(カラメル)など | 麦芽が「水とホップ以外の原料」の50%以上であればよい(=麦芽と同じ重さまで使える) |
| 第2号 | 果実と、コリアンダーなどの香味料 | 上の条件に加えて、合計で麦芽の重さの5%まで |
第2号の香味料は、酒税法施行規則第4条で次のように決められています。
- コリアンダーとその種
- こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうなどの香辛料
- カモミール、セージ、バジル、レモングラスなどのハーブ
- かんしょ、かぼちゃなどの野菜
- そば、ごま
- 蜂蜜などの糖分を含むもの、食塩、みそ
- 花、茶、コーヒー、ココア
- かき、こんぶ、わかめ、かつお節
着色料は、施行規則第4条第1項で「カラメル」と決められています。
国税庁は、5%の上限を設けた理由を「大量に使用したものは、ビール本来の姿から大きく乖離した酒類になるものと考えられます」と説明しています(ビールの定義の改正に関するQ&A)。
2018年の定義改正
2018年4月1日、ビールの定義が広がりました(平成29年度税制改正)。国税庁のQ&Aによると、変わったのは次の3点です。
- 麦芽の割合:「67%以上必要でしたが、これが50%以上に引き下げられました」
- 副原料の範囲:麦芽の重さの5%の範囲で、果実や香味料を使えるようになった
- 造り方:できたビールにホップや副原料を加えてもう一度発酵させる方法(ハ号)が認められた
細かいルールもあります(同じQ&A)。
- かつお節は使えるが、いわし節などほかの節は使えない
- 果物の皮や種も「果実」に入る。ただし砂糖をまぶした皮は使えない
- 濃縮果汁を混ぜたあとに水を加えて発酵させると、ビールではなく発泡酒になる
発泡酒の定義
発泡酒は、酒税法第3条第18号で、泡があるもので次のどれかに当たるお酒(アルコール分20度未満)です。
| 号 | 中身 |
|---|---|
| イ | 麦芽か麦を原料の一部にしたもの(麦を原料にした蒸留酒を加えたものを除く) |
| ロ | イ以外で、ホップか、決められた苦味料を原料の一部にしたもの |
| ハ | イ・ロ以外で、香り・味・色がビールに似ているもの(苦味価5以上、かつ色度4以上) |
- ロとハは、2023年10月1日の改正で加わりました
- 「苦味価」は、ホップの苦味成分(イソα酸)の量を、波長275nmの光の吸収の強さ×50 で測ります(酒税法施行規則第4条の2)。これは、世界で使われているビールの苦味の単位と同じ形の測り方です
- 小さな醸造所にとって大事なのが、最低製造数量です。1年に造らなければならない量が、ビールは60kL、発泡酒は6kL です(酒税法第7条第2項)
新ジャンル(第3のビール)と「発泡酒②」
「新ジャンル」「第3のビール」は、法律の品目の名前ではなく、2020年10月〜2023年9月の税率の区分の名前でした。国税庁「酒のしおり」の定義は、おおまかに次の2種類です。
| 種類 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 麦芽を使わないもの | 糖類・ホップ・水と、決められた物品(大豆やえんどうのたんぱく質分解物、酵母エキス、とうもろこし、食物繊維、カラメルなど)で発酵させたもの | キリン のどごし<生>(原材料はホップ、糖類、大豆たんぱく、酵母エキス) |
| 発泡酒に麦の蒸留酒を加えたもの | 麦芽の割合が50%未満の発泡酒に、大麦や小麦から造ったスピリッツを加えたもの | キリン 本麒麟(原材料は発泡酒〈麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類〉、大麦スピリッツ) |
- ビール酒造組合の説明では、麦芽の割合が低い発泡酒「サントリーホップス<生>」が1994年(平成6年)に発売され、麦芽も麦も使わずエンドウたんぱくを原料にしたサッポロ「ドラフトワン」が平成15年に発売されました
- 2023年10月、発泡酒の定義が広がったことで、新ジャンルは品目が「発泡酒」に統合されました。缶の「発泡酒②」は、この旧新ジャンルの印です
- 2026年10月からは、「②」を付けずに「発泡酒」と書いてよくなりました(付けたままでもよい)
酒税の一本化(2026年10月1日)
350mlあたりの酒税の変化
財務省は「ビール系飲料の税率について、2026年(令和8年)10月に、1㎘当たり155,000円(350㎖換算54.25円)に一本化した(2020年(令和2年)10月から3段階で実施)」と説明しています。理由は「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、税収中立の下」とされています。
| 350mlあたりの酒税 | 〜2020年9月 | 2020年10月〜 | 2023年10月〜 | 2026年10月〜 |
|---|---|---|---|---|
| ビール | 77.00円 | 70.00円 | 63.35円 | 54.25円 |
| 発泡酒(麦芽25%未満) | 46.99円 | 46.99円 | 46.99円 | 54.25円 |
| 発泡酒(麦芽25%以上50%未満) | 62.34円 | 58.49円 | 54.25円 | 54.25円 |
| 新ジャンル(2023年10月から発泡酒②) | 28.00円 | 37.80円 | 46.99円 | 54.25円 |
| (参考)チューハイなど | 28円 | 28円 | 28円 | 35円 |
- 2026年10月の1回で、ビールは9.10円下がり(63.35円→54.25円)、発泡酒(麦芽25%未満)と旧新ジャンルは7.26円上がりました(46.99円→54.25円)
- 2020年9月までと比べると、ビールは22.75円下がり、新ジャンルは26.25円上がりました
- 一本化の前の2025年12月時点で、350ml・230円のビールにかかる酒税と消費税は、値段の36.6%でした(酒のしおり)
- 清酒や果実酒などの醸造酒は、2023年10月に1kLあたり10万円に一本化済みです
新ジャンルからビールへ切り替えた銘柄
税の差が縮んだことで、新ジャンル(発泡酒②)だった定番が、次々と「ビール」に変わります。ビール酒造組合は「ビール回帰への流れが進んでいます」と書いています。
| 発表日 | 会社 | 中身(各社の発表) |
|---|---|---|
| 2026年5月29日 | アサヒ | スーパードライの中味を「1987年の発売以来、2度目」に刷新し、「麦芽使用比率を高める」(8月上旬以降の製造分から) |
| 2026年6月17日 | サッポロ | 「GOLD STAR」「麦とホップ」を発泡酒②からビールに変更し、10月20日に発売予定(麦とホップは麦芽の割合を上げる) |
| 2026年7月16日 | サントリー | 「金麦」「金麦〈糖質75%オフ〉」を「ビール製法に変更」し、10月6日に発売予定(金麦はアルコール分5.5%) |
| 2026年9月18日 | アサヒ | 「クリア アサヒ」をビールに変え、「クリア アサヒ<生>」として10月27日に発売予定(5%) |
| 2026年5月20日 | キリン | 10月1日納品分から価格改定。10月の時点では「本麒麟」「のどごし」は発泡酒②(増税)の区分 |
| 2026年5月27日 | キリン | 「本麒麟」を発泡酒②から「ビール」に製法変更し、11月4日にリニューアル発売(アルコール分6%→5%) |
- サントリーは、一本化しても「一定の価格差が残ると見込んでいます」と書いています
- サントリーの公式の成分一覧では、これまでの「金麦」(発泡酒②)に「製造を終了しました」と表示されています(2026年10月2日確認)
- 品目は、缶の表示で確かめてください
一本化で変わる表示
- 発泡酒の「麦芽使用率〇〇%」の表示は、2026年10月からなくてもよくなりました(付けたままでもよい)
- キリンの公式ページには、のどごし<生>の品目が「令和5年10月~令和8年9月まで:発泡酒② 令和8年10月以降:発泡酒」と書かれています(2026年10月2日確認)
ビールの造り方
原料
| 原料 | 中身(ビール酒造組合の説明) |
|---|---|
| 麦芽 | 主に二条大麦(ビール大麦)を発芽させて乾かしたもの。「現在使われている麦芽の大部分はカナダ、オーストラリア、ヨーロッパ各国などからの輸入麦芽」 |
| ホップ | 雌株の受粉していない花(毬花)。8〜9月に収穫。「多くはドイツ、チェコなど海外からの輸入」 |
| 水 | 淡色のビール(日本のふつうのビール)には、カルシウムやマグネシウムの少ない軟水、色の濃いビールには硬水がよいとされる |
| 副原料 | 米・コーン(とうもろこし)・スターチ(でんぷん)・糖類など。「ビールの味を調整し、バランスのよいものにするのに役立ちます」 |
- 大びん1本(633ml)に使うのは、「大麦を手のひらに2杯(約90g)、ホップの毬花を10個(約1g)と副原料」です(ビール酒造組合)
製麦から容器詰めまで
国税庁「酒のしおり」の工程図と、ビール酒造組合の説明をもとにすると、淡色ビールの造り方は次の流れです。
- 製麦:大麦に水を吸わせて発芽させ、熱風で乾かす(焙燥)。「このときにビールに必要な成分と独特の色、そして芳しい香りをもつようになります」
- 仕込み(糖化):砕いた麦芽と米などの副原料を温水と混ぜる。麦芽の酵素がでんぷんを糖に変える
- ろ過・煮沸:糖の液(麦汁)をこして、ホップを加えて煮る
- 発酵:麦汁を5℃くらいに冷やし、酵母を加える。7〜8日で糖のほとんどがアルコールと炭酸ガスになる(若ビール)
- 貯酒(熟成):0℃くらいの低温で数十日間ねかせる
- ろ過・容器詰め:酵母をこして、びん・缶・たるに詰める。仕込みから「およそ2~3カ月」
- 泡の炭酸ガスは、あとから注入しているのではなく、発酵で自然にできたものです(キリン)
上面発酵・下面発酵・自然発酵
ビールの性格を大きく分けるのは、どの酵母で、何度で発酵させるかです。
| 発酵 | 酵母 | 温度 | できるビール |
|---|---|---|---|
| 上面発酵 | サッカロミセス・セレビシエ。発酵の終わりに炭酸ガスと一緒に液の上に浮く | 比較的高温(20℃前後〈論文〉、20〜25℃〈サントリー〉) | エール(ペールエール、IPA、スタウト、ヴァイツェンなど) |
| 下面発酵 | サッカロミセス・パストリアヌス。発酵の終わりに固まってタンクの底に沈む | 低温(10℃前後〈論文〉、6〜15℃〈サントリー〉)で、時間をかける | ラガー(ピルスナー、ヘレス、ボックなど) |
| 自然発酵 | 培養した酵母を使わず、空気中の酵母や細菌にまかせる | − | ランビック。1〜2年かそれ以上発酵させる(ビール酒造組合) |
(論文は、アサヒビールの研究員・大室繭「ビールを造る小さな主役」生物工学会誌 2016年)
- サントリーによると、下面発酵は「15世紀から冷却機が発達した19世紀頃に急速に普及…現在世界的に主流」です
- 「今日の日本のビールの多くは下面発酵酵母によって造られるラガータイプのビール」です(大室 2016)
- 「ラガー」はドイツ語の lagern(貯蔵する)から来た言葉です。ビール酒造組合は「日本のビールはほとんどがラガービール」と説明しています
ラガー酵母は雑種
ラガーに使う酵母(サッカロミセス・パストリアヌス)は、2種類の酵母がかけ合わさった雑種です。
- 片方の親は、エールの酵母(サッカロミセス・セレビシエ)
- もう片方は長く分かっていませんでしたが、2011年、南米パタゴニアのナンキョクブナの森で見つかった野生の酵母が、その親だと報告されました。サッカロミセス・ユーバヤヌスと名付けられ、ゲノム(遺伝情報)の下書きは、ラガー酵母の「セレビシエ以外の部分」と99.5%一致しました(Libkind ら、米国科学アカデミー紀要 PNAS 2011年)
- 2014年には、チベット高原で見つかった集団のほうがより近いという報告も出ています(Bing ら、Current Biology 2014年)。野生の親の仲間は、南米とアジアの両方で見つかっていることになります
- Libkind らの論文は、ラガーが初めて造られたのは15世紀としています。1553年にはバイエルンの領邦令で、ビールを造る期間が9月29日(聖ミカエルの日)〜4月23日(聖ゲオルクの日)に限られました
- 世界で初めて純粋に培養されたラガー酵母は、デンマークのカールスバーグ研究所でハンセンが1883年に分けたもので、2014年にそのゲノムが調べられています(Walther ら、G3 2014年)
ホップの役割
ビール酒造組合は、ホップの働きを次の4つにまとめています。
- 独特の香りと、さわやかな苦味をつける
- 麦汁の余分なたんぱく質を沈めて、ビールを澄ませる
- 「雑菌の繁殖を抑え、ビールの腐敗を防ぐ」
- 泡もちをよくする
研究で分かっていること:
- ホップの苦味のもとは「α酸(フムロン類)」で、煮ているあいだにイソα酸に変わり、これがビールの苦味になります。煮すぎるとイソα酸も分解します(Malowicki・Shellhammer、J Agric Food Chem 2005年。90〜130℃で反応の速さを測った実験)
- イソα酸は、グラム陽性菌という種類の細菌の増殖を抑えます(Sakamoto・Konings、Int J Food Microbiol 2003年)
「生」と熱処理
- 熟成を終えたビールは、ろ過で酵母を取り除くか、熱処理で酵母の働きを止めるかして製品にします(サッポロ)
- 熱処理(パストリゼーション)をしていないビールだけが「生」「ドラフト」を名乗れます(公正競争規約。後の「ラベルの読み方」で説明)
- 国税庁の工程図でも、たる詰めは生ビール、びん詰め後に「火入」したものが市販のビールと分けて書かれています。ビール酒造組合は「びん・缶詰めビールは生ビールが大部分」と説明しています
- 熱処理したビールの代表が、サッポロラガービール(赤星)です。「明治10年(1877年)に発売された、現存する日本最古のビールブランド」(サッポロ)です
- 「ラガー」と「生」は別の軸です。ビール酒造組合は「ラガービールには、熱による処理をしないビールと、熱による処理(パストリゼーション)をしたビールがあります」と書いています
色と苦味の単位(EBC・SRM・IBU)
ビアスタイルの説明に出てくる数字の読み方です。
| 単位 | 何の数字か | 読み方 |
|---|---|---|
| SRM | 色(米国の醸造化学者学会 ASBC の方式) | 数字が大きいほど色が濃い |
| EBC | 色(ヨーロッパの方式) | BJCP によると、SRM のおよそ2倍の値 |
| IBU | 苦味(International Bittering Units) | 数字が大きいほど苦い |
| ABV | アルコール分(容量%) | 缶の「アルコール分」と同じ |
- 米国の醸造者団体 Brewers Association の2026年版ガイドラインは、SRM と EBC を並べて書いています(例:3〜6 SRM = 6〜12 EBC)
ビアスタイルの全体像

スタイルの基準:BJCP と Brewers Association
世界のビアスタイルには、広く使われている基準が2つあります。
| 基準 | 版 | 中身 |
|---|---|---|
| BJCP ビアスタイル・ガイドライン(米国のビール審査員の認定団体) | 2021年版(現行) | 34カテゴリ・107スタイル(番号付き)。ほかにカテゴリ27に歴史的スタイルが9つ(ウラヨミが数えた数) |
| Brewers Association ビアスタイル・ガイドライン(米国の醸造者の団体) | 2026年版 | 2026年版で「ライスラガー」(米を15%以上使う)を新設 |
この記事の表の数値(色・アルコール分・苦味)は、すべてBJCP 2021年版の「Vital Statistics」から取りました。発祥・歴史も BJCP の説明によります。番号(3B など)は BJCP のスタイル番号です。色は SRM、度数はアルコール分(%)です。
BJCP 2021 の34カテゴリは次のとおりです。
| 番号 | カテゴリ |
|---|---|
| 1〜9 | 標準的なアメリカのビール/インターナショナル・ラガー/チェコのラガー/淡色でモルト寄りのヨーロッパのラガー/淡色で苦いヨーロッパのビール/琥珀色でモルト寄りのヨーロッパのラガー/琥珀色で苦いヨーロッパのビール/濃色のヨーロッパのラガー/強いヨーロッパのビール |
| 10〜17 | ドイツの小麦ビール/英国のビター/英連邦のペールビール/英国のブラウンビール/スコティッシュエール/アイルランドのビール/英国の濃色ビール/英国の強いエール |
| 18〜22 | アメリカのペールエール/アメリカの琥珀色・茶色のビール/アメリカのポーターとスタウト/IPA/アメリカの強いエール |
| 23〜26 | ヨーロッパのサワーエール/ベルギーのエール/ベルギーの強いエール/修道院のエール |
| 27〜34 | 歴史的なビール/アメリカン・ワイルドエール/フルーツビール/スパイスビール/麦以外の発酵原料のビール/燻製ビール/木樽のビール/スペシャルティビール |
ラガーのスタイル
下面発酵で、低温で熟成させるビールです。日本の大手のビールの多くはここに入ります。
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| チェコ・プレミアム・ペールラガー=ボヘミアン・ピルスナー(チェコ・プルゼニ) | 3.5〜6 | 4.2〜5.8 | 30〜45 | 3B。元祖はピルスナー・ウルケル(1842年、醸造家ヨーゼフ・グロル)。チェコで「ピルスナー」と呼ぶのはピルスナー・ウルケルとガンブリヌスだけ |
| ジャーマン・ピルス(ドイツ) | 2〜4 | 4.4〜5.2 | 22〜40 | 5D。チェコのピルスナーを、ドイツの水とホップに合わせたもの。1870年代初め |
| ミュンヘナー・ヘレス(ミュンヘン) | 3〜5 | 4.7〜5.4 | 16〜22 | 4A。1894年、ピルスナーに対抗して生まれた。最初はシュパーテン醸造所とされる |
| ジャーマン・ヘレス・エクスポートビア=ドルトムンダー(ドルトムント) | 4〜6 | 5.0〜6.0 | 20〜30 | 5C。1870年代のドルトムント。日本のビール酒造組合の分類では「ドルトムンダー」 |
| フェストビア(ミュンヘン) | 4〜6 | 5.8〜6.3 | 18〜25 | 4B。1990年から、ミュンヘンのオクトーバーフェストで出るビールの大半がこのスタイル。「オクトーバーフェストビア」はミュンヘンの醸造所だけが使える保護された名前 |
| メルツェン(ドイツ) | 8〜17 | 5.6〜6.3 | 18〜24 | 6A。3月に造り、夏のあいだ洞窟で貯蔵した「3月のビール」。1841年シュパーテン |
| ウィーン・ラガー(ウィーン) | 9〜15 | 4.7〜5.5 | 18〜30 | 7A。1841年、アントン・ドレハー。メキシコへ伝わった |
| ラオホビア(バンベルク) | 12〜22 | 4.8〜6.0 | 20〜30 | 6B。ブナの木で燻した麦芽を使う。メルツェンが土台 |
| ミュンヘナー・デュンケル(ミュンヘン) | 17〜28 | 4.5〜5.6 | 18〜28 | 8A。1830年代、ミュンヘン麦芽ができてからシュパーテンが造った |
| シュバルツ(テューリンゲン・ザクセン・フランケン) | 19〜30 | 4.4〜5.4 | 20〜35 | 8B。「黒いビール」の意味。BJCP は「日本で造られる黒ラガーのお手本になった」と書いている |
| デュンクレス・ボック(アインベック) | 14〜22 | 6.3〜7.2 | 20〜27 | 6C。ハンザ同盟の時代のアインベックが発祥。17世紀からミュンヘンで再現された |
| ヘレスボック/マイボック(ドイツ) | 6〜9 | 6.3〜7.4 | 23〜35 | 4C。ボックの中では新しい。春・5月の季節のビール |
| ドッペルボック(ミュンヘン) | 6〜25 | 7.0〜10.0 | 16〜26 | 9A。1700年代までに、聖フランシスコ・パウラ修道会の修道士が初めて造った |
| アイスボック(クルムバッハ) | 17〜30 | 9.0〜14.0 | 25〜35 | 9B。1800年代後半。凍らせて濃くし、長く熟成させる |
| アメリカン・ライトラガー(米国) | 2〜3 | 2.8〜4.2 | 8〜12 | 1A。1967年にラインゴールド社が造り、1973年以降ミラー社で広まった |
| アメリカン・ラガー(米国) | 2〜3.5 | 4.2〜5.3 | 8〜18 | 1B。禁酒法と第二次世界大戦のあと、禁酒法より前のラガーから変わったもの |
| インターナショナル・ペール・ラガー(世界各国) | 2〜6 | 4.5〜6.0 | 18〜25 | 2A。市販の例にアサヒスーパードライ。「ピルスナー」と紛らわしく表示されることが多い、と BJCP |
| カリフォルニア・コモン(米国西海岸) | 9〜14 | 4.5〜5.5 | 30〜45 | 19B。ゴールドラッシュの時代の「スチームビール」。アンカー・スチームが原型。BJCP の分類では下面発酵 |
- ビール酒造組合は、ピルスナーについて「このタイプのビールは世界中に最も普及しており、日本の淡色ビールもこのタイプに属します」と説明しています(アルコール分は4.0~5.0%としています)
- ピルスナー・ウルケルの公式の歴史では、最初の仕込みは1842年10月5日、商標の登録は1898年です
チェコ・ピルスナーの元祖を、日本の淡色ビールと飲み比べてみたい人へ。1842年からの名前で売られているものです。
小麦ビールのスタイル
小麦の麦芽を使う、上面発酵のビールです。ビール酒造組合は、ドイツのバイツェンを「小麦…麦芽を50%以上使用」と説明しています。
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| ヴァイスビア=ヘーフェヴァイツェン(バイエルン) | 2〜6 | 4.3〜5.6 | 8〜15 | 10A。「ヘーフェヴァイツェン」「ヴァイツェンビア」とも。バナナとクローブの香り。いまの形は1872年シュナイダー醸造所から |
| ドゥンケルヴァイツェン(ドイツ) | 14〜23 | 4.3〜5.6 | 10〜18 | 10B。色の濃い小麦ビール |
| ヴァイツェンボック(ドイツ) | 6〜25 | 6.5〜9.0 | 15〜30 | 10C。1907年、シュナイダーの「アヴェンティヌス」 |
| ベルジャン・ホワイト=ヴィットビア(ベルギー・ルーヴェン周辺) | 2〜4 | 4.5〜5.5 | 8〜20 | 24A。コリアンダーなどのスパイスを使う。1957年に途絶え、1966年にピエール・セリスがヒューガルデンで復活させた |
- ドイツの純粋令の歴史では、小麦を使うビールは原則として禁じられていましたが、貴族に特権が与えられていました(1548年のデーゲンベルク家など。バイエルン史事典)
- 小麦にも大麦にも、グルテンの仲間のたんぱく質があります。くわしくはビールと健康の記事とグルテンとスペルト小麦の記事をどうぞ
ドイツのヘーフェヴァイツェンと、ベルギーのホワイトビールを1本ずつ。同じ小麦ビールでも、上の表のとおり、香りのもとと発祥がちがいます。
エールのスタイル
上面発酵のビールです。英国・アイルランド・米国のスタイルを、色の淡いものから順に並べます。
英国のペールエール・ビター・IPA
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| オーディナリー・ビター(英国) | 8〜14 | 3.2〜3.8 | 25〜35 | 11A |
| ベスト・ビター(英国) | 8〜16 | 3.8〜4.6 | 25〜40 | 11B |
| ストロング・ビター(英国) | 8〜18 | 4.6〜6.2 | 30〜50 | 11C |
| イングリッシュIPA(英国・ロンドン) | 6〜14 | 5.0〜7.5 | 40〜60 | 12C。1700年代後半にインドへ送られた、淡色の長期熟成用エールから |
米国のペールエールと IPA
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| アメリカン・ペールエール(米国) | 5〜10 | 4.5〜6.2 | 30〜50 | 18B。1980年のシエラネバダ・ペールエールが広めた |
| アメリカンIPA(米国) | 6〜14 | 5.5〜7.5 | 40〜70 | 21A。1975年のアンカー・リバティエールから。辛口で苦味が鋭く澄んだものは「ウエストコーストIPA」と呼ばれるが、アメリカンIPAの一種にすぎない、と BJCP |
| ヘイジーIPA(米国ニューイングランド) | 3〜7 | 6.0〜9.0 | 25〜60 | 21C。「ニューイングランドIPA」「NEIPA」とも。原型はアルケミスト醸造所の「ヘディ・トッパー」とされる |
| ダブルIPA(米国) | 6〜14 | 7.5〜10.0 | 60〜100 | 22A。1990年代半ば〜後半から |
- BJCP の 21B「スペシャルティIPA」には、ベルジャンIPA・ブラックIPA・ブラウンIPA・レッドIPA・ライIPA・ホワイトIPA・ブリュットIPA の7つが入っています
ブラウンエール・ポーター・スタウト
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| ブリティッシュ・ブラウンエール(英国) | 12〜22 | 4.2〜5.9 | 20〜30 | 13B |
| アメリカン・ブラウンエール(米国) | 18〜35 | 4.3〜6.2 | 20〜30 | 19C。ピーツ・ウィキッド・エール(1986年) |
| イングリッシュ・ポーター(英国・ロンドン) | 20〜30 | 4.0〜5.4 | 18〜35 | 13C。1700年代前半のロンドン |
| アイリッシュ・スタウト(アイルランド) | 25〜40 | 3.8〜5.0 | 25〜45 | 15B。ギネスは1799年にはポーターだけを造り、1810年ごろ「より強い(stouter)ポーター」を造った |
| スイートスタウト=ミルクスタウト(英国) | 30〜40 | 4.0〜6.0 | 20〜40 | 16A。「ミルク」は乳糖(ラクトース)を使うことから。英国では今は「ミルク」と表示できない、と BJCP |
| オートミール・スタウト(英国) | 22〜40 | 4.2〜5.9 | 25〜40 | 16B。1900年ごろから |
| インペリアル・スタウト(英国→米国) | 30〜40 | 8.0〜12.0 | 50〜90 | 20C。ロシアの宮廷向けに輸出されたという言い伝えがある。「ロシアン・インペリアル・スタウト」とも |
強いエール
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| イングリッシュ・バーレイワイン(英国) | 8〜22 | 8.0〜12.0 | 35〜70 | 17D。1872年のバス No.1 が、初めて「バーレイワイン」と呼ばれた |
| アメリカン・バーレイワイン(米国) | 9〜18 | 8.0〜12.0 | 50〜100 | 22C |
| ウィー・ヘビー(スコットランド) | 14〜25 | 6.5〜10.0 | 17〜35 | 17C。「ストロング・スコッチエール」とも |
よく聞く話を、ビールの歴史の専門誌の論文で確かめると、次のようになります。
- 「IPA はインドへの長旅に耐えるため、特別に強くした新しいスタイル」は誇張です。ロンドンのボウにあったホジソンの醸造所は、東インド会社の船の船長に、もともとあった「オクトーバー・ビール」(強く、淡色で、ホップが多いビール)を納めていて、それが航海のあいだに熟成して好評になった、というのが記録から分かる流れです。1801年にはカルカッタの新聞に「ホジソンのビール」の広告が出て、1809年には「Hodgson’s select Pale Ale」と書かれています。バートンのオールソップは1822年に誘われて、1823年に最初の出荷をしました。1832〜33年のシェアはバス43%・ホジソン28%でした(Cornell、Brewery History 2003年)
- 「ポーターは1722年にハーウッドが発明した」も誇張です。ポーターは1720年ごろ、ロンドンのブラウンビールが改良されてできたものです(Anderson、Brewery History 2004年)。なお、ビール酒造組合は「1722年にロンドン」と説明しています
ペールエール・IPA・スタウトを、日本で手に入りやすいもので試したい人へ。上の表のアメリカン・ペールエール、IPA、アイリッシュ・スタウトに当たるものを1つずつ紹介します。
ハイブリッドのスタイル
上面発酵の酵母を使いながら、ラガーのように低温で熟成させるビールです。
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| ケルシュ(ケルン) | 3.5〜5 | 4.4〜5.2 | 18〜30 | 5B。上面発酵で低温熟成。「ケルシュ協定」(1986年)で守られた名前。ケルンでは下面発酵が禁止されていた |
| アルト(デュッセルドルフ) | 9〜17 | 4.3〜5.5 | 25〜50 | 7B。19世紀後半、ラガーの技術を使って上面発酵で造られた |
ベルギーのエールとトラピスト
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| セゾン(ベルギー・ワロン地方) | 5〜14(淡色)/15〜22(濃色) | 3.5〜5.0(テーブル)/5.0〜7.0(標準)/7.0〜9.5(スーパー) | 20〜35 | 25B。農家で働く人向けのエール |
| ベルジャン・ゴールデン・ストロングエール(ベルギー) | 3〜6 | 7.5〜10.5 | 22〜35 | 25C。第一次世界大戦後、モルトガット醸造所(デュベル)が開発 |
| デュッベル(ベルギー) | 10〜17 | 6.0〜7.6 | 15〜25 | 26B。1922年、ウェストマール |
| トリペル(ベルギー) | 4.5〜7 | 7.5〜9.5 | 20〜40 | 26C。1931年、ウェストマール |
| ベルジャン・ダーク・ストロングエール(ベルギー) | 12〜22 | 8.0〜12.0 | 20〜35 | 26D。ベルギーの外では「クアッド」とも呼ばれる。「クアドルペル」は特定の銘柄の名前、と BJCP |
- 名前に注意:「デュベル(Duvel)」は銘柄の名前(スタイルは 25C)、「デュッベル(Dubbel)」はスタイルの名前(26B)です
トラピストはスタイルではない
- BJCP は、カテゴリ26「修道院のエール」の説明で、トラピストなどの名前は「保護された名称が多く、スタイルではなくビールの出どころを表す」と書いています。トラピストは、造り手(修道院)を表す名前です
- 国際トラピスト協会の製品のページは「加盟する10の修道院が、自分たちのビールを造って売っている」と書いています。同じ協会のビールの一覧に載る銘柄は、ラ・トラップ、シメイ、ロシュフォール、ウェストマール、ウェストフレテレン、モン・デ・カ、カルデーニャ、マウント・セント・バーナード、オルヴァル、トレ・フォンターネの10です(2026年10月2日確認)
- ただし、協会のサイトでは、ページによって数がちがいます(ATP ラベルのページのトラピスト・ビールは8か所、ビールのページは「11の修道院」など)。数は変わりうるものとして読んでください
- 「Authentic Trappist Product(ATP)」のラベルは、修道院のすぐ近くで、修道士・修道女の監督のもとで造り、利益を共同体・連帯・慈善に使うことなどが条件で、ライセンスは5年です
自然発酵とサワー
酸味のあるビールです。ランビックの仲間は、空気中の酵母や細菌で発酵させます。
| スタイル(発祥) | 色 SRM | 度数 % | 苦味 IBU | 特徴(BJCP) |
|---|---|---|---|---|
| ランビック(ベルギー・ブリュッセル周辺) | 3〜6 | 5.0〜6.5 | 0〜10 | 23D。自然発酵の「野生の」エール。ゼンネ渓谷・パヨッテンラントの農家の伝統。ブレンドせず、若いうち(6か月)に樽から |
| グーズ(同) | 5〜6 | 5.0〜8.0 | 0〜10 | 23E。若いランビックと熟成したランビックをブレンド。泡が強い |
| フルーツ・ランビック(同) | 3〜7 | 5.0〜7.0 | 0〜10 | 23F。熟成の途中で果実を加える。クリークはサクランボ |
| フランダース・レッド(ベルギー西フランデレン) | 10〜17 | 4.6〜6.5 | 10〜25 | 23B。ローデンバッハ醸造所(1821年創業)が代表。大きな木樽で最長2年熟成 |
| ベルリーナー・ヴァイセ(ドイツ・ベルリン) | 2〜3 | 2.8〜3.8 | 3〜8 | 23A。1809年、ナポレオンの軍が「北のシャンパン」と呼んだ |
| ゴーゼ(ドイツ・ゴスラー→ライプツィヒ) | 3〜4 | 4.2〜4.8 | 5〜12 | 23G。塩とコリアンダーを使う。いまのものは乳酸菌を加えて造る |
- 米国の野生酵母・細菌のビールは、BJCP では別のカテゴリ28「アメリカン・ワイルドエール」です
トラピストの代表と、自然発酵のランビックを試したい人へ。シメイは上の協会の一覧に載る銘柄で、リンデマンスはランビックの醸造所です。
そのほかのカテゴリと歴史的なスタイル
- カテゴリ29〜34は、果実(フルーツビール)、スパイス、麦以外の発酵原料、燻製、木樽、そのほかの特別なビールです
- カテゴリ27「歴史的なビール」には9つのスタイルがあります:ケラービア、ケンタッキー・コモン、リヒテンハイナー、ロンドン・ブラウンエール、ピヴォ・グロジスキェ、禁酒法以前のラガー、禁酒法以前のポーター、ロッゲンビア(ライ麦のビール)、サハティ
- ラドラーは、BJCP 2021 にスタイルとしての項目はありません
日本独自の区分(発泡酒・新ジャンル・ノンアル・ドライ)
| 区分 | どういうものか | 出典 |
|---|---|---|
| 発泡酒・新ジャンル(発泡酒②) | 日本の酒税法の区分で、スタイルではない。味のタイプは商品ごとにちがう | 酒税法 |
| ノンアルコール・ビールテイスト飲料 | アルコール分1%未満なら法律上お酒ではない。業界の自主基準の「ノンアルコール飲料」は0.00%のものだけ。BJCP は、ドイツでは低アルコール・ノンアルコールのヴァイスビアが人気と書いている | 酒税法第2条、飲酒に関する連絡協議会の自主基準、BJCP 10A |
| ドライ | アサヒスーパードライは1987年3月17日発売。アサヒは「ビールに『辛口(ドライ)』という新しい概念を生み出しました」と書いている。BJCP では 2A インターナショナル・ペール・ラガーの例 | アサヒ、BJCP |
| 日本の淡色ビール | ビール酒造組合とサントリーは「ピルスナー」タイプに属すると説明。国産ビールのアルコール分は「大部分が4.5~5.5%」 | ビール酒造組合、サントリー |
| 日本の黒ラガー | BJCP は、ドイツのシュバルツが「日本で造られる黒ラガーのお手本になった」と書いている | BJCP 8B |
| ライスラガー | 米国 Brewers Association が2026年版で新設したスタイル。米を15%以上使う | Brewers Association 2026 |
- ビール酒造組合によると、昭和60年代に各社からドライビールなどが発売され、平成6年(1994年)に713万5千kLの過去最高の製造量になりました
ラベルの読み方
お酒は原材料名の表示が義務ではない
ふつうの加工食品は、食品表示基準で原材料名やアレルギーの表示が義務です。ところが、お酒は例外です。
| ルール | お酒(ビール)での扱い |
|---|---|
| 食品表示基準 第5条 | 「酒類を販売する場合」は、原材料名・アレルゲン・原産国名を表示しなくてよい |
| 食品表示基準 第3条第3項 | お酒は、保存の方法、賞味期限、栄養成分の量と熱量も省略できる |
| 酒類業組合法 第86条の5 | お酒の品目などは、容器の見やすい場所に表示する |
| ビールの表示に関する公正競争規約 | 業界の自主ルール(実施はビール酒造組合)。ビールである旨、原材料名、賞味期限、保存方法、内容量、アルコール分、事業者名、製造所、原料原産地名などを表示する |
| 二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準 | 「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています」などの表示。文字は6ポイント以上(360ml以下は5.5ポイント以上) |
- ビールの原材料名が缶に書いてあるのは、食品表示基準ではなく公正競争規約によるものです。キリンの説明では、この規約は1979年に定められました
- この規約の対象は、酒税法の「ビール」で、国内で容器に詰めたものです。発泡酒や新ジャンルは、この規約の対象ではありません
- 原料原産地名(例:「麦芽(外国製造又は国内製造(5%未満))」)は、2022年4月からの製造分で表示が必要になりました
- お酒のアレルギー表示が義務でない理由について、消費者庁は「顔が赤くなる、動悸等の症状が、特定原材料等の抗原性によるものかアルコールの作用によるものかを判断することが極めて困難」と説明しています。そのため、アレルギーの表示がないことは「入っていない」という意味にはなりません(キリンは、のどごし<生>で「大豆」を任意に表示しています)
原材料名は「法律の順」
規約の施行規則第2条は、ビールの原材料名を次のように書くと決めています。
使用した原材料(水を除く。)を酒税法、同施行令及び同施行規則に定められている品名で、その順序に従って表示するものとする。ただし、とうもろこしはコーン、でんぷんはスターチと表示することができる。
- つまり、ビールの「麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ」は、多い順ではなく、法律に書かれた順です(施行令第6条の順:麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でん粉、糖類…)
- 「米」が「コーン」より前にあっても、米のほうが多いとは限りません
- ふつうの加工食品の原材料名は重さの順なので、読み方がちがう点に注意してください
「生」「ラガー」「黒ビール」「スタウト」の定義
公正競争規約第4条と施行規則第3条は、次の言葉の使い方を決めています。
| 言葉 | 使える条件(原文の要点) |
|---|---|
| 生ビール・ドラフトビール | 「熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ」表示してはならない。容器には「熱処理していない」旨も書く |
| ラガービール | 「貯蔵工程で熟成させたビールでなければ」表示してはならない |
| 黒ビール・ブラックビール | 「濃色の麦芽を原料の一部に用いた色の濃いビール」 |
| スタウト | 「濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビール」 |
| 特製 | 原材料・製造工程・製造設備のどれかが、業界の一般と「著しい差異」があり、客観的に説明できるとき。理由も書く |
| 吟醸 | 麦芽のエキス含量80.5%以上、アロマホップを80%以上、一番麦汁だけを使う、などの条件をすべて満たすとき |
| 高濃度 | 原麦汁エキス13%以上 |
| 高アルコール | アルコール分6%以上 |
| 使えない言葉 | 「本醸造」「本造り」「本仕込」 |
規約は、次のような表示を「不当表示」としています(施行規則第4条)。
- ビールでない飲み物に「〇〇ビール」「〇〇エール」「〇〇スタウト」などと書く
- 薬のような効き目をうたう
- 「最高」「最高級」「ベスト」などの最上級の言葉
- 根拠のない「最古」「日本一」「第1位」、根拠のない「新鮮」「フレッシュ」
- 「熱処理していない」ことを理由に、生ビールの品質のよさを、事実の裏付けなく強調する
- 酔わないと思わせる表示
「ピルスナー」「プレミアム」には定義がない
- 規約と施行規則には、「ピルスナー」「プレミアム」の定義はありません(全文を確認)
- 「プレミアム」は、「最高」のような最上級の表現に当たらない範囲で、各社が自由に使っている言葉です
- BJCP は、世界の大量生産のラガー(インターナショナル・ペール・ラガー)について「ピルスナー」と紛らわしく表示されることが多いと書いています。缶の「ピルスナー」は、スタイルの目安にはなっても、決まった基準があるわけではありません
アルコール分・純アルコール量・20歳の表示
- アルコール分は「〇〇%以上〇〇%未満」(1度の幅)か、「5%」のような書き方で表示します(規約の施行規則第2条)
- 純アルコール量(g)の表示:酒類業界の団体が、容器に「100mlあたり」「1本あたり」「1杯あたり」のどれかでグラムを書くことに合意しています(例:350ml缶のビールで「1本14g」)。開始時期は「ラベル切替えタイミングなどを考慮した上で速やかに」とされています(ビール酒造組合、2025年9月22日の厚生労働省の会議資料)。キリンは2022年5月から順次表示を始めています
- 計算式は「容量(ml)×アルコール分(%)÷100×0.8」です(サッポロ)。5%・350mlなら14gです
- 20歳未満の飲酒防止の表示は、「これはお酒です」や「お酒はゆっくり適量を」だけでは足りません(国税庁の通達)
大手23銘柄の原材料と添加物
各社の公式ページで、2026年10月2日に確認しました。原材料名のうち「/」の後ろに書かれたものが添加物です。品目は各社のページの区分です。
品目「ビール」
| 銘柄 | 度数 | 原材料 | 添加物 |
|---|---|---|---|
| アサヒスーパードライ | 5% | 麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ | なし |
| アサヒ生ビール黒生 | 5% | 麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ | なし |
| アサヒスタウト | 8% | 麦芽、ホップ、糖類 | なし |
| キリン一番搾り生ビール | 5% | 麦芽、ホップ | なし |
| キリン一番搾り 糖質ゼロ | 5% | 麦芽、ホップ、糖類 | なし |
| サッポロ生ビール黒ラベル | 5% | 麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ | なし |
| サッポロラガービール(赤星、熱処理) | 5% | 麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ | なし |
| ヱビスビール | 5% | 麦芽、ホップ | なし |
| ザ・プレミアム・モルツ | 5.5% | 麦芽、ホップ | なし |
| サントリー生ビール | 5% | 麦芽、ホップ、コーン、糖類 | なし |
| パーフェクトサントリービール | 5.5% | 麦芽、ホップ、糖類 | なし |
(麦芽の原産地の書き方は省略しました)
品目「発泡酒」
| 銘柄 | 度数 | 原材料 | 添加物 |
|---|---|---|---|
| キリン淡麗グリーンラベル | 4.5% | 麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類 | なし |
| アサヒスタイルフリー<生> | 4% | 麦芽、麦芽エキス、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類、酵母エキス、食物繊維、大豆たんぱく | なし |
| アサヒスタイルフリー トリプルゼロ | 6% | 発泡酒(麦芽エキス、ホップ、米、コーン、スターチ、糖類、大豆たんぱく)、スピリッツ(アルコール、ホップ) | 香料、調味料(アミノ酸)、カラメル色素 |
| サッポロ 極ZERO | 5% | 麦芽、ホップ、大麦、糖類、スピリッツ、水溶性食物繊維 | 炭酸、香料、苦味料、塩化カルシウム、カラメル色素、酸味料、安定剤(アルギン酸エステル) |
| サントリー ジョッキ生 | 5% | ホップ、コーン、糖類、醸造アルコール、食物繊維、酵母エキス、コーンたんぱく分解物 | 香料、酸味料、カラメル色素、クエン酸K、甘味料(アセスルファムK) |
| アサヒ オリオンゼロライフ | 4% | 発泡酒(麦芽、ホップ、小麦、大麦、糖類、食物繊維、大豆ペプチド、酵母エキス)、スピリッツ(大麦) | カラメル色素、甘味料(アセスルファムK) |
旧・新ジャンル(発泡酒②)
| 銘柄 | 度数 | 原材料 | 添加物 |
|---|---|---|---|
| キリン 本麒麟 | 6% | 発泡酒(麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類)、大麦スピリッツ | なし |
| キリン のどごし<生> | 5% | ホップ、糖類、大豆たんぱく、酵母エキス(麦芽・麦なし) | なし |
| キリン のどごし ZERO | 4% | 発泡酒(麦芽エキス、ホップ、糖類、食物繊維、大豆たんぱく)、麦スピリッツ | 乳化剤 |
| サッポロ ドラフトワン | 5% | ホップ、糖類、エンドウたんぱく | カラメル色素 |
| サッポロ ホワイトベルグ | 5% | 発泡酒(大麦麦芽、小麦麦芽、ホップ、大麦、コリアンダーシード、オレンジピール)、スピリッツ(大麦) | なし |
| サントリー 金麦(これまでの発泡酒②) | 5% | 発泡酒(麦芽、ホップ、糖類)、スピリッツ(小麦) | なし |
(参考・ノンアルコール)サントリー オールフリー(0%):原材料は麦芽、ホップ/添加物は炭酸、香料、酸味料、カラメル色素、ビタミンC、苦味料、甘味料(アセスルファムK)。
読み取れること:
- 品目が「ビール」の11銘柄には、添加物がありませんでした。副原料は米・コーン・スターチ・糖類まででした(ほかに、アサヒ スーパードライ 爽快辛口には「/炭酸」の表示があります)
- 大豆たんぱく・エンドウたんぱく・コーンたんぱく分解物・酵母エキス・食物繊維は、添加物ではなく原材料の側に書かれています。これは、新ジャンルの定義の「決められた物品」と同じものです
- 甘味料のスクラロースは、今回確認したビール類(ビール・発泡酒・新ジャンル・ノンアル)では見つかりませんでした
- サントリーの金麦は、2026年10月6日発売予定の新しい金麦から品目が「ビール」になります。キリンの本麒麟も、2026年11月4日発売分から品目が「ビール」(5%)に変わります。上の表はこれまでの金麦・本麒麟です
糖質ゼロ・プリン体ゼロ系の添加物
添加物が入っていたのは、発泡酒・新ジャンル・ノンアルだけで、とくに名前に「ZERO」「ゼロ」が付く銘柄に多く見られました。
| 添加物 | 入っていた銘柄(今回の確認の範囲) | くわしく |
|---|---|---|
| カラメル色素 | トリプルゼロ、極ZERO、ジョッキ生、オリオンゼロライフ、ドラフトワン、オールフリー | カラメル色素の記事 |
| 香料 | トリプルゼロ、極ZERO、ジョッキ生、オールフリー | 香料の記事 |
| 甘味料(アセスルファムK) | ジョッキ生、オリオンゼロライフ、オールフリー | 甘味料の記事 |
| 酸味料 | 極ZERO、ジョッキ生、オールフリー | 添加物データベース |
| 苦味料 | 極ZERO、オールフリー | 添加物データベース |
| そのほか | 調味料(アミノ酸)、乳化剤、安定剤(アルギン酸エステル)、塩化カルシウム、クエン酸K、炭酸、ビタミンC | 添加物データベース |
「糖質ゼロ」の表示のルールも知っておくと、ラベルが読みやすくなります(食品表示基準)。
- お酒は栄養成分の表示が義務ではありません。ただし「糖質ゼロ」のように栄養の表示をするときは、食品表示基準のルールがかかります
- 「糖質」は、100mlあたり0.5g未満なら「0」と表示できます。つまり「糖質ゼロ」は「糖質が100mlあたり0.5g未満」という意味です
- 「含まない」「低い」の基準表(別表第十三)に載っているのは「糖類」で、「糖質」は載っていません。「糖質オフ」「糖質〇%カット」についての数値の基準は、食品表示基準では確認できませんでした
- 糖質がゼロでも、アルコールのカロリーは残ります(アルコール1gで7kcal)。5%・350mlなら純アルコール14gで約98kcalです
- 品目「ビール」の「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は、原材料が麦芽・ホップ・糖類で、添加物はありませんでした
プリン体・カロリー・グルテンの話はビールと健康の記事、「無添加」と書けるルールは「無添加」表示のルールの記事で書いています。
ドイツのビール純粋令
1516年の原文は「大麦・ホップ・水」
1516年、バイエルンの領邦議会(インゴルシュタット)で決まり、ヴィルヘルム4世とルートヴィヒ10世が公布した「領邦令」の一部が、いわゆる「ビール純粋令」です。
- 原文は、ビールに「大麦(Gersten)、ホップ、水」以外を使ってはならない、と書いています(バイエルン州立図書館の学術事典 Historisches Lexikon Bayerns)
- 酵母は入っていません。ドイツ醸造者連盟は、酵母は「当時、醸造での働きが分かっていなかった」ため、後からはっきり加えられた、と説明しています
- 連盟は原文の「大麦」を「麦芽(Malz)」と言いかえて紹介しています
- 日付は資料で食い違います。ドイツ醸造者連盟は4月23日(ドイツでは「ドイツビールの日」)、バイエルンの学術事典は「1516年4月24日付で、7月に最終的に話し合われて印刷された」としています
- 連盟によると、目的は3つでした。①高すぎるビールの値段から守る ②パン用の小麦をビールに使わせない ③ヒヨスやチョウセンアサガオ、すすなどの有害な混ぜ物を防ぐ
- それより前にも、1487年のミュンヘン、1489年のバンベルク(麦芽・ホップ・水・酵母)などに同じようなルールがありました
- ドイツ全体に広がったのは、バーデン1896年、ヴュルテンベルク1900年、そして1906年の帝国の法律で、それ以来ドイツ全土で続いている、と連盟は説明しています。連盟は純粋令を「今も有効な世界最古の消費者保護法」と表現しています(連盟の表現です)
1987年の欧州司法裁判所の判決
1987年3月12日、欧州司法裁判所は、欧州委員会がドイツを訴えた事件(事件178/84)で判決を出しました。
- 当時の根拠の法律は「ビール税法」(1952年)の第9条・第10条でした。第9条が造り方、第10条が「ビール」という名前を使うルールです。米・とうもろこし・こうりゃんは、ビールの原料の「穀物」に当たらないとされていました
- 判決は、ほかの加盟国で適法に造られ売られているビールを、このルールに合わないという理由で売らせないのは、EEC条約第30条に反する、としました
- 理由として、「ビール」はほかの加盟国では、大麦麦芽だけのものも、米やとうもろこしを加えたものも含む一般的な名前であること、消費者への情報はラベルの表示で足りること、添加物を全部禁じるのは釣り合いを欠くことを挙げています
- ドイツ醸造者連盟は、1987年からドイツでも純粋令どおりでない外国のビールが売られるようになったが、ドイツの醸造所は純粋令どおりに造ることになっている、と説明しています
いまのドイツの法律
- いまの純粋令の根拠は、「暫定ビール法(Vorläufiges Biergesetz)」だと、ドイツ醸造者連盟は説明しています
- 暫定ビール法の第9条は、下面発酵のビールは大麦麦芽・ホップ・酵母・水だけ、上面発酵のビールはほかの麦芽(小麦麦芽など)や糖類も使えると書いています(民間の法令サイトで確認した条文)
- ビール令(1990年)第1条は、外国で造られ、その国で「ビール」として売れるものは、この条件に合わなくても「Bier」と名乗れる、としています
- 連盟によると、純粋令どおりのビールは、EU の添加物規則で「伝統的な食品」の扱いです
日本のビールとの関係
- 日本では、酒税法でビールに米・コーン・スターチ・糖類などを使えます。ビール酒造組合は、このうち米・コーン・スターチについて「アメリカやヨーロッパ諸国(ドイツを除く)でも…広く使われています」と説明しています
- 大手23銘柄の表のうち、原材料が「麦芽、ホップ」だけのビールは、一番搾り生ビール・ヱビスビール・ザ・プレミアム・モルツの3つでした
日本のクラフトビール
1994年の規制緩和で生まれた
- 1994年(平成6年)4月、酒税法が改正され、ビールの製造免許に必要な1年の最低製造量が2,000kLから60kLに下がりました。ビール酒造組合は「わが国でもマイクロブルワリーやパブブルワリーなどの小規模なビール醸造所が登場」と説明しています
- いまも、最低製造量はビール60kL、発泡酒6kLです(酒税法第7条第2項)
- 国税庁のアンケート(2025年1月1日現在、回答622者)では、製造者は「ビールだけ」48者、「発泡酒だけ」324者、「ビールと発泡酒」250者でした。発泡酒の免許だけを持つ製造者がいちばん多い、ということです
- 2018年にビールの定義が広がったとき、それまで発泡酒の免許を持っていた人は、ビールの免許を受けたとみなされました(国税庁Q&A)
製造者数の推移は、ビールの歴史と世界の記事のグラフにあります。
大手14者で95.3%
国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和7年アンケート)」で、2024年のビールの国内売上数量を見ると、次のとおりです(回答のあった者の合計で、全数ではありません)。
| 区分 | 者数 | ビールの国内売上数量 | 割合(ウラヨミの計算) |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 14 | 2,520,339kL | 95.3% |
| 中小企業者 | 518 | 124,965kL | 4.7%(中小と個人の合計) |
| 個人事業者 | 90 | 156kL | (上に含む) |
| 合計 | 622 | 2,645,460kL | 100% |
- 発泡酒では、中小と個人の割合は3.2%、ビールと発泡酒の合計では4.2%でした
- 同じ資料の都道府県別では、長野県のビールの国内売上数量は9,527kLでした(2024年)
- 名前が「地ビール等製造業の概況」だった最後の調査(平成30年度分、大手5社を除く)では、大手5社以外のビールは製成数量の1.1%、回答した303者の83.2%は年に100kL未満の造り手でした
「地ビール」「クラフトビール」の定義
- 酒税法・施行令・施行規則には、「地ビール」「クラフト」という言葉はありません(現行の条文を検索して0件)。法律の区分はビールと発泡酒だけです
- 業界の団体の定義はあります。2020年の報道(マイナビニュース)が紹介した全国地ビール醸造者協議会の定義は、①1994年4月より前からの大資本の大量生産ビールから独立している ②1回の仕込み(麦汁の量)が20kL以下 ③伝統的な製法か地域の特産品を使い、地域に根付いている、の3つです。ただし、協議会の元のサイトは今は別のサイトになっていて、原文は確かめられませんでした
- 全国地ビール醸造者協議会の加盟社は154社です(2025年9月の厚生労働省の会議資料の時点)
- 米国では、Brewers Association が「小さく独立した醸造所」と定義しています。小さい=年に600万バレル以下、独立=クラフト以外の酒類業者の所有・支配が25%未満です
国内のクラフトビールを、エール・ラガー・ピルスナー・白・黒などのタイプから選びたい人へ。長野の地酒の通販で、ヤッホーブルーイングなど長野の6つのブルワリーのビールをタイプ別に扱っています。
楽しみ方の事実
温度・注ぎ方・グラス
- 温度:キリンは「6℃~8℃が目安…夏はやや低め、冬はやや高め」とし、「冷やしすぎるとビール本来の味が分からなくなり、泡もきれいに立ちません」と書いています
- 3度注ぎ(キリン):①最初はゆっくり、途中から勢いよく注ぐ ②ビールと泡が1:1くらいになったら、泡が1cm盛り上がるまで注ぎ足す ③泡が落ち着いたら、泡を押し上げるようにゆっくり注ぐ
- ヴァイツェン(キリン):グラスを水平近くまで傾けて静かに注ぎ、4分の3まで来たらグラスを立てて泡を6〜7cmに。専用のグラスがないときは、ビールと泡を「6:4」に
- グラス(キリン):グラスの内側に泡が付くのは汚れで炭酸が分かれている状態。専用のスポンジで洗い、ふきんで拭かずに自然に乾かす
ビールに氷を入れると、溶けて薄まります。氷を使わずにグラスのビールを冷たく保ちたいときの道具もあります。
泡の役割
- 泡は「炭酸ガスの気泡にビール中のたんぱく質や炭水化物、ホップ樹脂などがくっついてできています」(キリン)
- 泡は「炭酸ガスが逃げたり、ビールが空気と触れて味が落ちたりするのを防ぐ蓋の役割」をします(キリン)
- ホップの樹脂の成分が、泡立ちと泡もちをよくします(キリン、ビール酒造組合)
日光臭と茶色の瓶
- ビールに日光が当たると、「日光臭」と呼ばれるいやなにおいが出ます。原因の物質は3-メチル-2-ブテン-1-チオールです
- しくみは、光で活性化したビタミンB2(リボフラビン)が、ホップの苦味成分(イソα酸)を壊し、その分解物からこの物質ができる、というものです(Huvaere ら、J Agric Food Chem 2005年)。紫外線の部分の光で生じます(Pratap-Singh ら、Foods 2023年)
- サントリーは「ビールに直射日光が当たると風味が落ちてしまうので、それを防ぐために茶色の瓶を用いています。しかし茶色でも日光の遮断効果が100%というわけではありません」と書いています
- BJCP は、日光臭はスタイルの特徴ではなく「取り扱いの欠陥」としています
賞味期限と保存
| 会社 | 国内のビールの賞味期間(公式の一覧で確認) |
|---|---|
| アサヒ | 9か月(アサヒスタウトは12か月) |
| キリン | 9か月(「ビール類は製造から9ヶ月」) |
| サントリー | 9か月 |
| サッポロ | 12か月 |
- 規約では、賞味期限は「年月日」で書きますが、3か月を超えるものは「年月」でもかまいません。キリンは、「20●●年●月」の表示は「表示されている年月末まで」と説明しています
- ビール酒造組合は、賞味期限は「保存試験の結果をもとにして、十分な余裕をもたせて設定」していると説明しています
- 保存方法の表示の例は「日なたをさけ涼しいところに保存してください」です(規約の施行規則)。キリンも、日光や、高すぎる・低すぎる温度を避けるよう書いています
- びんには「びんへの衝撃・冷凍保管をさけ、日なたに長時間置かないでください」という注意の例が決められています
- びんのサイズは、大びん633ml・中びん500ml・小びん334mlなど、合わせて約6種類です。大びんの633mlは、昭和15年(1940年)の酒税法で容量をそろえることになったとき、各工場の大びんの中でいちばん小さかった3.51合(633.168ml)に合わせたもので、昭和19年に決まりました(ビール酒造組合)
もっと知りたい人へ
ビアスタイルや造り方を、図や写真でもっと詳しく知りたい人へ。
この記事で紹介したもの(まとめ)
記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。
| 紹介したもの | 購入先 |
|---|---|
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ご注意 お酒は20歳になってから。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。妊娠中・授乳中の飲酒、飲酒運転はやめましょう。ここで紹介したものは、健康によいことを示すものではありません。価格・送料は変わることがあります(送料は地域で変わります)。
まとめ
- 日本の法律の「ビール」は、麦芽が(水・ホップ以外の)原料の50%以上。「5%まで」は果実・香味料だけの制限で、米・コーン・スターチ・糖類にはかからない
- 新ジャンルは2023年10月に発泡酒に統合(発泡酒②)。2026年10月1日、ビール・発泡酒・旧新ジャンルの酒税は350mlあたり54.25円に一本化され、金麦・麦とホップ・GOLD STAR・クリアアサヒ、11月には本麒麟もビールへ
- 造り方の大きなちがいは発酵。ラガー(下面)・エール(上面)・自然発酵。ラガー酵母はエール酵母とパタゴニアの野生酵母の雑種
- ビアスタイルは BJCP 2021 で34カテゴリ・107スタイル。日本の大手のビールの多くはピルスナー系のラガーで、「発泡酒」「新ジャンル」はスタイルではなく税の区分
- ビールの原材料名は公正競争規約で表示され、順番は法律の順。「生」は熱処理していないこと。「ピルスナー」「プレミアム」に定義はない
- 確認した23銘柄では、品目「ビール」に添加物はなく、添加物は発泡酒・新ジャンル・ノンアル、とくに「ゼロ」系に入っていた
- 純粋令の原文は大麦・ホップ・水で、酵母はなかった。1987年の判決で、ドイツでも外国のビールは売れるようになった
参考にした資料
- 酒税法 第2条・第3条第12号・第18号・第7条・第23条、酒税法施行令 第6条・第7条の2、酒税法施行規則 第4条・第4条の2(e-Gov 法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000006
- 国税庁「平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A」(平成30年3月、令和元年9月改訂)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0018004-031_01.pdf
- 国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」(令和5年8月)https://www.nta.go.jp/taxes/sake/pdf/0023008-027.pdf
- 国税庁「酒のしおり」(令和8年7月)酒税率一覧表・ビールの製造工程図・付表 https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2026/index.htm
- 財務省「酒税に関する資料」https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d07_0.pdf
- 国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和7年アンケート)」表55〜57 https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizo_oroshiuri/r07/pdf/all.pdf
- 国税庁課税部酒税課「地ビール等製造業の概況(平成30年度調査分)」https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/beer/pdf/h30/h30beer_01.pdf
- 国税庁 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第86条の6関係(20歳未満の飲酒防止の表示)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/8-09c.htm
- 国税庁告示「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」(令和元年改正)https://www.nta.go.jp/law/kokuji/190614/03.htm
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第3条・第5条・別表第九・別表第十三(e-Gov)https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
- 酒類業組合法 第86条の5(e-Gov)https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000007
- 消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_260401_02.pdf
- ビールの表示に関する公正競争規約・同施行規則(実施機関:ビール酒造組合。全国公正取引協議会連合会の掲載 PDF を Web アーカイブの2025年4月26日版で確認)
- ビール酒造組合「ビールの造り方」https://www.brewers.or.jp/tips/production.html /「世界の主なビール」https://www.brewers.or.jp/tips/type.html /「ビールの歴史」https://www.brewers.or.jp/tips/histry.html / なんでもQ&A
- ビール酒造組合「アルコール健康障害対策関係者会議 説明資料」(2025年9月22日、厚生労働省掲載)https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001566490.pdf
- 飲酒に関する連絡協議会「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」(令和8年7月1日最終改正)https://www.brewers.or.jp/contents/self-pdf/Self-Regulatory_jap.pdf
- BJCP「Beer Style Guidelines 2021 Edition」https://www.bjcp.org/bjcp-style-guidelines/
- Brewers Association「Beer Style Guidelines」2026年版 https://www.brewersassociation.org/edu/brewers-association-beer-style-guidelines/
- 国際トラピスト協会 https://www.trappist.be/en/products/ / https://www.trappist.be/en/products/beers/ / https://www.trappist.be/en/about-ita/atp-label/
- Historisches Lexikon Bayerns「Purity Law, 1516」https://www.historisches-lexikon-bayerns.de/Lexikon/EN:Purity_Law,_1516
- Deutscher Brauer-Bund(ドイツ醸造者連盟)「Entstehung」https://brauer-bund.de/reinheitsgebot/entstehung/ /「Fragen und Antworten」https://brauer-bund.de/reinheitsgebot/fragen-und-antworten/
- 欧州司法裁判所 判決 事件178/84 Commission v Germany(1987年3月12日、ECLI:EU:C:1987:126)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:61984CJ0178
- Vorläufiges Biergesetz §9 https://lxgesetze.de/vorlbierg/9 / Bierverordnung §1 https://www.gesetze-im-internet.de/bierv/__1.html
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- Cornell M. Brewery History. 2003;111:63-68(IPA の歴史)
- Anderson R. Brewery History. 2004;113:27-30(ポーターの歴史)
- アサヒビール「原材料・成分一覧表」https://www.asahibeer.co.jp/products/ing_beer.html / ニュースリリース 2026年5月29日 https://www.asahibeer.co.jp/news/2026/0529_3.html ・ 2026年9月18日 https://www.asahibeer.co.jp/news/2026/0918_2.html
- キリンビール 各商品ページ https://www.kirin.co.jp/alcohol/beer/ichiban/ ほか / お客様相談室 FAQ(id 50053・50094・50096・50098・50807)/ キリンホールディングス ニュースリリース 2026年1月15日・5月20日 / キリンジャーナル(2024年10月31日)
- サッポロビール「栄養成分一覧」https://www.sapporobeer.jp/product/nutrition/ / FAQ https://www.sapporobeer.jp/support/customer/faq/0000000277/ / ニュースリリース 2026年6月17日 https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000018638/
- サントリー「栄養成分一覧 ビール類」https://products.suntory.co.jp/beer/ingredient.html / ニュースリリース 2026年7月16日 https://www.suntory.co.jp/news/article/2026/15085.html / お客様センター FAQ(001704・005520・005799)
- Pilsner Urquell「History」https://www.prazdroj.cz/en/about-us/history
- Brewers Association「Craft Brewer Definition」
- マイナビニュース(2020年8月21日、全国地ビール醸造者協議会の定義の紹介)