ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.01

豆板醤とは? 四川の郫県豆板醤と日本・台湾の豆板醤のちがい、塩分・カビ毒・ヒスタミンを公的資料で確かめる

PR この記事には、楽天市場のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

麻婆豆腐や回鍋肉に欠かせない豆板醤(トウバンジャン)。お店には、中国・四川の「郫県(ピーシェン)豆板醤」、日本のメーカーの豆板醤、台湾で作られた豆板醤と、いろいろな種類が並んでいます。

よく見かける言い方には、次のようなものがあります。

  • 「本場の豆板醤は、そら豆と唐辛子だけで作る」
  • 「豆板醤は塩分がとても多い」
  • 「発酵食品だから、カビ毒(アフラトキシン)が心配」
  • 「発酵でヒスタミンができる」

この記事では、

  • 豆板醤とは何か。四川の郫県豆板醤は、中国の規格でどう決められているのか
  • 日本や台湾で売られている豆板醤は、原材料がどうちがうのか
  • 甜麺醤(テンメンジャン)・コチュジャン・XO醤とは何がちがうのか
  • 塩分はどのくらいか
  • カビ毒の基準は日本と中国でどうちがい、輸入のときに違反になった例はあるのか
  • 発酵でできるヒスタミンなどについて、研究で何が分かっているのか

を、国の資料と論文で確かめます。

結論

  • 四川の郫県豆板醤は、中国の地理的表示(産地の名前を守るしくみ)の規格 GB/T 20560-2006 で、赤唐辛子とそら豆が主原料、食塩と小麦粉が副原料と決められています。そら豆の麹を6か月以上発酵させ、唐辛子と合わせて3か月以上、かき混ぜ・天日・夜露にさらす工程で熟成させます。規格に合わないものは「郫県豆瓣」と名乗れません
  • 日本や台湾で売られる豆板醤は、原材料がさまざまです。日本のメーカーの例では、そら豆のほかに中華大豆みそや砂糖を使うものがあります。この記事で紹介する台湾製の「有機トウバンジャン」(風と光)は、そら豆を使わず大豆と小麦を使い、原材料でいちばん多いのは砂糖です。どれが正しいということではなく、作り方と原材料がちがいます
  • 食品成分表の「トウバンジャン」は、100gあたり食塩相当量17.8gで、こいくちしょうゆ(14.5g)より多めです。小さじ1(約5.7g)で約1.0gになります(成分表の数字から計算)。ただし商品によって差があり、日本のある商品は13.5gでした
  • カビ毒アフラトキシンは、日本では食品中の総アフラトキシン10µg/kgを超えると食品衛生法違反です。中国は豆板醤のような醸造した醤(ジャン)のアフラトキシンB1を5.0µg/kg以下としています。厚生労働省が公開している輸入時の違反事例(2002年度から2026年9月まで)を調べたところ、豆板醤のアフラトキシン違反は2015年度の台湾産2件(18から29µg/kg)でした
  • 発酵でできるヒスタミンなどの「生体アミン」は、中国の市販品406点の調査で、ヒスタミンの中央値が1kgあたり15から23mgでした。研究では、塩を減らして発酵させると生体アミンが増えやすいことが報告されています。ただし豆板醤を食べた人の健康を調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした

この記事で紹介しているもの

記事の中で、論点に合わせて次のものを紹介しています(楽天市場のリンクです)。

こんな人に 紹介しているもの 場所
添加物の表示がない、有機原料の豆板醤を使いたい 有機トウバンジャン(風と光、台湾製)。原材料は8つで、添加物の表示なし。豆は大豆、いちばん多いのは砂糖 日本や台湾で売られる豆板醤の原材料
四川の郫県豆板醤と同じ組み合わせの原材料で比べたい ピーシェン豆板醤(三明物産、中国製)。原材料は唐辛子・そら豆・食塩・小麦粉の4つ 日本や台湾で売られる豆板醤の原材料
塩分を量って使いたい 計量スプーン 大さじ・小さじ・小さじ1/2 の3本組(パール金属、日本製) 塩分は小さじ1で約1g

豆板醤とは

豆板醤は、唐辛子と豆を塩で発酵させた、辛みのある中国の調味料です。日本の食品成分表(文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」)では、「トウバンジャン」の名前で「辛味調味料類」に入っています。

「醤(ジャン)」は、豆や穀物を発酵させたみそ状の調味料のことです。豆板醤のほかに、甜麺醤・豆豉醤・コチュジャンなど、名前に「醤」がつく調味料がたくさんあります。

四川の郫県豆板醤は規格で作り方が決まっている

中国・四川省成都市の郫県(いまの郫都区)で作られる「郫県豆瓣(ピーシェン ドウバン)」は、中国の地理的表示(産地と結びついた品質をもつ産品の名前を、国が守るしくみ)で保護されています。国の規格 GB/T 20560-2006「地理標志産品 郫県豆瓣」(2006年9月18日発布、2007年2月1日実施、当時の国家質量監督検験検疫総局と国家標準化管理委員会)が、産地・原料・作り方を決めています。

規格の主な中身は次のとおりです。

項目 GB/T 20560-2006 の決まり
産地 四川省成都市郫県の行政区域
定義 赤唐辛子とそら豆を主原料に、食用塩・小麦粉などを副原料として、規格の伝統的な製法で作ったもの
赤唐辛子 主に郫県と近くの双流・仁寿・中江・三台・塩亭などでとれる「二荊条(アーチンティアオ)」という品種。7月から立秋の15日後までに収穫したもの
そら豆 主に四川省と雲南省でとれたもの
水 郫県の地下水
作り方 赤唐辛子を塩漬けにして「辣椒胚(唐辛子のもと)」を作る。そら豆に小麦粉をまぜて麹菌(米麹菌)をつけ、6か月以上発酵させて「甜瓣子(甘いそら豆のもと)」を作る。両方をまぜて甕や槽に入れ、かき混ぜる・天日にさらす・夜露にさらす(翻・晒・露)工程で3か月以上熟成させる
食用塩 100gあたり15から22g
アミノ酸態窒素(うま味の目安) 100gあたり 特級0.25g以上、一級0.20g以上、二級0.18g以上
総酸 100gあたり2.0g以下
アフラトキシンB1 1kgあたり5µg以下
名前 規格に合わない製品は、「郫県豆瓣」をふくむ名前を使えない
郫県豆板醤の作り方の図。中国の地理的表示の規格 GB/T 20560-2006 によると、赤唐辛子(二荊条)を塩漬けにした辣椒胚と、そら豆に小麦粉をまぜて麹菌をつけ6か月以上発酵させた甜瓣子を作り、まぜて甕や槽に入れ、かき混ぜる・天日にさらす・夜露にさらす工程で3か月以上熟成させる。規格は主原料を赤唐辛子・そら豆、副原料を食用塩・小麦粉などとし、食用塩は100gあたり15から22g、アフラトキシンB1は1kgあたり5µg以下。規格に合わない製品は「郫県豆瓣」をふくむ名前を使えない。下段は日本や台湾で売られる豆板醤4品の原材料名で、三明物産のピーシェン豆板醤は唐辛子・そら豆・食塩・小麦粉、ユウキ食品の四川豆板醤は塩蔵唐辛子・そら豆加工品など、李錦記の豆板醤は中華大豆みそ・そら豆みそ・砂糖など、風と光の有機トウバンジャン(台湾製)は有機砂糖から始まり有機大豆・有機小麦を使う。
図:郫県豆板醤の規格が決める作り方と、日本・台湾で売られる豆板醤の原材料名(押すと拡大)

(GB/T 20560-2006 の本文による。この規格には第1号の修正があり、修正の中身は今回確認できていません)

  • 論文でも、郫県豆板醤の熟成は一般的に12から18か月、長いものは24か月以上と説明されています(郫県で作られた豆板醤のうま味ペプチドを調べた研究)。天日と夜露にさらす「晒露」は、昼と夜の温度の変化が麹菌や酵素の働きに影響し、独特の風味ができると説明されています
  • 郫県豆瓣は、EU と中国が2020年に結んだ地理的表示の保護協定(2021年3月1日発効)でも、保護する中国側の名前のリストに「Pixian Dou Ban(郫県豆瓣)」として入っています

日本や台湾で売られる豆板醤の原材料

日本で売られている豆板醤の原材料名を、メーカーの公式ページや販売ページで並べました。原材料名は、重さの多い順に書くルールです(食品表示基準)。

商品 国 原材料名 豆 砂糖 添加物の表示
郫県豆板の規格(参考) 中国 赤唐辛子・そら豆が主原料、食用塩・小麦粉などが副原料 そら豆 規格の原料にない 規格では中国の添加物の基準(GB 2760)に従う
ピーシェン豆板醤(三明物産) 中国 唐辛子、そら豆、食塩、小麦粉 そら豆 なし なし
四川豆板醤(ユウキ食品) 日本のメーカー(ページに製造国の記載なし) 塩蔵唐辛子(ベトナム製造)、そら豆加工品、乾燥唐辛子、食塩 そら豆 なし 酒精、酸化防止剤(ビタミンC)
李錦記 豆板醤(エスビー食品) エスビー食品が販売(ページに製造国の記載なし) 塩蔵唐辛子、中華大豆みそ、そら豆みそ、砂糖、唐辛子、にんにく、大豆油 大豆とそら豆 あり(4番目) 増粘剤(加工デンプン)、酸味料、調味料(核酸)
有機トウバンジャン(風と光) 台湾 有機砂糖、有機唐辛子、有機大豆、有機小麦、食塩、有機椎茸、有機醤(有機大豆、有機小麦、有機砂糖、食塩)、昆布 大豆 いちばん多い なし

(ユウキ食品・エスビー食品は2026年10月1日にメーカー公式ページで確認。ピーシェン豆板醤は楽天市場の販売ページ、有機トウバンジャンは商品ラベルの表示。商品の改訂で変わることがあります)

表から分かることは次のとおりです。

  • そら豆と唐辛子だけ(+塩・小麦粉)で作るものは、郫県豆板の規格と同じ組み合わせです。中国製のピーシェン豆板醤がこれにあたります。ただし、販売ページからは地理的表示の認証を受けた品かどうかは分かりません
  • 日本のメーカーの豆板醤にも、そら豆だけのもの(ユウキ食品)と、中華大豆みそ・そら豆みそ・砂糖を合わせたもの(李錦記)があります。ユウキ食品には、豆を使わない業務用の「四川豆板醤(豆なし)」もあります
  • 台湾製の有機トウバンジャンは、そら豆を使わず大豆と小麦を使い、しいたけ・昆布・醤(大豆と小麦の発酵調味料)も入っています。原材料名の最初が有機砂糖なので、重さでいちばん多いのは砂糖です。同じ「豆板醤」の名前でも、甘みのある味つけの調味料として作られていることが原材料から分かります
  • 日本では、豆板醤に原材料の決まり(JAS 規格のような規格)はありません。何が入っているかは、裏面の原材料名で確かめるのが確実です(「無添加」表示のルールの記事)

大豆・小麦・砂糖のことは、原材料じてんの「大豆」「砂糖」「香辛料」のページでもまとめています。

ほかの中華・韓国の醤とのちがい

名前が似ている調味料を、食品成分表・辞書・メーカーの表示で比べました。

名前 どんな調味料か 主な原材料 食塩相当量(100gあたり)
豆板醤(トウバンジャン) 中国・四川の辛いみそ。成分表では辛味調味料類 唐辛子、そら豆(商品によって大豆)、食塩 17.8g(成分表)
甜麺醤(テンメンジャン) 成分表の別名は「中華甘みそ」。回鍋肉や北京ダックのたれに使う 日本で売られる例(李錦記)は中華大豆みそ、砂糖、ごまペースト、醤油、カラメル色素 7.3g(成分表)
コチュジャン 朝鮮半島の甘辛い唐辛子みそ。2020年にコーデックス(国際食品規格)の国際規格になった もち米、米こうじ(または大豆みそ・麦芽粉)、唐辛子、塩(辞書の説明) 成分表に収載なし
XO醤 1980年代ごろに香港で作られた中華調味料 干し貝柱、干しえび、中国ハム(金華ハム)、唐辛子、大豆油など(辞書の説明) 成分表に収載なし
ラー油 唐辛子などの辛みを移した油 成分表は ごま油8:とうもろこし油2 の配合で計算 0g(成分表)

(成分表は「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。コチュジャン・XO醤の説明はデジタル大辞泉・日本大百科全書・百科事典マイペディアなど、コーデックスの採択は韓国 農林畜産食品部の発表による)

  • 豆板醤とコチュジャンはどちらも唐辛子を使う発酵調味料ですが、豆板醤は豆(そら豆)が中心、コチュジャンはもち米などの穀物が中心で、甘みがあります
  • 甜麺醤は、辛みのない甘いみそです。豆板醤と合わせて麻婆豆腐や回鍋肉に使われます
  • XO醤は発酵調味料というより、干した魚介や肉を油で仕上げた調味料です
  • 唐辛子の辛み成分カプサイシンについては、唐辛子とカプサイシンの記事で取り上げています

調味料100gあたりの食塩相当量文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」による可食部100gあたりの食塩相当量。ナンプラー22.9g、トウバンジャン17.8g、こいくちしょうゆ14.5g、米みそ(赤色辛みそ)13.0g、オイスターソース11.4g、テンメンジャン7.3g、マーボー豆腐の素3.6g。いちばん下の帯は、中国の地理的表示の規格 GB/T 20560-2006 が郫県豆板に定める食用塩(塩化ナトリウム)の範囲で、100gあたり15から22g。調味料100gあたりの食塩相当量(g)0510152025ナンプラー魚醤油ナンプラー:22.9g22.9gトウバンジャン豆板醤トウバンジャン:17.8g17.8gこいくちしょうゆこいくちしょうゆ:14.5g14.5g米みそ 赤色辛みそ米みそ 赤色辛みそ:13.0g13.0gオイスターソースオイスターソース:11.4g11.4gテンメンジャン中華甘みそテンメンジャン:7.3g7.3gマーボー豆腐の素マーボー豆腐の素:3.6g3.6g郫県豆板の規格GB/T 20560(中国)郫県豆板の規格:食用塩 15から22g/100g15から22g出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(文部科学省)。郫県豆板は規格の「食用塩」の範囲トウバンジャン小さじ1(5mL)は約5.7g=食塩相当量 約1.0g(成分表の換算 100mL=113g から計算)

(出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」、GB/T 20560-2006)

塩分は小さじ1で約1g

食品成分表の「トウバンジャン」は、100gあたりナトリウム7,000mg、食塩相当量17.8gです。成分表には「100mL=113g」という換算もあるので、ここから計算すると次のようになります。

量 重さ(計算) 食塩相当量(計算)
小さじ1/2(2.5mL) 約2.8g 約0.5g
小さじ1(5mL) 約5.7g 約1.0g
大さじ1(15mL) 約17g 約3.0g
  • 商品によって塩分は変わります。ユウキ食品の四川豆板醤のラベルは100gあたり13.5gです。郫県豆板の規格は「食用塩」で100gあたり15から22gの範囲を決めています。買った商品の栄養成分表示を見るのが確実です
  • 日本人の食事摂取基準(2025年版)の食塩相当量の目標量は、18歳以上で男性1日7.5g未満、女性6.5g未満です。豆板醤大さじ1(約3.0g)は、女性の目標量の半分近くにあたります。食塩の量の話は、食塩摂取量の記事でくわしく取り上げています
  • 麻婆豆腐などでは、豆板醤のほかにしょうゆ・甜麺醤・鶏ガラスープなども塩分を持っています。料理全体の塩分は、レシピの合計で考える必要があります

ここで一つ注意があります。豆板醤の塩は、味のためだけでなく、発酵のあいだに雑菌が増えるのをおさえる役目もあります。あとで見るように、研究では、塩を減らして発酵させるとヒスタミンなどが増えやすいことが報告されています。「減塩の豆板醤を作る」こと自体が、研究のテーマになっています。

カビ毒(アフラトキシン)の基準と違反事例

アフラトキシンとは

アフラトキシンは、アスペルギルス・フラバスなどのカビが作る毒(カビ毒)です。B1・B2・G1・G2 などの種類があります。

  • IARC(国際がん研究機関)は、アフラトキシンをグループ1(人に対して発がん性がある)に分類しています
  • 日本の食品安全委員会は2009年の評価で、アフラトキシンを遺伝毒性が関与する発がん物質(遺伝子を傷つけるタイプで、「ここまでなら大丈夫」という量を決められない)と判断しました。人の調査のほとんどで、アフラトキシンB1と肝臓がんの関係が指摘されていて、B型肝炎ウイルスの感染があるとリスクが高くなることが示唆されています
  • そのため、1日の耐容摂取量は決められておらず、「食品からの摂取は、合理的に達成可能な範囲で、できるかぎり低くするべき」とされています(JECFA〈FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議〉の1997年の評価も同じ考え方)

日本と中国の基準

基準
日本 1971年から、アフラトキシンを検出した食品は食品衛生法違反として扱ってきた。2011年の通知(食安発0331第5号)からは、食品中の総アフラトキシン(B1・B2・G1・G2 の合計)が10µg/kgを超えると違反(乳のアフラトキシンM1は別に0.5µg/kg)
中国 食品安全国家標準 GB 2761-2017 で、醸造した醤(酿造酱)と、しょうゆのアフラトキシンB1を5.0µg/kg以下と決めている。郫県豆板の規格 GB/T 20560-2006 も、B1 を5µg/kg以下としている

日本は「4種類の合計」、中国は「B1だけ」なので、数字をそのまま比べることはできません。

なぜ豆板醤でアフラトキシンが問題になるのか

  • 論文では、伝統的な豆板醤は屋外の開いた容器で発酵させるため、原料の保管が悪いと、アフラトキシンを作るカビに汚染されるおそれがあると説明されています(四川の豆板醤からとった乳酸菌・酵母の安全性を調べた研究、2023年)
  • 原料の唐辛子も、カビ毒の調査の対象になっています。四川省で2022年に集めた食品318点の調査(2023年)では、唐辛子粉の75.0%からアフラトキシンが検出され、B1 は検出されないものから最大52.60µg/kgまででした。B1 が中国の基準を超えたのは全体の0.4%、EU の基準を超えたのは4.3%でした

測った値

アフラトキシンの基準と豆板醤の測定値アフラトキシンの基準と測定値(µg/kg)。基準:日本は食品中の総アフラトキシン(B1・B2・G1・G2の合計)10µg/kgを超えると食品衛生法違反(2011年10月から)。中国は GB 2761-2017 で「醸造した醤(酿造酱)」のアフラトキシンB1を5.0µg/kg以下とし、郫県豆板の規格 GB/T 20560-2006 も B1 5µg/kg以下。測定値:中国の市販の豆板醤(Zhang 2020、総説 Nazhand 2020 の表による)はB1の検出率34%、平均4.78、範囲1.26から16.41µg/kg(ELISA法)。郫県豆板の試料(Zeng 2022)はB1 3.4µg/kg。日本の輸入時の検査で違反になった台湾産の豆板醤(厚生労働省、平成27年度)は総アフラトキシン18・29µg/kgと21・22・25µg/kg。アフラトキシンの基準と豆板醤の測定値(µg/kg)051015202530中国:B1 5.0日本:総量 10中国の市販の豆板醤B1・ELISA法(Zhang 2020)範囲 1.26から16.41µg/kg平均 4.78µg/kg範囲 1.26から16.41・平均 4.78郫県豆板の試料B1(Zeng 2022)3.4µg/kg3.4日本で違反になった豆板醤総量・台湾・2015年度18µg/kg29µg/kg21µg/kg22µg/kg25µg/kg18・21・22・25・29日本の基準はB1・B2・G1・G2の合計、中国の基準と論文の値はB1だけ。2015年度の違反は1つの製造者の2回の輸入(5検体)出典:厚生労働省の通知と輸入食品違反事例、GB 2761-2017、GB/T 20560-2006、Nazhand 2020(Zhang 2020 を引用)、Zeng 2022

(出典:厚生労働省の通知と輸入食品違反事例、GB 2761-2017、GB/T 20560-2006、Nazhand ら 2020 の総説の表、Zeng ら 2022)

  • 中国の市販の豆板醤を調べた研究(総説の表にまとめられたもの)では、アフラトキシンB1 が検出されたのは34%(表では陽性の割合)で、平均4.78µg/kg、範囲は1.26から16.41µg/kgでした(ELISA という簡易な方法での測定)
  • 郫県豆板を測った別の研究(2022年)では、試料の B1 は3.4µg/kgで、中国の基準5.0µg/kgを下回っていました

日本で輸入のときに違反になった例

厚生労働省は、輸入時の検査で食品衛生法違反になった食品を「輸入食品等の食品衛生法違反事例」として公開しています。公開されている2002年度(平成14年度)から2026年9月までの一覧(Excel)をすべて取得し、「豆板」「トウバン」「豆瓣」をふくむ行を探しました(2026年10月1日)。

年度 品名 生産国 違反の内容 原因として書かれていること 措置
2015年度 とうがらし調整品:豆板醤(SALTED CHILLI PASTE) 台湾 総アフラトキシン 18µg/kg・29µg/kg 湿度管理・事前検査の不徹底 廃棄
2015年度 同じ製造者の豆板醤(別の輸入) 台湾 総アフラトキシン 21・22・25µg/kg 同上 廃棄
2020年度 火鍋のソース・豆板醤調味料(3品) 中国 原材料の豆板醤に保存料のソルビン酸を使用(日本の使用基準では対象外の使い方) 記載なし 廃棄・積み戻しなど
2021年度 牛脂の火鍋の素 中国 原料の豆板醤にソルビン酸カリウムを使用(対象外) 食品衛生法の認識不足 廃棄
2022年度 火鍋のソース(2品) 中国 原料の豆板醤にソルビン酸カリウムを使用(対象外) 他国向けの製品の混入 積み戻しなど
  • 豆板醤そのもののアフラトキシンによる違反は、この期間では2015年度の台湾の1つの製造者の2件だけでした。どちらも日本の基準10µg/kgを超えていて、廃棄されています
  • ほかは、中国の火鍋の素などの原料の豆板醤に保存料(ソルビン酸)を使っていた例です。日本では、ソルビン酸は使ってよい食品と量が決まっていて、その対象外の使い方でした(保存料のことは保存料の記事、ソルビン酸は添加物データベース)
  • 違反事例は、検査で見つかった特定の輸入ロットの記録で、一覧に商品名(ブランド)は出ていません。また、検査はすべての輸入品を調べるものではないので、「違反が少ない=汚染がない」という意味ではありません

発酵でできるヒスタミンなどの生体アミン

生体アミンとは

ヒスタミン・チラミン・プトレシンなどの「生体アミン」は、たんぱく質のもとのアミノ酸から、細菌の酵素の働きでできる物質です。発酵食品にはある程度ふくまれます。

  • 日本でヒスタミンが問題になるのは、主にマグロなどの赤身魚とその加工品です。魚を常温に置くと細菌がヒスタミンを作り、食べるとじんましんなどアレルギーに似た症状が出ます(ヒスタミン食中毒)。いったんできたヒスタミンは、ふつうの加熱では分解されません(食品安全委員会の資料)
  • EU の EFSA(欧州食品安全機関)は2011年の意見書で、限られた資料からとしたうえで、健康な人では1食あたりヒスタミン50mgで健康への悪い影響は見られなかったとしています。ヒスタミンに不耐性のある人では、検出できないほどの量にとどめるべきとしています。チラミンは、健康な人で1食600mg、MAO 阻害薬という薬を飲んでいる人では50mgまたは6mgとしています
  • 生体アミンの総説(2024年)は、人によって感じやすさがちがい、お酒や一部の薬でも影響が変わると書いています

豆板醤で測った値

研究 何を調べたか 結果
郫県豆板醤406点の調査(2026年) 市販品の重金属と生体アミン6種 ヒスタミンの中央値:ブランドのない品 22.794mg/kg、ブランド品 15.386mg/kg。スペルミジン以外は参考の上限の範囲内。スペルミジンはブランド品の34.0%、ブランドのない品の32.5%で参考の上限を超えた
中国の伝統的な豆板醤27点(2021年) 市販品の生体アミン すべて安全とされる範囲内
塩分を変えた発酵試験(2026年) 塩分12%・9%・6%で発酵 塩分6%で酸と遊離アミノ酸が増え、生体アミンの合計が1456.95mg/kgまでたまった
低塩の郫県豆板の発酵試験(2025年) 塩分6%・15%で35日間発酵 菌を加えない塩分6%の区で、チラミンが100gあたり45.28mg。菌を加えた塩分6%の区と塩分15%の区では、検出された生体アミンはどれも100gあたり6mg未満
  • 406点の調査のヒスタミンの中央値(22.794mg/kg)で計算すると、豆板醤大さじ1(約17g)のヒスタミンは約0.4mgです。EFSA が健康な人で悪い影響が見られなかったとする1食50mgの、およそ130分の1です(あくまで中央値での計算で、商品ごとの値は分かりません)
  • 塩分を減らした発酵試験は、どれも研究室で作った試料で、市販品の値ではありません。ただ、複数の研究が「塩を減らすと生体アミンが増えやすい」という同じ方向の結果を出しています。研究者は、乳酸菌などをスターター(発酵のもと)として加えることで、生体アミンを抑える方法を調べています
  • 今回調べた範囲では、豆板醤を食べた人の健康を追った研究(人での観察研究や試験)は見つかりませんでした。ここに書いたのは、食品の成分を測った研究と、発酵の試験です

まとめ

論点 分かったこと 出典の種類
本場の豆板醤とは 郫県豆板は、赤唐辛子・そら豆が主原料、食塩・小麦粉が副原料。そら豆の麹6か月以上+熟成3か月以上。規格に合わないと名乗れない 中国の国家規格(GB/T 20560-2006)、EU・中国の協定
日本・台湾の豆板醤 そら豆だけのもの、大豆みそ・砂糖を合わせたものがある。有機トウバンジャン(風と光)は大豆・小麦を使い、砂糖がいちばん多い メーカー公式ページ・商品ラベル
ほかの醤とのちがい 甜麺醤は甘いみそ(食塩7.3g)、コチュジャンはもち米など穀物が中心、XO醤は干した魚介と肉の調味料 食品成分表、辞書
塩分 成分表で100gあたり17.8g。小さじ1で約1.0g、大さじ1で約3.0g(計算)。商品で差がある 食品成分表
カビ毒 日本は総アフラトキシン10µg/kg、中国は醸造した醤のB1が5.0µg/kg。輸入時の違反は2015年度の台湾産2件 国の通知・規格、厚生労働省の違反事例、論文
ヒスタミンなど 市販品のヒスタミン中央値は15から23mg/kg。塩を減らした発酵で増えやすい。人の健康を調べた研究は見つからず 成分の調査・発酵試験、EFSA の意見書

紹介したものをもう一度まとめます。

紹介しているもの 選んだ理由 楽天市場
有機トウバンジャン(風と光)180g 台湾製。原材料8つで添加物の表示なし。大豆・小麦を使い、砂糖がいちばん多い 楽天市場で見る(むぎごころ) PR
ピーシェン豆板醤(三明物産)250g 中国製。唐辛子・そら豆・食塩・小麦粉の4つで、郫県豆板の規格と同じ組み合わせ 楽天市場で見る(耀盛號) PR
計量スプーン 3本組(パール金属) 小さじ1で食塩約1gの目安をそのまま使える。日本製 楽天市場で見る(パール金属公式) PR

(2026年10月1日に楽天市場の販売ページで確認。価格・送料は変わることがあります)

「本場の豆板醤はそら豆と唐辛子」というのは、四川の郫県豆板については規格どおりの事実です。一方で、日本や台湾で売られる豆板醤には、大豆や砂糖を使うものもあり、同じ名前でも原材料はさまざまです。辛さ・甘さ・塩分のどれを重視するかで、裏面の原材料名と栄養成分表示を見て選ぶのが確実です。

参考にした資料

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.01)。