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ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.08

有機JASで使える農薬一覧(全42項目):アブラムシ・カメムシ・病気に使えるもの、除草剤は? 抗生物質も?

PR この記事には、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・A8.net のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

「有機野菜なのに農薬を使っているの?」「有機JASで使える農薬の一覧はどこにある?」「家庭菜園のアブラムシやカメムシに、有機で使える薬はある?」。有機栽培の農薬について、こうした疑問をよく見かけます。

答えを先に言うと、有機JASでも農薬は使えます。ただし使えるのは、国の規格の表(附属書B の表B.1)に載っている42項目だけで、しかもほかの方法で防げないときだけです。

この記事では、

  • 有機JASで使える農薬の全42項目の一覧(用途・由来・条件、いま登録されている製剤の数つき)
  • 有機でも農薬を使えるのは、どんなときか
  • 有機の農薬は「天然のものだけ」なのか。合成のものや抗生物質は入っているのか
  • 有機JASで使える除草剤はあるのか
  • 重曹・食酢は農薬なのか(特定防除資材)
  • アブラムシ・カメムシ・ヨトウムシ・うどんこ病などに、有機で使える農薬はあるか
  • 家庭菜園の市販品で「有機JASで使える」と書かれたもの
  • 有機で使える農薬のデメリット(安全性・魚への影響・銅が土にたまる問題)
  • EU・米国の有機と比べると、何が違うのか
  • 「有機JAS適合資材リスト」とは何か
  • 「有機」と「農薬:栽培期間中不使用」の違い

を、規格の原文、農林水産省の Q&A、農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の農薬登録データ、食品安全委員会の評価で確かめます。登録データは、ウラヨミが表B.1 と1件ずつ照らし合わせて数えました(2026年10月8日確認)。

有機JASのしくみ全体(2年・3年のルール、マーク、歴史)は オーガニックとは(基準と歴史)の記事、有機食品の残留農薬や健康の研究は オーガニックと健康の記事 にまとめています。

結論

  • 有機JASで使える農薬は、表B.1 の42項目と、その成分だけを組み合わせた「その他の農薬」です。最新版は JAS 1605:2024(2024年7月1日改正)で、2025年1月からクロレラ抽出物液剤・ワックス水和剤・ケイソウ土粉剤の3項目が外れました。「有機jas 農薬 別表2」の「別表2」は、この表の古い呼び名です
  • 使えるのは「重大な損害の危険が迫っていて、ほかの方法で防げないとき」だけです。まず品種・輪作などの耕し方、ネット・マルチなどの物理的な方法、天敵などの生きものの力で防ぐことが求められます
  • 「天然のものだけ」ではありません。化学合成のメタアルデヒド(ナメクジ用、捕虫器の中だけ)、工業的に作る銅の化合物、微生物が作る物質をもとにしたスピノサド・ミルベメクチン、抗生物質のカスガマイシンも入っています。国の告示も、表の中に「化学的に合成されたもの」があることを前提にしています
  • 除草剤に当たる項目は1つもありません。雑草は手取り・機械・マルチなどで抑えます。食酢を使った市販の除草剤が有機JASで使えるかは、確かめられませんでした
  • いま登録が有効な農薬3,741製剤のうち、表B.1 に当たるのは324製剤(8.7%)でした(ウラヨミの照合)。いちばん多いのは天敵や微生物を使う「天敵等生物農薬」の113製剤。畑のカメムシに登録がある製剤は、トマトのホオズキカメムシ用のスプレー1つだけでした
  • 「自然由来だから安全」とは言えません。表B.1 に当たる324製剤のうち74製剤のラベルに魚・甲殻類への注意があり、「強い影響」の9製剤はすべて銅を含みます。EU は銅を「代替候補」とし、有機でも7年で1ヘクタールあたり28kgまでに制限していますが、日本の有機JASに量の上限はありません
  • 抗生物質の扱いは国で違います。日本の有機はカスガマイシンを認めていますが、米国の有機はストレプトマイシンなどを2014年10月から使えなくし、EU でカスガマイシンは承認されていません
  • 「有機」は「農薬を使っていない」という意味ではありません。特別栽培のガイドラインでは、農薬をまったく使わなかったものだけが「農薬:栽培期間中不使用」と表示できます

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
KINCHO園芸 パイベニカVスプレー・アーリーセーフ、アース製薬 やさお酢 家庭菜園で、有機JASで使える成分の殺虫剤・殺菌剤を探すとき 家庭菜園向けに有機JASで使えると書かれた市販品
生きてる肥料(有機JAS資材評価協議会のリストに掲載の液体肥料) 家庭菜園で、適合資材リストに載っている肥料を使いたいとき 「有機JAS適合資材リスト」とは?
農薬を使わずに育てた野菜の産直・宅配 「農薬:栽培期間中不使用」の表示を確かめて野菜を買いたいとき 農薬を一切使っていない野菜を買うには

有機JASで使える農薬一覧(表B.1 の全42項目)

有機JASで使える農薬は、規格の表B.1 に42項目と「その他の農薬」1行があります。ここでは原文の項目名と条件をそのまま載せ、ウラヨミが用途と由来を分け、FAMIC で登録が有効な製剤の数(2026年9月30日現在)を並べました。

規格の版は次のとおりです。

項目 内容
規格 日本農林規格「有機農産物」JAS 1605:2024
改正 2024年7月1日(農林水産省告示第1280号)。2005年10月27日に全部改正したあと、何度か改正されている
3項目の削除 クロレラ抽出物液剤・ワックス水和剤・ケイソウ土粉剤を、2025年1月1日に表から削除
2026年10月の時点 農林水産省の掲載ファイルは変わっていない(ウラヨミが10月3日と10月7日に取得して照合)

「別表2」は古い呼び名です。以前の規格では「別表2」と呼ばれ、規格の書き方が変わってから「附属書B 表B.1」になりました。告示の附則にはいまも「別表2」という言葉が残っているため、どちらの名前でも探されています。

読み方の注意が3つあります。

  • 「条件」の列は原文のまま。「-」は条件なしです
  • 「製剤数」は、FAMIC の農薬登録データ(登録が有効な3,741製剤)を、ウラヨミが表B.1 の項目名・有効成分と照らし合わせて数えたものです。どの製剤が表B.1 に当たるかを最終的に判断するのは、農家を認証する登録認証機関で、この数は目安です
  • 表の注で、どの農薬も「組換えDNA技術を用いて製造されていないもの」に限られます

虫・ダニに使うもの(16項目)

項目(原文) 用途 由来 条件(原文) 製剤数
除虫菊乳剤 殺虫 植物(除虫菊の花の抽出物) 除虫菊から抽出したものであって,共力剤としてピペロニルブトキサイドを含まないものに限ること。 2
ピレトリン乳剤 殺虫 植物(除虫菊の花の抽出物) 除虫菊から抽出したものであって,共力剤としてピペロニルブトキサイドを含まないものに限ること。 2
なたね油乳剤 殺虫 植物(油) - 2
調合油乳剤 殺虫 植物(べにばな油・綿実油) - 2
マシン油エアゾル 殺虫 鉱物(石油) - 1
マシン油乳剤 殺虫 鉱物(石油) - 15
デンプン水和剤 殺虫 植物(デンプン) - 1
メタアルデヒド粒剤 殺虫(ナメクジなど) 化学合成 捕虫器に使用する場合に限ること。 11
メタアルデヒド剤 殺虫(ナメクジなど) 化学合成 捕虫器に使用する場合に限ること。 1
二酸化炭素くん蒸剤 殺虫(くん蒸) 無機(ガス) 保管施設で使用する場合に限ること。 4
燐酸第二鉄粒剤 殺虫(ナメクジ・ジャンボタニシ) 無機 - 15
ミルベメクチン乳剤 殺虫・殺ダニ 微生物(放線菌)が作る物質とされる - 4
ミルベメクチン水和剤 殺虫・殺ダニ 微生物(放線菌)が作る物質とされる - 2
スピノサド水和剤 殺虫 微生物(土の細菌 Saccharopolyspora spinosa)が作る物質 - 8
スピノサド粒剤 殺虫 微生物(土の細菌 Saccharopolyspora spinosa)が作る物質 - 3
還元澱粉糖化物液剤 殺虫(虫の気門をふさぐ) 植物(デンプンを加工) - 5

病気に使うもの(殺菌、18項目)

項目(原文) 用途 由来 条件(原文) 製剤数
硫黄くん煙剤 殺菌 鉱物 - 2
硫黄粉剤 殺菌 鉱物 - 3
水和硫黄剤 殺菌・殺ダニ 鉱物 - 8
シイタケ菌糸体抽出物液剤 殺菌(ウイルス病) きのこの抽出物 - 2
シイタケ菌糸体抽出物水溶剤 殺菌(ウイルス病) きのこの抽出物 - 2
炭酸水素ナトリウム水溶剤 殺菌 無機(工業製品) - 2
銅水和剤 殺菌 無機(塩基性塩化銅・水酸化第二銅などの化合物) - 30
銅粉剤 殺菌 無機(銅の化合物) - 2
硫酸銅 殺菌(ボルドー液を作る) 無機(銅の化合物) ボルドー剤調製用に使用する場合に限ること。 3
生石灰 殺菌(ボルドー液を作る) 鉱物(石灰石を焼く) ボルドー剤調製用に使用する場合に限ること。 16
炭酸水素カリウム水溶剤 殺菌 無機(工業製品) - 2
カスガマイシン液剤 殺菌 微生物(放線菌)が作る抗生物質とされる - 2
カスガマイシン粉剤 殺菌 微生物(放線菌)が作る抗生物質とされる - 1
カスガマイシン水溶剤 殺菌 微生物(放線菌)が作る抗生物質とされる - 1
カスガマイシン粒剤 殺菌 微生物(放線菌)が作る抗生物質とされる - 1
次亜塩素酸水 殺菌 電気分解で作る - 登録不要
重曹 殺菌 無機 - 登録不要
食酢 殺菌 発酵(合成酢も可) - 登録不要

虫にも病気にも使うもの(3項目)

項目(原文) 用途 由来 条件(原文) 製剤数
脂肪酸グリセリド乳剤 殺虫・殺菌(ハダニ・アブラムシ・うどんこ病) 植物油由来とメーカーは説明(製法は未確認) - 4
石灰硫黄合剤 殺菌・殺虫 鉱物(石灰と硫黄を煮て作る) - 6
天敵等生物農薬 殺虫・殺菌 天敵の虫・ダニ、微生物そのもの - 113

そのほか:誘引・成長調整・展着・薬害防止(5項目)

項目(原文) 用途 由来 条件(原文) 製剤数
性フェロモン剤 虫を誘う・交尾を邪魔する 昆虫のフェロモンの物質(化学名で登録。製法は未確認) 農作物を害する昆虫のフェロモン作用を有する物質を有効成分とするものに限ること。 27
混合生薬抽出物液剤 植物の成長調整 植物の抽出物 - 1
展着剤 薬液を付きやすくする カゼイン(乳)・パラフィン(石油) カゼイン又はパラフィンを有効成分とするものに限ること。 3
炭酸カルシウム水和剤 銅の薬害を防ぐ 鉱物 銅水和剤の薬害防止に使用する場合に限ること。 4
エチレン 植物の成長調整 ガス パイナップルの開花誘発に使用する場合に限ること。 登録不要

その他の農薬(成分の組み合わせ)

項目(原文) 中身 条件(原文) 製剤数
その他の農薬 上の表の成分だけを2つ以上含むもの。規格の注には「硫黄・銅水和剤,炭酸水素ナトリウム・銅水和剤,脂肪酸グリセリド・スピノサド水和剤等」とある 有効成分としてこの表の他の農薬に含まれる有効成分のみを 2 つ以上含有するものに限ること。 11

出典:農林水産省 日本農林規格「有機農産物」JAS 1605:2024 附属書B 表B.1(原文)。用途・由来はウラヨミの分類、製剤数は FAMIC 農薬登録情報(2026年9月30日現在)をウラヨミが照合。リンク先はウラヨミの 農薬データベース の成分ページです。

用途で数えると:殺菌18・殺虫16・除草0

有機JASで使える農薬42項目を用途で分けると表B.1(JAS 1605:2024)の「農薬」欄の42行を、ウラヨミが用途で分類した数(項目)05101520殺菌殺菌:1818 銅・硫黄・重曹・食酢・カスガマイシンなど殺虫・殺ダニ殺虫・殺ダニ:1616 除虫菊・油・デンプン・スピノサドなど殺虫と殺菌の両方殺虫と殺菌の両方:33 脂肪酸グリセリド・石灰硫黄合剤・天敵等植物成長調整植物成長調整:22 混合生薬抽出物・エチレン誘引・交信かく乱誘引・交信かく乱:11 性フェロモン剤展着展着:11 カゼイン・パラフィン薬害防止薬害防止:11 炭酸カルシウム除草0 項目なし「その他の農薬」(表の成分を2つ以上組み合わせたもの)は42項目の外に1行ある。同じ成分の剤型違い(カスガマイシン4、スピノサド2など)を別に数えた表なので、成分でまとめると約30。出典:農林水産省 日本農林規格「有機農産物」JAS 1605:2024 附属書B 表B.1(ウラヨミが分類)。
表B.1 の42項目を用途で分けた数。農林水産省 JAS 1605:2024 をもとにウラヨミが分類。

42項目のうち殺菌が18、殺虫・殺ダニが16で、除草剤に当たる項目は0です。条件(使い方の制限)がついている項目は11ありました。

「42項目」といっても、同じ成分の剤型違い(粉・液・粒など)を別々に数えた数です。カスガマイシンは4項目、スピノサド・ミルベメクチン・メタアルデヒドは2項目ずつ、硫黄は3項目(ほかに石灰硫黄合剤)あります。成分でまとめると、およそ30種類です。農林水産省が「何品目」と公表している数は見つからなかったので、どの数も表を数えたものです。

登録されている製剤の数:324製剤、1つしかない項目も

表B.1 に当たる農薬は、登録されている3,741製剤のうち324項目ごとの、登録が有効な製剤の数(2026年9月30日現在、ウラヨミが照合)0306090120天敵等生物農薬天敵等生物農薬:113113銅水和剤銅水和剤:3030性フェロモン剤性フェロモン剤:2727生石灰生石灰:1616マシン油乳剤マシン油乳剤:1515燐酸第二鉄粒剤燐酸第二鉄粒剤:1515メタアルデヒド粒剤メタアルデヒド粒剤:1111その他の農薬(組み合わせ)その他の農薬(組み合わせ):1111水和硫黄剤水和硫黄剤:88スピノサド水和剤スピノサド水和剤:88石灰硫黄合剤石灰硫黄合剤:66還元澱粉糖化物液剤還元澱粉糖化物液剤:55脂肪酸グリセリド乳剤脂肪酸グリセリド乳剤:44二酸化炭素くん蒸剤二酸化炭素くん蒸剤:44炭酸カルシウム水和剤炭酸カルシウム水和剤:44ミルベメクチン乳剤ミルベメクチン乳剤:44ほか23項目ほか23項目:4343 (各1〜3製剤)1製剤しかない項目(7):マシン油エアゾル、デンプン水和剤、メタアルデヒド剤、混合生薬抽出物液剤、カスガマイシン粉剤・カスガマイシン水溶剤・カスガマイシン粒剤。エチレン・次亜塩素酸水・重曹・食酢は「特定防除資材」で、農薬の登録がないため0。どの製剤が表B.1 に当たるかはウラヨミの当てはめで、登録認証機関の判断ではない。出典:農林水産消費安全技術センター(FAMIC)農薬登録情報・登録農薬の概要(2026年9月30日現在)。
表B.1 の項目ごとの、登録が有効な製剤の数。FAMIC 農薬登録情報(2026年9月30日現在)をもとにウラヨミが照合。

いま登録が有効な農薬3,741製剤のうち、表B.1 に当たるのは324製剤(8.7%)でした。

  • いちばん多いのは天敵等生物農薬の113製剤で、全体の約3分の1です。この数には BT粒剤2製剤(ベニカBT殺菌粒剤・ベニカナチュラルベイト)を含みます。粒剤が表B.1 の天敵等生物農薬に当たるかは、国の一覧では確かめられませんでした
  • 次が銅水和剤30、性フェロモン剤27、ボルドー液用の生石灰16、マシン油乳剤15、ナメクジ・ジャンボタニシ用の燐酸第二鉄粒剤15
  • 一方で、1製剤しか登録がない項目が7つあります(マシン油エアゾル、デンプン水和剤、メタアルデヒド剤、混合生薬抽出物液剤、カスガマイシン粉剤・水溶剤・粒剤)。規格で使えることになっていても、実際に買える製品はとても少ない、ということです
  • エチレン・次亜塩素酸水・重曹・食酢の4つは、あとで説明する「特定防除資材」で、農薬の登録がありません

有効成分で数えると、FAMIC の登録有効成分一覧(506成分)のうち、有機JASの欄に印(○、または条件つきの○)があるのは69成分(13.6%)でした。ただし FAMIC 自身が、この欄は最新でないことがあると注意書きをしていて、展着剤のパラフィンや性フェロモンには印がありません。

有機でも農薬は使える? 規格の言葉で確かめる

使えます。ただし、規格は「使わないことを基本」にしています。有機農産物の規格の原則は、化学的に合成された肥料と農薬の使用を「避けることを基本として」、土の力を生かして育てることです。「一切使わない」とは書いていません。

有機農業推進法(2006年)の「有機農業」の定義も、化学的に合成された肥料と農薬を「使用しないこと」を「基本として」います。どちらも「基本」という言葉が入っていて、決められた範囲の資材は使えるしくみです。

使えるのは「やむを得ないとき」だけ

有機JASで害虫・病気・雑草を防ぐ順番を、上から4段で示した図。1段目は耕種的防除(育て方の工夫)で、病気に強い品種・台木、健全な種苗、混植、輪作、田畑の転換、耕す・中耕、被覆植物、作る時期をずらすこと。2段目は物理的防除で、光をさえぎる、誘蛾灯、ネット、古紙マルチ、使用後に取り除くプラスチックマルチ、種子の温湯消毒、土の太陽熱・蒸気消毒、手や機械で取ること。3段目は生物的防除で、病原菌と張り合う微生物、害虫を食べる・寄生する天敵、虫が嫌う植物を植えること。4段目が表B.1 の農薬で、1〜3で防げず「農産物に重大な損害が生ずる危険が急迫」しているときだけ使える。図の下に2つの注記がある。「危険が急迫」とは、近くの畑などで害虫・病気が出ているか、相当の確かさで発生が予想され、放っておくと大きな被害が予想される場合(Q&A 問13-6)。使うときも、作物・量・倍率・時期・回数は製剤ごとの登録どおり。
図:有機JASで害虫・病気を防ぐ順番(JAS 1605:2024、農林水産省 Q&A をもとに作成)(押すと拡大)

表B.1 の農薬を使えるのは、ほかの方法で防げず、重大な損害の危険が迫っているときだけです。規格(5.10)は、害虫・病気・雑草の対策(防除)に順番を決めています。

順番 方法 例(規格と農林水産省 Q&A 問13-1)
1 耕種的防除(育て方の工夫) 病気に強い品種・台木、健全な種苗、混植、輪作、田畑の転換、耕す・中耕、被覆植物、作る時期をずらす
2 物理的防除(道具や熱・光) 光をさえぎる、誘蛾灯、ネット、古紙マルチ、使用後に取り除くプラスチックマルチ、種子の温湯消毒、土の太陽熱・蒸気消毒、手で取る・機械で取る
3 生物的防除(生きものの力) 病原菌と張り合う微生物、害虫を食べる・寄生する天敵、虫が嫌う植物を植える
4 表B.1 の農薬 1〜3で防げず、「農産物に重大な損害が生ずる危険が急迫」しているときだけ

「危険が急迫」とはどんなときかについて、Q&A(問13-6)は、近くの畑やその畑で害虫・病気が出ている、または経験から相当の確かさで発生が予想され、放っておくと大きな被害が予想される場合、と説明しています。

ほかにも細かい決まりがあります。

  • 表B.1 の農薬も、農薬取締法の登録どおりに使います。使える作物、量、薄める倍率、時期、回数は、慣行(ふつう)の栽培と同じく製剤ごとに決まっています(農林水産省 有機農産物検査認証制度ハンドブック)
  • 天敵を増やすために、農薬で弱らせた害虫を畑に置くのは、登録外の使い方なので認められません(Q&A 問13-5)
  • 作業する人の虫よけスプレーは、畑に入る前に使うなど作物に付かないようにすれば使えます(Q&A 問15-7)

種子・苗の消毒は?

有機の種や苗を使うのが原則です。手に入らないときは、使用禁止の資材を使っていない種苗、それも無理なら一般の種子や、できるだけ若い苗を使えます(規格 5.4)。

ただし、植え付けたあとも畑で効き続ける化学合成の肥料・農薬(表に無いもの)を使った種苗は使えません。Q&A(問10-5)は、ふつうの種子消毒はこれに当たらないとしています。また、有機の種子を表B.1 の農薬で消毒するのは認められています(問14-2)。

表B.1 の農薬はどうやって選ばれている?

表B.1 は、国際的な食品規格(コーデックス)の有機のガイドラインをもとに作られています。Q&A(問17-1)によると、表B.1 に載るのは、日本の農薬取締法で登録または指定された農薬のうち、

  • コーデックスの有機のガイドラインの付属書2 表2 に載っている資材から、日本での使われ方などを考えて必要なもの
  • または、同じガイドラインにある「各国が一覧を作るときの基準」に合うとして加えたもの

です。つまり、「日本で農薬として登録されていること」と「国際的な有機の基準に合うこと」の両方が条件です。どちらか一方だけでは載りません。2024年の改正で3項目が外れたように、表の中身は見直されることがあります。

「別表2」で検索している人へ

「有機jas 農薬 別表2」は、今の表B.1 のことです。中身の数え方が資料によって「42」「約40」と違うのは、「その他の農薬」の行や、剤型違いを数えるかどうかの違いです。ウラヨミの オーガニックとは(基準と歴史)の記事 は42項目、オーガニックと健康の記事 は「約40項目」と書いていて、どちらも同じ表を指しています。

有機の農薬は天然のものだけ? 合成も抗生物質も入っている

有機JASで使える農薬(表B.1)の項目を、由来ごとに8つのカードに分けた図(分類はウラヨミ)。植物は除虫菊・ピレトリン、なたね油、調合油、デンプン、還元澱粉糖化物、混合生薬抽出物、脂肪酸グリセリド。きのこはシイタケ菌糸体抽出物。生きもの・微生物そのものは天敵等生物農薬(天敵の虫・ダニ、BT などの細菌、カビ、ウイルス)。微生物が作った物質はスピノサド、ミルベメクチン、抗生物質のカスガマイシンで、合わせて8項目。鉱物・無機は硫黄、銅剤、生石灰、燐酸第二鉄、マシン油など。化学合成はメタアルデヒド(捕虫器の中だけ)。発酵・電気分解は食酢と次亜塩素酸水。動物はカゼイン。下の緑の枠に「『有機は化学合成の農薬を使わない』は正確ではない。正しくは『有機は表B.1 に載っていない農薬を使わない』」とある。あわせて、国の告示が表B.1 の中に化学合成のものがあると定義していること、手順書が農薬について化学合成かどうかの確認を求めていないことを示す。
図:有機JASで使える農薬42項目の由来(JAS 1605:2024 をもとにウラヨミが分類)(押すと拡大)

有機の農薬は「天然のものだけ」ではありません。由来で分けると、次のようになります(ウラヨミの分類)。

由来 表B.1 の項目
植物(抽出物・油) 除虫菊・ピレトリン、なたね油、調合油、デンプン、還元澱粉糖化物、混合生薬抽出物、脂肪酸グリセリド
きのこ シイタケ菌糸体抽出物
生きもの・微生物そのもの 天敵等生物農薬(天敵の虫・ダニ、BT などの細菌、カビ、ウイルス。国の一覧には線虫の剤もあるが、いまは登録が見つからない)
微生物が作った物質 スピノサド、ミルベメクチン、カスガマイシン(抗生物質)。合わせて8項目
鉱物・無機 硫黄、石灰硫黄合剤、銅剤、硫酸銅、生石灰、炭酸水素ナトリウム・カリウム、燐酸第二鉄、炭酸カルシウム、二酸化炭素、マシン油・パラフィン(石油)
化学合成 メタアルデヒド(アセトアルデヒドがつながった物質)。性フェロモン剤も化学名で登録されている
発酵・電気分解 食酢(合成酢も可)、次亜塩素酸水
動物 カゼイン(展着剤。ただし今の登録3製剤はすべてパラフィン)

国の告示(令和4年 財務省・農林水産省告示第31号)は、「化学農薬等」を「有機農産物の規格の表A.1・表B.1 の資材のうち、化学的に合成されたもの」と定義しています。表B.1 に化学合成のものがあることを、国が前提にしているということです。

農林水産省の「有機農産物のJAS資材評価手順書」(令和7年4月)も、農薬については「表B.1 に載っていて条件を満たすか」と「組換えDNA技術を使っていないか」の2つを確かめればよく、化学合成かどうかは確認しなくてよいとしています。

つまり、「有機は化学合成の農薬を使わない」という説明は正確ではありません。正しくは、「有機は表B.1 に載っていない農薬を使わない」です。

抗生物質のカスガマイシン

カスガマイシンは、放線菌(土の中にいる細菌の仲間)が作る物質をもとにした抗生物質とされ、稲のいもち病などに使う殺菌剤です。表B.1 には液剤・粉剤・水溶剤・粒剤の4項目があり、いま登録があるのは5製剤です。

カスガマイシンを含む製剤は30以上ありますが、有機で使えるのは単剤と、銅との組み合わせ(カスミンボルドーなど)だけです。ほかは、化学合成の殺菌剤と混ぜた製剤なので使えません。

食品安全委員会は、2026年5月13日の再評価で、カスガマイシンの ADI(一日摂取許容量。毎日一生とり続けても健康への悪影響がないと推定される量)を体重1kgあたり0.094mgとしました。抗生物質の扱いは国によって違い、米国の有機は抗生物質のストレプトマイシンなどを2014年にやめ、EU ではカスガマイシン自体が承認されていません(EU・米国と比べると?)。

スピノサド・ミルベメクチン:「微生物が作った物質」は天敵とは別

スピノサドは土の細菌 Saccharopolyspora spinosa が作る物質をもとにした殺虫剤、ミルベメクチンも放線菌が作る物質をもとにした、とされる殺虫剤です。生きた微生物を使う「天敵等生物農薬」とは別の項目として、成分の名前で表B.1 に載っています。

Q&A(問17-2)は、天敵等生物農薬に当たるのは、天敵の生きものや微生物(生きた菌・死んだ菌を問わない)そのものを使った薬剤だけで、微生物が作った物質を精製・濃縮したものは当たらない、と説明しています。国際的な食品規格(コーデックス)が認めない抗生物質などが含まれるため、と理由も書いています。スピノサドの性質は スピノサド のページにまとめています。

メタアルデヒドは捕虫器の中だけ

ナメクジ・カタツムリを駆除するメタアルデヒドは、化学合成の成分で、FAMIC の区分は劇物(10%以下の製剤は普通物)です。表B.1 では捕虫器(わな)に入れて使う場合だけ認められています。

農林水産省の手順書は、メタアルデヒド粒剤を水田のジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)にまくのは規格で認められないと、わざわざ書いています。また、メタアルデヒドの水和剤(4製剤)は、表B.1 に無い剤型なので使えません(表には「粒剤」と「剤」だけ)。

有機JASで使える除草剤はある?

表B.1 に、除草剤に当たる項目はありません。有機の畑では、雑草は次のような方法で抑えます。

方法 有機JASでの扱い 根拠
手で取る・機械で取る 使える(物理的防除) 規格の用語の定義
紙マルチ(化学物質を加えていないもの) 使える。紙に炭を混ぜるためのコーンスターチは可 Q&A 問13-7
プラスチックマルチ 使用後に取り除くなら使える 規格の用語の定義、Q&A 問13-7
生分解性マルチ(土の中で分解するもの) 使えない Q&A 問13-7
水田に米ぬか・くず大豆・おからをまく 使える。光をさえぎり酸素を減らして雑草を抑える「物理的防除と生物的防除の組み合わせ」。化学合成の添加物を使ったおからは不可 Q&A 問13-4
雑草を食べる動物を放す 使える(生物的防除の定義に「有害動植物を捕食する動物の導入」がある)。アイガモなど動物の名前は規格に書かれていない 規格の用語の定義

米国の有機では、生分解性のバイオマルチフィルムが一定の条件で認められています。日本の有機JASでは認められていない点が違います。

食酢の除草剤は使える?

確かめられませんでした。醸造酢を有効成分とする農薬登録のある除草剤に、フマキラーの「ビネガーキラー」(農林水産省登録第23863号)があります。一部の小売サイトは「有機JASにも使用可能」と書いていますが、メーカーの公式ページの本文には、その記載が見つかりませんでした。

表B.1 には「食酢」がありますが、農林水産省の手順書は「食酢以外を混ぜた『あわせ酢』は食酢に当たらない」としています。食酢を使った除草剤が表B.1 の「食酢」に当たるかどうかは、農家なら認証を受けている登録認証機関に確認するのが確実です。

家庭菜園で有機JASの認証を取らないなら、規格に縛られることはありませんが、どの除草剤も農薬のラベルにある使い方(場所・回数)を守ります。

重曹・食酢・次亜塩素酸水は農薬? 「特定防除資材」とは

重曹・食酢・次亜塩素酸水・エチレンは、農薬の登録が要らない「特定防除資材(特定農薬)」です。表B.1 にも入っていますが、FAMIC の登録データには製剤がありません。

特定防除資材は、2002年に農薬取締法が改正され、登録のない農薬の取り締まりが強くなったときに作られた区分です。原材料から見て、作物・人・家畜・魚などに害を与えるおそれがないことが明らかなものにまで登録を求めるのは行きすぎになるため、登録なしで使えるようにしました(農林水産省の通知)。

特定防除資材 有機JASでの扱い
重曹 表B.1 の「重曹」として使える
食酢 表B.1 の「食酢」として使える。合成酢でも可、ほかのものを混ぜた「あわせ酢」は不可(手順書)
次亜塩素酸水 塩酸か塩化カリウムの水溶液を電気分解して作ったものに限る
エチレン パイナップルの開花を促す使い方だけ。害虫・病気を防ぐ目的では使えない(手順書)
天敵 その土地にもともといる天敵(土着天敵)は、生物的防除として使える

特定防除資材だからといって、自動的に有機JASで使えるわけではありません。重曹・食酢・次亜塩素酸水は、特定防除資材ができたのを受けて、コーデックスのガイドラインの基準で評価したうえで表B.1 に加えられました(農林水産省 ハンドブック)。

食酢の使い方の参考として、国は、稲のもみ枯細菌病・ばか苗病などの種子消毒(酸度0.1〜0.25%に薄めて24時間浸ける)を挙げています。お酢そのものの種類や表示は お酢の記事 にまとめています。

天敵等生物農薬とは? 113製剤の中身

「天敵等生物農薬」113製剤の中身生きもの・微生物そのものを使う農薬。種類名でウラヨミが分けた製剤の数0102030昆虫の天敵昆虫の天敵:29製剤29タイリクヒメハナカメムシ6・オンシツツヤコバチ4・ナミテントウ4 ほかダニの天敵(カブリダニなど)ダニの天敵(カブリダニなど):26製剤26チリカブリダニ8・ミヤコカブリダニ7・スワルスキー5 ほかBT(殺虫に使う細菌)BT(殺虫に使う細菌):24製剤24BT水和剤22・BT粒剤2カビ(糸状菌)カビ(糸状菌):18製剤18タラロマイセス4・トリコデルマ3・ボーベリア5 ほか細菌(BT 以外)細菌(BT 以外):12製剤12バチルス ズブチリス7 ほか(主に病気用)ウイルス・ファージウイルス・ファージ:4製剤4顆粒病ウイルス・弱毒ウイルス・ファージ2微生物が作った物質を精製したもの(スピノサド・カスガマイシンなど)は、ここには入らない(有機JAS Q&A 問17-2)。農林水産省の資材評価手順書の一覧(令和5年9月現在、49剤)には、その後に登録された4剤が載っていない。出典:FAMIC 農薬登録情報・登録有効成分一覧(2026年9月30日現在)をウラヨミが照合・分類。
天敵等生物農薬に当たる113製剤を、種類名でウラヨミが分けた数。FAMIC 農薬登録情報(2026年9月30日現在)。

表B.1 でいちばん製剤が多いのが「天敵等生物農薬」で、生きもの・微生物そのものを使う農薬です。

  • 昆虫の天敵(29製剤):アザミウマを食べるタイリクヒメハナカメムシ、コナジラミに寄生するオンシツツヤコバチ、アブラムシを食べるナミテントウなど
  • ダニの天敵(26製剤):ハダニを食べるチリカブリダニ・ミヤコカブリダニ・スワルスキーカブリダニなど
  • BT(24製剤):チョウやガの幼虫に効くたんぱく質を作る細菌。ウラヨミの BT 剤 のページで性質を確かめられます。24製剤には BT粒剤2製剤(ベニカBT殺菌粒剤・ベニカナチュラルベイト)を含みます。国の手順書の一覧にあるのは「BT水和剤」で、粒剤が表B.1 の天敵等生物農薬に当たるかは国の一覧では確かめられませんでした
  • カビ(18製剤):虫に取りつくボーベリア、病原菌と張り合うタラロマイセス・トリコデルマなど
  • BT 以外の細菌(12製剤):灰色かび病などに使うバチルス ズブチリスなど
  • ウイルス・ファージ(4製剤):顆粒病ウイルス、弱毒ウイルス、青枯病の菌に感染するバクテリオファージ

国の一覧は古くなっている

いまの Q&A(令和7年10月版)は、天敵等生物農薬の具体的な名前を載せず、FAMIC の一覧を見るように書いています。具体名の一覧は、農林水産省の資材評価手順書(令和7年4月)に「令和5年9月現在」として49剤が載っています。

ウラヨミが FAMIC の登録データと照らし合わせると、その後に登録された4剤(青枯病菌感染性バクテリオファージ2種、非病原性リゾビウム ビティス、ヤマウチアシボソトゲダニ)は一覧に無く、逆に、いまは製剤の登録が見つからない10剤が一覧に残っていました。名前の一致で照らし合わせたので、名前が変わっただけのものも含まれている可能性があります。

性フェロモン剤:虫を誘う・交尾を邪魔する

性フェロモン剤は、虫が仲間を呼ぶにおいの物質を使って、わなに誘ったり、畑ににおいを満たして雄と雌が出会えないようにしたり(交信かく乱)します。いま登録がある27製剤には、ヨトウムシ類用の「ヨトウコン」、コナガ用の「コナガコン-プラス」などがあります。

手順書の例には、メチルオイゲノール剤やキュウルア液剤も入っています。これらは厳密には性フェロモンではなく、虫を誘う別の物質ですが、手順書は性フェロモン剤の例として載せています。

アブラムシ・カメムシ・うどんこ病に使える有機の農薬は?

害虫・病気から逆に引けるように、表B.1 に当たる324製剤の「適用表」(どの作物のどの害虫に使えるか)をまとめました。FAMIC の登録データで、適用病害虫名に害虫・病気の名前を含む製剤を数えています。

製剤ごとに使える作物・時期・回数が違います。たとえばアブラムシに登録があっても、自分の育てている野菜に登録があるとは限りません。使う前に、必ずラベルの「適用表」で作物名を確かめてください。

害虫ごとの表

害虫 表B.1 の項目(製剤数) 製剤名の例
アブラムシ類 天敵等15、マシン油乳剤12、還元澱粉糖化物5、脂肪酸グリセリド4、除虫菊2、ピレトリン2、ミルベメクチン乳剤2、デンプン1、調合油1、二酸化炭素1、組み合わせ1 あめんこ、ベニカマイルドスプレー、アーリーセーフ、パイベニカVスプレー、粘着くん水和剤、ナミトップ
カメムシ類 ピレトリン乳剤1(トマト・ミニトマトのホオズキカメムシ)。ほかは二酸化炭素1(輸入パイナップルのくん蒸の前処理) パイベニカVスプレー
ヨトウムシ類 天敵等(BT など)20、性フェロモン6、スピノサド水和剤3、組み合わせ3 STゼンターリ顆粒水和剤、エスマルクDF、スピノエース顆粒水和剤、ヨトウコン-H
アオムシ 天敵等(BT など)20、スピノサド水和剤3、除虫菊2、ピレトリン2、組み合わせ1 ガーデントップ、パイベニカVスプレー、STゼンターリ顆粒水和剤
コナガ 天敵等(BT など)20、スピノサド水和剤3、性フェロモン2、ピレトリン2、組み合わせ1 コナガコン-プラス、エスマルクDF
ハダニ類 天敵等23、マシン油乳剤15、石灰硫黄合剤6、還元澱粉糖化物5、ミルベメクチン乳剤4・水和剤2、脂肪酸グリセリド4、硫黄粉剤3 ほか スパイカルEX、コロマイト乳剤、アーリーセーフ、あめんこ
コナジラミ類 天敵等22、マシン油乳剤7、還元澱粉糖化物5、組み合わせ3、なたね油2 ほか エンストリップ、ベニカマイルドスプレー
アザミウマ類 天敵等29、スピノサド水和剤4、組み合わせ3 ほか オリスターA、スピノエース顆粒水和剤
ハモグリバエ類 スピノサド水和剤3・粒剤2、天敵等3、組み合わせ2、ミルベメクチン乳剤1 ゼロカウント粒剤
カイガラムシ類 マシン油乳剤15、石灰硫黄合剤6、二酸化炭素2 ほか ボルン(マシン油エアゾル)
ケムシ類などチョウ目 天敵等(BT など)22、スピノサド水和剤3、性フェロモン3 ほか ニトルアー〈アメシロ〉

出典:FAMIC 農薬登録情報(2026年9月30日現在)の適用表を、表B.1 に当たる324製剤についてウラヨミが集計。「天敵等」は天敵等生物農薬、「組み合わせ」はその他の農薬。

カメムシに使えるのは1製剤だけ

「有機jas 農薬 カメムシ」の答えは、ほぼ「無い」です。表B.1 に当たる製剤で、畑のカメムシに登録があるのは、KINCHO園芸の「パイベニカVスプレー」(ピレトリン乳剤)がトマト・ミニトマトのホオズキカメムシに使えるものだけでした。

稲の斑点米カメムシや、果樹のカメムシに使える表B.1 の製剤は見つかりませんでした。カメムシは、ネットで物理的に防ぐ、まわりの雑草を管理するなど、農薬以外の方法が中心になります。

ナメクジ・ジャンボタニシ

ナメクジ・カタツムリ類には、燐酸第二鉄粒剤10製剤(スラゴなど)、メタアルデヒド粒剤6製剤・メタアルデヒド剤1製剤、銅水和剤10製剤に登録があります。メタアルデヒドは捕虫器に入れて使うときだけ有機で使えます。水田のジャンボタニシには燐酸第二鉄の製剤(スクミンベイトなど)があります。

病気ごとの表

病気 表B.1 の項目(製剤数) 製剤名の例
うどんこ病 天敵等15、組み合わせ8、水和硫黄7、石灰硫黄合剤6、還元澱粉糖化物5、銅水和剤5、マシン油4、脂肪酸グリセリド4、硫黄粉剤3、炭酸水素カリウム2、炭酸水素ナトリウム2 ほか カリグリーン、ハーモメイト水溶剤、クムラス、アーリーセーフ
べと病 銅水和剤21、生石灰(ボルドー液用)16、組み合わせ7、硫酸銅3 ほか Zボルドー、ICボルドー66D
灰色かび病 天敵等10、組み合わせ4、炭酸水素カリウム2、炭酸水素ナトリウム2 バチスター水和剤、カリグリーン
疫病 銅水和剤26、生石灰16、組み合わせ8、硫酸銅3、銅粉剤2 Zボルドー
黒星病 生石灰16、水和硫黄7、石灰硫黄合剤6、組み合わせ6、天敵等5、硫酸銅3、銅水和剤3 クムラス、ボトキラー水和剤
さび病 生石灰16、銅水和剤16、水和硫黄7、石灰硫黄合剤6 ほか クムラス
軟腐病 銅水和剤22、組み合わせ5、天敵等2、カスガマイシン液剤1 マスタピース水和剤
いもち病(稲) 天敵等7、カスガマイシン液剤・粉剤・水溶剤 各1 カスミン粉剤30

出典:同上。うどんこ病・黒星病の「天敵等」には、BT粒剤のベニカBT殺菌粒剤を含みます(粒剤が表B.1 の天敵等生物農薬に当たるかは、国の一覧では確かめられません)。

病気の対策では、銅とボルドー液(硫酸銅と生石灰で作る)が中心になっていることが分かります。銅のデメリットは 有機で使える農薬のデメリットは? で取り上げます。

家庭菜園向けに有機JASで使えると書かれた市販品

家庭園芸用の農薬にも、表B.1 の成分の製品があり、メーカーが「有機JAS規格で使用可能」と公式に書いているものがあります。2026年10月7日に各社の公式サイトで確かめました。

製品(メーカー) 有効成分 表B.1 の項目 公式の書き方
パイベニカVスプレー(KINCHO園芸) ピレトリン ピレトリン乳剤 「有機JAS規格(オーガニック栽培)で使用可能」
アーリーセーフ(KINCHO園芸) 脂肪酸グリセリド 脂肪酸グリセリド乳剤 「天然物(ヤシ油)由来の有効成分で、有機JAS規格(オーガニック栽培)で使用可能」
STゼンターリ顆粒水和剤(KINCHO園芸) BT 天敵等生物農薬 「有機農産物栽培(有機JAS)に!」
サンボルドー(KINCHO園芸) 塩基性塩化銅 銅水和剤 「有機JAS規格(オーガニック栽培)で使用可能」
カリグリーン(KINCHO園芸の家庭園芸用) 炭酸水素カリウム 炭酸水素カリウム水溶剤 「有機JAS規格(オーガニック栽培)で使用可能」
サンケイ クムラス(KINCHO園芸のサイトに掲載) 硫黄 水和硫黄剤 「オーガニック栽培でも使えます」
アースガーデン やさお酢(アース製薬) 酢酸(酸度0.25%) 食酢(特定防除資材) 「病気・虫の退治と予防に使える特定防除資材」
アースガーデン トマトの虫・病気 退治&予防(アース製薬) 酢酸(酸度0.25%) 食酢(特定防除資材) 「オーガニック栽培で使える」

出典:KINCHO園芸・アース製薬の公式製品情報(2026年10月7日確認)。KINCHO園芸は、住友化学園芸から社名を変えた会社です。

やさお酢は、甘味料などを加えた「合成酢」(名称の表示)です。国の手順書では合成酢は食酢に当たるとされる一方、あわせ酢は当たらないとしているため、有機JASの認証を受けている農家は認証機関に確認してください。

選ぶときの注意です。

  • 「オーガニック栽培にも」と「有機JASで使用可能」は同じではありません。KINCHO園芸の「マイローズ ベニカBT殺菌粒剤」(BT)は「オーガニック栽培にも!」と書いていますが、「有機JAS」とは書いていません。国の手順書の天敵等生物農薬の一覧に載っているのは「BT水和剤」で、粒剤が当たるかは確かめられませんでした(この記事の製剤数では、天敵等生物農薬に含めて数えています)
  • 成分が表B.1 に当たりそうでも、メーカーが「有機JAS」と書いていない製品があります。たとえば、還元澱粉糖化物・調合油・BT を組み合わせた「ベニカナチュラルスプレー」は、公式の製品情報に「有機JAS」の言葉がありませんでした。有機JASの認証を受けている農家は、認証機関に確かめてから使います
  • 家庭菜園で認証を取らないなら、規格に従う義務はありません。ただ、「有機の野菜を作りたい」という目的なら、表B.1 の成分を選ぶ目安になります。どの製品も、ラベルの適用表にある作物と使い方を守ります
  • 内容量や販売状況は変わることがあります

ラベルで確かめること

家庭園芸用でも、農薬はラベルの「適用表」に書かれた作物と害虫・病気にだけ使えます。たとえばパイベニカVスプレーの場合、キャベツ・こまつなのアオムシには「収穫7日前まで」といった使える時期が作物ごとに決まっています。見るところは次の4つです。

ラベルの項目 見ること
農林水産省登録第○○号 農薬として登録されているか(特定防除資材は「特定防除資材」の表示)
有効成分 表B.1 の成分か(ピレトリン、脂肪酸グリセリド、BT、銅、炭酸水素カリウム、硫黄など)
適用表の作物名 育てている野菜・花の名前があるか
使用時期・回数 収穫の何日前まで使えるか、全部で何回まで使えるか

成分の性質は、ウラヨミの 農薬データベース で、ピレトリン・銅・硫黄・BT・炭酸水素塩などのページから確かめられます。

家庭菜園で使える量の製品で、メーカーが有機JAS(または特定防除資材)と公式に書き、農薬の登録番号(食酢は特定防除資材の表示)を確かめられるものを選びました。アブラムシ・カメムシ(トマトのホオズキカメムシ)に登録のあるピレトリンのスプレー、アブラムシ・ハダニ・うどんこ病に登録のある脂肪酸グリセリド、食酢の特定防除資材です。

有機で使える農薬のデメリットは? 安全性・魚・銅

「有機で使える農薬だから安全」「自然由来だから環境にやさしい」とは言い切れません。公的な評価とラベルの注意書きから、分かっていることを並べます。

食品安全委員会の ADI

表B.1 の成分のうち、微生物が作る物質やメタアルデヒドは、ふつうの農薬と同じように食品安全委員会が評価し、ADI(一日摂取許容量)が決まっています。

成分 ADI(体重1kgあたり・1日) 評価
スピノサド 0.024mg 2021年6月15日
ミルベメクチン 0.03mg 2014年4月22日
メタアルデヒド 0.022mg(急性参照用量 0.3mg) 2022年10月12日
カスガマイシン 0.094mg 2026年5月13日(再評価)
ピレトリン 食品安全委員会の評価は見つからなかった。EU の ADI は 0.04mg (EU は2013年の評価)

出典:食品安全委員会 化学物質毒性評価データベース・評価書、EU 農薬データベース。

ADI は、毎日一生とり続けても健康への悪影響がないと推定される量です。たとえば体重50kgの人なら、スピノサドは1日1.2mg が目安になります。ADI があるということは、「天然由来だから評価が要らない」わけではなく、ほかの農薬と同じものさしで量を管理しているということです。

残留基準を設けない「対象外物質」

一方で、国が「残っても人の健康を損なうおそれがないことが明らか」として、残留基準を設けない「対象外物質」もあります(告示、2026年2月19日更新版で82物質)。

表B.1 の成分では、硫黄・銅・重曹(炭酸水素ナトリウム)・シイタケ菌糸体抽出物・パラフィン・マシン油が対象外物質に入っています。スピノサド・ミルベメクチン・カスガマイシン・メタアルデヒドは入っていません。

燐酸第二鉄・炭酸水素カリウムなどは、告示に「鉄」「カリウム」という物質名はありますが、成分(化合物)として対象外に当たるかは確かめられませんでした。また、2025年に表B.1 から外れたクロレラ抽出物・ケイソウ土・ワックスは、対象外物質の一覧には残っています。残留の基準と有機の規格は、別の制度だからです。

魚への注意:324製剤中74、「強い影響」9はすべて銅

魚・エビなどへの注意書きがある「有機の農薬」は324製剤中74FAMIC の「水産動植物への影響に係る注意事項」を、表B.1 に当たる製剤と照合(製剤の数)「強い影響」の注意:9製剤「影響を及ぼす恐れ」の注意:65製剤該当なし:231製剤注意欄が空:19製剤「強い影響」の注意 9「影響を及ぼす恐れ」の注意 65該当なし 231注意欄が空 19「強い影響」9製剤はすべて銅を含む銅水和剤6(ICボルドー412、コサイド3000 など)・硫酸銅1・硫黄と銅の組み合わせ2(サンケイ園芸ボルドー、イデクリーン水和剤)「影響を及ぼす恐れ」が多い項目マシン油乳剤 15、銅水和剤 15、スピノサド水和剤 6、石灰硫黄合剤 6、その他の農薬(組み合わせ) 5注意書きは製剤ごとのラベルの文。散布した液や容器の洗い水を川や池に流さないこと、などが書かれる。出典:FAMIC「水産動植物への影響に係る使用上の注意事項」(令和8年9月30日)をウラヨミが表B.1 の製剤と照合。
表B.1 に当たる324製剤の、魚・甲殻類(水産動植物)への注意書き。FAMIC「水産動植物への影響に係る使用上の注意事項」(令和8年9月30日)をウラヨミが照合。

農薬のラベルには、魚やエビなどの水の生きもの(水産動植物)への注意が書かれます。FAMIC がまとめた製剤ごとの注意書きを、表B.1 に当たる324製剤と照らし合わせました。

  • 74製剤(23%)に注意書きがありました
  • そのうち「強い影響」と書かれた9製剤は、すべて銅を含みます(銅水和剤6、硫酸銅1、硫黄と銅の組み合わせ2)
  • 「影響を及ぼす恐れ」は65製剤で、マシン油乳剤15製剤すべて、銅水和剤15、スピノサド水和剤6、石灰硫黄合剤6 などでした
  • 燐酸第二鉄・メタアルデヒド・生石灰や、天敵の製剤の大半は「該当なし」でした

FAMIC の区分では、硫酸銅の3製剤は劇物に当たります(ほかの321製剤は普通物、または区分のない生物農薬)。

ミツバチへの影響は?

製剤ラベルのミツバチへの注意書きは、今回は確かめていません。参考として、EU の化学品の分類では、スピノサド・ピレトリン・ミルベメクチンに「水生生物に非常に強い毒性」の区分がついています。成分ごとの性質は 農薬データベース の各ページで確かめられます。

銅は土にたまる:EU は「7年で28kg」まで

銅は、有機で病気を防ぐ中心の成分ですが、土にたまる性質があります。

EU は2018年の規則(2018/1981)で、銅化合物の承認を「代替候補」(より安全なものがあれば置き換えるべき成分)として更新しました。理由は、土の中で半分に減るまで120日を超える(残りやすい)ことと、水の生きものへの長期の毒性が強い(長期の無影響濃度が0.01mg/L 未満)ことです。そのうえで、7年間で1ヘクタールあたり銅28kg(平均で年4kg)までという上限を決めました。

EU の有機の規則(2021/1165)でも、水酸化銅・オキシ塩化銅・酸化銅・ボルドー液・三塩基性硫酸銅に、同じ「7年で最大28kg/ha」が書かれています。EU での銅の承認期限は2029年6月30日です。米国の有機も、固定銅は「土への蓄積を最小にする使い方」に限っています。

日本の有機JASには、銅の量の上限がありません。表B.1 の銅水和剤・銅粉剤の条件の欄は「-」で、使う量は製剤ごとの登録(回数・薄める倍率)で決まるだけです。日本の農地の土の銅がどれくらいたまっているかは、今回は確かめられませんでした。

「自然由来だから安全」の反証

天然の成分でも、毒性が低いとは限りません。

  • WHO の農薬の危険度分類(2019年版)では、ピレトリンも銅化合物も「II(中程度の危険)」です
  • 米国の有機は、天然の成分でも、ロテノン、たばこ粉(硫酸ニコチン)、ヒ素、ストリキニーネなどを禁止しています
  • EU は、天然の金属である銅を、残りやすさと毒性から「代替候補」にしています

有機の農薬の毒性を、慣行の農薬と同じものさしでまとめて比べた公的な資料は見つかりませんでした。言えるのは、「有機で使える」は「規格の表に載っている」という意味で、「毒性が低い」という意味ではないということです。

生産者にとってのデメリット:使える道具が少ない

もう一つのデメリットは、使える製剤が少ないことです。表B.1 に当たるのは登録全体の8.7%で、カメムシのように、ほとんど打つ手がない害虫もあります。1製剤しかない項目も7つありました。

一方で、有機の農家が実際に表B.1 の農薬をどのくらい使っているかの公的な調査は見つかりませんでした。農林水産省の令和7年度の調査(有機農業に取り組む1,068経営体)では、「有機JAS認証は取得していないが、栽培期間中は化学肥料・化学農薬不使用」と答えた人が31.8%、「有機JAS認証」が16.8%でした。

EU・米国と比べると? 抗生物質の扱いが違う

国によって「有機で使える農薬」は違います。とくに違いが大きいのは、抗生物質、銅の量、そして EU が条件つきで認めている合成ピレスロイドです。

成分 日本(表B.1) EU 有機 米国 有機(NOP)
カスガマイシン(抗生物質) ○ ×(EU で未承認) 一覧に載っていない
ストレプトマイシン・テトラサイクリン(抗生物質) ×(表に無い。慣行の栽培では登録あり) ×(未承認) ×(2014年10月21日まで可)
ポリオキシンD(微生物由来の殺菌成分) × × ○(亜鉛塩)
ミルベメクチン ○ ×(EU で承認済みだが有機の一覧に無い) ×(一覧に無い)
スピノサド ○ ○ ○
メタアルデヒド ○(捕虫器だけ) × ×
燐酸第二鉄 ○ ○ ○
銅 ○(量の上限なし) ○(7年で28kg/ha まで) ○(土にためない使い方)
アザジラクチン(ニーム) × ○ 天然物として使える扱い(個別は未確認)
合成ピレスロイド × デルタメトリン・ラムダシハロトリンをわなの中だけ○ ×
除草に使える成分 項目なし 基本物質・精油・脂肪酸は除草に使えない 石けん系除草剤(農場の道・溝・建物まわりと観賞用作物だけ)
生分解性マルチ × (未確認) ○(バイオマルチフィルム)
エチレン パイナップルの開花だけ バナナ・ばれいしょ(柑橘は条件つき) パイナップルの開花

出典:JAS 1605:2024、EU 規則 2021/1165 附属書I(2026年1月1日の統合版)、米国連邦規則 7 CFR 205.601・205.602(2026年10月5日時点)、米国官報 2015年12月14日。ウラヨミが整理。

米国は2014年に抗生物質をやめた

米国の有機(NOP)は、天然の成分は原則として使える(禁止リストに無ければ)、合成の成分は許可リストに載っているものだけ、という考え方です。許可リストには、銅・硫黄・石灰硫黄・園芸用の油・殺虫用の石けん・フェロモン・燐酸第二鉄・炭酸水素カリウムなどがあります。

抗生物質のストレプトマイシンとテトラサイクリンは、りんご・なしの火傷病に使うため許可リストに載っていましたが、2014年10月21日に期限が切れ、使えなくなりました。2015年12月14日の官報で、一覧からも削除されています。日本の有機JASでは、抗生物質のカスガマイシンがいまも使えるので、ここは大きな違いです。

EU は「微生物は全部」「合成ピレスロイドはわなの中だけ」

EU の有機の規則(2021/1165 附属書I)は、次のような構成です。

  • 基本物質:酢・重曹・ひまわり油・牛乳・からし種の粉など、食品にもなるもの。除草剤としては使えない
  • 低リスク物質:燐酸第二鉄、炭酸水素カリウム、チョウ・ガの性フェロモンなど
  • 微生物:EU で承認された微生物は全部使える(遺伝子組換え由来を除く)
  • その他:スピノサド、ピレトリン、硫黄、パラフィン油、石灰硫黄、アザジラクチン(ニーム)、カオリン、ケイソウ土、オレンジ油などの精油、銅5種(7年28kg/ha)、そして合成ピレスロイドのデルタメトリン・ラムダシハロトリン(オリーブミバエなどのわなの中だけ)

「〇〇もの」とまとめて認める枠があるため、EU で有機に使える有効成分の数を一つの数で言うのは難しい、というのがウラヨミの整理です。日本で2025年に外れたケイソウ土が、EU では有機で使えるといった違いもあります。

世界の有機の制度の違い全体は、世界のオーガニック事情の記事 にまとめています。

「有機JAS適合資材リスト」とは? 938件中、農薬は11件

「有機JAS適合資材リスト」は、民間の評価機関が「有機JASに合う」と評価して公表した資材の一覧で、中身はほとんどが肥料です。農薬は、リストに載っているかではなく、表B.1 に当たるかで判断します。

項目 内容
何のリスト? 一定の要件を満たす評価機関が資材を評価し、有機JASに合うとして公表したリスト。載っている肥料などは、有機JASの農家がそれぞれ評価しなくても使える(農林水産省)。掲載は一般に有料
評価機関 農林水産省が紹介しているのは、有機JAS資材評価協議会、日本有機農業生産団体中央会、ACCIS の3つ
掲載数 有機JAS資材評価協議会 938件、うち表B.1(農薬)は11件(2026年10月7日にウラヨミが数えた)。ACCIS 215件(2026年9月24日更新)、日本有機農業生産団体中央会は十数件で、どちらも農薬は無し
農薬の11件 天敵(チリパック)、カリグリーン、サフオイル乳剤2、展着剤(アビオン-E)、ICボルドー412・66D、燐酸第二鉄の4製剤(スラゴ、スクミンベイト3・V、スクミ斬V)
肥料と農薬の違い 肥料は、原材料や作り方の書類で化学合成の物質や組換えDNAを確かめる。農薬は、表B.1 に当たるかと組換えDNAの確認だけで、化学合成かどうかは確認不要(手順書)
最終的に判断するのは 農家を認証する登録認証機関。評価協議会も「未掲載資材でも使用可能なものがあります」と書いている

「有機JAS適合」と書かれた資材は、国の認証マークではなく、評価機関の判断です。認証機関の ACCIS は、「肥料や資材に関する勘違いで取り消されてしまうようなことの無いように」と注意をうながしています。なお、病気や害虫を防ぐとうたいながら農薬の登録がない資材については、農林水産省が「農薬疑義資材」として情報を集めています。

家庭菜園で「有機JASに合う」肥料を選ぶなら、このリストに名前と登録番号が載っているかを確かめるのが近道です。たとえば次の液体肥料は、有機JAS資材評価協議会のリストに登録番号つきで載っています(肥料なので、病気や害虫を防ぐものではありません)。

有機の作物に農薬は残る? 隣の畑から飛んできたら?

有機の作物にも、農薬が残ることはあります。農林水産省の Q&A(問15-9)自身が、「一般的な環境汚染により、有機農産物に全く残留がないことを保証することはできません」と書いています。

  • 隣の畑から農薬が飛んできた(ドリフト)場合:表B.1 以外の農薬が飛んできたり流れ込んだりしたことが確認されれば、その畑の農産物は有機農産物ではなくなります(Q&A 問9-10)。規格は、まわりから使用禁止の資材が飛んできたり流れ込んだりしないよう、必要な対策を求めています(5.1.1)
  • 表B.1 の農薬を使えば、その成分は残ることがあります。EFSA(欧州食品安全機関、2026年公表)の2024年の残留農薬報告では、EU の公式検査で有機と表示された5,939試料のうち80.4%は残留が定量できず、18.8%は基準値以下で検出、0.9%が基準値超えでした。有機でいちばん多く見つかったのは銅です。くわしくは オーガニックと健康の記事 にまとめています
  • 収穫後の保管で虫を防ぐときも、まず物理的な方法を使い、足りないときに表B.1 の農薬などを使います。二酸化炭素のくん蒸は、一時的に触れるだけなので「混ざった」とはみなされません(Q&A 問15-4・18-1)。収穫後に使う農薬の話は ポストハーベストの記事 にまとめています

野菜ごとにどんな農薬が使われ、どれくらい見つかっているかは、野菜と農薬のデータベース で確かめられます。

「有機」と「農薬:栽培期間中不使用」の違い

「有機」と「農薬不使用」は別のものです。有機JASの農産物でも、表B.1 の農薬を使っていることがあります。

表示 意味 ルール
有機・オーガニック(有機JASマーク) 有機JASの規格に合っている。表B.1 の農薬は使っていることがある JAS法(認証がないと「有機」と表示できない)
農薬:栽培期間中不使用 その作物を育てる間、農薬をまったく使っていない 特別栽培農産物の表示ガイドライン
節減対象農薬:栽培期間中不使用 「節減対象農薬」は使っていない。表B.1 の農薬などは使っていることがある 同上
節減対象農薬:当地比○割減 節減対象農薬の回数を、地域の慣行の5割以下にした 同上

特別栽培のガイドラインでいう「節減対象農薬」は、化学合成の農薬から、有機JASで使える表B.1 の農薬を除いたものです。そのため、表B.1 の農薬だけを使って育てたものは「節減対象農薬:栽培期間中不使用」、農薬をまったく使わなかったものだけが「農薬:栽培期間中不使用」と表示します(農林水産省 特別栽培農産物に係る表示ガイドラインと Q&A)。

「無農薬」という表示は、2003年5月のガイドラインの改正で使えなくなりました。消費者が「農薬の残留がまったくない」と受け取りやすく、「無農薬」を「有機」より良いものと思っている人が6割以上いた、というのが国の説明です。くわしい経緯は オーガニックとは(基準と歴史)の記事 にまとめています。

有機のルールを正しく知っている人は、まだ少数です。農林水産省の令和7年度の調査(3,000人)では、「有機」「オーガニック」の作り方と表示のルールを正確に知っていた人は8.6%でした。2015年度の調査(893人)では、「有機」から思い浮かぶイメージは「安全・安心」が76.4%、「健康によい」が63.4%でした。一方で、「有機でも農薬が使われることを知っているか」を直接聞いた公的な調査は見つかりませんでした。

農薬を一切使っていない野菜を買うには

農薬をまったく使っていない野菜を選びたいなら、有機JASマークだけでは分かりません。特別栽培の表示の「農薬:栽培期間中不使用」を確かめるか、生産者に栽培の方法を聞くのが確実です。

特別栽培の表示には、栽培責任者や確認責任者の名前・連絡先を書くことになっていて、どんな農薬をどれだけ使ったかを問い合わせることもできます。生産者ごとの栽培方法を載せている産直・宅配なら、買う前に表示を確かめられます。食材宅配の比べ方は 食材宅配の比較記事 にまとめています。

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

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まとめ

気になること 分かったこと
有機JASで使える農薬の一覧は? 表B.1 の42項目+「その他の農薬」。殺菌18・殺虫16・両方3・成長調整2・誘引1・展着1・薬害防止1。成分でまとめると約30。「別表2」は古い呼び名
有機でも農薬は使える? 使える。ただし耕し方・物理的な方法・天敵で防げず、重大な損害の危険が迫っているときだけ。登録どおりの使い方も守る
天然のものだけ? 違う。化学合成のメタアルデヒド、銅の化合物、微生物が作るスピノサド・ミルベメクチン、抗生物質のカスガマイシンも入る
除草剤は? 表B.1 に項目なし。手・機械・マルチ・米ぬかなどで抑える。生分解性マルチは不可。食酢の除草剤が使えるかは未確認
重曹・食酢は? 登録の要らない特定防除資材で、表B.1 にも入っている。合成酢も可、あわせ酢は不可
アブラムシ・カメムシには? アブラムシは天敵・油・還元澱粉糖化物など多い。カメムシはトマトのホオズキカメムシ用の1製剤だけ
登録されている製剤の数は? 3,741製剤のうち324(8.7%)。天敵等生物農薬が113で最多。1製剤しかない項目が7つ
デメリットは? 74製剤に魚への注意、「強い影響」9製剤はすべて銅。EU は銅を7年28kg/ha に制限、日本は上限なし。使える製剤が少ない
海外との違いは? 抗生物質:日本はカスガマイシン可、米国は2014年に抗生物質を中止、EU は未承認。EU は合成ピレスロイドをわなの中だけ可
適合資材リストとは? 民間の評価機関のリストで、ほとんどが肥料。最大のリスト938件のうち農薬は11件。農薬は表B.1 で判断
有機と農薬不使用の違いは? 有機は表B.1 の農薬を使うことがある。「農薬:栽培期間中不使用」は農薬をまったく使っていない

参考にした資料

規格・Q&A・手順書

  • 農林水産省 日本農林規格「有機農産物」JAS 1605:2024(2024年7月1日改正、農林水産省告示第1280号)附属書B 表B.1 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-437.pdf
  • 農林水産省「有機食品の検査認証制度」https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
  • 国税庁・農林水産省「有機農産物、有機加工食品、有機畜産物及び有機飼料のJASのQ&A」(令和7年10月)
  • 農林水産省「有機農産物のJAS資材評価手順書」(令和7年4月)、「有機農産物検査認証制度ハンドブック」(令和6年10月)
  • 令和4年 財務省・農林水産省告示第31号(化学農薬等の定義)
  • 農林水産省「有機JAS資材評価」「肥料等を生産・販売する皆さまへ」https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki_shizai.html
  • 有機JAS資材評価協議会「有機JAS適合資材リスト」(2026年10月7日取得)、ACCIS「有機JAS適合資材リスト」(2026年9月24日更新)、日本有機農業生産団体中央会「登録製品リスト」(2026年6月25日)

特定防除資材・特別栽培

  • 農林水産省「特定防除資材(特定農薬)」、「特定農薬(特定防除資材)の指定に関する留意事項」(平成26年3月28日、同年11月25日改正)https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/
  • 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」・同 Q&A・改正の概要 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html
  • 農林水産省「令和7年度 有機農業及び有機食品に関する意識・意向調査」(令和8年3月17日公表)

登録データ(ウラヨミの照合)

  • 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)農薬登録情報ダウンロード、登録農薬の概要(2026年9月30日現在)、登録有効成分一覧、水産動植物への影響に係る使用上の注意事項(令和8年9月30日)https://www.acis.famic.go.jp/

安全性

  • 食品安全委員会 化学物質毒性評価データベース、カスガマイシンの評価書(2026年5月13日)https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20260501061
  • 消費者庁 残留基準を設定しない「対象外物質」の告示(令和8年2月19日更新)
  • WHO「Recommended Classification of Pesticides by Hazard」(2019年版)
  • EFSA(欧州食品安全機関)2024年の EU 残留農薬報告(2026年公表)

海外

市販品

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.08)。