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ラベルの読み方日本と海外の違い説の検証確認日 2026.10.03

日本と世界のオーガニック事情:日本の有機はなぜ0.9%? 市場・農地・制度・偽装を米国・EU・中国・韓国と比較

PR この記事には、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・A8.net のアフィリエイト広告のリンク(「楽天市場で見る」など)を含みます。書いている内容は、広告の有無と関係なく、公的機関の資料と論文をもとにしています。

「ヨーロッパはオーガニック先進国で、日本は遅れている」。よく聞く話です。ほかにも、

  • 日本の有機農業は、農地のたった1%もないって本当?
  • 「有機農地が世界一広い国」はどこ?
  • 「オーガニックの基準がいちばん厳しい国」はどこ?
  • 輸入のオーガニックや、中国産のオーガニックは信用できる?
  • オーガニックの偽装は、本当に起きている?
  • 国ごと有機に切り替えたスリランカは、どうなった?
  • オーガニックは環境にいいって本当?

といった疑問があります。その多くは、検索の候補にも実際に並んでいます。

この記事では、

  • 世界のオーガニック(有機)の売上・農地・1人あたりの消費額を、国際統計で比べる
  • 日本・米国・EU・中国・韓国・インド・オーストラリアなどの「有機」のルールを比べる
  • 日本の有機が少ない理由と、増えている場所(北海道の牧草地・学校給食)を確かめる
  • 日本で売られている有機JASのうち、どのくらいが外国で認証されたものかを調べる
  • 米国・欧州・中国・日本の偽装事件と、その後の対策を並べる
  • 国ごとに、人々がオーガニックを買う理由・買わない理由を比べる
  • 環境への影響の研究を、収量・生物多様性・温室効果ガスに分けて読む

を、国の統計、法令、公的機関の資料、論文で確かめます。

オーガニックのシリーズ(3本)

結論

  • 世界の有機食品の売上は、2024年に1,450億ユーロ(約23.6兆円)。2003年の約7.4倍です。米国・ドイツ・中国・フランスの4か国で世界の約7割を占めます
  • 1人あたりの消費額は、スイスが年481ユーロで、日本(13ユーロ、2022年)の約37倍。日本は世界平均(17.7ユーロ)より少なく、食品の売上に占める有機の割合は0.3%です
  • 「有機農地の世界一」はオーストラリアで、世界の有機農地の53.6%を占めます。ただし、そのほとんどは牛や羊の放牧地です。世界全体でも、有機農地の7割は草地・放牧地です
  • 「基準がいちばん厳しい国」は、一つのものさしでは決められません。日本は「有機JASマークが無いと『有機』と書けない」国、米国は「95%以上」「70%以上」の段階で表示する国、オーストラリアは国内で売る有機に義務の基準が無い国、韓国は「無農薬」を国が認証する国(日本では「無農薬」の表示はルールで禁止)です
  • 日本の有機農業は、耕地の0.9%(2024年度末、3.98万ha)。国際統計では0.4%と書かれますが、これは数え方の違いです。最近の増加の大部分は北海道の牧草地で、国産の有機は米で0.12%、野菜で0.45%。お茶だけが6.86%と高めです
  • 日本向けに出荷された有機JASの農産物の量は、国内で格付された量の約6割に当たります。果実・大豆・コーヒーは、外国で格付されたもののほうがずっと多い。中国は、日本と有機の制度を認め合う国・地域(6つ)に入っていないので、中国産を日本で「有機」として売るには、日本の有機JASの認証が要ります
  • 偽装は実際に起きています。米国では、ある農家が2010〜2017年に売った穀物の9割超が偽の「有機」だった事件があり、2024年3月から輸入証明書の義務化などの新しい規則が始まりました。日本でも、認証を受けずに有機JASマークを付けた会社に、2024年に国が命令を出しています
  • 環境への影響は、指標によって結果が割れます。生物多様性(生きものの種類)は有機のほうが約3割多いという分析がある一方、収量は約2割低く、生産量あたりの温室効果ガスは多くなる場合があります。スリランカは2021年に化学肥料を急に禁止し、8か月たたずに撤回しました

この記事で紹介しているもの

紹介しているもの どんなときに 記事の中の場所
原料が国産の有機みそ・原料が輸入の有機みそ ラベルの原産地を見比べて選びたいとき ラベルの原産地で見分ける
有機JASのコーヒー豆・イタリアの有機オリーブオイル 国内でほとんど作られていない有機の食品を選ぶとき 輸入の有機が多い品目
有機の取り扱いが多い生協・産直の宅配(コープ自然派・坂ノ途中・食べチョクなど) 農家や産地とつながって有機の野菜を買いたいとき 日本生まれの「提携」

世界のオーガニックは、どれくらいの大きさ?

まず結論から。世界の有機食品の売上はこの20年あまりで約7倍になりましたが、売上の7割は4か国に集中しています。数字は、スイスの有機農業研究所(FiBL)と国際有機農業運動連盟(IFOAM)が毎年出している国際統計「The World of Organic Agriculture」の2026年版(2024年のデータ、183か国)を使います。日本の農林水産省も、国際比較にはこの統計を使っています。

売上は20年あまりで約7倍

世界の有機食品の売上と有機農地の広さ売上は2003年から2024年で約7.4倍。農地は2000年から約6.6倍(転換中を含む)小売売上(十億ユーロ)0501001502003年:19.6十億ユーロ2004年:20.9十億ユーロ2005年:23.6十億ユーロ2006年:27.9十億ユーロ2007年:31.7十億ユーロ2008年:34.1十億ユーロ2009年:36.9十億ユーロ2010年:41.2十億ユーロ2011年:43.8十億ユーロ2012年:49.5十億ユーロ2013年:54.8十億ユーロ2014年:64.2十億ユーロ2015年:75.5十億ユーロ2016年:84.6十億ユーロ2017年:92.6十億ユーロ2018年:97.4十億ユーロ2019年:106.0十億ユーロ2020年:121.1十億ユーロ2021年:124.3十億ユーロ2022年:134.3十億ユーロ2023年:138.0十億ユーロ2024年:145.0十億ユーロ19.675.5145.02000年の売上は15.2(年鑑の概要)。有機農地(百万ヘクタール)040801202000年:14.9百万ha2001年:17.3百万ha2002年:20.0百万ha2003年:25.9百万ha2004年:30.0百万ha2005年:29.3百万ha2006年:30.4百万ha2007年:31.7百万ha2008年:34.7百万ha2009年:36.5百万ha2010年:35.9百万ha2011年:36.9百万ha2012年:37.0百万ha2013年:43.0百万ha2014年:48.7百万ha2015年:50.3百万ha2016年:58.0百万ha2017年:68.7百万ha2018年:70.4百万ha2019年:71.6百万ha2020年:74.7百万ha2021年:76.2百万ha2022年:96.4百万ha2023年:99.1百万ha2024年:98.9百万ha14.9(0.3%)2022年 96.498.9(2.1%)200020052010201520202024かっこ内は世界の農地に占める割合。2022年の急増は、オーストラリアの新しいデータが入った影響が大きいとみられる(年鑑の本文では確かめられなかった)。売上は国ごとに調査年が違う(日本は2022年の値)。2024年の売上は確定値145.0(暫定値144.9)。出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」、農林水産省「有機農業をめぐる事情」(令和8年4月)。
出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」、農林水産省「有機農業をめぐる事情」(令和8年4月)。売上は国ごとに調査年が違う
  • 世界の有機食品の小売売上は、2024年に1,450億ユーロ(前年より69億ユーロ増)。農水省は1ユーロ=163円で約23.6兆円と換算しています
  • 2003年は196億ユーロだったので、21年で約7.4倍です(ウラヨミで計算)
  • 有機農地(有機に切り替える途中の「転換中」を含む)は、9,889万ha で、世界の農地の2.1%。2000年は1,490万ha・0.3%でした
  • 有機の生産者は世界に約484万人。そのうち約236万人(約49%)がインドです

国によって、売上の調査年が違うことに注意が必要です。たとえば日本の売上は2022年の値です。また、米国の有機農地は2024年に56%増えていますが、FiBL は「新しいデータが入ったためで、前年と単純に比べられない」と書いています。

米国・ドイツ・中国・フランスで世界の約7割

順位 国 有機食品の小売売上(2024年)
1 米国 604億ユーロ
2 ドイツ 170億ユーロ
3 中国 155億ユーロ
4 フランス 122億ユーロ
5 カナダ 52億ユーロ
6 イタリア 52億ユーロ
7 スイス 44億ユーロ
8 英国 41億ユーロ
― 日本(2022年) 16億ユーロ

出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」の国別の表。

上位4か国の合計は1,051億ユーロで、世界の約72.5%です(ウラヨミで計算)。日本は2022年の値で16.2億ユーロ。農水省は「2022年時点で世界13位、アジアでは中国に次ぐ2位」と書いています。2026年版の表でウラヨミが並べ直すと、日本は14位でした(スウェーデン・オランダの次)。

中国は売上で世界3位ですが、人口が多いので、1人あたりにすると11ユーロで、日本(13ユーロ)とほぼ同じです。

1人あたりでは、スイスが日本の約37倍

1人あたりの有機食品の消費額(1年)ユーロ/人。右の%は小売の食品の売上に占める有機の割合(データがある国のみ)有機の割合0100200300400500スイススイス:481ユーロ(12.3%)48112.3%デンマークデンマーク:373ユーロ(11.6%)37311.6%オーストリアオーストリア:292ユーロ(11.4%)29211.4%ルクセンブルクルクセンブルク:264ユーロ(9.0%)2649.0%ドイツドイツ:204ユーロ(6.5%)2046.5%スウェーデンスウェーデン:190ユーロ(6.7%)1906.7%フランスフランス:178ユーロ(5.7%)1785.7%米国米国:176ユーロ(6.0%※)1766.0%※カナダカナダ:126ユーロ(3.4%※)1263.4%※イタリアイタリア:88ユーロ(4.0%)884.0%英国英国:60ユーロ(1.8%)601.8%オーストラリアオーストラリア:52ユーロ(―)52―世界平均世界平均:17.7ユーロ(―)17.7―日本日本:13ユーロ(0.3%)130.3%韓国韓国:11ユーロ(2.5%※)112.5%※中国中国:11ユーロ(―)11―インドインド:0.3ユーロ(―)0.3―日本(13ユーロ、2022年)はスイス(481ユーロ)の約37分の1で、世界平均(17.7ユーロ)より少ない。日本の値は外食の売上を含む。日本・韓国・オーストラリアは2022年、ほかは2024年の値。※の割合は米国2020年・カナダ2023年・韓国2020年の値。出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」の国別の表(2024年データ)。
出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」の国別の表。日本・韓国・オーストラリアは2022年、そのほかは2024年の値

1人が1年に有機食品に使う額は、スイスが481ユーロ、デンマークが373ユーロ、オーストリアが292ユーロ。日本は13ユーロで、スイスの約37分の1です(ウラヨミで計算)。世界平均の17.7ユーロより少なく、韓国(11ユーロ)・中国(11ユーロ)と近い水準です。

食品の売上に占める有機の割合(市場シェア)も、スイス12.3%、デンマーク11.6%、オーストリア11.4%に対し、日本は0.3%(2022年)です。日本の値には、外食の売上も含まれていると FiBL の表に注記があります。

農水省が円で換算した2022年の数字では、日本の1人あたりは年1,794円、世界平均は2,346円、米国は24,288円、スイスは60,306円でした(1ユーロ=138円)。

「有機農地の世界一はオーストラリア」の中身

世界の有機農地 98.9百万ヘクタールの中身(2024年)国で分けると半分以上がオーストラリア、使い方で分けると7割が草地・放牧地国で分けるオーストラリア 53.0(53.6%)(百万ha)オーストラリア 53.0(53.6%)その他の国 45.9(百万ha)その他の国 45.9使い方で分ける草地・放牧地 69.6(70.4%)(百万ha)草地・放牧地 69.6(70.4%)畑 16.5(百万ha)永年作物 6.9(百万ha)不明 5.9(百万ha)緑:畑 16.5 / 薄い緑:永年作物 6.9 / 灰:地目不明 5.9オセアニアの有機農地の約99%は永年草地・放牧地。オーストラリアのデータは2022年のもの(2024年は新データなし)。単位は百万ヘクタール。畑と永年作物を合わせても23.4(約24%)。地目不明は表の合計との差。出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」(地目別の表・国別の表)。割合はウラヨミで計算。
出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」(地目別の表・国別の表)。割合はウラヨミで計算

有機農地の広さのランキングを見ると、1位はオーストラリアで5,302万ha。2位のインド(397万ha)の13倍以上です。オーストラリアだけで、世界の有機農地の53.6%を占めます(ウラヨミで計算)。

ただし、FiBL によると、オーストラリアを含むオセアニアの有機農地の約99%は、永年草地・放牧地です。つまり、牛や羊を放す広い牧草地です。オーストラリアの有機の生産者は1,635人しかいません。

世界全体で見ても、有機農地の70.4%が草地・放牧地(6,961万ha)で、野菜や穀物を作る畑は1,655万ha、果樹や茶などの永年作物は685万ha。畑と永年作物を合わせても、有機農地の約4分の1です。

「世界の有機農地ランキング」を、スーパーの野菜売り場の感覚で読むと、実態とずれます。オーストラリアを除くと、世界の有機農地は約4,590万haで、半分以下になります。

なお、オーストラリアのデータは2022年のもので、2024年は新しいデータがありませんでした。世界の有機農地が2022年に急に増えた(7,620万ha→9,640万ha)のも、オーストラリアのデータの更新の影響が大きいとみられますが、FiBL の本文では確かめられませんでした。

農地に占める割合が高い国

国・地域 有機農地の割合(2024年) 有機農地
リヒテンシュタイン 43.5% 1,574ha
オーストリア 27.2% 69.9万ha
ウルグアイ 23.1% 325万ha
エストニア 22.5% ―
ギリシャ 21.7% ―
イタリア 19.2% 251万ha
スイス 18.4% 19.1万ha
オーストラリア 14.6% 5,302万ha
ドイツ 11.5% 191万ha
EU 全体 11.1% 1,808万ha
フランス 9.4% 271万ha
英国 2.8% 48.5万ha
韓国 2.4% 3.8万ha
米国 0.8% 321万ha
中国 0.7% 359万ha
日本 0.4%(国の推計では0.9%) 1.8万ha(同 3.98万ha)

出典:FiBL & IFOAM「The World of Organic Agriculture 2026」。小さな国・島の順位は、原本の順位表で確かめていません。日本の0.4%と0.9%の違いは0.9%と0.4%:同じ日本の数字が2倍違うわけで説明します。

米国と中国は、売上は世界の1位と3位なのに、農地に占める有機の割合は1%未満です。FiBL によると、EU と米国が輸入した有機の農産物は合わせて590万トンで、主な輸出国はメキシコ・エクアドル・カナダでした。

「オーガニックの基準が厳しい国」はどこ? 主要国のルールを比べる

日本、米国、EU、中国、韓国、オーストラリア、デンマークの7か国の有機の制度を、特徴と数字1つずつで並べたカード。日本は有機JASマークが無いと「有機」と書けず、有機農業は耕地の0.9%。米国は100% organic が100%、organic が95%以上、made with organic が70%以上で、2024年3月から輸入証明書が義務。EU は全域で同じルールで、2030年に農地の25%が目標(2024年は11.1%)。中国は認証マーク1枚ごとの有機コードで、売上は世界3位。韓国は有機と無農薬の2区分を国が認証する。オーストラリアは国内向けに義務の基準がなく、有機農地は世界の53.6%。デンマークは1987年に有機農業の国の法律(有機に特化した法律として世界初とされる)を作り、飲食店に金・銀・銅のマークを出す。厳しさは一つのものさしでは比べられない。
図:主要国の有機の制度(農林水産省、米国連邦規則、中国政府、韓国の公開統計、オーストラリア ACCC、デンマーク食品獣医庁、FiBL 年鑑 2026 をもとに作成)(押すと拡大)

「オーガニック 基準 厳しい 国」「アメリカ オーガニック 基準」「eu オーガニック マーク」は、日本語の検索の候補に実際に出てくる言葉です。結論から言うと、国によって「何を決めているか」が違うので、厳しさを一列には並べられません。

10の国・地域の制度

国・地域 制度・マーク 表示のルールの特徴
日本 有機JAS(JAS法)。国が登録した認証機関が認証し、有機JASマークを付ける マークが無いと「有機」「オーガニック」「organic」と書けない(法律で名前を独占)。原材料の95%以上が有機の加工食品だけが「有機○○」。2025年10月から有機の酒類もマークが必須
米国 USDA(農務省)の国家有機プログラム(NOP) 「100% organic」は100%、「organic」は95%以上、「made with organic ○○」は70%以上(水と塩を除く)。2024年3月から輸入証明書・仲介業者の認証が義務に
EU 規則 2018/848(2022年1月適用)。EU の有機ロゴ(葉の形の「ユーロリーフ」) EU 全域で同じルール。2030年に農地の25%を有機にする目標
中国 国家標準 GB/T 19630 と「有機産品認証管理弁法」 認証マーク1枚ごとに「有機コード」を付け、認証書・生産者までたどれるようにしている
韓国 「親環境」農産物の認証(国立農産物品質管理院) 「有機」と「無農薬」の2つの区分を国が認証
インド 国家有機生産プログラム(NPOP)と、参加型保証システム(PGS-India)の2本立て。食品の表示は「Jaivik Bharat」ロゴ 生産者どうし・消費者が確かめ合う PGS の認証が、認証農地の約25%(FiBL)
オーストラリア 国内向けには義務の基準なし(AS 6000-2015 は任意)。輸出向けは国の基準が義務 国内では、競争・消費者委員会(ACCC)が「証明できない有機の表示」を消費者法で取り締まる
英国 EU 離脱後も、有機の規制を国内法として引き継いだ 日本とは EU 離脱後も有機の同等性が続き、2025年10月に酒類、2026年4月にさらに範囲が広がった
スイス 国の有機規則と、民間の Bio Suisse(芽のマーク) 1人あたりの消費額・市場シェアとも世界一
デンマーク 国が管理する「Ø マーク」 飲食店・社員食堂などに、仕入れに占める有機の割合で金(90〜100%)・銀(60〜90%)・銅(30〜60%)のマークを国が無料で出す

出典:農林水産省、米国連邦規則 7 CFR 205.301、米国官報(88 FR 3548)、中国政府(gov.cn)、江原道(韓国)の公開統計、FiBL 年鑑 2026、豪州 ACCC、デンマーク食品獣医庁。EU 規則の原文(EUR-Lex)は確認できず、解説資料によります。

「厳しさ」は一つのものさしでは比べられない

上の表から、少なくとも4つの「ものさし」があることが分かります。

  1. 名前を法律で守っているか:日本は、認証の無いものに「有機」と書くと、国が表示を消すよう命令でき、命令に従わないと1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(JAS法 第64条・第78条)。オーストラリアは、国内で売る有機に義務の基準がありません。ただし、うその有機表示は消費者法で取り締まられます
  2. 段階を表示するか:米国は70%以上でも「made with organic ○○」と書けます。日本には70%の段階は無く、「有機○○」は95%以上だけです
  3. 何を「有機の仲間」として認めるか:韓国は「無農薬」を国が認証します。日本は「無農薬」を表示してはいけない言葉にしています
  4. どこまでたどれるか:中国はマーク1枚ごとに番号を付けて追跡できるようにし、米国は2024年から輸入品1回ごとに証明書を求めています

「どの国が一番厳しいか」より、「その国のマークが何を保証しているか」を知るほうが、買うときに役に立ちます。日本の有機JASについては、オーガニックとは(基準と歴史)の記事でくわしく説明しています。

米国は「95%」と「70%」、日本は「95%」だけ

表示 米国(7 CFR 205.301) 日本(有機JAS)
100% organic 有機の原料が100% 段階なし
organic/有機○○ 95%以上 95%以上(食塩・水を除く)
made with organic ○○ 70%以上 段階なし。有機JASの原料を使ったときは「有機○○使用」と割合を書ける
70%未満 原材料欄でだけ「有機」と書ける ―

米国の制度は、有機食品生産法(1990年11月)から始まり、最初の規則案(1997年)には27.5万件の意見が寄せられました。案に入っていた「遺伝子組換え」「放射線照射」「下水汚泥の肥料」を認める部分は、1998年に取り下げられています。完全に実施されたのは2002年10月です(米国議会調査局の報告)。

2000年の最終規則には、「認証は作り方(process)についての主張で、製品(product)についての主張ではない」「有機の農産物が、そうでないものより安全だと解釈してはならない」と書かれています。国際基準(コーデックスのガイドライン)も、「環境の汚染があるので、有機の産品に残留物が全く無いことは保証できない」と書いています。有機のマークは、どの国でも「作り方の約束」です。

「無農薬」の扱いが日本と韓国で正反対

日本では、2003年5月の農水省のガイドラインの改正で、「無農薬」「減農薬」の表示が禁止事項になりました。農水省は理由として、「無農薬を、第三者の認証がある『有機』より優良だと誤認している消費者が6割以上いた」(2002年の総務省の調査)ことを挙げています。

一方、韓国では「無農薬農産物」が、国の認証の区分として残っています。

年 有機(ha) 無農薬(ha) 合計(ha)
2014 18,306 65,061 83,367
2017 20,673 59,441 80,114
2020 38,540 43,286 81,826
2021 40,663 34,771 75,435
2024 37,617 30,548 68,165

出典:韓国 国立農産物品質管理院の統計(江原道の公開ページ)。

  • 2024年の韓国は、有機が3.8万ha(2万4,287戸)、無農薬が3.1万ha(2万4,381戸)で、ほぼ同じ規模です。合わせると耕地の約4.5%(ウラヨミで計算)
  • 10年で、無農薬は半分以下に減り、有機は約2倍になりました。無農薬の農家が有機へ移ったのか、認証をやめたのかの内訳は、確かめられませんでした

日本の消費者も、実は「無農薬」を重視しています。日本政策金融公庫の2021年の調査(2,000人)では、農産物を選ぶ基準として「減農薬・無農薬」を挙げた人が68.1%で、「有機農産物」の47.7%より多くいました。消費者がいちばん気にする言葉が、日本では表示できない言葉になっています。

制度ができた順番

年 できごと
1987年 デンマークが有機農業の国の法律を作る(有機農業に特化した国の法律として世界初とされる。Ø マークは1989年)
1990年 米国 有機食品生産法
1991年 EU 規則 2092/91(その後 834/2007、2018/848 に置き換え)
1999年 国際基準(コーデックスの有機ガイドライン)採択。日本は同じ年に JAS 法を改正
2001年4月 日本で「有機」の表示の規制が始まる
2002年10月 米国の国家有機プログラムが完全実施
2014年4月 中国「有機産品認証管理弁法」施行
2022年1月 EU 規則 2018/848 の適用開始(新型コロナで1年延期)
2024年3月 米国の取り締まり強化の規則(SOE)の対応期限
2025年10月 日本で有機の酒類に有機JASマークが必須に

出典:デンマーク環境庁の報告、米国法典、農林水産省、中国政府、米国官報。日本の運動(1971年の日本有機農業研究会)から表示の規制まで約30年かかった経緯は、オーガニックとは(基準と歴史)の記事にまとめています。

日本の有機は0.9%って本当? なぜ広がらないのか

結論から。本当です。2024年度末で、有機農業の取組面積は3.98万ha、耕地の0.9%です。ただし、この10年で約1.8倍に増えていて、増えた場所には偏りがあります。

0.9%と0.4%:同じ日本の数字が2倍違うわけ

日本の有機農業の取組面積(万ヘクタール)有機JASの認証を受けた農地と、受けていない有機農業(推計)の合計。2024年度末で耕地の0.9%有機JASの農地(実測)JASを取っていない有機農業(推計)2030年の目標02462014年度 有機JAS:1.0万ha2014年度 JAS以外:1.16万ha20142.162015年度 有機JAS:1.0万ha2015年度 JAS以外:1.21万ha20152016年度 有機JAS:1.04万ha2016年度 JAS以外:1.27万ha20162017年度 有機JAS:1.08万ha2017年度 JAS以外:1.27万ha20172018年度 有機JAS:1.1万ha2018年度 JAS以外:1.27万ha20182019年度 有機JAS:1.2万ha2019年度 JAS以外:1.18万ha20192.382020年度 有機JAS:1.41万ha2020年度 JAS以外:1.11万ha20202021年度 有機JAS:1.53万ha2021年度 JAS以外:1.13万ha20212022年度 有機JAS:1.86万ha2022年度 JAS以外:1.15万ha20223.012023年度 有機JAS:2.19万ha2023年度 JAS以外:1.26万ha20232024年度 有機JAS:2.64万ha2024年度 JAS以外:1.34万ha20243.982030年の目標:6.3万ha6.32030目標2050年の目標は100万ヘクタール(耕地の25%)で、この図の目盛りの約14倍。2024年度末から毎年約3.7万ヘクタール増やす必要がある(ウラヨミで計算)。有機JASの面積の増加の大部分は北海道の牧草地。JASを取っていない面積は都道府県への聞き取りによる推計。海外の統計(FiBL)は日本を有機JASだけの約1.8万ヘクタール(0.4%)で数えている。出典:農林水産省「我が国の有機農業の取組面積」(令和8年6月)、同「有機農業をめぐる事情」(令和8年4月)。
出典:農林水産省「我が国の有機農業の取組面積」(令和8年6月)、「有機農業をめぐる事情」(令和8年4月)

日本の有機の面積は、資料によって数字が違います。

資料 面積 割合 数え方
農水省「有機農業の取組面積」(2024年度末) 3.98万ha 0.9% 有機JASの農地(2.64万ha、実測)+JASを取っていない有機農業(1.34万ha、都道府県への聞き取りによる推計)
農水省 国内の有機JASほ場(2025年3月31日) 2.64万ha 約0.62% 有機JASの認証を受けた畑・田・牧草地など
FiBL(国際統計、2024年) 1.81万ha 0.4% 有機JASのみ(データ源は農水省と注記)

国際比較の表で「日本0.4%」とあれば、有機JASだけを数えた数字です。ただし、農水省の有機JASの面積(2.64万ha)と FiBL の1.81万ha も一致しません。基準日や、どの地目を数えるかの違いと考えられますが、確かめられませんでした。国際比較の表を見るときは、出典と数え方を確かめる必要があります。

なお、2020年の農林業センサスは、認証の無い有機・自然農法も含めて「有機農業をしているか」を農家に聞いていて、のべの作付面積は11.5万haでした。同じ畑を何度も数えることや、回答者が広い意味の「環境にやさしい農業」を考えて答えた可能性があり、国の推計とは大きく違います(農林水産政策研究所)。

増えた面積の大部分は北海道の牧草地

10年で、取組面積は2.16万ha(2014年度)→3.98万ha(2024年度)で約1.8倍、有機JASの面積は1.00万ha→2.64万haで約2.6倍になりました。ここ3年の増え方は、年0.35万ha→0.44万ha→0.53万haと、速くなっています(ウラヨミで計算)。

ただし、農水省は「有機JASの面積の増加の大部分は、北海道の牧草地」と説明しています。

  • 国内の有機JASのほ場 2.64万ha のうち、北海道が1.55万ha(約59%)
  • 全国の有機JASの牧草地 1.04万ha の約99%が北海道
  • 2021年から、有機の飼料・畜産物のための牧草地も報告の対象になった(集計範囲が広がった)

世界と同じように、日本でも「有機の面積」の伸びの中心は牧草地です。牧草地の有機は、有機の牛乳や牛肉に結びつきます。2024年度に国内で有機JASの格付を受けた畜産物は6,583トンで、そのうち生乳が6,213トンでした。

品目で見ると:国産の有機は米0.12%、お茶だけ6.86%

国内の総生産量に占める、国産の有機JASの農産物の割合(2024年度、農水省)は次のとおりです。

品目 国産の有機の割合
緑茶(荒茶) 6.86%
大豆 0.61%
野菜(スプラウトを含む) 0.45%
麦 0.15%
米 0.12%
果実 0.12%

お茶だけが飛び抜けて高い理由は、この記事で調べた国の資料には書かれていませんでした。

有機米は減っています。有機JASの米の格付の量は、2002年度の12,338トンから、2024年度は9,110トンへと約26%減りました。一方、スプラウト(かいわれ・豆苗など)は14,289トン、きのこは6,653トンと増え、国内の有機JASの農産物全体では2002年度の43,759トンから97,582トンへ約2.2倍になっています。国産の有機の「伸び」は、田んぼより、施設で育てる野菜ときのこです。

買う人の割合は8年でほぼ同じ

日本の有機食品の市場規模は、農水省の推計で2022年に2,240億円、2025年に3,595億円(物価の上昇分を除くと2,766億円)です。ただし、推計のしかたが年ごとに違う(2025年は消費者3,000人のアンケートから計算し直した)ので、年ごとの伸び率としては読めません。2030年の目標は3,280億円です。

買う人の割合を見ると、別の姿が見えます。

調査 有機食品を「週に1回以上」買う・使う人
農水省 2017年度(16歳以上 4,530人) 17.5%
農水省 2025年(20〜79歳。言葉を初めて聞いた人を除く 2,805人) 17.4%
国の目標(2030年) 25%

調査の対象の年齢や数え方が違うので厳密には比べられませんが、農水省は2つを同じ指標として並べていて、8年でほぼ同じ水準です。「オーガニックはブームで急に広がっている」とは言えません。

2025年の調査では、ほかにも次のことが分かっています。

  • 「有機」「オーガニック」という言葉を知っている人は93.5%。しかし、栽培の方法と表示のルールの両方を正しく知っていた人は8.6%。言葉は聞いたことがあっても、中身は今回初めて知った人が54.9%でした
  • 有機食品を買う世帯の46.9%は、月5,000円未満
  • 買う場所はスーパーが83.5%、直売所20.5%、生協18.2%、ドラッグストア15.7%、自然食品店12.0%。農家から直接買う人は1割未満

広がらない理由:作る側と買う側

買う側の理由は、調査でかなりはっきりしています。

調査 買わない理由(上位)
日本政策金融公庫 2021年(買っていない人) 値段が高い 45.1%、身近で売っていない 36.6%、関心がない 28.0%
農水省 2015年度(買いたくない人 155人、3つまで) 値段が高い(予算に対して)52.3%、「有機」などの表示が本当か疑わしい 41.3%、どこで買えるか分からない 31.6%

値段の差は、農水省の2016年の調査(全国の主要都市で、同じ店に並んで売られていたもの)で、有機JASの野菜は国産の標準品の143〜187%でした(ねぎ143%〜ピーマン187%の8品目)。一方、2025年の調査で、有機食品を買っている人に「一般の食品より何%高くても買うか」を聞くと、「少しでも高ければ買わない」が30.0%、「10%高まで」が28.3%。30%以上高くても買う人は合わせて14.1%でした。実際の価格差(4〜9割高)を受け入れられる人は1割台です。値段の中身と、どこから替えるかはオーガニックと健康の記事で扱います。

作る側の理由として、国の資料や研究からは次のことが言えます。

  • 収量が下がる:世界の比較研究をまとめた分析では、有機の収量は慣行より平均19.2%低く(Ponisio ほか 2015、115研究)、条件によって5〜34%低い(Seufert ほか 2012)
  • 2〜3年の転換期間:有機JASは、種まき・植え付けの2年以上前(果樹など多年生は収穫の3年以上前)から禁止された資材を使わないことが条件です。その間は「有機」として売れません(「転換期間中」の表示はできる)
  • 担い手の数:有機農業をしている人は推計で約1.26万人(2023年)。有機農業をしている人の数を農業経営体の数と比べると、0.67%(2009年)→1.36%(2023年)にあたります(ウラヨミで計算。人数と経営体数の比なので目安)。新しく農業を始めた人の26.4%は有機に取り組んでいます(2024年)

輸入の有機や「中国産の有機」は信用できる?

日本で「有機」と書けるのは有機JASマークがあるものだけで、そこに至る道を3つに分けた流れ図。国内は、国内の農家・メーカーが国に登録された認証機関の認証を受けてマークを付ける。外国の道1は、外国の生産者が日本の有機JASの認証を直接受ける道で、日本に登録された外国の認証機関(22機関)などが認証する。日本と有機の同等性がない中国はこの道。外国の道2は、同等性のある国(米国・EU・カナダ・台湾・英国・スイス)の認証品を、日本の認証を受けた輸入業者が輸入してマークを付ける道。2024年度の格付は国内97,582トン、外国で格付され日本向けに出荷されたもの61,273トン。ラベルでは、マーク、認証機関の名前、原材料名の「有機」と産地を見る。
図:日本の有機JASの2つの入り口(農林水産省「有機認証制度の同等性」「認証事業者に係る格付実績(令和6年度)」、JAS法をもとに作成)(押すと拡大)

「オーガニック 中国産 安全性」「オーガニック なのに 中国産」は、日本語の検索の候補に何通りも出てきます(産地・輸入の候補だけで32通り。ウラヨミが2026年10月3日に集計)。結論から言うと、日本で「有機」と書かれているものは、国産でも外国産でも、日本の有機JASのルールを通っています。違うのは、「どこの国の、どの認証機関が確かめたか」です。

同等性:外国の「organic」が日本で「有機」になる条件

外国で「Organic」と書かれた食品でも、日本で売るときに有機JASマークが無ければ、「有機」「オーガニック」と表示できません。輸入業者が、外国の「Organic」のラベルのまま売ることもできません(JAS法 第63条第3項)。

日本で「有機」と表示する道は2つあります。

  1. 日本の有機JASの認証を、外国の生産者・メーカーが直接受ける。日本の農水省に登録された外国の認証機関(22機関。ウラヨミが農水省の一覧で数えた数)や、海外で検査をする日本の認証機関が認証します
  2. 日本と「同等」と認められた国の有機の認証品を輸入し、日本の認証を受けた輸入業者が有機JASマークを付ける

2つ目の「同等性」で、お互いに認め合っている(相互承認)のは、米国・EU・カナダ・台湾・英国・スイスの6つの国・地域です(2026年4月1日現在)。対象の品目は国ごとに違い、台湾は畜産物が対象外、スイスは酒類が対象外です。EU とは2025年5月に有機の酒類・畜産物にも広がり、英国とは2025年10月に有機の酒類にも広がりました。

農水省の格付の資料は、日本向けの格付ができる「同等性のある国」として、この6つに加えてアルゼンチン・オーストラリア・ニュージーランドも挙げています。中国は、どちらにも入っていません。

日本向けの有機農産物の約4割は外国で格付

有機JASの農産物:国内で格付 と 外国で格付(日本向け)令和6年度(2024年度)の量(トン)。果実・大豆・コーヒーは外国のほうが多い国内で格付外国で格付され日本向けに出荷01万2万3万4万5万野菜野菜 国内:47,085t47,085野菜 外国(日本向け):3,582t3,582果実果実 国内:2,578t2,578果実 外国(日本向け):29,160t29,160大豆大豆 国内:1,550t1,550大豆 外国(日本向け):14,839t14,839スプラウト類スプラウト類 国内:14,289t14,289スプラウト類 外国(日本向け):0t0米米 国内:9,110t9,110米 外国(日本向け):1,170t1,170きのこ類きのこ類 国内:6,653t6,653きのこ類 外国(日本向け):221t221コーヒー生豆コーヒー生豆 国内:0t0コーヒー生豆 外国(日本向け):4,897t4,897緑茶(荒茶)緑茶(荒茶) 国内:3,452t3,452緑茶(荒茶) 外国(日本向け):0t0麦麦 国内:1,757t1,757麦 外国(日本向け):2,428t2,428ナッツ類ナッツ類 国内:0t0ナッツ類 外国(日本向け):1,311t1,311合計:国内で格付 97,582トン、外国で格付され日本向けに出荷 61,273トン(国内の約0.63倍)。国内で格付された量には輸出された分も含まれるので、ここから「輸入の割合」を正確には出せない。外国で格付された量の全体は3,357,933トン(うち日本向け以外が大半。さとうきびが約200万トン)。出典:農林水産省「認証事業者に係る格付実績(令和6年度)」の有機農産物の表。
出典:農林水産省「認証事業者に係る格付実績(令和6年度)」

2024年度に有機JASの格付を受けた農産物は、

  • 国内で格付:97,582トン
  • 外国で格付され、日本向けに出荷:61,273トン

でした。国内の量を100とすると、日本向けの外国の量は約63です。合わせた量のうち外国の分は約39%ですが、国内で格付された量には輸出された分も含まれるので、これは「多めに見積もった上限の目安」です(ウラヨミで計算)。農水省も、2023年度の数字で「国内格付の約7割に当たる量が外国から」という趣旨の比較をしています。

品目ごとに見ると、差ははっきりしています。

  • 果実:国内2,578トンに対し、日本向けの外国産は29,160トン(約11倍)
  • 大豆:国内1,550トンに対し、日本向けの外国産は14,839トン(約10倍)
  • コーヒー生豆・ナッツ:国内0トン。日本向けの外国産はコーヒー4,897トン、ナッツ1,311トン
  • 野菜:国内47,085トンに対し、日本向けの外国産は3,582トン(国産が大半)
  • 緑茶・スプラウト:ほぼすべて国産

加工食品でも、2024年度は国内の格付127,447トンに対し、外国で格付され日本向けに出荷されたものが63,909トンありました。外国で格付された有機の酒類は175,753トン(ほぼすべてワインなどの果実酒)ありましたが、そのうち日本向けは4,122トン(約2%)でした。

つまり、有機の豆腐・納豆・みそ・しょうゆの大豆や、有機の果物・コーヒー・ワインは、外国産であることが多い品目です。逆に、有機の野菜とお茶は国産が中心です。

中国産の有機:中国の制度と日本のルール

中国には、中国の有機の制度があります。

  • 国家標準 GB/T 19630(2019年版、2020年施行とされる)と、「有機産品認証管理弁法」(2014年4月施行)
  • 有機の認証マークには1枚ずつ「有機コード」を付け、認証書・製品・生産者までたどれるようにしています(同弁法 第33条)
  • 中国の有機食品の売上は2024年に155億ユーロで、世界3位です

一方で、中国の報道(北京商報、2026年3月)は、当局の抽出検査(2025年3月)で有機の11ロットが不適合だったことや、代行業者が偽の認証マークを売っていた例を伝えています。中国の消費者を調べた研究をまとめた論文(2025年)も、「都市部の回答者の半数を超える人が、有機の認証に自信がないか、一部しか信頼していない」と整理しています(個々の調査の原典は確認していません)。

日本との関係で大事なのは次の点です。

  • 中国は日本と有機の同等性が無いので、中国の有機マークだけでは、日本で「有機」と表示できません
  • 中国産を日本で「有機」として売るには、日本の有機JASの認証(農水省に登録された認証機関による認証)が要ります。登録外国認証機関の一覧には、中国の機関も入っています
  • 有機JASマークの近くには、認証した機関の名前が書かれています

「中国産だから信用できない」「国産だから安心」と産地だけで決めるより、マークと認証機関の名前、原材料の産地の書き方を見るほうが、確かめられることが多くなります。輸入の野菜・果物に収穫後に使われる薬剤については、ポストハーベスト農薬のページにまとめています。

ラベルの原産地で見分ける

有機の加工食品では、「国内製造」と書かれていても、原料が国産とは限りません。

たとえば、ウラヨミに載っている有機白ごまいりごま(金ごま本舗)の原材料名は「有機白ごまいりごま(国内製造)」です。この「国内製造」は、煎る加工を日本でしたという意味で、メーカーの説明では、ごまはパラグアイ・ボリビアで有機栽培されたものです。

有機みそ・有機しょうゆ・有機豆腐の原料の大豆は、上で見たように外国で格付された量が国内の約10倍ある品目です。国産の有機大豆を使っているかどうかは、

  • 原材料名のかっこ書き(例:「有機大豆(国産)」)
  • 前面の「国産有機大豆使用」などの表示
  • メーカーの公式サイトの原料の産地の説明

で確かめます。有機JASの加工食品では、原材料のうち有機のものに「有機」と付けて書くルールなので、「有機」が付いている原料と付いていない原料も読み取れます。

みそは、有機の加工食品のうち国内での格付が多い品目(2024年度 3,719トン、日本向けの外国産は133トン)です。同じ「有機みそ」でも、ラベルの原産地を見ると、原料の大豆が国産のものと輸入のものがあるので、並べて紹介します。

輸入の有機が多い品目

コーヒーは、国内で有機JASの格付がゼロで、日本向けの有機のコーヒー生豆4,897トンはすべて外国で格付されたものです(2024年度)。

オリーブオイルの格付の量は、この記事で使った統計の品目には出ていません。ただ、オリーブ油の主な産地のイタリアは、有機農地が251万haで農地の19.2%(2024年)と、有機の割合が高い国の一つで、EU は日本と有機の制度を認め合っています。

どちらも国内ではほとんど作られていない有機の食品なので、有機JASマークが付いたものを紹介します。

オーガニックの偽装は本当に起きている?

結論から。起きています。そして、大きな事件のあとに、各国はルールを変えてきました。英語の検索でも「is organic fake」「is organic legit(本物か)」のような候補が24通り出てきます(ウラヨミの集計)。

米国史上最大の偽装:1人の農家が売った「有機」の穀物の9割が偽物だった

米国ミズーリ州の農家 Randy Constant(アイオワ州に仲介会社)は、2010〜2017年に、少なくとも1億4,243万ドル分の穀物を売り、その大部分が詐欺でした。米国司法省の発表(2019年8月、米国農務省の監察総監室が公開した写し)によると、

  • 売った穀物は1,150万ブッシェル超で、その90%超が偽の有機
  • 手口は、他人から買った穀物を自分の有機の畑のものと偽る、禁止された資材をまいた畑の穀物を売る、有機と有機でないものを混ぜる、など
  • 2016年の売上は、米国の有機トウモロコシの約7%、有機大豆の約8%に当たる量
  • 穀物の多くは鶏や牛の飼料になり、その肉や牛乳・卵が「有機」として売られた
  • 2019年8月に禁錮10年超の判決。没収額は1億2,819万ドル。共犯の農家3人も有罪

この事件のポイントは、消費者が手に取る「有機」の肉や乳の、さらにその前の飼料の段階で偽装されたことです。売り場のラベルを見ても見抜けません。

黒海から来た「有機」の穀物の船

米国の規則の前文は、2017年に、「有機」として輸入されたトウモロコシと大豆の船3隻(1隻あたり3,600万〜4,600万ポンド)が、実は有機ではなかったと書いています。

  • 取引記録をたどると、出どころは黒海地域の認証を受けていない生産者で、もとは安い普通の穀物として売られていた
  • 大豆の1隻は、有機では禁止されている薬剤(リン化アルミニウム)でくん蒸されていた
  • 2,100万ポンドが、すでに有機の畜産の飼料として出回っていた

ほかにも、サウスダコタ州の個人が2012〜2018年に7,100万ドル分の普通の穀物を有機と偽って売り、認証を取り消されたあとも新しい仲介会社を作って続けた例が書かれています。当時は、仲介業者には認証の義務が無かったためです。

米国の答え:輸入証明書と仲介業者の認証(2024年)

こうした事件を受けて、米国は有機の取り締まりを強める規則(SOE)を2023年1月に公表し、2024年3月19日から本格的に始めました。

  • 輸入の有機食品には、1回ごとに国の有機輸入証明書が必要
  • 仲介業者・商社にも認証を義務づけ
  • 抜き打ちの検査
  • 認証書の書式をそろえる
  • たどるための記録の義務

欧州・中国でも

  • イタリア:2011年12月、イタリアの警察が、ルーマニア・ブルガリア産の普通の穀物などを有機と偽った事件を摘発。報道では、10か国にまたがり、被害額は2.2億ユーロ、2007〜2011年に70万トンが有機として流通したと推計されています(英国の農業誌の報道。当局の原資料は確認していません)
  • 中国:上で見たとおり、認証機関の検査での不適合や、偽のマークの印刷の例が報道されています

日本の摘発例と「表示が疑わしい」41.3%

日本でも、表示の違反は起きています。

  • 2024年9月:農水省は、宮崎県の会社が、有機の認証を取らずに「有機発芽玄米」に有機JASマークと「有機」の表示を付け、2023年3月〜2024年4月に10,360袋(7,511kg)を出荷していたとして、JAS法に基づいて表示を消すよう命令しました。九州農政局の立入検査で分かりました
  • 2011年11月〜2013年11月に、農水省がJAS法違反で指導した例は182件あったと報じられています(共同通信が情報公開請求で入手した記録。認証の無い農産物を「有機」と表示した例などを含む。農水省の原資料は確認していません)
  • 農水省は、小売店向けのチラシで「『自称』有機農産物・有機加工食品が多数発生」と注意を呼びかけ、違反の情報を受け付ける窓口(0120-714-110)を案内しています

消費者の側では、2015年度の農水省の調査で、有機食品を買いたくない人の41.3%が「『有機』などの表示が本当か疑わしい」と答えていました。2025年の調査では、有機食品を買う人のうち、有機JASマークを「必ず・ほとんど・ときどき」確かめる人は合わせて34.2%でした。

検査で見つかる例もあります。欧州食品安全機関(EFSA)の2024年の検査では、有機の試料の0.9%で残留農薬が基準値を超え、有機では使えない農薬が見つかった例について、EFSA は「周りの畑からの飛散(ドリフト)、流通での汚染、誤った表示の可能性」と書いています。有機の食品から何がどれだけ検出されるかは、オーガニックと健康の記事で扱います。

読者ができる確かめ方

見るところ 分かること
有機JASマーク 日本の認証を受けた事業者が格付したもの。マークが無いのに「有機」「オーガニック」「organic」と書いてあれば、JAS法の違反のおそれ
マークの近くの認証機関の名前 どの機関が確かめたか
原材料名の「有機」とかっこ書き どの原料が有機か、どこの産地か
「有機無農薬」「準有機」「有機率○%」 どれも有機JASのルールで書いてはいけない言葉(農水省の Q&A)
チラシ・メニュー・のぼり・ネットの説明文 JAS法の表示の規制の対象外(景品表示法の対象にはなりうる)。商品そのもののラベルで確かめる

世界の人は、オーガニックの何を気にしている?

結論から。日本と米国は「健康」、ドイツは「動物福祉」、欧州全体と日本は「値段の高さ」、中国は「信頼」が、調査で目立ちます。「環境のため」に買う人は、どの国でも少数派です。

検索に出る疑問(日本語・英語)

ウラヨミは2026年10月3日に、Google の検索の候補(サジェスト)を集めて分類しました。日本語では664通り、英語では478通りの候補が出ました。

日本語の候補の分類 候補の数 英語の候補の分類 候補の数
言葉の違い・意味 82 農薬(ダーティダース・グリホサートを含む) 65
認証・マーク・基準 81 値段・買う価値 52
買う場所・通販 80 ラベル・意味・規制 50
農薬 73 食べもの以外(綿・化粧品など) 34
化粧品・美容 58 赤ちゃん・妊娠 31
子ども・妊娠・離乳食 50 健康 24
給食・自治体・政策 44 信頼・偽装 24
産地・輸入・中国産 32 環境・農法 19
値段 16 ワイン 12
環境 10 ― ―

検索の候補は、検索された回数そのものではなく、よく打たれる「続きの言葉」です。集め始めの言葉の選び方で数が変わるので、順位ではなく「実際にある疑問」の目安として見てください。

日本語では、給食・自治体の話題(44通)や、産地・中国産の話題(32通)が目立ち、英語では値段・買う価値と偽装・本物かが目立ちます。「環境に悪いのでは」という疑問は、日本語にも英語にも出てきます。

国別の「買う理由・買わない理由」

国・地域 買う理由 買わない・ためらう理由 調査
日本 初めて有機食品を食べたきっかけは「自分や家族が病気にならないため」22.6%、「環境を守るため」7.6%(2019年)。選ぶとき重視するのは、おいしい・安全・安心・健康がそれぞれ約3割(2025年) 値段 45.1%、身近で売っていない 36.6%(2021年)。表示が疑わしい 41.3%(2015年)。中身を知らない人が6割 農水省・日本政策金融公庫
米国 直近1か月に有機食品を買った人の76%が「より健康な食品」、33%が環境、22%が便利さ 72%が「価格次第で買うかを決める」 ピュー・リサーチ・センター(2016年)
ドイツ 買う人の89%が「動物の福祉」と「自然なままの食品」、87%が健康的な食事。いちばん大事な理由は動物福祉(33%)が健康(30%)より多い。47%が「子ども・妊娠中の食事のため」 15%は買わず、その5人に4人は今後も買わない 連邦食糧農業省の「エコ・バロメーター」(2024年、約1,000人)
EU 有機ロゴを知っている人 56%(2017年は27%) 92%が「有機は他の食品より高い」(2022年)。4割強が「近くの店で見つけにくい」 欧州委員会のユーロバロメーター
英国 人工の農薬を避けたい、高い基準(動物福祉を含む)、健康 生活費の高騰。有機の食品飲料の市場シェアは1.6%(2025年、市場は39億ポンド) 英国の有機推進団体 Soil Association の市場報告(2026年)
中国 健康への意識、環境への関心 認証への不信(半数超が自信がない・一部しか信頼しない)、値段(通常の30〜60%高) 2014〜2024年の研究をまとめた論文(2025年)

ドイツの「動物福祉」がいちばんという結果は、有機の畜産のルール(放牧や飼育の広さ)に関心が集まっていることを示します。日本の有機JASの畜産のルールは、オーガニックとは(基準と歴史)の記事で紹介しています。

英国の Soil Association は有機を進める団体、Pew は米国の民間の調査機関です。中国の数字は個々の調査の原典を確認しておらず、論文の整理によります。

日本の動き:みどり戦略・オーガニックビレッジ・有機給食

結論から。国の目標は大きく、給食と市町村の取り組みは実際に増えています。ただ、目標と今のペースの差も大きいので、割り算して確かめます。

「2050年に25%」を割り算すると

農水省は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を決め、2050年までに有機農業の取組面積を耕地の25%(100万ha)にする目標を掲げました。その途中の目標として、2030年に6.3万haがあります。

面積 必要なペース
2024年度末の実績 3.98万ha ―
2030年の目標 6.3万ha 年0.39万ha
2050年の目標 100万ha 年3.7万ha
実際の増え方(直近1年) ― 年0.53万ha
実際の増え方(10年の平均) ― 年0.18万ha

ウラヨミで計算すると、

  • 2030年の6.3万haは、直近のペースが続けば届く水準です
  • 2050年の100万haは、直近1年のペースの約7倍、10年の平均の約20倍の速さで増やし続ける必要があります

EU も「25%」:ただし目標年は2030年

EU も、2030年までに農地の25%を有機にする目標を、2021年3月の行動計画で掲げています。日本と同じ25%ですが、目標の年は日本より20年早く、出発点も違います。

  • EU 全体の有機農地は2023年に10.8%(暫定)、FiBL の2024年の値で11.1%
  • 欧州会計検査院は2024年9月の報告で、「目標に届くには、年の伸び率を6%から11%近くへ倍にする必要がある」「25%は法的な拘束力のない目標」と書きました
  • ブルガリア・アイルランド・マルタ・オランダ・ポーランドは、まだ5%に届いていません

オーガニックビレッジは154市区町村

農水省は、地域ぐるみで有機農業に取り組む市町村を「オーガニックビレッジ」として支援しています。農林水産省の資料(2026年4月)では、46道府県の154市区町村が取り組んでいて、目標の「2025年までに100市町村」は超えました。次の目標は2030年に200市町村です。

自治体が国より先に動いた例もあります。宮崎県綾町は1988年に「自然生態系農業の推進に関する条例」を作り、2023年にはオーガニック給食の条例も作っています。

有機給食は328市区町村に

学校給食に有機の農産物などを使う市区町村は、急に増えています。

年度 有機の食品を年1回以上使う市区町村
2020年度 123
2021年度 137
2022年度 193
2023年度 278
2024年度 328(全国の約19%)

出典:農林水産省 農業環境対策課の調べ。

  • 使われている品目は、野菜(233自治体)、米飯(164自治体)、調味料など(32自治体)
  • 月に2回以上使う自治体は約3割で、残りの約7割はそれより少ない回数です
  • 千葉県いすみ市は、2017年10月に市立小中学校の給食の米をすべて有機米に切り替え、増えた費用は市が負担しています(食育白書)。報道では、米の量は約42トンとされます

「オーガニック 給食 デメリット」のような疑問も検索に出てきます。ただ、有機給食の費用や課題を全国で比べた公的な集計は、この記事では見つけられませんでした。

日本生まれの「提携」

日本には、消費者と有機農家が直接つながる「提携」という、日本で生まれた仕組みがあります。

  • 1978年に、日本有機農業研究会が「提携10か条」をまとめました。全量の引き取り、話し合いで決める価格、自分たちで配送する、などです
  • 担い手は都市の主婦が多く、消費者のグループが農家に「有機に切り替えてほしい」と頼む形が多かったとされます。グループの数は1991年ごろの約300がいちばん多く、1グループの人数の中央値は約110人でした(Kondo ほか 2024)
  • 1975年に発足した大地を守る会は、1985年に日本で初めて有機の野菜の戸別配送を始めました。いまの Oisix ra Daichi につながります
  • 論文は、提携を、農家と消費者が前もって契約する「CSA(地域支援型農業)」の源流の一つと位置づけています

農水省の Q&A は、「提携の中で、情報をきちんと開示しているなら、有機JASの認証が無くても特段の支障はない」という考え方を示しています。ただし、「有機」と表示して売るなら認証が必要です。

いまの日本で、有機食品を農家から直接買う人は1割未満、生協で買う人は18.2%です(2025年)。生協や産直の宅配は、産地と生産者が分かる買い方の一つです。各社の基準や費用の比べ方は食材宅配の比較記事に、オイシックスの野菜の基準はオイシックスの記事にまとめています。ここでは、有機の農産物の取り扱いが多いと説明している生協・産直の宅配を紹介します。

「国ごと有機」の実験:スリランカとブータン

結論から。国全体を急に有機に切り替える試みは、どちらも計画どおりには進んでいません。

スリランカ:化学肥料を禁止して8か月たたずに撤回

時期 できごと
2021年4月 化学肥料・農薬の全面禁止(有機化)を発表
2021年5月 化学肥料・農薬の輸入を事実上禁止
2021年11月 禁止を事実上撤回(8か月たたずに)

スリランカの国の統計(暫定値)では、主食の米(籾)の生産量は、

  • 雨季の作期(マハ期):2020/21年 306万トン → 2021/22年 193万トン(約37%減)
  • 1年の合計:2021年 515万トン → 2022年 339万トン(約34%減)
  • 雨季の作期(マハ期)の1haあたりの収量:2020/21年 4,307kg → 2021/22年 2,853kg

でした(ウラヨミで割合を計算)。

国際水管理研究所(IWMI)の研究者の論文(2025年)は、禁止の背景に外貨不足と肥料の値上がりがあったこと、国内で手に入る有機肥料の窒素の量は、どの見積もりでも米や茶などの作物に足りなかったことを示し、有機肥料を輸入しても化学肥料より外貨がかかると試算しています。

ただし、2022年のスリランカは、外貨危機・燃料不足が同時に起きた年です。減産のすべてを有機化のせいにはできません。この例から言えるのは、「有機が悪い」ではなく、「準備なしに一度に切り替えると、肥料が足りなくなる」ということです。

ブータン:「100%有機」は延期

ブータンは、2012年の国連の会議(リオ+20)で「2020年までに100%有機」を掲げたとされますが、目標は2035年に延期されたと報じられています。FiBL の年鑑に寄せられた報告では、正式に登録された有機の土地は3,358ha(そのうち農作物は1,621ha、残りは野生の採取)。ブータンは国土の約7割が森林で、農業に使う土地は約3%です。2025年6月に、首都ティンプーに国内初の有機の直売所ができました。

オーガニックは環境にいいって本当?

結論から。指標によって結果が割れます。「有機は環境にいい」とも「悪い」とも、一言では言えません。英語の検索には「is organic farming bad for the environment(有機農業は環境に悪い?)」、日本語にも「オーガニック 環境 に 悪い」という候補が出てきます。

研究 何を比べたか 結果
Seufert ほか 2012(Nature) 収量(世界の比較研究をまとめた分析) 有機は慣行より低い。条件によって5%〜34%低い。管理が良く、作物と条件が合えば、ほぼ慣行並み
Ponisio ほか 2015(英国王立協会紀要) 収量(115研究・1,000超の比較) 有機は19.2%低い。輪作・多毛作を組み合わせると差は8〜9%に縮む
Tuck ほか 2014(J Appl Ecol) 生物多様性(94研究・184の比較) 有機のほうが生きものの種類が平均約30%多い。研究は北・西欧州と北米に偏っている
Skinner ほか 2014(Sci Total Environ) 土からの亜酸化窒素(温室効果ガス) 面積あたりは有機が少ないが、生産量あたりは有機が多い。収量の差が17%未満なら同じ
Smith ほか 2019(Nat Commun) イングランドとウェールズの農業を全部有機にしたら 国内の排出は減るが、生産が足りなくなり、海外で増える農地を含めると、排出は増えると試算
Muller ほか 2017(Nat Commun) 世界の食料を全部有機にしたら 慣行より多くの土地が要るが、窒素の余りと農薬は減る。食品ロスを減らし、家畜のえさ用の穀物を減らせば、基準のシナリオより少ない土地で済む
  • Skinner 2014 と Muller 2017 には、スイスの有機農業研究所(FiBL)の研究者が加わっています。FiBL は、この記事の国際統計の発行元でもあります
  • 日本の水田では、農研機構が2019年に「有機や農薬を減らした田んぼでは、絶滅のおそれのある植物やクモ・トンボ・カエル・水鳥などが多い」と発表しています
  • 米国の研究者 Reganold と Wachter のまとめ(2016年)は、「一つのやり方だけで世界を養うことはできない。有機とほかの新しい方法の組み合わせが必要」と書いています

生きものの多さでは有機が有利という結果が多く、収量と「生産量あたり」の排出では不利になりやすい。どちらを重く見るかは、何を食べるか(肉の量)や、食品ロスをどれだけ減らすかにも左右されます。

ウラヨミに載っている食品の「有機」はどこから来た?

最後に、ウラヨミに載っている食品の中から、原材料名に「有機」が付いたものを集め、その有機の原料の産地を、ラベルとメーカーの説明で確かめました(2026年10月3日確認)。

食品 有機の原料 原料の産地(ラベル・メーカーの説明)
有機スパゲッティーニ(アルチェネロ) 有機デュラム小麦のセモリナ イタリア
有機ガーリックペースト(メ・ド・プロヴァンス) 有機にんにく・有機ひまわり油・有機レモン果汁 フランス(にんにく)
有機白ごまいりごま(金ごま本舗) 有機白ごま パラグアイ・ボリビア(加工は国内)
有機トウバンジャン(風と光) 有機砂糖・有機唐辛子・有機大豆など 台湾で製造(原料の産地は未確認)
植物素材の本格カレールウ(創健社) 有機べに花油 アメリカ
国産有機野菜・果実使用 やきそばソース(光食品) 有機たまねぎ・有機トマトなど8種、有機糖みつ 野菜・果実は国産、有機糖みつは海外産
老梅 有機純米酢(河原酢造) 有機栽培米 国産(福井・石川・秋田)
無添加万能焼肉のたれ(永野) 有機ごま油・有機ごま・有機レモン果汁 「国内製造」(原料の産地は未確認)
オイスターソース(センナリ) 有機米酢 未確認

数えてみると、原料の産地か製造した国が分かった7品のうち、5品は外国の原料を使うか外国で作られたもの(イタリア・フランス・パラグアイとボリビア・アメリカの原料、台湾で製造)で、国産の有機の原料だけのものは1品(河原酢造の米酢)、国産と外国産の両方が1品(光食品)でした。数が少ないので全体の傾向とは言えませんが、「有機の原料には外国産が多い」という統計の姿とは矛盾しません。

2つ、気づいたことがあります。

  • 台湾は、日本と有機の制度を認め合う6つの国・地域の一つです(2020年から。2024年1月に酒類も対象に)。台湾で作られた有機の食品は、日本の有機JASの認証を直接受けるか、台湾の有機認証をもとに日本の輸入業者が有機JASマークを付けるかの、どちらかの道で「有機」として売られます(この有機トウバンジャンがどちらかは確認していません)
  • ウラヨミに載っているゲランドの塩のパッケージには、フランスの Nature et Progrès(ナチュール・エ・プログレ) の認定マークがあります。この団体は、1972年にフランスのヴェルサイユで IFOAM(国際有機農業運動連盟)を作った5つの団体の一つです。原材料名は「海水」だけで、「有機」とは書かれていません

光食品のやきそばソースは、主な原料の野菜・果実は国産の有機ですが、砂糖は有機ではないので、商品全体は有機JASの「有機ソース」ではありません。「有機○○」という名前と「有機○○使用」という名前の違いは、オーガニックとは(基準と歴史)の記事で説明しています。

この記事で紹介したもの(まとめ)

記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。

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まとめ

気になること 分かったこと
世界のオーガニックの大きさは? 売上は2024年に1,450億ユーロ(2003年の約7.4倍)。米国・ドイツ・中国・フランスで約7割。有機農地は世界の農地の2.1%
日本は遅れている? 1人あたりの消費額は13ユーロでスイスの約37分の1、有機の割合は0.3%。有機農業の面積は耕地の0.9%(国際統計では有機JASだけで0.4%)
有機農地の世界一は? オーストラリア(世界の53.6%)。ただしほとんどは放牧地。世界の有機農地の7割は草地・放牧地
基準がいちばん厳しい国は? 一列には並べられない。日本は名前を法律で守る、米国は95%・70%の段階、豪州は国内に義務の基準なし、韓国は「無農薬」も認証、中国は1枚ごとの有機コード
日本の有機はなぜ広がらない? 値段(有機JASの野菜は標準品の143〜187%)、売っている場所、表示への疑い、中身を知らない人が多いこと。作る側は収量と転換期間。週1回以上買う人は17.5%→17.4%でほぼ同じ
輸入・中国産の有機は信用できる? 日本で「有機」と書けるのは有機JASを通ったものだけ。中国は日本と同等性が無いので、日本の認証が要る。日本向けの有機農産物の量は国内の約6割で、果実・大豆・コーヒーは外国産が多い
偽装は起きている? 米国の飼料の偽装(1人の農家が売った穀物の9割超が偽の有機)、黒海の穀物の船、イタリア・中国の例、日本の摘発例。米国は2024年に輸入証明書を義務化
世界の人は何を気にしている? 日米は健康、ドイツは動物福祉、EU・日本は値段、中国は信頼。環境のために買う人は少数派
日本の目標は届く? 2030年の6.3万haは今のペースで届く水準。2050年の100万haは今の約7倍の速さが必要。有機給食は328市区町村、オーガニックビレッジは154
環境にいい? 生物多様性は有機が多い(約3割)、収量は約2割低い、生産量あたりの排出は多い場合がある。スリランカの急な有機化は8か月たたずに撤回

参考にした資料

世界の統計

各国の制度・同等性

  • 日本農林規格等に関する法律(e-Gov)、農林水産省「有機食品の検査認証制度」「有機認証制度の同等性」(令和8年4月1日現在)、「有機JAS Q&A」(令和7年10月)、「有機登録認証機関一覧」
  • 農林水産省 プレスリリース「EU との有機同等性の範囲拡大」(2025年5月15日)
  • 米国連邦規則 7 CFR 205.301、米国官報 88 FR 3548「Strengthening Organic Enforcement」(2023年1月19日)、65 FR 80548(2000年12月21日)、米国議会調査局 RL31595
  • Council of the EU ST 7407/21 REV1(有機の行動計画 COM(2021)141)、欧州会計検査院 Special Report 19/2024、欧州環境庁「Agricultural area used for organic farming」
  • 中国政府「有機産品認証管理弁法」(gov.cn)、北京商報(2026年3月16日)
  • 江原道(韓国)「친환경농산물 인증 현황」(国立農産物品質管理院の統計)
  • Australian Competition and Consumer Commission「Organic claims」
  • デンマーク食品獣医庁「What is the Organic Cuisine Label」、デンマーク環境庁 Bichel 委員会報告(2001年)
  • Codex「Guidelines for the production, processing, labelling and marketing of organically produced foods」CAC/GL 32-1999

日本の数字

  • 農林水産省「我が国の有機農業の取組面積」(令和8年6月)、「認証事業者に係る格付実績(令和6年度)」「有機農産物の格付数量の推移」「国内の有機JASほ場の面積(令和7年3月31日現在)」
  • 農林水産省「有機農業及び有機食品に関する意識・意向調査」(令和7年度)、「有機食品マーケットに関する調査」(平成29年度)、「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」(平成27年度)、「有機食品等の消費状況に関する意向調査」(令和元年度)
  • 日本政策金融公庫「消費者動向調査(令和3年7月)特別調査」
  • 農林水産省 統計部「生鮮野菜価格動向調査報告(平成28年)」
  • 農林水産政策研究所 楠戸(2024年2月)「有機農業の実施状況に関する分析」
  • 農林水産省「みどりの食料システム戦略」、「有機農業の推進に関する基本方針」(令和2年4月)、「食料・農業・農村基本計画」(令和7年4月)、「学校給食における有機農産物等の利用」(2025年)、食育白書
  • 農林水産省「宮崎県綾町の取組」、環境省

偽装・不正

  • 米国司法省 北アイオワ地区の発表(2019年8月、米国農務省 監察総監室の公開版)
  • 農林水産省「株式会社コダマに対する措置について」(2024年9月20日)、同「有機JAS制度 卸売業者・小売店の皆様へ」
  • 琉球新報 社説(共同通信の情報公開請求に基づく)、Farmers Weekly(2011年12月12日)
  • EFSA「The 2024 European Union report on pesticide residues in food」EFSA Journal 2026

消費者の関心

  • Pew Research Center「Americans’ views about and consumption of organic foods」(2016年12月)
  • 欧州委員会 Special Eurobarometer(2020年・2022年・2025年)
  • Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft「Öko-Barometer 2024」
  • Soil Association「Organic Market Report 2026」
  • Frontiers in Sustainable Food Systems 2025(中国の有機食品の消費者研究の総説)
  • Google 検索候補(2026年10月3日、ウラヨミが取得・分類)

歴史・提携

  • Kondo C, et al. Front Sustain Food Syst 2024(提携の歴史)
  • 根本志保子 2019(日本経済思想史学会)

スリランカ・ブータン

  • Drechsel P, et al. Food Security 2025;17(3):585-602(IWMI)
  • スリランカ財務省 Weekly Economic Bulletin(国勢統計局の籾生産量)
  • FiBL 年鑑 2026 のブータンの報告、Heinrich Böll Stiftung(2022年)

環境

  • Seufert V, et al. Nature 2012;485:229-32(PMID 22535250)
  • Ponisio LC, et al. Proc R Soc B 2015;282:20141396(PMID 25621333)
  • Tuck SL, et al. J Appl Ecol 2014;51:746-55(PMID 25653457)
  • Skinner C, et al. Sci Total Environ 2014;468-469:553-63(PMID 24061052)
  • Smith LG, et al. Nat Commun 2019;10:4641(PMID 31641128)
  • Muller A, et al. Nat Commun 2017(PMID 29138387)
  • Reganold JP, Wachter JM. Nat Plants 2016(PMID 27249193)
  • 農研機構「有機・農薬節減栽培の水田では生物多様性が高い」(2019年8月28日)

関連する読みもの・データベース

この記事は、公的機関の資料と研究をもとに表示のルールや評価を整理したもので、特定の食品や添加物の安全性・危険性を判定するものではありません。制度や海外の規制は変わることがあります(確認日 2026.10.03)。