オーガニック(有機)とは? 有機JASの基準・歴史・無添加や自然栽培との違いを公的資料で解説

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スーパーの野菜売り場にも、調味料の棚にも、化粧品やタオルにも「オーガニック」「有機」という言葉があふれています。
一方で、よく聞く疑問もたくさんあります。
- 「オーガニック」と「有機」は同じ意味? 化学の「有機」とは関係ある?
- 有機なら農薬はゼロ?
- 「無農薬」のほうが「有機」より上?
- 「自然栽培」は有機よりもっと厳しい農法?
- 「オーガニック」と「無添加」は同じ?
- オーガニック化粧品やオーガニックコットンには、国の基準がある?
- なぜ値段が高い?
農林水産省が2025年に消費者3,000人に聞いた調査では、「有機」「オーガニック」という言葉を知っている人は93.5%でした。ところが、栽培の方法と表示のルールの両方を正確に知っていた人は8.6%しかいませんでした。言葉は広まっていても、中身はあまり知られていません。
この記事では、
- オーガニックはいつ、どこで、何に反対して生まれたのか(世界と日本の歴史)
- 「有機」と表示するための国のルール(有機JAS)は、何を決めていて、何を決めていないのか
- 有機でも使える農薬・添加物はどれだけあるのか
- 「無農薬」「特別栽培」「自然栽培」「無添加」とは何が違うのか
- 化粧品・コットン・ワインの「オーガニック」はどうなっているのか
- ウラヨミで紹介してきた食品の「有機」の表示を読み直すと何が見えるか
を、法令・農林水産省の資料・論文で確かめます。
オーガニックのシリーズ(3本)
- オーガニックとは(基準と歴史)の記事:この記事。基準・歴史・ほかの表示との違い
- オーガニックと健康の記事:栄養価・残留農薬・がんの研究、どこから替えるか
- 世界のオーガニック事情の記事:市場・面積・制度を米国・EU・中国・韓国などと比べる
結論
- オーガニック(有機)農業は、化学肥料と農薬への反発から生まれた、20世紀の運動です。「organic farming」という言葉が初めて本に出たのは1940年。日本語の「有機農業」は1971年に一楽照雄が名づけました。その1971年は、日本で DDT・BHC という「有機塩素系」の農薬の登録が切れた年でもあります
- 「オーガニック=昔ながらの農業」は半分だけ正しいです。昔の日本の農業は人のふん尿(下肥)を肥料にしていて、戦後には国民の約6割が回虫に感染していました。いまの有機JASは、人のふん尿や下水の汚泥を原則として使えません
- 日本では「有機」「オーガニック」は法律で守られた名前です。有機JASマークのない食品に「有機」「オーガニック」「organic」と書くことはできず、輸入品も同じです。命令に従わなければ1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金になります
- 有機でも農薬は使えます。有機JASの規格には、使ってよい農薬が42項目あります(数えた数)。銅剤・硫黄・スピノサドなどです。EU の2024年の検査では、有機の試料の約2割から何らかの残留が見つかりました(基準値を超えたのは0.9%)
- 有機の加工食品にも添加物は使えます。使ってよい添加物は61項目(数えた数)。ただし、調味料(アミノ酸等)・保存料のソルビン酸・合成着色料・カラメル色素・甘味料は表にないので使えません
- 「無農薬」「減農薬」は、2003年から表示できません。当時「無農薬は有機より上」と思っている消費者が6割以上いたためです。「自然栽培」「自然農法」には法律の定義がありません
- オーガニックと無添加は別の制度です。有機JASは「作り方」を第三者が認証する制度、無添加は消費者庁のガイドラインで「表示の書き方」の目安を示したもので、認証はありません
- 化粧品とコットンには、国の「オーガニック」の基準がありません。民間の基準(COSMOS・GOTS など)があり、化粧品では製品全体の有機の割合が20%(洗い流すものは10%)でも「オーガニック」の認証を受けられます
この記事で紹介しているもの
| 紹介しているもの | どんなときに | 記事の中の場所 |
|---|---|---|
| 福岡正信『わら一本の革命』・レイチェル・カーソン『沈黙の春』・有吉佐和子『複合汚染』 | オーガニックの歴史を原典で読みたいとき | 歴史をたどれる本 |
| 有機の取り扱いが多い生協の宅配(コープ自然派) | 有機JASマークの付いた食品を、近くの店で探しにくいとき | 有機JASマークの見分け方と買える場所 |
| 有機JASのワイン | 2025年10月からの「有機」の表示があるお酒を選びたいとき | 有機酒類は2025年10月から |
オーガニックはどうやって生まれた?

オーガニックの歴史は、化学肥料の歴史の裏返しです。化学肥料が広まり、農薬が使われるようになったことへの反発から、運動が生まれました。
化学肥料の時代の始まり
- 1908年、ドイツの化学者ハーバーが、空気中の窒素からアンモニアを作る方法の特許を出願し、1909年に実験で示しました
- 1913年9月9日、化学会社 BASF がこの方法で工業生産を始めました(ハーバー・ボッシュ法)。最初は肥料(硫安)を作りましたが、1914年に第一次世界大戦が始まると火薬の原料づくりにも使われました
- 環境科学者のスミルは、この方法がなければ、世界の人口は1900年の16億人から60億人には増えなかったと書いています(Nature、1999年)
日本も化学肥料の歴史は早く、1887年に日本初の化学肥料会社(東京人造肥料会社)ができています。設立者には高峰譲吉・渋沢栄一らが名を連ねます。
国連食糧農業機関(FAO)の統計では、耕地1haあたりの窒素肥料の量は、1961年に日本84kg、英国54kg、米国13kgでした。日本は早くから化学肥料をたくさん使う国で、ピークは1973年の116kgです。日本で有機農業の運動が1971年に生まれたのは、すでに肥料と農薬を多く使う農業になっていたことが背景の一つと考えられます(因果を確かめた研究ではありません)。
シュタイナーの農業講座(1924年)
1924年6月7日〜16日、いまのポーランドにあったコーベルヴィッツで、思想家ルドルフ・シュタイナーが農業の講座を開きました。8回の講義に、6か国から111人が出席しています(Paull、2011年)。
講座は、地元の領地の管理人が熱心に頼んで実現しました。研究者のポールは、その背景に「安い合成窒素肥料で農業が急に変わることへの農民の不安」があったと書いています。この講座から「バイオダイナミック農法」が生まれました。
「organic」という言葉は1940年に生まれた
「organic farming(有機農業)」という言葉が初めて本に出てきたのは、1940年5月に英国のノースボーン卿が出した『Look to the Land』です(Paull、2014年)。
- ノースボーン卿は1939年7月、英国で初めてのバイオダイナミック農法の会議を開いた人です
- 「organic」の由来は、化学の「炭素を含む」ではなく、「農場は一つの生きもの(organism)のようなもの」という考えでした
- 反対語も「inorganic(無機)」ではなく、「chemical farming(化学農業)」でした
戦争中の英国で、ドイツの思想の色が強いシュタイナーの言葉を避け、中立の言葉に置き換えた、とポールは説明しています。
ハワードの堆肥とバルフォアの土壌協会
同じ1940年、英国の農学者アルバート・ハワード(1873〜1947年)が『An Agricultural Testament(農業聖典)』を出しました。インドで研究所の所長を務めたハワードは、動植物のくずから堆肥を作る「インドール法」を広め、肥料の窒素・リン・カリだけを見る考え方を批判しました。
ハワードは「有機農業の父」と呼ばれますが、最近の歴史研究は、よく語られる話を見直しています。
- ハワード夫妻が最初に化学肥料を勧めなかった理由は、「不自然だから」ではなく「インドの農民には高すぎるから」だった(Brown、2025年)
- インドール法は「農民の昔からの知恵」から来たと語られてきたが、実際には夫妻の厳密な科学的な手順に根がある(Barton、2017年)
英国では、イヴ・バルフォアらが1939年にサフォークで有機・混合・家畜なしの3つの区画を比べる農場を始め、1943年に『The Living Soil』にまとめました。ただし、この比較について研究者は「今の基準では実験というより実演で、確かな結論は出せない」と評しています。バルフォアらは1946年に土壌協会(Soil Association)を作り、1967年に最初の有機の基準、1973年に認証の事業を始めました(同協会の沿革)。
ロデイルと『沈黙の春』
米国では、出版人の J.I. ロデイルが1942年に雑誌『Organic Farming and Gardening』を創刊し、有機運動の顔になりました。1945年の著書『Pay Dirt』には、ハワードが序文を書いています。
1962年9月27日、海洋生物学者レイチェル・カーソンが『沈黙の春』を出しました。DDT などの殺虫剤が鳥や魚、人に与える影響を書いた本で、農薬の本であって、有機農業の本ではありません。それでも、農薬への不安を世界に広げ、有機の運動を後押ししました。日本語版は1964年に『生と死の妙薬』の題で出たとされ、1974年に新潮文庫『沈黙の春』として出ています。
国際団体と、各国の法律
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1972年11月5日 | フランスのヴェルサイユで、国際有機農業運動連盟(IFOAM)が発足。5団体(フランスの Nature et Progrès、英国の土壌協会、米国のロデイル社など) |
| 1987年 | デンマークが有機農業生産法を制定。有機農業に特化した国の法律として世界で最初とされる |
| 1990年11月28日 | 米国で有機食品生産法が成立 |
| 1991年6月24日 | EU が有機の規則(2092/91)を制定(その後 834/2007、2018/848 に置き換え) |
| 1999年 | 国際的な食品規格(Codex)が有機のガイドラインを採択(家畜は2001年) |
| 2002年10月21日 | 米国の全国有機プログラムが完全実施 |
| 2005年・2008年 | IFOAM が「健康・生態・公正・配慮」の4原則(2005年)と定義(2008年)を決める |
米国では、1997年に出た規則の案に27万5千件の意見が寄せられました。案が認めていた「遺伝子組換え」「放射線照射」「下水汚泥の肥料」の3つが、1998年に外されています(米国議会調査局)。
そのうえで、2000年の米国の最終規則は、「認証は作り方についての主張(process claim)で、製品についての主張(product claim)ではない」と書き、有機が慣行(ふつうの栽培)より安全だと受け取ってはならない、としています。Codex のガイドラインも、「環境全体が汚染されているので、有機の産品に残留物がまったくないことは保証できない」と書いています。運動は「健康」を言ってきましたが、法律は「作り方」だけを決めたのです。健康の研究は オーガニックと健康の記事 で確かめます。
日本:1971年に「有機農業」という言葉ができた
日本語の「有機農業」は、1971年に一楽照雄(1906年生まれ)が名づけたとされています。一楽は農林中央金庫や全国農協中央会の役員を務めた人で、日本で初めて organic を「有機」と訳しました。1971年10月17日、日本有機農業研究会を作り、1974年にはロデイルの本を『有機農法』として訳しています。
「有機」という訳語の由来には2つの説明があります。
- 米国のロデイルの雑誌の名前に学んだ。既にあった「自然農法」と混同されないようにした(研究者による説明)
- 一楽が酪農家の黒澤酉蔵を訪ね、「天地有機(天地に機あり)」という言葉を聞いて名づけた、ともいわれています。「機」は自然のしくみの意味です
1971年は、日本の農薬の歴史の節目でもありました。
| 農薬 | 登録 | 失効 |
|---|---|---|
| DDT | 1948年 | 1971年 |
| BHC(リンデン) | 1949年 | 1971年 |
| クロルデン | 1950年 | 1971年 |
| ヘプタクロル | 1957年 | 1972年 |
| アルドリン・ディルドリン・エンドリン | 1954年 | 1975年 |
出典:農林水産省「販売禁止農薬」の一覧。
当時の環境白書によると、厚生省が1971年に母乳を調べたところ、調べたすべての母乳から β-BHC と DDT が見つかりました。牛乳の BHC は、BHC がかかった稲わらを牛のえさにしたことが主な原因でした。有機農業の運動は、こうした農薬汚染や水俣病などの公害を背景に生まれています。
自然農法の2つの流れ:岡田茂吉と福岡正信
日本には、有機農業とは別に「自然農法」の流れがあります。
- 岡田茂吉(1882〜1955年):1930年代半ば〜後半に、農薬と化学肥料を使わない農業の研究・試作を始め(年譜では1936年に研究、1938年に試作。1935年とする資料もあります)、1940年ごろから農薬の害を唱えました
- 福岡正信(1913〜2008年):耕さない・肥料をやらない・農薬を使わない・草を取らない農法を唱えました。1975年に『自然農法 わら一本の革命』を出し、英訳は1978年に米国のロデイル社から出ています。日本の自然農法は、米国の有機運動の出版社を通じて世界に広まりました
一楽が「有機農業」という新しい名前を選んだのは、こうした自然農法と区別するためでもあった、と説明されています。
提携と『複合汚染』
日本の有機農業を支えたのは、農家と消費者が直接つながる「提携」でした。日本有機農業研究会は1978年に「提携10か条」(全量引き取り、話し合いで決める価格など)をまとめています。担い手は都市の主婦が多く、グループの数は1991年ごろの約300がいちばん多かったと報告されています(Kondo ら、2024年)。
1975年に市民団体として発足した「大地を守る会」は、1985年に日本で初めて家ごとに届ける配送を始めました。いまの有機野菜の宅配の源流の一つで、2017年にオイシックスと合併しています(くわしくは オイシックスの記事)。
作家の有吉佐和子は、1974年10月から1975年6月まで朝日新聞に『複合汚染』を連載し、農薬・化学肥料・合成洗剤・食品添加物が重なる汚染を書きました。有吉は1974年11月、パリの IFOAM の大会に日本有機農業研究会の一員として参加しています。
ガイドラインから法律へ
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1988年 | 宮崎県綾町が「自然生態系農業の推進に関する条例」 |
| 1992年10月 | 農林水産省が「有機農産物等」の表示ガイドラインを作る(強制力なし) |
| 1999年7月 | JAS法を改正。認証を受けたものだけが「有機」と表示できる仕組みに |
| 2000年1月 | 有機農産物の日本農林規格(JAS)を告示 |
| 2001年4月 | 「有機」の表示の規制が始まる |
| 2006年12月15日 | 有機農業推進法(議員立法) |
| 2020年7月 | 有機畜産物の表示の規制が始まる |
| 2021年5月 | みどりの食料システム戦略(2050年に有機農業を耕地の25%・100万haに) |
| 2025年10月 | 有機酒類の表示の規制が始まる |
農林水産省は、1992年のガイドラインには強制力がなく、有機質の肥料を使っただけで「有機栽培」と表示する例などが出て混乱したと書いています。運動が始まった1971年から、表示の規制まで30年かかりました。いまの面積や目標の進み具合は 世界のオーガニック事情の記事 で比べます。
「オーガニック=昔ながらの農業」は半分だけ正しい
「オーガニックは化学肥料がなかった昔の農業に戻ること」という説明をよく見かけます。確かめると、半分だけ正しいことが分かります。
正しい部分:化学肥料が広まる前の日本の農業は、堆肥・油かす・干したイワシ、そして人のふん尿(下肥)を使う循環の農業でした。米国の土壌学者キングは、1908年に日本で肥料に使われた人のふん尿を約2,400万トンと記録しています(『Farmers of Forty Centuries』1911年)。当時の人口で割ると、1人あたり年に約0.5トンです。
違う部分:下肥には、寄生虫の卵が混ざります。
厚生省の統計を見直した研究(岡山大学、1968年)では、回虫の卵を持っていた人の割合は、1945年度51.8%、1949年度62.9%で、1965年度には5.3%まで下がりました。国立感染症研究所の研究班の報告は、敗戦直後は下肥の利用が一般的だったので国民の約6割が回虫に感染し、その後、衛生教育・集団での検査と駆虫・し尿処理施設・化学肥料の普及で激減した、とまとめています。
いまの有機JASは、人のふん尿や下水の汚泥を、原則として使えません。さらに、ハワードの堆肥法も「科学的な手順」から生まれたものでした。
つまり、いまの有機農業は「昔の知恵の一部を、近代の科学と衛生の基準でやり直した農業」です。「昔にそのまま戻る農業」ではありません。
歴史をたどれる本
オーガニックの歴史に出てくる本のうち、福岡正信『わら一本の革命』、カーソン『沈黙の春』、有吉佐和子『複合汚染』は、いまも文庫や新版で読めます。運動の出発点になった問題意識を、本人の言葉で確かめられます。
有機JASのしくみ:何が決まっている?
日本の「有機」の表示は、JAS法(日本農林規格等に関する法律)で決まっています。ここでは、法律と規格の本文から、何が決まっていて何が決まっていないかを見ます。
「有機」「オーガニック」は法律で守られた名前
- JAS法第63条と施行令第18条は、有機農産物・有機畜産物・それらを原料にした加工食品を「指定農林物資」にしています
- 指定農林物資は、有機JASマーク(格付の表示)がなければ、「有機」という名前も、紛らわしい表示も付けられません
- 農林水産省は「『オーガニック』は『有機』と同じです」と説明しています。「organic」「有機栽培」なども同じ扱いです
- 輸入品も同じです。輸入業者が、外国で「Organic」と書かれた食品を、有機JASの格付なしにそのまま売ることはできません(第63条第3項)
違反したときは、2段階になります。
| 違反 | どうなるか |
|---|---|
| 認証なしで「有機」と書いた | まず農林水産大臣が、表示を消す命令や販売の禁止(第64条)。命令に従わなければ1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第78条) |
| 認証なしで有機JASマークを付けた | 命令を待たずに同じ罰則(第37条・第78条)。会社には1億円以下の罰金(第83条) |
有機農産物のルール:2年・3年
有機農産物の規格(JAS 1605:2024)の主な中身です。
| 決まっていること | 中身 |
|---|---|
| 基本の考え方 | 化学的に合成された肥料と農薬を使わないことを基本に、環境への負荷をできるだけ減らした栽培 |
| 転換期間 | 種まき・植え付けの2年以上前から(果樹や茶など多年生は、最初の収穫の3年以上前から)、禁止された資材を使わない |
| 転換期間中 | 最初の収穫の1年以上前から守った畑なら、「転換期間中」と並べて書いて売れる |
| 種と苗 | 原則は有機の種・苗。遺伝子組換えの種・苗は使えない |
| 肥料 | 畑の残りかすの堆肥や、まわりの生きものの働きで土の力を保つのが原則。足りないときだけ、決められた資材(42項目) |
| 病気・害虫 | 輪作・防虫ネット・天敵などが原則。それで防げず、大きな被害が迫ったときだけ、決められた農薬(42項目) |
| 放射線 | 放射線を当てることは禁止 |
| まわりの畑 | 禁止された資材が飛んでこないように対策する |
2年・3年という転換期間は、Codex のガイドラインと同じです。同じ農家が有機と慣行の両方を作ること(並行生産)も認められていますが、有機の畑で禁止の資材を使っていないことを、記録で証明する必要があります。
そして大事なのが、農林水産省自身が「有機JASは、栽培のルールを定めたものであり、出来上がった農産物の品質に関する基準ではありません」と説明していることです。有機JASマークは「この方法で作った」という印で、「栄養が多い」「安全性が高い」という印ではありません。
有機でも農薬は使える?
「オーガニック 農薬使ってる」「有機jas 農薬 一覧」は、日本語の検索候補によく出てくる言葉です。答えは「使える。ただし種類と場面が限られている」です。
有機農産物の規格の表B.1には、使ってよい農薬が42項目(ほかに、表の成分だけを組み合わせたもの)あります。農林水産省が「何品目」と公表している数は見つからなかったので、表を数えた数です。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 天然物・油 | 除虫菊乳剤、なたね油乳剤、マシン油乳剤、デンプン水和剤 |
| 無機の成分 | 銅水和剤・ボルドー剤(硫酸銅)、硫黄剤、石灰硫黄合剤、リン酸第二鉄粒剤、炭酸水素ナトリウム(重曹) |
| 微生物などから作る成分 | スピノサド、ミルベメクチン、カスガマイシン |
| 生きもの・誘引 | 天敵などの生物農薬、性フェロモン剤 |
| その他 | メタアルデヒド剤(捕虫器に入れるものだけ)、食酢、次亜塩素酸水 |
- 使えるのは、「農産物に大きな被害が生じる危険が迫っていて、耕し方・物理的な方法・生きものの力だけでは防げないとき」に限られます
- 国の告示は、この表の資材の中にも「化学的に合成されたもの」が含まれることを前提にしています。「有機の農薬=天然のものだけ」ではありません
- 2024年の改正で、クロレラ抽出物液剤・ワックス水和剤・ケイソウ土粉剤が表から外れました(2025年1月から)
実際に残るかどうかは、EU の公式データで分かります。欧州食品安全機関(EFSA)が2026年に公表した2024年の検査では、有機と表示された5,939試料のうち、80.4%は残留が定量できず、18.8%は基準値以下で検出、基準値を超えたのは0.9%でした。有機でいちばん多く見つかったのは、有機でも使える銅です。有機で認められていない農薬もわずかに見つかり、EFSA は、まわりの畑からの飛散、流通中の混入、表示の誤りの可能性を挙げています。
有機でも「農薬ゼロ」ではありませんが、EU の試料全体(有機を含む、約4割で検出)より検出は少ない、というのが事実です。日本の検査の数字や、体に入る農薬の量は オーガニックと健康の記事 で、農薬ごとの性質は 農薬データベース で確かめられます。
有機加工食品:95%と61項目の添加物
みそ・しょうゆ・ジュースなどの加工食品で「有機」と書くには、有機加工食品の規格(JAS 1606:2024)を守ります。
- 水と食塩を除いた原材料と添加物のうち、有機でないものは5%以下(=有機が95%以上)
- 有機でない原材料を使えるのは、同じ種類の有機のものが手に入らない場合だけ。遺伝子組換えや放射線を当てたものは使えません
- 保存や殺虫のための放射線も禁止
- 米国には「70%以上が有機なら『made with organic ○○』」という段階がありますが、日本には70%の段階はありません。95%に届かなければ「有機○○」とは名乗れず、有機JASマーク付きの原材料について「有機大豆使用」のように書くだけです
使える添加物は、規格の表A.1に載っているものだけです。数えると61項目ありました。
| 区分 | 主なもの |
|---|---|
| 酸味・pH の調整 | クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、ビタミンC(L-アスコルビン酸) |
| 炭酸塩など | 炭酸ナトリウム・炭酸カリウム(かんすい)、炭酸水素ナトリウム(膨張剤)、炭酸カルシウム |
| にがり・凝固剤 | 塩化マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム、硫酸カルシウム |
| 増粘・ゲル化 | ペクチン、カラギナン、グァーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム |
| 乳化・酸化防止 | レシチン、ミックストコフェロール(ビタミンE) |
| ろ過・製造の助け | 活性炭、ケイソウ土、ベントナイト、二酸化ケイ素 |
| その他 | 香料(化学的に合成されたものでないもの)、酵素、窒素、二酸化炭素 |
用途の制限がついたものも多く、たとえば水酸化ナトリウムは、砂糖・藻類・食用油・穀類の加工などに限られます。
逆に、表にないものは使えません。
- 調味料(アミノ酸等)(くわしくは グルタミン酸ナトリウムの記事)
- 保存料のソルビン酸・安息香酸ナトリウム(保存料の記事)
- 合成着色料・カラメル色素(着色料の記事・カラメル色素の記事)
- アスパルテーム・スクラロースなどの甘味料(甘味料の記事)
- 発色剤の亜硝酸ナトリウム(発色剤の記事)
日本で使える添加物は、指定添加物476品目と既存添加物357品目です(2024年3月31日)。ただし、有機JASの表は「香料」「酵素」のようにまとめて1行にしている項目があるので、「61÷833」のような割り算はできません。「有機=添加物ゼロ」ではないが、使える範囲はかなり狭い、と覚えておけば十分です。添加物ごとの説明は 添加物データベース にあります。
有機畜産物:えさ・薬・広さ
有機の卵・牛乳・肉は、有機畜産物の規格(JAS 1608:2026)で決まっています。
| 決まっていること | 中身 |
|---|---|
| えさ | 有機の飼料が基本。手に入らないときだけ、牛・羊・山羊は15%、豚・鶏は20%まで有機でないもの(遺伝子組換え・抗生物質入りは不可) |
| 薬 | 病気の予防のための動物用医薬品は使わない。治療で抗生物質を使ったら、出荷までの休薬期間は法律の2倍 |
| 禁止 | 成長を早める物質、受精卵移植やホルモンを使った繁殖、遺伝子組換えの技術 |
| 外に出す | 野外の飼育場に自由に出入りさせる(週2回以上の放牧でもよい) |
| 最低の広さ | 採卵鶏は1羽0.15㎡、乳牛は4.0㎡(つなぎ飼いは1.8㎡)、肥育豚は1.1㎡ |
畜産物には、農産物のような「転換期間中」の表示は認められていません。
誰が確かめている?認証と格付
「有機」の印を付けるまでの流れは、次のとおりです。
- 国が、審査に通った民間団体や自治体を登録認証機関にする(農林水産省の一覧を数えると、国内50機関・外国22機関。2026年10月3日時点)
- 登録認証機関が、農家やメーカーを書類と現地で検査して認証する。認証のあとも年1回以上調べる
- 認証を受けた農家・メーカー自身が、出荷するものを確かめて格付し、有機JASマークを付ける。マークの下には認証機関の名前が入る
- 店に並んだ有機の食品は、地方農政局と農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が日常的に監視する
2026年3月31日時点で、認証を受けた生産者・メーカー(生産行程管理者)は国内4,939、外国3,133でした。外国の農家やメーカーも、日本の有機JASを直接取れます。
有機酒類は2025年10月から
お酒は、長いあいだ有機JASの対象外で、国税庁の基準で「有機」と書いていました。2022年10月の法改正でお酒も有機JASの対象になり、3年の移行期間を経て、2025年10月1日からは、有機JASマークがなければ「有機」「オーガニック」と表示できません。輸入ワインも同じです。
- 有機のお酒には、酸化防止剤の亜硫酸(二酸化硫黄・ピロ亜硫酸カリウム)が使えます。有機の加工食品の表にはない添加物で、お酒の表(39項目)だけにあります
- 2024年度に有機JASで格付されたお酒は、国内が1,649トン(果実酒932、ビール442、みりん134、清酒92トンなど)、外国が175,753トンでした。外国はほとんどがワインで、そのうち日本向けは4,122トンです
「ナチュラルワイン」と「オーガニックワイン」の違いもよく検索されています。ナチュラルワインは有機JASの区分ではないので、「有機」「オーガニック」と書かない限り、有機JASの認証なしで名乗れます。有機かどうかを確かめたいなら、ラベルの有機JASマークを見るのが確実です。
2025年10月からは、店に並ぶ「有機」のワインに有機JASマークが付くようになりました。ラベルの有機JASマークと認証機関の名前で、制度のうえの有機かどうかを確かめられます。
有機JASマークの見分け方と買える場所
「有機jas マーク」は、日本語の検索候補に10種類以上出てくる言葉です。それでも、2025年の農林水産省の調査で、有機食品を買う人のうちマークを「必ず」「ほとんど」「ときどき」確かめる人は合わせて34.2%でした。そもそも、言葉の中身まで知っている人が少数です。
見分けるポイントは3つです。
- 有機JASマークと、その下の認証機関の名前があるか
- 「転換期間中」の文字が近くにあれば、有機に切りかえている途中の畑のもの
- 規制がかかるのは、商品に貼ったシール・容器包装・納品書・店の陳列の立て札です。チラシ・パンフレット・メニュー・のぼり・看板・ネットの説明文は、JAS法の対象外です(景品表示法の対象にはなり得ます)。ネット通販では、商品の写真でマークを確かめるのが確実です
小分けにも注意が必要です。認証を受けていない店が有機のにんじんを小分けして袋に詰めると、その袋に「有機にんじん」とは書けません(売り場の札で示すことは、混ざらない対策があればできます)。
有機食品を買う人の購入先は、スーパー83.5%、直売所20.5%、生協18.2%、ドラッグストア15.7%、自然食品店12.0%でした(農林水産省、2025年)。一方、有機の農産物を買わない理由は、「値段が高い」45.1%に次いで「身近で売っていない」36.6%でした(日本政策金融公庫、2021年)。近くで見つからないときは、宅配も選択肢になります。生協では、取り扱う青果の多くを有機と説明しているところがあります(有機JASマークの有無は品目ごとに確かめます)。
「有機」と書けない言葉
農林水産省の Q&A(2025年10月版)は、書けない言葉・書ける言葉を具体的に挙げています。
| マークがないと書けない | マークがなくても書ける |
|---|---|
| 有機、オーガニック、organic、有機栽培、有機農法 | 有機質肥料使用 |
| 完全有機、準有機、海外有機、有機率○% | 有機肥料を使用して栽培したトマト |
| 有機移行栽培、雨よけ有機栽培、有機土栽培 | (加工食品で)有機JASの原材料を使った「有機大豆使用」「有機野菜○%使用」 |
| 有機無農薬、「外国(国名)有機認証品です」 |
「有機無農薬」が書けないのは、「有機」は規格の方法でしか使えず、「無農薬」はガイドラインで禁止されている言葉だからです。加工食品で「有機野菜ソース」「有機トマトケチャップ」と書くのも、商品全体が有機加工食品の認証を受けていなければできません。
違反するとどうなる?摘発の例
農林水産省は2024年9月20日、宮崎県の会社が、認証を受けずに「有機発芽玄米」(725g入り)に「有機」と有機JASマークを付け、2023年3月から2024年4月までに10,360袋を出荷していたとして、表示を消す命令を出しました。九州農政局の立ち入り検査で分かった事例です。
報道では、農林水産省が2011年11月〜2013年11月にJAS法違反で指導した事例が182件あったとされます(有機の表示のほか、産地の偽装も含む。共同通信の情報公開請求。農林水産省の原資料は確かめられませんでした)。
消費者の側にも疑いはあります。2015年度の農林水産省の調査で、有機食品を買いたくない理由に「『有機』などの表示が本当か疑わしい」を選んだ人は41.3%でした。表示がおかしいと思ったら、農林水産省の窓口(0120-714-110)に情報を寄せられます。偽装の事件は日本より米国のほうが大規模で、世界のオーガニック事情の記事 で紹介します。
「無農薬」「特別栽培」「自然栽培」「有機」は同じ?

「有機栽培 無農薬 違い」「自然栽培 有機 違い」「特別栽培 有機栽培 違い」。言葉の「違い」や「意味」を聞く検索候補は、日本語で82種類ありました(2026年10月3日、ウラヨミで集計)。4つは、根拠の強さも、確かめる人も違う「ものさし」です。
| 区分 | 根拠 | 第三者の認証 | 農薬・化学肥料 | 表示 |
|---|---|---|---|---|
| 有機(有機JAS) | 法律(JAS法) | あり(登録認証機関) | 化学合成のものは原則使わない。決められた42項目の農薬は使える | マークがなければ「有機」と書けない。罰則あり |
| 特別栽培 | 国のガイドライン(通知) | なし | 地域の慣行の5割以下 | 「特別栽培農産物」と、責任者の名前・連絡先 |
| 「無農薬」「減農薬」 | なし | なし | 決まりなし | 2003年から表示できない |
| 自然栽培・自然農法 | なし(法律に定義がない) | なし | 決まりなし(つくり手ごとに違う) | 「有機」とは書けない |
特別栽培は「5割以下」のガイドライン
特別栽培農産物は、農林水産省の「表示ガイドライン」で決まっています。法律ではなく、第三者の認証の制度でもありません。
- 「節減対象農薬」の使用回数と、化学肥料の窒素の量が、どちらも地域の慣行の5割以下
- 「節減対象農薬」には、有機JASで使える農薬は入りません。だから「節減対象農薬:栽培期間中不使用」でも、有機JASで使える農薬は使っていることがあります
特別栽培と有機JASのくわしい比べ方は、オイシックスの記事 にまとめています。
「無農薬」はなぜ表示できなくなった?
2003年5月のガイドライン改正で、「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」は表示禁止になりました(ガイドラインの禁止事項で、法律の罰則はありません)。
農林水産省は理由を2つ挙げています。
- 作る人は「栽培中に農薬を使っていない」という意味で書いていたのに、買う人は「土に残った農薬や近くから飛んできた農薬も含めて、まったく含まない」と受け取っていた
- 「無農薬」を、第三者の認証がある「有機」より上だと思っている消費者が6割以上いた(2002年の総務省の調査)
それから約20年たっても、ずれは残っています。日本政策金融公庫の2021年の調査では、有機・特別栽培の農産物を選ぶ基準として「減農薬・無農薬」を挙げた人が68.1%で、「有機農産物」の47.7%より多く、有機JASマークの意味まで知っていた人は18.5%でした。いちばん重視されている言葉が、表示では使えない言葉なのです。
いまは「農薬:栽培期間中不使用」のように書きます。ウラヨミで紹介した 国産べにふうき粉末緑茶 は、ラベルに「節減対象農薬:栽培期間中不使用」と書かれていました。販売ページの商品名には「無農薬」とありますが、ガイドラインの考え方では使えない言葉で、有機JASで使える農薬を使ったかどうかはラベルからは分かりません。
自然栽培・自然農法に法律の定義はない
法令のデータベース(e-Gov)の本文を2026年10月3日に検索すると、「自然栽培」「自然農法」は0件でした(告示や通知の一部はデータベースに入っていません)。
- 特別栽培のガイドラインは、特別栽培農産物と表示するときに「天然栽培」「自然栽培」のような紛らわしい言葉を併せて書くことを禁止しています
- 農林水産省は「自然栽培の農産物に『有機○○』と表示することはできません」と説明しています
- つまり、「自然栽培=有機より厳しい」とは言えません。肥料も農薬も使わないつくり手もいれば、そうでない人もいて、確かめる第三者がいないからです
認証を受けていない「有機的な農業」は、実はかなり大きいようです。2020年の農林業センサスは、自然農法や認証のない有機も含めて「有機農業をしているか」を聞いていて、作付けののべ面積は115,269haでした。同じ年の有機JASの畑(12,027ha)の約10倍です。ただし、のべ面積で自己申告なので、農林水産政策研究所は「環境に配慮した農法を広く有機と考えて答えた影響」を指摘しています。農林水産省は、認証のない分を含めた有機農業の面積を2024年度末で3.98万ha(うち有機JASは2.64万ha)と推計しています。
「奇跡のリンゴ」:できることと、誰でもできることは別
自然栽培で有名なのが、青森県の木村秋則さんのりんご園です。ここは、本や映画の逸話と、研究で確かめられたことを分けて書きます。
- 論文で確かめられたこと:弘前の約0.4ha・約50本の園で、30年以上、化学肥料・堆肥・農薬・除草剤を使わず、薄めた酢をまいて、経済的に成り立つ収量がある。病気は毎年かなり出て、慣行の園より重い(Sugiyama ら、2021年)
- 公的な再現試験:農研機構が、岩手県盛岡市の研究拠点で、名前を伏せた園の方式をまねた試験を2009〜2015年の7年間行いました。花芽ができる割合は、慣行の区画が毎年ほぼ80%なのに対し32〜55%で、収量・果実の大きさ・糖度とも慣行より劣りました
「できる」ことと「どこでも誰でもできる」ことは別、というのが公的な試験の結果です。
オーガニックと無添加は同じ?
「オーガニック 無添加 違い」「オーガニック 無添加 どっちがいい」も、よく検索される言葉です。2つは別の制度で、片方があってももう片方とは限りません。
| 比べるもの | 有機JAS(オーガニック) | 無添加(添加物の不使用表示) |
|---|---|---|
| 根拠 | JAS法と規格。法律で表示を規制 | 消費者庁のガイドライン(2022年3月)。「無添加」という言葉の定義は食品表示基準にない |
| 何を決める | 栽培・飼育・加工の方法 | 表示が誤解を招かないかの目安(10の類型) |
| 第三者の確認 | 登録認証機関が検査・認証 | 認証の制度はない |
| 添加物 | 決められた61項目は使える | 使っていなければ書けるが、書き方に制限 |
| 一律の禁止か | 認証のない「有機」は禁止 | 一律の禁止ではない。自分で点検するための目安 |
- 有機でも無添加とは限りません:有機のお酒には亜硫酸が使えますし、有機の加工食品にもクエン酸やペクチンが使えます
- 無添加でも有機とは限りません:添加物を使っていなくても、原材料が有機JASでなければ「有機」とは書けません
「無添加」の10類型は 「無添加」表示のルールの記事 にくわしくまとめています。
遺伝子組換えでない・ナチュラルとの違い
- 有機JASは、遺伝子組換えの種・苗・原材料を使えません。「遺伝子組換えでない」という表示は、これとは別に、食品表示基準で決まっている表示です。「遺伝子組換えでない」大豆が、有機とは限りません
- 「ナチュラル」「自然派」という言葉には、確かめた範囲では、有機JASのように国が認証する制度はありません
「オーガニック」と「有機」は同じ? 化学の「有機」との関係
食品の「有機」と、化学の「有機(有機化合物)」は、同じ字を使っていますが別の意味です。英語の organic farming の由来は「農場は一つの生きもの」という考え(ノースボーン卿)で、日本語の「有機農業」は1971年の訳語です。
ここに、日本語ならではの皮肉があります。
- 1970年代の環境白書は、DDT・BHC・アルドリンを「有機塩素剤」、パラチオンを「有機りん系」の農薬と呼んでいます
- 日本の有機農業が生まれた1971年に登録が切れた DDT・BHC は、まさに「有機塩素系」の農薬でした
- つまり、「有機」農業が使わない農薬の代表が、「有機」○○の農薬だったのです
化学の「有機」は「炭素を含む化合物」のことなので、化学合成の農薬の多くは化学の意味では「有機」です。有機JASで使える農薬には、逆に銅や硫黄のような「無機」の成分が多く入っています。「有機=天然、体にやさしい」という言葉のイメージと、制度の中身は、そのまま重なるわけではありません。
オーガニック化粧品・コットンに国の基準はある?
日本語の検索候補では、「オーガニック」と組み合わせた言葉のうち、化粧品・美容が58種類、衣類・布・ナプキンが39種類ありました。価格(16種類)や環境(10種類)より多い数です。ところが、この分野には国の「オーガニック」の基準がありません。
- JAS法の対象(農林物資)は、条文で医薬品・医薬部外品・化粧品を除くとしています
- 有機JASの認証機関でもある日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)は、「現在、日本では、コスメのオーガニック表示法制度はありません」と自ら書いています
- 繊維のための綿も、有機JASの規格の対象外です
オーガニック化粧品の民間基準
国の基準がないかわりに、民間の基準があります。
| 基準 | 「オーガニック」と名乗る条件 |
|---|---|
| COSMOS(欧州の化粧品の民間基準、v4.2) | 物理的に処理した農産原料の95%以上が有機。製品全体の有機の割合は20%以上(洗い流すものなどは10%以上) |
| GOTS(オーガニック繊維の民間基準) | 「Organic」は有機の繊維が95%以上、「Made with organic」は70〜94% |
| 有機JAS(食品) | 水と食塩を除いて95%以上 |
化粧品は水が多いので、食品と同じ物差しでは比べられません。それでも、「オーガニック化粧品」は製品の2割が有機でも成立することは知っておくとよいでしょう。また、「オーガニック」は原料の育て方の基準で、肌への刺激が少ない・安全という意味ではありません。植物の成分でかぶれる人もいます。化粧品の成分の考え方は 経皮毒・日用品の記事 と 無添加シャンプー・ボディソープの記事 にまとめています。
値段はなぜ高い?
「オーガニック 高い理由」は日本でも海外でもよく検索され、2025年の調査では、有機食品を買う人の79.2%が「価格が高い」と感じていました。短く答えると、理由は次のとおりです。
- 値段の差:農林水産省が同じ店に並ぶ国産品を比べた調査(2016年)では、有機JASの野菜は国産のふつうの野菜の1.43〜1.87倍(ねぎ143%〜ピーマン187%)でした
- 収量が少ない:論文のまとめでは、有機の収量は慣行より5〜34%低い(Seufert ら、2012年)、平均19.2%低い(Ponisio ら、2015年)とされます
- 切りかえに2〜3年かかる:その間は「有機」として売れません(「転換期間中」とは書けます)
- 認証にお金と手間がかかる:毎年の検査と記録が必要です
一方、2025年の調査で有機食品を買う人に「ふつうより何%高くても買うか」を聞くと、「少しでも高ければ買わない」が30.0%、「10%高まで」が28.3%でした。実際の差(4〜9割高)を受け入れる人は1割台です。どこから替えると費用に見合うかは オーガニックと健康の記事 で、世界の価格や市場は 世界のオーガニック事情の記事 で取り上げます。
ウラヨミで紹介した食品の中の「有機」
ウラヨミで紹介している食品・日用品は、2026年10月3日時点で71品あります。原材料名に「有機」が出てくるのは9品、ラベルの名称が「有機○○」になっているのは5品でした。読み直すと、この記事の話がそのまま表示に表れています。
名称が「有機○○」の5品は、4品が海外の原料
| 食品 | ラベルの名称 | 有機の原料の産地 |
|---|---|---|
| 有機スパゲッティーニ(アルチェネロ) | 有機スパゲッティ | イタリア(原産国) |
| 老梅 有機純米酢(河原酢造) | 有機米酢 | 国産の有機栽培米 |
| 有機トウバンジャン(風と光) | 有機調味料 | 台湾(原産国) |
| 有機白ごまいりごま(金ごま本舗) | 有機白ごまいりごま | 加工は国内。ごまはパラグアイ・ボリビア(公式サイト) |
| 有機ガーリックペースト(メ・ド・プロヴァンス) | 有機調味料 | フランス(原産国) |
国産の原料なのは、有機米酢の1品だけでした。日本は、米国・EU・カナダ・台湾・英国・スイスと「有機の制度が同じ水準」と認め合っていて(同等性)、こうした国の有機の食品は、輸入業者が確かめて有機JASマークを付ければ「有機」として売れます。日本の有機の食品のどれだけが海外から来ているかは、世界のオーガニック事情の記事 で数字を見ます。
もう一つ目を引くのは、有機トウバンジャンでいちばん多い原材料が有機砂糖だったことです。有機は「作り方」の基準なので、砂糖や塩の量が少ないという意味ではありません。
「有機○○使用」と「有機○○」の違い:やきそばソースの例
国産有機野菜・果実使用 やきそばソース(光食品) は、表の名前に「有機」が入っていますが、ラベルの名称は「ウスターソース」で、有機JASの「有機ソース」ではありません。
- 原材料のいちばん多い「野菜・果実」は、たまねぎ・トマト・にんじんなど8種がすべて有機
- 一方、糖類の「有機糖みつ、砂糖」のうち、砂糖には「有機」が付いていません
- メーカーの公式サイトでも、有機JASの「有機ソース」とは別の「国産有機野菜・果実使用ソース」のシリーズに分けています
農林水産省の Q&A では、加工食品で有機JASの原材料を使ったときに「有機野菜○○%使用」のように書くことを認めていて、使った野菜が全部有機でないときは割合を書く、としています。このソースは野菜・果実がすべて有機なので、商品全体は有機でなくても「有機野菜・果実使用」と書けるのです。「有機○○使用」は原料の一部が有機という意味、「有機○○」は商品全体が95%以上有機で認証を受けているという意味です。
原材料の一部だけが有機の食品
- 無添加万能焼肉のたれ(永野):12の原材料のうち、有機はごま油・ごま・レモン果汁の3つ
- 広島県産かきで造った オイスターソース(センナリ):有機は米酢だけ。酵母エキスも入っています(酵母エキスの記事)
- 植物素材の本格カレールウ(創健社):植物油脂の中に有機べに花油
どれも、原材料の欄に「有機」が1つあっても、商品全体が有機というわけではありません。裏面では「名称」の欄が「有機○○」かどうかを見るのが近道です。
塩は「有機」にならない:ゲランドの塩
ゲランドの塩(アクアメール) のパッケージには、フランスの有機農業の団体 Nature et Progrès(ナチュール・エ・プログレ) の認定が書かれています。1972年に IFOAM を作った5団体の一つです。ただ、塩は畑で育てるものではないので、育て方のルールである有機JASの「有機」には当てはまりません。有機加工食品の95%を数えるときも、食塩と水は除きます。
この記事で紹介したもの(まとめ)
記事の中で紹介したものを、もう一度まとめました。理由や原材料は、それぞれの節に書いています。
| 紹介したもの | 購入先 |
|---|---|
| 福岡正信『自然農法 わら一本の革命(新版)』(春秋社) | 楽天市場で見る(楽天ブックス) PR Amazonで見る PR |
| レイチェル・カーソン『沈黙の春』(新潮文庫) | 楽天市場で見る(楽天ブックス) PR Amazonで見る PR Yahoo!ショッピングで見る PR |
| 有吉佐和子『複合汚染』(新潮文庫) | 楽天市場で見る(楽天ブックス) PR Amazonで見る PR Yahoo!ショッピングで見る PR |
| コープ自然派 宅配の資料請求 | 取り扱い青果の60%以上がオーガニック!生協の宅配コープ自然派 |
| ルゾン オーガニック 750ml(スペイン・赤ワイン、有機JAS) | 楽天市場で見る(お酒の専門店 リカマン) PR Yahoo!ショッピングで見る PR |
まとめ
| 気になること | 分かったこと |
|---|---|
| オーガニックはいつ生まれた? | 化学肥料と農薬への反発から生まれた20世紀の運動。「organic farming」の初出は1940年、日本語の「有機農業」は1971年 |
| 昔ながらの農業? | 半分だけ。昔の下肥は回虫の原因になり、いまの有機JASは人のふん尿・下水汚泥を原則使えない |
| 「オーガニック」と「有機」は同じ? | 同じ(農林水産省)。化学の「有機」とは別の意味で、日本の有機農業が禁じた農薬の代表は「有機塩素系」だった |
| 有機と書くには? | 有機JASの認証とマークが必要。輸入品も同じ。違反には罰則 |
| 有機なら農薬ゼロ? | ゼロではない。42項目の農薬が使え、EU の検査では有機の約2割で残留を検出(基準超えは0.9%) |
| 添加物は? | 61項目は使える。調味料(アミノ酸等)・ソルビン酸・カラメル色素・甘味料などは使えない |
| 無農薬・自然栽培は有機より上? | 「無農薬」は2003年から表示禁止。自然栽培には法律の定義も第三者の確認もない |
| 無添加と同じ? | 別の制度。有機は作り方の認証、無添加は表示の書き方の目安 |
| 化粧品・コットンは? | 国の基準はない。民間基準では化粧品の製品全体の有機割合は20%以上で認証される |
| なぜ高い? | ふつうの野菜の1.43〜1.87倍(2016年)。収量が少なく、切りかえと認証に時間とお金がかかる |
参考にした資料
法令・規格・国の資料(基準と表示)
- 日本農林規格等に関する法律(JAS法)・同施行令(e-Gov 法令検索、2026年10月3日確認)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000175
- 農林水産省「有機農産物の日本農林規格」(JAS 1605:2024)、「有機加工食品の日本農林規格」(JAS 1606:2024)、「有機畜産物の日本農林規格」(JAS 1608:2026)https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
- 農林水産省・国税庁「有機JASに関するQ&A」(令和7年10月)、農林水産省「有機食品の検査認証制度について」(令和8年4月)、「有機農産物 検査認証制度ハンドブック」(令和6年10月)
- 農林水産省「有機登録認証機関一覧」、「有機JAS認証事業者数」(令和8年3月31日現在)、「有機認証制度の同等性」(令和8年4月1日現在)
- 農林水産省「5分で分かる!有機農産物って、なに?」、「有機JAS制度 卸売業者・小売店の皆様へ」(リーフレット)
- 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(平成19年3月23日改正)・同Q&A(平成20年6月)
- 農林水産省 プレスリリース「有機JASマークの不適正な表示に対する措置について」(令和6年9月20日)
- 農林水産省・国税庁「有機酒類 JAS法改正の概要」(2023年10月)、農林水産省「有機酒類に有機JASマーク」(2022年10月)
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2022年3月30日)、厚生労働省・消費者庁「食品添加物の安全確保」(2024年3月31日現在の品目数)
- Codex Alimentarius「Guidelines for the Production, Processing, Labelling and Marketing of Organically Produced Foods」(CAC/GL 32-1999)
- IFOAM Organics International「Definition of Organic Agriculture」、米国 7 CFR 205.301
- COSMOS-standard v4.2(2025年9月1日)、GOTS「Label grades」、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会「コスメ認証」
歴史
- Paull J. The Koberwitz Agriculture Course(2011年)/Paull J. Lord Northbourne, the man who invented organic farming(2014年、Organic eprints)
- Smil V. Detonator of the population explosion. Nature 1999、BASF「1913」沿革
- Howard A. An Agricultural Testament(1940年)、Brown(2025年、PMC7617516)、Barton G. Itinerario 2017
- King FH. Farmers of Forty Centuries(1911年)
- Soil Association「Our history」、Rodale Institute「1942」、新潮社『沈黙の春』書誌
- 米国議会調査局 RL31595(2003年)、Federal Register 65 FR 80548(2000年12月21日)、7 U.S.C. 6501
- デンマーク環境庁 Bichel 委員会報告(2001年)
- 根本志保子「一楽照雄の協同組合論と有機農業」日本経済思想史学会(2019年)、古田・下里 長野大学紀要(2016年)、久保田裕子 國學院経済學 47巻3号
- Kondo T, et al. Front Sustain Food Syst 2024(提携)
- 農林水産省「販売禁止農薬」、環境白書 昭和47年版・49年版
- 加藤尚司「寄生虫保卵率の再検討」岡山医学会雑誌 1968、厚生労働科学研究 平成25年度・平成27年度 報告書(土壌媒介寄生虫症)
- Our World in Data「Nitrogen fertilizer application per hectare of cropland」(FAOSTAT、2026年10月3日取得)
- Sugiyama A, et al. Microorganisms 2021(PMC8540600)、農研機構 果樹茶業研究部門 リンゴ研究拠点の成果集(2018年)
違い・消費者の意識
- 農林水産省「有機農業及び有機食品に関する意識・意向調査」(令和7年度)、「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」(平成27年度)、「有機農業をめぐる事情」(令和8年4月)、「日本の有機農業の取組面積」(令和8年6月)
- 日本政策金融公庫「消費者動向調査(令和3年7月)特別調査」(2021年)
- 農林水産政策研究所「有機農業の実施状況に関する分析」(農林業センサス、2024年2月)
- 農林水産省「生鮮野菜価格動向調査」(平成28年)
- EFSA. The 2024 European Union report on pesticide residues in food. EFSA Journal 2026(PMC13140735)
- Seufert V, et al. Nature 2012(PMID 22535250)、Ponisio LC, et al. Proc R Soc B 2015(PMID 25621333)
- Google の検索候補(2026年10月3日取得、ウラヨミで分類・集計)